JP6936023B2 - フェノール樹脂発泡体 - Google Patents
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Description
フェノール樹脂発泡体は通常、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒(硬化剤)等を含む発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させることによって製造される。このようにして製造されたフェノール樹脂発泡体は独立気泡を有し、独立気泡中には発泡剤から発生したガスが含まれる。
独立気泡のセル径は熱伝導率や断熱性に影響する。このセル径を調整する目的で、発泡性フェノール樹脂組成物に可塑剤を添加し、その粘度を低下させることが一般的に行われている(特許文献1〜3参照)。
[2] 塩素及びフッ素の少なくとも一方と2重結合を有するハロゲン化不飽和炭化水素と、前記ハロゲン化不飽和炭化水素以外の塩素化炭化水素又は炭化水素と、を含み、独立気泡率が80%以上であり、平均気泡径が130μm以下であり、pHが2.5〜6未満であることを特徴とする[1]に記載のフェノール樹脂発泡体。
発泡性フェノール樹脂組成物は、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。
発泡性フェノール樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒および界面活性剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
前記フェノール樹脂は、レゾール樹脂(レゾール型のフェノール樹脂)であることが好ましい。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノールおよびこれらの変性物等が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。ただしフェノール化合物、アルデヒド、アルカリ触媒はそれぞれ上記のものに限定されるものではない。
フェノール化合物とアルデヒドとの使用割合は特に限定されない。好ましくは、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1〜1:3であり、より好ましくは1:1.3〜1:2.5である。
発泡剤は、炭化水素、又はハロゲン化炭化水素から選択でき、これらを併用しても良い。特に、ハロゲン化不飽和炭化水素は難燃性であるため、イソペンタン等の脂肪族炭化水素を用いる場合に比べて、フェノール樹脂発泡体の難燃性が優れる。
炭化水素としては、炭素数が4〜6の環状分子構造又は炭素数4〜6の鎖状分子構造を有するものが好ましく、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。これらの炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
これらの炭化水素は、低温域(例えば、−80℃程度の冷凍庫用断熱材)から高温域(例えば200℃程度の加熱体用断熱材)までの広い温度範囲で優れた断熱性能を確保でき、比較的安価であり経済的にも有利である。
ハロゲン化炭化水素としては、ハロゲン化不飽和炭化水素であってもよいし、ハロゲン化飽和炭化水素であってもよい。
上記の中でも、オゾン層破壊係数が低く、環境適合性に優れる点で、イソプロピルクロライドが好ましい。
フッ素化飽和炭化水素としては、例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3−ペンタフルオプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオブタン(HFC365mfc)及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内にフッ素と2重結合を含むものが挙げられ、例えば、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)(E及びZ異性体)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO1336mzz)(E及びZ異性体)(SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300−3−Z6)等の特表2009−513812号公報等に開示されるものが挙げられる。
塩素化炭化水素は、フェノール樹脂発泡体の発泡剤として従来用いられているが、1種単独では、フェノール樹脂発泡体の平均気泡径が大きく、熱伝導率が高くなる。フッ素化不飽和炭化水素を併用することで、平均気泡径が小さく、熱伝導率が低くなり、フェノール樹脂発泡体の断熱性が向上する。また、ハロゲン化不飽和炭化水素は燃焼性が低いので、フェノール樹脂発泡体の難燃性が向上する。
炭化水素又は塩素化炭化水素はハロゲン化不飽和炭化水素よりも分子量が小さい傾向がある。量が同じであれば、分子量が小さい方が、発泡したときの体積が大きい。そのため、炭化水素又は塩素化炭化水素の割合が多い方が、少量の発泡剤で充分に発泡させやすい。また、炭化水素又は塩素化炭化水素はハロゲン化不飽和炭化水素よりも安価な傾向がある。これらの観点から、炭化水素又は塩素化炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素との質量比は、炭化水素又は塩素化炭化水素:ハロゲン化不飽和炭化水素=9.9:0.1〜5:5であることが好ましく、9:1〜7:3であることがより好ましい。上記範囲内でハロゲン化不飽和炭化水素の比率が低いほど、優れた断熱性を保ちつつコストを低くできる。
一方で、ハロゲン化不飽和炭化水素は炭化水素又は塩素化炭化水素よりも熱伝導率が低い傾向がある。そのため、より優れた断熱性を得る観点から、炭化水素又は塩素化炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素との質量比は、炭化水素又は塩素化炭化水素:ハロゲン化不飽和炭化水素=5:5〜0.1:9.9であることが好ましい。上記範囲内でハロゲン化不飽和炭化水素の比率が高いほど、熱伝導率が低くなり、断熱性が高まる。
また、それらの沸点の差は2℃以上30℃以下であることが好ましく、5℃以上20℃以下がより好ましい。沸点の差が上記上限値より大きいと、先にガス化して気泡核を形成したハロゲン化不飽和炭化水素が、より沸点の高い塩素化炭化水素がガス化するまでに気泡から抜けてしまい、発泡が不十分となるおそれがある。沸点の差が上記下限値より小さいと、十分に気泡核を形成しないまま塩素化炭化水素が発泡してしまい、気泡径が粗大になるおそれがある。
そのため、例えば、塩素化炭化水素として沸点36℃であるイソプロピルクロライドを選択した場合には、ハロゲン化不飽和炭化水素としては、沸点が6℃以上34℃以下の沸点を有するものを選択するのが好ましく、常温付近での取り扱いのしやすい点で、14℃以上34℃以下の沸点を有するものを選択するのがより好ましい。
なお、前記発泡剤はカルボン酸を有しないことが好ましい。
フェノール樹脂発泡体に含まれる2種以上の発泡剤の組成は、たとえば、以下の溶媒抽出法により確認できる。
予め発泡剤の標準ガスを用いて、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC/MS)での以下の測定条件における保持時間を求める。次に、上下の面材を剥がしたフェノール樹脂発泡体のサンプル1.6gを粉砕用ガラス容器に分取し、テトラヒドロフラン(THF)80mLを添加する。サンプルが溶媒に浸る程度に押しつぶした後、ホモジナイザーで1分30秒間粉砕抽出し、この抽出液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液をGC/MSに供する。発泡剤の種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定を行う。また、他の発泡剤の種類は、保持時間とマススペクトルによって同定を行う。発泡剤成分の検出感度を各々標準ガスによって測定し、上記GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成(質量比)を算出する。
・GC/MS測定条件
使用カラム:DB−5ms(アジレントテクノロジー社)60m、内径0.25mm、膜厚1μm
カラム温度:40℃(10分)−10℃/分−200℃
注入口温度:200℃
インターフェイス温度:230℃
キャリアガス:He 1.0mL/分
スプリット比:20:1
測定方法:走査法 m/Z=11〜550
酸触媒は、レゾール樹脂を硬化させるために使用される。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記有機酸は、カルボン酸以外の有機酸であることが好ましい。
界面活性剤は、気泡径(セル径)の微細化に寄与する。
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、気泡径の小さい気泡を形成しやすい点で、ひまし油アルキレンオキシド付加物およびシリコーン系界面活性剤のいずれか一方または両方を含むことが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物としては、ひまし油EO付加物、ひまし油PO付加物が好ましい。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体は、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとのブロック共重合体である。ブロック共重合体の構造は、特に限定されず、例えばシロキサン鎖の両方の末端にポリエーテル鎖が結合したABA型、複数のシロキサン鎖と複数のポリエーテル鎖が交互に結合した(AB)n型、分岐状のシロキサン鎖の末端それぞれにポリエーテル鎖が結合した枝分かれ型、シロキサン鎖に側基(末端以外の部分に結合する基)としてポリエーテル鎖が結合したペンダント型等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンにおけるオキシアルキレン基の炭素数は2または3が好ましい。
ポリオキシアルキレンを構成するオキシアルキレン基は、1種でもよく2種以上でもよい。
ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体の具体例としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシプロピレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。
本発明にかかるフェノール樹脂発泡体は、可塑剤を実質的に含まない。
前記可塑剤は、COOH基又はOH基を有する分解物を生成し得るものであり、公知のエステル化合物が該当する。このような可塑剤としては、例えば、多価酸(例えば多価カルボン酸)と1価又は多価アルコールとが反応して得られるエステルが挙げられ、具体的には、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル等が挙げられる。フタル酸エステルとしては、フタル酸とジエチレングリコールの反応生成物であるポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
可塑剤の分解物のうち、特に多価カルボン酸及び多価アルコールが、フェノール樹脂発泡体の吸湿性を増大させる原因となる。
また、可塑剤の分解物である多価カルボン酸や多価アルコールは、界面活性剤によって安定化された気泡の気液界面に入り込んで不安定化させ、気泡を合一させるなどする抑泡剤として働き、フェノール樹脂発泡体の気泡径にも悪影響を及ぼしている可能性がある。
より具体的には、例えば、フェノール樹脂発泡体試料1gを粉砕し、メタノール150mlにてソックスレー抽出を7時間程度行う。この抽出液をエバポレーターにて40℃で濃縮乾固し、さらに真空乾燥を常温、30℃で行って得た乾燥試料をメタノール5mlに溶解した溶液試料を前記方法により分析する。その分析条件の詳細については、例えば、特許文献1の段落0074の記載を参照して以下の様に行うことができる。
フェノール樹脂発泡体中に可塑剤が含まれているか否かは以下の方法により確認することができる。
フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体部分から採取した試料1gを粉砕し、メタノール(150mL)にてソックスレー抽出を行う(7時間)。エバポレーターにて40℃で濃縮乾固させた後、真空乾燥(常温、30分間)を行う。乾燥質量を測定した後、メタノール5mLに溶解し、得られたメタノール溶液を用いて以下の(1)〜(3)の何れかの方法で分析測定を行う。
(1)ガスクロマトグラフィー/質量(GC/MS)分析測定
GC/MS分析条件として、以下の装置及び条件を選択することができる。
GC装置:Agilent Technologies 7890A
注入口温度:320℃
カラム:DB−1MS(30m×0.25mmφ)、液相厚0.25μm
カラム温度:40℃(5分保持)、20℃/分昇温、320℃(11分保持)
MS装置:Agilent Technologies 5975C MSD
イオン源温度:230℃
インターフェイス温度:300℃
イオン化方法:電子イオン化法
(2)液体クロマトグラフィー/質量(LC/MS)分析測定
LC/MS分析条件として、以下の装置及び条件を選択することができる。
LC装置:Waters, UPLC
カラム:Shiseido,CAPCELL PAK C18 IF2 2um(2.1mmI.D.×50mm)
カラム温度:40℃
検出PDA:210〜400nm
流速:0.3mL/分
移動相:A=10mM Ammonium acetate
B=10nM Ammonium acetate/AcCN/IPA(1/4/5)
MS装置:Waters、Synapt G2
イオン化方法:ESI+
スキャンレンジ:m/z150〜3000
(3)1H−NMR測定
メタノール溶液を1.0mL採取し、採取した溶液を風乾後、真空乾燥したもの(メタノール抽出乾固物)に重水素化クロロホルムを添加し、1H−NMR測定を実施する。例えば、以下の装置及び測定条件を選択することができる。
装置:JEOL RESONANCE JNM−ECS400
共鳴周波数:400MHz
パルス幅:45°
溶媒:重水素化クロロホルム
化学シフト基準:テトラメチルシラン(TMS)0ppm
他の成分としては、発泡性フェノール樹脂組成物の添加剤として公知のものを用いることができ、例えば尿素、充填剤、難燃剤(例えばリン系難燃剤等)、架橋剤、有機溶媒、アミノ基含有有機化合物、着色剤等が挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛等の金属粉末、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。ただし、酸触媒として強酸を使用する場合には、金属粉末、炭酸塩は、ポットライフの調整に影響がない範囲で添加する必要がある。これらの無機フィラーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用されてもよい。
各成分の混合順序は特に限定されないが、例えばフェノール樹脂に界面活性剤、必要に応じて他の成分を加えて全体を混合し、この混合物に発泡剤、酸触媒を添加し、この組成物をミキサーに供給して攪拌することにより発泡性フェノール樹脂組成物を調製できる。
フェノール樹脂発泡体の製造は、公知の方法により実施できる。例えば発泡性フェノール樹脂組成物を30〜95℃で加熱して発泡、硬化することにより、フェノール樹脂発泡体を製造することができる。
面材としては、特に制限されず、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等からなる合成繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、珪酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種が好適である。
面材は、フェノール樹脂発泡体の片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。両面に設ける場合、各面材は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
フェノール樹脂発泡体を製造する際に面材を設ける方法としては、例えば、連続走行するコンベアベルト上に面材を配置し、該面材上に発泡性フェノール樹脂組成物を吐出し、その上に他の面材を積層した後、加熱炉を通過させて発泡成形する方法が挙げられる。これにより、シート状のフェノール樹脂発泡体の両面に面材が積層した面材付きフェノール樹脂発泡体が得られる。
面材は、発泡成形の後、接着剤を用いてフェノール樹脂発泡体に貼り合わせて設けてもよい。
ガラス繊維混抄紙を用いる場合には、目付は30g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、50g/m2以上250g/m2以下であることがより好ましく、60g/m2以上200g/m2以下であることがさらに好ましく、70g/m2以上150g/m2以下であることが特に好ましい。
ガラス繊維不織布を用いる場合には、目付は15g/m2以上300g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以上200g/m2以下であることがより好ましく、30g/m2以上150g/m2以下であることがさらに好ましい。
目付が上記下限値以上であれば、発泡性フェノール樹脂組成物が面材の表面にしみ出しにくい。目付が上記上限値以下であれば、発泡体と面材との接着性を高められる。これにより、面材が発泡体から剥がれにくくなり表面をより美麗にできる。加えて、後述する製造方法において、コンベア等の搬送機器に追従させやすくなり、フェノール樹脂発泡体の生産性を高めやすい。
本発明のフェノール樹脂発泡体のpHは、2.5〜6未満であり、2.5〜5未満であることが好ましい。ここで、フェノール樹脂発泡体のpHは、前述した抽出pHとして求められる測定値である。上記範囲内であると、フォーム形成時の発泡硬化反応が良好となる。上記範囲の下限値未満であると、フェノール樹脂発泡体と接触する資材に錆や腐食が発生する恐れがある。上記範囲の上限値超であると、フォーム形成時の発泡硬化反応に支障が出る恐れがある。また、上記範囲の上限値超に調整するためには炭酸カルシウムなどの中和剤を過剰に添加する必要があり、熱伝導率が悪化する恐れがある。
本発明のフェノール樹脂発泡体の吸水量(単位:g/100cm2)は、3.0以下であり、この値は小さいほど好ましい。下限値は特に限定されない。吸水量が少ないほど、フェノール樹脂発泡体の吸湿性が低下し、フェノール樹脂発泡体の腐食、フェノール樹脂発泡体に接する資材の腐食、カビの発生等を防ぐことができる。
本発明のフェノール樹脂発泡体中には、複数の気泡が形成されている。複数の気泡の少なくとも一部は、気泡壁に実質的に孔が存在せず、相互に連通していない独立気泡になっていることが好ましい。独立気泡中には、発泡剤として用いた2種以上のハロゲン化炭化水素のガスが保持されていることが好ましい。
本発明のフェノール樹脂発泡体の独立気泡率をJIS K 7138:2006に準拠して測定した値は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。独立気泡率がこのように高い値であると、フェノール樹脂発泡体中の上記ガスの保持率が高まり、断熱性や不燃性を高めることができる。また、外部の水分がフェノール樹脂発泡体内に浸透し難くなるので、吸湿性を低減することができる。
本発明のフェノール樹脂発泡体における平均気泡径は、130μm以下が好ましく、50〜130μmがより好ましく、50〜120μmがより好ましく、60〜100μmがさらに好ましい。ここで平均気泡径は後述する方法によって測定される。
平均気泡径が上記範囲であれば、気泡内での対流や輻射が抑制され、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率が低く、断熱性に優れる。
また、上記範囲の下限値以上であると、単位体積当たりの気泡数が適度に少なくなり、気泡壁の1枚当たりの厚さが厚くなる結果、外部の水分がフェノール樹脂発泡体の内部へ浸透し難くなり、フェノール樹脂発泡体の吸湿性がより小さくなるので好ましい。
また、上記範囲の上限値以下であると、単位体積当たりの気泡数が適度に多くなり、熱伝導率が良好になり(即ち、熱伝導率が低くなり)、さらに、気泡壁の数が多くなる結果、外部の水分がフェノール樹脂発泡体の内部へ浸透し難くなり、フェノール樹脂発泡体の吸湿性がより小さくなるので好ましい。
本発明のフェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、0.019W/m・K以下が好ましく、0.018W/m・K以下がより好ましい。熱伝導率が0.019W/m・K以下であれば、断熱性に優れる。熱伝導率は、JIS A 1412−2に準拠して測定される。測定値は、同じ試料について2回以上測定した平均値とする。
本発明のフェノール樹脂発泡体の制限酸素指数(Limited Oxygen Index;以下「LOI」ともいう。)は、28%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。
LOIは、規定の条件下で、試料が有炎燃焼を維持するのに必要な23℃±2℃の酸素と窒素との混合ガスの最小酸素濃度%(体積分率)であり、燃焼性の指標である。LOIが大きいほど燃焼性が低いことを示し、一般に、LOIが26%以上であれば難燃性を有すると判断されている。LOIは、JIS K 7201−2:2007に準拠して測定される。
本発明のフェノール樹脂発泡体の密度(JIS A 9511:2009)は、10kg/m3以上であることが好ましく、20〜100kg/m3がより好ましく、25〜35kg/m3が最も好ましい。
本発明のフェノール樹脂発泡体の脆性(JIS A 9511:2003)は、20%以下であることが好ましく、10〜18%がより好ましい。
まず、後述の実施例および比較例で用いた測定方法を以下に示す。
フェノール樹脂発泡体の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出した。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影した。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引いた。
この際、ボイド(2mm2以上の空隙)を避けるように直線を引いた。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400−1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求めた。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とした。
吸水量を、JIS A 9511に従い測定した。
成形後の型枠における面材と接触していた面について、面材からしみ出したフェノール樹脂の跡の有無を目視で確認した。
フェノール樹脂の滲み出した跡は無かった:○
フェノール樹脂の滲み出した跡が有った:×
ここで滲み出し跡が有った場合、硬化前のフェノール樹脂組成物が面材から滲み出して、成形時の型枠に張り付く問題が生じたことを意味する。
JIS A 1412−2:1999に準拠し、以下の方法で10℃と23℃における初期熱伝導率を測定した。
縦横300mm角のフェノール樹脂発泡体を、試片を23±1℃・湿度50±2%の雰囲気に入れ、24時間ごとに質量の経時変化を測定し、24時間経過の質量変化が0.2質量%以下になるまで、状態調節をした。状態調節された試片は、同環境下に置かれた熱伝導率装置に導入した。
熱伝導率測定の際には、発泡体を傷つけないように面材を剥がした。10℃の初期熱伝導率は低温板0℃高温板20℃の条件で、23℃の初期熱伝導率は低温板13℃高温板33℃の条件で測定した。各測定は、それぞれ試験体1枚・対称構成方式の測定装置(英弘精機社、商品名「HC−074/600」)を用いて行った。
液状レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:PF−339)100質量部に、界面活性剤としてひまし油EO付加物(付加モル数30)又はシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製、品番「SF−2936F」、ポリエーテル鎖の末端:−OH)4質量部、ホルムアルデヒドキャッチャー剤として尿素4質量部を加えて混合し、20℃で8時間放置した。
このようにして得られた混合物108質量部に対し、表1に示す発泡剤1及び発泡剤2の混合物10.5質量部を加え、酸触媒としてパラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸との混合物16質量部を加え、攪拌、混合して発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。
なお、比較例においては、可塑剤としてフタル酸とジエチレングリコールとをモル比1:2で反応させてなるポリエステルポリオール5質量部を加えた。
この発泡性フェノール樹脂組成物を、面材(材質:ポリエステル、目付:30g/m2)を敷いた300×300×45mmの型枠に吐出し、その上に同じ面材を載せて70℃の乾燥機中で300秒間加熱して発泡成形した後、成型物を型枠から取り出し、85℃の乾燥機に入れ、5時間養生させてフェノール樹脂発泡体を作製した。得られたフェノール樹脂発泡体の抽出pHを測定したところ、いずれもpH6未満であった。
・NP:ノルマルペンタン
・IP:イソペンタン
・IPC:イソプロピルクロリド
・mzz:シス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO1336mzz−Z)
・zd:トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO1233zd−E)
表1における発泡剤1と発泡剤2の比率は質量基準である。
Claims (1)
- フェノール樹脂と、塩素化炭化水素と、ハロゲン化不飽和炭化水素とを含み、
可塑剤を実質的に含まず、吸水量が2.1〜2.6g/100cm 2 であり、pHが2.5〜6未満であり、
前記塩素化炭化水素がイソプロピルクロライドであり、
前記ハロゲン化不飽和炭化水素が1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン及び1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンから選ばれる1種以上であり、
独立気泡率が80%以上であり、
平均気泡径が50〜100μmであり、
熱伝導率が0.0186W/m・K以下であり、
両面に面材が積層され、前記面材がポリエステル繊維不織布であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
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