JP2017128756A - めっき鋼線及びそれを用いたゴム複合体並びにめっき鋼線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、伸線性と接着性を改善するために、CuとZnの組成比を深さ方向で異なるようにしためっき(特許文献4)も提案されている。しかし、複数回めっきを行う必要があり、製造コストに課題がある。
(1)表面にブラスめっき層を有するめっき鋼線において、前記ブラスめっき層はCu、Zn、Alおよび不可避的不純物からなり、線径が0.1〜0.4mmであることを特徴とするめっき鋼線。
(2)表面にブラスめっき層を有するめっき鋼線において、前記ブラスめっき層は、質量%で、Cu:60〜70%、Al:0.1〜5%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなり、前記ブラスめっき層の厚さが50〜500nmであり、線径が0.1〜0.4mmであることを特徴とするめっき鋼線。
(3)加硫剤を含有するゴム組成物と(1)または(2)記載のめっき鋼線からなるゴム複合体において、前記めっき鋼線は前記ゴム組成物中に埋設し、前記めっき鋼線と前記ゴム組成物の界面に硫化物が存在することを特徴とするゴム複合体。
(4)表面にブラスめっき層を有するめっき鋼線を湿式伸線加工で製造する方法であって、前記ブラスめっき層はCu、Zn、Alおよび不可避的不純物からなり、前記湿式伸線加工は、引抜プーリーとめっき鋼線の間で滑りを発生させることなく、めっき鋼線に作用する逆張力を鋼線破断荷重の5〜20%付与することを特徴とする、めっき鋼線の製造方法。
(5)前記ブラスめっき層の組成が、質量%で、Cu:60〜70%、Al:0.1〜5%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなり、前記ブラスめっき層の厚さが50〜500nmである(4)記載のめっき鋼線の製造方法。
めっき鋼線の製造工程において、ブラス合金化のための拡散処理は短時間で行う必要があり、その際、ZnとCuが相互拡散するようにZnが溶解する温度まで加熱する必要がある。
本発明の場合、Cuめっき後に、ZnとAlをめっきするが、5%程度のAlを含むZnは共晶組成に近くなって純Znの融点より低下するため、低温加熱でブラス合金化反応が進行する好ましい組成である。
拡散合金化処理により本発明のブラスめっき層は、ほぼ均一なCu−Zn−Al組成となる。ブラスめっき層中のAlは、Cuの拡散を抑制して、Cuがゴム中Sと過剰反応するのを防止するため、経時変化による接着劣化が小さくなる。
また、加熱によりブラスめっき層の表層のAlは一部酸化される。Al酸化物は伸線工程で、ダイス表面に付着して、伸線時の摩擦係数を低減し、伸線加工性を改善する。
めっき鋼線の線径は、しなやかさを得るために、0.4mm以下とする。これは、線径が0.4mmより太くなり、しなやかさが低下すると、タイヤのゴム補強材に使用した場合に、自動車の乗り心地が低下するためである。また、線径が太くなると、伸線加工率が小さくなる結果、伸線材の強度が低くなり、十分な補強効果が得られない。したがって、めっき鋼線の線径は0.4mm以下が好ましい。一方、線径を細くすると、製造工程が長くなり、最終製品の生産性も低下するために製造に時間とコストがかかる。さらに、めっき鋼線の比表面積が増加し、ゴム組成物中のSとブラスめっき層中のCuの反応が進行し、本発明のCu−Zn−Alブラスめっきでも反応を制御することが困難で、十分な接着性を確保できなくなるため、めっき鋼線の線径の下限を0.1mm以上とすることが好ましい。より好ましくは0.17〜0.34mmである。
Alは非常に酸化されやすい元素であり、拡散加熱処理によりめっき表面にはAl酸化層が生成されやすい。
以下、好ましいブラスめっき層の組成、形態について説明する。なお、ブラスめっき層の組成の「%」は、「質量%」を意味する。
ブラスめっき層中のAlは、めっき鋼線とゴム組成物との加硫接着時にCuとSの反応を適正化し、かつ製品使用中の接着劣化を抑制する。また、伸線加工性を改善する。
これらの効果を得るために、ブラスめっき層中のAlは、0.3%以上であることが好ましい。一方、過剰なAlを含むとCuとSの反応が著しく抑制され、十分な反応層が生成せず、加硫直後の初期接着強度が大きく低下するため、ブラスめっき層中のAlは5%以下であることが好ましい。ゴムとの初期接着と接着劣化を改善するには、Al含有量は0.5〜3%であることがより好ましい。
ブラスめっき層中のCuは、ゴム組成物中のSと加硫処理時にCu硫化物からなる接着反応層を形成し、接着強度を確保する。
ブラスめっき層中のCuが60%未満では、加硫処理でゴム組成物中のSとの反応量が減少して、十分な接着強を確保出来なくなる。また、ブラスめっき層中のCuが60%未満では、拡散処理後のブラスめっき層中に硬質な結晶構造であるβブラス相が多く生成し、伸線加工性が低下する。よって、ブラスめっき層中のCu比率は60%以上であることが好ましい。
一方、ブラスめっき層中のCuが多くなるとβブラスの生成が抑制され、ブラスめっき層が柔らかくなるために伸線加工性は良好となるが、ゴム組成物中のSとCuが過剰に反応しやすくなり、接着劣化が発生し易くなる。よって、Cu含有量は70%以下が好ましい。
より好ましいCu含有量は63〜67%である。
Alを含むブラスめっき層の厚さが薄すぎると、めっきを施す前の鋼線の表面の凹凸に起因して、めっき鋼線の表面に、局所的に地鉄が露出した部分(Fe露出部)が生じることがある。このFe露出部では、めっき鋼線とゴム組成物が接着しないだけではなく、伸線時にダイスとめっき鋼線の直接接触による焼き付きが発生し、伸線材の著しい延性の低下、傷の発生、ダイスの割損によるトラブルとなる。したがって、ブラスめっき層の平均厚さは50nm以上にすることが好ましい。一方、ブラスめっき層が厚い場合は、接着反応に関与するCu量が増加し、時間の経過とともに、接着層の成長、接着反応層の密度低下、およびCu硫化物の組成変化により、接着強度が低下することがある。したがって、めっき鋼線とゴム組成物との接着強度の経年劣化を抑制するためには、ブラスめっき層の平均厚さを500nm以下にすることが好ましい。より好ましくは、ブラスめっき層の平均厚さは150〜350nmである。
ただし、t:ブラスめっき層の平均厚さ、W:単位長さのブラスめっき層の質量、A:単位長さのブラスめっき層の表面積、ρ:ブラスめっき層の平均比重である。ブラスめっき層の平均比重ρは、下記式によって算出することができる。
ρ=ρCu×WCu+ρZn×WZn+ρAl×WAl
ただし、ρCu:Cuの比重、ρZn:Znの比重、ρAl:Alの比重である。また、WCu:ブラスめっき層中Cuの質量比、WZn:ブラスめっき層中Znの質量比、WAl:ブラスめっき層中Alの質量比である。
よって、ブラスめっき層表面のAl酸化層の生成比率が過度に少ないと、伸線加工性に改善効果が得られにくく逆に過度に多くなるとCuとゴム組成物中のSとの反応が進まず、初期接着性が悪化することがある。
分散させるAl粒子の大きさは特に限定はされないが、粗い粒子はブラスめっき層に分散する粒子がまだらとなり、合金化遅延となる可能性があり、微細粒子は均一分散性が困難で、微細粒子では凝集が発生し易くなるため、粒子径は0.1〜1μmが好ましい。Al粒子は必ずしも球状である必要は無く、厚さが1μm以下の偏平粒子形状のものも使用可能である。
プラズマめっきおよび溶融めっきによるZn−Al合金めっきの場合は合金めっき中のAl濃度を制御することでブラスめっき層中のAl濃度の制御を行うことが可能となる。
比較例の従来めっき鋼線は、CuめっきとZnめっきを連続して行った後、480℃で7s加熱し、拡散処理を行い、CuとZnからなるブラスめっき鋼線とし、Cu濃度を58%、63%、78%とした。通常のブラスめっき層中Cu濃度は63%である。
試験No.19はブラスめっき層中のAlが本発明の範囲より多く、初期接着性が悪化する。
試験No.21は、本発明の範囲よりブラスめっき厚が薄く、伸線加工により地鉄が露出し、伸線加工性が悪化するととともに、局部的にゴム組成物との接着性機能が失われ、接着性も低下する。
試験No.25はブラスめっき層中にAlを含むものの、Cu比率が少なく、βブラスが増加し、伸線加工性が低下する。
2:拡散処理前のCuめっき層
3:拡散処理前のZnめっき層
4:拡散処理前のAlめっき層
5:地鉄(被めっき鋼材)
6:拡散処理前のCuめっき層
7:拡散処理前のZn−Al複合めっき層中のAl粒子
8:拡散処理前のZn−Al複合めっき層
9:拡散処理後のブラスめっき層
10:被めっき線材
Claims (5)
- 表面にブラスめっき層を有するめっき鋼線において、前記ブラスめっき層はCu、Zn、Alおよび不可避的不純物からなり、線径が0.1〜0.4mmであることを特徴とするめっき鋼線。
- 表面にブラスめっき層を有するめっき鋼線において、前記ブラスめっき層は、質量%で、Cu:60〜70%、Al:0.1〜5%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなり、前記ブラスめっき層の厚さが50〜500nmであり、線径が0.1〜0.4mmであることを特徴とするめっき鋼線。
- 加硫剤を含有するゴム組成物と請求項1または請求項2記載のめっき鋼線からなるゴム複合体において、前記めっき鋼線は前記ゴム組成物中に埋設し、前記めっき鋼線と前記ゴム組成物の界面に硫化物が存在することを特徴とするゴム複合体。
- 表面にブラスめっき層を有するめっき鋼線を湿式伸線加工で製造する方法であって、前記ブラスめっき層はCu、Zn、Alおよび不可避的不純物からなり、前記湿式伸線加工は、引抜プーリーとめっき鋼線の間で滑りを発生させることなく、めっき鋼線に作用する逆張力を鋼線破断荷重の5〜20%付与することを特徴とする、めっき鋼線の製造方法。
- 前記ブラスめっき層の組成が、質量%で、Cu:60〜70%、Al:0.1〜5%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなり、前記ブラスめっき層の厚さが50〜500nmである請求項4記載のめっき鋼線の製造方法。
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