JP2000117077A - 半透膜およびその製造方法 - Google Patents

半透膜およびその製造方法

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JP2000117077A
JP2000117077A JP28798398A JP28798398A JP2000117077A JP 2000117077 A JP2000117077 A JP 2000117077A JP 28798398 A JP28798398 A JP 28798398A JP 28798398 A JP28798398 A JP 28798398A JP 2000117077 A JP2000117077 A JP 2000117077A
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compound
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polymer
molecular orbital
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Gakuji Inoue
岳治 井上
Shunji Kono
俊司 河野
Hiroshi Otsuzumi
大皷  寛
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明により、耐塩素性、透水性に優れた半
透膜およびその製造方法を提供すること。 【解決手段】 二重結合を有する化合物を1種類以上重
合してなる重合体が、厚みが1nm以上10μm以下で
多孔質膜上および/または膜中にある半透膜であって、
該化合物中の重合可能な二重結合数をn(n≧1)、芳
香環を含有する場合、芳香環の上に局在する最高占有分
子軌道付近の分子軌道の数をm(m≧0)とするとき、
最高占有分子軌道からn+m+1番目の分子軌道のエネ
ルギーが-0.42a.u.以下であることを特徴とする半透
膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐久性、選択透過性に
優れた半透膜およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、工業的に利用されている半透
膜には非対称膜型の酢酸セルロース膜があった(例え
ば、米国特許第3,133,132号明細書、同第3,
133,137号明細書)。しかし、この膜は耐加水分
解性、耐微生物性などに問題があり、塩排除率、水透過
性も十分ではなかった。このため、酢酸セルロース非対
称膜は一部の用途には使用されているが広範囲の用途に
実用化されるには至っていない。
【0003】これらの欠点を補うべく非対称膜とは形態
を異にする半透膜として多孔質膜上に異なる素材で実質
的に膜分離性能をつかさどる分離機能層を被覆した複合
膜が考案された。複合膜では、分離機能層と微多孔性支
持膜の各々に最適な素材を選択する事が可能であり、製
膜技術も種々の方法を選択できる。現在市販されている
複合膜の大部分は多孔質膜上でモノマーを界面重縮合し
たものであり、分離機能層にはポリアミドが用いられて
いる。これらの具体例としては、米国特許第3,74
4,942号明細書、同第3,926,798号明細
書、同第4,277,344号明細書、特開昭55−1
47106号公報、同58−24303号公報、同62
−121603号公報などがある。
【0004】これらの複合膜では酢酸セルロース非対称
膜よりも高い脱塩性能が得られており、同時に高い透過
水性も得られている。しかしながらこのようなポリアミ
ドを用いた半透膜は主鎖にアミド結合を有するため耐久
性が未だ不十分であり、膜の殺菌に用いられる塩素、過
酸化水素などで処理することにより脱塩性能や選択的な
分離性能の低下などの劣化が起こる。このため、使用に
際しては運転条件の制約が必要となる。
【0005】その他の半透膜として製膜技術の汎用性が
高く、また、原料の選択性の幅も広いビニル系化合物を
重合し作製した半透膜の研究もなされていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のよ
うなビニル系化合物を用い作製した半透膜の例では、膜
厚制御の問題などにより、溶質の高排除性能と水などの
溶媒の高透過性能とを両立することが困難であった。例
えばポリオレフィンを多孔質膜表面にコーティングした
ものでは、溶質の排除性能を高めると水の透過性が低下
するという問題があった。現在産業的に、半透膜の利用
においてはポンプに使用される電力および製造コストの
低減が強く求められており、透過水量の高い膜が求めら
れており、透過水量を向上させることが課題となってい
る。
【0007】また、透過水量を向上させたビニル系化合
物を用いて作製した半透膜においても、膜の殺菌に用い
られる塩素などに対する耐酸化性が充分ではなかった。
このように、現在までのところでは耐久性が高く、高分
離性、高透過性を満たす半透膜は得られていなかった。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を
解決するために、下記の構成を有する。すなわち、 「1. 下記AまたはBの特徴を有する二重結合をもつ
化合物を1種類以上重合してなる重合体が、厚みが1n
m以上10μm以下で多孔質膜上および/または膜中に
ある半透膜。 A.化合物が芳香環を有する場合には、化合物中の重合
可能な二重結合数をn(n≧1)、芳香環の上に局在す
る最高占有分子軌道付近の分子軌道の数をm(m≧1)
とするとき、最高占有分子軌道からn+m+1番目の分
子軌道のエネルギーが-0.42a.u.以下である。 B.化合物が芳香環を有しない場合には、化合物中の重
合可能な二重結合数をn(n≧1)、とするとき、最高
占有分子軌道からn+1番目の分子軌道のエネルギーが
-0.42a.u.以下である。 2. 1.5MPaの操作圧力で1500ppm塩化ナトリウ
ム水溶液および2000ppm硫酸マグネシウム水溶液の透過
水量がそれぞれ0.8m3/(m2・日)以上であることを
特徴とする前記の半透膜、 3. 該重合体が、エステル基、ケト基、スルホニル
基、カーボネート基、リン酸エステル基、スルホンアミ
ド基を少なくとも1つ含有することを特徴とする前記い
ずれかの半透膜、 4. 該化合物が芳香属環を含まないことものである前
記いずれかの半透膜、 5.AまたはBの特徴を有する二重結合をもつ化合物
が、少なくとも2つ以上の重合可能な二重結合を含む化
合物を必須成分とすることを特徴とする前記いずれかの
半透膜、 6. 該重合体が、カルボキシル基および/またはその
塩を含有することを特徴とする前記いずれかの半透膜、 7. 多孔質膜が、ポリスルホン誘導体、ポリフェニレ
ンスルフィドスルホン誘導体、ポリアクリルアミド誘導
体、ポリエーテルスルホン誘導体、セルロースエステ
ル、ポリ塩化ビニルあるいは塩素化塩化ビニルからなる
ことを特徴とする前記いずれかの半透膜、 8. 半透膜が平膜であることを特徴とする請求項1か
ら7のいずれかに記載の半透膜。
【0009】9. 1500ppm塩化ナトリウム水溶
液中の塩化ナトリウムの排除率が10%以上であること
を特徴とする前記いずれかの半透膜、 10. 多孔質膜の存在下で下記AまたはBの特徴を有
する二重結合を有する化合物を1種以上重合させて重合
体を得ることを特徴とする半透膜の製造方法。 A.化合物が芳香環を有する場合には、化合物中の重合
可能な二重結合数をn(n≧1)、芳香環の上に局在す
る最高占有分子軌道付近の分子軌道の数をm(m≧1)
とするとき、最高占有分子軌道からn+m+1番目の分
子軌道のエネルギーが-0.42a.u.以下である。 B.化合物が芳香環を有しない場合には、化合物中の重
合可能な二重結合数をn(n≧1)、とするとき、最高
占有分子軌道からn+1番目の分子軌道のエネルギーが
-0.42a.u.以下である。 11.重合体の厚みが1nm以上10μm以下である前
記半透膜の製造方法、 12. 半透膜が1.5MPaの操作圧力で1500ppm塩
化ナトリウム水溶液、2000ppm硫酸マグネシウム水溶液
の透過水量が0.8m3/(m2・日)以上であることを特
徴とする前記いずれかの半透膜の製造方法、 13. 重合方法が電磁波によるものであることを特徴
とする前記いずれかの半透膜の製造方法、 14. 該重合体が、エステル基、ケト基、スルホニル
基、カーボネート基、リン酸エステル基、スルホンアミ
ド基を少なくとも1つ含有することを特徴とする前記い
ずれかの半透膜の製造方法、 15.AまたはBの特徴を有する二重結合をもつ化合物
が、少なくとも2つ以上の重合可能な二重結合を含む化
合物を1種類以上含むことを特徴とする前記いずれかの
半透膜の製造方法、 16. 該重合体が、カルボキシル基および/またはそ
の塩を含有することを特徴とする請求項前記いずれかの
半透膜の製造方法、 17. 多孔質膜が、ポリスルホン誘導体、ポリフェニ
レンスルフィドスルホン誘導体、ポリアクリルアミド誘
導体、ポリエーテルスルホン誘導体、セルロースエステ
ル、ポリ塩化ビニルあるいは塩素化塩化ビニルからなる
ことを特徴とする前記いずれかの半透膜の製造方法、 18. 半透膜が平膜であることを特徴とする前記いず
れかの半透膜の製造方法、 19. 1500ppm塩化ナトリウム水溶液中の塩化
ナトリウムの排除率が10%以上であることを特徴とす
る請求項10から19のいずれかに記載の半透膜の製造
方法。」を提供するものである。上記構成によって、高
耐久性、高透過性、高分離性を有する膜を得ることがで
きる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明における半透膜とは、溶液
や分散系中の1部の成分は通すが他の成分は通しにくい
ような膜を意味する。
【0011】半透膜の透過水量は特に限定されるもので
はないが、半透膜を使用したシステムの簡素化、省スペ
ース化、造水コストの低下などの点から操作圧力が1.
5MPaにおいて0.8m3/(m2・日)以上であること
が好ましく、さらにエネルギーコストの低減の点から
1.0m3/(m2・日)以上であればさらに好ましく、
2.0m3/(m2・日)以上であればなお好ましい。
【0012】本発明の重合体を提供する、上記Aまたは
Bの特徴を有する二重結合をもつ化合物について説明す
る。重合可能な二重結合数をn(n≧1)、芳香環の上
に局在する最高占有分子軌道付近の分子軌道の数をm
(m≧0)(ただし芳香環を有しない場合(B)にはm
は0である)とするとき、最高占有分子軌道からn+m
+1番目の分子軌道とは、二重結合を含む化合物が重合
し半透膜を作成した後に、反応しやすい分子軌道を示
す。重合可能な二重結合を含む化合物の分子軌道計算を
行うと最高占有分子軌道は重合可能な二重結合上に存在
するが、重合を行い半透膜を作成すると二重結合はポリ
オレフィン鎖となり酸化剤と反応しなくなる。芳香環を
含む化合物では、二重結合上の分子軌道に続き、芳香環
上に局在(共鳴)し、他の部分にはほとんど電子がしみ
出していない分子軌道が存在する。この分子軌道は共鳴
により安定化されており反応しにくい。例えばこのよう
な分子軌道は、ベンゼンでは2個、ナフタレンでは4
個、ピロールで2個、ピリジンで1個である。このた
め、化合物の分子軌道から、重合可能な二重結合数と、
芳香環の上に局在する最高占有分子軌道付近の分子軌道
の数を最高占有分子軌道から差し引いた、n+m+1番
目の分子軌道のエネルギーレベルが本発明では重要であ
る。本発明ではこのn+m+1番目の分子軌道のエネル
ギーが−4.2a.u以下であると塩素による劣化が押
さえられる。より好ましくは−4.4a.u以下であ
る。
【0013】また、芳香環は反応しにくいが、例えば塩
素を用いると塩素置換反応が徐々に起きるため、二重結
合を有する化合物としては、芳香環をもつものが少ない
ほうが好ましい。重合体を与えるモノマーにおいて50
モル%以下、さらに10モル%以下であることが好まし
い。しかし、この反応によって重合体の主鎖は切断され
ないため、膜性能に与える影響は小さい。
【0014】本発明における重合可能な二重結合の例と
してビニル基、ハロゲン化ビニル基、ビニルエステル
基、その他のビニル誘導体、アクリル基、メタクリル
基、その他のアクリル誘導体などが挙げられるがこれら
に限定されるものではない。また、これら中でも重合反
応性の点からアクリル基、メタクリル基、その他のアク
リル誘導体を含有する化合物が好ましい。その中でも、
加水分解されにくいメタクリル基を含有する化合物がよ
り好ましい。このような二重結合を有する化合物であっ
て、AまたはBの特徴を有する化合物の例として、エチ
レン、プロピレン、ブテン、ペンテン、スチレン、ビニ
ルスルホン、p−クロロスチレン、p−シアノスチレ
ン、pーフルオロスチレン、p−メチルスチレン、p−
メトキシスチレン、4−ビニルスチレン、o−スチレン
スルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリ
ウム、m−スチレンスルホン酸ナトリウム、2−メチル
−5−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、3−ビニ
ルピリジン,4−ビニルピリジン,N−ビニルカルバゾ
ール、2−ビニル安息香酸、3−ビニル安息香酸、4−
ビニル安息香酸、ブタジエン、N−メチルマレイミドな
どのビニル基を含有する化合物、アクリル酸およびその
塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸
プロピル、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、メタ
クリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリ
ル酸エチル、メタクリル酸プロピル、2−メタクリロイ
ロキシエチルコハク酸、エチレングリコールジアクリレ
ート、1,3ブタンジオールジアクリレート、1,4ブ
タンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオール
ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレー
ト、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレ
ングリコールジメタクリレート、1,3ブタンジオール
ジメタクリレート、1,4ブタンジオールジメタクリレ
ート、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオ
ペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロール
プロパントリメタクリレート、などのアクリル基、メタ
クリル基その他のアクリル誘導体を含有する化合物、フ
ッ化ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、四フッ化エ
チレンなどのハロゲン化ビニル基を含有する化合物、安
息香酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル基を含
有する化合物などが挙げられるがこれらに限定されるも
のではない。
【0015】本発明の重合体を提供する二重結合を有す
る化合物としては、AまたはBの特徴を有する化合物の
他に、これらの特徴をもたない二重結合をもつ化合物も
使用できる。ただし、耐酸化性の観点から、二重結合を
有する化合物に対して、20モル%以下、さらに10モ
ル%以下、さらに1モル%以下であることが好ましい。
【0016】また、半透膜を水溶液の分離などに用いた
ときに水の選択的透過性を高めるために、重合体を提供
する二重結合を提供する化合物としてヘテロ原子や親水
性の高い官能基を含有する化合物および/またはヘテロ
環構造を有する化合物が好ましく使用される。ここで、
ヘテロ原子とは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原
子など炭素及び水素原子以外の原子を意味するものであ
る。これらのヘテロ原子の中でも酸素原子、窒素原子お
よび硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも1つを
含む上記化合物は上記効果が高くより好ましい。また、
上記のような原子を含有する官能基や親水性の高い官能
基として、アルコキシル基、カルボキシル基、カルボニ
ル基、ケト基、エステル基、カーボネート基、アミド
基、スルホンアミド基、シアノ基、ホルミル基、ヒドロ
キシル基、メルカプト基、アミノ基、イミノ基、アルキ
ルチオ基、スルフィニル基、スルホニル基、スルホ基、
ニトロ基、ニトロソ基、エーテル基、チオエーテル基、
リン酸エステル基などが挙げられる。これらの中で例え
ば、アミド基、チオエーテル基、スルフィニル基やエー
テル基などを含む化合物は化合物中の重合可能な二重結
合数をn(n≧1)、芳香環の上に局在する最高占有分
子軌道付近の分子軌道の数をm(m≧0)とするとき、
最高占有分子軌道からn+m+1番目の分子軌道が-0.4
2a.u.以上であることが多く、本発明の効果を得にく
い。作製した半透膜の耐塩素性が高いエステル基、ケト
基、スルホニル基、カーボネート基、リン酸エステル
基、スルホンアミド基やカルボキシル基及び/またその
塩がより好ましい。ここで、ケト基とは「岩波書店 理
化学辞典 第4版」に定義されているものがその例であ
り、ケト基とはケトンに由来するカルボニル基である。
【0017】二重結合を有する化合物または二重結合を
有する化合物の混合物を重合してなる重合体は化学的安
定性(耐薬品性など)の点からビニル系重合体からなる
ことが好ましく、架橋構造を有しておれば、さらに化学
的安定性や耐久性が向上するためより好ましい。ここ
で、ビニル系重合体とは、炭素−炭素間の二重結合を有
する化合物が重合したものを意味する。
【0018】本発明において、重合可能な化合物は、化
合物中の重合可能な二重結合数をn(n≧1)、芳香環
の上に局在する最高占有分子軌道付近の分子軌道の数を
m(m≧0)とするとき、最高占有分子軌道からn+m
+1番目の分子軌道のエネルギーが-0.42a.u.以下であ
れば特に限定されるものではない。二重結合を有する化
合物は、重合してできた重合体の特性を広げるために1
つ以上の重合可能な二重結合を含む化合物の2種類以上
の組合せでもよく、また、重合の際には、重合開始剤、
重合助剤、重合禁止剤やその他の添加剤を含んでいても
よく、重合反応性を高めるために重合開始剤、重合促進
剤等を添加する事が好ましい。二重結合を有する化合物
の混合物の保存安定性を向上させるために重合禁止材を
含むことが好ましい。ここで、重合開始剤、重合促進剤
とは特に限定されるものではなく、用いる化合物の構
造、重合手法などに合わせて適宜選択されるものであ
る。重合開始剤の例としてはアゾビスイソブチロニトリ
ルなどのアゾ化合物、過酸化ベンゾイルなどの過酸化
物、ベンゾフェノンや製品では日本化薬(株)社製の
“カヤキュア(Kayacure)(登録商標) BP-100”、
“カヤキュア(Kayacure)(登録商標) BMS”などのベ
ンゾフェノン誘導体、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキ
シ)-フェニル〕-2-ヒドロキシジ-2-メチル-1-プロ
パン-1-オンや製品ではチバガイギー社製の“イルガキ
ュア(登録商標)2959”、“イルガキュア(登録商
標)184”、“イルガキュア(登録商標)907”、
“イルガキュア(登録商標)651”、“イルガキュア
(登録商標)369”、“ダロキュア(登録商標)11
73”などのアセトフェノン誘導体、2、4-ジエチル
チオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサン
トンなどのチオキサントン誘導体、ビー・エー・エス・
エフ(BASF)社製“ルシリン(LUCIRIN)(登録商標)
TPO”などのアシルフォスフィンオキサイド誘導体、ベ
ンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル
誘導体、レドックス開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、ビ
ススルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スル
ホニウム塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、ア
ルキルリチウム、クミルカリウム、ナトリウムナフタレ
ン、ジスチリルジアニオンなどが挙げられるがこれらに
限定されるものではない。このような重合開始剤の中で
も、取り扱いの点からアゾ化合物、ベンゾフェノン誘導
体、アセトフェノン誘導体、アシルフォスフィンオキサ
イド誘導体が好ましく用いられる。 重合促進剤の例と
して水素引き抜き型開始剤と共に用いるアミン、アルコ
ール、エーテルなどの水素供与体や、二元系の開始剤で
用いられる増感色素などが挙げられる。
【0019】本発明の重合体は、強度、耐薬品性、耐久
性、半透膜の分離性等を向上させるため、二重結合を有
する化合物または二重結合を有する化合物の混合物が、
2つ以上の重合可能な二重結合を含む化合物を少なくと
も1種類以上含むことが好ましい。
【0020】また、コーティングなどを行う際に塗れ性
を高めるために界面活性剤などを添加しても良い。ここ
で界面活性剤とは特に限定されるものではなく、所望の
濡れ性、1つ以上の重合可能な二重結合を含む化合物の
構造などに合わせて適宜選択されるものである。
【0021】本発明の重合体の厚みを制御するために溶
媒を添加することが好ましい。ここで溶媒とは1つ以上
の重合可能な二重結合を含む化合物を希釈可能なもので
あれば特に限定されるものではない。溶媒の例として、
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノ
ールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケト
ン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチ
ル、酢酸ブチルなどのエステル類、ホルムアミド、ピリ
ジン、アセトニトリルなどのヘテロ原子を含有する化合
物、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ペンタンなどの
脂肪族炭化水素、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロ
ロエタン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、
ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエー
テル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのその他の
一般的な有機溶媒、水、二硫化炭素などその他の一般的
な溶媒などが挙げられるが特にこれらに限定されるもの
ではない。また、これらの溶媒は混合して用いても良
い。ただし、多孔質膜によっては上記溶媒に侵される場
合があるため、多孔質膜を侵さない溶媒を選択すること
が必要である。
【0022】本発明において半透膜の形態は、、化合物
中の重合可能な二重結合数をn(n≧1)、芳香環の上
に局在する最高占有分子軌道付近の分子軌道の数をm
(m≧0)とするとき、最高占有分子軌道からn+m+
1番目の分子軌道のエネルギーが-0.42a.u.以下である
化合物を1種類以上重合してなる重合体が、厚み1nm
以上10μm以下で多孔質膜上および/または膜中にあ
れば特に限定されるものではなく、その形態の例として
は平膜、中空糸などが挙げられる。中でも、平膜は高性
能の半透膜の製造が容易等の利点がありより好ましい。
また、機械的強度の向上をはかるときには他のものと一
緒になっていてもよく、その時用いられる物の例として
は布、不織布、紙などが挙げられる。
【0023】本発明の重合体の厚みは、目的とする半透
膜の性能により適宜決定されるが、1nm以上10μm
以下が好ましい。しかし、膜厚が薄すぎると機械的強度
が低くなり耐久性が低下したり、重合体に欠点が発生す
る可能性が生じ、逆に厚すぎると透過物質の透過速度が
遅くなってしまう。そのため膜厚は1nm以上10μm
以下が必要であり、より透過速度を向上させたい場合に
は1nm以上5μm以下が好ましく、さらに透過速度を
向上させ、同時に欠点が発生する可能性を減少させたい
場合には5nm以上1μm以下が好ましい。重合体の厚
みは走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡による観察写
真などを解析して測定できる。膜厚の測定方法として例
えば以下の様な方法がある。膜の裏うち材を剥がした
後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルと
する。このサンプルに白金または白金-パラジウムまた
は4酸化ルテニウム、好ましくは4酸化ルテニウムを薄
くコーティングして3〜6kVの加速電圧で高分解能電
界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観
察することができる。高分解能電界放射型走査電子顕微
鏡は、日立製S−900型電子顕微鏡などが使用でき
る。得られた電子顕微鏡写真から観察倍率を元に膜厚を
決定する。なお、本発明における厚みの値は平均値を意
味するものである。
【0024】本発明において、多孔質膜とは多数の微細
な孔を有しておれば特に限定されるものではない。作製
した半透膜の耐久性と選択的に透過する物質の透過速度
を高めるために、均一な微細な孔あるいは片面からもう
一方の面まで徐々に大きな微細な孔を有する形態の多孔
質膜が好ましい。このような多孔質膜の微細孔の大きさ
は特に限定されるものではないが、より微細な孔を有す
る面の孔径が小さすぎると透過物質の透過速度を低下さ
せてしまい、逆に孔径が大きすぎると重合体の形態保持
性が低下したり重合体中に欠点を発生させる可能性があ
るため、より微細な孔を有する面の孔径が1nm以上1
00nm以下であることが好ましい。多孔質膜の厚みは
特に限定されるものではないが、通常1μm〜数mmで
あり、膜強度の面から10μm以上、 扱いやすさやモ
ジュール加工のしやすさの面で100μm以下が好まし
い。また、多孔質の膜厚および表面の孔の孔径は重合体
と同様にして測定することができる。多孔質膜の素材は
特に限定されるものではないが、通常ポリスルホン誘導
体、ポリフェニレンスルフィドスルホン誘導体、ポリア
クリルアミド誘導体、ポリエーテルスルホン誘導体、セ
ルロース系ポリマー、ポリアミド誘導体、ポリエステル
誘導体、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルホン誘導
体、ポリフェニレンオキシド誘導体などのホモポリマー
あるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして用い
られる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セル
ロース、硝酸セルロースなどのセルロースエステルな
ど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピ
レン、ポリ塩化ビニル、塩素化塩化ビニル、ポリアクリ
ロニトリルなどが使用できる。中でも成型性、製造コス
トなどの点からポリスルホン誘導体、ポリフェニレンス
ルフィドスルホン誘導体、ポリアクリルアミド誘導体、
ポリエーテルスルホン誘導体、セルロースエステル、ポ
リ塩化ビニルあるいは塩素化塩化ビニルなどが好まし
く、ポリスルホン誘導体、ポリフェニレンスルフィドス
ルホン誘導体、、ポリエーテルスルホン誘導体、ポリア
ミド、セルロースエステルなどはより好ましく、化学
的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易なポリス
ルホンはなお好ましい。また、微多孔性支持膜は、布、
不織布、紙などで裏うちされていてもよい。多孔質膜は
例えば、ポリスルホンのジメチルホルムアミド(DM
F)溶液を密に織ったポリエステル布あるいは不織布の
上に一定の厚さに注型し、一定時間空気中で表面の溶媒
を除去した後、水などの凝固液中で凝固させることによ
って得ることができるが本発明の多孔質膜はこれらの作
製方法で限定されるものではない。
【0025】次に本発明における半透膜の製造方法を述
べる。
【0026】本発明における、化合物中の重合可能な二
重結合数をn(n≧1)、芳香環を含有する場合、芳香
環の上に局在する最高占有分子軌道付近の分子軌道の数
をm(m≧0)とするとき、最高占有分子軌道からn+
m+1番目の分子軌道のエネルギーが-0.42a.u.以下で
ある、少なくとも1つ以上の重合可能な二重結合を含む
化合物を少なくとも1種類以上含む二重結合を有する化
合物または二重結合を有する化合物の混合物の重合方法
は特に限定されるものでなく、熱重合、電磁波重合、電
子線重合、放射線重合、プラズマ重合、その他の一般的
な重合方法により重合を行うことができる。ここで、電
磁波とは赤外線、紫外線、X線、γ線等を含み、「岩波
書店 理化学辞典 第4版(1987年発行)、864
頁、電磁波」の項目に定義されているものがその例であ
る。実際に重合を行う際は、、化合物中の重合可能な二
重結合数をn(n≧1)、芳香環の上に局在する最高占
有分子軌道付近の分子軌道の数をm(m≧0)とすると
き、最高占有分子軌道からn+m+1番目の分子軌道の
エネルギーが-0.42a.u.以下である化合物、1種類以上
からなる混合物に含まれるものの構造、生産性、コスト
などにより適宜最適な重合方法を選択すればよいが、ラ
ンニングコストなどの点から電磁波による重合が好まし
く、さらには赤外線重合や紫外線重合がより好ましい。
これらの電磁波を用いることにより多孔質膜表面付近を
選択的に重合することが可能になり、高い透過水量を達
成することができる。ここで、赤外線、紫外線とは先に
説明した「岩波書店 理化学辞典 第4版」に定義され
ているものがその例である。実際に赤外線、紫外線を用
い重合を行う際、これらの光源は選択的にこれらの光を
発生する必要はなく、これらの電磁波を含むものであれ
ばよい。しかし、重合時間の短縮、重合条件の制御など
のしやすさの点から、これらの電磁波の強度がその他の
波長域の電磁波に比べ高いことが好ましい。本発明の重
合体の厚み、形態はそれぞれの重合条件によっても大き
く変化することがあり、電磁波による重合であれば光の
波長、強度、被照射物との距離、処理時間により大きく
変化することがある。そのためこれらの条件は適宜最適
化を行う必要がある。
【0027】化合物中の重合可能な二重結合数をn(n
≧1)、芳香環の上に局在する最高占有分子軌道付近の
分子軌道の数をm(m≧0)とするとき、最高占有分子
軌道からn+m+1番目の分子軌道のエネルギーが-0.4
2a.u.以下である化合物を1種類以上重合してなる重合
体の製造方法は特に限定されるものではないが、その例
として多孔質膜を二重結合を有する化合物あるいは二重
結合を有する化合物の混合物中に浸漬し、引き上げ、そ
れに熱をかけたり、同時にまたは別に紫外線や赤外線を
照射し重合する事ができる。また、重合体を薄く、均一
に、ピンホールなく作製する方法として、二重結合を有
する化合物あるいは二重結合を有する化合物の混合物と
それと混ざらない溶液あるいは固体を接触させ、その界
面で重合体を作製する方法もある。このとき界面は多孔
質膜中あるいは膜上になるようにする。
【0028】重合体の厚みは二重結合を有する化合物の
混合物の組成、引き上げ速度、赤外線、紫外線の処理時
間などで制御することができる。厚みが薄く、架橋構造
が導入された重合体を作製する際、たとえば10μm以
下の架橋構造を有する重合体を作製する際には重合体の
機械的強度を保つため多孔質膜上あるいは膜中で重合す
る事が好ましい。なお、ここに挙げた手法はあくまで例
であり、半透膜の製膜方法はこれらに限定されるもので
はない。
【0029】透過水量を高めるために重合体を薄くする
ことが望まれる場合がある。ここではその例として二重
結合を有する化合物あるいは二重結合を有する化合物の
混合物を多孔質膜上および/または膜中で紫外線を用い
重合する場合を挙げ説明する。
【0030】半透膜の選択的透過物質の透過速度を高め
るために、まず、1つ以上の重合可能な二重結合を含む
化合物を多孔質膜に含浸させる。このとき、作製した重
合体の厚みを10μm以下にしたいときは水、あるいは
一般的な有機溶媒を用い希釈することが好ましいが、1
つ以上の重合可能な二重結合を含む化合物の濃度は50
重量%以下が好ましく、より薄くしたいときは20重量
%以下にするのが好ましく、さらに薄くしたいときは1
0重量%以下にするのが好ましい。次に浸漬した多孔質
膜をディップ装置により引き上げる。このとき、10μ
m以下にしたいときは100cm/min以下にするの
が好ましく、より薄くしたいときは50cm/min以
下が好ましく、さらに薄くしたいときは30cm/mi
n以下にするのが好ましい。また、その他の手法として
エアーナイフなどの風量などにより膜厚を制御すること
も可能である。次に引き上げた多孔質膜に紫外線を照射
する。このとき作製した重合体の厚みを10μm以下に
したいときはUV照射時間を30分以下にするのが好ま
しく、より薄くしたいときは10分以下、さらに薄くし
たいときは5分以下が好ましい。なお、UV処理時間を
長くすると作製した重合体の構造が破壊され、透過水量
が増加することもある。ここで使用する紫外線照射装置
は特に限定されるものではなく、その例として高圧水銀
灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、低圧水銀
灯、エキシマランプなどが挙げられる。中でも高効率で
低波長の紫外線を照射できる低圧水銀灯、エキシマラン
プは薄膜形製性が高くより好ましい。
【0031】本発明の半透膜は、 スパイラル、チュー
ブラー、プレート・アンド・フレームのモジュールに組
み込んで、また中空糸は束ねた上でモジュールに組み込
んで使用することができるが、本発明はこれらの使用形
態に限定されるものではない。
【0032】本発明の半透膜を使用する際、装置の簡素
化、膜交換などの使用時の作業の簡略化、膜の充填効率
向上などの点からモジュール内に組み込んで使用するこ
とがあるが使用する際の圧力は特に限定されるものでは
ないが高すぎると膜が変形し、特性が変化する可能性が
あり、また、低すぎると選択的な分離性能が低下する可
能性があるため0.01〜20MPaが好ましく、より
好ましくは0.05〜10MPaである。
【0033】また、選択的に分離するものは特に限定さ
れるものではなく、水溶液、有機物を含有する溶液など
が挙げられるがなかでも水溶液に対する効果が高く、特
に高濃度かん水、海水の淡水化に効果が大きい。また、
耐塩素性に優れることから塩素濃度が高い水の浄化にも
効果が高い。例えば上水の浄化や食品製造用水への適用
が可能である。
【0034】半透膜の分離性能は特に限定されるもので
はなく、用途に応じ適宜設定されるものであるが、低す
ぎると用途が限定されるため、1500ppmの塩化ナ
トリウム水溶液中の塩化ナトリウムの排除性能、200
0ppm硫酸マクネシウム水溶液中の硫酸マグネシウム
の排除性能が10%以上であれば好ましく、50%以上
であればより好ましく、70%以上であればさらに好ま
しい。この時の操作圧力は特に限定されるものではない
が0.01MPa以上1.5MPa以下で上記排除性能
が満たされればなお好ましい。
【0035】
【実施例】以下に実施例によって本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定
されるものではない。
【0036】本発明における分子軌道のエネルギーは以
下の方法により求めた。 (1)非経験的分子軌道計算の手法 制限的ハートリーフォック法(RHF法)を使用。 (2)基底関数系 基底関数系は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原
子、については、ポープル等によって示された基底関数
系である4-31G*(アール.ディッチフィールド、ダブリ
ュー.ジェー.ヘーレ、ジェー.エー.ポープル、ジャ
ーナル ケミカル フィジックス、54巻724ページ
(1971)(R.Ditchfield, W.J.Hehre, J. A. Pople,
J.Chem.Phys.,vol54,p724(1971)))を用いる。それ以外
の原子の基底関数は、藤永等によって示されている基底
関数系(ガウシアン ベーシスセット フォー モレキ
ュラー カルキュレーション 、藤永著、エルスビアー
(1984年);gaussian basis sets for molecular
calculations , edit byS. Hujinaga et al , Elsevier
(1984))等の中に記載される各原子の基底関数群のうち
で、最もエネルギー準位が低い基底関数系を選択する。
該基底関数の原子価部分を原子価を記述する関数の数が
N個の場合、内殻核部分をN−1個、外殻部分を1個の
2つに分割し、さらに藤永等が同書に示している、分極
関数を1つ用いる場合に使用する関数系を加え、DZ+
Pの基底関数系としたものを使用。 (3)分子構造の決定 エネルギー勾配法によって分子構造の最適化を実行し、
その結果得られた最安定構造を使用。 (4)使用ソフトと計算の収束条件 Gaussian Inc. 製のGaussian94を用いた。最適化計算の
キーワードはFOPTを用いた。SCFの収束条件は
0.1kcal/molとし、構造最適化計算の力の収
束条件は8.0×10−18Nとする。また、その他の
計算時に必要となるしきい値等のパラメーターは、ソフ
トウエアの標準値を使用。 (5)ハードウエア デジタル・イクイップメント社製のエンジニアリングワ
ークステーションで実行した。実施例で用いたモノマー
の分子軌道計算を上記方法に従い行った結果を表1に示
す。
【0037】なお、以下の実施例において半透膜の排除
率(Rej)は次式1で計算され、半透膜の透過速度(Flu
x)は次式2で計算されるものである。 Rej(%)={(供給液の濃度−透過液の濃度)/供給液の濃度}×100 式1 Flux(m3・m-2・日−1)=(一日の透過液量)/(膜面積) 式2
【0038】参考例1 本発明において使用した繊維で補強した多孔質膜(以下
繊維補強多孔質膜と称する)は、以下の手法によりし
た。
【0039】タテ30cm、ヨコ20cmの大きさのポリエ
ステル繊維からなるタフタ(タテ糸、ヨコ糸とも150
デニ−ルのマルチフィラメント糸、織密度タテ90本/
インチ、ヨコ67本/インチ、厚さ160μm)をガラ
ス板上に固定し、その上にポリスルホン(アモコ社製の
Udel P−3500)の15重量%ジメチルホルム
アミド(DMF)溶液を200μの厚みで室温(20
℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放
置することによって繊維補強多孔質膜をする。このよう
にして得られた繊維補強多孔質膜の純水透過係数は、圧
力0.1MPa、温度25℃で測定して0.005〜0.
01kg/cm2・sec・atm(約0.001〜0.
002g/(cm2・sec・MPa)であった。また、
得られた繊維補強多孔質膜の表面の孔径は20〜50n
mであった。
【0040】実施例1 参考例1に従って製造した繊維補強多孔質膜をアクリル
酸3.8重量%、エチレングリコールジメタクリレート
(共栄社化学(株)社製ライトエステルEG)1.2重
量%、”イルガキュア2959”(チバガイギー社製重
合開始剤)0.3重量%を含むメタノール溶液中に30
秒間浸漬した。ディッピング法により該多孔質膜を引き
上げ速度20cm/minで水溶液中から引き上げ、1
72nmの紫外線が照射出来るウシオ電機社製エキシマ
ランプ UER20−172を用い、ランプと多孔質膜
の距離を1cmに設定し紫外線を3分照射し重合体を多
孔質膜表面に作成した後、0.1重量%の水酸化ナトリ
ウム水溶液に10分浸漬し半透膜を作製した。
【0041】このようにして得られた半透膜を、塩酸ま
たは水酸化ナトリウムでpH6.5に調整した1500
ppm食塩水、2000ppm硫酸マグネシウムを原水
とし、1.5MPa、25℃の条件下で逆浸透テストを
行った結果、表2に示した性能が得られた。また、この
時得られた重合体の厚みはUHR−FE−SEMで確認
を行ったところ平均で500nmであった。
【0042】実施例2 参考例1で作製した繊維補強多孔質膜をアクリル酸2.
8重量%、1.6ヘキサンジアクリレート2.2重量
部、”イルガキュア2959”0.3重量%を含む水溶
液中に浸漬し、UV照射時間を1分にする以外は実施例
1と同様にして半透膜を作製した。また、このようにし
て得られた半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、
表2に示す性能が得られた。
【0043】なお、この時得られた重合体の厚みをUH
R−FE−SEMで確認を行ったところ平均で500n
mであった。
【0044】実施例3 エチレングリコールジメタクリレートを4,4’−ジメ
タクリルジフェニルスルホンに代える以外は実施例1と
同様にして半透膜を作製した。また、このようにして得
られた半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表2
に示す性能が得られた。
【0045】なお、この時得られた重合体の厚みをUH
R−FE−SEMで確認を行ったところ平均で500n
mであった。
【0046】実施例4 実施例1において、紫外線を照射する代わりに松下電器
産業製赤外線電球Tを用い、ランプと多孔質膜の距離を
20cmにして赤外線を5分間照射する以外は実施例1
と同様にして半透膜を作製した。また、このようにして
得られた半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表
2に示す性能が得られた。
【0047】なお、この時得られた組成物の厚みをUH
R−FE−SEMで確認を行ったところ平均で500n
mであった。
【0048】比較例1 エチレングリコールジメタクリレートを、下記構造式を
有する化合物9EG−Aに変更した以外は実施例1と同
様にして半透膜を作製した。
【化1】 また、このようにして得られた半透膜を実施例1と同様
にして評価を行い、表2に示す性能が得られた。
【0049】実施例1〜4、比較例1の膜をpHを7に
調整した500ppmの塩素水溶液に1週間浸し、耐性試験を
行った。結果を表2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】表2から、本発明の半透膜は透水性、耐塩
素性に優れていることがわかる。
【0053】
【発明の効果】本発明により、耐塩素性、透水性に優れ
た半透膜およびその製造方法を提供することができ、こ
の膜を用いることで、工業的には低ランニングコスト
化、低コスト化、省エネルギー化という改善が期待され
る。
フロントページの続き Fターム(参考) 4D006 GA03 HA01 HA21 HA42 HA61 KE07Q MA03 MA06 MA22 MA31 MB02 MB11 MC16 MC26 MC27 MC36X MC37X MC38 MC48X MC61 MC62X MC63 MC71 MC72 MC75 MC84 NA05 NA42 NA43 NA45 NA46 PB03 PB06 PB12 PC11

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記AまたはBの特徴を有する二重結合
    をもつ化合物を1種類以上重合してなる重合体が、厚み
    が1nm以上10μm以下で多孔質膜上および/または
    膜中にある半透膜。 A.化合物が芳香環を有する場合には、化合物中の重合
    可能な二重結合数をn(n≧1)、芳香環の上に局在す
    る最高占有分子軌道付近の分子軌道の数をm(m≧1)
    とするとき、最高占有分子軌道からn+m+1番目の分
    子軌道のエネルギーが-0.42a.u.以下である。 B.化合物が芳香環を有しない場合には、化合物中の重
    合可能な二重結合数をn(n≧1)、とするとき、最高
    占有分子軌道からn+1番目の分子軌道のエネルギーが
    -0.42a.u.以下である。
  2. 【請求項2】 1.5MPaの操作圧力で1500ppm塩化
    ナトリウム水溶液および2000ppm硫酸マグネシウム水溶
    液の透過水量がそれぞれ0.8m3/(m2・日)以上であ
    ることを特徴とする請求項1記載の半透膜。
  3. 【請求項3】 該重合体が、エステル基、ケト基、スル
    ホニル基、カーボネート基、リン酸エステル基、スルホ
    ンアミド基を少なくとも1つ含有することを特徴とする
    請求項1または2記載の半透膜。
  4. 【請求項4】 該化合物が芳香属環を含まないこともの
    である請求項1から3いずれかに記載の半透膜。
  5. 【請求項5】AまたはBの特徴を有する二重結合をもつ
    化合物が、少なくとも2つ以上の重合可能な二重結合を
    含む化合物を必須成分とすることを特徴とする請求項1
    から4いずれかに記載の半透膜。
  6. 【請求項6】 該重合体が、カルボキシル基および/ま
    たはその塩を含有することを特徴とする請求項1から5
    のいずれかに記載の半透膜。
  7. 【請求項7】 多孔質膜が、ポリスルホン誘導体、ポリ
    フェニレンスルフィドスルホン誘導体、ポリアクリルア
    ミド誘導体、ポリエーテルスルホン誘導体、セルロース
    エステル、ポリ塩化ビニルあるいは塩素化塩化ビニルか
    らなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記
    載の半透膜。
  8. 【請求項8】 半透膜が平膜であることを特徴とする請
    求項1から7のいずれかに記載の半透膜。
  9. 【請求項9】 1500ppm塩化ナトリウム水溶液中
    の塩化ナトリウムの排除率が10%以上であることを特
    徴とする請求項1から8のいずれかに記載の半透膜。
  10. 【請求項10】 多孔質膜の存在下で下記AまたはBの
    特徴を有する二重結合を有する化合物を1種以上重合さ
    せて重合体を得ることを特徴とする半透膜の製造方法。 A.化合物が芳香環を有する場合には、化合物中の重合
    可能な二重結合数をn(n≧1)、芳香環の上に局在す
    る最高占有分子軌道付近の分子軌道の数をm(m≧1)
    とするとき、最高占有分子軌道からn+m+1番目の分
    子軌道のエネルギーが-0.42a.u.以下である。 B.化合物が芳香環を有しない場合には、化合物中の重
    合可能な二重結合数をn(n≧1)、とするとき、最高
    占有分子軌道からn+1番目の分子軌道のエネルギーが
    -0.42a.u.以下である。
  11. 【請求項11】重合体の厚みが1nm以上10μm以下
    である請求項11記載の半透膜の製造方法。
  12. 【請求項12】 半透膜が1.5MPaの操作圧力で15
    00ppm塩化ナトリウム水溶液、2000ppm硫酸マグネシウム
    水溶液の透過水量が0.8m3/(m2・日)以上であるこ
    とを特徴とする請求項10または11記載の半透膜の製
    造方法。
  13. 【請求項13】 重合方法が電磁波によるものであるこ
    とを特徴とする請求項10から12いずれかに記載の半
    透膜の製造方法。
  14. 【請求項14】 該重合体が、エステル基、ケト基、ス
    ルホニル基、カーボネート基、リン酸エステル基、スル
    ホンアミド基を少なくとも1つ含有することを特徴とす
    る請求項10から13のいずれかに記載の半透膜の製造
    方法。
  15. 【請求項15】AまたはBの特徴を有する二重結合をも
    つ化合物が、少なくとも2つ以上の重合可能な二重結合
    を含む化合物を1種類以上含むことを特徴とする請求項
    10から15いずれかに記載の半透膜の製造方法。
  16. 【請求項16】 該重合体が、カルボキシル基および/
    またはその塩を含有することを特徴とする請求項10か
    ら15のいずれかに記載の半透膜の製造方法
  17. 【請求項17】 多孔質膜が、ポリスルホン誘導体、ポ
    リフェニレンスルフィドスルホン誘導体、ポリアクリル
    アミド誘導体、ポリエーテルスルホン誘導体、セルロー
    スエステル、ポリ塩化ビニルあるいは塩素化塩化ビニル
    からなることを特徴とする請求項10から16のいずれ
    かに記載の半透膜の製造方法。
  18. 【請求項18】 半透膜が平膜であることを特徴とする
    請求項10から17のいずれかに記載の半透膜の製造方
    法。
  19. 【請求項19】 1500ppm塩化ナトリウム水溶液
    中の塩化ナトリウムの排除率が10%以上であることを
    特徴とする請求項10から18のいずれかに記載の半透
    膜の製造方法。
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