JP2002199896A - 3”−α−モノグルコシルナリンジン含有組成物、その製造方法およびその利用方法 - Google Patents

3”−α−モノグルコシルナリンジン含有組成物、その製造方法およびその利用方法

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JP2002199896A JP2001160817A JP2001160817A JP2002199896A JP 2002199896 A JP2002199896 A JP 2002199896A JP 2001160817 A JP2001160817 A JP 2001160817A JP 2001160817 A JP2001160817 A JP 2001160817A JP 2002199896 A JP2002199896 A JP 2002199896A
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】3"-α-モノグルコシルナリンジンが、ナ
リンゲニン配糖体全量のうちの60重量%以上である
3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物。ナリン
ジンがナリンゲニン配糖体の10重量%〜30重量%、
3",4'-α-グルコシルナリンジンおよび4'-α-グル
コシルナリンジンの合計量が10重量%以下であること
が望ましい。 【効果】本発明により得られる、3"-α-モノグルコシ
ルナリンジンを高含量で含有する組成物は、抗酸化能を
有し、苦味が強化され、水溶性に優れ、ナリンジンの白
濁が生じにくいなどナリンジンの諸特性が改善されてい
る。該組成物は、飲食物、医薬品、化粧品などに含有さ
せて利用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、3"-α-モノグルコシル
ナリンジン含有組成物、その製造方法およびその利用方
法に関する。さらに詳しくは、すっきりした強い苦味を
呈し、抗酸化能を有する3"-α-モノグルコシルナリン
ジン含有組成物、その製造方法およびその利用方法に関
する。
【0002】
【発明の技術的背景】ナリンジン(naringin)は、下記
式[I]:
【0003】
【化1】
【0004】で示されるように、ナリンゲニン(5,
7,4'-トリヒドロキシフラバノン)の7位の水酸基
に、L-ラムノシル-(α1→2)-グルコースがβ-結合
したものをいう。このナリンジンは柑橘類の未熟な果皮
に含まれ、毛細血管の強化、出血予防、血圧調整、コレ
ステロール低下等の生理作用のほか、生体の恒常性を維
持するTNFの誘導活性も有することが見出されてい
る。ナリンジンの用途は、苦味剤、抗酸化剤、ビタミン
P強化剤等として飲食物などに使用され、循環器系疾患
等の予防剤として医薬品に用いられ、また抗酸化剤、紫
外線吸収剤等として化粧品に配合されている。
【0005】しかしながら、このナリンジンはアルカリ
性水溶液には可溶であるが、水、酸に難溶であり、室温
では、1リットルの水に僅かに1g(約0.1W/V%)程度
しか溶けないため、その利用分野が限定される。そこ
で、ナリンジンの水溶性を高めるための種々の方法が提
案されており、例えば、特開平4-13691号公報に
は、澱粉部分分解物(α-グルコシル糖化合物)共存下
でナリンジンに糖転移酵素(α-グルコシル転移活性を
有する酵素、例えば、シクロデキストリングルカノトラ
ンスフェラーゼ(CGTase)など)を作用させて、下記式
[II]で示されるα-グルコシルナリンジンを生成さ
せ、これを分取することによる、α-グルコシルナリン
ジンの製造方法が開示されている。
【0006】
【化2】
【0007】かかる酵素処理により得られるα-グルコ
シルナリンジンについては、これまで式[I]で示され
るナリンジンのグルコースの3"位の位置にグルコース
(G)がα-1,4結合していることが確認されていた
(THE FIRST INTERNATIONAL CONGRESS ON "VITAMINS AN
D BIOFACTORS IN LIFE SCIENCE" Kobe, September 19,1
991, Oral Session, 4-IV-5)。
【0008】また、通常の酵素反応では、上記式[II]
に示されるように、ナリンジンのグルコースの3"位の
位置にグルコース(G)がα-1,4結合で順次n個
(n=1〜20個)結合した化合物、またはこれらグル
コース結合数の異なるα-グルコシルナリンジンの混合
物(「酵素処理ナリンジン」とも言われる。)が生成し
ていると考えられていた。
【0009】しかしながら、最近、このようにして得ら
れた酵素処理ナリンジンには、3"-α-グルコシルナリ
ンジンの他に、新規配糖体として、その4'位もα-グル
コシル化された3",4'-α-グルコシルナリンジンや、
ナリンジンの4'位のみがα-グルコシル化された4'-α
-グルコシルナリンジンが含まれており、これら4'位が
α-グルコシル化された化合物は、酵素処理ナリンジン
全体の12%(モル比)ほど含有されていることが報告さ
れた(日本農芸化学会大会講演要旨集、2000年度、
66頁)。
【0010】本発明者らは、上記α-グルコシルナリン
ジン含有物の苦味、性質などについて鋭意研究を重ねた
ところ、上記酵素処理ナリンジンに含まれる成分のう
ち、3"-α-モノグルコシルナリンジンは、元のナリン
ジンに比べてその苦味が著しく強化されており、ナリン
ジンと同様に抗酸化能も示すのに対して、上記新規配糖
体の3",4'-α‐グルコシルナリンジンならびに4'-α
-グルコシルナリンジンは、苦味の増強が認められず、
また、抗酸化能もほとんど示さないことを見出した。さ
らに澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素
を作用させて得られる、主成分の3"-α-グルコシルナ
リンジンと、3",4'-α-グルコシルナリンジン、4'-
α-グルコシルナリンジン、未反応ナリンジンなどとを
含有する溶液に、α-グルコシダーゼ、あるいはα-グル
コシダーゼとグルコアミラーゼとを作用させれば、3"-
α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含み、すっき
りした強い苦味を呈し、抗酸化能を有する3"-α-モノ
グルコシルナリンジン含有組成物が、簡単かつ収率よく
調製できることなどを見出して本発明を完成するに至っ
た。
【0011】
【発明の目的】本発明は、上述のように抗酸化能を保持
するとともに、水への溶解性が改良され、苦味がさらに
増強された新規なナリンゲニン配糖体組成物を提供し、
ナリンジンまたはその誘導体の利用・用途を拡大するこ
とを目的とする。すなわち、3"-α-モノグルコシルナ
リンジンの含量を高めることによって、すっきりした強
い苦味を呈し、抗酸化能を有する3"-α-モノグルコシ
ルナリンジン含有組成物を提供することを目的としてい
る。
【0012】また本発明は、上記酵素処理ナリンジン
に、さらに別異の簡単な酵素処理を施すことにより、
3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含み、す
っきりした強い苦味を呈し、抗酸化能を有する3"-α-
モノグルコシルナリンジン含有組成物を簡単かつ収率よ
く調製できる、3"-α-モノグルコシルナリンジン含有
組成物の製造方法を提供することを目的としている。
【0013】さらに本発明は、上記3"-α-モノグルコ
シルナリンジン含有組成物の利用方法を提供することを
目的としている。
【0014】
【発明の概要】本発明に係る3"-α-モノグルコシルナ
リンジン含有組成物は、ナリンゲニン配糖体を含む組成
物であって、ナリンゲニン配糖体全量のうち、60重量
%以上が、3"-α-モノグルコシルナリンジンであり、
3",4'-α-グルコシルナリンジンおよび4'-α-グル
コシルナリンジンの合計量が10重量%以下であること
を特徴としている。
【0015】上記組成物の好ましい態様においては、
3"-α-モノグルコシルナリンジンがナリンゲニン配糖
体全量の60重量%以上であり、ナリンジンが10重量
%〜30重量%、3",4'-α-グルコシルナリンジンおよ
び4'-α-グルコシルナリンジンの合計量が10重量%
以下であることが望ましい。 さらに、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジ
ン含有組成物は、3"-α-モノグルコシルナリンジンを
主成分とするナリンジン配糖体組成物の示す苦味が、同
一重量%濃度のナリンジンと比較して増強されているこ
とを特徴としている。
【0016】本発明に係る上記3"-α-モノグルコシル
ナリンジン含有組成物の製造方法は、澱粉部分分解物の
共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られる
α-グルコシルナリンジン配糖体含有溶液に、α-グルコ
シダーゼ活性またはグルコアミラーゼ活性を有する酵素
を添加して作用させて3"-α-モノグルコシルナリンジ
ンを得ることを特徴としている。
【0017】上記組成物のより好ましい製造方法は、澱
粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用
させて得られるα-グルコシルナリンジン配糖体含有溶
液に、α-グルコシダーゼ活性を有する酵素とグルコア
ミラーゼ活性を有する酵素とを添加して作用させて3"-
α-モノグルコシルナリンジンを得ることを特徴として
いる。
【0018】上記組成物のさらに好ましい製造方法は、
澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作
用させて得られるα-グルコシルナリンジン配糖体含有
溶液に、α-グルコシダーゼ活性を有する酵素、あるい
はこのα-グルコシダーゼ活性を有する酵素とグルコア
ミラーゼ活性を有する酵素とを添加して作用させること
により得られる3"-α-モノグルコシルナリンジンを含
有する酵素処理液を、多孔性吸着樹脂と接触させて3"-
α-モノグルコシルナリンジンを含有する配糖体混合物
を該樹脂に吸着させ、次いで、有機溶媒で3"-α-モノ
グルコシルナリンジンを溶出して3"-α-モノグルコシ
ルナリンジンを得ることを特徴としている。
【0019】本発明による飲食物または医薬品の風味の
改良方法は、上記の3"-α-モノグルコシルナリンジン
含有組成物を、飲食物または医薬品に添加することを特
徴としている。また、本発明による色素あるいは色素含
有物の褪色防止方法は、上記3"-α-モノグルコシルナ
リンジン含有組成物を、色素あるいは色素含有物に添加
することを特徴としている。
【0020】さらに本発明による飲食物、医薬品または
化粧品の酸化防止方法は、上記3"-α-モノグルコシル
ナリンジン含有組成物を、飲食物、医薬品または化粧品
に含有させることを特徴としている。本発明によれば、
3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含み、す
っきりした強い苦味を呈し、抗酸化能を有する3"-α-
モノグルコシルナリンジン含有組成物が提供される。
【0021】また本発明によれば、いわゆる酵素処理ナ
リンジンに、さらに別異の簡単な酵素処理を施すことに
より、3"-α-モノグルコシルナリンジンを高含量で含
み、すっきりした強い苦味を呈し、抗酸化能を有する
3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物が、簡単
かつ収率よく調製できる。また本発明によれば、上記
3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の利用方
法が提供される。
【0022】
【発明の具体的説明】以下、本発明に係る3"-α-モノ
グルコシルナリンジン含有組成物、その製造方法および
その利用方法について具体的に説明する。本明細書で
は、「酵素処理ナリンジン」とは、ナリンジンおよび澱
粉部分分解物、例えばデキストリンとを含有する液に糖
転移酵素、例えば、シクロデキストリングルカノトラン
スフェラーゼ(CGTase)を作用させることにより得られ
るものを言い、ナリンジンの3"位置にグルコースが複
数個付加した生成物である3"-α-グルコシルナリンジ
ンを主成分として含み、その他に、その4'位もα-グル
コシル化された3",4'-α-グルコシルナリンジンや、
ナリンジンの4'位のみがα-グルコシル化された4'-α
-グルコシルナリンジンをも含むことが多い。
【0023】また、「酵素処理モノグルコシルナリンジ
ン」とは、上記「酵素処理ナリンジン」の溶液をさらに
別異の酵素(例:α-グルコシダーゼ、グルコアミラー
ゼ)で処理して得られるものを言い、主成分の3"-α-
モノグルコシルナリンジンと、少量の未反応ナリンジン
とを含有し、3",4'-α-グルコシルナリンジンまた
は、4'-α-グルコシルナリンジンをほとんど含まな
い。この「酵素処理モノグルコシルナリンジン」は、本
発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成
物に包含される。
【0024】[3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組
成物]本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含
有組成物は、ナリンゲニン配糖体を含む組成物であっ
て、ナリンゲニン配糖体全量のうちの60重量%以上
が、3"-α-モノグルコシルナリンジンであり、3",
4'-α-グルコシルナリンジンおよび4'-α-グルコシル
ナリンジンの合計量が、ナリンゲニン配糖体の10重量
%以下であることを特徴としている。
【0025】上記組成物の好ましい態様においては、
3"-α-モノグルコシルナリンジンがナリンゲニン配糖
体全量の60重量%以上であり、ナリンジンが10重量
%〜30重量%、3",4'−α-グルコシルナリンジンお
よび4'-α-グルコシルナリンジンの合計量が10重量
%以下であることが望ましい。 本発明の上記組成物において、具体的にはナリンゲニン
配糖体全量のうちの60重量%以上、好ましくは70重
量%以上が3"-α-モノグルコシルナリンジンであるこ
とがとくに望ましい。
【0026】また、このような3"-α-モノグルコシル
ナリンジン含有組成物では、3"-α-グルコシルナリン
ジンの4'位がα-グルコシル化された成分である3",
4'-α-グルコシルナリンジンおよびナリンジンの4'位
がα-グルコシル化された成分である4'-α-グルコシル
ナリンジンの量が、ナリンゲニン配糖体の10重量%以
下であることが望ましい。換言すると、上記組成物で
は、3"-α-モノグルコシルナリンジンが、3"-α-グル
コシルナリンジン、3",4'-α-グルコシルナリンジン
および4'-α-グルコシルナリンジンの合計量の90重
量%以上を占め、好ましくは95〜100重量%を占め
ている。
【0027】本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリ
ンジン含有組成物は、3"-α-モノグルコシルナリンジ
ンを高含量で含み、しかもすっきりしたその苦味が強化
されている。すなわち、本発明に係る組成物は、3"-α
-モノグルコシルナリンジンを主成分とするナリンジン
配糖体組成物の示す苦味が、同一重量%濃度のナリンジ
ンと比較して1.3〜1.5倍に増強されている。
【0028】さらに詳説すると、本発明者らの研究結果
によれば、3"-α-モノグルコシルナリンジンが、元の
ナリンジンに比べて苦味をきわめて強く呈し、ナリンジ
ンと同様に抗酸化能も示す。これと対照的に、上記酵素
処理ナリンジンに含まれる成分の新規配糖体の3",4'
-α-グルコシルナリンジンまたは4'-α-グルコシルナ
リンジンは、苦味の増強が認められず、また、抗酸化能
もほとんど示さないことが見出されている。本発明に係
る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物におい
て、これら3",4'-α‐グルコシルナリンジンおよび/
または4'-α-グルコシルナリンジンの含有割合が多い
と、組成物の単位重量当りに示す苦味の程度および抗酸
化能は、著しく低下することになる。したがって、ナリ
ンジン誘導体組成物の有用性をさらに増すには、ナリン
ジンの生理的諸作用および抗酸化能を保持するととも
に、水などへの溶解性が改良され、しかも強化されたさ
わやかな苦味を発揮させる配合を有する組成物が好適で
あり、本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン
含有組成物がこの目的に適うものと言える。
【0029】このため、本発明に係る3"-α-モノグル
コシルナリンジン含有組成物は、組成物の具える諸特性
に基づき、多様な用途に利用することが可能である。例
えば、苦味料、飲食物(健康食品、機能性食品等も含
む)および医薬品の風味改善剤、色素の退色防止剤、感
受性疾患の予防剤、治療剤(抗感受性疾患剤)、美肌
剤、美白剤等の用途に好適に使用できる。
【0030】上述した知見のもとに完成された本発明に
係る上記3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物
(すなわち、上記「酵素処理モノグルコシルナリンジ
ン」を包含する組成物)を以下、別の観点から説明す
る。本発明の組成物には、主成分の3"-α-モノグルコ
シルナリンジンと、少量の未反応ナリンジンとが含まれ
ている。したがって、従来の酵素処理ナリンジンと比べ
ると、本発明の組成物中に含まれるナリンゲニン配糖体
の種類は少なく、分子組成が比較的一様であることも特
徴である。すなわち、この組成物に高含量で含有される
3"-α-モノグルコシルナリンジンは、ナリンジンの7-
O-ネオヘスペリドシドのグルコース3"位にのみにグル
コースが1個だけ付加したもので、ナリンゲニンの4'
位はフェノール性水酸基である(式[II]において、Gが
n=1に相当)。このために、3"-α-モノグルコシル
ナリンジン含有組成物は、抗酸化作用や苦味を示すので
あろうと考えられる。これに対して、上記3",4'-α-
グルコシルナリンジンや4'-α-グルコシルナリンジン
では、何れも、ナリンジンの4'位のOH基がグルコシ
ル基により塞がれているために抗酸化能を示さないので
あろうと考えられる。
【0031】また、従来の酵素処理ナリンジン、すなわ
ち、ナリンジンとデキストリンなどとを含有する液に糖
転移酵素のCGTaseなどを作用させて得られるものは、種
々の糖鎖からなる配糖体(3"-α-グルコシルナリンジ
ンなど)の混合物であるのに対して、本発明に係る組成
物の主成分である3"-α-モノグルコシルナリンジンは
単一化合物であるために、その物理的化学的性質を利用
しやすく、産業利用の観点から好都合である。
【0032】[3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組
成物の製造方法]次に、このような本発明に係る3"-α-
モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法につい
て説明する。本発明において使用する原料および酵素標
品の規格、性状ならびに使用量、酵素反応の条件、酵素
処理後の精製法などにより、得られる組成物の組成、収
量などは大きく変化する。とくに未反応物として残存す
るナリンジン量、抗酸化能のない3",4'-α-グルコシ
ルナリンジン量、4'-α-グルコシルナリンジン量など
をなるべく少なくするような製造工程の設計と管理が望
ましい。
【0033】本発明においては、上記3"-α-モノグル
コシルナリンジン含有組成物を製造するに際して、澱粉
部分分解物の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用さ
せて得られる溶液(酵素処理ナリンジン溶液)に、α-
グルコシダーゼ活性を有する酵素、またはグルコアミラ
ーゼ活性を有する酵素を添加して作用させ、あるいは、
α-グルコシダーゼとグルコアミラーゼの各活性を有す
る酵素類を同時にまたは別々に作用させている。
【0034】その際に用いられる「酵素処理ナリンジ
ン」についてまず始めに説明する。 <酵素処理ナリンジン>α-グルコシダーゼなどの酵素
処理の対象となる溶液としては、通常、澱粉部分分解物
の共存下でナリンジンに糖転移酵素を作用させて得られ
る溶液(酵素処理ナリンジン溶液)が用いられる。この
ような酵素処理ナリンジンは、主成分の3"-α-グルコ
シルナリンジンを含有し、さらに3",4'-α-グルコシ
ルナリンジンおよび/または4'-α-グルコシルナリン
ジン、未反応ナリンジンなどを含有していることが多
い。本発明では、このような成分すなわち3"-α-グル
コシルナリンジンを含有し、さらに必要により3",4'
-α-グルコシルナリンジンおよび/または4'-α-グル
コシルナリンジン、未反応ナリンジンなどを含有するも
のであれば、その含量比、濃度などは特に限定されな
い。好ましくは、処理すべき溶液中の3"-α-グルコシ
ルナリンジン濃度が、0.1〜30重量%、好ましくは
1〜10重量%であり、ナリンジン濃度が、0.02〜
15重量%、好ましくは0.2〜5重量%であり、3"-
α-グルコシルナリンジン/ナリンジン(重量比)が、
10〜1500/1〜750、好ましくは5〜50/1
〜25であるものが望ましい。
【0035】上記3"-α-グルコシルナリンジンなどを
含有する溶液としては、例えば、次に示すものが挙げら
れる。特開平4-13691号公報に記載されているよ
うに、ナリンジンに澱粉部分分解物(α-グルコシル糖
化合物)共存下で糖転移酵素(α-グルコシル転移活性
を有する酵素)を作用させてなり、α-グルコシルナリ
ンジン(3"-α-グルコシルナリンジン、3",4'-α-
グルコシルナリンジン、あるいは4'-α-グルコシルナ
リンジン)と未反応のナリンジンとを含有しているも
の、すなわち、「酵素処理ナリンジン」の溶液である。 <グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼの各活性を有
する酵素類>グルコアミラーゼ活性を有する酵素(3"-
位のグルコースを切断する酵素)としては、具体的に
は、例えば、グルコアミラーゼ(グルクザイムNL4,
2,天野製薬(株)製)、セルラーゼA<アマノ>3
[天野製薬(株)製]、グルコチーム(長瀬産業(株)
製)、ユニアーゼ30((株)ヤクルト製)、ナリンギ
ナーゼ(田辺製薬(株)製)等のように、α-1,4グ
ルコシル結合をグルコース単位で切断しうる酵素が挙げ
られる。
【0036】α-グルコシダーゼ活性を有する酵素(ナ
リンジンの主に4'-位のグルコースを切断する酵素)と
しては、具体的には、例えば、セルラーゼA<アマノ>
3、トランスグルコシダーゼ、<アマノ>(天野製薬
(株)製)等が挙げられる。これらの酵素のうちグルコ
アミラーゼ活性を有する酵素、例えば、グルコチーム
は、上記「酵素処理ナリンジン」溶液中のα-グルコシ
ルナリンジン100重量部当たり、好ましくは0.01〜10
重量部、さらに好ましくは0.2〜1重量部程度の量で用
いられる。
【0037】またα-グルコシダーゼ活性を有する酵
素、例えばトランスグルコシダーゼ<アマノ>は、上記
「酵素処理ナリンジン」溶液中のナリンジン100重量
部当たり、好ましくは0.001〜10重量部、さらに好まし
くは0.01〜1重量部程度の量で用いられる。また、これ
らの酵素を、上記「酵素処理ナリンジン」溶液中のα-
グルコシルナリンジンなどに作用させるには、通常、p
H3〜7、好ましくはpH4〜5で、通常40〜70
℃、好ましくは50〜60℃の温度で、通常0.5〜48
時間、好ましくは6〜24時間程度保持すればよい。
【0038】α-グルコシルナリンジンは、グルコアミ
ラーゼ活性を有する酵素の加水分解作用を受けて、この
α-グルコシルナリンジンのナリンゲニン骨格7位にβ
−結合しているグルコース基の3"位にさらにα-1,4
結合でn個順次結合(n=1〜20個)しているグルコ
ースが、3"位の1個を残して加水分解され、上記式[I
I]中、n=1の3"-α-モノグルコシルナリンジンにな
る。
【0039】α-グルコシダーゼをα-グルコシルナリン
ジン(モノグルコシルナリンジンも含む。)に作用させ
ても、その3"位にα−結合しているグルコースのう
ち、3"位の1個目のグルコースはほとんど加水分解さ
れない。しかし、α-グルコシダーゼは、酵素処理ナリ
ンジンに少量成分として含有されている4'位にグルコ
ースがα−結合したα-グルコシルナリンジンの当該グ
ルコースを加水分解する。またモノグルコシルナリンジ
ンにおいてナリンゲニン骨格の7位にβ−結合している
グルコースを加水分解することはない。
【0040】本発明では、上記「酵素処理ナリンジン」
溶液への上記各酵素の作用は、α-グルコシダーゼ、グ
ルコアミラーゼのいずれかを単独で作用させてもよく、
またα-グルコシダーゼとグルコアミラーゼの両者を作
用させてもよい。このようにα-グルコシダーゼとグル
コアミラーゼの両者を作用させる場合には、グルコアミ
ラーゼとα-グルコシダーゼを任意の順序に、または各
活性を有する酵素を同時に添加してもよい。またこれら
の各酵素は一度にあるいは少量ずつ添加することができ
る。本発明では、これらのうち、グルコアミラーゼとα
-グルコシダーゼの各活性を有する酵素を、同時に、上
記「酵素処理ナリンジン」溶液に添加する方法が、酵素
処理効率が高い上に、簡便で好ましい。
【0041】なお、グルコアミラーゼ活性、α-1,2-
ラムノシダーゼ活性、α-グルコシダーゼ活性のうち2
つ以上の活性を有する酵素(例:セルラーゼA<アマノ
>3[天野製薬(株)製])も用いることができる。 <精製>本発明では、上述した方法で得られる3"-α-
モノグルコシルナリンジン含有組成物をそのまま使用す
ることもできるが、多孔性吸着樹脂を用いて3"-α-モ
ノグルコシルナリンジン含有組成物から、3"-α-モノ
グルコシルナリンジン以外のα-グルコシル糖化合物な
どの夾雑成分を除いて用いてもよい。さらにイオン交換
樹脂(H型、OH型)などで脱塩、脱色して用いてもよ
い。
【0042】これらの方法を適用することにより、上記
組成物において、さわやかな苦味を強く呈する3"-α-
モノグルコシルナリンジンの比率が高められる。また、
上記3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物か
ら、例えばクロマトグラフィーによって分離するなどの
公知方法によって3"-α-モノグルコシルナリンジンを
分取してもよい。すなわち、多孔性吸着樹脂に3"-α-
モノグルコシルナリンジンとナリンジンを吸着させた
後、溶出させる含水アルコール等の含水溶出剤の溶剤含
有率を変えて、3"-α-モノグルコシルナリンジンとナ
リンジンを分離する方法などにより3"-αーモノグルコ
シルナリンジン含有組成物から3"-α-モノグルコシル
ナリンジンを分取して用いてもよい。このように3"-α
-モノグルコシルナリンジンを純粋に近い状態にまで精
製することも可能であるが、その精製に要するコストと
実際の利用上の要件との兼ね合いにより選択されるであ
ろう。
【0043】[組成物の利用態様]上記の製造方法により
得られた3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物
は、水難溶性のナリンジンと同等の抗酸化能を有すると
ともに、水への溶解が良好であり、しかもさわやかな苦
味がナリンジンよりも強化されている特徴を有する。そ
うした特徴は、上記組成物が、ナリンジンと同等の苦味
を呈するが抗酸化能を発揮しない3",4'-α-グルコシ
ルナリンジン、あるいは4'-α-グルコシルナリンジン
をきわめて低い含量としていることに基づく。
【0044】この組成物が有する性質、とくにすっきり
した苦味、抗酸化能などに着目して、多方面において種
々の利用形態が可能である。以下、このものが最も有用
に利用される態様を例として挙げるが、該組成物の用途
がこれらに限定されるわけではない。3"-α-モノグル
コシルナリンジン含有組成物中の3"-α-モノグルコシ
ルナリンジンは、食品等から体内に摂取吸収されると生
体内酵素の作用を受けて元のナリンジンに戻り、ビタミ
ンPとしての諸機能を発揮することができる。したがっ
て、例えば、ビタミンP強化剤、循環器系疾患、感受性
疾患等の予防剤、治療剤(抗感受性疾患剤)などの医薬
品に、ナリンジンに代わって3"-α-モノグルコシルナ
リンジン含有組成物を利用することができる。さらに
3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物は、コレ
ステロール低下作用、血圧低下作用、抗アレルギー作用
などを有するので、健康食品あるいは機能性食品等に
3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物を利用す
ることができる。
【0045】また、ナリンジンが示す苦味は、ラムノー
スとグルコースとの1→2結合の点にあると言われる。
3"-α-モノグルコシルナリンジンは、ナリンジンに比
較してすっきりとした苦味をさらに強く呈する。後述す
るように、同一モル濃度において3"-α-モノグルコシ
ルナリンジンは、ナリンジン、3",4'-グルコシルナリ
ンジン、4'-α-グルコシルナリンジンよりも約2倍の苦
味を示すことが本発明者らの本研究により明らかとなっ
た。本発明に係る組成物においては、3"-α-モノグル
コシルナリンジンをナリンゲニン配糖体全量の60重量%
以上に相当する量を含む。したがって、本発明に係る
3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物の示す苦
味は、同一重量%濃度のナリンジンと比較して1.3〜1.5
倍に増強されている。このため苦味料として飲食物に添
加することにより、その味覚に深みを与えて洗練された
風味とすることができ、しかもナリンジンを用いる場合
に比べより少量ですむ。したがって、3"-α-モノグル
コシルナリンジンを高含量で含む組成物は、飲食物(健
康食品、機能性食品等を含む)、あるいは医薬品など人
や動物が経口摂取するものに少量添加することにより、
飲食物、医薬品などの苦味を補強したり、また酸味、塩
から味、渋味、青臭み、エグ味を低減するなどして、風
味を大きく改善できる。
【0046】例えば、上記組成物をマーマレード、ジャ
ム、果汁飲料などの飲食物に適量添加することによりさ
わやかな苦味を付与できる。さらに苦味を賞味する飲食
物のみならず、柑橘系のゼリー、ジュース、アイスクリ
ーム、ジャム、缶詰等に添加することによりその本物ら
しさを高めることができる。また、甘味料に少量の本組
成物を併用すれば、飲食物に平板な甘味ではなくまろや
かな甘味を付与する効果がある。
【0047】本発明に係るこの組成物は、上記したよう
に、飲食物(健康食品、機能性食品等を含む)、あるい
は医薬品など広範に使用することができるが、該組成物
中に高含量で含まれる3"-α-モノグルコシルナリンジ
ンが有する抗酸化能が、これらの配合された物品の品質
保持にも有用である。たとえば、経口投与される医薬品
などの食味改善と抗酸化性の強化にも使用できる。その
ような医薬品としては、たとえば、経腸栄養剤、補助栄
養剤、水薬、シロップ剤などが挙げられる。さらに、飲
食物(健康食品、機能性食品等を含む)などにおいて
も、その添加により脂質の酸敗、香料または色素の酸化
変質、光による劣化変質などに対して防止する効果を発
揮することが期待される。
【0048】本発明に係る3"-α-モノグルコシルナリ
ンジン含有組成物は、医薬部外品、外用医薬品、化粧品
などに配合すれば、抗酸化作用の発揮が期待できる。す
なわち、この3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組
成物を、色素に添加して用いることにより、あるいは染
料、画材、香料、食品、ペンキなどの色素含有物に添加
(配合)して用いることにより、例えばこの色素で染色
された衣料などの退色を防止できる。
【0049】ナリンジンは特有の紫外部吸収スペクトル
を持ち、可視部に目立った吸収がないためほとんど無色
であり、従来から、紫外線で退色の起きやすい色素、と
くに天然色素の退色防止に利用が試みられてきたが、ナ
リンジンは水への溶解度が低いために使いづらいという
欠点があった。これに対して本発明に係る、3"-α-モ
ノグルコシルナリンジンを高含量で含む組成物は、沈澱
を生じにくい水溶性のものであるため、色素の退色防止
に幅広く利用できる。特にパプリカ、クチナシ、β-カ
ロチン、アスタキサンチン等のカロチノイド系色素に有
効であるが、赤キャベツ、ムラサキイモ等のアントシア
ニン色素、ブドウ果皮、ベニバナ黄、ベニバナ赤、赤ダ
イコン等のフラボノイド色素、ビートレッド、ウコン色
素、クチナシ青、紅麹色素等にも効果的に使うことがで
きる。
【0050】このような3"-α-モノグルコシルナリン
ジンを高含量で含む組成物を色素の退色防止に用いる場
合、色素で着色された試料重量当たり、0.001〜0.2重量
%、好ましくは0.005〜0.1重量%、より好ましくは0.01
〜0.05重量%の量で使用することが望ましい。この場
合、酵素処理ルチン、酵素処理ヘスペリジン、L-アス
コルビン酸(またはL-アスコルビン酸ソーダ)の何れ
か1つまたは2つ以上を使用することにより、上記色素
の退色防止に相乗効果が得られる。天然物由来の本組成
物は、色素を使用する幅広い組成物、製剤に添加するこ
とができるが、色素を使用する化粧品にも好適である。
たとえば、口紅、歯磨き、リップクリーム、白粉、香水
などに好ましく使用することができる。
【0051】また、このように3"-α-モノグルコシル
ナリンジンを高含量で含む本発明の組成物は、特有の紫
外部吸収特性を持つとともに、色が極めて薄いなどの特
質を持つため、たとえばUVカット剤などの化粧品にお
いては、特に有用である。
【0052】
【発明の効果】本発明に係る3"-α-モノグルコシルナ
リンジン含有組成物は、3"-α-モノグルコシルナリン
ジンを高含量で含むため、ナリンジンと同様に抗酸化能
を有するとともに、ナリンジンに比べて、さわやかな苦
味が著しく強化され、水溶性に優れ、白濁(結晶析出)
が生じにくいなどナリンジンの諸特性が改善されてい
る。
【0053】また、本発明による3"-α-モノグルコシ
ルナリンジン含有組成物の製造方法によれば、かかる優
れた特性を有する3"-α-モノグルコシルナリンジン含
有組成物が、前記「酵素処理ナリンジン」から収率よく
簡単に得られる。さらに、本発明に係る3"-α-モノグ
ルコシルナリンジン含有組成物は、飲食物、医薬品、化
粧品、添加物などに広範に使用できる。本組成物は、増
強された苦味を活かして飲食物などの風味を改善するこ
とのほか、ナリンジンと同様、添加された色素や香料の
酸化による品質劣化または光による劣化を防止する効果
を発揮する。
【0054】本発明の組成物は、飲食物、医薬品、化粧
品などにおいて天然物由来の添加物として位置付けられ
るので、生体親和性が高く安全であり、しかも製造コス
トは、上昇しないなどの利点も有する。
【0055】
【実施例】以下、本発明に係る3"-α-モノグルコシル
ナリンジン含有組成物の製造方法について実施例に基づ
いてさらに具体的に説明するが、本発明は、このような
実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下
の例において、「%」は、特にその趣旨に反しない限り
「重量%」の意味である。
【0056】
【実施例1】ナリンジン50.0gとDE8のデキストリン
200gを500mLの水に加熱溶解し、2N水酸化ナトリウ
ム水溶液でpH7.0に調整し、バチルス・ステアロサー
モフィルス由来のシクロデキストリングルカノトランス
フェラーゼ(株式会社 林原生物化学研究所製)をデキ
ストリン1g当たり15単位加えて、68℃で48時間反応さ
せた。反応終了後、酵素を加熱失活させてから、ろ過し
て「酵素処理ナリンジン溶液」(A液)を得た。
【0057】A液を下記条件にてHPLC分析し、次式
に基づいて計算すると、ナリンジンの反応率は74%であ
り、未反応のナリンジンは、26%であった。HPLCク
ロマトグラムを図1に示す。
【0058】
【数1】
【0059】<HPLC分析条件> カラム:C18 溶離液:水/アセトニトリル=80/20(v/v) 検出:280nm 温度:40℃ 流速:1.0mL/分 <グルコアミラーゼ反応>A液の一部をpH4.5に調整し
グルコアミラーゼ(グルコチーム(天野製薬(株)
製))を1.0g加えて、55℃で24時間反応させた。反応
終了後、酵素を加熱失活させてから、ろ過してグルコア
ミラーゼ処理ナリンジン溶液(B液)を得た。B液を上
記条件にてHPLCによる分析をおこなった。HPLC
クロマトグラムを図2に示す。
【0060】この図2によれば、A液をグルコアミラー
ゼ反応処理することにより、図1の酵素処理ナリンジン
のピーク群は、3"‐α-モノグルコシルナリンジンと未
反応ナリンジンおよび3",4'-α-ジグルコシルナリン
ジンと4'-α-モノグルコシルナリンジンのピークに集
約されていることが分かる。したがって、B液にはこれ
らの配糖体が含まれており、3"位置に2個以上のグル
コースが付加した配糖体は実質的に含まれない。
【0061】なお、モノグルコシルナリンジンの確認
は、該ピークのクロマトグラフィー分取画分について酸
性条件下で加水分解し、ナリンゲニンと単糖とのモル比
が1:3であることを確認することで行った。 <α-グルコシダーゼ反応>B液の一部をpH4.5に調整
し、α-グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL<ア
マノ>)を1mL加えて、55℃で24時間反応させた。反
応終了後、酵素を加熱失活させてから、ろ過して「酵素
処理モノグルコシルナリンジン」の溶液(C液)を得
た。C液を上記条件にてHPLC分析した。HPLCク
ロマトグラムを図3に示す。
【0062】この図3によれば、B液をα-グルコシダ
ーゼ反応処理することによって、図2のグルコアミラー
ゼ処理ナリンジンのピーク群中に存在していた3",4'
-α-ジグルコシルナリンジンと4'-α-モノグルコシル
ナリンジンのピークはほぼ消失しており、モノグルコシ
ルナリンジンと未反応ナリンジンとの2ピークに集約さ
れていることが分かる。このC液は、「酵素処理モノグ
ルコシルナリンジン」の溶液に相当するものであり、C
液中の混合物は、本発明に係る3"-α-モノグルコシル
ナリンジン含有組成物に包含されるものである。
【0063】A液、B液、C液について行ったHPLC
クロマトグラムのピークの濃度比から求めた配糖体骨格
のナリンゲニン比の分析結果を表1に示す。この表1の
値とナリンジン配糖体のそれぞれの分子量から算出した
A液、B液、C液のナリンゲニン配糖体比を表2に示
す。さらに、表1から算出したB液、C液のナリンジン
配糖体比の結果を表3に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【苦味試験1】上記のA液(「酵素処理ナリンジン」の
溶液に相当)およびC液(「酵素処理モノグルコシルナ
リンジン」の溶液に相当)を凍結乾燥してそれぞれ粉末
にした後に、各0.10%水溶液を調製した。パネル8名に
てこの2つの水溶液の苦味強度を比較したところ、全員
がA液からの調製液に較べ、明らかにC液からの調製液
の方が苦味が強いと判定した。
【0068】
【苦味試験2】上記B液から3"-α-モノグルコシルナ
リンジン、3",4'-α-ジグルコシルナリンジン、4'-
α-モノグルコシルナリンジン画分を分取し、試薬ナリ
ンジンを対照にして同一モル濃度にてパネル8名による
苦味の官能検査を行った。その結果、もとのナリンジン
と比較して、3"-α-モノグルコシルナリンジンは、苦
味度がほぼ2倍に増強されていた。これに対して、
3",4'-α-ジグルコシルナリンジン、4'-α-モノグ
ルコシルナリンジン画分には苦味の増強は見られなか
た。
【0069】
【実施例2】実施例1と同様に「酵素処理ナリンジン」
溶液(A液相当)を調製し、pH4.5に調整後、グルコ
アミラーゼ(グルコチーム(天野製薬(株)製))1.0
gおよびα-グルコシダーゼ(トランスグルコシダーゼL
<アマノ>)1mL加えて、55℃で24時間反応させた。
反応終了後、酵素を加熱失活させてから、ろ過して「酵
素処理モノグルコシルナリンジン」の溶液(C液相当)
を得た。
【0070】次いで、1.5Lの中間極性多孔性吸着樹脂
(XAD−7)が充填され、高濃度のエタノール水溶液
で活性化しておいたカラムに上記酵素処理モノグルコシ
ルナリンジン溶液(C液相当)を通過させ、次いでカラ
ム容量の2倍量の水で洗浄してから50%(v/v)エタ
ノール水溶液3Lで樹脂への吸着成分を溶離させた。溶
離液のエタノールを除いてから、乾燥し酵素処理モノグ
ルコシルナリンジン58gを得た。本品を実施例1と同様
の条件でHPLC分析したところ、含まれている成分は3"-
α-モノグルコシルナリンジンとナリンジンのみで、そ
の他の成分はほとんど検出されなかった。本品は、本発
明に係る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物
に包含されるものである。
【0071】
【実施例3】実施例2で調製した酵素処理モノグルコシ
ルナリンジンを用いて、表4に示した配合組成の低カロ
リータイプのグレープフルーツジュース(配合品A)を調
製した。なお、対照として、この酵素処理モノグルコシ
ルナリンジンを配合しなかった以外は配合品Aと同様で
あるグレープフルーツジュース(比較品)も調製した。
【0072】酵素処理モノグルコシルナリンジンを加え
た配合品Aは、比較品に較べてグレープフルーツ本来の
苦味が保たれており、味に深みがあり好ましい風味であ
った。
【0073】
【表4】
【0074】
【実施例4】野菜ジュース(人参、レタス、パセリ、セ
ロリ、水がらし、キャベツ、ほうれん草)100gに対
し、実施例2で調製した「酵素処理モノグルコシルナリ
ンジン」を20mg(0.02%)添加混合し(試験区)、無
添加のジュース(対照区)と呈味比較した。
【0075】対照区と比較して、試験区は青くさ味が少
なくなるとともに、ほど良いさわやかな苦味が全体の味
をまとめ上げ、スッキリした味になり、飲みやすくなっ
ていた。
【0076】
【実施例5】0.05重量%のクチナシ黄色素溶液(クエン
酸緩衝液、pH3.3)に、酵素処理モノグルコシルナリ
ンジン(実施例2で得られた「酵素処理モノグルコシル
ナリンジン」)を最終含有量が0.02〜0.04重量%となる
ように添加してから、表5に示すような酵素処理ルチン
(成分組成:α-モノグルコシルルチン77.5重量%、イ
ソケルシトリン14.5重量%、糖類5.2重量%、水分2.8重
量%含有、商品名「αGルチンPS」東洋精糖株式会社
製)、およびL-アスコルビン酸のいずれか一方、また
は両方を同時に添加した。次いで、密閉容器中で加熱殺
菌処理をした後、5℃、蛍光灯照射(照度7,000ル
クス)下で保持し、一日おきにクチナシ黄色素の残存率
(%)を、分光光度計で442nmの波長にて色素溶液の
吸光度を測定することにより算出した。
【0077】試験条件およびその結果を表5に示した。
なお、無添加の区を対照区(試験番号9)として、併せ
て表5に示した。また、酵素処理ルチンのみ添加した区
を試験番号10とし、L-アスコルビン酸のみ添加した
区を試験番号11として、併せて表5に示した。表5に
よれば、酵素処理モノグルコシルナリンジンをクチナシ
黄色素溶液に添加することにより、クチナシ色素残存率
は大幅に向上したことが分かる。また、酵素処理モノグ
ルコシルナリンジンとともに酵素処理ルチン、L-アス
コルビン酸のいずれか一方を単独で用いるか、あるいは
両方を併用することにより相乗効果が得られたことが分
かる。
【0078】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で得られた酵素処理ナリンジ
ン溶液(A液)のHPLCクロマトグラムである。横軸
は溶出時間(分)を表す。
【図2】図2は、実施例1で得られたグルコアミラーゼ
処理ナリンジン溶液(B液)のHPLCクロマトグラム
である。横軸は溶出時間(分)を表す。
【図3】図3は、実施例1で得られた酵素処理モノグル
コシルナリンジン溶液(C液)のHPLCクロマトグラ
ムである。横軸は溶出時間(分)を表す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 7/00 A61K 7/00 F 4C083 47/26 47/26 Fターム(参考) 4B018 LB08 MC04 MD27 ME06 4B021 LW02 LW06 MC03 MC07 MK28 MQ04 4B047 LB06 LB08 LB09 LF01 LF07 LG31 4B064 AF52 CA21 CB30 DA01 DA10 4C076 BB01 DD69 FF51 FF52 4C083 AD391 BB47

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ナリンゲニン配糖体を含む組成物であっ
    て、ナリンゲニン配糖体全量のうち、60重量%以上が
    3"-α-モノグルコシルナリンジンであり、3",4'-α
    -グルコシルナリンジンおよび4'-α-グルコシルナリン
    ジンの合計量が、10重量%以下であることを特徴とす
    る3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物。
  2. 【請求項2】3"-α-モノグルコシルナリンジンがナリ
    ンゲニン配糖体全量の60重量%以上であり、ナリンジ
    ンが10重量%〜30重量%、3",4'-α-グルコシル
    ナリンジンおよび4'-α-グルコシルナリンジンの合計
    量が10重量%以下であることを特徴とする請求項1に
    記載の3"-α-モノグルコシルナリンジン含有組成物。
  3. 【請求項3】3"-α-モノグルコシルナリンジンを主成
    分とするナリンジン配糖体組成物の示す苦味が、同一重
    量%濃度のナリンジンと比較して増強されていることを
    特徴とする請求項1または2に記載の3"-α-モノグル
    コシルナリンジン含有組成物。
  4. 【請求項4】澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖
    転移酵素を作用させて得られるα-グルコシルナリンジ
    ン配糖体含有溶液に、α-グルコシダーゼ活性またはグ
    ルコアミラーゼ活性を有する酵素を添加して作用させて
    3"-α-モノグルコシルナリンジンを得ることを特徴と
    する請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モノグルコ
    シルナリンジン含有組成物の製造方法。
  5. 【請求項5】澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖
    転移酵素を作用させて得られるα-グルコシルナリンジ
    ン配糖体含有溶液に、α-グルコシダーゼ活性を有する
    酵素とグルコアミラーゼ活性を有する酵素とを添加して
    作用させて3"-α-モノグルコシルナリンジンを得るこ
    とを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-
    モノグルコシルナリンジン含有組成物の製造方法。
  6. 【請求項6】澱粉部分分解物の共存下でナリンジンに糖
    転移酵素を作用させて得られるα-グルコシルナリンジ
    ン配糖体含有溶液に、α-グルコシダーゼ活性を有する
    酵素、あるいはこのα-グルコシダーゼ活性を有する酵
    素とグルコアミラーゼ活性を有する酵素とを添加して作
    用させて得られる3"-α-モノグルコシルナリンジンを
    含有する酵素処理液を、 多孔性吸着樹脂と接触させて3"-α-モノグルコシルナ
    リンジンを含有する配糖体混合物を該樹脂に吸着させ、
    次いで、 有機溶媒で3"-α-モノグルコシルナリンジンを溶出し
    て3"-α-モノグルコシルナリンジンを得ることを特徴
    とする請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モノグル
    コシルナリンジン含有組成物の製造方法。
  7. 【請求項7】請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モ
    ノグルコシルナリンジン含有組成物を、飲食物または医
    薬品に添加することを特徴とする飲食物または医薬品の
    風味改良方法。
  8. 【請求項8】請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モ
    ノグルコシルナリンジン含有組成物を、色素あるいは色
    素含有物に添加することを特徴とする色素あるいは色素
    含有物の褪色防止方法。
  9. 【請求項9】請求項1〜3の何れかに記載の3"-α-モ
    ノグルコシルナリンジン含有組成物を、飲食物、医薬品
    または化粧品に含有させることを特徴とする飲食物、医
    薬品または化粧品の酸化防止方法。
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