JP2005245434A - ノロウイルスの検出試薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】 あらゆるサブタイプのノロウイルスを迅速かつ高感度に検出する遺伝子検査試薬を構成するのに好適なオリゴヌクレオチドの組み合わせを提供すること。
【解決手段】 ノロウイルスに特異的かつサブタイプによる変異の少ない位置にある塩基配列と相同的あるいは相補的な配列を有するプライマーを用いることにより、ノロウイルスのみを特異的に増幅させて検出する方法と、ノロウイルスの特定部位に結合するオリゴヌクレオチドによって、前記課題を解決する。
【選択図】 なし

Description

ノロウイルスは、一般にウイルス性食中毒の原因ウイルスとして知られている。本発明は、臨床検査、公衆衛生、食品検査、食中毒検査におけるノロウイルス検出試薬に関するものである。
ノロウイルスはヒトカリシウイルス科に属するウイルスで、約7000塩基の1本鎖RNAをゲノムにもつ。ノロウイルスは、小型球形ウイルス(Small Round Structured Virus、SRSV)とも呼ばれている。
我が国で届け出されている食中毒の約20%はウイルスが原因と推定されている。これらのウイルス性食中毒例の約80%以上からノロウイルスが検出される。おもな感染源は食品で、しばしば生カキが問題となっている。また、乳幼児の(散発性の)急性胃腸炎からもノロウイルスが検出され、ヒトからヒトへ伝播する可能性も示唆されている。以上から、ノロウイルスの検査は、公衆衛生上および食品の品質管理上大きな課題となっており、遺伝子増幅法を用いた、高感度かつ迅速でしかもあらゆるサブタイプの検出が可能もしくは検出率の高い検査法の開発が望まれている。これに対し、現在、ノロウイルスの検出は、電子顕微鏡による観察が基本である。この方法では、あらゆるサブタイプの検出か可能であるが、検出するには106個/mL以上のウイルス量が必要で感度が低いために、検体は患者の糞便に限られている。
特開2002−51778号公報 特開2002−153289号公報 特開2002−218999号公報 特開2000−300297号公報
ノロウイルスは遺伝子型によりジェノグループI(GI)とジェノグループII(GII)の2種に大別される。さらに遺伝子型により、GIは、Chiba、Desert Shield、Norwalk、Southamptonを代表とする複数のサブタイプに、GIIは、Camberwell、Hawaii、Mexico、Snow Mountainを代表とする複数のサブタイプに区別される。GIに属するサブタイプ間、およびGIIに属するサブタイプ間の塩基配列の相同性は約70%である。また、GIとGIIの塩基配列の相同性は40〜50%である。
遺伝子増幅法を用いたノロウイルス検出試薬で高い検出率をあげるためには、プライマー結合領域として使用するために、各種サブタイプ間で塩基配列が同じである20塩基以上の領域が、少なくとも2箇所は必要である。しかしながら、GenBank上のノロウイルスの配列として、以下の6配列(Chiba(No.AB042808)、Norwalk(No.NC 001959)、Southampton(No.L07418)、Camberwell(No.AF145896)、Hawaii(No.U07611)、HuCV(No.AY032605))の相同性を調べただけでも、サブタイプ間で塩基配列が同じである20塩基以上の領域は存在しない。
このような背景のもと、本発明者らは、ノロウイルスの検出法を提供した(特開2002−51778号公報、特開2002−153289号公報、特開2002−218999号公報)が、プライマーの塩基配列は特定のサブタイプの塩基配列に基づいており、他のサブタイプを検出することはできない。また、特開2000−300297号公報で開示される、PCRを用いたノロウイルス検出試薬は、Norwalk検出用とSnow Mountain検出用だけである。これまでのところ、遺伝子増幅法を用いるノロウイルス検出試薬で、GIのあらゆるサブタイプ、あるいはGIIのあらゆるサブタイプの検出が可能もしくは検出率の高いもの(例えば80%以上の検出率を示すもの)は知られていない。
この問題点を解決するために、本発明者らは、GenBankに登録されているノロウイルスの塩基配列と自ら決定したノロウイルスの塩基配列を解析し、プライマー結合領域を決定し、GIのあらゆるサブタイプを検出するノロウイルス検出試薬、およびGIIのあらゆるサブタイプを検出するノロウイルス検出試薬を開発した。
すなわち、本願発明は、ノロウイルスの検出試薬に使用するプライマーおよび該プライマーを用いたノロウイルス検出試薬を提供する。このようにして、前記目的を達成するためになされた本発明の第一の観点は、ノロウイルスのゲノムRNAを検出するために有用なオリゴヌクレオチドであって、ノロウイルスのゲノムRNAに結合可能である、配列番号1から5および20に示したいずれかの配列中の少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチド、またはノロウイルスのゲノムRNAに結合可能である該オリゴヌクレオチドの変異体、例えば配列番号1から5および20に示したいずれかの配列中の少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチドにおいて1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは付加されたオリゴヌクレオチド、または配列番号1から5および20に示したいずれかの配列中の少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチドと高ストリンジェント条件下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、または以上の各オリゴヌクレオチドの相補鎖を提供する。
第二の観点において、本発明は、ノロウイルスの検出において利用するための検出試薬であって、
ノロウイルスのゲノムRNA中の特定配列を鋳型として、該特定配列に相同的な配列を有する第一のプライマーおよび該特定配列に相補的な配列を有する第二のプライマー(ここで第一または第二のプライマーのいずれか一方のプライマーは5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を付加した配列を有する)を用い、RNA依存性DNAポリメラーゼによりcDNAを生成することによりRNA−DNA2本鎖を形成し、
リボヌクレアーゼH作用により該RNA−DNA2本鎖のRNAを分解して1本鎖DNAを生成し、
該1本鎖DNAを鋳型としてDNA依存性DNAポリメラーゼにより前記RNA配列または前記RNA配列に相補的な配列からなるRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAを生成し、そして
該2本鎖DNAがRNAポリメラーゼ存在下でRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記RNA依存性DNAポリメラーゼによるcDNA合成の鋳型となる、
といった段階を含んで成るRNA増幅工程において利用するノロウイルスの検出試薬であって、
ここで前記第一のプライマーが、配列番号1から3のいずれかの少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチド、または配列番号1から3のいずれかの少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチドにおいて1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは付加され且つ前記特定配列に相補的な配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチド、または配列番号1から3のいずれかの少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチドと高ストリンジェント条件下でハイブリダイズし且つ前記特定配列に相補的な配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドであり、
前記第二のプライマーが、配列番号4または20のいずれかの少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチド、または配列番号4または20のいずれかの少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチドにおいて1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは付加され且つ前記特定配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチド、または配列番号4または20のいずれかの少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチドと高ストリンジェント条件下でハイブリダイズし且つ前記特定配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドである、
ことを特徴とするノロウイルスの検出試薬を提供する。
高ストリンジェント条件とは、例えば以下の実施例に示すような、60mMのTris、17mMの塩化マグネシウム、120mMの塩化カリウム、1mMのDTTの存在下、43℃でのハイブリダイゼーション条件であってよい。
尚、ノロウイルスに由来するRNAに対して相補的であるRNAを検出の対象とする場合には、第一のプライマー及び第二のプライマーとして、それぞれ、それらの5’末端と3’末端が逆となるものと相補的なプライマーを用いればよい。
好ましくは、前記RNA増幅工程は前記標的RNAを前記特定配列の5’末端で切断する、該特定配列の5’末端に重複して隣接する領域に対して相補的な配列を有する切断用オリゴヌクレオチドの存在下で実施される。
好ましくは、前記第一のプライマーは配列番号1から3のいずれかの配列からなるオリゴヌクレオチドである。
更に好ましくは、前記第二のプライマーは配列番号4または20のいずれかの配列からなるオリゴヌクレオチドである。
別の好適な態様において、前記RNA増幅工程はインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド存在下で実施され、反応液の蛍光強度を測定することによりノロウイルスの検出が行われる。ここで該オリゴヌクレオチドの配列は前記RNA転写産物の少なくとも一部の配列と相補的であり、該オリゴヌクレオチドの該RNA転写産物との相補結合によって、複合体を形成していない場合と比較して蛍光特性が変化するものである。
好ましくは、前記インターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチドは配列番号5に示した少なくとも連続した10塩基以上からなる。以下、本発明を詳細に説明する。
本願発明の検出法はGIのあらゆるサブタイプ、あるいはGIIのあらゆるサブタイプのノロウイルスを迅速にかつ高感度に検出するのに有用である。
本発明において、配列番号1から5および20に示した配列中の少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチドまたはその変異体は、いずれもプライマーとして用いることができる。ここで配列番号1から3、および4と20はそれぞれ近接した領域である。従って、例えば、PCRを行う場合は、配列番号1から3のいずれかと配列番号4または20のいずれかとの組み合わせ、配列番号1から3のいずれかと配列番号5との組み合わせ、配列番号5の相補鎖と配列番号4または20のいずれかとの組み合わせを例示することができる。PCR以外の他のDNA増幅法においても同様である。
本発明の別の態様として、逆転写酵素およびRNAポリメラーゼの協奏的作用によって(逆転写酵素およびRNAポリメラーゼが協奏的に作用するような条件下で反応させ)ノロウイルスのRNA配列を増幅させるNASBA法、3SR法、TRC法(例えば特開2000−14400号公報参照)等を挙げることができる。ここで温度については特に制限はないが35〜50℃が好ましい。
上記本願発明の一態様において、標的RNAは、特定配列の5’末端で切断される必要がある。このように標的RNAを切断する方法としては、特定配列の5’末端に重複して隣接する領域に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド(切断用オリゴヌクレオチド)を添加することによって、標的RNAをリボヌクレアーゼH作用により切断する方法が好ましい。該切断用オリゴヌクレオチドは、3’末端側からの伸長反応をおさえるために、3’末端水酸基が化学的に修飾されたもの、例えばアミノ化等されているものを使用することが望ましい。
以上の核酸増幅方法で得られた増幅産物は既知の核酸検出方法で検出することができるが、好適な態様では前記核酸増幅をインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド存在下で実施し、反応液の蛍光特性の変化を測定することが望ましい。該オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド中のリンにリンカーを介してインターカレーター性蛍光色素を結合させたもので、標的核酸(相補的核酸)と2本鎖を形成するとインターカレーター部分が2本鎖部分にインターカレートして蛍光特性が変化するため、分離分析を必要としないことを特徴とする(Ishiguroら、Nucleic Acids Res.24(24)、4992−4997(1996))。
該オリゴヌクレオチドが結合する配列は、ノロウイルスのゲノムRNA中の増幅される配列のいずれであってもよく、特に限定はないが、配列番号5に示した配列中の少なくとも連続した10塩基からなる配列であることが望ましい。また、該オリゴヌクレオチドをプライマーとした伸長反応を抑えるために該オリゴヌクレオチドの3’末端の水酸基は化学的に修飾(たとえばグリコール酸付加)することが望ましい。
これにより、ノロウイルスRNAを、一チューブ内、一定温度、一段階で、迅速および高感度に増幅し、検出することが可能となり、自動化への適用も容易となる。
以下、本願発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例1
表1に示す組み合わせ(a)がGIのあらゆるサブタイプの検出が可能であること、および組み合わせ(b)と(c)がGIIのあらゆるサブタイプの検出が可能であることを示すために、下記の(1)から(8)に示す方法でGIのサブタイプ4種およびGIIのサブタイプ4種にそれぞれ相当するDNA(以下人工標準DNAとする)とRNA(以下人工標準RNAとする)を調製した。そして人工標準RNAを(9)から(12)に示す方法で測定した。
(1) ノロウイルスのChibaサブタイプの塩基配列(GenBank No.AB042808)を基に、組み合わせ(a)から(c)で使用するオリゴヌクレオチドの結合領域を含むように人工標準DNAを設計し、in vitro転写により90塩基の人工標準RNA(NV1ART−C、配列番号6)を調製した。この標準RNAを試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(2) ノロウイルスのDesert Shieldサブタイプの塩基配列(GenBank No.U04469)を基に、組み合わせ(a)から(c)で使用するオリゴヌクレオチドの結合領域を含むように人工標準DNAを設計し、in vitro転写により90塩基の人工標準RNA(NV1ART−D、配列番号7)を調製した。この標準RNAを試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(3) ノロウイルスのNorwalkサブタイプの塩基配列(GenBank No.NC 001959)を基に、組み合わせ(a)から(c)で使用するオリゴヌクレオチドの結合領域を含むように人工標準DNAを設計し、in vitro転写により90塩基の人工標準RNA(NV1ART−N、配列番号8)を調製した。この標準RNAを試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(4) ノロウイルスのSouthamptonサブタイプの塩基配列(GenBank
No.L07418)を基に、組み合わせ(a)から(c)で使用するオリゴヌクレオチドの結合領域を含むように人工標準DNAを設計し、in vitro転写により90塩基の人工標準RNA(NV1ART−S、配列番号9)を調製した。この標準RNAを試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(5) ノロウイルスのCamberwellサブタイプの塩基配列(GenBank No.AF145896)を基に、組み合わせ(a)から(c)で使用するオリゴヌクレオチドの結合領域を含むように人工標準DNAを設計し、in vitro転写により90塩基の人工標準RNA(NV2ART−C、配列番号10)を調製した。この標準RNAを試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(6) ノロウイルスのHawaiiサブタイプの塩基配列(GenBank No.U07611)を基に、組み合わせ(a)から(c)で使用するオリゴヌクレオチドの結合領域を含むように人工標準DNAを設計し、in vitro転写により90塩基の人工標準RNA(NV2ART−H、配列番号11)を調製した。この標準RNAを試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(7) ノロウイルスのMexicoサブタイプの塩基配列(GenBank No.U22498)を基に、組み合わせ(a)から(c)で使用するオリゴヌクレオチドの結合領域を含むように人工標準DNAを設計し、in vitro転写により90塩基の人工標準RNA(NV2ART−M、配列番号12)を調製した。この標準RNAを試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(8) ノロウイルスのSnow Mountainサブタイプの塩基配列を基に、組み合わせ(a)から(c)で使用するオリゴヌクレオチドの結合領域を含むように人工標準DNAを設計し、in vitro転写により90塩基の人工標準RNA(NV2ART−S、配列番号13)を調製した。この標準RNAを試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(9) 以下の組成の反応液20 μLを0.5 mL容PCRチューブ(Individual Dome Cap PCR Tube、SSI製)に分注し、これに(1)から(8)で調製したRNA試料5 μLを添加した。なお、第一プライマー・第二プライマー・切断用オリゴヌクレオチドの組み合わせが表1に示す組み合わせになるよう溶液を調製した。
反応液の組成(各濃度は最終反応液量30 μLにおける濃度)
60 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.6)
17 mM 塩化マグネシウム
120 mM 塩化カリウム
6 U RNase inhibitor
1 mM DTT
各0.25 mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP
3.6 mM ITP
各3.0 mMのATP、CTP、GTP、UTP
0.16 μMの切断用オリゴヌクレオチド
1.0 μMの第一プライマー
1.0 μMの第二プライマー
25 nMのインターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチド(YO−NV−S−G、配列番号5、5’末端から12番目の「C」と13番目の「A」との間のリンにインターカレーター性蛍光色素が標識されている。また3’末端の水酸基はグリコール基で修飾されている。)
13% DMSO
容量調整用蒸留水
(10) 上記の反応液を43℃で2分間保温後、以下の組成で、かつ、あらかじめ43℃で2分間保温した酵素液5 μLを添加した。
酵素液の組成(各数値は最終反応液量30 μLにおける値)
2.0% ソルビトール
3.6 μg 牛血清アルブミン
142 U T7RNAポリメラーゼ(インビトロジェン製)
6.4 U AMV逆転写酵素(ライフサイエンス製)
容量調整用蒸留水
(11) 引き続きPCRチューブを直接測定可能な温度調節機能付き蛍光分光光度計を用い、43℃で保温して、励起波長470 nm、蛍光波長520 nmで、反応溶液を経時的に測定した。
(12) 各オリゴヌクレオチドの組み合わせを用いたときの、ノロウイルス人工標準RNAの立ち上がり時間(蛍光増加比が陰性の平均値に標準偏差の3倍を加えた値の1.2倍になるまでの時間)の結果を表2に示した。組み合わせ(a)ではGIの標準RNA4試料を、組み合わせ(b)および(c)ではGIIの標準RNA4試料をそれぞれ30分以内に検出していることが示された。
Figure 2005245434
表1は本実験系で用いた第一プライマー・第二プライマー・切断用オリゴヌクレオチドの組み合わせを示す。ノロウイルス検出用オリゴヌクレオチドの組み合わせでの、切断用オリゴヌクレオチドの塩基配列のうち、3’末端の水酸基はアミノ化されている。第一プライマーの塩基配列のうち、5’末端側第1番目の「A」から第22番目の「A」までの領域はT7プロモーター領域であり、それに続く23番目の「G」から第28番目の「A」までの領域はエンハンサー配列である。なお、組み合わせ(a)はおもにGIのノロウイルスを標的として設計しており、組み合わせ(b)および(c)はおもにGIIのノロウイルスを標的として設計している。
切断用オリゴヌクレオチド
NV1−3SM−9(配列番号14)
NV2−3SM(配列番号15)
NV2−3S20+3(配列番号16)
第一プライマー
NV1−3FM−9(配列番号17)
NV2−3FM(配列番号18)
NV2−3F20+3(配列番号19)
第二プライマー
NV2−7RM(配列番号4)
Figure 2005245434
表2は表1に示したオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いて、ノロウイルス人工標準RNA(GI、GII各4試料)を測定した結果である。表1に示したオリゴヌクレオチドの組み合わせのうち、組み合わせ(a)はGIの標準RNA4試料を、組み合わせ(b)および(c)はGIIの標準RNA4試料をそれぞれ30分以内に検出できた。
実施例2
本願発明のオリゴヌクレオチドの組み合わせのうちの1つがGIのあらゆるサブタイプの検出が可能であることを示すために、下記の(1)から(8)に示す方法でGIのサブタイプ4種の人工標準RNAを測定した。
(1) 実施例1と同様のChibaサブタイプの人工標準RNA(NV1ART−C、配列番号6)を試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(2) 実施例1と同様のDesert Shieldサブタイプの人工標準RNA(NV1ART−D、配列番号7)を試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(3) 実施例1と同様のNorwalkサブタイプの人工標準RNA(NV1ART−N、配列番号8)を試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(4) 実施例1と同様のSouthamptonサブタイプの人工標準RNA(NV1ART−S、配列番号9)を試料とし、260 nmの紫外部吸収により定量後、RNA希釈液(10 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.0)、1 mM EDTA、5 mM DTT、0.25U/μL RNase inhibitor(タカラバイオ製))を用い106 コピー/5 μLとなるように希釈した。
(5) 以下の組成の反応液20 μLを0.5 mL容PCRチューブ(Individual Dome Cap PCR Tube、SSI製)に分注し、これに(1)から(4)で調製したRNA試料5 μLを添加した。
反応液の組成(各濃度は最終反応液量30 μLにおける濃度)
60 mM Tris−塩酸緩衝液(pH 8.6)
17.2 mM 塩化マグネシウム
120 mM 塩化カリウム
6 U RNase inhibitor
1 mM DTT
各0.25 mMのdATP、dCTP、dGTP、dTTP
3.6 mM ITP
各3.0 mMのATP、CTP、GTP、UTP
0.16 μMの切断用オリゴヌクレオチド(NV1−3SM−9、配列番号14、 3’末端の水酸基はアミノ化されている)
1.0 μMの第一プライマー(NV1−3FM−9、配列番号17)
1.0 μMの第二プライマー(NV1−7RM18−1、配列番号20)
15 nMのインターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチド(YO−NV−S−G、配列番号5、5’末端から12番目の「C」と13番目の「A」との間のリンにインターカレーター性蛍光色素が標識されている。また3’末端の水酸基はグリコール基で修飾されている。)
13% DMSO
容量調整用蒸留水
(6) 上記の反応液を43℃で2分間保温後、以下の組成で、かつ、あらかじめ43℃で2分間保温した酵素液5 μLを添加した。
酵素液の組成(各数値は最終反応液量30 μLにおける値)
2.0% ソルビトール
3.6 μg 牛血清アルブミン
142 U T7RNAポリメラーゼ(インビトロジェン製)
6.4 U AMV逆転写酵素(ライフサイエンス製)
容量調整用蒸留水
(7) 引き続きPCRチューブを直接測定可能な温度調節機能付き蛍光分光光度計を用い、43℃で保温して、励起波長470 nm、蛍光波長520 nmで、反応溶液を経時的に測定した。
(8) ノロウイルス人工標準RNAの立ち上がり時間(蛍光増加比が陰性の平均値に標準偏差の3倍を加えた値の1.2倍になるまでの時間)の結果を表3に示した。本願発明のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いることでGIの標準RNA4試料を30分以内に検出できることが示された。
Figure 2005245434
表3は実施例2で使用したオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いて、ノロウイルス人工標準RNA(GI4試料)を測定した結果である。実施例2で使用したオリゴヌクレオチドの組合せはGIの標準RNA4試料を30分以内に検出できた。
以上のように、本願発明の検出法はGIのあらゆるサブタイプ、あるいはGIIのあらゆるサブタイプのノロウイルスを迅速にかつ高感度に検出するのに有用である。
本願発明のオリゴヌクレオチドは、配列表に記載した塩基配列(18塩基から23塩基)のものに限られず、これら配列中の少なくとも連続した10塩基以上からなるオリゴヌクレオチドであれば良い。これらは、比較的低温(好ましくは43℃)条件下で、プライマーまたはプローブの標的核酸への特異性を確保するためには10塩基程度の塩基配列があれば十分であることから明らかである。

Claims (6)

  1. ノロウイルスのゲノムRNAを検出するために有用なオリゴヌクレオチドであって、ノロウイルスのゲノムRNAに結合可能である、配列番号1から5および20に示したいずれかの配列中の少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチド、該オリゴヌクレオチドにおいて1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは付加されたオリゴヌクレオチド、または該オリゴヌクレオチドの相補鎖。
  2. ノロウイルスの検出において利用するための検出試薬であって、
    ノロウイルスのゲノムRNA中の特定配列を鋳型として、該特定配列に相同的な配列を有する第一のプライマーおよび該特定配列に相補的な配列を有する第二のプライマーを用い、RNA依存性DNAポリメラーゼによりcDNAを生成することによりRNA−DNA2本鎖を形成し、ここで該第一または第二のプライマーのいずれか一方のプライマーは5’ 末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を付加した配列を有するものであり、
    リボヌクレアーゼH作用により該RNA−DNA2本鎖のRNAを分解して1本鎖DNAを生成し、
    該1本鎖DNAを鋳型としてDNA依存性DNAポリメラーゼにより前記RNA配列または前記RNA配列に相補的な配列からなるRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAを生成し、そして
    該2本鎖DNAがRNAポリメラーゼ存在下でRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記RNA依存性DNAポリメラーゼによるcDNA合成の鋳型となる、
    といった段階を含んで成るRNA増幅工程を利用したノロウイルスの検出試薬で、
    ここで前記第一のプライマーが、配列番号1から3のいずれかの少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチド、または配列番号1から3のいずれかの少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチドにおいて1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは付加され且つ前記特定配列に相補的な配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドであり、
    前記第二のプライマーが、配列番号4または20のいずれかの少なくとも連続した10塩基以上からなるオリゴヌクレオチド、または配列番号4または20のいずれかの少なくとも連続した10塩基からなるオリゴヌクレオチドにおいて1もしくは数個のヌクレオチドが欠失、置換もしくは付加され且つ前記特定配列に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドである、
    ことを特徴とするノロウイルスの検出試薬。
  3. 前記第一のプライマーが配列番号1から3のいずれかのオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、請求項2の検出試薬。
  4. 前記第二のプライマーが配列番号4または20のいずれかのオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、請求項2の検出試薬。
  5. 前記RNA増幅工程がインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチド存在下で実施され、反応液の蛍光強度を測定することによりノロウイルスの検出が行われ、ここで該オリゴヌクレオチドの配列はRNA転写産物の少なくとも一部の配列と相補的であり、該オリゴヌクレオチドがRNA転写産物と相補結合によって、複合体を形成していない場合と比較して蛍光特性が変化するものである、請求項2〜4のいずれか1項記載の検出試薬。
  6. 前記インターカレーター性色素で標識されたオリゴヌクレオチドが配列番号5に示したオリゴヌクレオチドの少なくとも連続した10塩基からなることを特徴とする請求項5に記載の検出試薬。
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