JP2008029341A - 味噌 - Google Patents

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Abstract

【課題】色調変化が抑制され、しかも味噌本来の風味を維持することにより風味良好で継続的に摂取することが容易であり、血圧降下作用等の生理機能を有することが可能で、簡便に製造できる味噌を提供する。
【解決手段】次の式(1)を満たすフラボノイド類を0.01〜5質量%含有する味噌。
Y/(X+Y)=0.05〜1 式(1)
ここで、XとYは、それぞれ下記の数のことである。
X:フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOH基の数
Y:フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOCH3基の数
【選択図】なし

Description

本発明は、フラボノイド類を含有する味噌に関する。
味噌は、古くは中国において、大豆を原料として作り出された食品であり、大和朝廷時代に朝鮮半島を経て日本に伝来したものである。その後、日本人により日本の気候風土に合わせて工夫を重ねて編み出された独自の製法によって造られるようになり、今日の味噌が完成した。また、味噌は単に調味料としてのみならず、栄養的にも優れた食品であり、蛋白質、脂肪の供給源である。更に、味噌を味噌汁として食することで、具として用いる野菜、海草、魚介類の良い給源とすることもできる。
味噌は一般には、蒸煮した大豆、米及び/又は麦等の穀物に、米及び/又は麦等を蒸煮し麹菌を培養したものを加え、食塩を混合し、醗酵、熟成して製造される。味噌は製造中、及び製造後の保存中に着色が進行することが知られている。この味噌の着色の度合いは、原料だけでなく、熟成条件(温度、塩分濃度)や殺菌処理の過熱条件によって異なると言われている。また、保存時の温度、時間(期間)、包装材料の他、溶存酸素濃度に依存し、様々な因子が関与する複雑な現象である。このように、味噌の持つ色調は、製造から出荷、出荷から消費者に至るまで、更には消費者の家庭での保存までの一連の過程において、常に変化するものである。また、製造する時期(季節)の違いにより色調が異なるなどにより、一定の品質を保証することができない場合には、味噌の商品価値を低下させるため、色調の維持が味噌製造業者にとって大きな課題となっている。
このような状況から、味噌の着色抑制をするために種々の技術が提案されている。これらの技術は、(1)他成分の添加、(2)原料の前処理、(3)醸造条件の改善、(4)その他、に大別される。(1)としては、ミョウバンなどの食品添加物を配合する方法、含硫化合物およびエンジオール構造を有する化合物を添加する技術、仕込時に黄蘗(きはだ)、梔子(くちなし)、茜のエキスを添加し醗酵を行う技術等が開示されている(特許文献1〜4)。(2)としては、原料大豆を酵素処理する技術、(3)としては、温度感受性の高い酵母を使用する方法、(4)としては、非通気性カップを用いる技術等が既に知られている(特許文献5〜7)。
一方、食品中に含まれる種々の成分の生理機能について、関心が高まってきている。生理機能を有する素材の一つとして、フラボノイド類が挙げられる。フラボノイド類は、植物性食品中に含まれ、例えば血糖値低下作用、血圧降下作用、脂質代謝改善作用、アレルギー抑制作用等を有することが知られている(特許文献8〜13)。
また、フラボノイド類を、食品、調味料に応用する技術が提案されている(特許文献14〜17)。更に、フラボノイド類のうち、メトキシ残基が多いフラボンの塩味緩和作用、甘味残存抑制作用等が知られているが、フラボノイド類による味噌の色調変化を抑制する作用、塩味の持続性増強作用については知られていない。この他、フラボノイド類には、高度甘味料の甘味持続性を低減する作用や、野菜飲料や生薬類の青臭み、渋味、酸味低減作用及び不快臭や不快な味の低減作用等を有することが知られている(特許文献18〜24)。
特公昭41-4397号公報 特公昭37-15295号公報 特開2000-236834号公報 特開平8-196230号公報 特開昭63-279761号公報 特開2000-245381号公報 特開昭58-175464号公報 特開平8-283154号公報 特開2001-240539号公報 特開2002-47196号公報 特開2005-225847号公報 特開2000-78955号公報 特開2000-78956号公報 国際公開98/18348号パンフレット 特開2005-168458号公報 特開2004-290129号公報 特開平9-187244号公報 特開平6-335362号公報 特開平8-256725号公報 特開平11-318379号公報 国際公開93/10677号パンフレット 米国特許4031265号明細書 米国特許4154862号明細書 特開2004-49186号公報
前述の味噌の着色を改善又は抑制する従来の方法には、効果が十分でない、設備投資が必要となりコストが高くなる、工程が煩雑になる等の課題が存在する。また、簡便な方法として提案されている食品添加物等の添加では、味噌本来の風味に影響が生じること、色調変化を抑制する効果が不十分なことが課題である。
そこで、本発明の目的は、色調変化が抑制され、しかも味噌本来の風味を維持することにより風味良好で継続的に摂取することが容易であり、血圧降下作用等の生理機能を有し、簡便に製造できる味噌を提供することにある。
本発明者らは、上記課題について検討を行った結果、味噌に対して特定のフラボノイド類を特定量配合することにより、味噌本来の風味が維持されて、味噌の色調変化が抑制され、しかも血圧降下作用等の生理機能を有し、風味良好な味噌が簡便に得られることを見出した。
すなわち、本発明は、次の式(1)を満たすフラボノイド類を0.01〜5質量%含有する味噌を提供するものである。
Y/(X+Y)=0.05〜1 式(1)
ここで、XとYは、それぞれ下記の数のことである。
X:フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOH基の数
Y:フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOCH3基の数
本発明によれば、色調変化が抑制され、しかも味噌本来の風味を維持することにより風味良好で継続的に摂取することが容易であり、血圧降下作用等の生理機能を有する味噌を簡便に得ることができる。
本発明における味噌とは、一般に言われる、普通味噌と加工味噌を含み、普通味噌としては、原料によって米味噌、麦味噌、豆味噌が挙げられる。また普通味噌には、前記の3種又は2種の味噌を調合した調合味噌や、平成13年4月に創設された保健機能食品制度により定められた成分を一定基準以上含む栄養強化味噌、衛発第781号記載の特別用途食品である減塩味噌も含まれる。更にこれら普通味噌は、生タイプ又は火入れ等の殺菌処理したタイプのいずれをも含む。加工味噌とは、調味料としての味噌ではなく、そのまま食品として食べる味噌のことを指し、例として金山寺味噌,ピーナッツ味噌,ゆず味噌などが挙げられる。
これらの味噌が、非乾燥味噌(半固形状)の場合は、水分含量は30〜50質量%(以下、単に「%」で示す)、好ましくは40〜48%、更に42〜47%であるのが好ましい。また、乾燥味噌(粉末状、顆粒状)の場合は、水分含量が2〜7%、好ましくは3〜6%、更に4〜5%であるのが好ましい。
食塩の過多な摂取は、腎臓病、心臓病、高血圧症に悪影響を及ぼすことから食塩の摂取量を制限するために、本発明の味噌が、低塩味噌または減塩味噌であるのが好ましい。本発明において、減塩味噌とは、ナトリウム含量が通常の同種の食品における含量の50%以下であるものをいい、非乾燥味噌でナトリウム含量が2.1%〜2.55%、好ましくは2.3%〜2.5%であるのが好ましい。なお、乾燥味噌ではナトリウム含量が4%〜5.5%、好ましくは4.5%〜5%であるのが好ましい。
また、本発明において、低塩味噌とは、ナトリウム含量が通常の同種の食品における含量の50%超〜80%以下であるものをいい、非乾燥味噌でナトリウム含量が2.55%超〜4.2%未満、好ましくは3.5%〜4%であるのが好ましい。なお、乾燥味噌ではナトリウム含量が5.5%超〜9%未満、好ましくは6.5%〜7.9%であるのが好ましい。
本発明において、ナトリウムは、食品成分表示上の「ナトリウム」又は「Na」を指し、味噌中に塩の形態で配合されているものをいう(以下に記載するナトリウム以外のアルカリ金属又はアルカリ土類金属についても同様である)。ナトリウムは、人体にとって重要な電解質のひとつであり、その大部分が細胞外液に分布している。濃度は135〜145mol/L程度に保たれており、細胞外液の陽イオンの大半を占める。そのため、ナトリウムの過剰摂取は濃度維持のための水分貯留により、高血圧の大きな原因となる。
本発明の味噌は、ナトリウムを0.4〜8%含有するが、好ましくは1.4〜7.4%、より好ましくは2.2〜6.2%、更に3.1〜5.7%、特に3.6〜5.4%、殊更3.8〜5.1%含有するのが、塩味、保存性、食塩摂取量低減、工業的生産性の点で好ましい。
本発明において、ナトリウムとして、無機ナトリウム塩、有機酸ナトリウム塩、アミノ酸ナトリウム塩、核酸ナトリウム塩等を用いることができる。具体的には、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、これらの2種以上の混合物が挙げられる。このうち、塩化ナトリウム(NaCl)を主成分とする食塩を使用するのが、コストの点で好ましい。
食塩として、様々なものが市販されており、例えば、日本たばこ産業(株)が扱っている食塩、並塩、あるいは海外からの輸入天日塩等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、食塩は乾燥物基準で塩化ナトリウム100質量部(以下、単に「部」で示す)に対して、塩化マグネシウムを0.01〜2部、塩化カルシウムを0.01〜2部、塩化カリウムを0.01〜2部含有するものが、風味、工業的生産性の点で好ましい。本発明において、ナトリウムの含有量は原子吸光光度計(日立偏光ゼーマン原子吸光光度計Z−6100)により測定することができる。
また、本発明における味噌は、醸造の際に用いる麹としては一般的なものを用いることができ、例えばコメ麹、麦麹、豆麹を用いることができる。またこれらの穀類以外の麹や、麹原料や醸造前の麹にα化処理、乾燥処理等の前処理を施したものを用いて醸造したものでも良い。
本発明における味噌に用いる原料は、米、麦、大豆など一般的な原料を用いることができる。また、これら原料に前処理を施したもの、例えば多糖類分解酵素を作用させたもの、温水処理したもの、過熱処理により蛋白変性させたもの、殺菌処理を施したもの等も用いることができる。
本発明における味噌の製造において、醸造における熟成工程は通常の条件で行うことができ、また、短時間あるいは長時間のいずれであっても良い。
本発明における味噌は、上記の普通味噌、加工味噌または調合味噌のいずれかに限定されないが、その味噌にフラボノイド類を含有することが必要である。フラボノイド類の含有量は、味噌中に0.01〜5%であるが、好ましくは0.06〜4.5%、更に0.08〜4%、特に0.1〜2%、殊更0.17〜1%であることが色調変化の抑制効果、味噌本来の風味の維持、生理効果の点から好ましい。
本発明におけるフラボノイド類とは、フラボノイド、またはその配糖体(以下、「フラボノイド配糖体」または単に「配糖体」と表記する)、更にこれに糖が結合したもの(配糖体も糖が結合したものであるが、これと区別するため配糖体に更に糖が結合したものを、以下「糖付加物」と表記する)、酵素処理したものを含む。フラボノイドとは、狭義には、フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノノール、イソフラボンをいうが、広義にはC−C−Cを基本骨格とする一群の化合物をいい、フラバン、フラバノール、イソフラバノン、アントシアニジン、ロイコアントシアニジン、プロアントシアニジン等も含まれる(「食品の変色の化学」木村進ら編著、光琳、平成7年)。本発明におけるフラボノイドは広義のものをいい、好ましくは狭義のものをいう。
また、フラボノイド分子中の両端のベンゼン環をそれぞれA環、B環と称し、中間のピラン環(またはピロン環)をC環と称するが、それぞれの分子中のA環、B環に結合したOH基(水酸基)の数が異なったり、OCH3基(メトキシ基)が結合したもの等もフラボノイドに含まれる。例えば、タンゲレチン、オラネチン、シネンセチン、イソシネンセチン、リモシトリン、リモシトール、ノビレチン、アカセチン、ディスメチン、アピゲニン、ルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、ミリセチン、イソラムネチン、クロソエリオール、イソサクラネチン、ヘスペレチン、ナリンゲニン、エリオディクティオール、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニステイン、ペラルゴニジン、シアニジン、ペオニジン、デルフィニジン、ペツニジン、マルビジン、トリシン、モリン、ペクトリナリゲニン等が挙げられる。
フラボノイド配糖体とは、前記フラボノイドに糖がグリコシド結合したものを指し、前記の糖が結合していないものをアグリコンと称す。配糖体には、フラボノイド分子中の水酸基にグリコシド結合したO−グリコシドと、A環、B環に結合したC−グリコシドがある(「食品の変色の化学」木村進ら編著、光琳、平成7年)。
フラボノイド配糖体としては、フラボン配糖体、フラバン配糖体、フラバノン配糖体、フラバノール配糖体、フラバノノール配糖体、フラボノール配糖体、イソフラボン配糖体、イソフラバノン配糖体、アントシアニジン配糖体、ロイコアントシアニジン配糖体、プロアントシアニジン配糖体等が挙げられるが、フラボン配糖体、フラバン配糖体、フラバノン配糖体、フラバノール配糖体、フラバノノール配糖体、フラボノール配糖体、イソフラボン配糖体、イソフラバノン配糖体の1種又は2種以上の混合物であるのが好ましい。また、前記のそれぞれの分子中のA環、B環に結合したOH基(水酸基)の数が異なったもの、OCH3基(メトキシ基)が結合したもの等も含む。これらのうち、特に血圧降下作用を有するものが、本発明の主旨に合致するので好ましい。
フラボノイドに結合している糖類としては、グルコース、ガラクトース、ラムノース、キシロース、アラビノース、アピオース等の単糖、ルチノース、ネオヘスペリドース、ソフォロース、サンブビオース、ラミナリビオース等の二糖、ゲンチオトリオース、グルコシルルチノース、グルコシルネオヘスペリドース等の3糖、これらの糖付加物、これらの混合物が挙げられ、風味、水への溶解性の点から、糖付加物を使用するのが好ましい。
フラボノイド配糖体としては、上記アグリコンと糖類の結合したもので、具体的にはヘスペリジン、ネオヘスペリジン、エリオシトリン、ネオエリオシトリン、ナリンギン、ラリルチン、プルニン、ジディミン、ポンシリン、アストラガリン、イソケルシトリン、ケルシトリン、ルチン、ハイペリン、ケルシメリトリン、ミリシトリン、ダイジン、グリシチン、ゲニスチン、カリステフィン、クリサンテミン、シアニン、ケラシアニン、イデイン、メコシアニン、ペオニン、デルフィン、ナスニン、ペツニン、マルビン、エニン、ナリルチン、ロイフォリン、アピイン、リナロシド、ブラッシジン、ナルシッシン、これらの糖付加物、これらから選択される1種又は2種以上の混合物が挙げられ、ヘスペリジン、メチルヘスペリジン、これらの糖付加物であるヘスペリジン類が好ましい。特に、風味、水への溶解性の点から、上記フラボノイド配糖体の糖付加物、例えば、ヘスペリジンのグルコース付加物(商品名:αG−ヘスペリジンPA−T、東洋精糖製)を用いるのが好ましい。
本発明において、フラボノイド類は、下記式(1)を満たすのが、色調変化の抑制、味噌本来の風味の維持の点で好ましい。
Y/(X+Y)=0.05〜1 式(1)
ここで、XとYは、それぞれ下記の数のことである。
X:フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOH基の数
Y:フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOCH3基の数
本発明において、式(1)の数値は0.05〜1であるのが好ましいが、更に好ましくは0.1〜0.7、より好ましくは0.15〜0.5、更に0.2〜0.45、特に0.25〜0.4、殊更0.27〜0.35であるのが、色調変化の抑制、味噌の本来の風味の維持の点で好ましい。特に、ベンゼン環に結合したOH基は、保存中に酸化されやすいことから、OH基の替わりにOCH3基が結合しているものが好ましく、式(1)の数値が上記範囲であるのが好ましい。式(1)を満たす具体例としては、ヘスペリジン、メチルヘスペリジン、ペクトリナリゲニン、ノビレチン、ブラッシジン、ナルシッシン、リナロシド、トリシン、イソラムネチン、タンゲリチン、シネンセチン、ディオスミン、アカセチン、ヘスペレチン、ヘスペリジナーゼ処理したヘスペリジン、マルビン、エニン、ペツニン、ペオニン、及びこれらの糖付加物から選択される1種又は2種以上混合物が挙げられ、好ましくはヘスペレチン、ヘスペリジン、ヘスペリジン糖付加物、ヘスペリジナーゼ処理したヘスペリジン、メチルヘスペリジン、これらから選択される1種又は2種以上の混合物であるのが好ましく、特にヘスペリジン、ヘスペリジン糖付加物、又はこれらの混合物であるのが、色調変化抑制、風味、水への溶解性、工業的生産性の点で好ましい。
本発明において、フラボノイド類は、フラボノイド配糖体を含むものであるのが、溶解性の点で好ましい。フラボノイド配糖体は、全フラボノイド中、下記式(3)で表される配糖体の質量%が50%以上であるのが好ましく、より好ましくは70%以上、更に80%以上であるのが好ましく、更に85〜100%、特に90〜99.9%、殊更91〜99%であるのが、風味、溶解性の点で好ましい。
配糖体/(配糖体+アグリコン)×100 (%) 式(3)
本発明において、フラボノイド配糖体を構成する糖が、下記式(2)を満たすものであるのが、保存性の点で好ましい。
R/Z=0〜0.5未満 式(2)
ここで、RとZは、それぞれ下記の数のことである。
R:フラボノイド配糖体1モル中のデオキシ糖のモル数
Z:フラボノイド配糖体1モル中の全構成糖のモル数
本発明において、必要に応じて、配糖体にさらに糖を付加したり、糖を削除して、デオキシ糖の割合を低減することができる。デオキシ糖としては、ラムノース、フコースなどが例示され、ラムノースであるのが好ましい。
本発明において、フラボノイド類は、R/Zの値が0〜0.5未満(式2)のフラボノイド配糖体を含むものであるのが好ましく、より好ましくは0.05〜0.47、更に0.1〜0.45、特に0.15〜0.4、殊更0.2〜0.38であるのが好ましい。
本発明においては、R/Zの値が0〜0.5未満(式2)に調製されたフラボノイド配糖体を、以下「糖比調整配糖体」と表記する。
糖比調整配糖体は、クリシマリン、アストラガリンのようなグルコース配糖体を含むフラボノイド混合物、及び/又はグルコース配糖体に、ヘスペリジン、ジオスミン等のルチノース配糖体のようなデオキシ糖を含む配糖体を混合し、R/Z比を調整したフラボノイド混合物でもよい。
また、糖比調整配糖体は、ネオポンシリン(イソサクラネチン-7-ルチノサイド)、ポンシリン(イソサクラネチン-7-ネオヘスペリドサイド)、ナルッシン(イソラムネチン-3-ルチノサイド)、ジオスミン(ジオスメチン-7-ルチノサイド)、ネオジオスミン(ジオスメチン-7-ネオヘスペリドサイド)、ヘスペリジン(ヘスペレチン-7-ルチノサイド)、ネオヘスペリジン(ヘスペレチン-7-ネオヘスペリドサイド)等のルチノース及び/又はネオヘスペリドース配糖体を、稲葉ら(日本食品工業学会誌、Vol.43、No.11、p1212(1996))の方法等による酸加水分解、又は増川ら(日本食品工業学会誌、Vol.32、No.12、p869(1985))の方法等による酵素加水分解することにより得られるイソサクラネチン-7-グルコシド、イソラムネチン-3-グルコシド、ジオスメチン-7-グルコシド、ヘスペレチン-7-グルコシド等の加水分解グルコース配糖体を含むフラボノイド混合物及び/又はグルコース配糖体と、ヘスペリジン、ジオスミン等のルチノース配糖体のようなデオキシ糖を含む配糖体とを混合し、R/Z比を調整したフラボノイド混合物でもよい。
更に、糖比調整配糖体は、ネオポンシリン(イソサクラネチン-7-ルチノサイド)、ロイフォリン(アピゲニン-7-ルチノサイド)、ナルッシン(イソラムネチン-3-ルチノサイド)、ジオスミン(ジオスメチン-7-ルチノサイド)、ヘスペリジン(ヘスペレチン-7-ルチノサイド)等のルチノース配糖体の糖鎖に、米谷ら(Biosci. Biotech. Biochem.、Vol.58、No.11、p1990(1990))の方法等により糖を付加して得られるグルコシルネオポンシリン、グルコシルロイフォリン、グルコシルナルッシン、グルコシルジオスミン、グルコシルヘスペリジン等のルチノース配糖体糖付加物を含むフラボノイド混合物や、ポンシリン(イソサクラネチン-7-ネオヘスペリドサイド)、ネオジオスミン(ジオスメチン-7-ネオヘスペリドサイド)、ネオヘスペリジン(ヘスペレチン-7-ネオヘスペリドサイド)、ナリンギン(ナリゲニン-7-ネオヘスペリドサイド)等のネオヘスペリドース配糖体の糖鎖に米谷ら(Biosci. Biotech. Biochem.、Vol.60、No.4、p645(1996))の方法等により糖を付加して得られるグルコシルポンシリン、グルコシルネオジオスミン、グルコシルネオヘスペリジン、グルコシルナリンギン等のネオヘスペリドース配糖体糖付加物を含むフラボノイド混合物、又はルチノース配糖体糖付加物および/又はネオヘスペリドース配糖体糖付加物と、ヘスペリジン、ジオスミン等のルチノース配糖体のようなデオキシ糖を含む配糖体とを混合し、R/Z比を調整したフラボノイド混合物でもよい。
本発明において、フラボノイド類は、R/Z=0〜0.5未満の糖比調整配糖体を
含むものであるのが好ましい。フラボノイド類中の該糖比調整配糖体の含有量は、50%以上であるのが好ましく、更に60〜100%、特に70〜97%、殊更80〜95%であるのが好ましい。
更に、本発明において、フラボノイド類は、前出の式(1)の値(Y/(X+Y))が0.1〜0.35の範囲にある場合、R/Z=0〜0.45未満、更に、R/Z=0.1〜0.4であることが、塩濃度が高い溶液への溶解性、保存安定性を向上させる点から好ましい。
また、Y/(X+Y)の値が0.36〜1未満の範囲にある場合、R/Z=0〜0.35であること、更に、R/Z=0.1〜0.33であることが水溶性、保存安定性を向上させる点から好ましい。
本発明において、フラボノイド類の含有量は、高速液体クロマトグラフィーを用いて、測定することができる(「食品の変色の化学」木村進ら編著、光琳、平成7年)。特に、ヘスペリジン類の含有量は、論文記載の方法で測定できる(Biosci. Biotech. Biochem.,58(11),1990,1994年)。
本発明の味噌において、ナトリウム含量が低い減塩味噌や低塩味噌の場合は、更にカリウムを含有するのが、塩味増強の点で好ましい。カリウムの含有量は0.4〜10%であるのが好ましく、より好ましくは0.7〜5%、更に1〜3.2%、特に1.1〜2.4%、殊更1.3〜1.8%であることが、苦味や刺激味といったカリウム由来の異味を生じない点から好ましい。また、カリウムは塩味があり、かつ異味が少ない点から塩化カリウムであることが好ましい。塩化カリウムを用いる場合は、その含有量を0.7〜19%、好ましくは1.3〜9.5%、更に1.9〜6.1%、特に2.1〜4.5%、殊更2.4〜3.5%とすることが好ましい。
本発明において、カリウムの含有量は原子吸光光度計(Z−6100形日立偏光ゼーマン原子吸光光度計)により測定することができる。
本発明の味噌には、上記フラボノイド類の他に、必要に応じ、旨味調味料、無機塩、酸味料、アミノ酸類、核酸、糖類、賦形剤、香辛料、旨味以外の調味料、抗酸化剤、着色料、保存料、強化剤、乳化剤、ハーブ、スパイス、エタノール等の食品に使用可能な各種添加物を使用することができる。
本発明の味噌に旨味調味料を添加する場合には、含有量は味噌中に0.1〜10%であるのが、まろやかでコクのある風味を醸し出すことができるので好ましく、より好ましくは0.5〜7%、更に1〜5%、特に1.5〜4%、殊更2〜3.5%含有することが好ましい。用いられる旨味調味料としては、タンパク質・ペプチド系調味料、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、エキス系調味料、有機酸塩系調味料が挙げられるが、このいずれも使用することができる。
エキス系調味料としてはだし類が挙げられ、鰹節、宗田節、鮪節、鯵節、鯖節、鰯節、あご節などの魚節の粉砕物又はこれらの削り節、あるいは、鰯、鯖、鯵、トビウオなどを干して乾燥した煮干し類などを水、熱水、アルコール、醤油などで抽出して得られるものや、昆布などの海藻類、椎茸などのきのこ類を抽出して得られるもの、これらを混合してから抽出して得られたもの、これらの抽出物を混合したもの等を用いることができる。
核酸系調味料としては、酵母エキス、グアニル酸、イノシン酸等のナトリウム、カリウムあるいはカルシウム塩等が挙げられる。核酸系調味料の含有量は0〜0.2%が好ましく、0.01〜0.1%が特に好ましい。
酸味料としては、乳酸、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等を使用することができる。中でも乳酸、リンゴ酸、クエン酸が好ましく、特に乳酸が好ましい。乳酸の含有量は0〜2%が好ましく、0.3〜1%が特に好ましい。また、リンゴ酸、クエン酸の含有量は0〜0.2%が好ましく、0.02〜0.1%が特に好ましい。必要に応じて、食酢、果汁等を使用することもでき、ゆず、だいだい、すだち、かぼす、レモンなどの柑橘果汁を用いるのが風味の点で好ましい。
本発明においては、フラボノイド類以外に、血圧降下作用を有する物質を添加してもよい。血圧降下作用を有する物質としては、γ−アミノ酪酸、食酢、ニコチアナミン、核酸誘導体、醤油粕、スフィンゴ脂質、ポリフェノール類、アンジオテンシン変換酵素阻害作用物質等が挙げられる。これら物質の味噌中の含有量は0.05〜5%、更に0.2〜3%、特に0.5〜2%であるのが、生理機能、風味、安定性の点で好ましい。
本発明品の味噌の製造方法としては、醸造前にフラボノイド類を添加し醸造を行っても良い、または、醸造後熟成終了した生味噌にフラボノイド類を適宜添加し混合しても良い。更に、調味剤等の副成分を混合機により攪拌,混合,混錬した後に、火入れ(加熱)処理を行い味噌中の酵素を失活させた後にフラボノイド類を添加混合しても良いが、醸造・熟成中の酵素の影響などを考慮すると熟成終了後、あるいは、副成分の添加時、火入れ処理後に添加することが好ましい。また、フラボノイド類を添加する場合は粉体のまま、あるいは水溶液または水に分散させた状態で添加することができる。粉体の状態でフラボノイド類を添加する場合は、フラボノイド類の粒径は特に限定されるものではないが、粒径が細かいものの方が均一に混合、分散できる点で好ましい。
本発明の味噌は、容器に充填して容器詰味噌とすることが使い勝手、安定性の点で好ましい。充填する容器としては、容量が1g〜25kgであるのが好ましく、より好ましくは15g〜5kg、更に50g〜2kg、特に100g〜1kg、殊更150〜500gであるのが、安定性、使い勝手の点で好ましい。容器詰味噌とする場合に使用する包材としては、ガスバリア性の高いフィルム包材、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)/エチレンビニルアルコール重合体/低密度ポリエチレン(PE)からなる包材、PET/アルミニウム/PEからなる包材が挙げられ、その他の包材としてはPETのみからなる包材、合成樹脂性の包材を用いた袋状の容器、または成型された容器、ガラス瓶など通常の形態を用いることができる。本発明において、容器詰味噌とする場合に充填する味噌としては、非乾燥味噌(半固形状)であるのが好ましい。
本発明の味噌は、家庭用の味噌あるいは料理店用の味噌として利用することができる。例えば、味噌汁、味噌田楽、味噌煮などの各種味噌料理に利用することができる。また、味噌加工食品としても用いることができ、例えば、調味味噌、田楽味噌、なべ物用味噌だし、味噌煮込みうどん用のスープ、味噌ラーメン用のスープ、あるいは液状タイプ味噌などが挙げられる。
本発明の味噌は、味噌にフラボノイド類を所定量配合することにより、味噌の色調変化が抑制され、しかも味噌の風味を変えずに維持することにより、日常生活の食事場面において継続摂取することが容易であり、さらにフラボノイド類の生理機能により、高血圧症が改善される効果がある。従って、本発明の味噌の容器には、「血圧が気になる方に適しています」、「血圧が高めの方に適しています」、「血圧を下げる働きがある」、「血圧調整作用がある」等、表示することができる。
(1)試験品1〜10
〔サンプル調製〕
表1に示す配合で、下記の味噌とフラボノイド類を混合し、スパチュラで混練して、試験品1〜10を調製した。
・味噌
減塩味噌:減塩みそ(長野味噌(株))
普通味噌:信州味噌 中甘口(宮坂醸造(株))
白味噌:西京白みそ<上撰>((株)西京味噌)
・フラボノイド類
ヘスペリジン糖付加物:αG−ヘスペリジンPA−T(東洋精糖製、Y/(X+Y)=0.33、R/Z=0.36)、ルチン糖付加物:αG−ルチンPS(東洋精糖製、Y/(X+Y)=0、R/Z=0.36)
Figure 2008029341
〔サンプルの評価〕
調製した試験品1〜10をポリエチレン製チャック付き袋(ユニパック:B−4(85×60×0.04mm))に60g入れ、恒温槽(40℃/75%RH)に静置した。経時的に色調を、みそ用測色計(MINOLTA製ColorReader:CR−13型)にて測定した。明るさを示すL値を、色調変化の指標とした。その結果を表2に示す。また、各試験品について、官能で風味評価を行った。
Figure 2008029341
減塩味噌において、フラボノイド類としてヘスペリジン糖付加物を添加した試験品3、4は、保存後においても味噌本来の風味を維持した。また、試験品1と比較しても明るい色調を示し、またその変化も抑制された。尚、試験品2は、渋味・苦味を有し、好ましい風味ではなかった。
白味噌において、フラボノイド類としてヘスペリジン糖付加物を添加した試験品7は、保存後においても味噌本来の風味を維持した。また、試験品5、6と比較して色調の変化が抑制された。尚、試験品6は、渋味・苦味を有し、好ましい風味ではなかった。
普通味噌において、フラボノイド類としてヘスペリジン糖付加物を添加した試験品9、10は、保存後も味噌本来の風味を維持した。また、試験品8と比較して色調の変化が抑制された。
このように、特定のフラボノイド類を配合することにより、味噌本来の風味を有しつつ、色調変化が抑制されることが示された。
(2)試験品11〜17
〔サンプル調製〕
表1に示す配合で、下記の味噌とフラボノイド類を混合し、スパチュラで混練して、試験品11〜17を調製した。
・味噌
減塩味噌:減塩みそ(長野味噌(株))
・フラボノイド類
ヘスペリジン糖付加物:αG−ヘスペリジンPA−T(東洋精糖製、Y/(X+Y)=0.33、R/Z=0.36)、ルチン糖付加物:αG−ルチンPS(東洋精糖製、Y/(X+Y)=0、R/Z=0.36)、システイン:(和光純薬工業(株))、アスコルビン酸:(和光純薬工業(株))。
〔サンプルの評価〕
調製した試験品11〜17を、20gずつIWAKI社、プラスチック製滅菌シャーレSH90−15(浅型90×15mm)の全面に厚さ4mm程度に伸展させた。次いで、半面にはラップ(サランラップ(登録商標)、以下同じものを使用)を密着させて直接空気と触れないようにし(ラップ系)、他方の半面は何も密着させずに直接空気と接触するようにした(開放系)。ラップ系は、容器に詰めた場合を想定したものである。これらを恒温槽(37℃/75%RH)に静置し、経時的に色調を(1)と同様の方法で測定した。その結果を表3に示す。また、各試験品について、官能で風味評価を行った。
Figure 2008029341
フラボノイド類としてヘスペリジン糖付加物を添加した試験品14、15は、保存後も味噌本来の風味を維持した。また、試験品11〜13のいずれと比較しても明るい色調を示した。この傾向は、ラップ系、開放系のどちらの条件においても同様に認められたが、ラップ系の方が、色調変化が抑制されることが明らかとなった。すなわち、容器詰めの方が、色調変化抑制の点で好ましいことが示された。尚、試験品12、13は、渋味・苦味を有し、好ましい風味ではなかった。
また、試験品16は酸味が感じられ、試験品17は硫黄臭が感じられて、好ましい風味ではなかった。
このように、特定のフラボノイド類を配合することにより、味噌本来の風味を有しつつ、色調変化が抑制されることが示された。
(3)試験品18〜27
〔サンプル調製〕
表4に示す配合で、下記の味噌とフラボノイド類を混合し、スパチュラで混練して、試験品18〜27を調製した。
・味噌
減塩味噌:おいしく塩分1/2みそ(マルコメ(株))
低塩味噌:うす塩 赤だし(イチビキ(株))
普通味噌:神州一味噌 み子ちゃん印(宮坂醸造(株))
・フラボノイド類
ヘスペリジン糖付加物:αG−ヘスペリジンPA−T(東洋精糖製、Y/(X+Y)=0.33、R/Z=0.36)、ルチン糖付加物:αG−ルチンPS(東洋精糖製、Y/(X+Y)=0、R/Z=0.36)、カテキン:テアフラン90S:(伊藤園(株))、ヘスペリジン酵素処理物:酵素処理ヘスペリジンA。
尚、上記酵素処理ヘスペリジンAは、増川らの報文(前出)を参考にして調製し、分析を行った。すなわち、ヘスペリジン1gを1NのNaOHで溶解させた後、1NのHClでpHを4とした。この液にヘスペリジナーゼ(「可溶性ヘスペリジナーゼ<タナベ>2号」、田辺製薬)を1g加え、50℃にて4時間反応を行った。次いで、ろ紙(ToyoNo.5)でろ過し、蒸留水で洗浄して、ろ液を集めた。これを1NのNaOHで中和した後、凍結乾燥して、酵素で加水分解処理したヘスペリジン組成物を得た。HPLCを用いて組成分析を行ったところ、7−グルコシルヘスペレチン含量56.4%、ヘスペレチン含量14.6%、ヘスペリジン含量29.0%であった(Y/(X+Y)=0.33、R/Z=0.17)。
〔サンプルの評価〕
調製した試験品18〜27を、20gずつIWAKI社、プラスチック製滅菌シャーレSH90−15(浅型90×15mm)の全面に厚さ4mm程度に伸展させた。この色調を(1)と同様に測定した。次いで、味噌の表面をラップで被覆し、ラップを密着させて直接空気と触れないようにした。これを恒温槽(40℃/75%RH)に静置した。3日後にラップを外して、色調を測定した。また、何も添加しない味噌(コントロール)のL値の初期値を100とした時の、3日後の相対値を各サンプルについて求めた。結果を表4に示す。
Figure 2008029341
表4に示すように、減塩味噌のコントロールである試験品18よりも、糖付加ルチンを含む試験品19や、カテキンを含有する試験品20の色調は低下し、好ましいものではなかった。これに対し、ヘスペリジン糖付加物を配合した試験品21、ヘスペリジン酵素処理物を添加した試験品22の色調は、コントロールとほぼ同等かそれ以上の値を呈し、好ましいものであった。
また、低塩味噌のコントロールである試験品23よりも、ヘスペリジン糖付加物を含む試験品24の色調は、コントロールよりも高い値を示し、好ましいものであった。
更に、普通味噌のコントロールである試験品25よりも、カテキンを含有する試験品26の色はくすみ、L値が低下して、好ましいものではなかった。ヘスペリジン糖付加物を含有する試験品27の色調は、コントロールと同等の値となった。
このように、代表的なフラボノイドであるカテキンを配合すると色がくすんでL値が低下した。これに対して、特定のフラボノイドを添加することで、フラボノイドが含有されているにもかかわらず、色調変化が抑制されることが明らかとなった。
(4)試験品28〜35
〔サンプル調製〕
表5に示す配合で、下記の味噌と塩化カリウム、フラボノイド類を混合し、スパチュラで混練して、試験品28〜35を調製した。
・味噌
減塩味噌:おいしく塩分1/2みそ(マルコメ(株))
低塩味噌:タケヤみそ 塩ひかえめ((株)竹屋)
・塩化カリウム
塩化カリウム(和光純薬工業(株))
・フラボノイド類
ヘスペリジン糖付加物:αG−ヘスペリジンPA−T(東洋精糖製、Y/(X+Y)=0.33、R/Z=0.36)、カテキン:テアフラン90S(伊藤園(株))
〔サンプルの評価〕
調製した試験品28〜35を、20gずつIWAKI社、プラスチック製滅菌シャーレSH90−15(浅型90×15mm)の全面に厚さ4mm程度に伸展させた。この色調を(1)と同様に測定した。次いで、味噌の表面をラップで被覆し、ラップを密着させて直接空気と触れないようにした。これを恒温槽(40℃/75%RH)に静置した。3日後にラップを外して、色調を測定した。また、何も添加しない味噌(コントロール)のL値の初期値を100とした時の、3日後の相対値を各サンプルについて求めた。結果を表5に示す。
Figure 2008029341
表5に示すように、減塩味噌のコントロールである試験品28、これに塩化カリウムを2%添加した試験品29よりも、代表的なフラボノイドであるカテキンを含む試験品30の色調は低下し、好ましいものではなかった。これに対し、ヘスペリジン糖付加物を添加した試験品31の色調は、コントロールとほぼ同等かそれ以上の値を呈し、好ましいものであった。
また、低塩味噌のコントロールである試験品32、これに塩化カリウムを2%添加した試験品33よりも、カテキンを含有する試験品34の色はくすみ、L値は低下して、好ましいものではなかった。一方、ヘスペリジン糖付加物を配合した試験品35の色調は、コントロールよりも高い値を示し、好ましいものであった。
このように、塩化カリウムを含む味噌に、代表的なフラボノイドであるカテキンを配合すると色がくすんでL値が低下した。これに対して、特定のフラボノイドを添加することで、フラボノイドが含有されているにもかかわらず、色調変化が抑制されることが示された。
(5)試験品36〜41
〔サンプル調製〕
表6に示す配合で、下記の味噌とフラボノイド類を混合し、スパチュラで混練して、試験品36〜41を調製した。
・味噌
減塩味噌:おいしく塩分1/2みそ(マルコメ(株))
低塩味噌:うす塩 赤だし(イチビキ(株))
普通味噌:料亭の味 だし入りみそ(マルコメ(株))
・フラボノイド類
ヘスペリジン糖付加物:αG−ヘスペリジンPA−T(東洋精糖製、Y/(X+Y)=0.33、R/Z=0.36)
〔サンプルの評価〕
各試験品18gと熱湯160gとを混合、攪拌して味噌汁を調製した。得られた味噌汁の風味について、官能評価を行った。その結果を表6に示す。
Figure 2008029341
表6に示すように、減塩味噌にヘスペリジン糖付加物を添加した試験品37は、何も添加していない試験品36(コントロール)よりも、全体的にコクが出て、良好な風味となることがわかった。
同様に、低塩味噌にヘスペリジン糖付加物を添加した試験品39は、何も添加していない試験品38(コントロール)と比較して、コクが強化され、良好な風味となることが示された。
特にだし入りみその場合、ヘスペリジン糖付加物を含む試験品41は、何も含まない試験品40(コントロール)に比べ、だしの風味がのびて、味噌汁全体の味のまとまりやコクが著しく向上することが明らかとなった。
このように、特定のフラボノイドを配合することにより、味噌汁のコクや風味のまとまりが向上し、風味良好となることが明らかとなった。
(6)試験品42〜45
〔サンプル調製〕
表7に示す配合で、下記の味噌とフラボノイド類、塩化カリウムを混合し、スパチュラで混練して、試験品42〜45を調製した。
・味噌
減塩味噌:おいしく塩分1/2みそ(マルコメ(株))
低塩味噌:うす塩 赤だし(イチビキ(株))
・塩化カリウム
塩化カリウム(和光純薬工業(株))
・フラボノイド類
ヘスペリジン糖付加物:αG−ヘスペリジンPA−T(東洋精糖製、Y/(X+Y)=0.33、R/Z=0.36)
〔サンプルの評価〕
各試験品18gと熱湯160gとを混合、攪拌して味噌汁を調製した。得られた味噌汁の風味について、官能評価を行った。その結果を表7に示す。
Figure 2008029341
表7に示すように、減塩味噌に塩化カリウムとヘスペリジン糖付加物を添加した試験品43は、塩化カリウムのみ添加した試験品42よりも、塩化カリウム特有の異味(苦味、えぐ味)が低下し、全体的にコクが出て、良好な風味となることがわかった。
同様に、低塩味噌に塩化カリウムとヘスペリジン糖付加物を添加した試験品45は、塩化カリウムのみ添加した試験品44と比較して、塩化カリウム特有の異味が低下し、旨味がのびてコクが強化され、良好な風味となることが示された。
このように、特定のフラボノイドを配合することにより、味噌汁のコクや風味のまとまりが向上し、塩化カリウム特有の異味が低下して、風味良好となることが明らかとなった。
(7)試験品46
上記、試験品43と同じものを100g調製し、アルミパウチに充填した。次いで、ヒートシーラーで密封して、容器詰味噌(試験品46)を製造した。

Claims (5)

  1. 次の式(1)を満たすフラボノイド類を0.01〜5質量%含有する味噌。
    Y/(X+Y)=0.05〜1 式(1)
    ここで、XとYは、それぞれ下記の数のことである。
    X:フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOH基の数
    Y:フラボノイド類1分子中のベンゼン環に結合したOCH3基の数
  2. フラボノイド類が、フラボノイド配糖体を含むものである請求項1記載の味噌。
  3. フラボノイド配糖体を構成する糖が、下記式(2)を満たすものである請求項2記載の味噌。
    R/Z=0〜0.5未満 式(2)
    ここで、RとZは、それぞれ下記の数のことである。
    R:フラボノイド配糖体1モル中のデオキシ糖のモル数
    Z:フラボノイド配糖体1モル中の全構成糖のモル数
  4. フラボノイド類が、ヘスペリジン、メチルヘスペリジン、ペクトリナリゲニン、ノビレチン、ブラッシジン、ナルシッシン、リナロシド、トリシン、イソラムネチン、タンゲリチン、シネンセチン、ディオスミン、アカセチン、ヘスペレチン、ヘスペリジナーゼ処理したヘスペリジン、マルビン、エニン、ペツニン、ペオニン、及びこれらの糖付加物から選択される1種又は2種以上の混合物である請求項1〜3の何れか1項記載の味噌。
  5. 容器詰されたものである請求項1〜4の何れか1項記載の味噌。
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