JP2017169527A - αモノグルコシルロイフォリン、αモノグルコシルロイフォリンの製造方法、αモノグルコシルロイフォリンを含むリパーゼ阻害剤、および抗糖化剤 - Google Patents

αモノグルコシルロイフォリン、αモノグルコシルロイフォリンの製造方法、αモノグルコシルロイフォリンを含むリパーゼ阻害剤、および抗糖化剤 Download PDF

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Abstract

【課題】新規フラボノイド配糖体、その製造方法、および、新規フラボノイド配糖体の生理学的な応用品の提供。【解決手段】αモノグルコシルロイフォリン、および下記製造方法、並びにαモノグルコシルロイフォリンを有効成分とする抗糖化剤、リパーゼ阻害剤等とする。工程(1):α-1,4-グルカンとロイフォリンと水性溶媒が存在する条件下で、第1の酵素を前記α-1,4-グルカンの糖鎖に作用させて、前記α-1,4-グルカンの糖鎖からグルコースを切り出し、少なくとも前記ロイフォリンの第1糖の3”位に前記グルコースを転移させる第1反応工程(糖転移);工程(2):第1反応工程により得られた、1または2以上のαグルコシル基を有するαグルコシルロイフォリンの群に対して、α-1,4-グルコシダーゼ活性を有する第2の酵素を作用させて、前記αグルコシルロイフォリンのα-1,4-グルコシル基を全て取り除くことによりαモノグルコシルロイフォリンの濃度(純度)を高める、第2反応工程(糖鎖整理)。【選択図】なし

Description

本発明は、αモノグルコシルロイフォリン、αモノグルコシルロイフォリンの製造方法、αモノグルコシルロイフォリンを含むリパーゼ阻害剤、および抗糖化剤に関する。
従来、フラボノイド類に糖を付加したフラボノイド配糖体が、様々な機能を有することが知られている(特許文献1〜4)。
特許文献1には、ヘスペリジンに糖を付加したフラボノイド配糖体が、味噌の着色防止機能、食品の風味を維持する機能、血圧降下作用を有することが開示されている(特許文献1の実施例参照)。
特許文献2には、B環(下記フラボンの化学式参照)にOH基を1個有し、ベンゼン環に結合したOH基数をX、OCH3基数をYとした場合に、Y/(X+Y)の値が0.05未満である所定のフラボノイド類の配糖体(フラボノイド配糖体)が、食品の色調変化を抑制し、食塩の代替機能を有することが開示されている。
特許文献3には、ヘスペリジンにグルコースを付加したフラボノイド配糖体が、食品の塩味増強持続作用を有することが知られている。
特許文献4には、美容効果を有する化粧料組成物の一成分として、ロイフォリンの配糖体を用いてもよいことが開示されている。
特開2009−178098号公報 特開2011−036269号公報 特開2012−105674号公報 特開2003−026581号公報
上記特許文献1〜4に例示したように、有用な生理的機能を有する様々なフラボノイド配糖体が知られている。有用な生理的機能を有する新規フラボノイド配糖体がさらに発見されれば、医薬品の有効成分や機能性食品の成分等として利用することができるフラボノイド配糖体の選択の幅が広がる。そのため、有用な生理的機能を有する新規フラボノイド配糖体、およびその製造方法、並びに、それらを応用した物品の出現が望まれている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、新規フラボノイド配糖体、その製造方法、および、リパーゼ阻害剤、抗糖化剤などとして使用しうるような、新規フラボノイド配糖体の生理学的な応用品の提供を目的とする。
本発明者は、様々な生理的機能を有する新規フラボノイド配糖体を探索していたところ、有用な生理的機能を有する新規物質のフラボノイド配糖体として、αモノグルコシルロイフォリンを見出して本発明に至った。
すなわち、本発明は次の発明を包含する。
[1] 以下の工程(1)〜(2)を含むαモノグルコシルロイフォリンの製造方法:
工程(1):α-1,4-グルカンとロイフォリンと水性溶媒が存在する条件下で、第1の酵素を前記α-1,4-グルカンの糖鎖に作用させて、前記α-1,4-グルカンの糖鎖からグルコースを切り出し、少なくとも前記ロイフォリンの第1糖の3”位に前記グルコースを転移させる第1反応工程(糖転移);
工程(2):第1反応工程により得られた、1または2以上のαグルコシル基を有するαグルコシルロイフォリンの群に対して、α-1,4-グルコシダーゼ活性を有する第2の酵素を作用させて、前記αグルコシルロイフォリンのα-1,4-グルコシル基を取り除くことによりαモノグルコシルロイフォリンの濃度(純度)を高める、第2反応工程(糖鎖整理)。
(ここで、式(2)中、n≧1,m≧0、n,mはともに整数である。なお、この反応工程で副生する、n=0となる化合物(例;未反応のロイフォリンや、4’位置にのみ糖が付加した化合物)の表記は省略している。)
[2] 前記第2の酵素が、トランスグルコシダーゼ及び/又はグルコアミラーゼであることを特徴とする[1]に記載の製造方法。
[3] 第1反応工程の後から第2反応工程の前までの間、第2反応工程の間、又は、第2反応工程の後に、前記反応溶液中に含まれるロイフォリンに対して、βグルコシダーゼ活性を有する第3の酵素を作用させて前記ロイフォリンを分解し、分解により生じたアピゲニンを沈殿させた後、沈殿物を濾別することにより前記反応液中のαモノグルコシルロイフォリンの濃度(純度)を高める第3反応工程を経る[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記第1の酵素が、シクロデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ (EC2.4.1.19)であることを特徴とする[1]乃至[3]いずれかに記載の製造方法。
[5] 前記ロイフォリンがナリンジンを出発原料にして製造された、出発原料のナリンジンを含むロイフォリンであることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] αモノグルコシルロイフォリンを有効成分として含有する、リパーゼ阻害剤。
[7] αモノグルコシルロイフォリンを2mM以下含有する[6]のリパーゼ阻害剤。
[8] ヒトまたは動物(ヒトを除く)の体内または体表面でリパーゼを阻害する箇所での最終濃度がαモノグルコシルロイフォリンを0.066mM〜0.66mMとなるように含有した、[7]のリパーゼ阻害剤。
[9] αモノグルコシルロイフォリンを有効成分として含む、体臭抑制・炎症抑制剤。
[10] αモノグルコシルロイフォリンを有効成分として含む、肥満抑制剤。
[11] αモノグルコシルロイフォリンを有効成分として含む、抗糖化剤。
[12] αモノグルコシルロイフォリンの血中内または細胞内の濃度が4.2μM〜140μMとなるように製剤された、[11]の抗糖化剤。
[13] ロイフォリンのグルコース構造単位のC3”位置にα1−3結合を介してグルコシル基が1個結合した下記式(3)のαモノグルコシルロイフォリン。
本発明により、新規なフラボノイド配糖体として、αモノグルコシルロイフォリン、および、その製造方法が提供される。
さらに、本発明により、αモノグルコシルロイフォリンを有効成分とするリパーゼ阻害剤、抗糖化剤等が提供される。
図1(A)は、実施例1の第1反応工程後の反応産物をHPLC分析に供した結果を示す。図1(B)は、上記(A)の反応産物を実施例2の第2反応工程を経た後にHPLC分析に供した結果を示す。図1(C)は、上記(A)の反応産物を実施例3の第2反応工程を経た後にナリンギナーゼで処理した後、HPLC分析に供した結果を示す。図1(D)は、上記(A)の反応産物を実施例1の第3反応工程を経た後にHPLC分析に供した結果を示す。 図1A(A)は、αモノグルコシルロイフォリン(試料A)の分取時のクロマトグラムを示す図である。図1A(B)は、(A)に示す範囲について、さらにHPLCにより分取して高度に精製したものについてのHPCLのクロマトグラムを示す図である。 図2は、αモノグルコシルロイフォリンの化学構造を示す図である。 図3は、αモノグルコシルロイフォリンのHMBC、COSY、TOCSYによる相関性を示す図である。 図4はαモノグルコシルロイフォリンの1H−NMRスペクトルを示す図である。 図5は、αモノグルコシルロイフォリンの13CNMRスペクトルを示す図である。 図6は、αモノグルコシルロイフォリンの1HピークのHMBC、COSY、及びTOCSY相関をまとめた結果を示す図である。 図7は、αモノグルコシルロイフォリンの13CピークのHMBC、COSY、及びTOCSY相関をまとめた結果を示す図である。 図8は、(A)各種フラボノイド配糖体の濃度に対する膵リパーゼ活性(%)(相対)を示す図である。(B)各種フラボノイド配糖体の濃度に対する腸リパーゼ活性(%)(相対)を示す図である。 図9は、各種化合物の糖化に関する反応相関図を示す図である。 図10は、図9の各種AGEsの化学式を示す図である。 図11は、αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(褐変度測定法I:グリセルアルデヒド(GA))を示す図である。 図12は、αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(褐変度測定法II:フルクトース)を示す図である。 図13(A)〜(C)は、αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(AGEs測定法I:GA)を示す図である。 図14(A)〜(C)は、αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(AGEs測定法II:フルクトース)を示す図である。 図15(A)〜(C)は、αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(AGEs測定法III:グリセルアルデヒド加速試験法)を示す図である。 図16(A)〜(C)は、αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(AGEs測定法IV:フルクトース加速試験法)を示す図である。 図17(A)〜(C)は、αグルコシルロイフォリンと他フラボノイド配糖体の抗糖化効果の比較(AGEs測定法v:グリセルアルデヒド加速試験法)を示す図である。 図18(A)〜(C)は、αグルコシルロイフォリンと他フラボノイド配糖体の抗糖化効果の比較(AGEs測定法v:フルクトース加速試験法)を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
−新規化合物−
本発明に係る新規化合物(αモノグルコシルロイフォリン)は、下記一般式(3)で表される。
このαモノグルコシルロイフォリン(3)は、リパーゼ活性阻害作用、抗糖化作用を有し、リパーゼ阻害剤、抗糖化剤、リパーゼ活性や抗糖化に纏わる各種疾病や身体機能の低下(例;高脂血症、老化等)に対する薬の(有効)成分として有用である。
(新規化合物の製造方法)
本発明に係るαモノグルコシルロイフォリンの製造方法は、以下の工程(1),(2)を少なくとも含む。
工程(1):α-1,4-グルカンとロイフォリンと水性溶媒が存在する条件下で、第1の酵素を前記α-1,4-グルカンの糖鎖に作用させて、前記α-1,4-グルカンの糖鎖からグルコースを切り出し、少なくとも前記ロイフォリンの第1糖の3”位に前記グルコースを転移させる第1反応工程(糖転移);
工程(2):第1反応工程により得られた、1または2以上のαグルコシル基を有するαグルコシルロイフォリンの群に対して、α-1,4-グルコシダーゼ活性を有する酵素を作用させて、前記αグルコシルロイフォリンの該α-1,4-グルコシル基を全て取り除くことによりαモノグルコシルロイフォリンの濃度(純度)を高める第2反応工程(糖鎖整理);
本発明に係るαモノグルコシルロイフォリンの製造方法は、さらに、
第1反応工程の後から第2反応工程の前までの間、第2反応工程の間、又は、第2反応工程の後に、前記反応溶液中に含まれるロイフォリンに対して、βグルコシダーゼ活性を有する第3の酵素を作用させて前記ロイフォリンを分解し、分解により生じたアピゲニンを沈殿させた後、沈殿物を濾別することにより前記反応液中のαモノグルコシルロイフォリンの濃度(純度)を高める第3反応工程を含んでいてもよい。
本発明においては、上記のようにして新規化合物αモノグルコシルロイフォリンを合成した後、連続して(直ちに)精製する場合、第1反応工程と第2反応工程のそれぞれの直後に後述する第1精製工程、第2精製工程を行うことが好ましい。すなわち、αモノグルコシルロイフォリンの製造方法は、通常、第1反応工程(糖転移),第1精製工程(後述)、第2反応工程(糖鎖整理)、および第2精製工程(後述)を含むことが好ましい。
<第1反応工程(糖転移)>
下記に第1反応工程で行われる第1反応(糖転移反応)のスキームを示す。
(ここで、式(2)中、n≧1,m≧0、n,mはともに整数である。なお、この反応工程で副生する、n=0となる化合物(例;未反応のロイフォリンや、4’位置にのみ糖が付加した化合物)の表記は省略している。)
(ロイフォリン)
上記式中に示した原料のロイフォリン(1)は、その純品をメーカー(Santa Cruz Biotechnology社等)から購入してもよいが、ナリンジンを出発原料にして、公知の方法(EP0052086に記載の方法等)を参考にして製造してもよい。
上記「EP0052086」に記載の方法に沿ってナリンジンからロイフォリンを製造する場合、先ず、下記式で示すように、アセチル化剤(無水酢酸等)を用いてナリンジン(A)の水酸基をアセチル化(保護)してアセチル化ナリンジン(B)を合成する(下記反応式参照)。
次に、所定の酸化剤(イソアミルアルコール、ヨウ素等)によりアセチル化ナリンジン(B)を酸化して脱水素反応により上記フラバノン骨格の第2,3位に2重結合を導入する(得られる化合物は(C)、下記反応式参照)。
最後に、上記フラバノン骨格の第2,3位に2重結合を導入して得られたアセチル化ロイフォリン(C)を脱アセチル化することで、本発明においてモノグルコシルロイフォリン合成の原料となる、ロイフォリン(1)が得られる(下記反応式参照)。
(α-1,4-グルカン)
上記α-1,4-グルカンは、CGTase(Cyclodextrin glycosyltransferaseの略称)の基質となりうる2以上の糖がα-1,4結合を介して連結した糖鎖であり、例えば、後述の水性溶媒に溶解した状態で反応系に添加して用いられる。α-1,4-グルカンとしては、例えば、澱粉部分分解物(α−グルコシル糖化合物)、アミロース,グリコーゲン、アミロペクチン、プルラン、デキストラン、各種サイクロデキストリン(6員環のαCD、7員環のβ−CD、8員環のγ−CD等)等であり、1種または2種以上組合せて用いられる。ここで、上記基質としては、反応率の点で、各種サイクロデキストリンを用いることが好ましく、さらには、β−CDやγ−CDよりも、α−CD(Mw:972.84)を用いることが好ましい。
CGTaseは、澱粉からサイクロデキストリン(CD)を合成する機能とともにCDを開環する機能も有している(Kelly RM, Dijkhuizen L, Leemhuis H - Appl. Microbiol. Biotechnol. (2009))。そのため、例えば、澱粉が多量に存在する反応系では、澱粉からサイクロデキストリンを形成する環形成反応にCGTaseのリソース(資源)が奪われるため、反応系にロイフォリンが存在してもロイフォリンへの糖転移反応が行われにくくなる。一方、CGTaseの基質として澱粉を用いずに各種CD(例;αCD)を用いれば、ロイフォリンへグルコース転移反応が行われやすくなり、ロイフォリンへの糖転移(α-1,4-グルカンからロイフォリンの3”位および/または4’位へのグルコース転移)を効率良く行うことができる。
α-1,4-グルカンの使用量は、ロイフォリン1分子に対して最終的にαグルコシル基を1個付加する観点から、使用するロイフォリン1モルに対し、合計で1モル以上のグルコース単位を含むように、α-1,4グルカンの使用量を設定することが好ましい。ロイフォリンの分子量(Mw)は578.52であり、グルコースの分子量(Mw)は180.16であるので、ロイフォリン100質量部に対して、α-1,4-グルカンは少なくとも30質量部以上で使用することが好ましく、反応性を考慮してより好ましくは100〜1000質量部、さらに好ましくは300〜500質量部となるように設定することができる。
(水性溶媒)
水性溶媒は、第1の酵素(例;CGTase)が、α-1,4-グルカンからロイフォリンの3”位および/または4’位へグルコースを転移させる活性(糖転移活性)を発揮できる水系溶媒であればよく、水(例:超純水、蒸留水、水道水)、pH緩衝液などを使用することができる。
ここで、pH緩衝液としては、第1の酵素が機能しやすい至適pH範囲にpH緩衝能を有する緩衝剤が好ましいが、至適pH範囲によってはフラボノイドが析出する問題が発生するため、この問題を考慮して反応液のpHを決定する必要がある。
例えば、「コンチザイム」(登録商標)(天野エンザイム(株)社製)を第1の酵素として使用する場合、コンチザイムの最適pHはpH4.0付近であるが、pH4付近であると、フラボノイドが析出することがあるため、反応pHを6.5〜7.0に調節することが望ましい。この場合、pH緩衝剤としてはpH6.5〜7.0にpH緩衝能を有する緩衝液(例;りん酸緩衝液など)を用いることが好ましい。
水性溶媒の使用量としては、上記第1反応が進行すれば特に制限されないが、例えば、第1の酵素の基質とロイフォリンとの合計(質量部)に対して質量比で18〜20倍の水性溶媒が用いられる。このように溶媒量を増やせば、より少量の溶媒を使用する場合と比べて全体の反応効率は低くなるが、フラボノイド類に関する糖転移反応では、糖転移酵素の糖転移能は高くなることが多いため、好ましいものとなる。
(第1の酵素)
第1の酵素は、糖転移活性を有する酵素であり、通常、シクロ(サイクロ)デキストリン・グルカノトランスフェラーゼ (CGTase; EC2.4.1.19)が用いられる。CGTaseは、各菌種由来のものを使用することができる。例えば、Bacillus megaterium、Bacillus circulans、Bacillus macerans、Bacillus ohbensis、Bacillus stearothermophilus、Paenibacillus sp.、Bacillus coagulansからなる群から選択された1種以上の菌由来のCGTaseを利用することができる。第1の酵素として、「コンチザイム」(登録商標)(天野エンザイム(株)社製)、Novozymes社製Toruzyme、Wacker Chemie社製CG Tase等を用いることができる。
α-1,4-グルカンおよびロイフォリンの存在する系に、CGTaseを作用させた場合、下記の式(2)に示すように、α-1,4-グルカンから順次切り出されたグルコースがロイフォリンの3”位および/または4’位へ付加される。この付加は確率に依存するので、様々な長さの糖鎖が付加されたαグルコシルロイフォリン(群)(式(2)において、n≧1,m≧0、n,mはともに整数である。)の糖転移ロイフォリン群が製造される。ここで、通常n,m=20程度まで、例えば、15程度までのものが生成される(式(2)参照)。
(第1の酵素(糖転移酵素)の使用量)
第1の酵素の使用量は、基質1mmol(例;αCDなら1g)あたりに60U〜70Uの第1の酵素を使用することが好ましい。ここで、「U(ユニット)」とは、酵素の活性量の指標であり、1ユニット(U)は、酵素の至適条件下(温度30℃で、最も化学反応が進む酸性度)で毎分1マイクロモル(μmol)の基質を変化させることができる酵素量(1μmol/分)と定義される。
(第1反応(糖転移反応))
(式(2)において、n≧1,m≧0、n,mはともに整数である。なお、この反応工程で副生する、n=0となる化合物(例;未反応のロイフォリンや、4’位置にのみ糖が付加した化合物)の表記は省略している。)
第1反応工程での糖転移反応(第1反応)時の反応pHは、菌種により第1の酵素(主としてCGTaseが用いられる)の至適pHが異なるため、菌種に合わせて変更してよい。反応pHは、第1の酵素の糖転移活性(α-1,4-グルカンからロイフォリンの(第1糖の)3”位および/または(アグリコンであるアピゲニンの)4’位へのグルコース転移させる活性が得られるpH範囲であればよく、例えば、コンチザイムを用いた場合であれば、上述したようにpH6.5〜pH7.0の範囲にpHを調製することが好ましい。
第1反応の反応温度は、使用する第1の酵素の至適温度に設定することが好ましく、CGTaseを使用する場合、酵素の種類にもよるが通常50℃〜70℃程度である。
第1反応の反応時間は、使用する第1の酵素の種類に応じて決定すればよく、CGTaseを使用する場合、酵素の種類にもよるが通常1〜100時間程度である。
(第1反応の確認)
α-1,4-グルカンから、式(2)に示すように、ロイフォリンの3”位および/または4’位へグルコースが転移されたことの確認、および糖転移による反応産物の定量は、例えば、第1反応工程後の反応産物をHPLC等の分析に供し、ロイフォリンのピークに加えて、ロイフォリンにグルコースが付加された各種αグルコシルロイフォリン(例;上記化学式(2)でn≧1のもの)の各ピークを観察する(定量の場合は標準物質と比べた場合のピーク面積比から算出)ことにより行うことができる(図1(A)参照)。
第1反応の確認をするためのHPLCカラムとしては、ODSカラム(5C18)(ナカライテスク社)等を使用することができる。ODSカラムとは、オクタデシルシリル(Octa Decyl Silyl) 基 (C1837Si) で表面が修飾された化学結合型多孔性球状シリカゲルが固定相として充填されているタイプのものをいう。ロイフォリンの溶出時間に約0.9を乗じた溶出時間に溶出されるピークの有無、面積を測定することにより、第1反応の成否・効率を調べることができる。
(第1精製工程)
第1精製工程として、第1反応を終了させる酵素失活処理およびろ過処理が行われる。酵素失活処理は、例えば、反応液の温度を80℃以上に調整し、30分以上保持する処理することにより行われる。また、ろ過処理は、酵素失活処理や第1反応で析出した酵素タンパク質等の不溶性の夾雑物を除去するために行われる。ろ過処理は、特に限定されないが、一般的な膜ろ過、鉱石を用いたカラムろ過により行うことができる。
膜ろ過としては、1.0μm以下の孔径を有するろ膜を用いた膜ろ過処理が好ましく、精密ろ過(MF膜)、限外ろ過(UF膜)、ナノフィルトレーション(NF膜)、逆浸透ろ過(RO膜)、等により行うことができる。
カラムろ過は、1.0μm未満の微細孔を有する鉱石を充填したカラムに通液して行われる。カラムろ過に使用可能な鉱石として、珪藻土(焼成した珪藻土を含む)、パーライト、ゼオライト等を使用することができる。
<第2反応工程>
下記に第2反応工程で行われる第2反応のスキームを示す。なお、第2反応は、第1反応の酵素失活後、(必要によりろ過等の上記処理をして)得られた第1反応液に第2の酵素(糖鎖切断酵素)を添加し、通常同じ溶媒中で、下記条件下に引き続いて行われる。
{式(2)において、n≧1,m≧0、n,mはともに整数である。なお、この反応工程で副生するn=0となる化合物(例;未反応のロイフォリンや、4’位置にのみ糖が付加した化合物)の表記は省略している。}
(第2の酵素(糖鎖切断酵素))
第2の酵素は、α-1,4-グルコシダーゼ活性を有する酵素であって、上記式(2)〜(3)に示すように、αグルコシルロイフォリン(2)の第3”位に付加された各糖鎖(式(2)においてn≧2,m≧1)を糖鎖末端からα-1,4-グルコシド鎖を逐次切断していき、ロイフォリンの第1糖であるβグルコースにα-1,3-グルコシド結合した1個の糖のみを残存させる(n=1とする)活性と、αグルコシルロイフォリン(2)のアグリコンの第4’位に付加されたαグルコシル基(m≧1)が存在する場合には、この4’位のα-1,4-グルコシル結合を加水分解して「該4’位の」α-1,4-グルコシル基を取り除く(m=0とする)活性を有する酵素である。両活性によりαグルコシルロイフォリン(2)がモノグルコシル化される。
換言すれば、第2の酵素(糖脱離酵素)は、α-1,4-グルコシダーゼであって、α-1,4-結合のグルコース鎖を糖鎖末端より順次切断(加水分解)するが、それ以外の結合態様、例えば、α-1,3-結合のグルコースは切断しない。
αグルコシルロイフォリンの群(2)は、ロイフォリン(1)の第1糖の3”部分にグルコースがn個結合し、また、ロイフォリン(1)の4’部位にグルコースがm個結合しているが、前記ロイフォリン(1)の第1糖の3”部分に結合しているグルコースのうちのα-1,4-結合で結ばれた(n−1)個のグルコースと、ロイフォリン(1)の4’部位にα-1,4-結合で結ばれたm個全てのグルコースと、が全て切断(加水分解)される。
その結果、ロイフォリン(1)の第1糖部分にα-1,3-結合により直結した1個のグルコースのみが残存した、新規αモノグルコシルロイフォリン(3)が効率良く得られる。
第2の酵素(糖脱離酵素)は、α-1,4-グルコシダーゼとしての活性・機能を有すれば、以下に説明するトランスグルコシダーゼ、αグルコシダーゼなどを何れか1種単独で用いてもよいし、これらを併用してもよい。
<トランスグルコシダーゼ>
トランスグルコシダーゼは、植物、動物、微生物(各種菌類(Aspergillus niger、Acremonium sp.等) 由来のトランスグルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)を用いることができる。トランスグルコシダーゼとして、「トランスグルコシダーゼL「アマノ」」(天野エンザイム社)を好適に用いることができる。
〈グルコアミラーゼ〉
グルコアミラーゼは、デンプンの構成要素であるアミロースとアミロペクチンのα-1,4グルコシド鎖を非還元性末端からグルコース単位で切断するエキソ型酵素である。
本発明では、グルコアミラーゼは、第1反応工程により得られる、n≧2のαグルコシルロイフォリン(2)のモノグルコシル化処理(n=1、m=0とする処理)に用いられ、ロイフォリンの第1糖の3”位にα-1,3-グルコシド結合を介して付加されたn個の鎖状α-1,4-グルコシル基(上記式(2)でn≧2))を、その糖鎖の非還元末端(グルコース単位の4位のOH基側)から分解(逐次分解、解重合)していく作用を有する。
さらに、上記グルコアミラーゼは、ロイフォリンのアグリコン(アピゲニン骨格)の4’位にα-1,4-グルコシド結合を介して付加されたαグルコシル基(上記式(2)でm≧1))を、その糖鎖の非還元末端(グルコース単位の4位のOH基側)から分解(逐次分解、解重合)していく作用を有する。
このグルコアミラーゼの酵素活性自体は、トランスグルコシダーゼにも存在するので、トランスグルコシダーゼを所定の条件(反応pH:4〜7、反応温度:50〜70℃(好ましくは55℃〜65℃)、時間等の条件:2〜72時間)で用いることで、グルコアミラーゼを用いる必要は必ずしもないが、この第2反応工程において、トランスグルコシダーゼとともにグルコアミラーゼを使用することで、αグルコシルロイフォリン(2)のモノグルコシル化をより効率良く行うことができる。
グルコアミラーゼは、Aspergillus niger、Rhizopus niveus、Rhizopus delemarからなる群の菌種のいずれか1種または2種以上由来のグルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)を使用することができる。グルコアミラーゼとして、グルコアミラーゼ「アマノ」SD(天野エンザイム)、「グルクザイムAF6」(天野エンザイム社)を好適に用いることができる。
上記以外の、本発明に使用可能な市販のグルコアミラーゼとしては、「GODO−ANGH」(合同酒精(株))、「コクラーゼ・G2」(三菱化学フーズ(株))、「オプチデックス L」(ダニスコジャパン(株)) 、「スミチーム」(新日本化学工業(株))、「スミチーム SG」(新日本化学工業(株))、「グルコチーム #20000」(ナガセケムテックス(株))、「長瀬酵素剤 N−40」(ナガセケムテックス(株))、「デナチーム GSA/R」(ナガセケムテックス(株))、「AMG」(ノボザイムズジャパン(株))、「グルターゼ AN」(エイチビィアイ(株))、「ユニアーゼ K, 2K」(ヤクルト薬品工業(株))、「ユニアーゼ 30」(ヤクルト薬品工業(株))、「ユニアーゼ 60F」(ヤクルト薬品工業(株))、「マグナックス JW−201」(洛東化成工業(株))が挙げられる。
(第2の酵素の使用量)
第1反応で得られたαグルコシルロイフォリン(2)の群に含まれる糖鎖の長さが異なる各αグルコシルロイフォリン分子の全体(合計)1molに対して、第2の酵素をトランスグルコシダーゼ活性で100kU〜10GU(グルコアミラーゼ活性で10kU〜10GU)となる量を使用することが望ましい。なお、トランスグルコシダーゼ活性の酵素単位(U)は、1質量%メチル−α−D−グルコピラノシド水溶液を基質として、pH5.5、反応温度55℃の反応条件下において、1分間に1μmolのグルコースを生成する酵素力を1単位(1U)としたものである。グルコアミラーゼの活性も同様である。
(反応条件)
第2反応の条件として、第2の酵素が作用しうる温度、pH、時間であれば制限されない。αモノグルコシルロイフォリンが最も効率良く生成される反応条件、例えば、pH:4〜7、反応温度:50〜70℃(好ましくは55℃〜65℃)、反応時間:2〜72時間が好ましい。第2の酵素がトランスグルコシダーゼ(アマノエンザイム社)である場合も同様である。溶媒としては、前記した通り、通常、第1反応時と同様のものがそのまま用いられる。
<第3反応工程(未反応ロイフォリンを分解・沈殿させる工程)>
本工程は、第1反応工程を実施した後(例えば、第1反応工程の後から第2反応工程の前までの間、第2反応工程の間、又は、第2反応工程の後に、)得られたαモノグルコシルロイフォリンが含まれた反応生成物(B)に第3の酵素を作用させて、反応生成物(B)中に残存する未反応の前記ロイフォリン(1)を分解・沈殿させる工程である(下記式参照)。
第1反応工程後に第1の酵素を失活させた後は、原料のロイフォリン(1)は最終産物(:αモノグルコシルロイフォリン(3))に変換されることがなく、未反応の夾雑物(目的物以外のもの)として反応溶液中に残存することとなる。
また、第1反応工程でロイフォリンの4’の位置にのみ糖が転移した場合であって、第2反応工程により上記糖が除去された場合もロイフォリンが生成される(換言すれば、原料ロイフォリンに戻る)。これらのロイフォリンは夾雑物(夾雑したロイフォリン)として反応液中に残存する。
そこで、第1反応工程後の任意の時点(第2の酵素による反応の前後を問わない。また、第2の酵素による反応と同時でもよい。)において、上記ロイフォリンに第3の酵素(βグルコシダーゼ活性を有する酵素)を作用させて該ロイフォリンをアピゲニン(4)と、2糖のネオヘスペリドース(5)等とに分解し、沈殿物(アピゲニン)を濾別することにより、αモノグルコシルロイフォリンの濃度(純度)を高めることができる。第3反応工程は、第2の酵素による反応と同時に行う方が、反応全体の時間が短縮され作業性が向上する観点から好ましい。
なお、βグルコシド結合は、第1反応工程後に生成される中間生成物であるαグルコシルロイフォリンの群(2)の中の各分子の化学構造にも存在するが、アロマーゼ等のβグルコシダーゼ活性を有する酵素(第3の酵素)は、通常、二糖以下の糖鎖(すなわち、式(2)において、n=0の場合)を有するフラボノイド配当体に含まれるβグルコシド結合しか切断できない。αモノグルコシル化され3糖以上のロイフォリン誘導体(αグルコシルロイフォリン(3)、すなわち、式(2)において、n≧1の場合)に対しては、グルコースに由来する部分が2糖を超えるために第3の酵素が作用しないか、非常に作用しにくい。この現象は、他のフラボノイドでも確認されており、特開平9−25288にも記載されている。第1反応後の反応液に対して第3の酵素を作用させることで未反応ロイフォリン(1)、または第2反応で生成され残存したロイフォリン(1)を、そのアグリコンであるアピゲニン(4)にまで分解することができる。
上記分解で生成されるアピゲニンは、エタノールやアセトン等の有機溶媒には溶解するが、水には殆ど溶解しない性質を有する。そのため、ロイフォリンをアピゲニンにまで分解させるとアピゲニン(4)が沈殿し、反応液中に溶解しているαグルコシルロイフォリン(3)と濾別することができる。結果的にロイフォリン(1)を反応液から除くことができ、αグルコシルロイフォリン(3)を効率良く分取することができる。
(第3の酵素)
βグルコシダーゼ活性を有する第3の酵素は、ロイフォリンのβグルコシド結合を分解する活性を有する酵素である。上述したように、ロイフォリン(1)の3”位または4’位には、さらにグルコースが結合しており、分子全体で単糖由来部分が3個以上となるため、第3の酵素は、αモノグルコシル化されたロイフォリン(上記(3))のアピゲニン骨格の7位にβグルコシド結合した1個目の糖は分解しない。第3の酵素の例としては、βグルコシダーゼ活性を有する酵素[例えば、「アロマーゼ」(登録商標、天野エンザイム(株))、「β−Glucosidase HT1」((株)耐熱性酵素研究所)、「スミチーム BGA」(新日本化学工業(株))、「recombinant β-Glucuronidase」(オリエンタル酵母工業(株)、「GODO-GBA」(合同酒精(株))等、βグルコシダーゼを含有する酵素]が挙げられる。
(第3の酵素の使用量)
第1反応で得られたαグルコシルロイフォリンの群(2)に含まれる糖鎖の長さが異なる各αグルコシルロイフォリン分子の全体(合計)1molに対して、第3の酵素をβグルコシダーゼ活性で30U〜30MUとなる量を使用することが望ましい。なお、βグルコシダーゼ活性とは、p-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシドを基質として、pH7.0、反応温度37℃の反応条件下において、1分間に1μmolのpニトロフェノールを生成する酵素力を1単位(1U)としたものである。反応前後の反応溶液について、405nmの吸収波長の変化を測定することで、pニトロフェノールの検量線から第3の酵素のβグルコシダーゼ活性(U)を算出することができる。
(反応条件)
第2反応の条件として、第2の酵素が作用しうる温度、pH、時間であれば制限されない。第2の酵素がトランスグルコシダーゼ(アマノエンザイム社)、第3の酵素がアロマーゼ(登録商標)(アマノエンザイム社)である場合には、通常、反応温度は、)30℃〜70℃、反応pHは3.0〜8.0、反応時間は2〜72時間に設定することが望ましい。
(第3の酵素の反応条件)
第3の酵素の反応条件は、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素の至適pH、温度付近に調整し、βグルコシダーゼと同様の反応時間で反応させることが望ましい。
<第2精製工程>
第2精製工程は、第2反応に用いた酵素を失活させる酵素失活処理工程、反応液中の夾雑物を除去するためのろ過工程(低度,高度)、および乾燥工程を含む。
ろ過工程(低度)は、第1精製工程と同様の工程により反応液を精製することにより行われる。ろ過工程(高度)は、ろ過工程(低度)を経た反応液中から、所定の合成吸着材を用いて夾雑分子(水溶性で、かつ合成吸着材に吸着しないもの。例えば、単糖類、無機イオンなど。)を分離する工程である。
例えば、合成吸着材からなる樹脂ビーズを円筒ガラス管に充填したカラムに対して上記反応液を通液することより、非芳香族物質(単糖など)を除去してαモノグルコシルロイフォリンを分離することができる。
合成吸着材による精製は、反応液中の各分子の合成吸着剤への吸着性の違いを利用することにより、α-モノグルコシルロイフォリンを精製するものである。合成吸着材による精製は、グルコース供与体、水溶性糖類だけでなく、水溶性の塩類などの夾雑物も共に除去できる特長を有している。
上記合成吸着材としては、スチレン系モノマー、アクリル系モノマーが架橋共重合した、官能基を有しない、孔径80〜200オングストロームのMR構造(巨大網目構造)を有する樹脂粒子を用いることができる。使用可能な樹脂粒子としては、XAD−7(ダウ・ケミカル社)等を用いることができる。
なお、反応液からのα-グルコシルモノロイフォリンを分離する方法については上記の合成吸着材による精製に限定されず、HPLCによる分取法、ゲルろ過等の分離方法を用いてもよい。
さらに、上記分離で得られた反応液を孔径0.45μm以下の分離膜に通してろ過処理することにより、反応液から上記合成吸着材を除いてもよい。この分離膜としては、ろ紙などの公知のものを使用することができる。
また、上記分離で得られた反応液をイオン(アニオン/カチオン)交換樹脂により精製してもよい。これにより、脱塩、脱色、脱臭等をすることができる。
さらに、上記ろ過処理した反応液を乾燥することにより、αモノグルコシルロイフォリン粉末を得ることができる。反応液の乾燥方法としては、凍結乾燥および粉砕、スプレードライ法などの公知の乾燥方法を使用することができる。
αモノグルコシルロイフォリンが精製されたことの確認は、例えば、得られたαモノグルコシルロイフォリンの粉末を所定の緩衝液(各種リン酸緩衝液)に溶解し、この溶液を高速液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)に供してαモノグルコシルロイフォリンの出現する分子量位置(MW:740.52)のシングルピークを確認することで行うことができる。また、NMRにて単離化合物の構造を特定し、αモノグルコシルロイフォリンであることを確認することができる。
<リパーゼ阻害剤>
本発明に係るリパーゼ阻害剤は、αモノグルコシルロイフォリン(3)を有効成分として含有する。
従来、肥満は、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、心疾患、脳血管障害などの原因と言われている。肥満の要因の1つとして食餌性因子が挙げられ、脂質分の高い食餌を過剰に摂取して、脂質が体内に蓄積することで肥満の状態となる。
食餌由来の脂質は、脂質の構成成分の1種であるトリアシルグリセロールが膵液中のリパーゼによりモノアシルグリセロールと遊離脂肪酸とに分解されて、小腸より吸収される。脂質はリパーゼによって上記にように分解されなければ腸から吸収されないため、リパーゼの酵素活性を阻害することにより、脂質の分解を抑制し、その結果脂質が腸から吸収される過程を抑制し、肥満を解消、抑制、予防することができる。
トリアシルグリセロールは中性脂質の一種であり、モノアシルグリセロール等から肝臓で合成される。血液中に含まれる中性脂質のほとんどはトリアシルグリセロールである。血液中において、トリアシルグリセロール濃度の高い状態が継続すると高トリアシルグリロール血症や高脂血症を引き起こすことが知られている。したがって、リパーゼの酵素活性を阻害する物質は、上記各血症の発生抑制に有効である。
本発明者らは、上述した新規物質であるαモノグルコシルロイフォリンについてリパーゼ阻害能の有無を調べたところ、優れたリパーゼ阻害能を見出し、本発明に係る新規物質がリパーゼ阻害剤の有効成分として有用であることを見出した。すなわち、本発明に係るリパーゼ阻害剤は、下記式(3)のαモノグルコシルロイフォリンを有効成分として含有することを特徴とする。
本発明者らは、さらに、αモノグルコシルロイフォリンが低濃度(0.066mM〜0.66mM)で好適にリパーゼを阻害できることを見出している。
膵リパーゼ(ステアプシン)は小腸内で胆汁によって乳化された脂肪の分解に作用する。食品中の脂肪の約90%は膵リパーゼによって徐々に分解される。その一部は腸リパーゼにより脂肪酸とグリセリンに分解される。
したがって、本発明に係るリパーゼ阻害剤は、(作用する小腸等の消化器官に到達したときに)αモノグルコシルロイフォリンの終濃度が2mM以下の有効量、特に0.066mM〜0.66mMの範囲に調製されたリパーゼ阻害剤が特に好ましい。少なくともαモノグルコシルロイフォリンの終濃度が2mM以下の範囲では、公知のαモノグルコシルヘスペリジンやαモノグルコシルナリンジン等と比べてリパーゼ阻害効果が高く、0.066mM〜0.66mMの範囲ではその差が特に顕著となることによる(図8(A)および図8(B)参照)。
(リパーゼ活性の測定)
リパーゼ活性は、1分間に1μモルの基質を分解する酵素活性を1Uとする。リパーゼの活性測定方法は、公知の方法、例えば、4−UMO蛍光測定法により行うことができる。この方法では、下記に示したように、先ず、4−メチルウンベリフェリルオレート(4−MUO)に対してリパーゼが作用することで、4−メチルウンベリフェロンが遊離する。次に、遊離した4−メチルウンベリフェロンを360nmの波長光で励起し、該励起により発した波長465nmの蛍光の強度を測定する。そして、当該測定値を予め既知濃度の4−UMOで作成しておいた検量線に照らすことで、リパーゼの活性を定量することができる。
(リパーゼ活性阻害能)
上述したようなリパーゼ活性測定の反応系に対して本発明に係るリパーゼ活性阻害剤を投入すれば、リパーゼの活性が阻害されて生成される4−メチルウンベリフェロンの量が減少する為、その減少量を調べることで、阻害剤のリパーゼ活性阻害能を調べることができる。下記式は、阻害剤を全く含まない場合のリパーゼ活性を100%として、阻害剤を含む場合のリパーゼ活性(%)を算出するためのものである。
リパーゼ活性(%)=FIc−FId/FIb−FIa×100
{ここで、FIcは反応系(4−MUO+リパーゼ+阻害剤)の蛍光強度、FIdは反応系(4−MUO+阻害剤)の蛍光強度、FIbは反応系(4−MUO+リパーゼ)の蛍光強度、FIaは反応系(4−MUO)の蛍光強度、を意味する。}
リパーゼ活性を50%阻害する(リパーゼ活性(%)=50%のとき)の阻害剤の濃度(IC50)について比較すると、図8に示したように、ラット腸リパーゼ(Intestinal acetone powders from rat(Sigma))の活性阻害のIC50値は、本発明に係るリパーゼ活性阻害剤に含まれる薬効成分のαモノグルコシルロイフォリンについては0.11〜0,12mM、αモノグルコシルヘスペリジンについては0.28〜0.29mM程度、αモノグルコシルナリンジンについては0.42mM程度である。したがって、αモノグルコシルロイフォリンは他のフラボノイド配糖体(αモノグルコシルナリンジン等)と比べて強力なリパーゼ阻害能を有しているといえる(図8(A)参照)(実施例参照)。
さらに、図8(B)に示したように、ラット膵リパーゼに対する各種フラボノイド配糖体のIC50値は、αモノグルコシルロイフォリンではIC50=0.06mM、αモノグルコシルヘスペリジンではIC50=0.24mM、αモノグルコシルナリンジンではIC50=0.58mMである。したがって、αモノグルコシルロイフォリンは、膵リパーゼの活性も顕著に阻害する性能を有する(実施例参照)。
(用量)
リパーゼ阻害剤として公知のオルリスタット(Orlistat)のIC50は、122〜300ng/mLである(http://www.selleckchem.com/products/Orlistat(Alli).html)。オルリスタットの分子量(Mw)は495.7g/molであるので、IC50値は約0.246〜0.605μMである。オルリスタットの用量反応曲線は400mgまではリパーゼ阻害効果と高い相関があり、1日の処方は通常400mg程度であることから、通常の成人男性(50kg〜90kg)を前提とした場合、オルリスタットの投与量は4.4〜8.0mg/kg体重/日となる。
一方、本発明に係るリパーゼ活性阻害剤に薬効成分として含まれるαモノグルコシルロイフォリンのIC50値は、図8(A)および図8(B)に示したように、60μM〜120μM程度である。したがって、αモノグルコシルロイフォリンを有効成分とするリパーゼ阻害剤をヒトに投与する場合、オリルスタットの約100〜500倍の投与量、すなわち、1日の処方としては40g〜200g程度、投与通常の成人男性(50kg〜90kg)を前提とした場合、0.4〜4g/kg/日の用量でリパーゼ阻害効果を期待することができる。
(医薬品(肥満抑制剤/体臭抑制剤))
本発明に係る肥満抑制剤/体臭抑制剤は、有効成分としてαモノグルコシルロイフォリンを含んでいるが、これら医薬品(肥満抑制剤)は、αモノグルコシルロイフォリンを公知の方法に従って薬学的に許容される担体と混合して、公知の剤型、例えば、内用液剤、シロップ剤、エマルジョン、錠剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、トローチ剤、カプセル剤、持続性製剤、皮膚外用医薬品(外用液剤、テープ剤、クリーム剤、軟膏剤、パスタ剤、散剤、エアゾール剤、貼付剤、ローション剤、ゼリー剤、散布剤、液状塗布剤、リニメント剤、パスタ剤、硬膏剤、せっけん剤、湿布剤、パップ剤、浴剤)とすることができる。前記薬学的に許容される担体としては、例えば有機担体又は無機担体、例えば滑沢剤、結合剤、崩壊剤、賦形剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤等が挙げられる。
肥満抑制剤/体臭抑制剤における担体と薬効成分(αモノグルコシルロイフォリン)の配合比は、投与対象、投与経路等により適宜選択することができる。これらの製剤技術は従来充分に確立されているから、本発明においても、これら公知の各種添加剤、製剤技術が使用されてもよい。
ここで、フラボノイド配糖体であるαモノグルコシルロイフォリンは、胃酸の影響を受けにくく、二糖部分およびαグルコシル基部分を有することから水溶性である。したがって、上述した剤型の中では、内用液剤またはシロップ剤が好ましい。この場合、胃腸内のαモノグルコシルロイフォリンの終濃度が2mM以下、特に0.066mM〜0.66mMとなるようにαモノグルコシルロイフォリンを含有する内用液剤またはシロップ剤が特に好ましい。また、持続性製剤が特に有用であり、この場合には持続的に胃腸内のαモノグルコシルロイフォリンの濃度が2mM以下の有効量、特に0.066mM〜0.66mMとなるように徐放する持続性製剤(例;胃酸や腸内細菌により被膜が加水分解されることでαモノグルコシルロイフォリンが上記濃度範囲で徐放されるような持続性製剤など)が特に好ましい。
(体臭抑制剤・炎症抑制剤)
本発明に係る体臭抑制剤、炎症抑制剤は、αモノグルコシルロイフォリン(3)を有効成分として含有する。
皮膚上において分泌された皮脂がリパーゼにより分解されると生産物である脂肪酸やグリセリンが皮膚上の微生物により代謝され炎症や体臭の原因となる。そのため、本発明に係るαモノグルコシルロイフォリンを皮膚に塗布する皮膚外用医薬品(特に抗炎症剤、体臭抑制剤)の有効成分として用いることが好ましく、炎症や体臭の防止効果を期待することができる。本発明では、αモノグルコシルロイフォリンを2mM以下の有効量、特に0.066mM〜0.66mMの濃度で含有する、本発明に係る抗炎症剤や体臭抑制剤が好ましい。
(化粧品素材)
本発明に係る化粧品素材(化粧品)は、αモノグルコシルロイフォリン(3)を有効成分として含有する。化粧品素材剤型、用途などとしては、洗顔料、クレンジング、化粧水、乳液、クリーム、ジェル・美容液、パックマスク、スキンケア(マッサージ用)、リップケア等が含まれる。αモノグルコシルロイフォリンを2mM以下の有効量、特に0.066mM〜0.66mM含む化粧品素材が特に好ましい。このような化粧品素材は、上述したような体臭抑制剤・炎症抑制剤の効果を奏するものとして有用である。
(食品添加物/食品)
本発明に係る食品添加物は、αモノグルコシルロイフォリンを含む食品添加物であり、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、他の食品添加物、調味料等と混合して食品に配合することができる。また、このように配合して得られた食品も本発明に含まれる。「食品」には、一般的な食品に加えて食品原料も含まれる。上記「食品」は、好ましくは油分を含む食品であり、例えば、乳飲料、乳加工品、菓子類等である。αモノグルコシルロイフォリンは親水性部分(OH基、グルコシル基)と疎水性部分(アグリコン部分)の双方を化学構造中に有するため、水分と油分の両方を含む食品が特に好ましい。
上記食品添加物、食品/食品原料は、ヒトや動物に摂取されたときに、その胃や小腸の中で2mM以下の有効量、特に0.066mM以上の濃度(好ましくは0.066〜0.66mM)となるようにαグルコシルモノロイフォリンを含有するものが好ましい。
<抗糖化剤>
清涼飲料水、白米、砂糖、デザートなど、過剰に摂取した糖分とたんぱく質との結合「糖化反応(メイラード反応)」は現代人の健康維持にとって重要な問題となっている。また、糖尿病などで高血糖状態が続いたり、加齢により分解反応が進行し難くなると、糖化産物の生成に傾き、たんぱく質の機能が損なわれたり、糖化産物が蓄積したりする。
タンパク質とグルコースが共存した際、非酵素的な反応、不可逆な変性を起こし、アマドリ化合物を経て最終的に終末糖化産物(アドバンスド・グリケーション・エンド・プロダクツ;以下、「AGEs」と略称する)となる。生成したAGEsは代謝によって体外へ排出されるが、加齢に伴い、代謝速度は遅くなりAGEsが生体内の各組織に蓄積する。
AGEsは、生体内の各組織に蓄積したり、AGEsの受容体と結合したりすることにより、種々の症状を引き起こすことが知られている。 例えば、皮膚(表皮、真皮)においてAGEsが生成し蓄積すると、肌全体の衰え(例えば、肌の張りや弾力の低下、シワ、タルミ、黄ぐすみのような皮膚の色味の変化、透明感の低下、シミ等)の一因になる。
また、糖尿病患者では、高血糖により生じたAGEsが白内障、動脈硬化、腎機能障害などの合併症を引き起こす。従って、AGEsの生成を阻止または抑制することができれば、上述した問題を軽減することができる。
従来、食品用や化粧料用の添加剤として、AGEsの生成阻害成分や、AGEs生成を抑制する成分の検討が行われている状況の下、新規な抗糖化剤が望まれている。
本発明者らは、新規化合物として製造したαモノグルコシルロイフォリンについて抗糖化能を調べたところ、驚くべきことに、優れた抗糖化能があることを見出した。すなわち、本発明に係る抗糖化剤は、下記式(3)のαモノグルコシルロイフォリンを有効成分として含有することを特徴とする。
(剤型)
本発明に係る抗糖化剤は、αモノグルコシルロイフォリンが腸内細菌で加水分解されやすいため、経口投与以外の方法で投与される剤型に製剤されていることが好ましい。経口投与以外の方法で投与される剤型としては、注射剤、貼付剤、リニメント剤、ローション剤、経皮吸収型製剤、リポソーム製剤(中にαモノグルコシルロイフォリンを含む)などが例示される。このうちリポソーム製剤の場合、リポソームの外表面にAGEs(コラーゲン老化指標マーカー等)を抗原として特異的に認識する抗体を付加してドラッグデリバリー製剤としてもよい。このような抗体としては、例えば、抗CMLモノクローナル抗体、抗CELモノクローナル抗体(いずれも(株)ニッピ社)、抗 AGEs モノクローナル抗体 (Clone No.6D12)((株)トランスジェニック社)等が挙げられる。
(用量)
αモノグルコシルロイフォリンの濃度と総AGEs量とは相関関係にあるので、濃度が高い程、より抗糖化効果が得られる。抗糖化剤中のαモノグルコシルロイフォリンの含有量は、抗糖化効果が得られる濃度範囲であれば限定されないが、上述した各剤型で投与した後に血中内または細胞内でのαモノグルコシルロイフォリンの濃度が4.2μM〜140μMとなるように製剤されていることが好ましい。
哺乳動物の正常細胞において、ロイフォリンの濃度が0.156mMに至るまで95%超の細胞生存率があるので(Omayma A.ら, "Rhoifolin; A Potent Antiproliferative Effect On Cancer Cell Lines"、Pharmacognosy Department, Faculty of Pharmacy, Ain shams University, Cairo, Egypt,2012)、αモノグルコシルロイフォリンの濃度が上記範囲(4.2μM〜140μM)であっても正常細胞への毒性は極めて低いと考えられる。
アミノグアニジン(AG)(IC50=0.08g/L=1.1mM)の分子量(Mw)は74.09g/molであり、1日の投与量150〜300mgである。αモノグルコシルロイフォリンの糖化促進条件下でのIC50は図16から約30〜40μMである。したがって1日の投与量が5mg以上であれば抗糖化効果を期待することができる。成人男性(50kg〜80kg)の場合であれば、0.1〜0.625mg/kg体重/日で投与されるように抗糖化剤を製造することが望ましい。
<抗糖化剤の評価>
(糖化の定量)
上述したように、タンパク質が糖化(メイラード反応)することにより、糖化タンパク質(AGEs)が生成される。AGEsの特性の1つとして蛍光性を有することが挙げられる。したがって、このAGEsの蛍光性を利用して生成されたAGEsを定量することができる。蛍光を発する蛍光性AGEsの多くは、励起光330〜370nm、放射光400〜440nmの蛍光性を有する。
例えば、糖化したウシ胎児血清(FBS)は、励起波長が335nmであり、放出波長が420nmである。先ず、非糖化のFBS溶液について波長335nmの光で励起し、波長420nmの蛍光強度を計測し、この計測値を測定ブランクとする。その一方で、非糖化FBAと同一条件で糖化FBSを溶解した溶液に対して波長335nmの光で励起し、励起された糖化FBSから放出される420nmの蛍光の強度を計測し、該計測値から上記測定ブランクの値を差し引き、予め既知濃度の糖化FBAで作成した検量線(420nm蛍光強度と糖化FBS濃度との対応関係を示すもの)に照らし合わせることでFBSの糖化の程度(糖化したFBSのモル数)を定量することができる。
なお、糖化タンパク質が高濃度で存在するために計測することができない場合には、糖化タンパク質の溶液の原液を希釈(例;吸光度が0.1〜1.0の範囲となるように希釈)し、このときの測定した吸光度および希釈倍率からタンパク質の糖化の程度を調べることができる。
(抗糖化能の評価)
一定の反応条件で糖化処理を行う反応系に抗糖化剤を投入し、抗糖化剤の投入の有無により変化する上記糖化の程度の差異を調べることにより、抗糖化剤の抗糖化能を調べることができる。抗糖化剤の非存在下で標準タンパク質を糖化処理した際の反応液の上記蛍光の強度に対して、抗糖化剤の存在下で標準タンパク質を同一条件で糖化処理した際の上記蛍光の強度を相対的に表したもの(下記式参照)を用いて、抗糖化能を評価することができる。
褐変度(%)=(ODc−ODa−ODd)/(ODb−ODa)×100
(ここで、ODc=反応液1(標準タンパク質+糖化剤+抗糖化剤)の蛍光強度、ODa=ブランク液1(標準タンパク質のみの溶液)の蛍光強度、ODd=ブランク液2(αモノグルコシルロイフォリンのみの溶液)の蛍光強度、ODb=反応液2(標準タンパク質+糖化剤)の蛍光強度である。ここでの「蛍光強度」とは、標準タンパク質が糖化した際にその励起光で励起されて発する所定波長の蛍光(調べる対象がFBSである上記の例ならば、420nmの蛍光)の強度(蛍光発光量)を意味する。)
上記標準タンパク質としては、糖化を調べる対象のタンパク質(ヒト体内で糖化が問題となるタンパク質(例;コラーゲンなど))の市販の標準品が好ましいが、それ以外にも、例えば、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清アルブミン等を用いることができる。
上記糖化剤としては、グリセルアルデヒド(GA)、グルコース(Glc)、フルクトース(Fru)、等を使用することができる。上記糖化処理時の反応条件(反応系の温度、反応時間、反応液の振盪速度(rpm))は、特に限定されないが、例えば、反応温度:37℃〜50℃、反応時間:12時間〜5日、反応液の振盪速度(rpm):300〜600rpmの範囲で条件設定して行う例が挙げられる。
また、AGEsは、上述したように、重複する励起波長および蛍光波長を有するものも存在するので、そのようなAGEsについて、糖化程度(蛍光強度)をまとめて総AGEs量とし表して評価してもよい。
上記糖化の定量方法以外にも、例えば、糖化(メイラード反応)により生成される糖化反応中間体(例;3DG(3−デオキシグルコソン))の生成量を市販の定量キット(例;3-Deoxyglucosone Detection Reagents(同仁化学社))等により行ってもよい。さらに、この反応系を利用して抗糖化剤の抗糖化能を定量してもよい。
(化粧品等)
αモノグルコシルロイフォリンを有効成分とする下記の外用組成物であれば、抗糖化能によりコラーゲン等の糖化(褐変化)を抑制して、肌の色素沈着などを抑制することが期待できる点で特に好ましい。また、αモノグルコシルロイフォリンを4.2μM〜140μMで含有する外用組成物がより好ましい。
外用組成物としては、医薬品類(皮膚外用剤等)、医薬部外品類、局所用又は全身用の皮膚化粧品類、頭皮・頭髪に適用する薬用または化粧用の製剤類(例えば、シャンプー剤、リンス剤、トリートメント剤、パーマネント液、染毛料、整髪料、ヘアートニック剤、育毛・養毛料等)、浴湯に投じて使用する浴用剤、防臭剤、衛生用品、衛生綿類、およびウエットティシュを挙げることができる。は、外用組成物はペット等の動物に対しても使用することができる。本発明の外用組成物は、有効成分に影響しない公知の他の成分と混合して、例えば、霧状、液状、ゲル状または気泡状として使用することができる。
[製造例1]
以下に説明するように、ナリンジンからロイフォリンを製造した。(1)ナリンジンの水酸基を無水酢酸でアセチル化して保護し、(2)ヨウ素とジメチルスルホキシドで酸化脱水素した後、(3)水酸化ナトリウム水溶液中で脱アセチル化を行うことにより、ロイフォリンを製造した。
(1)アセチル化
ナリンジン(A)50g、酢酸7.1g(ナリンジン(A)のモル数に対して1.1倍mol)、無水酢酸300mLを混合し、100℃で5時間反応させた。4000Pa、60℃で酢酸を留去し、純水を1500mL加えて3時間撹拌し、結晶化させた。結晶を500mLの純水で2回洗浄し、60℃、1600Paで2時間、60℃、133.3Paで1時間乾燥させて、アセチル化ナリンジン(B)73gを得た。
(2)脱水素反応(2重結合の導入)
アセチル化ナリンジン73g、ヨウ素19.8g(アセチル化ナリンジンのモル数に対して1.1倍mol)、2%硫酸水溶液10.4g、ジメチルスルホキシド330gを混合し、70℃で4時間反応させた。1333Pa、70℃で水を留去し、純水1000mL、水酸化ナトリウム9.3g、チオ硫酸ナトリウム8.3gを加えてpH12になるまで20分撹拌し、さらに硫酸10gを加えてpH2になるまで20分撹拌し、結晶化させた。結晶を200mLの純水で5回洗浄し、60℃、133.3Paで3時間乾燥させて、アセチル化ロイフォリンを45.3g得た。
(3)脱アセチル化反応
アセチル化ロイフォリン45.3g、水酸化ナトリウム4.5g、純水300gを混合し、100℃で10分間反応させた。硫酸を55g加えてpH2として結晶化させた。結晶を300mLの純水で3回洗浄し、60℃、133.3Paで3時間乾燥させて、ロイフォリンを20.2g得た。
[実施例1] (αモノグルコシルロイフォリンの製造I)
(第1反応工程)
第1反応工程では、製造例1で得られたロイフォリンから、以下の(1)〜(4)の操作を行うことで、α1,4-グルコシド結合を介して少なくともロイフォリンの第1糖の3”位にグルコースが1個以上付加されたロイフォリン(試料A)を製造した。
(1)水道水1.9Lを60℃に昇温した後、この水道水にα−サイクロデキストリン(αCD)80g投入し、溶液全体を加熱しながら溶解した。
(2)該溶液を撹拌しながらロイフォリン原末20gを加え、該溶液の5N〜0.1Nの水酸化ナトリウムでpHを12以上に調整し、溶液に加えたロイフォリン原末を完全に溶解させた。
(3)この溶解後の溶液を、硫酸(濃度:25〜0.1%)でpH6.5〜7に調整した後、CGTase(第1の酵素)をαCD1g(1Dex)あたり66U(=66U/Dex)となるように前記溶液に加えて投入した後、溶液全体を60℃で1日静置し反応(第1反応)させた。
(第1精製工程)
次に、下記(4)〜(5)の通りに、試料Aに含まれるαグルコシルロイフォリンの群(2)の精製を行った。
(4)HPLC(HPLC−(1)の条件は後述)にて糖転移ロイフォリンの生成反応確認後(図1(A))、第1反応を行って得られた上記溶液を、湯浴中にて80℃以上で30分加熱し、CGTaseを失活させた。
(5)酵素失活処理した上記溶液を珪藻土「珪藻土スーパーライト1号」(東京今野商店)にて減圧ろ過を行った。
[HPLC−(1)の条件]
・ポンプ装置:液体クロマトグラフィー「LC-20AT」(島津製作所)
・カラム:ODSカラム「5C18」(ナカライテスク社製)
・検出器:「UV/VIS DETECTOR」(島津製作所)
・検出波長:266nm、340nm
・流速:1.0mL/分
・カラムオーブン温度:40℃
・移動相:20% アセトニトリル with 0.01%酢酸
(第2反応工程)
(6)上記第1精製工程を経て得られた上記ろ液(αグルコシルロイフォリン(2)を含む溶液)につき、硫酸(濃度:25〜0.1%)でpHを6.0に調整し、反応液全体に対して、トランスグルコシダーゼ(第2の酵素)とアロマーゼ(第3の酵素)(いずれも天野エンザイム社製)をそれぞれ酵素量:3.6MU(12mL/2L溶媒)、酵素量:96U(12g/2L溶媒)加えて、よく溶解させ、60℃にて1日静置させ反応させた(第2反応、未反応ロイフォリンの分解・沈殿)。なお、本実施例ではトランスグルコシダーゼとアロマーゼを同時に作用させたが、別々に作用させてもよく、その順序も特に限定されない。
(第2精製工程)
(7)上記第2反応工程を行って得られた(αモノグルコシルロイフォリン(3)を含む溶液)につき、湯浴にて80℃以上で30分加熱し、酵素を失活させ、上記と同一の珪藻土によるろ過を行った。
(8)XAD-7(1L)にて脱糖、吸脱着を行い、50%エタノールで溶出させた溶出液を孔径0.45μmメンブランフィルターにてろ過を行った。
(9)その後、濃縮し凍結乾燥させた。
(10)凍結乾燥後、乳鉢にて粉砕し、αモノグルコシルロイフォリン(試料D)の粉末を得た。
(11)この粉末を水に溶解した反応液を上記と同じ条件のHPLC分析に供した(図1(D))。そして、反応液の主ピーク(αモノグルコシルロイフォリン)を上記とは別のHPLC−(2)(後述)によって分取し、濃縮後に沈殿したものをろ過によって取得した。この沈殿物を乾燥させて、後述の条件にてLC−MS分析を行い、αモノグルコシルロイフォリンの同定を行った。なお、各種分析(LC-MS,HPLC)により、第2反応が行われたこと(αモノグルコシルロイフォリン(αG-RFL)が主ピーク(単離または略単離された状態)として存在すること)を確認した。
[高純度αモノグルコシルロイフォリンの精製]
<HPLC−(2)条件>
ポンプ:日立L-6000
流速:7mL/分
サンプルループ:200μL
カラム:GLサイエンス Inertsil PREP-ODS 20x250mm
カラムオーブン:入らないため、室温
検出器:日立L-4000
検出波長:266nm
移動相:20%または25%アセトニトリルを併用+100ppm酢酸
<実験操作>
αモノグルコシルロイフォリン(試料D)の20%水溶液を作製し、上記クロマト装置に供した。αモノグルコシルロイフォリンはアプライから20分くらいから溶出されるため、図1A(A)のクロマトグラム中に示した範囲(約20〜25分)の画分を分取した。αモノグルコシルロイフォリンより後ろにも比較的目立つピーク(30〜50分に溶出)があり、20%アセトニトリルではこれらの押し出しに時間がかかるため、アセトニトリルの濃度を25%に上げてこれらを効率的に押し出した(二段階溶出法)(図1A(A)参照)。
押し出し後に再び20%アセトニトリルに切り替え、次のサンプルをロードした。これらの工程を回繰り返し、αモノグルコシルロイフォリンの溶液を得た。
αモノグルコシルロイフォリンの溶液を濃縮し、20時間室温に静置すると沈殿物が現れた。この沈殿物を、0.45μmメンブレン(アドバンテック東洋)を用いてろ過し、常温減圧乾燥(24時間)した。
ナカライテスク社製5C18 MS-IIカラムを用いて分析(その他の条件は、分取時と同じ)したところ、HPLC面積比で95%以上のモノグルコシルロイフォリンがおよそ1g得られた(図1A(B)参照)。
[LC−MS条件]
・HPLC送液ユニット(送液ポンプ):「LC-20AD」(島津製作所)
・LC−MS装置:「LCMS-2020」(島津製作所)
・カラム:「3C18-MS-II Type Waters 4.6×100mm」(ナカライテスク社製)
・検出器:「SPD-M20A DIODE ARRAY DETECTOR」(島津製作所)
・PDA検出波長:266nm、340nm
・イオン化法:エレクトロスプレーイオン化(ESI)
・測定分子量範囲:0−1000(m/z)
・流速:0.5mL/分
・カラムオーブン温度:40℃
・移動相:20% アセトニトリル with 0.01%酢酸
[実施例2](αモノグルコシルロイフォリンの製造II)
(i)実施例1において、第1反応工程((1)〜(4))および第1精製工程(5)まで実施例1と同様に行い、続いて下記(ii)〜(vi)の通りの操作(第2反応工程〜第2精製工程に相当する工程)を行った。
(ii)CGTaseを失活させ濾過した後の反応液のpHを実施例1と同様にしてpH6.0に調整し、トランスグルコシダーゼ(第2の酵素)を酵素量:3.6MU(12mL/2L溶媒)を加えてよく溶かし、60℃にて1日静置させ反応(第2反応)させた。
(iii)反応確認後、湯浴にて80℃以上で30分加熱し、酵素を失活させ、珪藻土ろ過を行った(第2精製工程)。
(iv)XAD−7(1L)(ダウ・ケミカル社製)にて脱糖、吸脱着を行い、溶出液を孔径0.45μmメンブランフィルターにてろ過を行った。
(v)その後、濃縮し凍結乾燥させた。
(vi)凍結乾燥後、乳鉢にて粉砕し、αモノグルコシルロイフォリンの粉末(試料B)を得た。実施例1と同様して行ったHPLCの結果を図1(B)に示す。なお、図1(B)において、未反応等による生じたロイフォリンが確認されるが、実施例と同様に、βグルコシダーゼ活性を有する酵素(アロマーゼ等)で分解・除去し、および高純度αモノグルコシルロイフォリンの精製を行った(データ不図示)。
[実施例3](αモノグルコシルロイフォリンの製造III)
(i)実施例1において、第1反応工程((1)〜(4))および第1精製工程(5)まで実施例1と同様に行い、続いて下記(ii)〜(vi)の通りの操作(第2反応工程〜第2精製工程に相当する工程)を行った。
(ii)GGTaseを失活させ濾過した後の反応液を、実施例1と同様に硫酸によりpHを6.0に調整し、トランスグルコシダーゼ(酵素量:3.6MU(12mL/2L溶媒)を加えよく溶かし、60℃にて1日静置させ反応させた。
(iv)反応確認後、硫酸によりpHを4.0に調整し、これにナリンギナーゼ(150U/g)をロイフォリン10gあたり75Uとなるように添加・混合した後、60℃にて1日静置させ反応させた。
(v)反応確認後、湯浴にて80℃以上で30分加熱し、酵素を失活させ、実施例1と同一の珪藻土により濾過を行った(第2精製工程)。
(vi)XAD-7(1L)にて脱糖、吸脱着を行い、溶出液を孔径0.45μmメンブランフィルターにてろ過を行った。
(vii)その後、濃縮し凍結乾燥させた。
(viii)凍結乾燥後、乳鉢にて粉砕し、αモノグルコシルロイフォリン(試料C)の粉末を得た。実施例1と同様して行ったHPLCの結果を図1(C)に示す。なお、図1(C)において、未反応等による生じたコスメチンが確認されるが、βグルコシダーゼ活性を有する酵素(アロマーゼ等)で分解し、および高純度αモノグルコシルロイフォリンの精製を行った(データ不図示)。
[試験例1]
実施例1〜3で製造した高純度のαモノグルコシルロイフォリンのNMRピークの帰属と構造決定を行った。
[溶液NMR測定方法]
αモノグルコシルロイフォリンを重水(D2O)又はジメチルスルホキシド−d6(DMSO−d6)中に40mg/mLで溶解させた(試料溶液)。NMR測定は、「JEOL ECA-500 NMR system」(11.7 T, JEOL RESONANCE, Japan) を用いた。試料溶液を5mmのNMRサンプルチューブに充填し、測定温度25℃、60℃、90℃にてスピン速度15Hzで測定を行った。D2O及びDMSO−d6中での内標準物質としてトリメチルシリルプロパン酸(TSP, 0.0 ppm) 及びテトラメチルシラン(TMS, 0.0 ppm) をそれぞれ用いた。1H, 13C, HMQC, HMBC, COSY, HSQC-TOCSY, 1D TOCSY NMR測定を用いて各NMRピークの帰属を決定した(図2,図3)。
[αモノグルコシルロイフォリンのNMRピークの帰属及び構造決定]
NMR測定により得られたαモノグルコシルロイフォリンの構造決定及びNMRピークの帰属を行った。αモノグルコシルロイフォリンをDMSO−d6に溶解し、各種NMR測定(HMQC,HMBC,COSY及び1D TOCSY) を用いて、DMSO−d6(90℃)中のαモノグルコシルロイフォリンの1H及び13Cピークの帰属を行った。いずれのNMRスペクトル中においても特徴的な不純物ピークは観察されなかった(不図示)。これはHPLCにより求めたαモノグルコシルロイフォリンの純度が95%以上という結果と一致した。
また、各13Cピークの帰属は、主に1Hピークの帰属後にそれぞれに対応する1H-13C−HMQC相関から行った。1H-NMRスペクトルにおいては、5.13ppm, 5.16ppm, 5.29ppmに3種のアノマー1Hピークが観察された(図4参照)。このことから、今回合成したαモノグルコシルロイフォリンは3個の糖鎖を有していることが確認された(すなわち、ロイフォリンの第1糖の3”位に付加されたα-グルコシル基は1個であることが確認された)。αモノグルコシルロイフォリンの13C−NMRスペクトルを図5に示す。
フラバノン骨格上及び糖鎖部位の一部に関しては、COSY(H-2'/H-3'; H-1''/H-2'';H-1'''/H-2''';H-1''''/H-2'''')及びHMBC(H-3/C-1', C-2, C-4, C-10; H-6/C-5, C-7, C-8, C-10; H-8/C-6, C-7, C-9, C-10; H-2'/C-2, C-4'; H-3'/C-1', C-4'; H-1''/C-7; H-2''/C-3''; H-1'''/C-2''; H-1''''/C-3''; H-6''''/C-4'''') の相関を基に帰属を行った。糖鎖部位の帰属は1D TOCSY NMR測定を用いて検討を行った。TOCSY測定では選択的に励起した1Hからの磁化移動を観察でき、混合時間を段階的に長くした際のスペクトル変化から1Hのつながりを順番に観測できる(参考文献1:Pauli, G. F., Higher order and substituent chemical shift effects in the proton NMR of glycosides. J. Nat. Prod. 2000, 63 (6), 834-838、参考文献2:Duenas-Chasco, M. T.; Rodr-guez-Carvajal, M. A.; Tejero-Mateo, P.; Espartero, J. L.; Irastorza-Iribas, A.; Gil-Serrano, A. M., Structural analysis of the exopolysaccharides produced by Lactobacillus spp. G-77. Carbohydr. Res. 1998, 307 (1-2), 125-133.)。
αモノグルコシルロイフォリンについて、異なる混合時間(10ミリ秒,25ミリ秒,50ミリ秒、100ミリ秒、200ミリ秒)を用いて 1''、6'''、1''''のNMRピークを励起することで得られたTOCSY相関から、各糖鎖の1Hピークの帰属が可能であった。
6位及び8位の1H及び13Cピークは、HMBC測定による特徴的な相関が観察できないため、区別が難しく、DMSO−d6(90℃)中での帰属は困難であった。そこで、温度をH−5(OH)の1Hピークが観察されるDMSO−d6(25℃)に変えてHMBC測定を行い、H−5(OH)/C−6、C−10の相関が確認された。さらに、ここで得られたC−6及びC−10の相関ピークに基づき、溶媒及び温度条件 (DMSO−d6中25℃, DMSO−d6中90℃) を変化させることで、DMSO−d6中90℃条件下におけるC−6及びC−10ピークを帰属した。その後、1H−13C HMQC相関に基づきH−6及びH−10を帰属した。
下記表1、図6および図7にαモノグルコシルロイフォリンの1H及び13CピークのHMBC、COSY、及びTOCSY相関をまとめた結果を示す。ピークの重なっている1H以外については、全ての1H及び13Cピークを詳細に帰属することができ、αモノグルコシルロイフォリンの構造決定を行うことが可能であった。
結果としては、αモノグルコシルロイフォリンの構造は、式(3)の通り。
[実施例4](リパーゼ阻害剤)
αモノグルコシルロイフォリンによるリパーゼ活性阻害能の効果(4−UMO蛍光測定法)
αモノグルコシルロイフォリン(αG-RFL)のリパーゼ活性阻害能の評価は、リパーゼの活性を測定する反応系に対して阻害剤(αモノグルコシルロイフォリン等)を各濃度で加えて、濃度別の阻害率(%)を調べることにより行った。
リパーゼの活性測定は、基質として蛍光性の4−メチルウンベリフェロンオレイン酸エステル(4−MUO)を使用し、基質に対してリパーゼが反応することによって生成した4−メチルウンベリフェロン(4−UMO)の蛍光(励起波長355nm、蛍光波長460nm)を定量することにより評価した。この定量は、4−メチルウンベリフェロンの量と蛍光量との関係を予め調べて作成した検量線に基づいて行った。また、リパーゼとして、ラット腸由来リパーゼと、豚膵臓由来リパーゼの2種類のリパーゼを用いて行った。
<試料調製>
・4−MUO基質溶液の調製
4−メチルウンベリフェロンのオレイン酸エステル(4−MUO)(シグマ−アルドリッチ社)を少量のDMSOで溶解後、13mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で0.1mMとなるように調製した。
・50μg/mLラット腸アセトン粉末(ラット腸由来リパーゼ)溶液の調製
ラット腸由来リパーゼ「Intestinal acetone powders from rat」(シグマ社)を13mMTris−HCl緩衝液(pH8.0)に50μg/mLとなるように溶解した後、常温(25℃)で約10分間撹拌溶解した。ろ紙でろ過したろ液を、同緩衝液を用いて10倍希釈した。なお、アセトン粉末とは、アセトンで溶出したもの粉末化したものを意味する。
・100U/mL豚膵臓由来リパーゼ溶液の調製
豚膵臓由来リパーゼ「Lipase from porcine pancreas」(シグマ社)を13mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解した後、同緩衝液にて10倍希釈した。該希釈液を30℃に調整して使用した。
<試験方法>
(1)カートリッジ式多機能型マルチモードプレートリーダー「SpectraMax(商標)Paradigm(商標)」(ベックマン・コールター社)(以下単に「装置」という)と、該装置に取り付けられた状態で装置から発した光を所望の波長の光に変換して出射可能な蛍光カートリッジ「TUNE」(モレキュラーデバイス社)を起動し、前記装置内を30℃に保温した。
(2)各フラボノイド配糖体を13mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)に溶解し、フラボノイド配糖体を0.264mM、0.8mM、2.640mM、8mMになるように、上記Tris−HCl緩衝液によりそれぞれ希釈して各濃度のフラボノイド配糖体の溶液を調製した。上記フラボノイド配糖体としては、αモノグルコシルロイフォリン、αグルコシルヘスペリジン、およびαモノグルコシルナリンジンを用いた。
(3)96ウェルプレート(蛍光用ブラック「Optiplate 96F」(アズワン社)に、下記濃度で混合した(最終濃度0.066mM、0.2mM、0.66mM、および2mMとした)。なお、蛍光用ブラックとは、バックグランドノイズを低減するために96ウェルプレートを蛍光測定用に黒に着色していることを意味する。
(1)(上記表2の各(溶)液につき、プレート遠心機「PlatespinII」(久保田商事株式会社)で遠心し、30℃で30分間、リパーゼ反応を行った。(2)リパーゼ反応の後、反応系に生成・遊離した4−メチルウンベリフェロン(4−UMO)を波長360nmで励起し、該励起により発した波長465nmの蛍光の強度を上記装置「SpectraMaxParadigm(商標)」で測定した。(3)「4−MUO」の蛍光強度をFIa、「4−MUO+Lip」の蛍光強度をFIb、「4−MUO+Lip+RFL」の蛍光強度をFIc、「4−MUO+RFL」の蛍光強度をFIdとし、下記式より基準に対するリパーゼ活性の割合を算出した。
リパーゼ活性(%)=(FIc−FId)/(FIb―FIa)×100
「リパーゼ活性(%)=100%」はリパーゼ活性を全く阻害していない場合の蛍光強度を示し、「リパーゼ活性(%)=50%」はリパーゼ活性を50%阻害している場合の蛍光強度を示し、「リパーゼ活性(%)=0%」はリパーゼ活性を100%阻害している場合の蛍光強度を示す。
(結果・考察)
ラット膵臓由来のリパーゼおよび腸由来リパーゼの試験結果を、それぞれ図8(A)および(B)に示す。
図8(A)に示すように、膵由来リパーゼについては、αモノグルコシルロイフォリンの場合には、0.066〜0.66mMの濃度範囲において、阻害剤濃度を高めていくにつれて急激にリパーゼ活性(相対)が低下する。この点、他のフラボノイド配糖体(αグルコシルヘスペリジン、αモノグルコシルナリンジンはαモノグルコシルロイフォリンよりも、各種リパーゼ(腸リパーゼ、膵リパーゼ)の相対活性(%)が穏やかに低下する。このことは、豚膵臓由来リパーゼに対する試験結果も同様である(図8(B)参照)。
したがって、αモノグルコシルロイフォリンは、各種リパーゼを顕著に阻害することができ、αモノグルコシルロイフォリンを有効成分とするリパーゼ阻害剤(特に0.066〜0.66mMの濃度範囲のもの)は特に有用であるといえる。
[実施例5−1](αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(褐変度測定法I:グリセルアルデヒド))
(1)200mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)を用いて、標準タンパク質として0.6%ウシ血清アルブミン(BSA)(シグマ社)溶液、糖化剤として30mMグリセルアルデヒド(GA)(ナカライテスク社)溶液、抗糖化剤として各濃度(0μM,12.6μM,42.0μM、126,0μM)のαモノグルコシルロイフォリン(αG-RFL)溶液を調製した。
(2)調製した各溶液を用いて、αモノグルコシルロイフォリンの濃度別に、下記表3に示した通りにそれぞれ試験溶液を調製した。
(3)恒温チャンバー「FMS-100」(東京理化器械(株))と往復振盪機「MMS-110」(東京理化器械(株))を用いて、試験溶液を37℃、180rpmで3日間振盪した。
(4)試験溶液を分光光度計「U-3900」((株)日立製作所)で420nmにおける吸光度が0.1〜1.0の間になるように希釈し、420nmの吸光度を測定することにより、試験溶液の褐変度を求めた。なお、上記の希釈をするのは、高濃度の試験溶液を希釈して褐変度を測定できるようにするためである。
(5)「BSA」溶液の吸光度をODa、「BSA+GA」溶液の吸光度をODb、「BSA+GA+αG-RFL」溶液の吸光度をODc、「αG-RFL」溶液の吸光度をODdとし、下記式より基準(αモノグルコシルロイフォリンを含有しない場合(褐変度100%))に対する褐変度の割合を算出した。
褐変度(%)=(ODc−ODa−ODd)/(ODb−ODa)×100
(結果・考察)
実施例5−1の結果を図11に示す。
図9および図10(出典:Takeuchi & Yamagishi, J Alzheimers Dis, 16, 845-858, 2009 より一部改変)に示すように、グリセルアルデヒドは、Dグルコースから生成されるAGEsの中間体に該当する。グリセルアルデヒドはアミノ基(H2N)を有するタンパク質と反応して、AGEs(GLAP等)を生成する。
αモノグルコシルロイフォリンおよびグリセルアルデヒド存在下で、ウシ胎児血清アルブミン(BSA)の糖化処理を行った結果、αモノグルコシルロイフォリンの濃度が高まるにつれて、BSAの褐変度(%)が低下した(図11参照)。この抗糖化効果は、前記濃度が14μM〜42μMで特に顕著であった。
この結果から、αモノグルコシルロイフォリンを有効成分とする抗糖化剤が有用であるとともに、αモノグルコシルロイフォリンを14μM〜42μM含有する抗糖化剤が好ましいことが分かる。また、42μMを超える範囲でも抗糖化の効果が高まると推認される。
[実施例5−2](αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(褐変度測定法II:フルクトース)
実施例5−2では、実施例5−1で使用した糖化剤(グリセルアルデヒド)の代わりとして、別の糖化剤(フルクトース(Fru))を使用して、αモノグルコシルロイフォリンを含む剤について抗糖化能を調べる試験を以下の通り実施例5−1と同様に行った。
(1)200mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)を用いて、標準タンパク質として0.6%BSA溶液、糖化剤として1.5Mフルクトース(関東化学)(Fru)溶液、抗糖化剤として各濃度(0μM,12.6μM,42.0μM、126,0μM)のαモノグルコシルロイフォリン(αG-RFL)溶液を調製した。
(2)調製した各溶液を用いて、αモノグルコシルロイフォリンの濃度別に、下記表4に示した通りに、それぞれ試験溶液を作製した。
(3)恒温チャンバー「FMS-100」(東京理化器械(株))と往復振盪機「MMS-110」(東京理化器械(株))を用いて、試験溶液を37℃、180rpmで3日間振盪した。
(4)試験溶液を分光光度計「U-3900」((株)日立製作所)で420nmにおける吸光度が0.1〜1.0の間になるように希釈し、420nmの吸光度を測定することにより、試験溶液の褐変度を求めた。
(5)「BSA」溶液の吸光度をODa、「BSA+Fru」溶液の吸光度をODb、「BSA+Fru+αG-RFL」溶液の吸光度をODc、「αG-RFL」溶液の吸光度をODdとし、下記式より基準に対する褐変度の割合を算出した。
褐変度(%)=(ODc−ODa−ODd)/(ODb−ODa)×100
(結果・考察)
実施例5−2の結果を図12に示す。
図9に示すように、フルクトースは、グリセルアルデヒドと同様に、Dグルコースから生成されるAGEsの中間体に該当する。フルクトースはGAに変化してアミノ基(H2N)を有するタンパク質と反応して、AGEs(GLAP等)を生成する。
αモノグルコシルロイフォリンおよびフルクトースの存在下で、ウシ胎児血清アルブミン(BSA)の糖化処理を行った結果、αモノグルコシルロイフォリンの濃度が高まるにつれて、BSAの褐変度(%)が低下した(図12参照)。この抗糖化効果は、前記濃度が、測定した範囲では、14μM〜42μMで特に顕著であった。
この結果から、αモノグルコシルロイフォリンを有効成分とする抗糖化剤が有用であるとともに、αモノグルコシルロイフォリンを14μM〜42μM含有する抗糖化剤が好ましいことが分かる。また、42μMを超える範囲でも抗糖化の効果が高まると推認される。
[実施例5−3](αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(AGEs測定法I:GA)
以下の通りに、糖化剤としてグリセルアルデヒド(GA)を使用したAGEs測定法Iによりαモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果の確認を行った。
(1)実施例5−1と実施例5−2の反応後の溶液を、96ウェルプレート(蛍光用ブラック)にそれぞれ100μLずつ加えた。
(2)カートリッジ式多機能型マルチモードプレートリーダー「SpectraMax(商標)Paradigm(商標)」(ベックマン・コールター社)(以下単に「装置」という)と、該装置に取り付けられた状態で装置から発した光を所望の波長の光に変換して出射可能な蛍光カートリッジ「TUNE」(モレキュラーデバイス社)を用いて、総AGEs量としての蛍光強度(励起波長370nm、蛍光波長440nm)、クロスリン量としての蛍光強度(励起波長379nm、蛍光波長463nm)、ピロピリジン量としての蛍光強度(励起波長370nm、蛍光波長455nm)をそれぞれ測定した。
(3)「BSA」溶液の蛍光強度をFIa、「BSA+GA」溶液の蛍光強度をFIb、「BSA+GA+αG-RFL」溶液の蛍光強度をFIc、「αG-RFL」溶液の蛍光強度をFIdとし、下記式より総AGEs、クロスリン、ピロピリジンの生成量の割合を算出した(図13参照)。
生成割合(%)=(FIc−FIa−FId)/(FIb−FIa)×100
(結果・考察)
グリセルアルデヒドで糖化を誘導した実施例5−4では、総AGEs(図9の破線部分の化合物,図10参照)の量は、αモノグルコシルロイフォリンの濃度が高まるにつれて低下していくが(図13(A))、クロスリンやピロリジンの生成に対する効果は、少なくとも4.2μM〜42μMの範囲で特に優れた効果が確認された(図13(A)〜(B))。上記濃度が42μM以上であれば、さらに抗糖化の効果が得られると推察される。
以上の結果から、グリセルアルデヒドで糖化を誘導した場合において、αモノグルコシルロイフォリンを有効成分とする抗糖化剤が有用であることが再確認された。また、αモノグルコシルロイフォリンを4.2μM〜42μM、あるいはそれ以上で含有する抗糖化剤が好ましく、14μM〜42μM、あるいはそれ以上(i)で含有する抗糖化剤がより好ましく、特に42μM以上(ii)で含有する抗糖化剤が特に好ましいことが分かる。
[実施例5−4](αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(AGEs測定法II:フルクトース)
実施例5−4では、実施例5−1および実施例5−2において、糖化剤としてグリセルアルデヒドの代わりにフルクトースを用いて試験を行い、反応後の溶液をそれぞれ用いたこと以外は、実施例5−3と同様に試験を行った。
「BSA」溶液の蛍光強度をFIa、「BSA+Fru」溶液の吸光度をFIb、「BSA+Fru+αG-RFL」溶液の蛍光強度をFIc、「αG-RFL」溶液の蛍光強度をFIdとし、下記式より総AGEs、クロスリン、ピロピリジンの生成量の割合を算出した(図14参照)。
生成割合(%)=(FIc-FIa-FId)/(FIb-FIa)×100
(結果・考察)
図14(A)〜(C)に実施例5−4の結果を示す。
フルクトース(Frc)で糖化を誘導した実施例5−4では、総AGEs(図9の破線部分の化合物,図10参照)の量は、αモノグルコシルロイフォリンの濃度が高まるにつれて低下していき(図14(A))、クロスリンやピロピリジンの生成に対しても効果は4.2μM以上の範囲で優れた抗糖化効果が確認された(図14(B)〜(C))。
以上の結果から、フルクトースで糖化を誘導した場合においても、αモノグルコシルロイフォリンを有効成分とする抗糖化剤が有用であることが確認された。また、αモノグルコシルロイフォリンを4.2μM〜42μMで含有する抗糖化剤が好ましく、14μM〜42μMで含有する抗糖化剤がより好ましく、特に42μM以上で含有する抗糖化剤が特に好ましいことが分かる。
[実施例5−5](αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(AGEs測定法III:グリセルアルデヒド加速試験法)
上述した実施例5−1,実施例5−2における糖化の反応条件(試験溶液を37℃、180rpmで3日間振盪)を、糖化を促進する反応条件(試験溶液を50℃、180rpmで12時間振盪)に変更し、実施例5−3と同様にして、総AGEs量、クロスリン量、およびピロピリジン量をそれぞれ測定した。この結果を図15(A)〜(C)に示す。
(結果・考察)
反応条件を変更して糖化を促進することにより、実施例5−3よりも総AGEsの絶対的な生成量が増加することとなるが、その状況下でも、αモノグルコシルロイフォリンにより抗糖化効果が十分に得られた(図15(A))。αモノグルコシルロイフォリンの濃度と抗糖化効果との相関も強まり、より多くのAGEsの生成を阻止できた(図13(A)と図15(A)とを対比して参照)。この結果は、クロスリン量、ピロピリジン量についても同様の傾向となった(それぞれ、図13(B)と図15(B)を対比して参照、図13(C)と図15(C)を対比して参照)。
このことは、グリセルアルデヒドにより誘導される糖化において、入浴等による温度環境の変化によりAGEsの生成量が増加する状況下となった場合であっても、AGEsの生成を十分阻止できることを意味する。
[実施例5−6](αモノグルコシルロイフォリンによる抗糖化効果(AGEs測定法IV:フルクトース加速試験法))
上述した実施例5−1,5−2における糖化の反応条件(試験溶液を37℃、180rpmで3日間振盪)を、糖化を促進する反応条件(試験溶液を50℃、180rpmで12時間振盪)に変更し、実施例5−4と同様にして、総AGEs量、クロスリン量、およびピロピリジン量をそれぞれ測定した。この結果を図16(A)〜(C)に示す。
(結果・考察)
反応条件を変更して糖化を促進することにより、実施例5−4よりも総AGEsの絶対的な生成量が増加することとなるが、その状況下でもαモノグルコシルロイフォリンにより抗糖化効果が十分に得られた(図16(A))。αモノグルコシルロイフォリンの濃度と抗糖化効果との相関が高く、より多くのAGEsの生成が阻害された(図14(A)と図16(A)とを対比して参照)。この結果は、クロスリン量、ピロピリジン量についても同様の傾向となった(それぞれ、図14(B)と図16(B)を対比して参照、図14(C)と図16(C)を対比して参照)。
このことは、フルクトースによる糖化において、入浴等による温度環境の変化によりAGEsの生成量が増加する状況下となった場合であっても、AGEsの生成を十分阻止できることを意味する。
[実施例5−7/比較例1−1](αモノグルコシルロイフォリンと他フラボノイド配糖体の抗糖化効果の比較(AGEs測定法v:グリセルアルデヒド加速試験法)
αモノグルコシルヘスペリジン(αG-HES)、αモノグルコシルナリンジン(αG-NAR)についても実施例5−5と同様に試験を行い、蛍光強度から総AGEs量、クロスリン量、ピロピリジン量を測定した(比較例1−1)。また、αモノグルコシルロイフォリン(αG-RFL)を使用して実施例5−5と同様に試験を行った(実施例5−7)。なお、実施例5−7および比較例1−1のいずれにおいても、使用した各種フラボノイド配糖体の終濃度は140μMであった。この結果を図17(A)〜(C)に示す。
(結果・考察)
グリセルアルデヒド(GA)を糖化剤として使用し、糖化促進条件下、αモノグルコシルロイフォリン(αG-RFL)、αモノグルコシルヘスペリジン(αG-HES)およびαモノグルコシルナリンジン(αG-NAR)をそれぞれ140μMで使用して抗糖化試験を行った結果、αモノグルコシルロイフォリン(αG-RFL)(実施例5−7)は、他のフラボノイド配糖体(αG-HES, αG-NAR)と比較して、総AGEs量、クロスリン量およびピロピリジン量の生成量を低く抑える優れた抗糖化能を示した(図17(A)〜(C))
また、図17(A)〜(C)に示したように、実施例5−7では、実施例5−5のαモノグルコシルロイフォリンの使用濃度(終濃度:4.2μM〜42μM)と比較して高濃度のαモノグルコシルロイフォリン(140μM)を使用し抗糖化効果が得られたが、実施例5−7と実施例5−5と比較した場合、抗糖化能に差が無かった(図15および図17を対比して参照)。すなわち、終濃度が4.2μM〜42μMの範囲となるようにαモノグルコシルロイフォリンを含有した抗糖化剤が添加効果、経済性等を考慮すると好ましいことが分かる。
[実施例5−8/比較例1−2](αモノグルコシルロイフォリンと他フラボノイド配糖体の抗糖化効果の比較(AGEs測定法v:フルクトース加速試験法)
実施例5−7,比較例1−1において、グリセルアルデヒド(GA)の代わりにフルクトースを使用して実施例5−7,比較例1−1と同様に試験を行った。この結果を図18(A)〜(C)に示す。
(結果・考察)
フルクトースを糖化剤として使用し、糖化促進条件下、αモノグルコシルロイフォリン(αG-RFL)、αモノグルコシルヘスペリジン(αG-HES)およびαモノグルコシルナリンジン(αG-NAR)をそれぞれ140μMで使用して抗糖化試験を行った場合でも、αモノグルコシルロイフォリン(αG-RFL)(実施例5−8)は、他のフラボノイド配糖体(αG-HES, αG-NAR)と比較して、総AGEs量、クロスリン量およびピロピリジン量の生成量を低く抑える優れた抗糖化能を示した(図18(A)〜(C))。
また、図18(A)〜(C)に示したように、実施例5−8では、実施例5−6のαモノグルコシルロイフォリンの使用濃度(4.2μM〜42μM)と比較して高濃度のαモノグルコシルロイフォリン(140μM)を使用し抗糖化効果が得られたが、実施例5−8と実施例5−6と比較した場合、抗糖化能に殆ど差が無かった(図16および図18を対比して参照)。すなわち、終濃度が4.2μM〜42μMの範囲となるようにαモノグルコシルロイフォリンを含有した抗糖化剤が添加効果、経済性等を考慮すると好ましいことが分かる。
なお、上述したαモノグルコシルロイフォリンの抗糖化能は、細胞試験で確認されているので、経口投与以外の方法(静脈注射等の投与方法)でヒトや他の動物に投与された場合に特に抗糖化効果が得られることが推認される。
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態および実施例について説明してきたが、本発明はこれら実施形態および実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しないかぎり設計変更は許容される。

Claims (13)

  1. 下記工程(1)〜(2)を含むαモノグルコシルロイフォリンの製造方法:
    工程(1):α-1,4-グルカンとロイフォリンと水性溶媒が存在する条件下で、第1の酵素を前記α-1,4-グルカンの糖鎖に作用させて、前記α-1,4-グルカンの糖鎖からグルコースを切り出し、少なくとも前記ロイフォリンの第1糖の3”位に前記グルコースを転移させる第1反応工程(糖転移);
    工程(2):第1反応工程により得られた、1または2以上のαグルコシル基を有するαグルコシルロイフォリンの群に対して、α-1,4-グルコシダーゼ活性を有する第2の酵素を作用させて、前記αグルコシルロイフォリンのα-1,4-グルコシル基を取り除くことによりαモノグルコシルロイフォリンの濃度(純度)を高める第2反応工程(糖鎖整理)。
  2. 前記第2の酵素が、トランスグルコシダーゼ及び/又はグルコアミラーゼであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 第1反応工程の後から第2反応工程の前までの間、第2反応工程の間、又は、第2反応工程の後に、前記反応溶液中に含まれるロイフォリンに対して、βグルコシダーゼ活性を有する第3の酵素を作用させて前記ロイフォリンを分解し、分解により生じたアピゲニンを沈殿させた後、沈殿物を濾別することにより前記反応液中のαモノグルコシルロイフォリンの濃度(純度)を高める第3反応工程を経る請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記第1の酵素が、シクロデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ (EC2.4.1.19)であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の製造方法。
  5. 前記ロイフォリンがナリンジンを出発原料にして製造された、出発原料のナリンジンを含むロイフォリンであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
  6. αモノグルコシルロイフォリンを有効成分として含有する、リパーゼ阻害剤。
  7. αモノグルコシルロイフォリンを2mM以下含有する請求項6のリパーゼ阻害剤。
  8. ヒトまたは動物(ヒトを除く)の体内または体表面でリパーゼを阻害する箇所での最終濃度がαモノグルコシルロイフォリンを0.066mM〜0.66mMとなるように含有した、請求項7のリパーゼ阻害剤。
  9. αモノグルコシルロイフォリンを有効成分として含む、体臭抑制・炎症抑制剤。
  10. αモノグルコシルロイフォリンを有効成分として含む、肥満抑制剤。
  11. αモノグルコシルロイフォリンを有効成分として含む、抗糖化剤。
  12. αモノグルコシルロイフォリンの血中内または細胞内の濃度が4.2μM〜140μMとなるように製剤された、請求項11の抗糖化剤。
  13. ロイフォリンのグルコース構造単位のC3”位置にα1−3結合を介してグルコシル基が1個結合した下記式(3)のαモノグルコシルロイフォリン。
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