JP7016686B2 - フェノール樹脂発泡体およびその製造方法 - Google Patents

フェノール樹脂発泡体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フェノール樹脂発泡体およびその製造方法に関する。
フェノール樹脂発泡体は、難燃性、耐熱性、耐薬品性、耐腐食性等に優れることから、断熱材として種々の分野で採用されている。例えば、建築分野では、合成樹脂建材、特に壁板内装材として、フェノール樹脂発泡体製壁板が採用されている。
フェノール樹脂発泡体は、例えば、フェノール樹脂と、発泡剤としてのフッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種と、酸触媒とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させることによって製造される(例えば、特許文献1参照)。
フェノール樹脂発泡体からなる断熱材を施工する場合、特に屋根や床に施工する場合、施工者が断熱材上を歩行しなければならないことがある。断熱材の圧縮強度や曲げ強度が低いと、施工者が断熱材上を歩行した場合、断熱材を踏み抜いて(貫通して)、落下することがある。
国際公開第2015/111670号
発泡剤として、フェノール樹脂との相溶性が高いフッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素等のハロゲン化炭化水素やシクロペンタンを用いる場合、発泡性フェノール樹脂組成物の粘度が低下する。そのため、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させて得られたフェノール樹脂発泡体では、気泡径が粗大化したり、径が大きい気泡が多く存在したりすることがある。そのため、得られたフェノール樹脂発泡体は、圧縮強度や曲げ強度が低くなることがあり、踏み抜けに対する耐性も低くなることがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、踏み抜けに対する耐性に優れるフェノール樹脂発泡体およびその製造方法を提供することを目的とする。
[1]発泡樹脂層と、その両面にそれぞれ積層された面材と、を備えたフェノール樹脂発泡体であって、密度が15kg/m以上50kg/m以下であり、平均気泡径が50μm以上200μm以下であり、独立気泡率が85%以上であり、踏み抜け評価において、荷重100kgfで降伏点が存在せず、200kgfで前記面材が破壊されないことを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
[2]前記発泡樹脂層は、中央層と、その両面側の2つの表層とを有し、前記2つの表層の圧縮強度が10N/cm以上であり、前記2つの表層の圧縮強度の平均値が、前記中央層の圧縮強度以上であることを特徴とする[1]に記載のフェノール樹脂発泡体。
[3][1]または[2]に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、第1面材上に、フェノール樹脂と、発泡剤と、酸触媒とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する吐出工程と、前記第1面材上に吐出された前記発泡性フェノール樹脂組成物に、第2面材を貼り合わせて、前記第1面材と前記第2面材の間にて、前記発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させる発泡工程と、を含み、前記発泡工程において、前記第1面材と前記第2面材の間隔を、前記第1面材と前記第2面材の走行方向に沿って次第に短くすることを特徴とするフェノール樹脂発泡体の製造方法。
本発明によれば、踏み抜けに対する耐性に優れるフェノール樹脂発泡体およびその製造方法を提供することができる。
本発明のフェノール樹脂発泡体およびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[フェノール樹脂発泡体]
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、発泡樹脂層と、その両面に接着層を設けることなく積層された面材と、を備える。面材は、発泡樹脂層自体の接着性により接合している。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体において、発泡樹脂層は、ハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種を含有する。
言い換えれば、本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂と、発泡剤としてのハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種と、酸触媒とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させて、発泡樹脂層を形成することを含む方法により得られる。
フェノール樹脂発泡体は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
フェノール樹脂発泡体は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒および界面活性剤以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、密度が15kg/m以上50kg/m以下であり、20kg/m以上40kg/m以下であることが好ましく、25kg/m以上35kg/m以下であることがより好ましい。
フェノール樹脂発泡体の密度が15kg/m以上であれば、フェノール樹脂発泡体の圧縮強度のさらなる向上を図りやすい。一方、フェノール樹脂発泡体の密度が50kg/m以下であれば、フェノール樹脂発泡体の断熱性のさらなる向上を図りやすい。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の密度は、日本工業規格 JIS A9511:2009に規定される密度の測定方法に準拠して測定された値である。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、平均気泡径が50μm以上200μm以下であり、50μm以上150μm以下であることが好ましく、50μm以上120μm以下であることがより好ましく、50μm以上100μm以下がさらに好ましい。
フェノール樹脂発泡体の平均気泡径が50μm以上であれば、フェノール樹脂発泡体の断熱性をより高められる。フェノール樹脂発泡体の平均気泡径が50μm未満であると、フェノール樹脂発泡体の圧縮強度が低下する。一方、フェノール樹脂発泡体の平均気泡径が200μmを超えると、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率が悪化する。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、発泡剤の種類および組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等により調整できる。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体中には、複数の気泡が形成されており、気泡壁には実質的に孔が存在せず、複数の気泡の少なくとも一部は、相互に連通していない独立気泡になっている。独立気泡中には、発泡剤として用いたハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種のガスが保持されている。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、独立気泡率が85%以上であり、90%以上であることがより好ましい。
独立気泡率の上限値は、特に限定されないが、実質的には99%以下とされる。独立気泡率が前記数値範囲内であれば、フェノール樹脂発泡体は、低い熱伝導率を長期に亘って保つことができる。独立気泡率は、発泡剤の種類または組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、日本工業規格 JIS K7138:2006に規定される独立気泡率の測定方法に準拠して測定された値である。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、踏み抜け評価において、荷重100kgfで降伏点が存在せず、200kgfで面材が破壊されない。
ひずみが増加していく過程で応力が下降する現象を降伏といい、降伏が発生する点を降伏点という。応力-ひずみ曲線においては、傾きが不連続になる点を降伏点とすることができる。降伏点を超える荷重がかかっても、荷重を除けば樹脂発泡体に大きな損傷は見られない場合もあるが、荷重のかかった部分の樹脂発泡体内部は気泡壁が破壊されており、独立気泡率が低下し断熱性能が低下する。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は降伏点が荷重100kgfまで存在しないため、荷重がかかっても断熱性能が低下しにくい。
発泡樹脂層は、中央層と、その両面側の2つの表層(上層、下層)とを有する。中央層と、その両面側の2つの表層とは、発泡樹脂層の厚み方向に均等の厚みを有する。
また、中央層の圧縮強度が10N/cm以上であり、12N/cm以上であることが好ましく、13N/cm以上であることがより好ましく、14N/cm以上であることがさらに好ましく、15N/cm以上であることが最も好ましい。2つの表層の圧縮強度が10N/cm以上であり、12N/cm以上であることが好ましく、13N/cm以上であることがより好ましく、14N/cm以上であることがさらに好ましく、15N/cm以上であることが最も好ましい。
さらに、2つの表層の圧縮強度の平均値が、中央層の圧縮強度以上であり、2つの表層(上下層)と中央層との圧縮強度差が0N/cm以上であり、0.1N/cm以上5N/cm以下であることが好ましく、0.2N/cm以上3N/cm以下であることがより好ましい。
荷重による発泡樹脂層の破壊は表層から始まり、いったん破壊が始まると連鎖的に発泡樹脂層の破壊が起こるが、表層の圧縮強度が中央層の圧縮強度以上であれば、発泡樹脂層が破壊されにくく、荷重をかけても踏み抜くおそれが低い。また、2つの表層と中央層との差が大きすぎる場合、中央層の圧縮強度が著しく低いことを意味し、表層の発泡樹脂層の破壊よりも先に中央層の発泡樹脂層の破壊が起こるが、2つの表層と中央層との差が上記上限値以下であれば中央層の発泡樹脂層の破壊が起こらず、荷重をかけても踏み抜くおそれが低い。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、厚みが100mm未満であることが好ましく、90mm以下であることがより好ましく、80mm以下であることがさらに好ましく、45mm以下であることが最も好ましい。床や屋根を構成する大引や垂木の太さは100mm以下であることが多く、大引上に設けられる根太は45mmであることが多く、この太さを超えない程度のフェノール樹脂発泡体を大引間に設置することで収まりが良い。
また、厚みが10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることが最も好ましい。厚みが小さいと、荷重がかかった時の踏み抜けが発生し易いものの生産効率が高い。
本実施の形態のフェノール樹脂発泡体は、木造または鉄骨造の住宅等の建築物の床、梁、屋根に設けられる断熱材として有用である。
フェノール樹脂発泡体を床、梁、屋根に設ける場合、例えば、床であれば、床合板が上面に載置された複数の土台や大引、根太の間の空間に設けられ、屋根であれば、屋根野地板が上面に載置された複数の垂木の間の空間に設けられる。
この時、床合板や屋根野地板等を設置する作業者は大引や垂木を足場として作業や移動を行うが、場合によってはフェノール樹脂発泡体上を歩行せざるを得ない可能性があるが、本実施形態のフェノール樹脂発泡体であればその上を作業者が歩行してもフェノール樹脂発泡体が破壊され難く、安全に作業を行うことができる。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、0.0190W/m・K以下であることが好ましく、0.0180W/m・K以下であることがより好ましく、0.0175W/m・K以下であることがさらに好ましい。
熱伝導率が0.019W/m・K以下であれば、フェノール樹脂発泡体は断熱性に優れる。
フェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、平均気泡径、発泡剤の種類および組成、界面活性剤の種類等により調整できる。例えば、平均気泡径が小さいほど、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率が低い傾向がある。また、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が-OHであるポリエーテル鎖を有するものである場合、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、熱伝導率が低い傾向がある。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、限界酸素指数(Limited Oxygen Index;以下「LOI」とも言う。)が28%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、32%以上であることがさらに好ましい。
LOIは、規定の条件下で、試料が有炎燃焼を維持するのに必要な23℃±2℃の酸素と窒素との混合ガスの最小酸素濃度%(体積分率)であり、燃焼性の指標である。LOIが大きいほど燃焼性が低いことを示し、一般に、LOIが26%以上であれば難燃性を有すると判断されている。
フェノール樹脂発泡体のLOIは、発泡剤の種類および組成、界面活性剤の種類、難燃剤の種類および組成とその量等により調整できる。例えば、発泡剤中の可燃性の発泡剤の含有量が少ない(フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種の含有量が多い)ほど、LOIが高い。また、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が-OHであるポリエーテル鎖を有するものであれば、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、LOIが高い傾向がある。さらに、リン系難燃剤等を添加することでLOIを高くすることができる。
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、レゾール型のものが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノールおよびこれらの変性物等が挙げられる。
アルデヒドとしては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。
アルカリ触媒としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。
レゾール型フェノール樹脂を合成する場合、フェノール化合物とアルデヒドとの配合割合は、特に限定されない。フェノール化合物とアルデヒドとの配合割合は、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1~1:3であることが好ましく、1:1.3~1:2.5であることがより好ましい。
また、フェノール樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)は、通常400以上3000以下であり、好ましくは700以上2000以下である。
フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)が400未満では、フェノール樹脂発泡体の独立気泡率が低下し、それによりフェノール樹脂発泡体の圧縮強度の低下、およびフェノール樹脂発泡体の熱伝導率の長期性能の低下を招く傾向がある。また、ボイドが多く、平均気泡径が大きなフェノール樹脂発泡体が形成され易い。一方、フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)が3000を超えると、フェノール樹脂原料および発泡性フェノール樹脂組成物の粘度が高くなりすぎることから、フェノール樹脂発泡体において、必要な発泡倍率を得るために多くの発泡剤が必要となり、発泡剤としてフッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素を用いた場合、これは高価であるため経済的でない。
(発泡剤)
発泡剤としては、炭化水素、ハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素(HFO)および塩素化フッ素化不飽和炭化水素(HCFO)の少なくとも1種を含む。
フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内にフッ素と炭素-炭素2重結合を含むものが挙げられ、例えば、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)(EおよびZ異性体)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)(EおよびZ異性体)(例えば、SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300-3-Z6)等の特表2009-513812号公報等に開示されるものが挙げられる。
塩素化フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内に塩素とフッ素と2重結合を含むものが挙げられ、例えば、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエテン(EおよびZ異性体)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)(EおよびZ異性体)(例えば、HoneyWell社製、商品名:SOLSTICE LBA)、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)(EおよびZ異性体)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zb)(EおよびZ異性体)、2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xe)(EおよびZ異性体)、2-クロロ-2,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xc)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)(例えば、SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300-7-09)、3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233ye)(EおよびZ異性体)、3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yc)、3,3-ジクロロ-3-フルオロプロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1223xd)(EおよびZ異性体)、2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(EおよびZ異性体)、および2-クロロ-1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン(EおよびZ異体)等が挙げられる。
フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素は、オゾン破壊係数(ODP)および地球温暖化係数(GWP)が小さく、環境に与える影響が小さい点で有利である。
ハロゲン化飽和炭化水素である塩素化飽和炭化水素としては、炭素原子数が2以上5以下であるものが好ましく、例えば、ジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド等が挙げられる。これらの中でも、オゾン層破壊係数が低く、環境適合性に優れる点で、イソプロピルクロライドが好ましい。
ハロゲン化飽和炭化水素であるフッ素化飽和炭化水素としては、例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオブタン(HFC365mfc)および1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
塩素化飽和炭化水素は、フェノール樹脂発泡体の発泡剤として従来用いられているが、1種単独では、フェノール樹脂発泡体の平均気泡径が大きく、熱伝導率が高くなる。フッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素を併用することで、平均気泡径が小さく、熱伝導率が低くなり、フェノール樹脂発泡体の断熱性が向上する。また、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素は不燃性であるため、フェノール樹脂発泡体の難燃性が向上する。
塩素化飽和炭化水素と、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種との組み合わせにおいて、塩素化飽和炭化水素と、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種との質量比は、塩素化飽和炭化水素:フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種=9.9:0.1~0.1:9.9であることが好ましい。フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種を前記の質量比を満たす範囲内で含むことで、平均気泡径がより小さく、熱伝導率がより低くなり、フェノール樹脂発泡体の断熱性がより優れたものとなる。
本実施形態において、通常は、塩素化飽和炭化水素は、フッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素よりも分子量が小さい。量が同じであれば、分子量が小さい方が、発泡したときの体積が大きい。そのため、塩素化飽和炭化水素の分子量が、フッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素の分子量よりも小さい場合、塩素化飽和炭化水素の割合が多い方が、少量の発泡剤で充分に発泡させやすい。また、塩素化飽和炭化水素は、フッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素よりも安価な傾向がある。これらの観点から、塩素化飽和炭化水素と、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種との質量比は、塩素化飽和炭化水素:フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種=9.9:0.1~5:5であることが好ましく、9:1~7:3であることがより好ましい。上記範囲内でフッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種の比率が低いほど、優れた断熱性を保ちつつコストを低くできる。
一方で、フッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素は、塩素化飽和炭化水素よりも熱伝導率が低い傾向がある。そのため、より優れた断熱性を得る観点から、塩素化飽和炭化水素と、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種との質量比は、塩素化飽和炭化水素:フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種=5:5~0.1:9.9であることが好ましい。上記範囲内でフッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種の比率が高いほど、熱伝導率が低くなり、断熱性が高まる。
塩素化飽和炭化水素と、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種との組み合わせにおいて、フッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素の沸点は、塩素化飽和炭化水素の沸点よりも低いことが好ましい。フッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素の沸点が塩素化飽和炭化水素の沸点よりも低い方が、フェノール樹脂発泡体中の気泡の気泡径が小さく、かつ単位体積あたりの気泡の数が多くなり、断熱性がより優れる傾向がある。
また、それらの沸点の差は2℃以上30℃以下であることが好ましく、5℃以上20℃以下がより好ましい。沸点の差が上記上限値より大きいと、先にガス化して気泡核を形成したフッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素が、より沸点の高い塩素化飽和炭化水素がガス化するまでに気泡から抜けてしまい、発泡が不十分となることがある。沸点の差が上記下限値より小さいと、十分に気泡核を形成しないまま塩素化飽和炭化水素が発泡してしまい、気泡径が粗大になることがある。
そのため、例えば、塩素化飽和炭化水素として沸点36℃であるイソプロピルクロライドを選択した場合には、ハロゲン化不飽和炭化水素としては、沸点が6℃以上34℃以下の沸点を有するものを選択するのが好ましく、常温付近での取り扱いのしやすい点で、14℃以上34℃以下の沸点を有するものを選択するのがより好ましい。
塩素化飽和炭化水素と、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種との組み合わせとしては、イソプロピルクロライド(2-クロロプロパン)とフッ素化不飽和炭化水素との組み合わせ、またはイソプロピルクロライドと塩素化フッ素化不飽和炭化水素との組み合わせが好ましい。これらの組み合わせにおいて、フッ素化不飽和炭化水素、塩素化フッ素化不飽和炭化水素はそれぞれ1種でも2種以上でもよい。
炭化水素としては、特に限定されず、例えば、炭素原子数4以上7以下の炭化水素(ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、ヘプタン等)を含むことが好ましい。
さらに、上記の発泡剤以外に、窒素、アルゴン、炭酸ガス、空気等の低沸点ガス;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジン等の化学発泡剤;多孔質固体材料等を含んでいてもよい。
溶解度パラメータが近い値を持つ2つの成分は相溶性(溶解度)が大きくなることが知られており、上記の発泡剤のうち、ハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素、塩素化フッ素化不飽和炭化水素およびシクロペンタンは、発泡剤として一般的なイソペンタンなどと比べて溶解度パラメータが高く、フェノール樹脂と近い値である。そのため、ハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素、塩素化フッ素化不飽和炭化水素およびシクロペンタンを発泡剤としてフェノール樹脂に添加すると、フェノール樹脂の粘度が低下する。
フェノール樹脂発泡体(または発泡性フェノール樹脂組成物)中の発泡剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、1質量部以上25質量部以下であることが好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上11質量部以下であることがさらに好ましい。
フェノール樹脂発泡体の製造に用いる発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤中のハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種の組成(質量比)は、フェノール樹脂発泡体に含まれるハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種の組成と略一致している。
フェノール樹脂発泡体に含まれるハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素および塩素化フッ素化不飽和炭化水素の少なくとも1種の組成は、例えば、以下の溶媒抽出法により確認できる。
溶媒抽出法:
予めハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素の標準ガスを用いて、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC/MS)での以下の測定条件における保持時間を求める。
次に、上下の面材を剥がしたフェノール樹脂発泡体のサンプル1.6gを粉砕用ガラス容器に分取し、テトラヒドロフラン(THF)80mLを添加する。
サンプルが溶媒に浸る程度に押しつぶした後、ホモジナイザーで1分30秒間粉砕抽出し、この抽出液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液をGC/MSに供する。
ハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素の種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定を行う。また、ハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素または塩素化フッ素化不飽和炭化水素以外のガスの種類は、保持時間とマススペクトルによって同定を行う。
発泡剤成分の検出感度を各々標準ガスによって測定し、上記GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成(質量比)を算出する。
・GC/MS測定条件
使用カラム:DB-5ms(アジレントテクノロジー社)60m、内径0.25mm、膜厚1μm
カラム温度:40℃(10分)-10℃/分-200℃
注入口温度:200℃
インターフェイス温度:230℃
キャリアガス:He 1.0mL/分
スプリット比:20:1
測定方法:走査法 m/Z=11~550
(酸触媒)
酸触媒は、フェノール樹脂を硬化させるために発泡性フェノール樹脂組成物に含有させる。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
発泡性フェノール樹脂組成物中の酸触媒の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、8質量部以上25質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上20質量部以下であることがさらに好ましい。
(界面活性剤)
界面活性剤は、気泡径(セル径)の微細化に寄与する。
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、気泡径の小さい気泡を形成しやすい点で、ひまし油アルキレンオキシド付加物およびシリコーン系界面活性剤の少なくとも一方を含むことが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドとしては、炭素原子数2以上4以下のアルキレンオキシドが好ましく、エチレンオキシド(以下、「EO」と略記する。)、プロピレンオキシド(以下、「PO」と略記する。)がより好ましい。ひまし油に付加するアルキレンオキシドは1種でもよく、2種以上でもよい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物としては、ひまし油EO付加物、ひまし油PO付加物が好ましい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物としては、ひまし油1モルに対し、アルキレンオキシド、中でもEOが、20モル超60モル未満付加したものが好ましく、21モル以上40モル以下付加したものがより好ましい。ひまし油アルキレンオキシド付加物においては、ひまし油の長鎖炭化水素基を主体とする疎水性基と、所定付加モルのアルキレンオキシド(EO等)によって形成されたポリオキシアルキレン基(ポリオキシエチレン基等)を主体とする親水性基とが、分子内でバランス良く配置されて、良好な界面活性能が発揮される。そのため、フェノール樹脂発泡体の気泡径が小さくなる。また気泡壁に柔軟性が付与されて亀裂の発生が防止される。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のオルガノポリシロキサン系化合物が挙げられる。疎水部と親水部それぞれの重合度を変えて表面張力を調整しやすい点で、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体が好ましい。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体は、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体の構造は、特に限定されず、例えば、シロキサン鎖Bの両方の末端にポリエーテル鎖Aが結合したABA型、複数のシロキサン鎖Bと複数のポリエーテル鎖Aが交互に結合した(AB)型、分岐状のシロキサン鎖の末端それぞれにポリエーテル鎖が結合した枝分かれ型、シロキサン鎖に側基(末端以外の部分に結合する基)としてポリエーテル鎖が結合したペンダント型等が挙げられる。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体としては、例えば、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体が挙げられる。
ポリオキシアルキレンにおけるオキシアルキレン基の炭素原子数は2または3が好ましい。
ポリオキシアルキレンを構成するオキシアルキレン基は、1種でもよく、2種以上でもよい。
ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体の具体例としては、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシエチレン共重合体、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシプロピレン共重合体、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体としては、末端が-OR(式中、Rは、水素原子またはアルキル基である。)であるポリエーテル鎖を有するものが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、Rが水素原子であるものが特に好ましい。
フェノール樹脂発泡体が界面活性剤を含む場合、発泡性フェノール樹脂組成物中の界面活性剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
界面活性剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、気泡径が均一に小さくなりやすく、上限値以下であれば、フェノール樹脂発泡体の吸水性が低く、また、製造コストも抑えられる。
(他の成分)
他の成分としては、フェノール樹脂発泡体の添加剤として公知のものを発泡性フェノール樹脂組成物に加えることができる。他の成分としては、例えば、尿素、可塑剤、充填剤、難燃剤(例えば、リン系難燃剤等)、架橋剤、有機溶媒、アミノ基含有有機化合物、着色剤等が挙げられる。
尿素は、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡成形して発泡体を作製する際、ホルムアルデヒドを捕捉するホルムアルデヒドキャッチャー剤として用いられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸とジエチレングリコールの反応生成物であるポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
ここで、親水性であるフェノール樹脂と相溶性の高い可塑剤、例えば、ポリエステルポリオールを含む可塑剤を、フェノール樹脂の粘度を下げるために添加することが知られている(例えば、特許第4761446号)。しかし、フッ素化不飽和炭化水素や塩素化フッ素化不飽和炭化水素は分子内の極性が高いためにフェノール樹脂との相溶性が高く、フッ素化不飽和炭化水素や塩素化フッ素化不飽和炭化水素を多く含む発泡剤と可塑剤とを併用すると、フェノール樹脂の粘度が下がり過ぎ、十分に発泡しなかったり、面材からフェノール樹脂が染み出したりする恐れがある。そのため、発泡剤としてフッ素化不飽和炭化水素や塩素化フッ素化不飽和炭化水素を使用する場合には可塑剤を含まないことが好ましい。
充填剤としては、例えば、塩基性の充填剤が挙げられる。塩基性の充填剤としては、酸性度が低く、かつ防火性の向上したフェノール樹脂発泡体を与えることができる点で、無機フィラーが好ましい。
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛等の金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。ただし、酸触媒として強酸を用いる場合には、金属粉末、炭酸塩は、ポットライフの調整に影響がない範囲で添加する必要がある。これらの無機フィラーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用されてもよい。
発泡性フェノール樹脂組成物が塩基性の充填剤を含む場合、発泡性フェノール樹脂組成物中の塩基性の充填剤の含有量は、抽出pHが5以上となる量が好ましい。例えば、塩基性の充填剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、1質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましく、5質量部以上10質量部以下であることが特に好ましい。
塩基性の充填剤の含有量が上記下限値未満では、フェノール樹脂発泡体の抽出pHが低くなる。抽出pHが低くなると、酸性度が増すため、フェノール樹脂発泡体と接触する資材が、腐食を生じることがある。塩基性の充填剤の含有量が上記上限値超では、酸触媒による硬化反応が著しく阻害され、生産性が悪化することがある。
抽出pHは、以下の方法で測定される。
フェノール樹脂発泡体を乳鉢で250μm(60メッシュ)以下に粉砕してサンプルとする。サンプル0.5gを200mLの共栓付き三角フラスコに量り取る。共栓付き三角フラスコに純水100mLを加え、密栓する。マグネチックスターラーを用いて、共栓付き三角フラスコ内を23℃±5℃で7日間撹拌して、試料液とする。得られた試料液のpHをpHメータで測定し、その値を抽出pHとする。
なお、塩基性の充填剤は、フッ化水素を捕捉する保護剤としても機能する。発泡剤として使用するハロゲン化不飽和炭化水素は、分解によってフッ化水素を発生したり、その製造原料として使用されたフッ化水素を不純物として含んでいることが知られている(特表2014-511930号公報参照)。このフッ化水素は、反応性が高く人体にとって著しく有害であるばかりか、シリコーン系界面活性剤の疎水部を構成するシロキサン結合と反応して界面活性作用を低下させる。そこで、上記の塩基性の充填剤がフッ化水素の補捉剤や界面活性剤の保護剤として発泡性フェノール樹脂組成物に添加されてもよい。特に、上記の充填剤のうち塩基性の無機フィラー、例えば、炭酸カルシウムを用いることが抽出pHを高くできるため好ましい。
一方、本願発明者による検討の結果、無機フィラーの含有量が少ないほど、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率が低くなる傾向があることを見出した。そのため、断熱性の観点では、発泡性フェノール樹脂組成物中の無機フィラーの含有量は、フェノール樹脂100質量部に対して0.1質量部未満であることが好ましく、0質量部であることが特に好ましい。すなわち、発泡性フェノール樹脂組成物が無機フィラーを含まないことが好ましい。
発泡性フェノール樹脂組成物は、上記の各成分を混合することにより調製できる。
各成分の混合順序は特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂に界面活性剤、必要に応じて他の成分を加えて全体を混合し、この混合物に発泡剤、酸触媒を添加し、この組成物をミキサーに供給して攪拌することにより発泡性フェノール樹脂組成物を調製できる。
面材としては、特に制限されず、ガラスペーパー、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、クラフト紙、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等からなる合成繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、アルミニウム箔張クラフト紙、金属板、金属箔、合板、珪酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板からなる群から選択される少なくとも1種が好適であり、特に、ガラス繊維混抄紙、ガラス繊維不織布、合成繊維不織布は工業的に流通量が多いため入手しやすく好ましい。なかでも、合成繊維不織布は、製造上のエンボス加熱ロールにより繊維間の熱融着点パターンを変えることで不織布表層の風合いや毛羽立ちをコントロールすることも可能であり、取り回しがし易い点で好ましい。また、面材が合成繊維不織布であると、発泡性フェノール樹脂組成物中の水分や、フェノール樹脂の縮合の際に生じる水によって、面材が収縮等してシワが発生するのを抑制できる。
発泡樹脂層の両面に設ける各面材は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
面材の目付は、特に限定されないが、合成繊維不織布を用いる場合には、目付は15g/m以上200g/m以下であることが好ましく、15g/m以上150g/m以下であることがより好ましく、15g/m以上100g/m以下であることがさらに好ましく、20g/m以上80g/m以下であることが特に好ましく、20g/m以上60g/m以下であることが最も好ましい。
ガラス繊維混抄紙を用いる場合には、目付は30g/m以上300g/m以下であることが好ましく、50g/m以上250g/m以下であることがより好ましく、60g/m以上200g/m以下であることがさらに好ましく、70g/m以上150g/m以下であることが特に好ましい。
ガラス繊維不織布を用いる場合には、目付は15g/m以上300g/m以下であることが好ましく、20g/m以上200g/m以下であることがより好ましく、30g/m以上150g/m以下であることがさらに好ましい。
目付が上記下限値以上であれば、発泡性フェノール樹脂組成物が面材の表面にしみ出しにくい。目付が上記上限値以下であれば、発泡体と面材との接着性を高められる。これにより、面材が発泡体から剥がれ難くなり表面をより美麗にできる。加えて、コンベア等の搬送機器に追従させやすくなり、フェノール樹脂発泡体の生産性を高めやすい。特に、発泡剤がハロゲン化飽和炭化水素、フッ素化不飽和炭化水素(HFO)、塩素化フッ素化不飽和炭化水素およびシクロペンタンを含む場合、発泡剤を含有することで発泡性フェノール樹脂組成物の粘度が低くなる。前記組成物の粘度が低くなると、面材に対して前記組成物が滲み込みやすくなり、面材の表面に前記組成物が滲み出しやすくなるため、面材の目付は上記下限値以上とすることで前記組成物が滲み出すのを防ぐことができる。
面材の厚さは、特に限定されないが、0.06mm~1.00mmであることが好ましく、0.10mm~0.50mmであることがより好ましい。面材の厚さが前記下限値以上であると、面材の表面への発泡性フェノール樹脂組成物の滲み出しが抑制されやすくなる。面材の厚さが前記上限値以下であると、面材の取り扱い性により優れる。
面材がガラス繊維混抄紙である場合には、面材の目付に対するガラス繊維の含有量は10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。ガラス繊維の含有量が上記下限値以上であると、フェノール樹脂発泡体の難燃性のさらなる向上を図れる。ガラス繊維の含有量が上記上限値以下であると、フェノール樹脂発泡体と面材との剥離強度を十分に高められる。
なお、ガラス繊維混抄紙の残りの主成分はセルロース繊維であり、その他に結合剤、無機充填剤、着色剤などを含んでいても良い。
面材が合成繊維不織布である場合には、合成繊維不織布の材質としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン等の合成樹脂が挙げられる。ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンが好ましい。これらの合成樹脂は、1種が単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
また、合成繊維不織布の合成繊維の繊維径は、0.5デニール~4.0デニールであることが好ましく、1.5デニール~3.0デニールであることがより好ましい。
合成繊維の繊維径が前記上限値以下であると、面材の表面への発泡性フェノール樹脂組成物の滲み出しを抑制しやすい。
合成繊維の繊維径が前記下限値以上であると、合成繊維の取り扱い性が高められ不織布を製造しやすい。
面材が合成繊維不織布である場合には、凹凸形状のいわゆるエンボス(熱圧着固定部分)が形成されることが好ましい。エンボスが形成された面材を用いることで、面材と発泡性フェノール樹脂組成物の接着性がより高められる。
エンボスのパターン(柄)としては、特に限定されないが、例えば、マイナス柄、ポイント柄、折り目柄等が挙げられる。エンボスによる凹凸形状が大きく、発泡層との接着性をより高められる点からマイナス柄が好ましい。
合成繊維不織布にエンボス加工を施すには、例えば、公知のスパンボンド法で、紡口直下の冷却条件により発現させた捲縮長繊維ウェブを熱エンボスロールで部分熱圧着させることにより、または潜在捲縮長繊維ウェブを熱処理により捲縮させて熱エンボスロールで部分熱圧着させることにより製造される。
エンボス加工の際に形成された熱圧着固定部分において、熱圧着固定部分1箇所当たりの面積は0.05mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.07mm以上3.0mm以下であることがより好ましい。この範囲内の面材を用いることで、熱圧着固定部分により発泡性フェノール樹脂組成物の滲み出しを抑えつつ、発泡樹脂層と面材との接着性を向上させることができる。上記面積が0.05mm未満である場合、繊維同士の結合が少なく、摩擦強度等の物理強度が低く発泡性フェノール樹脂組成物が滲み出しやすい傾向があり、5.0mmを超える場合、熱圧着固定部分の面積が多く、風合いが硬く、発泡樹脂層と面材の繊維との接着性が悪くなる。さらに、通気度が低くなり、養生時間が長くなったり、独立気泡率が低下したりするおそれがある。
熱圧着固定部分同士の最小間隔は0.05mm以上5mm以下であることが好ましく、0.08mm以上2mm以下であることがより好ましい。この範囲内の面材を用いることで、発泡性フェノール樹脂組成物の滲み出しを抑えつつ、発泡樹脂層と面材との接着性を向上させることができる。上記最小間隔が0.05mm未満である場合、熱圧着固定部分が多く、風合いが硬く、発泡樹脂層と面材の繊維との接着性が悪い傾向がある。上記最小間隔が5mmを超える場合、繊維同士の結合が少なく、摩擦強度等の物理強度が低く、発泡性フェノール樹脂組成物が滲み出しやすい。また、熱圧着固定部分は、不織布表面の全面に均等に分布させることが好ましい。
熱圧着固定部分密度は5個/cm以上150個/cm以下であり、5個/cm以上50個/cm以下であることがより好ましく、5個/cm以上30個/cm以下であることがさらに好ましい。熱圧着固定部分密度は単位面積あたりの熱圧着固定部分の個数を意味しており、次式(s)で表される。
熱圧着固定部分密度(個/cm)=[熱圧着固定部分の数(個)]/」[面材の表面積(cm)]・・・(s)
熱圧着固定部分密度が上記下限値以上であれば、発泡性フェノール樹脂組成物の滲み出しを良好に抑制できる。熱圧着固定部分密度が上記上限値以下であれば、発泡樹脂層と面材との接着性をより向上させることができ、吸水量を低くすることができる。また、熱圧着固定部分密度が上記上限値以下であれば、通気度を高くでき、養生時間を短縮できる。また、より長期にわたって低い熱伝導率を維持できる。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体によれば、発泡樹脂層を備えたフェノール樹脂発泡体であって、密度が15kg/m以上50kg/m以下であり、平均気泡径が50μm以上200μm以下であり、独立気泡率が85%以上であり、踏み抜け評価において、荷重100kgfで降伏点が存在せず、200kgfで面材が破壊されない。そのため、踏み抜けに対する耐性に優れる。
[製造方法]
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の製造方法は、本実施形態のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、第1面材上に、フェノール樹脂と、発泡剤と、酸触媒とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する吐出工程と、第1面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物に、第2面材を貼り合わせて、第1面材と第2面材の間にて、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させる発泡工程と、を含み、発泡工程において、第1面材と第2面材の間隔を、第1面材と第2面材の走行方向に沿って次第に短くする。
フェノール樹脂発泡体を製造する際に第1面材と第2面材を設ける方法としては、例えば、連続走行するコンベア上に第1面材を配置し、その第1面材上に発泡性フェノール樹脂組成物を吐出し(吐出工程)、第1面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物上に、コンベアにより第2面材を積層した(貼り合わせた)後、第1面材、発泡性フェノール樹脂組成物および第2面材からなる積層体が一対のコンベアで挟まれた状態で、加熱炉を通過させて発泡成形する(発泡工程)方法が挙げられる。これにより、板状のフェノール樹脂発泡体の両面にそれぞれ第1面材と第2面材が積層した面材付きフェノール樹脂発泡体が得られる。
コンベアとしては、スラットコンベアとコンベアベルトが挙げられる。スラットコンベアは、スラットと呼ばれる複数のプレートが隣同士に連結されることによって形成された一体型コンベアである。コンベアベルトは、無端ベルトをコンベアとしたものである。
なお、第1面材と第2面材としては、上記の面材と同様のものが用いられる。
吐出工程において、第1面材上に発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する方法は、特に限定されないが、例えば、複数のノズルから発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する方法が用いられる。
発泡工程では、第1面材と第2面材の間の発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させることにより、本実施形態のフェノール樹脂発泡体を製造できる。
フェノール樹脂発泡体の製造は、公知の方法により実施できる。例えば、発泡性フェノール樹脂組成物を30℃以上95℃以下で加熱して発泡および硬化させることにより、フェノール樹脂発泡体を製造することができる。
発泡工程において、フェノール樹脂発泡体の厚さ方向の間隔、すなわち第1面材と第2面材との間の間隔を、第1面材と第2面材の走行方向に沿って次第に短くする。第1面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物に第2面材を貼り合わせた時点(発泡工程の始点)での第1面材と第2面材の間隔と、発泡工程の終点(第1面材、発泡性フェノール樹脂組成物および第2面材からなる積層体を一対のコンベアで挟むのを止める時点)での第1面材と第2面材の間隔との差が0.5mm以上3mm以下であることが好ましく、0.5mm以上2mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上1mm以下であることがさらに好ましい。
発泡工程の始点と終点での第1面材と第2面材の間隔差が0.5mm未満では、フェノール樹脂発泡体の圧縮強度の改善効果が得られない。一方、発泡工程の始点と終点での第1面材と第2面材の間隔差が3mmを超えると、コンベアにかかる発泡圧が高く、コンベアや面材に蛇行が生じ、一定の厚さでの連続生産ができない。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の製造方法によれば、第1面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物に、第2面材を貼り合わせて、第1面材と第2面材の間にて、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させる発泡工程において、第1面材と第2面材の間隔を、第1面材と第2面材の走行方向に沿って次第に短くする。そのため、踏み抜けに対する耐性に優れるフェノール樹脂発泡体が得られる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
後述する実施例および比較例で用いた測定方法を以下に示す。
(1)密度
日本工業規格 JIS A9511:2009に規定される密度の測定方法に準拠して、フェノール樹脂発泡体の密度を測定した。
(2)平均気泡径
フェノール樹脂発泡体の厚み方向のほぼ中央から試験片を切出した。試験片の厚み方向の切断面を50倍拡大で撮影した。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引いた。
この際、ボイド(2mm以上の空隙)を避けるように直線を引いた。各直線が横切った気泡の数(日本工業規格 JIS K6400-1:2004に規定されるセル数の測定方法に準拠)を直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求めた。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とした。
(3)独立気泡率
日本工業規格 JIS K7138:2006に規定される独立気泡率の測定方法に準拠して、フェノール樹脂発泡体の独立気泡率を測定した。
(4)熱伝導率
日本工業規格 JIS A 1412-2に規定される熱伝導率の測定方法に準拠して、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率を測定した。測定は、同じ試料について2回実施した。
(5)限界酸素指数
日本工業規格 JIS K7201-2:2007に規定される限界酸素指数(LOI)の測定方法に準拠して、フェノール樹脂発泡体の限界酸素指数を測定した。
(6)踏み抜け評価
万能試験機上に、455mm間隔で長さ910mmの想定垂木を設置した。
想定垂木の大きさは、高さ89mm×幅38mmとした。
想定垂木上に500mm×910mmのフェノール樹脂発泡体を設置し、そのフェノール樹脂発泡体の中央部上に、縦100mm×横270mmの疑似足型を設置した。このとき、疑似足型は万能試験機に設置した。この万能試験機はかけた荷重に基づいて応力-ひずみ曲線を自動で計測するものである。
その疑似足型を介して、フェノール樹脂発泡体の厚み方向に、10mm/秒で荷重が200kgfに到達するまで荷重を加えて停止した。停止後、応力-ひずみ曲線にて100kgf以下での降伏点の有無を確認した。さらに、試験後のフェノール樹脂発泡体の表面に面材破れが無いかを目視で確認した。
(7)フェノール樹脂発泡体の圧縮強度
フェノール樹脂発泡体を、100mm×100mmに切り出した。
日本工業規格 JIS K7220に規定される測定方法に準拠して、フェノール樹脂発泡体の圧縮強度を測定した。
(8)発泡樹脂層の中央層と表層(上層、下層)の圧縮強度
フェノール樹脂発泡体を、100mm×100mmに切り出した。
フェノール樹脂発泡体から面材を剥離して、発泡樹脂層を、その厚み方向に均等(厚み10mm)に切断し、それぞれを中央層、上層、下層の試験片とした。
なお、フェノール樹脂発泡体の厚みが30mm未満の場合でも、厚みが10mmとなるように試験片を用意する。すなわち、厚さが30mm未満の100mm×100mmの試験片作成用のフェノール樹脂発泡体を3つ用意し、各々から厚さ10mmの中央層、上層、下層の試験片を作製する。
日本工業規格 JIS K7220に規定される測定方法に準拠して、それぞれの試験片(中央層、上層、下層)の圧縮強度を測定した。
[実施例1]
液状レゾール型フェノール樹脂(商品名:PF-339、旭有機材工業株式会社製)100質量部に、界面活性剤としてひまし油EO付加物(付加モル数30)4質量部、ホルムアルデヒドキャッチャー剤として尿素4質量部を加えて混合し、20℃で8時間放置した。
このようにして得られた混合物108質量部に対し、発泡剤として、表1に示す発泡剤A14質量部を加え、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物16質量部を加え、攪拌、混合して発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。なお、表1において、「HCFO-1233zd」は「E-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン」を示し、「CP」は「シクロペンタン」を示し、「IP」は「イソペンタン」を示し、「IPC」は「イソプロピルクロライド」を示す。
この発泡性フェノール樹脂組成物を、第1面材の走行方向に対して垂直方向に等間隔に並列に配置された18本のノズルから、コンベアにより連続的に走行させている第1面材上に吐出させた。
次いで、第1面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物上に、コンベアにより第2面材を積層した。このとき、コンベアが格納された加熱硬化炉内の温度を調節して、加熱硬化炉入口~中央付近までの前段温度を70℃、加熱硬化炉中央付近の中段温度を65℃、加熱硬化炉中央付近~出口までの後段温度を60℃とし、前段から後段までの各温度でおおむね100秒間ずつ加熱されるよう一定の速度で搬送し、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させた。
また、第1面材と第2面材の間にて、発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させる際、第1面材上に吐出された発泡性フェノール樹脂組成物に第2面材を貼り合わせた時点(発泡工程の始点)での第1面材と第2面材の間隔と、発泡工程の終点(第1面材、発泡性フェノール樹脂組成物および第2面材からなる積層体を一対のコンベアで挟むのを止める時点)での第1面材と第2面材の間隔との差(表2に示す、入口間隔-出口間隔)が表1に示す長さとした。
第1面材および第2面材としては、ガラス繊維混抄紙(目付100g/m、ガラス繊維含有量:50質量%)を用いた。
発泡性フェノール樹脂組成物の発泡および硬化が完了した後、第1面材、発泡樹脂層および第2面材からなる積層体を硬化、乾燥し(養生し)、フェノール樹脂発泡体を得た。
得られたフェノール樹脂発泡体を、幅910mm、長さ1820mmに切断し、厚み20mmの実施例1のフェノール樹脂発泡体を作製した。
得られたフェノール樹脂発泡体について、上記の(1)~(8)の項目について評価した。結果を表2に示す。以下の実施例2~実施例12のフェノール樹脂発泡体に関する評価結果も表2に示す。
[実施例2]
前段温度を70℃、中段温度を65℃、後段温度を65℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例3]
発泡剤として、表1に示す発泡剤B12質量部を加えて、発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。
この発泡性フェノール樹脂組成物を用い、前段温度を70℃、中段温度を65℃、後段温度を60℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例4]
前段温度を70℃、中段温度を65℃、後段温度を65℃としたこと以外は実施例3と同様にして、実施例4のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例5]
発泡剤として、表1に示す発泡剤C14質量部を加えて、発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。
この発泡性フェノール樹脂組成物を用い、前段温度を75℃、中段温度を65℃、後段温度を60℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例6]
前段温度を70℃、中段温度を60℃、後段温度を60℃としたこと以外は実施例5と同様にして、実施例6のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例7]
発泡剤として、表1に示す発泡剤D14質量部を加えて、発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。
この発泡性フェノール樹脂組成物を用い、前段温度を70℃、中段温度を65℃、後段温度を65℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例8]
前段温度を70℃、中段温度を65℃、後段温度を65℃としたこと以外は実施例7と同様にして、実施例8のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例9]
発泡剤として、表1に示す発泡剤E14質量部を加えて、発泡性フェノール樹脂組成物を調製し、第1面材および第2面材としてポリエステル不織布(目付20g/m、熱圧着固定部分密度:8個/cm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例10]
前段温度を75℃、中段温度を65℃、後段温度を60℃としたこと以外は実施例9と同様にして、実施例10のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例11]
発泡剤として、表1に示す発泡剤F14質量部を加えて、発泡性フェノール樹脂組成物を調製し、第1面材および第2面材としてポリエステル不織布(目付35g/m、熱圧着固定部分密度:80個/cm)を用い、厚みを45mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例12]
前段温度を70℃、中段温度を60℃、後段温度を60℃としたこと以外は実施例11と同様にして、実施例12のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例13]
発泡剤として、表1に示す発泡剤G14質量部を加えて、発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。
この発泡性フェノール樹脂組成物を用い、前段温度を70℃、中段温度を65℃、後段温度を60℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例13のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[実施例14]
前段温度を65℃、中段温度を65℃、後段温度を60℃としたこと以外は実施例13と同様にして、実施例14のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[比較例1]
前段温度を75℃、中段温度を75℃、後段温度を75℃としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のフェノール樹脂発泡体を作製した。
[比較例2]
前段温度を70℃、中段温度を70℃、後段温度を70℃としたこと以外は実施例11と同様にして、比較例2のフェノール樹脂発泡体を作製した。
Figure 0007016686000001
Figure 0007016686000002
表2の結果から、実施例1~実施例14のフェノール樹脂発泡体は、踏み抜け評価において、荷重100kgfで降伏点が存在せず、200kgfで面材が破壊されないことが分かった。
一方、比較例1のフェノール樹脂発泡体は、踏み抜け評価において、荷重100kgfで降伏点が存在することが分かった。また、比較例2のフェノール樹脂発泡体は、踏み抜け評価において、荷重100kgfで降伏点が存在し、200kgfで面材が破壊されることが分かった。
以上の結果から、実施例1~実施例14のフェノール樹脂発泡体は、踏み抜けに対する耐性に優れることが確認された。
本発明のフェノール樹脂発泡体は、発泡樹脂層を備え、密度が15kg/m以上50kg/m以下であり、平均気泡径が50μm以上200μm以下であり、独立気泡率が85%以上であり、踏み抜け評価において、荷重100kgfで降伏点が存在せず、200kgfで面材が破壊されないことで、踏み抜けに対する耐性に優れる。したがって、産業上大いに有用である。

Claims (2)

  1. 発泡樹脂層と、その両面にそれぞれ積層された面材と、を備えたフェノール樹脂発泡体であって、
    密度が15kg/m以上50kg/m以下であり、
    平均気泡径が50μm以上200μm以下であり、
    独立気泡率が85%以上であり、
    踏み抜け評価において、荷重100kgfで降伏点が存在せず、200kgfで前記面材が破壊されず、
    前記発泡樹脂層は、中央層と、その両面側の2つの表層とを有し、前記2つの表層の圧縮強度が10N/cm 以上であり、前記2つの表層の圧縮強度の平均値が、前記中央層の圧縮強度以上であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
  2. 請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、
    第1面材上に、フェノール樹脂と、発泡剤と、酸触媒とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する吐出工程と、
    前記第1面材上に吐出された前記発泡性フェノール樹脂組成物に、第2面材を貼り合わせて、前記第1面材と前記第2面材の間にて、前記発泡性フェノール樹脂組成物を発泡および硬化させる発泡工程と、を含み、
    前記発泡工程において、前記第1面材と前記第2面材の間隔を、前記第1面材と前記第2面材の走行方向に沿って次第に短くすることを特徴とするフェノール樹脂発泡体の製造方法。
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