JP6159466B1 - フェノール樹脂発泡体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】雰囲気湿度が上昇したときの吸水が少ないフェノール樹脂発泡体を提供する。【解決手段】フェノール樹脂と、界面活性剤と、ハロゲン化不飽和炭化水素を含む発泡剤と、を含み、前記ハロゲン化不飽和炭化水素が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含み、前記発泡剤における前記ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量が30質量%以上であり、前記界面活性剤のHLBが8〜18であり、密度が15〜50kg/m3、平均気泡径が50〜150μm、独立気泡率が90%以上であり、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率が6質量%以下であり、温度23℃、相対湿度90%における湿潤含水率と、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率との差が2質量%以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。【選択図】なし

Description

本発明はフェノール樹脂発泡体およびその製造方法に関する。
フェノール樹脂発泡体は、難燃性、耐熱性、耐薬品性、耐腐食性等に優れることから、断熱材として種々の分野で採用されている。例えば建築分野では、合成樹脂建材、特に壁板内装材として、フェノール樹脂発泡体製壁板が採用されている。
フェノール樹脂発泡体は通常、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒(硬化剤)等を含む発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させることによって製造される。このようにして製造されたフェノール樹脂発泡体は独立気泡を有し、独立気泡中には発泡剤から発生したガスが含まれる。
フェノール樹脂発泡体の発泡剤として、塩素化脂肪族炭化水素である2−クロロプロパンと、脂肪族炭化水素であるイソペンタンとの混合物を用いることが提案されている。かかる混合物を発泡剤として用いたフェノール樹脂発泡体は、本質的に気泡欠陥が無く、安定かつ低い熱伝導率を示すとされている(特許文献1参照)。
また、フェノール樹脂発泡体の発泡剤として、オゾン層破壊係数がゼロで温暖化係数も小さく、さらに熱伝導率も低いハロゲン化不飽和炭化水素を用いることも提案されている(特許文献2参照)。
特許第4939784号公報 特許第5688487号公報
フェノール樹脂発泡体からなる断熱材は、例えば建物の基礎部など多湿になりやすい環境下に施工されることもあり、雰囲気湿度が上昇しても断熱材の吸水量の増加が少なく、性能が安定していることが求められる。
本発明は、雰囲気湿度が上昇したときの吸水が少ないフェノール樹脂発泡体およびその製造方法の提供を目的とする。
本発明者等は、発泡剤として脂肪族炭化水素(アルカン)を用いる場合よりも、ハロゲン原子を有する飽和炭化水素または不飽和炭化水素を用いたときに、フェノール樹脂発泡体の吸水量が増加しやすいことを知見した。
そしてフェノール樹脂発泡体の常温における平衡含水率に着目し、該平衡含水率が低いと、フェノール樹脂発泡体における水分の出入り(吸放湿)が少ないことを見出して本発明に至った。
本発明は以下の態様を有する。
<1> フェノール樹脂と、界面活性剤と、ハロゲン化不飽和炭化水素および飽和炭化水素を含む発泡剤(ただし、2種以上のハロゲン化炭化水素を含む発泡剤は除く。)と、を含み、前記ハロゲン化不飽和炭化水素が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含み、前記発泡剤における前記ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量が30質量%以上であり、前記界面活性剤のHLBが8〜18であり、密度が15〜50kg/m、平均気泡径が50〜150μm、独立気泡率が90%以上であり、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率が6質量%以下であり、温度23℃、相対湿度90%における湿潤含水率と、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率との差が2質量%以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
<2> 前記<1>に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、フェノール樹脂、ハロゲン化不飽和炭化水素および飽和炭化水素を含む発泡剤(ただし、2種以上のハロゲン化炭化水素を含む発泡剤は除く。)、界面活性剤及び酸触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物を加熱して、発泡し、硬化させる発泡硬化工程を有し、前記ハロゲン化不飽和炭化水素が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり、前記発泡剤における前記ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量が30質量%以上であり、前記界面活性剤のHLBが8〜18であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体の製造方法。
<3> フェノール樹脂と、界面活性剤と、ハロゲン化不飽和炭化水素および飽和炭化水素のみを含む発泡剤と、を含み、前記ハロゲン化不飽和炭化水素が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含み、前記発泡剤における前記ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量が30質量%以上であり、前記界面活性剤のHLBが8〜18であり、密度が15〜50kg/m 、平均気泡径が50〜150μm、独立気泡率が90%以上であり、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率が6質量%以下であり、温度23℃、相対湿度90%における湿潤含水率と、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率との差が2質量%以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
本発明によれば、雰囲気湿度が上昇したときの吸水が少ないフェノール樹脂発泡体が得られる。
本発明のフェノール樹脂発泡体は、硬化したフェノール樹脂と、発泡剤とを含む。発泡剤は、ハロゲン化炭化水素を含む。
本発明のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂と、発泡剤と、酸触媒とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を発泡及び硬化させることを含む方法により得ることができる。
<フェノール樹脂>
フェノール樹脂としては、レゾール型のものが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノールおよびこれらの変性物等が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。
アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。
ただしフェノール化合物、アルデヒド、アルカリ触媒はそれぞれ上記のものに限定されるものではない。
フェノール化合物とアルデヒドとの使用割合は特に限定されない。好ましくは、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1〜1:3であり、より好ましくは1:1.3〜1:2.5である。
フェノール樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量Mwは、通常400〜3000、好ましくは700〜2000である。重量平均分子量Mwが400より小さいと、独立気泡率が低下し、それにより圧縮強度の低下、及び熱伝導率の長期性能の低下を招く傾向がある。また、ボイドが多く、平均気泡径が大きな発泡体が形成され易い。重量平均分子量Mwが3000より大きいと、フェノール樹脂原料及びフェノール樹脂組成物の粘度が高くなりすぎることから、必要な発泡倍率を得るために多くの発泡剤が必要となる。発泡剤が多いと、経済的でない。
<発泡剤>
発泡剤はハロゲン化炭化水素を含む。さらに飽和炭化水素を含んでもよい。ハロゲン化炭化水素は、ハロゲン化飽和炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素とに大別できる。
[ハロゲン化不飽和炭化水素]
ハロゲン化不飽和炭化水素としては、フッ素化不飽和炭化水素、塩素化不飽和炭化水素、塩素化フッ素化不飽和炭化水素、臭素化フッ素化不飽和炭化水素、ヨウ素化フッ素化不飽和炭化水素等が挙げられる。ハロゲン化不飽和炭化水素は、水素原子の全てがハロゲン原子で置換されたものでもよいし、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたものでもよい。
ハロゲン化不飽和炭化水素としては、フッ素化不飽和炭化水素、塩素化フッ素化不飽和炭化水素等、フッ素原子を有するものが好ましい。
これらのハロゲン化不飽和炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
塩素化フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内に塩素原子とフッ素原子と炭素−炭素2重結合を含むものが挙げられ、例えば、1,2−ジクロロ−1,2−ジフルオロエテン(E及びZ異性体)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)(E及びZ異性体)(例えば、HoneyWell社製、商品名:SOLSTICE LBA)、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yd)(E及びZ異性体)、1−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zb)(E及びZ異性体)、2−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xe)(E及びZ異性体)、2−クロロ−2,2,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xc)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)(例えば、SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300−7−09)、3−クロロ−1,2,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233ye)(E及びZ異性体)、3−クロロ−1,1,2−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yc)、3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1223xd)(E及びZ異性体)、2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(E及びZ異性体)、及び2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン(E及びZ異体)等が挙げられる。
分子内に水素原子と塩素原子とフッ素原子と炭素−炭素2重結合を含むもの(HCFO)がより好ましい。
フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内に水素原子とフッ素原子と炭素−炭素2重結合を含むヒドロフルオロオレフィン(以下、「HFO」ともいう。)が挙げられ、例えば、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)(E及びZ異性体)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO1336mzz)(E及びZ異性体)(例えば、SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300−3−Z6)等の特表2009−513812号公報等に開示されるものが挙げられる。
前記発泡剤に含まれるハロゲン化不飽和炭化水素は、オゾン破壊係数(ODP)および地球温暖化係数(GWP)が小さく、環境に与える影響が小さい点で有利である。ハロゲン化不飽和炭化水素としては、塩素化フッ素化不飽和炭化水素またはフッ素化不飽和炭化水素が好ましい。
[ハロゲン化飽和炭化水素]
ハロゲン化飽和炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができ、例えばフッ素化飽和炭化水素、塩素化飽和炭化水素等が挙げられる。ハロゲン化飽和炭化水素は、水素原子の全てがハロゲン原子で置換されたものでもよいし、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたものでもよい。
ハロゲン化飽和炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
塩素化飽和炭化水素としては、炭素数が2〜5であるものが好ましい。塩素化脂肪族炭化水素がより好ましい。例えばジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド等が挙げられる。
上記の中でも、オゾン層破壊係数が低く、環境適合性に優れる点で、イソプロピルクロライド(別名:2−クロロプロパン)が好ましい。
フッ素化飽和炭化水素としては、炭素数が1〜5であるものが好ましい。例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオブタン(HFC365mfc)及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
[飽和炭化水素]
飽和炭化水素としては、炭素数が3〜7であるものが好ましい。例えばブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。
発泡剤は必要に応じて、上記ハロゲン化不飽和炭化水素、ハロゲン化飽和炭化水素、および飽和炭化水素以外の他の発泡剤をさらに含んでもよい。他の発泡剤としては、窒素、アルゴン、炭酸ガス、空気等の低沸点ガス;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、トリヒドラジノトリアジン等の化学発泡剤;多孔質固体材料等が挙げられる。
フェノール樹脂発泡体(又は発泡性フェノール樹脂組成物)中の発泡剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、1〜25質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましく、5〜11質量部がさらに好ましい。
発泡剤100質量部のうちハロゲン化炭化水素の割合は、例えば20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましい。100質量部でもよい。
発泡剤が2種類以上の発泡剤の混合物である場合、発泡性フェノール樹脂組成物に含まれる発泡剤の組成(質量比)は、発泡硬化されたフェノール樹脂発泡体に含まれる発泡剤の組成と略一致している。フェノール樹脂発泡体に含まれる2種以上の発泡剤の組成は、たとえば、以下の溶媒抽出法により確認できる。
溶媒抽出法:
予めハロゲン化不飽和炭化水素、ハロゲン化飽和炭化水素、または飽和炭化水素の標準ガスを用いて、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC/MS)での以下の測定条件における保持時間を求める。次に、上下の面材を剥がしたフェノール樹脂発泡体のサンプル1.6gを粉砕用ガラス容器に分取し、テトラヒドロフラン(THF)80mLを添加する。サンプルが溶媒に浸る程度に押しつぶした後、ホモジナイザーで1分30秒間粉砕抽出し、この抽出液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液をGC/MSに供する。炭化水素の種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定を行う。発泡剤成分の検出感度を各々標準ガスによって測定し、上記GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成(質量比)を算出する。
・GC/MS測定条件
使用カラム:DB−5ms(アジレントテクノロジー社)60m、内径0.25mm、膜厚1μm
カラム温度:40℃(10分)−10℃/分−200℃
注入口温度:200℃
インターフェイス温度:230℃
キャリアガス:He 1.0mL/分
スプリット比:20:1
測定方法:走査法 m/Z=11〜550
<添加剤>
(酸触媒)
酸触媒は、フェノール樹脂を硬化させるために発泡性フェノール樹脂組成物に含有させる。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
発泡性フェノール樹脂組成物中の酸触媒の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、5〜30質量部が好ましく、8〜25質量部がより好ましく、10〜20質量部がさらに好ましい。
(界面活性剤)
発泡性フェノール樹脂組成物に界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤は、気泡径(セル径)の微細化に寄与する。
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、HLBが8〜18のものを用いることが好ましい。界面活性剤のHLBが上記の範囲内であると、雰囲気湿度が上昇したときの吸水が少ないフェノール樹脂発泡体が得られやすい。界面活性剤のHLBは10〜14がより好ましい。
フェノール樹脂発泡体が界面活性剤を含む場合、発泡性フェノール樹脂組成物中の界面活性剤の含有量は、フェノール樹脂100質量部当り、1〜8質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。界面活性剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、気泡径が均一に小さくなりやすく、上限値以下であれば、雰囲気湿度が上昇したときの吸水が少ないフェノール樹脂発泡体が得られやすい。
(他の成分)
他の成分としては、フェノール樹脂発泡体の添加剤として公知のものを発泡性フェノール樹脂組成物に加えることができ、例えば尿素、可塑剤、充填剤、難燃剤(例えばリン系難燃剤等)、架橋剤、有機溶媒、アミノ基含有有機化合物、着色剤等が挙げられる。
<製造方法>
発泡性フェノール樹脂組成物は、上記の各成分を混合することにより調製できる。
各成分の混合順序は特に限定されないが、例えばフェノール樹脂に、必要に応じて界面活性剤や他の成分を加えて全体を混合し、この混合物に発泡剤、酸触媒を添加し、この組成物をミキサーに供給して攪拌することにより発泡性フェノール樹脂組成物を調製できる。
上記発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させることにより、本発明のフェノール樹脂発泡体を製造できる。
フェノール樹脂発泡体の製造は、公知の方法により実施できる。例えば発泡性フェノール樹脂組成物を加熱炉内で加熱して発泡、硬化させ(発泡・硬化工程)、さらに乾燥器内で硬化、乾燥させる(硬化・乾燥工程)ことにより、フェノール樹脂発泡体を製造する方法が挙げられる。
発泡成形してフェノール樹脂発泡体を製造する際、面材を設けてもよい。
面材としては、特に制限されず、ガラスペーパー、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、クラフト紙、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等からなる合成繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、アルミニウム箔張クラフト紙、金属板、金属箔、合板、珪酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種が好適である。
面材は、フェノール樹脂発泡体の片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。両面に設ける場合、各面材は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
フェノール樹脂発泡体を製造する際に面材を設ける方法としては、例えば、連続走行するコンベアベルト上に面材を配置し、該面材上に発泡性フェノール樹脂組成物を吐出し、その上に他の面材を積層した後、加熱炉を通過させて発泡成形する方法が挙げられる。これにより、シート状のフェノール樹脂発泡体の両面に面材が積層した面材付きフェノール樹脂発泡体が得られる。
面材は、発泡成形の後、接着剤を用いてフェノール樹脂発泡体に貼り合わせて設けてもよい。
<物性>
[密度]
本発明のフェノール樹脂発泡体の密度は、15〜50kg/mであり、20〜40kg/mが好ましく、25〜35kg/mがより好ましい。上記下限値以上であれば、フェノール樹脂発泡体の圧縮強度のさらなる向上を図りやすく、上記上限値以下であれば、フェノール樹脂発泡体の断熱性のさらなる向上を図りやすい。
該密度は、発泡剤の種類および組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等により調整される。
該密度の測定方法は後述する。
[平均気泡径(セル径)]
本発明のフェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、50〜200μmであり、50〜150μmが好ましい。平均気泡径が上記範囲内であれば、フェノール樹脂発泡体の断熱性をより高められる。
該平均気泡径は、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。
該平均気泡径の測定方法は後述する。
[独立気泡率]
本発明のフェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、例えば、85%以上であり、90%以上が好ましく、100%でもよい。独立気泡率が上記下限値以上であれば、フェノール樹脂発泡体の断熱性をより高められる。
該独立気泡率は、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。
該独立気泡率の測定方法は後述する。
[平衡含水率]
本発明のフェノール樹脂発泡体の、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率は6質量%以下であり、5.5質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。該平衡含水率が低いほど、フェノール樹脂発泡体における吸放湿がより少なく、雰囲気湿度が上昇したときの吸水がより少ないフェノール樹脂発泡体が得られる。
硬化・乾燥工程の条件が一定である場合、該平衡含水率は、界面活性剤の種類と添加量によって調整できる。
該平衡含水率の測定方法は後述する。
[湿潤含水率・含水率差]
雰囲気湿度が上昇したときの、フェノール樹脂発泡体の吸水量の指標として、温度23℃、相対湿度90%における湿潤含水率と、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率との差(本明細書では、単に「含水率差」ともいう。)を用いることができる。該含水率差が小さいほど、雰囲気湿度の上昇による吸水量が少ないことを意味する。
該湿潤含水率の測定方法は後述する。
本発明のフェノール樹脂発泡体の、湿潤含水率は8質量%以下が好ましく、7.5質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。該湿潤含水率が低いほど、湿度が上昇したときの吸水がより少なく、性能の安定性により優れる。
本発明のフェノール樹脂発泡体の含水率差は、湿潤含水率から平衡含水率を差し引いた値である。該含水率差は2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。該湿潤含水率が低いほど、湿度が上昇したときの吸水がより少なく、性能の安定性により優れる。
<作用機序>
本発明によれば、発泡剤がハロゲン化炭化水素を含んでいても、雰囲気湿度が上昇したときの吸水が少ないフェノール樹脂発泡体が得られる。発泡剤として脂肪族炭化水素(アルカン)を用いる場合よりも、ハロゲン化炭化水素を用いたときに、フェノール樹脂発泡体の吸水量が増加しやすい理由としては以下のように考えられる。
ハロゲン化炭化水素は極性が高く、フェノール樹脂との相溶性が高いため、発泡剤がハロゲン化炭化水素を含んでいるとフェノール樹脂が可塑化されやすい。フェノール樹脂が可塑化されると、フェノール樹脂発泡体において強固な気泡壁が形成されにくいため、気泡中の発泡剤が空気置換しやすくなる傾向がある。このようなフェノール樹脂発泡体は湿潤条件下では水分を含みやすく、発泡体の吸水量が増加し性能低下の原因となる。
また、後述の実施例に示されるように、界面活性剤の種類を変更することにより、常温における平衡含水率を低くすることができ、雰囲気湿度が上昇したときの吸水量(含水率差)を小さくすることができる。その理由としては、発泡性フェノール樹脂組成物中の界面活性剤の作用によって、フェノール樹脂へのハロゲン化炭化水素の溶けやすさが変わり、フェノール樹脂の可塑化を抑制できるためと考えられる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<測定方法>
フェノール樹脂発泡体の物性の測定方法は以下の通りである。
[密度]
密度は、JIS A 9511:2009に従い、フェノール樹脂発泡体の密度を測定する。
[平均気泡径(セル径)]
フェノール樹脂発泡体の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出す。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影する。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引く。この際、ボイド(2mm以上の空隙)を避けるように直線を引く。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400−1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求める。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とする。
[独立気泡率]
JIS K7138−2006に従い、フェノール樹脂発泡体の独立気泡率を測定する。
[平衡含水率]
得られた面材付きフェノール樹脂発泡体を、幅方向200mm、長さ方向200mmにカットした後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で7日間放置したフェノール樹脂発泡体の質量を初期質量mとする。該フェノール樹脂発泡体を104℃のオーブンに投入して48時間後の質量をmとし、下式(1)で平衡含水率(単位:質量%)を求める。
平衡含水率=(m−m)/m×100 …(1)
[湿潤含水率]
得られた面材付きフェノール樹脂発泡体を、幅方向200mm、長さ方向200mmにカットした後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で7日間放置した後、温度23℃、相対湿度90%の雰囲気中で7日間放置したフェノール樹脂発泡体の質量を初期質量kとする。該フェノール樹脂発泡体を104℃のオーブンに投入して48時間後の質量をkとし、下式(2)で湿潤含水率(単位:質量%)を求める。
湿潤含水率=(k−k)/k×100 …(2)
以下の実施例、比較例で用いた発泡剤を表1に示す。界面活性剤は以下のものを用いた。
界面活性剤(1):ヒマシ油脂肪酸PEGエステル(伊藤製油社「SURFRIC AQ−250」)、HLB=11。
界面活性剤(2):シリコーン系界面活性剤(信越シリコーン社「KF−615A」)、HLB=10。
界面活性剤(3):シリコーン系界面活性剤(東レダウコーニング社「SF−2945F」)、HLB=13。
界面活性剤(4):フッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル社「サーフロンs−243」)、HLB=15。
界面活性剤(5):シリコーン系界面活性剤(東レダウコーニング社「SH−193」)、HLB=19。
<例1〜10>
例1、3は実施例、例9、10は比較例、例2、〜8は参考例である。各例で使用した発泡剤および界面活性剤の種類と添加量を表2に示す。
以下の方法でフェノール樹脂発泡体を製造した。
液状レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:PF−339)100質量部に、界面活性剤を加え、さらにホルムアルデヒドキャッチャー剤として尿素4質量部を加えて混合し、20℃で8時間放置した。
このようにして得られた混合物に対し、発泡剤を加え、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物16質量部を加え、攪拌、混合して発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。
この発泡性フェノール樹脂組成物を、連続的に走行する第一の面材(材質:ガラス繊維混抄紙)上に、該第一の面材の走行方向(以下、長さ方向ともいう。)に対して垂直方向(以下、幅方向ともいう。)に等間隔に18本配置されているノズルから吐出した。その上に第二の面材(材質:ガラス繊維混抄紙)を重ねた。第一の面材の上面と第二の面材の下面とで発泡性フェノール樹脂組成物層が挟持された状態の未硬化物をスラット型ダブルコンベアに導入し、70℃で300秒間加熱して発泡成形し(発泡・硬化工程)、80℃で5時間乾燥させた(硬化、乾燥工程)後、幅方向1820mm、長さ方向910mmに切断し、厚さ45mmの面材付きフェノール樹脂発泡体を製造した。
上記の方法で、密度、平均気泡径、独立気泡率、平衡含水率、湿潤含水率をそれぞれ測定し、含水率差を求めた。結果を表2に示す。
Figure 0006159466
Figure 0006159466
表2の結果に示されるように、平衡含水率を6質量%以下とした例1〜8では、含水率差が小さくて、雰囲気の湿度上昇による吸水が少ないフェノール樹脂発泡体が得られた。フェノール樹脂発泡体の物性も良好であった。
一方、平衡含水率が6質量%を超える例9、10で得られたフェノール樹脂発泡体は、含水率差が大きく、雰囲気の湿度上昇による吸水が多いものであった。

Claims (3)

  1. フェノール樹脂と、界面活性剤と、ハロゲン化不飽和炭化水素および飽和炭化水素を含む発泡剤(ただし、2種以上のハロゲン化炭化水素を含む発泡剤は除く。)と、を含み、
    前記ハロゲン化不飽和炭化水素が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり
    前記発泡剤における前記ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量が30質量%以上であり、
    前記界面活性剤のHLBが8〜18であり、
    密度が15〜50kg/m、平均気泡径が50〜150μm、独立気泡率が90%以上であり、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率が6質量%以下であり、温度23℃、相対湿度90%における湿潤含水率と、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率との差が2質量%以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
  2. 請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体の製造方法であって、
    フェノール樹脂、ハロゲン化不飽和炭化水素および飽和炭化水素を含む発泡剤(ただし、2種以上のハロゲン化炭化水素を含む発泡剤は除く。)、界面活性剤及び酸触媒を含む発泡性フェノール樹脂組成物を加熱して、発泡し、硬化させる発泡硬化工程を有し、
    前記ハロゲン化不飽和炭化水素が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり
    前記発泡剤における前記ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量が30質量%以上であり、
    前記界面活性剤のHLBが8〜18であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体の製造方法。
  3. フェノール樹脂と、界面活性剤と、ハロゲン化不飽和炭化水素および飽和炭化水素のみを含む発泡剤と、を含み、
    前記ハロゲン化不飽和炭化水素が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含み、
    前記発泡剤における前記ハロゲン化不飽和炭化水素の含有量が30質量%以上であり、
    前記界面活性剤のHLBが8〜18であり、
    密度が15〜50kg/m、平均気泡径が50〜150μm、独立気泡率が90%以上であり、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率が6質量%以下であり、温度23℃、相対湿度90%における湿潤含水率と、温度23℃、相対湿度50%における平衡含水率との差が2質量%以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
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