JP6850946B2 - 日向夏みかん由来のアラビノガラクタン - Google Patents

日向夏みかん由来のアラビノガラクタン Download PDF

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Description

本発明は、日向夏みかん由来のアラビノガラクタン、及び該アラビノガラクタンを含む骨代謝改善剤又はカルシウム吸収促進剤等に関する。
骨粗鬆症とは、骨塩量の減少によって骨微細構造の破綻を来たし骨強度が低下し骨折に対するリスクが高まる全身性疾患である。今後高齢社会を迎えるに当たり、この疾患に対する予防、治療の重要性がますます高くなるものと考えられる。
本発明者らはこれまでに、日向夏みかんの処理物が骨代謝改善効果を介して骨粗鬆症の有効な治療薬になり得ることを報告している(特許文献1)。日向夏みかんの有する生理活性を効率的に利用し、またその作用機構を明らかにするためには、処理物に含まれる有効成分を単離し、同定することが必要である。しかしながら、一般に天然物に含まれる成分、とりわけ水溶性成分を分離精製し、その構造を特定することは困難であることから、日向夏みかんの処理物に含まれる有効成分については明らかとなっていない。
特開2006-008625
本発明は、日向夏みかんの抽出物中に含まれる有効成分を特定し、該有効成分を含む剤、食品、及び医薬品を提供すること等を課題とする。
本発明者は、日向夏みかん中に含まれる有効成分がアラビノガラクタンであることを特定し、また該成分が骨代謝改善効果のみならずカルシウム吸収促進効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明は、以下の態様を包含する。
(1)日向夏みかん由来の、分子量50,000〜100,000のアラビノガラクタン。
(2)β1,3結合したガラクトースを主鎖とし、主鎖のガラクトースの6位から分岐した側鎖を有し、側鎖が1,6結合したβガラクトース、及び1,5結合したαアラビノースを含む、(1)に記載のアラビノガラクタン。
(3)分子量50,000〜100,000であって、
β1,3結合したガラクトースを主鎖とし、主鎖のガラクトースの6位から分岐した側鎖を有し、側鎖が1,6結合したβガラクトース、及び1,5結合したαアラビノースを含み、かつ骨代謝改善及び/又はカルシウム吸収促進作用を有する、アラビノガラクタン。
(4)ガラクトースのモル比を1としたときのアラビノースのモル比が0.4〜0.6である、(1)〜(3)のいずれかに記載のアラビノガラクタン。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のアラビノガラクタンを含む、骨代謝改善剤。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載のアラビノガラクタンを含む、カルシウム吸収促進剤。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載のアラビノガラクタン、(5)に記載の骨代謝改善剤、又は(6)に記載のカルシウム吸収促進剤を含む、骨代謝改善用又はカルシウム吸収促進用食品組成物又は医薬品。
(8)(1)〜(4)のいずれかに記載のアラビノガラクタン、(5)に記載の骨代謝改善剤、又は(6)に記載のカルシウム吸収促進剤を添加することを含む、骨代謝改善用又はカルシウム吸収促進用食品組成物又は医薬品の製造方法。
本発明により、骨代謝改善効果及び/又はカルシウム吸収促進効果を有する新たな剤、食品、及び医薬品等が提供される。
図1は、実施例で調製した日向夏処理物3をHPLCに供した際のクロマトグラムを示す。 図2は、実施例で調製した活性画分1をHPLCに供した際のクロマトグラムを示す。 図3は、活性成分を含まない30kDa透過画分(ピーク部分以外)、及び活性画分1(ピーク部分)を、破骨前駆細胞の培養液に添加した際の、TRAP陽性細胞の数を示す。対照群は、いずれの画分も添加しなかった際の結果を示す。 図4は、活性画分1の、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた赤外分光分析の結果を示す。 図5は、日向夏処理物3を0、0.025、又は0.05μg/mlの濃度で3T3-E1細胞に添加した際の、BMP-2、Runx2、Osterix、及びCollagen 1aのタンパク質発現量を示す。 図6は、日向夏処理物3を0、0.025、又は0.05μg/mlの濃度で3T3-E1細胞に添加した際の、p38、リン酸化p38(p.p38)、JNK/SAPK、リン酸化JNK/SAPK(p. JNK/SAPK)のタンパク質発現量を示す。 図7は、ラット反転小腸における、実施例で調製した活性画分2(図中、「活性画分」)の、Ca吸収促進効果を示す。Ca濃度の値は、反転小腸内液の平均値(n=5, 6)を示し、箱髭は標準誤差を示す。*は、コントロールに対し、P<0.05で有意差があることを示す。
1.アラビノガラクタン
一態様において、本発明は日向夏みかんの処理物中に見出されたアラビノガラクタンに関する。日向夏みかん(本明細書では「日向夏」とも記載する)は宮崎県特産の柑橘類で、果肉の部分だけではなく果皮の一部分と果肉を共に食する極めてユニークな果物である。
本明細書において、「アラビノガラクタン」とはアラビノース及びガラクトースをその主成分とする多糖を指す。本発明のアラビノガラクタンは、β1,3結合したガラクトースを主鎖とし、主鎖のガラクトースの6位から分岐した側鎖を有する。本明細書において、「主鎖」とは糖鎖分子中で相対的に最も長い鎖を指し、「側鎖」とは主鎖から枝分かれしている相対的に短い鎖を指す。
本発明のアラビノガラクタンは、好ましくは側鎖として1,6結合したβガラクトース、及び1,5結合したαアラビノースを含み得る。さらに好ましくは、側鎖の上記1,6結合はβ1,6結合であり、上記1,5結合はα1,5結合である。
本明細書において、側鎖が1,6結合したβガラクトースを含むとは、側鎖が6)-βGal-(1→の構造を含むことを意図し、側鎖中にこの構造が単糖単位で存在してもよいし、二糖単位以上で存在してもよい。側鎖の6)-βGal-(1→は、β1,6結合により直接主鎖のガラクトースの6位に結合していてもよいし、アラビノース等の他の糖を介して主鎖に結合してもよい。また、ガラクトースは、側鎖中の他の糖と結合していてもよい。例えば、側鎖において、6)-βGal-(1→は、ガラクトースとβ1→6結合を介して(βGal-(1→6)-Gal)、又はアラビノースとβ1→5結合を介して(βGal-(1→5)-Ara)若しくはα1→6結合を介して(αAra-(1→6)-Gal)結合していてもよい。好ましくは、6)-βGal-(1→は、β1→6結合を介して側鎖中の他のガラクトースと結合している。
同様に、本明細書において、側鎖が1,5結合したαアラビノースを含むとは、側鎖が→5)-αAra-(1→の構造を含むことを意図し、側鎖中にこの構造が単糖単位で存在してもよいし、二糖単位以上で存在してもよい。側鎖の→5)-αAra-(1→は、α1,6結合により直接主鎖のガラクトースの6位に結合していてもよいし、ガラクトース等の他の糖を介して主鎖に結合してもよい。また、アラビノースは、側鎖中の他の糖と結合していてもよい。例えば、側鎖において、→5)-αAra-(1→は、ガラクトースとβ1→5結合を介して(βGal-(1→5)-Ara)若しくはα1→6結合を介して(αAra-(1→6)-Gal)、又はアラビノースとα1→5結合を介して(αAra-(1→5)-Ara)結合していてもよい。好ましくは、5)-αAra-(1→は、α1→5結合を介して側鎖中の他のアラビノースと結合する。
また、本発明のアラビノガラクタンは、好ましくはその側鎖の末端にβGal(1→及び/又はαAra(1→を有し得る。
本発明のアラビノガラクタンは、好ましくは側鎖中に1,3結合したガラクトース、すなわち3)-Gal-(1→を含まない。また、本発明のアラビノガラクタンは、好ましくは側鎖中に1,3結合したアラビノース、すなわち3)-Ara-(1→を含まない。
本発明のアラビノガラクタンにおいて、個々の側鎖に含まれる糖単位の数は限定されず、単糖単位であっても二糖単位以上であってもよい。また、個々の側鎖は、ガラクトース単位又はアラビノース単位のいずれか一方からなってもよく、あるいは一つの側鎖中にこれらの糖単位が混在していてもよい。好ましくは、側鎖中のガラクトースはいずれもβガラクトースであり、アラビノースはいずれもαアラビノースである。
本発明のアラビノガラクタンにおけるガラクトースとアラビノースの比は特に限定しないが、例えば、ガラクトースのモルを1とした場合のアラビノースのモル比は、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.45以上、又は0.5以上、また1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、又は0.55以下であってよい。
本発明のアラビノガラクタンの側鎖は、グルコース、ラムノース、フコース、及びグルクロン酸等の、ガラクトース及びアラビノース以外の糖を、例えば側鎖に少量有してもよい。この場合、ガラクトースのモルを1とした場合のガラクトース及びアラビノース以外の糖のモル比は0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、好ましくは0.15以下、0.1以下、0.05以下、又は0.01以下であってよい。
本発明のアラビノガラクタンの分子量は、例えば20,000以上、30,000以上、40,000以上、50,000以上、60,000以上、好ましくは65,000以上、66,000以上、67,000以上、又は68,000以上であってよく、また120,000以下、110,000以下、100,000以下、90,000以下、80,000以下、好ましくは75,000以下、74,000以下、73,000以下、又は72,000以下であってよい。
アラビノガラクタン等の多糖の構造の分析は、当業者に公知の方法、例えばメチル化分析及び/又はNMR等により行うことができる。同様に、多糖の構成成分、及び分子量の分析も、当業者に公知の方法、例えばそれぞれHPLC及びサイズ排除クロマトグラフィー等によって行うことができる。
本発明のアラビノガラクタンは、日向夏みかんの処理物から、当業者に知られる方法により得ることができる。本発明のアラビノガラクタンを調製するために使用される日向夏みかんの「処理物」には、根、茎、葉、花、及び果実等の日向夏みかんの植物体の何れかの部分に由来する全てのものが包含されるが、好ましくは果実の部分に由来するものである。果実は主に果皮と果肉とに分けられるがどちらも好適に使用され、例えば日向夏みかんを搾汁した後の搾汁残渣が好ましく使用される。これらの植物体の各部は生のまま使用することもできる。生の状態のものもまた本発明における「処理物」に包含される。また、上記の植物体の各部分を更に半乾燥又は乾燥させて使用することもできる。半乾燥又は乾燥は通常の方法で行うことができ、例えば天日により乾燥させる方法や乾燥機により乾燥させる方法により行うことができる。また、植物体の各部又はその半乾燥物若しくは乾燥物は、そのままの形態で使用されても良いが、好適には適当な大きさに粉砕された状態で使用される。
本発明の処理物としては、日向夏みかんの抽出物もまた好適に使用される。抽出物としては、上記処理物を抽出溶媒により抽出した抽出液、抽出液を希釈したもの、抽出液を濃縮したもの、抽出液を乾燥させたもの、又はこれらを粗精製したものが包含される。
抽出に用いる溶媒は、水、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒、又はこれらの2種以上からなる混合物のいずれであってもよく、好ましくは水である。水の種類は特に限定されず、純水及び水道水等であってよい。また水は精製、殺菌、滅菌、ろ過、浸透圧調整、及び緩衝化等の通常の処理が施されていてよく、例えば、生理的食塩水、リン酸緩衝液等の緩衝液も抽出溶媒として使用可能である。親水性有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、及び酢酸等の公知の親水性有機溶媒が挙げられる。疎水性有機溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、n-ヘキサン、及びイソオクタン等の公知の疎水性有機溶媒が挙げられる。また、超臨界流体を用いた抽出も可能である。
抽出操作は特に限定せず、常法に従って行えばよい。抽出効率を向上させるため、加熱、攪拌、及び振とう等を併用することもできる。また、抽出効率を向上させる目的で、抽出前に予め日向夏みかん試料に適当な処理を施すこともできる。このような処理としては、例えば粉砕や脱脂が挙げられる。抽出中、又は抽出後に、抽出物をペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ等の酵素により処理して、目的物質以外の成分を除去することもできる。
本発明のアラビノガラクタンは、日向夏みかんの処理物から単離又は精製されたアラビノガラクタンであってよい。本発明における精製は、目的物が少量の夾雑物を含む粗精製であってもよい。本発明のアラビノガラクタンは、HPLC等の検出法、バイオアッセイなどの試験により検出可能な夾雑物を含まないことが好ましく、例えば日向夏みかんの抽出物又は処理物に含まれるタンパク質、脂質、及び糖質等の他の成分を80%以上、90%以上、95%以上、好ましくは99%以上又は99.9%以上除去したものであってよい。
アラビノガラクタンの精製に用いることができる方法として、膜ろ過、限外濾過、透析、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いることもできる。
本発明のアラビノガラクタンは、日向夏みかんから精製することが好ましいが、他の植物、例えばウンシュウミカン、オレンジ、グレープフルーツ、スダチ、ハッサク、ポンカン、ライム、レモン、及びユズ等のミカン科の植物から精製してもよい。日向夏みかん以外のミカン科の植物に本発明のアラビノガラクタンが含まれるか否かは、抽出物のHPLC分析等により容易に確認することができ、またその成分の精製も日向夏みかんと同様に行うことができる。
また、本発明のアラビノガラクタンは、当業者に知られる多糖の化学合成法により調製されたものであってもよい。多糖の化学合成法としては、例えば段階縮合法、重縮合法、及び開環重合法等が挙げられる(これらの方法の詳細については、例えば、化学と生物、Vol.21, 1983, No.11, pp.716-724を参照されたい)。また、本発明のアラビノガラクタンは、官能基の置換等の通常の改変がなされた誘導体であってもよい。
本発明のアラビノガラクタンは、骨代謝改善作用及び/又はカルシウム吸収促進作用を有し得る。
2.骨代謝改善剤及びカルシウム吸収促進剤
一態様において、本発明は上記アラビノガラクタンを含む、骨代謝改善剤に関する。本発明の骨代謝改善剤は、骨芽細胞の増殖を促進するとともに破骨細胞の増殖を抑制する性質を有する。すなわち本発明の骨代謝改善剤は骨形成促進作用、及び、骨吸収抑制作用を有する。ある物質が骨代謝改善効果を有するか否かは、当業者に知られる方法、例えば物質を細胞等の培養液に添加して、オステオカルシン、BMP-2、Runx2、及びOsterix等の骨代謝改善の指標となる遺伝子又はタンパク質の発現量の変化を解析することによって、簡単に確認できる。
一態様において、本発明は上記アラビノガラクタンを含む、カルシウム吸収促進剤に関する。本発明のカルシウム吸収促進剤は、腸管から体内へのカルシウムの吸収を促すという作用を有する。本発明者は、日向夏みかんの処理物が骨代謝改善効果を有することを以前に見出している。しかし、日向夏みかんに本発明の上記アラビノガラクタンが含まれること、及び、本発明の上記アラビノガラクタンが骨代謝改善効果に加えてカルシウム吸収促進作用を有することは一切示唆されていない。本発明のアラビノガラクタンのカルシウム吸収促進作用を利用することで、骨代謝改善作用とは異なる作用機構に基づいて骨粗鬆症を予防及び/又は治療することが可能となる。また、カルシウム吸収促進作用は、骨粗鬆症の予防及び/又は治療に加えて、例えばカルシウム含有食品の栄養価を向上させるためにも利用することができる。ある物質がカルシウム吸収の促進作用を有するか否かは、当業者に知られる方法、例えば反転小腸を作成し、カルシウムを含む外液に物質を添加して、外液から反転小腸内部へのカルシウムの取り込みが増加するか否かを確認することによって、簡単に確認できる。
本発明のアラビノガラクタンは、上記の通り骨代謝改善及びカルシウム吸収促進という二つの全く異なる作用を介して骨粗鬆症を予防及び/又は治療し得るため、骨粗鬆症の予防及び/又は治療に有効な薬剤となり得る。
本発明の骨代謝改善剤及びカルシウム吸収促進剤は、本発明のアラビノガラクタンからなってもよいし、本発明のアラビノガラクタン以外に他の成分、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、及び香料等を含んでもよい。
本発明の骨代謝改善剤及びカルシウム吸収促進剤は常法により製剤化され得る。投与形態は特に制限されず、必要に応じ適宜選択されるが、一般には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、及びエリキシル剤等の経口剤、又は注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤、及び軟膏剤等の非経口剤として投与され得る。
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、及び無機塩類等の賦形剤を用いて常法に従って製造される。
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、及び香料等を使用することができる。
結合剤の具体例としては、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、及びマクロゴールが挙げられる。
崩壊剤の具体例としては、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、及びトラガントが挙げられる。
界面活性剤の具体例としては、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、及びラウロマクロゴールが挙げられる。
滑沢剤の具体例としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
流動性促進剤の具体例としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、及びケイ酸マグネシウムが挙げられる。
また、本発明の骨代謝改善剤及びカルシウム吸収促進剤は、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、又はエリキシル剤として投与する場合には、矯味矯臭剤及び/又は着色剤を含有してもよい。
また、一態様において本発明は、本発明のアラビノガラクタン、骨代謝改善剤、又はカルシウム吸収促進剤を被験体に投与することを含む、被験体における骨粗鬆症の予防及び/又は治療方法に関する。
また、一態様において本発明は、骨粗鬆症の予防及び/又は治療における、本発明のアラビノガラクタン、骨代謝改善剤、又はカルシウム吸収促進剤の使用に関する。
3.骨代謝改善用又はカルシウム吸収促進用食品組成物又は医薬品
一態様において、本発明は、本発明のアラビノガラクタン又は骨代謝改善剤を含む、骨代謝改善用食品組成物又は医薬品に関する。別の態様において、本発明は、本発明のアラビノガラクタン又はカルシウム吸収促進剤を含む、カルシウム吸収促進用食品組成物又は医薬品に関する。
本発明の食品組成物(単に「食品」とも記載する)は、常法により調製され得る。例えば、かかる食品の形態としては、通常の「食品」だけでなく、例えば、飴、トローチ等を含む錠剤(タブレット)や糖衣錠の形態、顆粒の形態、粉末飲料、粉末スープ等の粉末の形態、ビスケット等のブロック菓子類の形態、カプセル、ゼリー等の形態、ジャムのようなペーストの形態、チューイングガムのようなガムの形態、茶を含む清涼飲料水、アルコール飲料等の飲料の形態のようにいかなる形態の食品であってもよく、特定保健用食品(例えば、骨粗鬆症予防食品)にもなり得る。本発明の骨代謝改善剤及びカルシウム吸収促進剤を含む食品には、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で、通常、食品原料として用いられる種々の他の成分を配合することができる。他の成分としては例えば水、アルコール類、甘味料、酸味料、着色料、保存剤、香料、賦形剤、安定化剤、pH調整剤、糖類、各種ビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤、可溶化剤、結合剤、滑沢剤、懸濁剤、湿潤剤、皮膜形成物質、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤、流動性促進剤等が挙げられる。これらの成分は単独で、または組み合わされて使用され得る。同様に、本発明の医薬品は、常法により、例えば上記2で骨代謝改善剤又はカルシウム吸収促進剤について記載した方法に従って調製され得る。
本発明の食品及び医薬品中におけるアラビノガラクタン、骨代謝改善剤、又はカルシウム吸収促進剤の含有量は、所望の作用が奏される含有量である限りとくに限定されず、当業者であれば被験体の性別、年齢、体重、身長、及び症状の程度等を考慮して適宜定めることができる。
4.食品組成物又は医薬品の製造方法
一態様において、本発明は、本発明のアラビノガラクタン、骨代謝改善剤、又はカルシウム吸収促進剤を添加することを含む、食品組成物又は医薬品の製造方法に関する。食品組成物又は医薬品は、骨代謝改善用又はカルシウム吸収促進用のものであってよい。
本発明の食品又は医薬品の製造方法は、本発明のアラビノガラクタン、骨代謝改善剤、又はカルシウム吸収促進剤を添加すること以外は、当業者に公知の方法で行うことができる。本発明のアラビノガラクタン、骨代謝改善剤、又はカルシウム吸収促進剤の添加は、得られる食品又は医薬品が所望の効果を奏する限り、食品又は医薬品の製造過程中の任意の時点で行うことができる。例えば、本発明のアラビノガラクタン、骨代謝改善剤、又はカルシウム吸収促進剤を、製造の初期又は中期段階において他の原料と共に混合してもよいし、製造の最終段階において半製品に添加してもよい。
また、一態様において本発明は、本発明のアラビノガラクタン、骨代謝改善剤、又はカルシウム吸収促進剤の食品又は医薬品の製造における使用に関する。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1:日向夏処理物の調製>
以下の方法に従って、日向夏処理物1(Bx 17.5%)、日向夏処理物2(Bx 17.5%)、及び日向夏処理物3(Bx 35.0%)の3つの日向夏処理物、並びに活性画分1を調製した。
1)日向夏処理物1の調製
日向夏をインライン搾汁機(ジョンビーン・テクノロジー社)で搾汁し、搾汁残渣を段ボール箱に回収し、冷凍保管した。続いて、冷凍保管した日向夏搾汁残渣を解凍し、日向夏搾汁残渣に対して2倍量の60℃温水を加え、15分間撹拌しながら浸漬を行うことで水抽出を行った。続いて、水抽出した日向夏搾汁残渣をチョッパーパルパーにて破砕した後、5mm、1mm、及び0.5mmでの篩別及びマグネットラップによって異物を除去した。次に、異物を除去した日向夏搾汁残渣破砕物をデカンター搾汁機(三菱化工機)で搾汁(回転数3,900rpm、3,000g)し、遠心分離(流量5〜6m3/h、排出1回/15分)した後に、約8〜9秒間95±1℃で殺菌し、25℃以下まで冷却した。その後、減圧加熱方式で濃縮し加水にてBx17.6〜17.8に調整して、40メッシュ、80メッシュ及びマグネットトラップで異物を除去し、フルオープン18L缶に充填して冷凍保管した。
2)日向夏処理物2の調製
上記1)に従って調製した日向夏処理物1を5倍希釈し、遠心分離(1,880g、10分)した。続いて、希釈液量に対してAspergillus niiger由来ペクチナーゼ(ヤクルト薬品工業)を0.05%添加し、45℃で1時間反応させて酵素処理した。続いて、珪藻土を使用して一次ろ過し、97℃に達温加熱した後25℃に冷却することで酵素を失活させた。続いて、珪藻土を使用して二次ろ過し、減圧濃縮後、97℃に達温加熱することにより殺菌し、200gサンプル缶に充填(ホットパック)を行った。
3)日向夏処理物3の調製
日向夏をインライン搾汁機(ジョンビーン・テクノロジー社)で搾汁し、搾汁残渣を段ボール箱に回収し、冷凍保管した。続いて、冷凍保管しておいた日向夏搾汁残渣を解凍し、解凍した日向夏搾汁残渣に対して2倍量の60℃温水を加え、15分間撹拌しながら浸漬を行うことで水抽出を行った。続いて、水抽出した日向夏搾汁残渣をチョッパーパルパーにて破砕した後、5mm、1mm、及び0.5mmでの篩別並びにマグネットラップによって異物を除去した。次に、異物を除去した日向夏搾汁残渣破砕物をデカンター搾汁機(三菱化工機)で搾汁(回転数3,900rpm、3,000g)し、遠心分離(流量4〜5m3/h、排出1回/15分)した後に、約8〜9秒間95±1℃で殺菌し、45〜50℃まで冷却を行った。次に、加熱殺菌した溶液に、Aspergillus niger由来のペクチナーゼ(ヤクルト薬品工業)を0.05%w/w添加し、45〜50℃で1時間酵素処理を行い、珪藻土を用いて一次ろ過した後、95±1.5℃に約8〜9秒加温して酵素を失活させ、30℃以下に冷却した。続いて、珪藻土を用いて二次ろ過した後、3μフィルターを用いて異物を除去した。続いて、減圧濃縮後、25℃以下に冷却し、加水によりBxを35.1〜35.5に調整し、80メッシュで異物を除去した。続いて、120±1.5℃で約15秒間殺菌し、30℃以下まで冷却した。続いて、80メッシュ及びマグネットトラップで異物を除去し、フルオープン18L缶に充填して冷凍保管した。
4)活性画分1及び30kDa透過画分の調製
上記3)で得られた日向夏処理物3を以下の通り限外濾過し、HPLCで保持時間(RT)約18分のピークを含む活性画分1、及び30kDa透過画分を調製した。
まず、日向夏処理物3を、NITROCELLULOSE MEMBRANE 0.22μm(Millipore)によって前濾過することで、粒径の大きい粒子を除いた。続いて、前濾過を行った溶液をUltrafiltration Discs Ultracel 30 kDa(Millipore)を用いて限外ろ過し、保持する画分(以下、「活性画分1」とする)、及び通過する画分(以下、「30kDa透過画分」とする)を調製した。
<実施例2:活性画分1の同定>
実施例1で得られた上記日向夏処理物1、日向夏処理物2及び日向夏処理物3を、表1に記載の条件でHPLCに供したところ、RT18分の画分の濃度は、いずれの試料でも確認され、特に日向夏処理物3において最も高かった(表2)。日向夏処理物3のHPLCにより得られたクロマトグラムを図1に、活性画分1のHPLCにより得られたクロマトグラムを図2に示す。
Figure 0006850946
Figure 0006850946
続いて、実施例1に従って日向夏処理物3から調製した活性画分1、及び30kDa透過画分を、1%、0.5%、又は0.1%の濃度で破骨前駆細胞の培養液に添加した。破骨前駆細胞としては、ラットから分離した初代細胞を用いた。5日後、TRAP染色キット(コスモバイオ社)を用いてTRAPを染色し、well内の発色した多核細胞を顕微鏡で観察し、破骨細胞(TRACP陽性細胞)の指標となる酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ陽性細胞数を測定した。その結果、RT約18分を含む活性画分1(図3中、ピーク部分)は0.1%の添加でTRAP陽性細胞は半数以下になり、1%添加ではTRAP陽性細胞は全く産生されなかった。一方、30kDa透過画分(図3中、ピーク部分以外)にはTRAP陽性細胞の形成抑制作用は認められなかった(図3)。
以上の結果より、日向夏みかん中に含まれる骨代謝改善作用に係る有効成分がRT約18分のピークを含む画分に存在することが示された。
また、HPLCの保持時間について、プルラン(Shodex)又はデキストランを標準試料として分子量を測定したところ、活性画分1に含まれる成分の分子量は約68,000〜72,000であることが示された(データ示さず)。
<実施例3:活性画分1の分析>
1)赤外分光分析による分析
活性画分1について、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光、FT-IR300)を用いて赤外分光分析(IR分析)を行った結果、糖に由来する3400 cm-1 付近のOH伸縮振動による吸収、2900 cm-1 付近のCH 伸縮振動による吸収、1420 cm-1 付近のCH2変角振動による吸収、1080 cm-1 付近のCO伸縮振動による吸収を確認した(図4)。また同試料のNMR分析を行った結果、IR分析結果と同様に糖に由来するピークを確認した(データ示さず)。
2)活性画分1の酸加水分解物のHPLCによる分析
実施例1で調製した活性画分1について、1N硫酸で105℃、3時間加熱することにより酸加水分解を行った。この酸加水分解物を以下の表3に記載の条件でHPLCにより分析した結果、ガラクトース及びアラビノースを構成糖として含むことを確認した(データ示さず)。また、ガラクトースとアラビノースのモル比は、約1:0.53であった(データ示さず)。
Figure 0006850946
続いて、メチル化分析を行った。具体的には、活性画分1を凍結乾燥して得た多糖試料にNaOH/DMSO溶液2 mlおよびヨウ化メチル0.3 mlを加え、30℃、20分間処理した。20分後、さらにヨウ化メチルを0.7 ml加え、30℃、40分間処理した。メチル化反応液に0.88% KCl 2 mlを加えた後、クロロホルムを2 ml加えて液液分配を行った。上層(水層)を取り除いた後、新たに0.88%KCl 3 mlを加えて液液分配を行い、同様に上層を除去した。その後、クロロホルム層にトルエンを0.5 ml加え、減圧乾固した。メチル化多糖を2 M トリフルオロ酢酸(TFA) 2 mlに溶解し、110℃で4時間加水分解した。その後、トルエンを0.5 ml加え次に3 mlの無水メタノールを加えて減圧乾固した。水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)40 mgを精製水2 mlに溶解し、1 M アンモニア水0.4 mlを加えて調製したNaBH4溶液1.2 mlをサンプルに加えて3分間反応させた後、残りのNaBH4溶液を加え、25℃で12時間放置した。酢酸(0.6 ml)で中和し、トルエンを0.5 ml加えて減圧乾固した後、無水メタノール4 mlを加えて再度減圧乾固した。無水酢酸とピリジンをそれぞれ0.5 mlずつ加え、100℃で1時間アセチル化した。その後、トルエン3 mlを加えて減圧乾固した。次に、蒸留水2 mlとクロロホルム1.5 mlを加えて液液分配を行い、水層を取り除いた後、新たに蒸留水2 mlを加えて同様に上層を除去した。その後、クロロホルム層にトルエンを0.5 ml加えて減圧乾固した。次に、クロロホルム0.5 mlを加えて反応生成物を抽出し、以下の条件でGC/MS分析を行った。
質量分析装置:Shimadzu GCMS-QP2010SE、
キャピラリーカラム:InertCap RTX 5MS、
キャリアーガス:ヘリウム、
分析温度:180℃ 5 min、180-250℃ 2℃/min、250℃ 5min、
インターフェイス温度:250℃。
メチル化分析の結果、試料に含まれる多糖は →3)-Gal-(1→ が主鎖で(ピーク4及び6)、→6)-Gal-(1→ と →5)-Ara-(1→ を含む側鎖(ピーク2及び5)が6位で分岐しているアラビノガラクタンであることを明らかにした(表4)。また、このアラビノガラクタンが、末端Gal及び末端Araを有することも明らかとなった(表4、ピーク1及び3)。
Figure 0006850946
続いて、二次元NMR(HSQC)分析を行った。具体的には、活性画分1を凍結乾燥して得た多糖試料を重水に溶解し、試料管(178 x 4 mmφ)に入れて、1H-NMRと13C-NMRを測定し、HSQC (Hetero-nuclear Single Quantum Coherence)測定を行った。標準物質として1,4-ジオキサンを用いた。核磁気共鳴装置は、BRUKER AV400Mを用いた。
その結果、ガラクトースとアラビノースの結合様式がそれぞれβ結合とα結合であることが明らかとなった。
これらの結果から、日向夏みかん由来の活性成分が、β1,3結合したガラクトースを主鎖とし、主鎖のガラクトースの6位から分岐した側鎖を有し、側鎖が1,6結合したβガラクトース、及び1,5結合したαアラビノースを含むアラビノガラクタンであることが示唆された。
<実施例4:日向夏処理物3の骨代謝改善効果の作用機序の検討>
日向夏処理物3の、3T3E1細胞のタンパク質生産に対する効果を検討した。具体的には、MC 3T3-E1細胞(DSファーマバイオメディカル社から購入)を24ウェルディッシュに播種し、modified MEM medium(SIGMA-ALDRICH)でサブコンフルエントまで培養した。実施例1で調製した日向夏日向夏処理物3を最終濃度で0、0.025、0.05μg/mlの濃度で3T3-E1細胞に添加して14日間培養し、BMP-2、Runx2、Osterix、Collagen 1a、p38、リン酸化p38(p.p38)、JNK/SAPK、リン酸化JNK/SAPK(p. JNK/SAPK)のタンパク質発現量を以下の通りウェスタンブロット法で測定した。まず細胞をPBSで洗浄後、細胞溶解液 (50mMトリス, 150mM NaCl, 1% トリトン X-100, 1mM EGTA, 1mM phenylmethane sulphonyl fluoride)で細胞を溶解させた。溶解液をポリアクリルアミドゲルで電気泳動後、PVDF(polyvinylidene difluoride)膜にセミドライ法でトランスファーし、Atto社製のブロック溶液(EZ-20)でブロック後、各種の抗体(Cell Signalling technologie社製)を作用させた。PVDF膜は洗浄後、Cell signaling社製の2次抗体を使用して、Amersham社製のchemiluminescence kitにより発色させ、蛍光強度を測定した。各タンパク質の発現量は、β−アクチンの発現量によって標準化した。
その結果、日向夏処理物3の添加によって、測定を行った全てのタンパク質の発現が、用量依存的に誘導された(図5及び6)。
日向夏処理物試料3は、活性成分に相当するRT約18分のピークを含み、本実施例で発現測定を行ったタンパク質は、間葉系幹細胞が骨芽細胞に分化する際に発現するタンパク質である。これらに鑑みると、日向夏処理物に含まれる活性成分は、間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させることにより作用していると考えられる。
<実施例5:反転小腸におけるCa吸収促進>
実施例1で得た日向夏処理物3を、以下の通り活性炭処理した。
まず、上記日向夏処理物3を解凍し、Bx6.8〜7.2程度まで希釈した後、活性炭(大阪ガスケミカル)を1.0%w/w添加し、1時間処理した。続いて、珪藻土を用いて一次ろ過した後、95±1.5℃に約8〜9秒加温した後、25℃以下に冷却した。続いて、珪藻土を用いて二次ろ過した後、3μフィルターを用いて異物を除去した。続いて、減圧濃縮後、25℃以下に冷却し、加水によりBxを35.1〜35.5に調整し、80メッシュで異物を除去した。続いて、80メッシュ及びマグネットトラップで異物を除去し、フルオープン18L缶に充填して冷凍保管した。なお、活性炭処理の前後で、日向夏処理物3中のピークに差がないことを確認している(データ示さず)。
続いて、活性炭処理した日向夏処理物3から、以下の通り活性画分2を調製した。
まず初めに、トーセルカートリッジフィルター(ADVANTEC)よって前濾過することで、1μm以上の粒径を有する粒子を除いた。次に、Pellicon 2 Cassette Biomax 100 kDa(Millipore)を用いて限外濾過を行い、透過した溶液を回収した。続いて、回収した溶液を、Pellicon 2 Cassette Biomax 30 kDa(Millipore)を用いて限外濾過を行った。タンク内の溶液が半分以下になったら、保持溶液に対して、元の溶液と同程度の量になるまで加水し、Pellicon 2 Cassette Biomax 30 kDa(Millipore)を用いて限外濾過した。また、100 kDaの膜に保持された溶液については、公称孔径0.2μmのmicroza MF ラボモジュール(旭化成ケミカルズ)を用いて精製を行った。上記と同様に、ビーカー内の溶液が半分以下になったら、保持溶液に対して、元の溶液と同程度の量になるまで加水し、繰り返し精製を行った。得られた透過液は100 kDaの膜を透過した溶液に合わせ、30 kDaの膜を用いて限外濾過を行った。上記条件に従うHPLCによって保持液を分析し、単一のピークが得られるまで、加水と限外濾過を繰り返し、最後に保持液を回収することで、活性画分2を調製した。活性画分2は、HPLC分析において活性画分1と同様のピークを示した(データ示さず)。
続いて、上記で得られた活性画分2について、以下に従ってカルシウム吸収促進効果の有無を調べた。
8週齢雄のSprague Dawleyラット(九動株式会社より購入)をネンブタールで麻酔し、小腸を摘出した。小腸上部、中部および下部から12cmの長さで小腸片を切り取り、反転させ、両端から約1cmのところを糸で結索して、反転小腸を作成した。反転小腸内に、内液として0.9% NaCl 1mLを加えた。
続いて、16.9 mM CaCl2、5.8 mM KH2PO4、0.9% NaClからなる外液(pH 6.6)、又は該外液に活性画分2を0.02%添加した溶液に反転小腸を浸し、40分インキュベートした後に反転小腸の内液を回収し、冷凍保存した。内液を使用前に解凍し、10μLをアクアオートカイノス Ca試薬(株式会社カイノス、日本)のR-1溶液180μLと混合し、製造業者の説明書に従って660nmの吸光度に基づいてCa濃度を測定した。
結果を図7に示す。図7は、活性画分2が、ラット反転小腸においてカルシウムの吸収を促進することを示している。

Claims (7)

  1. 日向夏みかん由来の、分子量50,000〜100,000のアラビノガラクタン。
  2. β1,3結合したガラクトースを主鎖とし、主鎖のガラクトースの6位から分岐した側鎖を有し、側鎖が1,6結合したβガラクトース、及び1,5結合したαアラビノースを含む、請求項1に記載のアラビノガラクタン。
  3. ガラクトースのモル比を1としたときのアラビノースのモル比が0.4〜0.6である、請求項1又は2に記載のアラビノガラクタン。
  4. 単離又は精製された請求項1〜のいずれか一項に記載のアラビノガラクタンを含む、骨代謝改善剤。
  5. 単離又は精製された請求項1〜のいずれか一項に記載のアラビノガラクタンを含む、カルシウム吸収促進剤。
  6. 単離又は精製された請求項1〜のいずれか一項に記載のアラビノガラクタン、請求項に記載の骨代謝改善剤、又は請求項に記載のカルシウム吸収促進剤を含む、骨代謝改善用又はカルシウム吸収促進用食品組成物又は医薬品。
  7. 単離又は精製された請求項1〜のいずれか一項に記載のアラビノガラクタン、請求項に記載の骨代謝改善剤、又は請求項に記載のカルシウム吸収促進剤を添加することを含む、骨代謝改善用又はカルシウム吸収促進用食品組成物又は医薬品の製造方法。
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