JP2018064486A - 歯髄幹細胞の培養方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】動物の歯からの歯髄幹細胞の分離培養において、簡便かつ有効な方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明は、動物の歯髄幹細胞を培養する方法であって、a)採取した歯髄をプロテアーゼ溶液で消化して幹細胞を含む細胞懸濁液を得る工程、b)前記細胞懸濁液を中空糸膜の中空部に充填して幹細胞を中空糸膜表面に接着させる工程、c)中空糸膜の中空部に培養液を潅流して幹細胞を培養する工程を含むことを特徴とする歯髄幹細胞の培養方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、動物、特に犬または猫の歯髄幹細胞を効率よく培養する方法に関する。
骨髄液等に含まれている間葉系幹細胞は、増殖能が高く、軟骨・筋肉・肝細胞・神経細胞・心筋細胞・血管内皮細胞等、種々の細胞に分化することが知られており、再生医療、特に細胞移植治療用の細胞源としての有用性が報告され、一部で既に実用化されている。
間葉系幹細胞は、骨髄液や脂肪組織から採取されることが多いが、これらの組織を得るには外科的侵襲を伴うことになる。そこで、臍帯、胎盤、歯など、従来は廃棄されていた組織を利用することが提唱されている。臍帯や胎盤組織が入手出来るのは、出産時に限られるのに対し、歯、特に脱落乳歯や抜歯された第三大臼歯(親知らず)は、その入手機会が非常に多いことから、歯髄細胞バンクが設立されるに至っており、再生医療用の細胞源として近年注目を集めている。
また、歯髄幹細胞は、上記のように簡便に採集可能であるだけでなく、その性質においても、骨髄由来間葉系幹細胞よりも増殖性が高く、分化能も同等以上であることがわかっており、今後ますます有効な利用手段が開発されることが期待できる。
ところで、再生医療への注目は人の医療に限ったことではなく、近年、獣医療の発展に伴い急速に高齢化が進んだ犬や猫に対しても積極的に再生医療が実施されつつあり、細胞源や安全性等の問題は人の再生医療とほぼ同じものである。このため、人の再生医療と同様になるべく簡便、低侵襲な方法で、良い性質の幹細胞を得ることが求められており、犬や猫の歯からも幹細胞を効率よく分離、培養する有効な手段が求められている。
乳歯は、特に良質の幹細胞源として期待される。しかし、幼犬や幼猫といった小さな動物の乳歯は人のそれと比べるとかなり小さく、得られる歯髄組織もごく僅かである。また、幼犬や幼猫は脱落した乳歯をそのまま飲み込むことも多いため、乳歯を得る機会は多くない。従って、このように貴重な乳歯から効率よく幹細胞を分離、培養する有効な方法が求められている。
国際公開2013/146992
動物、特に犬または猫の歯からの歯髄幹細胞の分離培養において、簡便かつ有効な方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す方法により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)動物の歯髄幹細胞を培養する方法であって、
a)採取した歯髄をプロテアーゼ溶液で消化して幹細胞を含む細胞懸濁液を得る工程
b)前記細胞懸濁液を中空糸膜の中空部に充填して幹細胞を中空糸膜表面に接着させる工程
c)中空糸膜の中空部に培養液を潅流して幹細胞を培養する工程
を含むことを特徴とする歯髄幹細胞の培養方法。
(2)前記動物がイヌまたはネコであることを特徴とする(1)に記載の歯髄幹細胞の培養方法。
(3)前記プロテアーゼがコラゲナーゼおよび/またはディスパーゼであることを特徴とする(1)または(2)に記載の歯髄幹細胞の培養方法。
(4)前記中空糸膜が疎水性樹脂のみからなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の歯髄幹細胞の培養方法。
(5)前記培養液が動物血清を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の歯髄幹細胞の培養方法。
本発明により、動物、特に犬または猫の歯から歯髄幹細胞を高効率に分離、培養することが可能となる。
細胞培養容器(中空糸膜モジュール)の一例を示す模式図である。 細胞培養装置の一例を示す模式図である。 犬の乳歯より採取された歯髄幹細胞を培養した後の顕微鏡観察像
本発明において、歯髄とは、歯の歯髄腔を満たす疎繊維性結合組織のことをいう。
歯髄を採取するための歯は、好ましくは抜歯(脱落)後24時間以内、より好ましくは抜歯(脱落)後12時間以内のものが好ましい。
(歯髄の採取)
自然に脱落した乳歯又は抜歯した乳歯をクロロヘキシジンまたはイソジン溶液に浸して殺菌した後、培地中に回収する。続いて、生食注水下にて、歯科用バーを用いて乳歯を必要に応じて分割する。次に、歯科用ファイルを用いて歯髄を採取し、培地中に回収する。
(プロテアーゼ処理)
回収した歯髄に、プロテアーゼとしてコラゲナーゼおよび/またはディスパーゼを作用させる。例えば、培地中にコラゲナーゼ3mg/mlとディスパーゼ4mg/mlを添加し、37℃で1時間放置する。このようにプロテアーゼ処理した後、ガーゼろ過またはセルストレーナ(100μmメッシュ)を通し、夾雑成分を除去する。
(幹細胞の培養)
得られた細胞は、洗浄せず、培養容器に播種する。培養容器をインキュベータ内に移し、培養する(37℃、5%CO)。培養容器としては、培養皿やフラスコ、中空糸膜モジュールなどを用いることができるが、中空糸膜モジュールを用いるのが好ましい。従来、得られた細胞を培養皿等の培養容器に播種する際には、コラゲナーゼやディスパーゼ(プロテアーゼ)を予め除去しておく必要があった。しかし、本発明においては、細胞培養容器として中空糸膜モジュールを用いることにより、プロテアーゼを除去することなく細胞を培養することを可能とした。すなわち、犬や猫などの動物からの歯髄由来の幹細胞は、少量のため細胞のロスに繋がる操作は最小限に止めたい。本発明においては、細胞培養容器として特定の透過特性を有する中空糸膜を内蔵したモジュール(中空糸膜モジュール)を用いることにより、貴重な細胞の損失を抑えつつ、プロテアーゼを速やかに系外に排出できるため、幹細胞を高効率に培養、増殖させることができる。また、細胞培養容器として中空糸膜モジュールを用いることにより、膜表面に接着しない浮遊細胞等の目的外の細胞を培養液の流れとともに簡単に除去することができるメリットもある。また、中空糸膜モジュールを用いる他のメリットとして、細胞数が少ない初期段階においては小型のモジュールを用いて培養を行い、細胞数が増えるに従いモジュールを大型のものに交換していくなど、継代培養がやりやすいことが挙げられる。
(中空糸膜)
本発明において、中空糸膜の材料は、細胞を膜表面に保持でき、溶液や低分子の物質を透過できるものであれば特に限定されず、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、再生セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、フッ素系樹脂、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。また、これらの誘導体が主成分であっても良い。また、中空糸膜は、これらの素材に化学的に修飾を加えたものであっても良く、例えば、親水化処理されたものでもよい。親水化処理することにより、培養細胞への培養液等の液体成分の供給が容易になる。中空糸膜を親水化処理する方法としては、例えば、中空糸膜をポリビニルピロリドンやヒドロキシアルキルセルロース、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体等の親水性高分子や、グリセリン、エタノールで処理する方法が挙げられる。また、中空糸膜への細胞の接着向上のため、コラーゲンやフィブロネクチン等の細胞接着因子を表面にコーティングしたものでも良い。なお、ポリスルホン系樹脂等の疎水性樹脂からなる中空糸膜を用いると、血清中に含まれる細胞接着因子が速やかに膜表面に吸着されるため本発明において好ましく用いられる。
本発明において、中空糸膜の内径は、100〜1000μmが好ましく、150〜500μmがより好ましい。膜厚は、中空糸膜が適度な強度を保ち、かつ物質の透過性に大きな支障がない範囲で設定すればよく、10〜150μm程度が好ましい。中空糸膜の内側に細胞を播種し、培地を潅流する培養を行う場合は、中空糸膜の内径は、二次元的な効果として、細胞の播種、増殖する面積、細胞密度だけでなく、三次元的な効果であるコンパクト性のみならず、培地の流れ、線速度、せん断力などに影響する設計や操作条件と関わる事項となることから、培養容器として中空糸膜モジュールを用いた培養のメリットを活かす要件となる。
中空糸膜の孔径は、細胞は通過させないが、水、塩類、タンパク質などの培養液成分は通過させる孔径であればよく、培養という面を考慮すると物質交換の効率のよい比較的大きな孔径を有する方が好ましい。具体的には、平均孔径が0.001〜0.5μm程度であることが好ましく、0.01〜0.1μm程度がより好ましい。また、分画分子量(篩係数が0.1未満となる分子量)は、1〜100万程度であることが好ましく、2〜20万程度であれば、より好ましい。なお、本発明において、中空糸膜の構造は、特に限定されるものではなく、均質構造でもよいし、不均質(非対称)構造でもよい。
本発明において、中空糸膜の透水性についても、特に制限はないが、好ましくは10〜5000mL/m/hr/mmHgである。透水性が小さいと十分な物資移動を発現できない。また、透水性が大きすぎると、中空糸膜の内部や外部流路に培地などを流した場合に膜間圧力差が生じ、意図せずろ過が発生し流れが偏ってしまったり、中空糸膜の長さ方向で流れの淀み(分布)ができてしまうため好ましくない。
(中空糸膜モジュール)
本発明において、細胞培養容器として用いる中空糸膜モジュールは、例えば、筒状容器に数本〜数万本の中空糸膜を格納することにより作製することができる。このような中空糸膜モジュールは、単位容積あたりの培養面積を非常に大きくすることができ、また培養操作も簡便化することができるため、効率よく細胞培養を実施することが出来る。
前記中空糸膜モジュールを細胞培養容器として用いるには、例えば、図1に示すような4つの開口部(端部導管および側部導管)を有するモジュールケース3に複数の中空糸膜4が内蔵された構成とするのが好ましい。複数の中空糸膜4は、両端において各中空糸膜の内腔と外腔を分離した状態で、かつ中空糸膜の中空部を閉塞しないようにシール材(例えば、ポリウレタン系ポッティング剤)によりモジュールケース端部に接着固定されている。すなわち、前記4つの開口部のうち、2つの端部導管1aおよび1bは、中空糸膜の中空部(内腔)と連通しており、前記端部導管1aまたは1bの一方から導入された培養液などが中空糸膜内腔を通ってもう一方の端部導管1bまたは1aから導出される(すなわち、一方向に流れる)ように構成されている。一方、前記開口部のうち、残りの2つの側部導管2aおよび2bは、前記モジュールケース3の内側であって、かつ前記中空糸膜の外腔である空間(以下、「外腔側」とも称する)と連通しており、前記側部導管2aまたは2bの一方から導入された培養液などが外腔側を通ってもう一方の側部導管2bまたは2aから導出される(すなわち、一方向に流れる)ように構成されている。
(細胞培養システム)
前記中空糸膜モジュールや培養液貯留容器、ペリスタポンプなどにより構成される培養システムをCOインキュベーター内に設置し、本発明の実施の一つの態様例としたものを図2に示す。図2において、5および6はそれぞれ、培養液貯留容器である。培養液貯留容器5からは、中空糸膜モジュール7の端部導管1aに、流路(回路)が接続され、培養液貯留容器5に入っている培養液(培地)が中空糸膜の中空部(内腔側)に送液できるようになっている。他方、培養液貯留容器6からは、中空糸膜モジュール7の側部導管2aに、流路が接続され、培養液貯留容器6に入っている培地が中空糸膜の外腔側に送液できるようになっている。中空糸膜モジュール7の内腔側を通過した培養液は、端部導管1bから排出され、ペリスタポンプ8を経由して、回収容器11まで流路が接続されている。一方、中空糸膜モジュール7の外腔側を通過した培養液は、側部導管2bから排出され、ペリスタポンプ9を経由して、廃液回収容器10に回収される。
前記中空糸膜モジュールを用いる場合、細胞培養は、内腔側または外腔側のいずれにおいて行っても良いが、内腔側で培養を行うのがより好ましい。例えば、内腔側にて細胞を培養する際は、細胞縣濁液を端部導管より注入して播種し、播種終了後、細胞懸濁液を培地(培養液)に切り換えて潅流させ、内腔側にて一定期間培養を行う。この間、同時に外腔側へも培地を側部導管より注入し潅流させることが好ましい。
(培養液)
本発明において、培養液(培地)は、細胞を生育および増殖させるためのものであり、栄養素としてアミノ酸、ビタミン、無機塩および糖などが含まれている、いわゆる基礎培地を指す。このような培地としては、例えば、Minimum Essential Medium(MEM)、Basal Medium Eagle(BME)、Media199、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(D-MEM)、α−Minimum Essential Medium(α-MEM)、Ham's F-10 Nutrient Mixture(Ham’s F-10)、Ham's F-12 Nutrient Mixture(Ham’s F-12)、RPMI 1640、L-15、Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)、ES medium、MCDB 131 Medium、CMRL 1066 Media、DM-160 Medium、Fisher’s Medium、StemSpan Medium、StemPro Medium、Hybridoma Serum Free Medium(Hybridoma SFM)、mTeSR1(modified Tenneille Serum Replacer 1)、Essential 8、Repro FF/FF2/XF、StemSure(登録商標)、CELRENA、S-Mediumと呼ばれる市販の細胞培養液およびこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明において、歯髄由来の幹細胞を培養するために、前記基礎培地には血清を添加するのが好ましい。培地に添加する血清としては、ウシ血清、ウシ胎児血清、ウマ血清、ヒト血清などが挙げられる。添加量としては、基礎培地に対して1vol%以上が好ましい。添加量が少なすぎると、細胞が生育および増殖しないことがあるので、5vol%以上添加するのがより好ましく、10vol%以上添加するのがさらに好ましい。添加量を必要以上に増やしても培養コストが上昇するだけであり、20vol%程度を上限とするのが好ましい。前記血清は、内腔側に流す培養液に添加すればよいが、外腔側に流す培養液に添加してもよい。
以下、本発明の有効性について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(細胞回収数の測定)
細胞を含む回収液は、遠心分離操作により最終的に1mlの培養液に懸濁した。この懸濁液とトリパンブルー染色液を1:1で混和した液を血球計算盤に添加し、顕微鏡下で細胞数の計測を行った。
1.血球計算盤およびカバーガラスの表面を70%イソプロパノールで洗浄し、余分なイソプロパノールをふき取り風乾する。
2.Reagent grade waterでカバーガラスの側面を濡らし、血球計算盤に貼りつける。
3.細胞懸濁液をパスツールピペット等でよく撹拌後、すぐに血球計算盤に流し込み、溝の上まで満たす。
4.1〜3の操作を別の血球計算盤を使用して行う(2回測定し平均をとる)。
5.顕微鏡に血球計算盤を置き、グリッドラインに焦点を合わせる(10×対物レンズ)。
6.カウンターを用いて1mmエリアの細胞数を速やかに計測する。
※誤差が生じやすいので正確に数えるためには少なくとも100〜500細胞を計測する。
計算方法:
C=N×10
C:1ml当たりの細胞数
N:計測した細胞数の平均
10:1mmに対する容量の変換値
全体の数=C×V
V=細胞を懸濁した液体の容量
(細胞生存率の測定)
トリパンブルーで染色されない細胞を生細胞、染色される細胞を死細胞と判定し、以下の式により細胞の生存率を測定した。
細胞生存率(%)=生細胞数/(生細胞数+死細胞数)×100
(透水性の測定)
中空糸膜モジュールに対し、純水を中空糸膜の内腔側への端部導管(図1の1a)から導入し、反対側(1b)から流出させ、膜を十分に洗浄した。その後、中空糸膜の外腔側も同様に図1の2aから2bに通水することにより洗浄実施した。出口部回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子で挟んで封止した。25℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、25℃恒温槽で保温したモジュール流路側(中空糸の内部入口(1a))へ純水を送り、出口(1b)および透過側出口(2b)を閉じることにより、膜の透過側(中空糸外側2b)から流出する濾液量を一定時間測定した。膜間圧力差は、モジュール入り口側への加圧圧力(タンクへの加圧と同一)とし、100mmHgで測定した。使用モジュールの膜透過部分(中空糸膜の内面)の面積を用いて、中空糸膜の透水性(mL/m/hr/mmHg)を算出した。
なお、透水性の測定および後述する篩い係数の測定には、中空糸膜内径基準の膜面積が1mの中空糸膜モジュールを作製して用いた。
(篩い係数の測定)
中空糸膜が所定本数充填された、図1に示されるような中空糸膜モジュールを準備した。測定前に予め純水でプライミング処理を行い、モジュール内の空気を除去した後、37℃で保温した。Feed液として、pH7.5±1に調整したリン酸緩衝液に1.0wt%の濃度となるようアルブミン(ナカライテスク社、ウシ由来(F−V))を溶解した溶液(Feed液)を準備し、37℃に保温した。中空糸膜中空部に連通する入口より、Feed液を中空糸膜内径基準の膜面積1mあたり200mL/minで送液し、同膜面積1mあたり30mL/minの割合でろ過した。ろ液は、中空糸膜外側に連通する出入口より外部に流出させた。この時、2つある出入口の一方は閉止しておいた。ろ過されなかったFeed液はFeed液出口から外部に流出させた。ろ過開始より30min後に、Feed液入口濃度(Ci)、Feed液出口濃度(Co)、濾液濃度(Cf)を測定し、以下の式により篩い係数(SC)を算出した。なお、アルブミンの濃度は、波長280nmのUV吸光度により測定した。
SC=2×Cf/(Ci+Co)
(内径、膜厚の測定)
中空糸膜の内径、外径および膜厚は、中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられたφ3mmの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面でカミソリによりカットし、中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機Nikon−V−12Aを用いて中空糸膜断面の短径、長径を測定した。中空糸膜断面1個につき2方向の短径、長径を測定し、それぞれの算術平均値を中空糸膜断面1個の内径および外径とし、膜厚は(外径−内径)/2で算出した。5断面について同様に測定を行い、平均値を内径、膜厚とした。
[実施例1]
(中空糸膜の作製)
ポリエーテルスルホン(4800P、住友化学社製)20質量%、Nメチルピロリドン(三菱化学社製)36質量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)44質量%を均一に溶解し、製膜原液を作製した。この原液を、70℃に加温した円筒2重管ノズルから、中空形成剤としてNメチルピロリドン13.5質量%、トリエチレングリコール16.5質量%、水70質量%の水溶液とともに同時に吐出し、300mmの乾式部を通過させた後、75℃の水中に浸漬し凝固させ、十分な水洗浄を実施した後に束に巻き取った。糸束は切断後、50℃、50%グリセリン水溶液に浸漬した後、過剰のグリセリン液を除き、60℃にて通風乾燥させた。中空糸膜は、概ね内径200μm、外径300μm、膜厚50μmとなるように吐出量を調整した。
得られた中空糸膜を用いてモジュールを作製し、透水性および篩い係数を測定した結果、透水性は387mL/m/hr/mmHg、アルブミンの篩い係数は0.017であった。
(中空糸膜モジュールの作製)
試験用の中空糸膜モジュールを以下のように作製した。内径4mm、長さ10cmの円筒状のアクリル製モジュールケース内に、前記作製したポリエーテルスルホン製中空糸膜を10本挿入した後、中空糸膜の中空部を閉塞しないようにポリウレタン系ポッティング剤で両末端をモジュールケースに固定し、図1に示すような形状の中空糸膜モジュールを作製した。
(細胞培養の準備)
得られた中空糸膜モジュールを細胞培養容器として用い、図2に示すような細胞培養装置を構成した。まず、中空糸膜に付着しているグリセリンを除去するために、培養液貯留容器5、6に滅菌した注射用蒸留水を入れ、ポンプ8、9を起動し、中空糸膜モジュール内に充分量流して洗浄した。その後、培養液貯留容器5を、ウシ胎児血清を10vol%になるように添加したダルベッコ改変イーグル培地が入ったものに交換した。また、培養液貯留容器6を、血清無添加でインスリン0.5μM、セレン10nM、グルタミン酸250μMを添加したダルベッコ改変イーグル培地が入ったものに交換した。この後、ポンプ8、9を起動してプライミング処理を行い、中空糸膜モジュール内の水を培養液に置換した。
(歯髄細胞の採取)
4ヶ月齢のイヌ(雑種、雌)の脱落乳歯より、以下の手順で歯髄を採取した。即ち、乳歯表面をイソジン溶液で消毒した後、滅菌した生理食塩液でイソジンを洗い流した。次いで、滅菌した歯科用カッターで乳歯を上下に二分割し、露出した歯髄を滅菌した先鋭鑷子(ピンセット)で採取し、培養皿に回収した。次に、歯髄が充分浸るように、100μlの0.3%(w/v)コラゲナーゼ溶液を添加した。コラゲナーゼによる消化が促進されるようピペットチップの先端などを使って組織を軽く潰した後、COインキュベーター内で37℃、15分間インキュベートし組織を消化した。消化後、1.9mlの15%ウシ胎児血清を加えたDMEM培地を添加し、セルストレイナーを通し、幹細胞を含む細胞懸濁液を得た。
(細胞培養実験)
前記採取した幹細胞を含む細胞懸濁液を、中空糸膜の中空部側に充填して1晩放置し、中空糸膜内表面に細胞を接着させた。培養液貯留容器5を培養液のみの容器に交換した後、中空糸膜の中空部側の流速0.33mm/min、中空糸膜の外側の流速3.46mm/minで送液を開始した。この時、中空糸膜の中空部側に通液する培養液は、ウシ胎児血清を10vol%になるように添加したダルベッコ改変イーグル培地を用い、中空糸膜の外側に通液する培養液は、血清無添加でインスリン0.5μM、セレン10nM、グルタミン酸250μMを添加したダルベッコ改変イーグル培地を用いた。なお、本細胞培養実験は、COインキュベーター内で37℃、7日間行った。
(中空糸膜モジュールからの細胞回収)
7日間培養後、培養液の潅流を停止し、中空糸膜モジュール内にて増殖した細胞を回収した。即ち、培養液の潅流を停止した後、中空糸膜の中空部側および外側に存在する培養液を除去するため、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を一定時間潅流させ、培養液を十分PBSに置換した。次に、PBSを除去し、0.25%トリプシン溶液(ライフテクノロジーズ社製)を中空糸膜の中空部側と外側へ静かに充填し、室温で15分間インキュベートした。
この後、培養液を図1の1aより中空糸膜の中空部側へ流し入れ、1bより流し出した細胞を回収した(図3参照)。回収した細胞について、生細胞数および細胞生存率を計測した。この結果、8.1×10個の生細胞が得られた(総細胞数:8.8×10個、細胞生存率:92.2%)。
(脂肪細胞への分化)
脂肪細胞への分化は、Gimble JM., et al., J Cell Biochem. 58. 393−402 (1995)に記載の方法を参考にして下記の方法で調べた。
歯髄由来細胞を、DMEM(10%FBS)培地に細胞密度(5,000〜10,000細胞/cm)で24ウェル培養プレートに播種して1晩培養し、細胞をプレートに接着させた。細胞を2群に分け、一方の群の培地を、脂肪細胞誘導用基礎培地(Lonza社)にインドメタシン(最終濃度60μM)、IBMX(最終濃度0.5mM)、ヒドロコルチゾン(最終濃度0.5μM)を添加した脂肪細胞分化誘導培地に入れ換え、3〜4日毎に培地交換をしながら5週間分化培養を行った。この群を脂肪細胞誘導群とした。もう一方の群については、培地を新しいDMEM(10%FBS)培地に入れ換え、3〜4日毎に培地交換しながら5週間培養を行った。この群をコントロール群とした。
脂肪細胞に分化した細胞は、細胞内に脂肪滴が観察される。そこで、培養後、両群の細胞を、オイルレッドO染色(リピットアッセイキット,プライマリーセル社)によって染色して中性脂肪の有無を確認した。しかし、いずれの群においても中性脂肪の染色は認められなかった。更に、染色後、抽出液(リピットアッセイキット,プライマリーセル社)を用いてオイルレッドO色素を抽出し、抽出液の540nmにおける吸光度を両群で比較したが、両群間で有意な差は認められなかった。
次いで、脂肪細胞分化マーカーの1つであるLipo Protein Lipaseの発現量の変化を調べた。RNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN社)により各群の細胞から全RNAを抽出して全RNA抽出液を調製し、次いでマルチモードプレートリーダー(モレキュラーデバイス社)を用いて全RNA抽出液に含まれるRNA濃度を測定した。RNA濃度測定後、TaqManTM RNA−to−CTTM1−Stepキット(Life Technologies社)を用いてPCR反応液を調製し、各群の全RNA25ngを鋳型とし、〔(48℃/15min)×1サイクル、(95℃/10min)×1サイクル、(95℃/15sec、60℃/1min)×40サイクル〕のPCR条件下でリアルタイムRT−PCRを行い、Lipo Protein Lipase遺伝子とβアクチン遺伝子を増幅させた。PCRプライマーには、Lipo Protein Lipaseプローブ(Applied Biosystems社製/Assay ID:Hs00173425_m1)及びβアクチンプローブ(Applied Biosystems社製/Assay ID:Hs99999903_m1)をそれぞれ用いた。
その結果、Lipo Protein LipaseのCt値(Threashold cycle)は、コントロール群では39.3、脂肪分化誘導群では36.0であり、脂肪分化誘導群ではコントロール群と比較してLPLのCt値が若干低いことが判明した。これらの結果は、脂肪分化誘導群において、細胞内に中性脂肪を蓄積した脂肪球の存在は確認できないものの、脂肪細胞分化マーカーの1つであるLipo Protein Lipaseの発現量が増加したことを示すものであり、歯髄由来細胞が、脂肪細胞への分化能を弱いながらも有することを示すものである。
(骨芽細胞への分化)
骨芽分化能は、Pittenger MF., et al., Science. 284, 143−7 (1999),Colter DC., et al., Proc Natl Acad Sci USA. 98, 7841−5(2001)に記載の方法を参考にして下記の方法で調べた。
上記軟骨分化能の測定で使用したのと同じ手法で調製した歯髄由来細胞を、DMEM(10%FBS)培地に細胞密度(5000〜10000細胞/cm)で48ウェル培養プレートに播種して1晩培養した。細胞を2群に分け、一方の群の培地を、骨芽細胞分化用基礎培地(Lonza社)にデキサメタゾン、L−グルタミン、アスコルビン酸塩、ペニシリン/ストレプトマイシン、MCGS、β−グリセロフォスフェートを含む骨芽細胞分化用添加因子セット(Lonza社)を添加した骨芽細胞分化誘導培地に入れ換え、3〜4日毎に培地交換しながら3週間分化培養を行った。この群を骨芽細胞誘導群とした。もう一方の群については、培地を新しいDMEM(10%FBS)培地に入れ換え、3〜4日毎に培地交換しながら3週間培養を行った。この群をコントロール群とした。培養後、細胞をPBSで1回洗浄した後、各ウェルに0.2mLのPBSと0.2mLの2M塩酸を添加し37℃で1時間静置して細胞内に蓄積したカルシウムを細胞から遊離させた。遊離したカルシウム濃度を、カルシウムE−テストワコー(和光純薬)を用いて定量した。その結果、遊離カルシウム濃度は、コントロール群が1.53mg/dLであるのに対し、骨芽分化誘導群では24.88mg/dLと高値を示した。
この結果は、歯髄由来細胞が、骨芽細胞分化誘導培地で培養することにより骨芽細胞へ分化して、細胞内にカルシウムが蓄積することを示すものであり、歯髄由来細胞が骨芽細胞への分化能を有することを示すものである。
本発明により、動物の歯髄組織から効率よく歯髄幹細胞を分離培養することが出来、動物の再生医療に有用な幹細胞を得ることが可能となる。
1a、1b 出入口(中空部側)
2a、2b 出入口(外腔側)
3 モジュールケース
4 中空糸膜
5、6 培養液貯留容器
7 細胞培養容器(中空糸膜モジュール)
8、9 送液ポンプ
10、11 廃液回収容器(細胞回収容器)

Claims (5)

  1. 動物の歯髄幹細胞を培養する方法であって、
    a)採取した歯髄をプロテアーゼ溶液で消化して幹細胞を含む細胞懸濁液を得る工程
    b)前記細胞懸濁液を中空糸膜の中空部に充填して幹細胞を中空糸膜表面に接着させる工程
    c)中空糸膜の中空部に培養液を潅流して幹細胞を培養する工程
    を含むことを特徴とする歯髄幹細胞の培養方法。
  2. 前記動物がイヌまたはネコであることを特徴とする請求項1に記載の歯髄幹細胞の培養方法。
  3. 前記プロテアーゼがコラゲナーゼおよび/またはディスパーゼであることを特徴とする請求項1または2に記載の歯髄幹細胞の培養方法。
  4. 前記中空糸膜が疎水性樹脂のみからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯髄幹細胞の培養方法。
  5. 前記培養液が動物血清を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯髄幹細胞の培養方法。
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