JP2017148008A - プライマー及びマイコプラズマ・ニューモニエの検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】試料中に存在するマイコプラズマ・ニューモニエを特異的に増幅し、かつ偽陽性が発生しにくい検出方法の提供。【解決手段】試料中に含まれるマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAもしくは23S rDNAの特定塩基配列の3’末端部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、前記特定塩基配列の5’末端部と相同的な配列を有する第二のプライマーとからなる、前記特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸を増幅するためのプライマーセットであって、第一のプライマーが、特定の配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが、異なる特定の配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである、前記プライマーセット及び前記セットを用いて、マイコプラズマ・ニューモニエを検出する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、試料中に含まれるマイコプラズマ・ニューモニエを迅速、高感度かつ特異的に検出するためのオリゴヌクレオチドプライマー、および当該プライマーを用いたマイコプラズマ・ニューモニエの検出方法に関する。
マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)は人に感染すると気管支炎と肺炎(以下マイコプラズマ肺炎)といった疾患を引き起こし、市中肺炎としての頻度も高い。日本では晩秋から早春にかけて報告数が多くなり、罹患年齢は幼児期、学童期、青年期が中心である。従来4年周期での流行がみられたが、近年この傾向は崩れつつある。昔から「異形肺炎」として、肺炎にしては元気で一般状態も悪くないことが特徴とされてきたが、重症肺炎となることもある(非特許文献1)。マイコプラズマ・ニューモニエには通常外来でよく使用されるβ−ラクタム系の抗菌薬が効かず、適切かつ迅速な治療が必要となる。
臨床的に用いられているマイコプラズマ・ニューモニエの検出法として、マイコプラズマ・ニューモニエ抗原に対する抗体を用いて検出する方法や、マイコプラズマ・ニューモニエ特異的IgM抗体を測定する方法、マイコプラズマ・ニューモニエ特有の塩基配列を増幅して検出する方法等があげられる。しかし、マイコプラズマ・ニューモニエ抗原に対する抗体を用いて検出する方法は感度が60%程度と低く、一部市販キットでは近縁種であるマイコプラズマ・ゲニタリウムと交差反応を示すことが知られている。マイコプラズマ・ニューモニエ特異的IgM抗体を測定する方法は異なる日に2回血液を採取する必要があり、迅速性が無い。LAMP法(特許文献1、非特許文献2)、PCR法(非特許文献3、非特許文献4)等の核酸増幅による検出法は、感度、特異性とも極めて高いが、検査に時間がかかり迅速性が不足しており、操作が煩雑である。このため、感度が高く迅速で簡便な検査が望まれている。
本発明で使用されたTRC法(特許文献2、特許文献3)では精製から検出まで一体となった装置が市販されており、1時間程度で結果を得ることができるため、十分な迅速性を備えている。また、感度、特異度ともに他の核酸増幅による検出法と遜色はない。
増幅対象核酸がマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA(リボゾーム RNA)またはその遺伝子の場合、他の菌種の23S rRNA(またはその遺伝子)との間で塩基配列の相同性が高いものが多数存在する。特に、マイコプラズマ・ゲニタリウムとは23S rRNAの相同性が96%もある。このため、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAまたはその遺伝子を高感度かつ特異的に検出するプライマーセットやオリゴヌクレオチドプローブを設計することは極めて困難であった。特に比較的低温の一定温度(例えば、40℃から50℃)条件下でRNAの増幅が可能な増幅方法を利用する場合、増幅対象核酸が高次構造を形成しやすくなるため、当該プライマーセットやオリゴヌクレオチドプローブの設計はさらに困難であった。
特開2009−131174号公報 特開2000−14400号公報 特開2001−37500号公報
感染症の辞典(2004) 日本臨床微生物学雑誌Vol. 23 No. 2 2013. J Infect Dis.(1996)173(6):1445−1452. 国立感染症研究所「マイコプラズマ肺炎検査マニュアル」
本発明の目的は、試料中に存在するマイコプラズマ・ニューモニエに由来する核酸を高感度、迅速に増幅し、かつ偽陽性が発生しにくい特異的なオリゴヌクレオチドプライマー、および当該プライマーを用いたマイコプラズマ・ニューモニエの検出方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下のとおりである。
(1) 試料中に含まれるマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAもしくは23S rDNAの特定塩基配列の3’末端部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、前記特定塩基配列の5’末端部と相同的な配列を有する第二のプライマーとからなる、前記特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸を増幅するためのプライマーセットであって、
第一のプライマーが、配列番号1または8に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドであり、
第二のプライマーが、配列番号11または20に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである、
前記プライマーセット。
(2) 第一のプライマーが少なくとも22塩基からなり、第二のプライマーが少なくとも17塩基からなるオリゴヌクレオチドである、(1)に記載のプライマーセット。
(3) 第一のプライマーが、配列番号2または9に記載の塩基配列中、少なくとも連続する22塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、
第二のプライマーが、配列番号12または21に記載の塩基配列中、少なくとも連続する17塩基からなるオリゴヌクレオチドである、
(1)または(2)に記載のプライマーセット。
(4) 第一のプライマーが配列番号3から7または10のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
第二のプライマーが、配列番号13から19または22から28のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、
(1)〜(3)いずれかに記載のプライマーセット。
(5) (1)から(4)のいずれかに記載のプライマーセットで増幅した特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸を、前記核酸の一部とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能な、インターカレーター性蛍光色素を標識したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAを検出する方法。
(6) (1)から(4)のいずれかに記載のプライマーセットと、配列番号29または31に記載の塩基配列またはその相補配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドにインターカレーター性蛍光色素を標識した核酸プローブとを含む、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA検出試薬。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明中において試料とは、咽頭ぬぐい液、喀痰、培養液などがあげられる。
本発明において特定塩基配列とは、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAのうち、第ニのプライマーとの相同領域の5’末端から第一のプライマーとの相補領域の3’末端までの塩基配列のことをいう。すなわち本発明では前記特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸が増幅されることになる。
本発明におけるストリンジェントな条件の例として、42℃において、50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%のポリビニルピロリドン、50mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)、150mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムが存在する条件や、本明細書の実施例に記載の核酸増幅条件があげられる。また、前述したストリンジェントな条件下で、前記特定塩基配列と、十分に特異的かつ高効率にハイブリダイゼーション可能であれば、第一及び第二のプライマーの塩基配列は、前記特定塩基配列と比較して置換、欠失、付加、修飾があってもよい。第一及び第二のプライマーの長さは任意に設定できるが、好ましくは10塩基から50塩基までの範囲である。なお、もっとも好ましい態様では、ストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドとは、対象塩基配列に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドである。
本発明は、試料中に含まれるマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAの特定塩基配列の3’末端部と相補的な配列を有する第一のプライマーとして、配列番号1に記載の塩基配列(GenBank No.NR_077056.1の2171番目から2210番目までの塩基配列)または配列番号8に記載の塩基配列(GenBank No.NR_077056.1の2324番目から2345番目までの塩基配列)とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを、また試料中に含まれるマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAの特定塩基配列の5’末端部と相同的な配列を有する第二のプライマーとして、配列番号11に記載の塩基配列(GenBank No.NR_077056.1の1853番目から1890番目までの塩基配列の相補配列)または配列番号20に記載の塩基配列(GenBank No.NR_077056.1の2084番目から2130番目までの塩基配列の相補配列)とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを、それぞれ用いることを特徴としている。
その中でも第一のプライマーが少なくとも22塩基からなり、第二のプライマーが少なくとも17塩基からなることが好ましい。
第一のプライマーの一例として、配列番号1に記載の塩基配列の相補配列である配列番号2に記載の塩基配列中、少なくとも連続する22塩基からなるオリゴヌクレオチドがあげられ、さらに具体的な例として、配列番号3(GenBank No.NR_077056.1の2183番目から2209番目までの塩基配列の相補配列)、配列番号4(GenBank No.NR_077056.1の2184番目から2208番目までの塩基配列の相補配列)、配列番号5(GenBank No.NR_077056.1の2183番目から2206番目までの塩基配列の相補配列)、配列番号6(GenBank No.NR_077056.1の2186番目から2210番目までの塩基配列の相補配列)および配列番号7(GenBank No.NR_077056.1の2171番目から2297番目までの塩基配列の相補配列)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。
また第一のプライマーの一例として、配列番号8に記載の塩基配列の相補配列である配列番号9に記載の塩基配列中、少なくとも連続する22塩基からなるオリゴヌクレオチドがあげられ、さらに具体的な例として、配列番号10(GenBank No.NR_077056.1の2324番目から2345番目までの塩基配列の相補配列)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。
第ニのプライマーの一例として、配列番号11に記載の塩基配列の相補配列である配列番号12に記載の塩基配列中、少なくとも連続する17塩基からなるオリゴヌクレオチドがあげられ、さらに具体的な例として、配列番号13(GenBank No.NR_077056.1の1866番目から1890番目までの塩基配列)および配列番号14(GenBank No.NR_077056.1の1868番目から1890番目までの塩基配列)、配列番号15(GenBank No.NR_077056.1の1855番目から1882番目までの塩基配列)、配列番号16(GenBank No.NR_077056.1の1862番目から1878番目までの塩基配列)、配列番号17(GenBank No.NR_077056.1の1856番目から1878番目までの塩基配列)、配列番号18(GenBank No.NR_077056.1の1865番目から1890番目までの塩基配列)、配列番号19(GenBank No.NR_077056.1の1853番目から1882番目までの塩基配列)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。
また第ニのプライマーの一例として、配列番号20に記載の塩基配列の相補配列である配列番号21に記載の塩基配列中、少なくとも連続する17塩基からなるオリゴヌクレオチドがあげられ、さらに具体的な例として、配列番号22(GenBank No.NR_077056.1の2090番目から2119番目までの塩基配列)、配列番号23(GenBank No.NR_077056.1の2084番目から2113番目までの塩基配列)、配列番号24(GenBank No.NR_077056.1の2103番目から2130番目までの塩基配列)、配列番号25(GenBank No.NR_077056.1の2101番目から2122番目までの塩基配列)、配列番号26(GenBank No.NR_077056.1の2085番目から2111番目までの塩基配列)、配列番号27(GenBank No.NR_077056.1の2086番目から2113番目までの塩基配列)、配列番号28(GenBank No.NR_077056.1の2090番目から2119番目までの塩基配列)に記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。
中でもマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAを迅速かつ特異的に検出可能であるという点で、第一のプライマーが配列番号3、5、6、7、10のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが、配列番号13、16、17、18、22のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマーセットが好ましい。その中でも第一のプライマーと第二のプライマーの組み合わせが、配列番号3と13、3と16、5と16、5と17、6と17、7と18、7と17、10と22のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであるプライマーセットが更に好ましい。
本発明のプライマーセットは、RT−PCR法等、当業者が通常用いる核酸増幅法を利用した、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAの特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸を増幅するためのプライマーセットとして有用である。なお、第一または第二のプライマーのいずれか一方の5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーターをさらに付加させると、前記プロモーターに対応したRNAポリメラーゼを用いて、RNAポリメラーゼのプロモーターを付加した特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸が合成されるため、これら核酸からNASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)法、TMA(Transcription−Mediated Amplification)法、TRC(Transcription−Reverse transcription Concerted reaction)法といった一定温度でRNAを増幅する方法を用いて、RNAを増幅させることができる点で好ましい。プライマーの5’末端側に付加するプロモーターは、RNA増幅に用いるRNAポリメラーゼ(例えば、分子生物学の分野で汎用される、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼやSP6 RNAポリメラーゼ)に対応したプロモーターを用いればよい。また前記プロモーターに、転写効率に影響を及ぼすことが知られている転写開始領域をさらに付加してもよい。RNA増幅に用いるRNAポリメラーゼとしてT7 RNAポリメラーゼを用いたときの、プライマーの5’末端側に付加するプロモーター(T7プロモーター)の具体例として、配列番号33に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。
本発明のプライマーセットを用いて増幅したマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAの特定塩基配列またはその相補配列を含む核酸の検出は、従来から知られた核酸検出方法を利用することができる。具体的には、
(A)電気泳動や液体クロマトグラフィーを用いた方法、
(B)検出可能な標識で標識されたオリゴヌクレオチドプローブによるハイブリダイゼーション法、
(C)当該増幅産物の塩基配列の一部とハイブリダイズすることで蛍光特性が変化するように設計された蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブを用いた方法、
などがあげられる。前記(C)の蛍光色素標識プローブの一例として、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用した蛍光標識プローブや、インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブがあげられる。
前記インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブの一例として、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAの特定塩基配列または当該特定塩基配列の相補配列を含む核酸の一部とストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドの3’末端側、5’末端側、リン酸ジエステル部または塩基部分に、適当なリンカーを介してインターカレーター性蛍光色素を標識したオリゴヌクレオチドプローブがある。前記プローブはマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAの特定塩基配列(または当該特定塩基配列の相補配列)と相補的2本鎖を形成すると、インターカレーター性蛍光色素部分が前記相補的2本鎖部分にインターカレートすることで蛍光特性が変化するプローブである。標識するインターカレーター性蛍光色素に特に限定はなく、オキサゾールイエロー、チアゾールオレンジ、エチジウムブロマイド、ヘミシアニン等の汎用されている蛍光色素、およびこれらの誘導体の中から、蛍光強度や蛍光特性を考慮して、適宜選定すればよい。なお3’末端側に蛍光色素を標識する場合を除き、オリゴヌクレオチドの3’末端側は当該末端側からの核酸伸長反応を防止する意味で、グリコール酸などの適当な修飾がされているとよい。
前記インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを構成するオリゴヌクレオチドの好ましい例として、配列番号29または31に記載の塩基配列またはその相補配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドを上げることができる。更に好ましくは、配列番号30に記載の塩基配列(GenBank No.NR_077056.1の2095番目から2112番目までの塩基配列)またはその相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド、配列番号32に記載の塩基配列(GenBank No.NR_077056.1の2193番目から2208番目までの塩基配列)またはその相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドがあげられる。
本発明のプライマーセットを用いてマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAを検出するには、例えば以下の(1)から(6)に示す工程により実施すればよい。
(1)配列番号1または8に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである第一のプライマーがマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAにハイブリダイズし、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により、特定塩基配列に相補的なcDNAを合成し、前記RNAとのRNA−DNA2本鎖を生成する工程、
(2)リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素により、前記RNA−DNA2本鎖のRNAを分解する工程(1本鎖DNAの生成)、
(3)該1本鎖DNAに、配列番号11または20に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである第二のプライマーがハイブリダイズし(ここで前記第一または第二のプライマーのいずれか一方はその5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーターが付加される)、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により、特定塩基配列または特定塩基配列に相補的な配列のRNAを転写可能なプロモーターを含む2本鎖DNAを生成する工程、
(4)RNAポリメラーゼ活性を有する酵素により前記2本鎖DNAを鋳型とするRNA転写産物を生産する工程、
(5)該RNA転写産物が、前記(1)の反応におけるcDNA合成の鋳型となることで、連鎖的にRNA転写産物を生成する工程、
(6)配列番号29または31またはその相補配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドにインターカレーター性蛍光色素を標識したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、前記RNA転写産物量を経時的に測定する工程。
前記(1)の工程で用いるRNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、前記(2)の工程で用いるRNase H活性を有する酵素、および前記(3)の工程で用いるDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素は、それぞれ別個あるいは種々の組合せで添加することもできるが、前記活性を併せ持つレトロウイルス由来の逆転写酵素を使用することもできる。該逆転写酵素は特に限定されないが、分子生物学の分野で汎用される、AMV(Avian Myeloblastosis Virus)逆転写酵素、MMLV(Molony Murine Leukemia Virus)逆転写酵素、RAV(Rous Associated Virus)逆転写酵素、HIV(Human Immunodeficiency Virus)逆転写酵素などが使用できる。
前述した態様によるマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA検出方法における反応温度は、使用する各酵素の耐熱性や活性、ならびにプライマー/プローブのTm等に依存するが、使用する酵素がAMV逆転写酵素およびT7 RNAポリメラーゼであり、プライマー/プローブの長さが17から30塩基の範囲である場合は、35から65℃の範囲で反応温度を設定すればよく、40から50℃の範囲で設定するとより好ましい。
前述した態様によるマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA検出方法は、蛍光強度を経時的に測定することから有意な蛍光増加が認められた任意の時間で測定を終了することが可能であり、核酸増幅および測定をあわせて通例20分以内で終了することが可能である。
前述した態様によるマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA検出方法は、前述した第一のプライマー、第二のプライマー、およびインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを含むマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA試薬に試料を添加し、経時的に蛍光検出可能な温調ブロックに載置することで、自動的にマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAを増幅し検出することができる。本発明のマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA検出試薬において、オリゴヌクレオチドプローブを構成するオリゴヌクレオチドは、配列番号30または32に記載の塩基配列からなるものが好ましい。
本発明のプライマーセットはマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAに特異的な配列(特定塩基配列)およびその相補配列の一部にそれぞれハイブリダイズすることより、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAの特定塩基配列またはその相補配列を特異的に増幅させることができる。
本発明のプライマーセットを用いたマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA検出法は、試料中に含まれるマイコプラズマ・ニューモニエを迅速、高感度に検出でき、かつ偽陽性の発生も極めて少なく、特異性が高い。そのため、検査結果を早急に医師に提示することが可能となり、感染拡大防止や、適切な薬剤の投与による耐性菌の発生防止に寄与するものと考えられる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例1 標準RNA調製
後述の実施例で使用する、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)標準RNA、マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium)標準RNAを以下に示す方法でそれぞれ調製した。なお調製した各標準RNAの定量は、260nmにおける吸光度を基に実施した。
(1)マイコプラズマ・ニューモニエ標準RNA
マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA配列(GenBank No.NR_077056.1)に基づき人工的に23S rRNA遺伝子を作製し、インビトロ転写した後、転写産物を精製することで、マイコプラズマ・ニューモニエ標準RNAを調製した。
(2)マイコプラズマ・ゲニタリウム標準RNA
マイコプラズマ・ゲニタリウムの23S rRNA配列(GenBank No.NR_077054.1)に基づき人工的に23S rRNA遺伝子を作製し、インビトロ転写した後、転写産物を精製することで、マイコプラズマ・ゲニタリウム標準RNAを調製した。
実施例2 インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドの調製
下記(A)に示す、インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブ(以下、INAFプローブと記載する)を特開2000−316587号公報で開示の方法に基づき作製した。
(A)配列番号30(GenBank No.NR_077056.1の2095番目から2112番目までの塩基配列)または配列番号32からなるオリゴヌクレオチドの5’末端から15番目のチミンと16番目のアデニンとの間に、リンカーを介してチアゾールオレンジを標識したもの。
実施例3 マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA検出用オリゴヌクレオチドの検討
表1に示す、第一のプライマー、第二のプライマーおよびINAFプローブの組み合わせ(以下、オリゴヌクレオチドの組み合わせと記載する)を用いて、以下に示す方法で評価した。なお表1に記載のINAFプローブは実施例2で作製したプローブである。
(1)実施例1で調製した標準RNAのうち、マイコプラズマ・ニューモニエ標準RNA(実施例1(1))は、RNA希釈液(10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、1mM EDTA、0.02% コール酸ナトリウム)を用いて1000コピー/15μLになるように、マイコプラズマ・ゲニタリウム標準RNA(実施例1(2))は、前記RNA希釈液を用いて10コピー/15μLになるように、それぞれ希釈し、これらをRNA試料として用いた。
(2)以下の組成からなる反応液を蒸発乾燥用チューブに分注し、蒸発乾燥した。
反応液の組成:濃度はRNA試料、開始液、添加後(30μL中)の最終濃度
60mM Tris−HCl緩衝液(pH8.35)
300mM トレハロース
各0.48mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP
各1 .8mM ATP、CTP、UTP
1.3mM GTP
2.9mM ITP
0.2μM 第一のプライマー(各配列番号の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドの5’末端側にT7プロモータ(配列番号33)を付加したもの)
0.2μM 第二のプライマー
50nM INAFプローブ(実施例2で調製したもの)
0.025mg/mL 牛血清アルブミン
142U T7 RNAポリメラーゼ
6.4U AMV逆転写酵素
(3)上記の蒸発乾燥後にRNA試料を15μL添加後、46℃で5分間保温し、その後、以下の組成からなる開始液15μLを添加し撹拌した。
酵素液の組成:反応時(30μL中)の最終濃度
10.07% ジメチルスルホキシド
21mM 塩化マグネシウム
105mM 塩化カリウム
(4)引き続き蒸発乾燥用チューブを直接測定可能な温調機能付き蛍光分光光度計を用い、46℃で反応させると同時に反応溶液の蛍光強度を経時的に20分間測定した。
開始液を加え撹拌を終えた時点を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時間の蛍光強度値をバックグラウンドの蛍光強度比で割った値)が1.2を超えた場合を陽性判定とし、そのときの時間を検出時間とした。結果を表1および2に示す。実験は表1,2に記載された回数実施した。表2の「N.D.」は反応開始後20分後の蛍光強度比が1.2以下(陰性判定)であったことを意味する。
マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAの検出性能(表1)については、本実施例で検討したオリゴヌクレオチドの組み合わせ(A01からA40)いずれもが1000コピー/testのマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAを15分以内に検出した。特に、オリゴヌクレオチドの組み合わせA01からA08、A10からA15、A17からA19、A21からA22、A24からA40は1000コピー/testのマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAを平均で8分以内に検出しており、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAを迅速に検出可能なオリゴヌクレオチドの組み合わせといえる。
Figure 2017148008
交差反応性(表2)については、本実施例で検討したオリゴヌクレオチドの組み合わせのうち、A01、A04、A18、A19、A26、A29、A30およびA34が10コピー/testのマイコプラズマ・ゲニタリウム23S rRNAを検出せず、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAに対して高い特異性を有しており、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAを特異的に検出可能なオリゴヌクレオチドの組み合わせといえる。
Figure 2017148008

Claims (6)

  1. 試料中に含まれるマイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAもしくは23S rDNAの特定塩基配列の3’末端部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、前記特定塩基配列の5’末端部と相同的な配列を有する第二のプライマーとからなる、前記特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸を増幅するためのプライマーセットであって、
    第一のプライマーが、配列番号1または8に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドであり、
    第二のプライマーが、配列番号11または20に記載の塩基配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである、
    前記プライマーセット。
  2. 第一のプライマーが少なくとも22塩基からなり、第二のプライマーが少なくとも17塩基からなるオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載のプライマーセット。
  3. 第一のプライマーが、配列番号2または9に記載の塩基配列中、少なくとも連続する22塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、
    第二のプライマーが、配列番号12または21に記載の塩基配列中、少なくとも連続する17塩基からなるオリゴヌクレオチドである、
    請求項1または2に記載のプライマーセット。
  4. 第一のプライマーが配列番号3から7または10のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
    第二のプライマーが、配列番号13から19または22から28のいずれかに記載の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである、
    請求項1〜3いずれかに記載のプライマーセット。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のプライマーセットで増幅した特定塩基配列または前記特定塩基配列の相補配列を含む核酸を、前記核酸の一部とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能な、インターカレーター性蛍光色素を標識したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNAを検出する方法。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載のプライマーセットと、配列番号29または31に記載の塩基配列またはその相補配列とストリンジェントな条件で特異的にハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドにインターカレーター性蛍光色素を標識した核酸プローブとを含む、マイコプラズマ・ニューモニエ23S rRNA検出試薬。
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