JP2017160431A - フェノール樹脂発泡体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、吸水量が低く、熱伝導率の長期安定性が良好であり、変形の少ないフェノール樹脂発泡体を提供する。【解決手段】平板状であり、その厚さ方向に三分割して、一方の面から順に第一の表層部、中央層部、第二の表層部とした場合に、前記第一の表層部の独立気泡率と、前記第二の表層部の独立気泡率は、それぞれ85%以上である、フェノール樹脂発泡体。【選択図】なし

Description

本発明は、フェノール樹脂発泡体に関する。
フェノール樹脂発泡体は、断熱性や難燃・防火性等に優れることから、断熱材として、建築、その他の産業分野において、広く使用されている。
ところで、フェノール樹脂発泡体を始め、プラスチック系断熱材の断熱性能に関して、その熱伝導率が製造時から経時的に変化することが確認されている。これは、気泡内ガスの系外への拡散によるものであって、発泡剤が気泡膜を透過して徐々に大気中の空気と置換されていく現象に基づくものである。従って、フェノール樹脂発泡体においても、その熱伝導率が経時的に増大して、断熱性能が経時的に劣化するという現象が生じることが、知られている。
このような現象によって、フェノール樹脂発泡体の断熱性能が徐々に損なわれるため、フェノール樹脂発泡体の断熱性能の長期(経時)安定性を確保することは、重要な課題である。
これに対し、フェノール樹脂組成物に含窒素架橋型環式化合物や無機フィラーを添加することで、断熱性能の長期安定性が良好である上に、従来品に比べて吸水量が低いフェノール樹脂発泡体を与える発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料が知られている(特許文献1)。
国際公開第2013/021982号
しかしながら、特許文献1に記載の技術では含窒素架橋型環式化合物や無機フィラーを添加する必要があり、添加剤によるコストの増加だけでなく、これらの添加剤により初期熱伝導率や吸水量が高まるという問題がある。また、変形の抑制については何ら検討されていない。
本発明の目的は、吸水量が低く、熱伝導率の長期安定性が良好であり、変形の少ないフェノール樹脂発泡体を提供することである。
本発明は以下の態様を有する。
[1]平板状であり、その厚さ方向に三分割して、一方の面から順に第一の表層部、中央層部、第二の表層部とした場合に、
前記第一の表層部の独立気泡率と、前記第二の表層部の独立気泡率は、それぞれ85%以上である、フェノール樹脂発泡体。
[2]前記第一の表層部の独立気泡率、前記中央層部の独立気泡率、前記第二の表層部の独立気泡率のうち、最大値と最小値の差が10%以下である、[1]に記載のフェノール樹脂発泡体。
[3]前記中央層部の独立気泡率が85%以上であり、
[第一の表層部の独立気泡率(%)]−[中央層部の独立気泡率(%)]で表される値が−5〜5%であり、
[第二の表層部の独立気泡率(%)]−[中央層部の独立気泡率(%)]で表される値が−5〜5%である、[1]又は[2]に記載のフェノール樹脂発泡体。
本発明によれば、吸水量が低く、熱伝導率の長期安定性が良好であり、変形の少ないフェノール樹脂発泡体を提供することができる。
<フェノール樹脂発泡体>
本発明のフェノール樹脂発泡体は、平板状である。
フェノール樹脂発泡成形体の表層部の独立気泡率は、85%以上である。
フェノール樹脂発泡体の大きさは特に限定されず、用途等を勘案して適宜決定される。例えば、フェノール樹脂発泡体の大きさは、幅910〜1000mm×長さ1820〜3300mm×厚さ12〜200mmとされる。
フェノール樹脂発泡体の形状は平板状であればよく、平面視で矩形状、円形等であってもよい。
フェノール樹脂発泡体は、例えば、フェノール樹脂と、発泡剤と、酸触媒とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させてなる発泡体である。
発泡性フェノール樹脂組成物は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
発泡性フェノール樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒および界面活性剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、レゾール型のものが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノールおよびこれらの変性物等が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。ただしフェノール化合物、アルデヒド、アルカリ触媒はそれぞれ上記のものに限定されるものではない。フェノール樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合されて用いられてもよい。
フェノール化合物とアルデヒドとの使用割合は特に限定されない。好ましくは、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1〜1:3であり、より好ましくは1:1.3〜1:2.5である。
(発泡剤)
発泡剤は、炭化水素、又はハロゲン化炭化水素から選択でき、これらを併用しても良い。特に、ハロゲン化不飽和炭化水素は難燃性であるため、イソペンタン等の脂肪族炭化水素を用いる場合に比べて、フェノール樹脂発泡体の難燃性が優れる。
炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができ、沸点が−20〜100℃のものが好適に用いられる。
炭化水素としては、炭素数が4〜6の環状分子構造又は炭素数4〜6の鎖状分子構造を有するものが好ましく、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。これらの炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらの炭化水素は、低温域(例えば、−80℃程度の冷凍庫用断熱材)から高温域(例えば200℃程度の加熱体用断熱材)までの広い温度範囲で優れた断熱性能を確保でき、比較的安価であり経済的にも有利である。
ハロゲン化炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができ、例えば塩素化炭化水素、塩素化フッ素化不飽和炭化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素、臭素化フッ素化不飽和炭化水素、ヨウ素化フッ素化不飽和炭化水素等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素は、水素の全てがハロゲンで置換されたものでもよいし、水素の一部がハロゲンで置換されたものでもよい。
ハロゲン化炭化水素としては、ハロゲン化不飽和炭化水素であってもよいし、ハロゲン化飽和炭化水素であってもよい。
塩素化炭化水素としては、塩素化飽和炭化水素が挙げられ、炭素数が2〜5であるものが好ましく、例えばジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド等が挙げられる。
上記の中でも、オゾン層破壊係数が低く、環境適合性に優れる点で、イソプロピルクロライドが好ましい。
塩素化フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内に塩素とフッ素と2重結合を含むものが挙げられ、例えば、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン(E及びZ異性体)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)(E及びZ異性体)(HoneyWell社製、商品名:SOLSTICE LBA)、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yd)(E及びZ異性体)、1−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zb)(E及びZ異性体)、2−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xe)(E及びZ異性体)、2−クロロ−2,2,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xc)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)(SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300−7−09)、3−クロロ−1,2,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233ye)(E及びZ異性体)、3−クロロ−1,1,2−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yc)、3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1223xd)(E及びZ異性体)、2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(E及びZ異性体)、及び2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン(E及びZ異体)等が挙げられる。
フッ素化炭化水素としては、フッ素化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素等が挙げられる。
フッ素化飽和炭化水素としては、例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオブタン(HFC365mfc)及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内にフッ素と2重結合を含むものが挙げられ、例えば、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)(E及びZ異性体)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO1336mzz)(E及びZ異性体)(SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300−3−Z6)等の特表2009−513812号公報等に開示されるものが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、オゾン破壊係数(ODP)および地球温暖化係数(GWP)が小さく、環境に与える影響が小さい点で、ハロゲン化不飽和炭化水素が好ましく、塩素化フッ素化不飽和炭化水素またはフッ素化不飽和炭化水素がより好ましい。
2種以上の発泡剤の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば1種以上の炭化水素又は塩素化炭化水素と1種以上のフッ素化不飽和炭化水素との組み合わせ、1種以上の炭化水素又は塩素化炭化水素と1種以上のフッ素化飽和炭化水素との組み合わせ、1種以上の炭化水素又は塩素化炭化水素と1種以上の塩素化フッ素化不飽和炭化水素との組み合わせ、1種以上の塩素化フッ素化不飽和炭化水素と1種以上のフッ素化飽和炭化水素との組み合わせ、1種以上のフッ素化不飽和炭化水素と1種以上のフッ素化飽和炭化水素との組み合わせ、2種以上の塩素化フッ素化不飽和炭化水素どうしの組み合わせ、2種以上のフッ素化不飽和炭化水素どうしの組み合わせ、2種以上のフッ素化不飽和炭化水素どうしの組み合わせ等が挙げられる。
2種以上のハロゲン化炭化水素の組み合わせとしては、塩素化炭化水素と、分子内にハロゲン原子と炭素間2重結合を有するハロゲン化不飽和炭化水素との組み合わせが好ましい。塩素化炭化水素、ハロゲン化不飽和炭化水素はそれぞれ1種でも2種以上でもよい。
塩素化炭化水素は、フェノール樹脂発泡体の発泡剤として従来用いられているが、1種単独では、フェノール樹脂発泡体の平均気泡径が大きく、熱伝導率が高くなる。フッ素化不飽和炭化水素を併用することで、平均気泡径が小さく、熱伝導率が低くなり、フェノール樹脂発泡体の断熱性が向上する。また、ハロゲン化不飽和炭化水素は燃焼性が低いため、フェノール樹脂発泡体の難燃性が向上する。
塩素化炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素との組み合わせにおいて、塩素化炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素との質量比は、塩素化炭化水素:ハロゲン化不飽和炭化水素=9.9:0.1〜0.1:9.9であることが好ましい。ハロゲン化不飽和炭化水素を前記の質量比を満たす範囲内で含むことで、平均気泡径がより小さく、熱伝導率がより低くなり、フェノール樹脂発泡体の断熱性がより優れたものとなる。
塩素化炭化水素はハロゲン化不飽和炭化水素よりも分子量が小さい傾向がある。量が同じであれば、分子量が小さい方が、発泡したときの体積が大きい。そのため、塩素化炭化水素の割合が多い方が、少量の発泡剤で充分に発泡させやすい。また、塩素化炭化水素はハロゲン化不飽和炭化水素よりも安価な傾向がある。これらの観点から、塩素化炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素との質量比は、塩素化炭化水素:ハロゲン化不飽和炭化水素=9.9:0.1〜5:5であることが好ましく、9:1〜7:3であることがより好ましい。上記範囲内でハロゲン化不飽和炭化水素の比率が低いほど、優れた断熱性を保ちつつコストを低くできる。
一方で、ハロゲン化不飽和炭化水素は塩素化炭化水素よりも熱伝導率が低い傾向がある。そのため、より優れた断熱性を得る観点から、塩素化炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素との質量比は、塩素化炭化水素:ハロゲン化不飽和炭化水素=5:5〜0.1:9.9であることが好ましい。上記範囲内でハロゲン化不飽和炭化水素の比率が高いほど、熱伝導率が低くなり、断熱性が高まる。
塩素化炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素との組み合わせにおいて、ハロゲン化不飽和炭化水素の沸点は、塩素化炭化水素の沸点よりも低いことが好ましい。ハロゲン化不飽和炭化水素の沸点が塩素化炭化水素の沸点よりも低い方が、フェノール樹脂発泡体中の気泡の気泡径が小さく、かつ単位体積あたりの気泡の数が多くなり、断熱性がより優れる傾向がある。
また、それらの沸点の差は2℃以上30℃以下であることが好ましく、5℃以上20℃以下がより好ましい。沸点の差が上記上限値より大きいと、先にガス化して気泡核を形成したハロゲン化不飽和炭化水素が、より沸点の高い塩素化炭化水素がガス化するまでに気泡から抜けてしまい、発泡が不十分となるおそれがある。沸点の差が上記下限値より小さいと、十分に気泡核を形成しないまま塩素化炭化水素が発泡してしまい、気泡径が粗大になるおそれがある。
そのため、例えば、塩素化炭化水素として沸点36℃であるイソプロピルクロライドを選択した場合には、ハロゲン化不飽和炭化水素としては、沸点が6℃以上34℃以下の沸点を有するものを選択するのが好ましく、常温付近での取り扱いのしやすい点で、14℃以上34℃以下の沸点を有するものを選択するのがより好ましい。
塩素化炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素との組み合わせとしては、イソプロピルクロライドとフッ素化不飽和炭化水素との組み合わせ、またはイソプロピルクロライドと塩素化フッ素化不飽和炭化水素との組み合わせが好ましい。これらの組み合わせにおいて、フッ素化不飽和炭化水素、塩素化フッ素化不飽和炭化水素はそれぞれ1種でも2種以上でもよい。
発泡剤は、必要に応じて、ハロゲン化炭化水素以外の他の発泡剤をさらに含んでもよい。他の発泡剤としては、特に限定されず、例えば窒素、アルゴン、炭酸ガス、空気等の低沸点ガス;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジン等の化学発泡剤;多孔質固体材料等が挙げられる。
発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、1〜25質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましく、5〜15質量部がさらに好ましい。
2種以上の発泡剤の組成(質量比)は、フェノール樹脂発泡体に含まれる2種以上の発泡剤の組成と略一致している。
フェノール樹脂発泡体に含まれる2種以上の発泡剤の組成は、たとえば、以下の溶媒抽出法により確認できる。
溶媒抽出法:
予め発泡剤の標準ガスを用いて、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC/MS)での以下の測定条件における保持時間を求める。次に、上下の面材を剥がしたフェノール樹脂発泡体のサンプル1.6gを粉砕用ガラス容器に分取し、テトラヒドロフラン(THF)80mLを添加する。サンプルが溶媒に浸る程度に押しつぶした後、ホモジナイザーで1分30秒間粉砕抽出し、この抽出液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液をGC/MSに供する。発泡剤の種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定を行う。また、他の発泡剤の種類は、保持時間とマススペクトルによって同定を行う。発泡剤成分の検出感度を各々標準ガスによって測定し、上記GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成(質量比)を算出する。
・GC/MS測定条件
使用カラム:DB−5ms(アジレントテクノロジー社)60m、内径0.25mm、膜厚1μm
カラム温度:40℃(10分)−10℃/分−200℃
注入口温度:200℃
インターフェイス温度:230℃
キャリアガス:He 1.0mL/分
スプリット比:20:1
測定方法:走査法 m/Z=11〜550
(酸触媒)
酸触媒は、フェノール樹脂を硬化させるために使用される。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
発泡性フェノール樹脂組成物中の酸触媒の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、5〜30質量部が好ましく、8〜25質量部がより好ましく、10〜20質量部がさらに好ましい。
(界面活性剤)
界面活性剤は、気泡径(セル径)の微細化に寄与する。
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、気泡径の小さい気泡を形成しやすい点で、ひまし油アルキレンオキシド付加物およびシリコーン系界面活性剤のいずれか一方または両方を含むことが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドが好ましく、エチレンオキシド(以下、「EO」と略記する。)、プロピレンオキシド(以下、「PO」と略記する。)がより好ましい。ひまし油に付加するアルキレンオキシドは1種でもよく2種以上でもよい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物としては、ひまし油EO付加物、ひまし油PO付加物が好ましい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物としては、ひまし油1モルに対し、アルキレンオキシド、中でもEOが、20モル超60モル未満付加したものが好ましく、21〜40モル付加したものがより好ましい。かかるひまし油アルキレンオキシド付加物においては、ひまし油の長鎖炭化水素基を主体とする疎水性基と、所定付加モルのアルキレンオキシド(EO等)によって形成されたポリオキシアルキレン基(ポリオキシエチレン基等)を主体とする親水性基とが、分子内でバランス良く配置されて、良好な界面活性能が発揮される。そのため、フェノール樹脂発泡体の気泡径が小さくなる。また気泡壁に柔軟性が付与されて亀裂の発生が防止される。
シリコーン系界面活性剤としては、例えばジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のオルガノポリシロキサン系化合物が挙げられる。疎水部と親水部それぞれの重合度を変えて表面張力を調整しやすい点で、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体が好ましい。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体は、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体である。ブロック共重合体の構造は、特に限定されず、例えばシロキサン鎖の両方の末端にポリエーテル鎖が結合したABA型、複数のシロキサン鎖と複数のポリエーテル鎖が交互に結合した(AB)型、分岐状のシロキサン鎖の末端それぞれにポリエーテル鎖が結合した枝分かれ型、シロキサン鎖に側基(末端以外の部分に結合する基)としてポリエーテル鎖が結合したペンダント型等が挙げられる。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体としては、例えば、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体が挙げられる。
ポリオキシアルキレンにおけるオキシアルキレン基の炭素数は2または3が好ましい。ポリオキシアルキレンを構成するオキシアルキレン基は、1種でもよく2種以上でもよい。
ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体の具体例としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシプロピレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体としては、末端が−OR(式中、Rは、水素原子またはアルキル基である。)であるポリエーテル鎖を有するものが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、Rが水素原子であるものが特に好ましい。
発泡性フェノール樹脂組成物が界面活性剤を含む場合、発泡性フェノール樹脂組成物中の界面活性剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、1〜10質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましい。界面活性剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、気泡径が均一に小さくなりやすく、上限値以下であれば、フェノール樹脂発泡体の吸水性が低く、また、製造コストも抑えられる。
(他の成分)
他の成分としては、発泡性フェノール樹脂組成物の添加剤として公知のものを用いることができ、例えば尿素、可塑剤、充填剤(例えば、無機フィラー)、難燃剤(例えばリン系難燃剤等)、架橋剤、有機溶媒、アミノ基含有有機化合物、着色剤等が挙げられる。
尿素は、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡成形して発泡体を作製する際、ホルムアルデヒドを捕捉するホルムアルデヒドキャッチャー剤として用いられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸とジエチレングリコールの反応生成物であるポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
ここで、親水性であるフェノール樹脂と相溶性の高い可塑剤、例えばポリエステルポリオールを含む可塑剤を、フェノール樹脂の粘度を下げるために添加することが知られている(例えば特許第4761446号)。
本願発明者による検討の結果、無機フィラーの含有量が少ないほど、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率が低くなる傾向があることを見出した。そのため、断熱性の観点では、発泡性フェノール樹脂組成物中の無機フィラーの含有量は、フェノール樹脂100質量部に対して0.1質量部未満であることが好ましく、0質量部であることが特に好ましい。すなわち、発泡性フェノール樹脂組成物が無機フィラーを含まないことが好ましい。
このような無機フィラーとしては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛等の金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。
発泡性フェノール樹脂組成物は、上記の各成分を混合することにより調製できる。
各成分の混合順序は特に限定されないが、例えばフェノール樹脂に界面活性剤、必要に応じて他の成分を加えて全体を混合し、この混合物に発泡剤、酸触媒を添加し、この組成物をミキサーに供給して攪拌することにより発泡性フェノール樹脂組成物を調製できる。
本発明のフェノール樹脂発泡体中には、複数の気泡が形成されており、気泡壁には実質的に孔が存在せず、複数の気泡の少なくとも一部は、相互に連通していない独立気泡になっている。独立気泡中には、発泡剤として用いた発泡剤ガスが保持されている。
本願発明者による検討の結果、従来のフェノール樹脂発泡体の厚み方向に独立気泡率に分布が存在し、発泡体厚み方向の表層側(第一の表層部及び第二の表層部)の独立気泡率を高くすることで、長期間断熱性能を維持し、吸水量を低下させることができた。
また、発泡体厚み方向の独立気泡率にばらつきを無くすことで、収縮による変形や寸法変化を低減することができた。
フェノール樹脂発泡体は、その厚さ方向に三分割して、一方の面から順に第一の表層部、中央層部、第二の表層部とした場合に、第一の表層部の独立気泡率と、第二の表層部の独立気泡率がそれぞれ85%以上である。
第一の表層部の独立気泡率は85%以上であり、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、100%でもよい。上記下限値以上であれば、中央層部の気泡中の発泡剤が空気と置換されにくくなり、長期に亘って断熱性能を維持できる。一方、第一の表層部の独立気泡率が85%未満であると、発泡体中央層部の気泡中の発泡剤と空気との置換速度が上がり、断熱性能の経時変化量が大きくなる。
第二の表層部の独立気泡率は、第一の表層部の独立気泡率と同様である。第一の表層部の独立気泡率と、第二の表層部の独立気泡率とは、同じでもよいし異なっていてもよい。
独立気泡率はJIS K 7138:2006の測定法1に従い測定することができる。
ここで、フェノール樹脂発泡体の厚みが45mm以上の場合、第一の表層部とは、面材を剥離したフェノール樹脂発泡体の一方の面から厚さ方向に20mmまでの部分であり、第二の表層部とは、面材を剥離したフェノール樹脂発泡体の他方の面から厚さ方向に20mmまでの部分である。中央層部とは、面材を剥離したフェノール樹脂発泡体の厚さ方向の中心から上下10mmの範囲(厚さ20mm)の部分である。
また、フェノール樹脂発泡体の厚みが45mm未満の場合は、フェノール樹脂発泡体を厚さ方向に三等分して、一方の面から順に、第一の表層部、中央層部、第二の表層部とする。
また、第一の表層部と第二の表層部の少なくともいずれかの独立気泡率が中央層部の独立気泡率より高いことが好ましく、第一の表層部と第二の表層部の両方の独立気泡率が中央層部の独立気泡率より高いことがより好ましい。
また、表層側の独立気泡率を85%以上とすることで、フェノール樹脂発泡体の表層から水分が浸透しにくくなり、フェノール樹脂発泡体として無機フィラー等の中和剤を含まなくとも、フェノール樹脂発泡体と接触している釘等の金属部材が腐食される恐れが無い。一方、表層側の独立気泡率が85%未満であると、雨などの水分が表層から浸透しやすくなり、発泡体中に残留する酸硬化剤が抽出され、発泡体と接触している金属部材が腐食される恐れがある。
また、発泡体厚み方向の中央層部の独立気泡率としては85%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましい。
中央層部の独立気泡率が85%未満であると、中央層部の気泡径は表層側に比べて大きくなり、中央層部の収縮量が表層より大きいため、発泡体断面の中央層部の収縮(小口ヤセ)が発生する。
また、第一の表層部、中央層部、第二の表層部それぞれの独立気泡率の差が小さいことが望ましく、第一の表層部、中央層部、第二の表層部の独立気泡率の最大値と最小値の差が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、2.5%以下であることがもっとも好ましい。
独立気泡率の最大値と最小値の差が10%を超えると、独立気泡率が高い部位と低い部位で収縮量の差が大きくなり、発泡体に反りが発生する恐れがある。
また、第一の表層部の独立気泡率と、中央層部の独立気泡率との差が、[第一の表層部の独立気泡率(%)]−[中央層部の独立気泡率(%)]で表して、−5〜5%が好ましく、−2.5〜2.5%であることがより好ましい。
第二の表層部の独立気泡率と、中央層部の独立気泡率との差が、[第一の表層部の独立気泡率(%)]−[中央層部の独立気泡率(%)]で表して、−5〜5%が好ましく、−2.5〜2.5%であることがより好ましい。
中央層部と表層側の独立気泡率との差が上記数値範囲外であると、独立気泡率の差により表層側と中央層部に収縮量に差が生じ、発泡体断面の中央層部の収縮(小口ヤセ)が発生する。
また、中央層部の独立気泡率と表層側の独立気泡率のいずれも85%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましい。中央層部の独立気泡率と表層側の独立気泡率のいずれもが85%未満であると、気泡中の発泡剤と空気との置換速度が上がり、熱伝導率の経時変化量が大きくなるのみならず、高温環境下での収縮応力に耐えうる機械的強度が損なわれてしまい、寸法変化率が著しく悪化してしまう。
第一の表層部、中央層部、第二の表層部それぞれの独立気泡率から算出される平均独立気泡率は、85%以上が好ましく、90%以上が好ましい。
平均独立気泡率が上記数値範囲内であると、長期に亘り低い熱伝導率を維持し、反りや小口ヤセ等の変形の防止や、寸法安定性を向上させることができる。
フェノール樹脂発泡体の吸水量は、3.0g/100cm以下が好ましく、2.5g/100cm以下がより好ましく、2.0g/100cm以下がもっとも好ましい。吸水量を上記範囲内とすることにより、長期に亘り低い熱伝導率を維持し、フェノール樹脂発泡体が水に濡れた場合でも酸性の水が抽出されにくく、フェノール樹脂発泡体と接触している金属の錆びや、濡れによる一時的な強度の低下を抑えることができる。吸水量は使用する界面活性剤や酸硬化剤の種類や量、独立気泡率によって変化するが、水と接触する表層の独立気泡率を向上させることで吸水しにくくすることができる。
なお、吸水量は、JIS A 9511に従い測定することができる。
(抽出pH)
本発明のフェノール樹脂発泡体の抽出pHは、2.5〜6未満であり、3〜5未満であることが好ましい。上記範囲内であると、フォーム形成時の発泡硬化反応が良好となる。上記範囲の下限値未満であると、フェノール樹脂発泡体と接触する資材に錆や腐食が発生する恐れがある。上記範囲の上限値超であると、フォーム形成時の発泡硬化反応に支障が出る恐れがある。また、上記範囲の上限値超に調整するためには炭酸カルシウムなどの中和剤を過剰に添加する必要があり、熱伝導率が悪化する恐れがある。
抽出pHは、次の方法で測定される。フェノール樹脂発泡体を乳鉢で250μm(60メッシュ)以下に粉砕してサンプルとする。サンプル0.5gを200mLの共栓付き三角フラスコに量り取る。共栓付き三角フラスコに純水100mLを加え、密栓する。マグネチックスターラーを用いて、共栓付き三角フラスコ内を23℃±5℃で7日間撹拌して、試料液とする。得られた試料液のpHをpHメータで測定し、その値を抽出pHとする。
本発明のフェノール樹脂発泡体における平均気泡径は、5〜130μmであることが好ましく、30〜120μmがより好ましく、50〜110μmがさらに好ましく、60〜100μmが最も好ましい。平均気泡径が5〜130μmであれば、気泡内での対流や輻射が抑制され、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率が低く、断熱性に優れる。
(平均気泡径)
フェノール樹脂発泡体の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出す。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影する。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引く。この際、ボイド(2mm以上の空隙)を避けるように直線を引く。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400−1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求める。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とする。
フェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、発泡剤の種類および組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等により調整できる。特に2種以上の発泡剤を併用した組成とすることにより平均気泡径を小さくすることができ、発泡剤として炭化水素/塩素化炭化水素と、フッ素化不飽和炭化水素/塩素化フッ素化不飽和炭化水素との質量比が9.9:0.1〜0.1:9.9の範囲内であれば、その範囲外の場合に比べて、平均気泡径が小さい傾向がある。
炭化水素とフッ素化不飽和炭化水素又は塩素化フッ素化不飽和炭化水素との質量比は、炭化水素:フッ素化不飽和炭化水素又は塩素化フッ素化不飽和炭化水素=9:1〜1:9が好ましく、8:2〜2:8がより好ましく、5:5〜3:7がさらに好ましい。フッ素化不飽和炭化水素又は塩素化フッ素化不飽和炭化水素の割合が上記下限値以上であれば、フェノール樹脂発泡体の断熱性をより高められる。フッ素化不飽和炭化水素又は塩素化フッ素化不飽和炭化水素の割合が上記上限値以下であれば、発泡性フェノール樹脂組成物を十分に発泡できる。フッ素化不飽和炭化水素又は塩素化フッ素化不飽和炭化水素は、フェノール樹脂との相溶性が高い。このため、フッ素化不飽和炭化水素又は塩素化フッ素化不飽和炭化水素の割合が上記上限値超では、フェノール樹脂組成物の粘度が低下し、フェノール樹脂の発泡が不十分になりやすい。
本発明のフェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、0.0200W/m・K以下であり、0.0190W/m・K以下がより好ましく、0.0185W/m・K以下がもっとも好ましい。熱伝導率が0.019W/m・K以下であれば、断熱性に優れる。
熱伝導率は、JIS A 1412−2に従い測定することができる。
フェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、平均気泡径、発泡剤の種類および組成、界面活性剤の種類等により調整できる。例えば、上記のとおり、平均気泡径が小さいほど、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率が低い傾向がある。また、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が−OHであるポリエーテル鎖を有するものである場合、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、熱伝導率が低い傾向がある。
本発明のフェノール樹脂発泡体は、制限酸素指数(Limited Oxygen Index;以下「LOI」ともいう。)が28%以上であり、30%以上が好ましい。
LOIは、規定の条件下で、試料が有炎燃焼を維持するのに必要な23℃±2℃の酸素と窒素との混合ガスの最小酸素濃度%(体積分率)であり、燃焼性の指標である。LOIが大きいほど燃焼性が低いことを示し、一般に、LOIが26%以上であれば難燃性を有すると判断されている。
LOIはJIS K 7201−2:2007に従い測定することができる。
フェノール樹脂発泡体のLOIは、発泡剤の種類および組成、界面活性剤の種類、難燃剤の種類および組成とその量等により調整できる。例えば、発泡剤中の可燃性の発泡剤の含有量が少ない(ハロゲン化炭化水素の含有量が多い)ほど、LOIが高い。また、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が−OHであるポリエーテル鎖を有するものであれば、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、LOIが高い傾向がある。さらに、リン系難燃剤等を添加することでLOIを高くすることができる。
本発明のフェノール樹脂発泡体の密度は、10kg/m以上100kg/m以下であることが好ましく、20kg/m以上35kg/m以下がより好ましい。第一の表層部では密度が25〜38kg/mであることが好ましく、第二の表層部も密度が25〜38kg/mであることが好ましい。中央層部では密度が22〜30kg/mであることが好ましい。密度が上記数値範囲内であることにより反りや小口ヤセ等の変形の防止や、寸法安定性を向上させることができる。密度は、JIS A 9511:2009に従い測定することができる。
本発明のフェノール樹脂発泡体の脆性は、20%以下であることが好ましく、10〜18%がより好ましい。
脆性は、JIS A 9511:2003に従い測定することができる。
フェノール樹脂発泡体の表面上に面材を設けてもよい。
面材としては、特に制限されず、織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙やクラフト紙等の紙類、ポリエステル繊維不織布、ポリプロピレン繊維不織布、ナイロン繊維不織布などの合成繊維不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、珪酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種が好適である。
面材は、フェノール樹脂発泡体の片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。両面に設ける場合、各面材は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
フェノール樹脂発泡体を製造する際に面材を設ける方法としては、後述する連続走行するコンベアベルト上に面材を配置し、該面材上に発泡性フェノール樹脂組成物を吐出し、その上に他の面材を積層した後、加熱炉を通過させて発泡成形する方法が挙げられる。これにより、シート状のフェノール樹脂発泡体の両面に面材が積層した面材付きフェノール樹脂発泡体が得られる。
面材は、発泡成形の後、接着剤を用いてフェノール樹脂発泡体に貼り合わせて設けてもよい。
面材の厚さは、特に限定されないが、例えば、ポリエステル繊維不織布等の合成繊維不織布の場合には、0.1mm以上0.25mm以下が好ましい。ガラス繊維混抄紙等の紙類の場合には、0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。ガラス繊維不織布の場合には、0.1mm以上1.0mm以下が好ましい。
面材の目付は、特に限定されないが、合成繊維不織布を用いる場合には、目付は15g/m以上200g/m以下であることが好ましく、15g/m以上150g/m以下であることがより好ましく、15g/m以上100g/m以下であることがさらに好ましく、15g/m以上80g/m以下であることが特に好ましく、15g/m以上60g/m以下であることが最も好ましい。
ガラス繊維混抄紙を用いる場合には、目付は30g/m以上300g/m以下であることが好ましく、50g/m以上250g/m以下であることがより好ましく、60g/m以上200g/m以下であることがさらに好ましく、70g/m以上150g/m以下であることが特に好ましい。
ガラス繊維不織布を用いる場合には、目付は15g/m以上300g/m以下であることが好ましく、20g/m以上200g/m以下であることがより好ましく、30g/m以上150g/m以下であることがさらに好ましい。
目付が上記下限値以上であれば、発泡性フェノール樹脂組成物が面材の表面にしみ出しにくい。目付が上記上限値以下であれば、発泡体と面材との接着性を高められる。これにより、面材が発泡体から剥がれにくくなり表面をより美麗にできる。加えて、後述する製造方法において、コンベア等の搬送機器に追従させやすくなり、フェノール樹脂発泡体の生産性を高めやすい。
なお、金属板、金属箔などの通気性の低い面材を使用することで、発泡体の表層において発泡剤ガスと空気が置換して熱伝導率が悪化するのを抑えることができるが、本発明では表層の独立気泡率を向上させたことで、合成繊維不織布や紙類等の通気性の高い面材であっても熱伝導率が悪化するのを抑えることができる。また、面材として酸化チタンが配合されたものを用いることで、面材の熱伝導度を向上させて表面の温度ムラを無くすことができ、表層の独立気泡を向上させることができる。
<フェノール樹脂発泡体の製造方法>
本発明のフェノール樹脂発泡体は、上記発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させることにより製造できる。
本発明のフェノール樹脂発泡体の製造は、公知の発泡成形法を利用して行うことができる。以下に一例を挙げる。
この例では、吐出装置と、吐出装置の下流側に配置された発泡成形装置と、発泡成形装置の下流側に配置された切断装置とを備える製造システムを用いる。
吐出装置は、フェノール樹脂等の原料を混合する混合部と、混合された原料(発泡性フェノール樹脂組成物)を吐出するための、流れ方向と直交する方向に沿って配置された複数のノズルとを備える。
発泡成形装置は、フレーム部および加熱手段を備える。フレーム部は、フェノール樹脂発泡体の断面形状に対応した空間が形成されるように上下左右に配置されたコンベア(下部コンベア、上部コンベア、左側コンベア、右側コンベア)を備える。下部コンベアおよび上部コンベアによって、上下方向の発泡が規制され、左側コンベアおよび右側コンベアによって、左右方向の発泡が規制されるようになっている。加熱手段によって、フレーム部を通過する発泡性フェノール樹脂組成物を加熱し、発泡、硬化できるようになっている。かかる発泡成形装置としては、例えば、特開2000−218635号公報に記載のものが挙げられる。
この製造システムにおいて、まず、吐出装置と発泡成形装置との間に第一の面材を連続的に供給する。吐出装置にてフェノール樹脂等を混合して発泡性フェノール樹脂組成物を調製し、複数のノズルから第一の面材上に吐出する。その上に第二の面材を積層して発泡成形装置のフレーム部に導入し、30〜95℃で加熱する。これにより、第一の面材と第二の面材との間で発泡性フェノール樹脂組成物が発泡、硬化して、フェノール樹脂発泡シートが形成される。このフェノール樹脂発泡シートを発泡成形装置から導出し、切断装置で任意の長さに切断する。これにより、一方の面に第一の面材が、他方の面に第二の面材が積層したフェノール樹脂発泡体が得られる。
かかる製造方法において、第一の面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物は、発泡成形装置に導入される前にある程度発泡するが、このとき、なるべくフェノール樹脂発泡体の幅方向(発泡性フェノール樹脂組成物の吐出方向と直交する方向:TD方向)に広がるようにすることが好ましい。発泡性フェノール樹脂組成物をTD方向に広げておくことで、発泡成形装置内で樹脂組成物がTD方向へ移動する量が減り、加熱により硬化しつつある気泡が樹脂組成物の移動により崩れ、独立気泡率が低下するのを抑えることができる。特に、樹脂組成物の表層側が上下のコンベアによって押し広げられるため、樹脂組成物をTD方向に広げておくことで、第一の表層部と第二の表層部の独立気泡率を向上させることができることが分かった。
発泡性フェノール樹脂組成物をTD方向に広げておく方法としては、複数の分岐部を有する分配管(例えばWO2014/133023)をTD方向に配置し、コンベア上に吐出する方法が知られているが、多数の分岐部がある分配管では均一に吐出できず、吐出口ごとに吐出量に差があり、特殊な分配管を用いる必要があった。また、粘度の高い樹脂組成物は分岐部で詰まりやすく、粘度の高い樹脂組成物を使用できない。他の方法としてスリットダイをTD方向に長い吐出部を有する方法も知られているが(WO2009/066621)、ダイ内を均一な速度で樹脂が流れず、流れの遅い箇所と早い箇所で吐出後の樹脂の性状(粘度等)が変化しており、複数の吐出口から均一な量で吐出することが困難となる。このように吐出量が均一でないと、発泡成形装置内でTD方向への樹脂組成物の移動が生じ、表層側の独立気泡率が低下する。
また、樹脂組成物中に含まれる水などの揮発成分が発泡硬化した後に蒸発することで気泡壁に穴が形成され、独立気泡率が低下することが知られており(例えば特許第3813062号)、樹脂組成物中の水分量を低下させることが望ましいが、水などの揮発成分を減少すると粘度が上昇するため、上記の多数の分岐部を有する分配管や、スリットダイを用いた吐出方法では、高粘度の樹脂組成物を安定して吐出することは困難であった。
本発明においては、吐出後の樹脂を押し広げるドクターブレードを用いることで、樹脂組成物をTD方向に広げておくことで表層の独立気泡率を向上させることが可能になった。また、分岐部の少なく吐出口の大きな分配管を用いてもTD方向に拡幅できるため、粘度が高い樹脂組成物を用いて、発泡体全体の独立気泡率を向上させることが可能になった。
具体的には、例えばTD方向の長さが1000mmである場合、TD方向に8本以下の吐出口を有し、各吐出口の後に断面がV字状のドクターブレードを複数配置する。即ち、ドクターブレードが吐出口と同じ数配置されている。このドクターブレードによって、各ドクターブレードの先端(V字の中央部分)が各吐出口から吐出された樹脂組成物に挿入され、樹脂組成物がドクターブレードの端部(V字の左右端)に押し広げられる。
V字状のドクターブレードによって吐出された樹脂組成物の中心付近の温度が低下するため、中央層側の独立気泡率を向上させることができる。なお、ドクターブレードの形状としてはV字に限るものではなく、U字状であっても良い。
ドクターブレードの材質としては、鉄やステンレス等の金属製の板をV字状に加工したものを用いることができるが、酸性のフェノール樹脂組成物により錆びないよう材料や、表面に耐酸性のコーティングを施しておくことが好ましい。
複数のドクターブレードの間は離間して配置されていることが好ましく、これにより樹脂組成物が滞留しにくくなる。従来から知られているドクターブレード間がTD方向に連続した板状である場合(例えば特開平8−216175号公報)、粘度の高い樹脂組成物ではドクターブレードによって滞留する樹脂組成物の量が増え、樹脂組成物が吐出口から発泡成形装置内へ導入されるまでの時間が不均一となって発泡不良となりやすい。
上記の様なドクターブレードを用いることによって、水分量を減らした高粘度の樹脂組成物を口径が大きく分岐部の少ない吐出部から吐出する場合であっても、樹脂組成物をTD方向に広げることができ、表層の独立気泡率を高めることができる。また、粘度を下げるために温度を上げる必要がないため、温度の上がりやすい樹脂組成物内部の温度上昇を抑えることで中央層の独立気泡率を高めることができる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した発泡剤は以下のとおりである。
・発泡剤(1):イソプロピルクロリド:イソペンタン=85:15の混合物(質量比)
・発泡剤(2):イソプロピルクロリド:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)=70:30(質量比)の混合物
・発泡剤(3):イソペンタン:イソブタン=50:50(質量比)の混合物
・発泡剤(4):イソペンタン
・発泡剤(5):ノルマルペンタン
・発泡剤(6):シクロペンタン:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)=20:80(質量比)の混合物
・発泡剤(7):シクロペンタン:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)=50:50(質量比)の混合物
・発泡剤(8):シクロペンタン:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)=80:20(質量比)の混合物
・発泡剤(9):イソペンタン:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)=20:80(質量比)の混合物
・発泡剤(10):イソペンタン:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)=50:50(質量比)の混合物
・発泡剤(11):イソペンタン:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)=80:20(質量比)の混合物
(フェノール樹脂発泡体の製造)
<実施例1>
液状レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:PF−339)100質量部に、界面活性剤としてひまし油EO付加物(付加モル数30)4質量部、ホルムアルデヒドキャッチャー剤として尿素4質量部を加えて混合し、20℃で8時間放置した。
このようにして得られた混合物108質量部に対し、発泡剤として、発泡剤(1)10.5質量部を加え、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物16質量部を加え、攪拌、混合して発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。
この発泡性フェノール樹脂組成物をTD方向に6本配置されたノズルから、連続的に走行させている第一の面材(材質:ガラス繊維混抄紙、目付:70g/m)上に吐出させた。このとき、ノズルの吐出口の直後にV字状のドクターブレード(幅120mm、V字の角度120°)を6つ設置し、TD方向にフェノール樹脂組成物を拡幅させた。このとき、各ドクターブレードの間を56mm離間して設置した。
その上に第二の面材(材質:ガラス繊維混抄紙)を重ね、これを70℃で300秒間加熱して発泡成形した。得られたフェノール樹脂発泡体を幅910mm、長さ1820mmに切断し、厚さ45mmのフェノール樹脂発泡板を作製した。
<実施例2>
幅910mm×長さ1820mm×厚み90mmに成型し、フェノール樹脂発泡板を幅30mm×長さ30mm×厚み90mmに切り出したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例3>
発泡剤を発泡剤(1)から発泡剤(2)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例4>
発泡剤を発泡剤(1)から発泡剤(3)に変更し、上下の面材として特開2010−216044号公報の実施例4に記載された酸化チタンを含むポリエステル製不織布(目付35g/m)としたこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例5>
発泡剤を発泡剤(1)から発泡剤(4)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例6>
発泡剤を発泡剤(1)から発泡剤(5)に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例7>
ノズルの本数を8本とし、ドクターブレード(幅90mm、V字の角度120°)の数を8つとし、ドクターブレードの間を40mm離間したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例8>
発泡剤を発泡剤(1)から発泡剤(6)に変更し、幅910mm×長さ1820mm×厚み60mmに成型し、フェノール樹脂発泡板を幅30mm×長さ30mm×厚み60mmに切り出したこと以外は、実施例4と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例9>
発泡剤を発泡剤(1)から発泡剤(7)に変更し、幅910mm×長さ1820mm×厚み60mmに成型し、フェノール樹脂発泡板を幅30mm×長さ30mm×厚み60mmに切り出したこと以外は、実施例4と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例10>
発泡剤を発泡剤(1)から発泡剤(8)に変更し、幅910mm×長さ1820mm×厚み60mmに成型し、フェノール樹脂発泡板を幅30mm×長さ30mm×厚み60mmに切り出したこと以外は、実施例4と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例11>
発泡剤を発泡剤(1)から発泡剤(9)に変更し、上下の面材としてポリエステル製不織布(目付20g/m)とし、幅910mm×長さ1820mm×厚み100mmに成型し、フェノール樹脂発泡板を幅30mm×長さ30mm×厚み100mmに切り出したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例12>
発泡剤を発泡剤(1)から発泡剤(10)に変更し、上下の面材としてポリエステル製不織布(目付20g/m)とし、幅910mm×長さ1820mm×厚み100mmに成型し、フェノール樹脂発泡板を幅30mm×長さ30mm×厚み100mmに切り出したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<実施例13>
発泡剤を発泡剤(1)から発泡剤(11)に変更し、上下の面材としてポリエステル製不織布(目付20g/m)とし、幅910mm×長さ1820mm×厚み100mmに成型し、フェノール樹脂発泡板を幅30mm×長さ30mm×厚み100mmに切り出したこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<比較例1>
WO2014/133023の実施例1に記載されているTD方向に16本配置されたノズルを用い、ドクターブレードを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
<比較例2>
WO2009/066621の実施例1に記載されているスリットダイを用い、ドクターブレードを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体の試験片を得た。
各例で得られたフェノール樹脂発泡板又は試験片について、熱伝導率、独立気泡率、密度、吸水量について測定し、平均独立気泡率を算出した。さらに熱伝導率の長期性能及び変形の有無について評価した。なお、得られたフェノール樹脂発泡体の抽出pHを測定したところ、いずれもpH6未満で酸性であった。
(独立気泡率の測定)
実施例1、3〜6、比較例1、2:フェノール樹脂発泡板の中央部分から、幅30mm×長さ30mm×厚み45mmにカッターナイフで切り出し試験片を3つ用意した。まず、1つ目の試験片について、面材を剥離した一方の面(上面側)から厚み方向に20mmのところまでをカッターナイフで切り出し、これを第一の表層部の試験片とした。
次に、2つ目の試験片について、面材を剥離した他方の面(下面側)から厚み方向に20mmのところまでをカッターナイフで切り出し、これを第二の表層部の試験片とした。
さらに、3つ目の試験片について、幅30mm×長さ30mm×厚み45mmに切り出した試験片の、一方の面から12.5〜32.5mmの部分までをカッターナイフで切り取り、中央層部の試験片とした。
実施例2:フェノール樹脂発泡板の中央部分から、幅30mm×長さ30mm×厚み90mmにカッターナイフで切り出した試験片を3つ用意した。
まず、1つ目の試験片について、面材を剥離した一方の面(上面側)から厚み方向に20mmのところまでをカッターナイフで切り出して第一の表層部の試験片とした。
次に、2つ目の試験片について、面材を剥離した他方の面(下面側)から厚み方向に20mmのところまでをカッターナイフで切り出して第二の表層部の試験片とした。
さらに、3つ目の試験片について、幅30mm×長さ30mm×厚み90mmに切り出した試験片の、一方の面から35〜55mmの部分までをカッターナイフで切り取り、中央層部の試験片とした。
実施例8〜10:フェノール樹脂発泡板の中央部分から、幅30mm×長さ30mm×厚み60mmにカッターナイフで切り出した試験片を3つ用意した。
まず、1つ目の試験片について、面材を剥離した一方の面(上面側)から厚み方向に20mmのところまでをカッターナイフで切り出して第一の表層部の試験片とした。
次に、2つ目の試験片について、面材を剥離した他方の面(下面側)から厚み方向に20mmのところまでをカッターナイフで切り出して第二の表層部の試験片とした。
さらに、3つ目の試験片について、幅30mm×長さ30mm×厚み60mmに切り出した試験片の、一方の面から20〜40mmの部分までをカッターナイフで切り取り、中央層部の試験片とした。
実施例11〜13:フェノール樹脂発泡板の中央部分から、幅30mm×長さ30mm×厚み100mmにカッターナイフで切り出した試験片を3つ用意した。
まず、1つ目の試験片について、面材を剥離した一方の面(上面側)から厚み方向に20mmのところまでをカッターナイフで切り出して第一の表層部の試験片とした。
次に、2つ目の試験片について、面材を剥離した他方の面(下面側)から厚み方向に20mmのところまでをカッターナイフで切り出して第二の表層部の試験片とした。
さらに、3つ目の試験片について、幅30mm×長さ30mm×厚み100mmに切り出した試験片の、一方の面から40〜60mmの部分までをカッターナイフで切り取り、中央層部の試験片とした。
カッターナイフによる試験片の切り出しにより試験片表面の気泡は破壊されてしまい、正確に独立気泡率を測定することができないため、気泡が破壊された試験片表面を取り除くために、得られた直方体の各試験片の表面(6面)をカミソリを用いて薄く切削した。このとき、カミソリでの切削は可能な限り薄く切削することが好ましく、幅25mm±1mm、長さ25mm±1mm、厚さ19mm±1mmとなるようにした。表面をカミソリで切削した各試験片の独立気泡率を、JIS K 7138:2006の測定法1に準拠し、以下の様にして測定・算出した。結果を表1に示す。
独立気泡率=(乾式密度計での体積測定結果)/(湿式密度計での体積測定結果)×100
<乾式密度計>
品名:東京サイエンス株式会社製 空気比較式比重計1000型
型番:1000
<湿式密度計>
品名:島津製作所製 LIBROR EB−330H
型番:63572
(平均独立気泡率の算出)
上記(独立気泡率の測定)で得られた第一の表層部、中央層部、第二の表層部の独立気泡率から平均独立気泡率を算出した。結果を表1に示す。
(密度)
上記(独立気泡率の測定)と同様にして得られた第一の表層部、中央層部、第二の表層部の各試験片を用いて、各試験片の密度を、JIS A 9511:2009に従い測定した。結果を表1に示す。
(吸水量の測定)
フェノール樹脂発泡板を用いて、吸水量を、JIS A 9511に従い測定した。結果を表1に示す。
(初期熱伝導率)
縦横300mm角のフェノール樹脂発泡体サンプルを用い、低温板10℃、高温板30℃に設定し、JIS A 1412−2:1999の「熱流計法」に従い、熱伝導率測定装置HC−074 304(英弘精機株式会社製)を使用して測定した。なお、フェノール樹脂発泡体サンプルを70℃雰囲気に4日間放置した後の熱伝導率を、初期熱伝導率とした。
(25年後の熱伝導率の推定値)
ISO 11561 Annex Bに準拠し、建築物において発生し得る最高温度を70℃とし、縦横300mm角のフェノール樹脂発泡体サンプルを70℃雰囲気に25週間放置した後の熱伝導率を、25年後の推定値として測定した。
(変形の抑制性)
フェノール樹脂発泡板を、成形後に23℃・湿度50%下に保管して1週間経過したときの、フェノール樹脂発泡板の変形の程度を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○(優良):フェノール樹脂発泡板の側面に凹みが観察されず、かつ、フェノール樹脂発泡板に反りが観察されなかった。
△(良):フェノール樹脂発泡板の側面にわずかな凹みが観察された、または、フェノール樹脂発泡板にわずかな反りが観察された。
×(不良):フェノール樹脂発泡板の側面に顕著な凹みが観察された。または、フェノール樹脂発泡板に顕著な反りが観察された。
結果を表1に示す。
Figure 2017160431
上記結果に示すとおり、本発明を適用した実施例1〜13では、前記第一の表層部と前記第二の表層部の独立気泡率がそれぞれ85%以上であることにより、吸水量が3.0g/100cm以下に抑えられ、熱伝導率の長期安定性が得られた。また、実施例7では、中央部の独立気泡率が低かったために側面に若干の小口ヤセが見られたが、実施例1〜6においては、厚み方向の独立気泡率が均一であったため、変形も観察されなかった。
一方、比較例1は、複数のノズルのうち、TD方向の端部にあるノズルからの吐出量が著しく少なく、吐出された樹脂組成物が発泡成形装置内で端部方向に移動したため、第一の表層部及び第二の表層部の独立気泡率がいずれも85%未満となり、熱伝導率の長期安定性が得られなかった。
比較例2は、第二の表層部の独立気泡率が85%未満となり、熱伝導率の長期安定性が得られず、変形(反り)が確認された。

Claims (3)

  1. 平板状であり、その厚さ方向に三分割して、一方の面から順に第一の表層部、中央層部、第二の表層部とした場合に、
    前記第一の表層部の独立気泡率と、前記第二の表層部の独立気泡率は、それぞれ85%以上である、フェノール樹脂発泡体。
  2. 前記第一の表層部の独立気泡率、前記中央層部の独立気泡率、前記第二の表層部の独立気泡率のうち、最大値と最小値の差が10%以下である、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体。
  3. 前記中央層部の独立気泡率が85%以上であり、
    [第一の表層部の独立気泡率(%)]−[中央層部の独立気泡率(%)]で表される値が−5〜5%であり、
    [第二の表層部の独立気泡率(%)]−[中央層部の独立気泡率(%)]で表される値が−5〜5%である、請求項1又は2に記載のフェノール樹脂発泡体。
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