JP6558255B2 - 高強度極細鋼線およびその製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、熱間圧延後の線材の伸線加工性を向上させて、パテンティングの回数を減らしたり、熱処理を省略したりする技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3、参照)。これらの技術は、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトなどの非パーライト組織の生成を制限し、パーライトブロックやパーライトコロニーを微細化し、伸線加工による断線や、撚り線加工時の縦割れの発生を防止するものである。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、線径が0.18〜0.45mm、引張強さが3000MPa以上で、かつ優れた延性を有し、更にはゴムとの接着性にも優れた高強度極細鋼線およびその製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
前記母材は、質量%で、
C:0.60%〜0.80%、
Si:0.05〜0.35%、
Mn:0.20〜0.90%
を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、
金属組織は、面積率で85.0%以上がパーライトであり、伸線方向に垂直な断面における前記母材表面から深さ方向に20μmまでの領域に存在するパーライトコロニー粒界の湾曲の曲率半径が5.0〜10.0μm、パーライトコロニーの幅が0.2〜1.5μmであり、
前記めっき層は、前記母材表面に形成されたCu含有量が90質量%以上であるCuめっき層と、前記Cuめっき層の外側に形成されたCuとZnとの比率(Cu含有量(質量%)/Zn含有量(質量%))が1.2〜2.3であるブラスめっき層とを有し、
前記めっき層と前記母材との界面である第1界面は、前記高強度極細鋼線の外面形状に沿って延在する第1平坦部と、前記第1平坦部から前記母材の内部に向かって陥入している第1陥入部とを有し、
前記Cuめっき層と前記ブラスめっき層との界面である第2界面は、前記第1界面の形状に沿って延在する第2平坦部と、前記第2平坦部から前記ブラスめっき層の内部に向かって陥入して形成されている第2陥入部とを有することを特徴とする高強度極細鋼線。
Cr:0.01〜1.00%、
を含有することを特徴とする上記[1]に記載の高強度極細鋼線。
[3] 前記母材が、更に、質量%で、
Nb:0.010〜0.200%、
V :0.01〜0.50%、
Mo:0.01〜0.50%、
B :0.0004〜0.0030%
Al:0.002〜0.100%、
Ti:0.002〜0.100%
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の高強度極細鋼線。
前記熱間圧延線材上にCuめっき層を形成するCuめっき工程と、
前記Cuめっき工程後の前記熱間圧延線材上にブラスめっき層を形成するブラスめっき工程と、
前記ブラスめっき工程後の前記熱間圧延線材を、加工発熱を抑制しながら伸線加工することにより、線径0.18〜0.45mmとする伸線加工工程とを有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の高強度極細鋼線の製造方法。
本発明者らは、まず、熱間圧延線材に、非シアン浴を用いた湿式電解プロセスによりブラスめっきを施し、拡散熱処理を行わずに、0.18〜0.45mmの最終線径まで伸線加工することが可能か否か、検討を行った。
これに対し、例えば、母材上に、均一な厚みを有するCuめっき層とブラスめっき層とを形成した場合、撚り線加工時に、Cuめっき層とブラスめっき層とが母材上で独立して応力を吸収するのみであり、撚り線加工に伴う周方向の偏応力を緩和する作用は十分に得られない。
また、伸線加工に伴うCuめっき層およびブラスめっき層の変形によって、極細鋼線の外面上にCuめっき層が露出している場合には、Cuめっき層中のCu元素が、極細鋼線の表面でのCu元素とタイヤを形成しているゴム中のS元素との反応に寄与すると考えられる。その結果、本実施形態の極細鋼線では、長期にわたって優れたゴム接着性が得られるものと考えられる。
その結果、極細鋼線において優れた強度および延性を得るには、極細鋼線の母材を、伸線方向に垂直な断面における母材表面から深さ方向に20μmまでの領域に存在するパーライトコロニー粒界の湾曲の曲率半径が5.0〜10.0μm、パーライトコロニーの幅が0.2〜1.5μmであるものとする必要があることが分かった。
図2は、図1に示す高強度極細鋼線10の伸線方向に垂直な断面11におけるめっき層2を拡大して示した模式図である。図2に示すように、めっき層2は、ブラスめっき層2aとCuめっき層2bとを有している。
また、図2に示すように、Cuめっき層2bとブラスめっき層2aとの界面である第2界面21aは、第2平坦部21bと第2陥入部21cとを有している。第2平坦部21bは、第1界面の形状に沿って延在している。第2陥入部21cは、第2平坦部21bからブラスめっき層2aの内部に向かって陥入して形成されている。
なお、本実施形態では、極細鋼線10の母材1の表面1a上にCuめっき層2bが存在していて、Cuめっき層2b上にブラスめっき層2aが存在していない領域(めっき層2の表面にCuめっき層2bが露出している領域)は、ブラスめっき層2aと母材1の表面1aとの間にCuめっき層2bが存在している領域と見なす。
また、Cuめっき層2bは、ブラスめっき層2aへのCuの供給源となる。タイヤでは、タイヤに埋め込まれた極細鋼線(スチールコード)のブラスめっき層に含まれるCuと、タイヤのゴムに含まれるSとが反応して、接着性が得られる。しかし、タイヤの使用中にCu元素がゴム中に拡散するため、接着性が次第に劣化する。本実施形態においては、Cuめっき層2bがブラスめっき層2aへのCuの供給源となるため、めっき層2を有する極細鋼線10では、長期にわたって優れたゴム接着性が維持される。
Cuめっき層2bの面積率は、伸線加工前に行われるCuめっき工程におけるCuめっきの電流密度、処理時間などで制御可能である。
母材1上におけるブラスめっき層2aの形成されている領域の面積率は、80%以上であることが好ましい。上記の面積率は、伸線加工時の潤滑性と、極細鋼線10のゴム接着性とを向上させるために高いほど好ましく、母材1上の全面にブラスめっき層2aが形成されていることが最も好ましい。
ブラスめっき層2aはZnとCuの他に、Feを含むものとすることができ、CuとZnと不可避的不純物からなるものであることが好ましい。
ブラスめっき層2aのCuとZnとの比率(Cu/Zn)が1.2未満であると、相対的にブラスめっき層2a中のCu含有量が少ないものとなり、ブラスめっき層2aが硬くなる。このため、伸線加工中にめっき層が母材1の表面1aから剥離しやすくなり、ブラスめっき層2aによるゴム接着性を向上させる効果が十分に得られない。また、母材1の表面1aからめっき層が剥離すると、撚り線加工時に断線が発生し易くなる。
ブラスめっき層2aの厚さ及び組成は、伸線加工前に行われるブラスめっき工程において使用されるめっき浴のCuの含有量及びZnの含有量、電流密度、処理時間などによって制御可能である。
パーライトコロニー3の幅3bは、パーライトコロニー3の長さ方向略中心部の伸線方向に垂直な断面において、図5(c)に示す厚み中心線3cの全長Lを5分割したとき、外側に存在する2箇所の分割位置における厚み平均を意味する。パーライトコロニー3の粒界3aの幅3bを、パーライトコロニー3の長さ方向略中心部で測定する理由は、紡錘型のパーライトコロニー3の幅3bがパーライトコロニー3の長さ方向の位置で変動するためである。
極細鋼線10の延性をより一層向上させるためには、上記の曲率半径は6.0μm以上であることが好ましく、パーライトコロニー3の幅3bは0.4μm以上であることが好ましい。極細鋼線10を製造する際の伸線加工の真歪が過剰に大きくなると、上記の曲率半径が5.0μm未満になる、及び/又は、パーライトコロニー3の幅3bが0.2μm未満になる。その結果、極細鋼線10の延性が低下して、極細鋼線10を撚り線加工する際にデラミネーションが発生し易くなる。
次に、極細鋼線の母材の成分組成について説明する。なお、成分組成の含有量の「%」は「質量%」を意味する。なお、残部はFeおよび不純物である。
C:0.60〜0.80%
Cは、鋼線のパーライトの面積率を高め、優れた伸線加工性及び高強度を得るために必要な元素である。極細鋼線では、主に、伸線加工によってラメラ間隔(フェライトの幅)を微細にし、強度を高める。しかし、C含有量が0.60%未満であると、非パーライト組織が増加したり、強度を高めるために伸線加工における加工度を高めたりする必要が生じる。このため、伸線加工によって、延性を損なわずに安定して十分な引張強さを得ることが難しくなる。したがって、極細鋼線の強度と延性を確保するために、C含有量の下限は0.60%以上とし、0.62%以上であることが好ましい。一方、C含有量が0.80%を超えると、強度が高くなり過ぎて、延性を確保することが難しくなる。このため、C含有量の上限を0.80%以下とし、0.75%以下とすることが好ましい。
Siは、脱酸元素であり、パーライト中のフェライトの強化にも寄与する。この効果を得るには、0.05%以上のSiを添加することが必要であり、0.15%以上含有することが好ましい。一方、0.35%を超えるSiを添加しても上記効果が飽和するため、Si量の上限を0.35%以下とし、0.30%以下とすることが好ましい。
Mnは、Siと同様に脱酸に用いられる元素であり、また、焼入性を向上させて、非パーライト組織である初析フェライトの生成の抑制にも寄与する。この効果を得るには、0.25%以上のMnを添加することが必要であり、0.30%以上含有することが好ましい。一方、Mn含有量が0.9%を超えると、Mn偏析が生じ、非パーライト組織であるベイナイトなど硬質な相が過剰に生成する。そのため、過剰なMnの含有は、伸線加工中の破断の発生や、極細鋼線の延性の劣化の原因にもなる。したがって、Mn含有量の上限を0.90%以下とし、0.85%以下とすることが好ましい。
Cr:0.01〜1.00%
Crは、パーライトのラメラ間隔を微細化し、引張強さや伸線加工性の向上に寄与する元素である。この効果を得るためには、0.01%以上のCrを添加することが好ましく、0.02%以上含有することがより好ましい。一方、Crを過剰に添加すると、パーライト変態が遅延することがあるため、Cr含有量の上限を1.00%以下とすることが好ましく、0.50%以下とすることがより好ましい。
Nbは、鋼中のCと結合して炭化物を形成し、結晶粒径を細粒化させる元素である。伸線加工性を高めるには、0.010%以上のNbを添加することが好ましく、0.02%以上含有することがより好ましい。一方、Nbを過剰に添加すると、粗大なNbCなどの炭化物が生成して、伸線加工性を損なう場合があるため、Nb含有量の上限を0.200%以下にすることが好ましく、0.18%以下とすることがより好ましい。
Vは、Nbと同様、結晶粒径の細粒化に寄与する元素である。伸線加工性を高めるには、0.01%以上のVを添加することが好ましく、0.02%以上含有することがより好ましい。一方、Vを過剰に添加すると、粗大なV4C3などの炭化物が生成して、伸線加工性を損なう場合がある。したがって、V含有量の上限を0.50%以下にすることが好ましく、0.45%以下とすることがより好ましい。
Moは、焼入性を高めて、非パーライト組織である初析フェライトの生成の抑制に寄与する元素である。この効果を得るには、0.01%以上のMoを添加することが好ましく、0.02%以上含有することがより好ましい。一方、Moを過剰に添加すると、非パーライト組織であるベイナイトが生成し、伸線加工性を損なう場合がある。したがって、Mo含有量の上限を0.50%以下とすることが好ましく、0.45%以下とすることがより好ましい。
Bは、微量の添加で焼入れ性の向上に寄与する元素である。非パーライト組織である初析フェライトの生成を抑制するには、0.0004%以上のBを添加することが好ましく、0.0005%以上含有することがより好ましい。一方、Bを過剰に添加すると、粗大なFe3(CB)6などの炭化物を生成し、延性を損なう場合がある。したがって、B量の上限を0.0030%以下にすることが好ましく、0.0025%以下とすることがより好ましい。
Ti:0.002〜0.100%
Al、Tiは、結晶粒径を微細化させるために、一方又は両方を、0.002%以上添加することが好ましく、0.003%以上含有することがより好ましい。一方、これらを過剰に添加すると、粗大な酸化物や窒化物を生成し、延性を損なう場合がある。したがって、Al、Tiの一方又は両方の含有量の上限は、0.100%以下が好ましく、より好ましくは0.05%以下とする。
本発明の高強度極細鋼線は、例えば、以下に示す製造方法を用いて製造できる。
まず、上記のいずれかの母材の成分組成からなり、面積率で85.0%以上がパーライトであり、図6に示すパーライトブロック4のサイズが10〜30μmであり、線径が2.5〜4.5mmである熱間圧延線材を製造する。熱間圧延線材は、高強度極細鋼線10の素材として用いるものである。
このような条件で製造された熱間圧延線材は、パーライトの面積率が85.0%以上、パーライトブロック4のサイズが10〜30μmとなる。
その後、熱間圧延線材上に、例えば、湿式電解プロセスにより、電気Cuめっきを施すことによりCuめっき層を形成する(Cuめっき工程)。
Cuめっき工程において形成されたCuめっき層2bのCu含有率は、90%以上である。Cuめっき層のCu含有率は、後述する伸線加工後に、Cu含有率が90%以上のCuめっき層2bを有するめっき層2を形成できればよく、100%であってもよい。
伸線加工の真歪を大きくすることによって、極細鋼線の強度を向上させることができる。本実施形態においては、線径が2.5〜4.5mmの熱間圧延線材を、0.18〜0.45mmまで湿式伸線加工することにより、強度が3000MPa以上の極細鋼線を得ることができる。
以上の工程により、本発明の極細鋼線が得られる。
また、本実施形態の製造方法では、ブラスめっき工程を行うことによりブラスめっき層を形成している。このため、本実施形態の製造方法は、銅めっきと亜鉛めっきとを別々に施した後、銅と亜鉛とを合金化するための拡散熱処理を施してブラスめっき層を形成する場合と比較して、生産性に優れている。また、本実施形態の製造方法では、中間パテンティングおよび最終パテンティングを省略できるので、生産性に優れている。よって、本実施形態の製造方法は、省エネルギー化が可能であり、産業上の貢献が極めて顕著である。
Cuめっき工程において形成されたCuめっき層の組成は、Cuを94%含むものであった。また、ブラスめっき工程において形成されたブラスめっき層の組成は、Cuを63%含み、Znを37%含むものであった。
湿式伸線加工では、加工発熱を抑制するため、ダイスのアプローチ角度を全角で10〜12°とし、湿式伸線加工の後半(線径0.9mm以下の伸線加工)については、ダイヤモンドダイスを使用した。
更に、以下に示す測定方法により、母材のパーライトの面積率を求めた。
また、以下に示す測定方法により、熱間圧延線材のパーライトブロックのサイズを測定した。
また、以下に示す評価方法により、極細鋼線の耐撚り線断線性およびゴム接着性の評価を行った。
極細鋼線の伸線方向に垂直な断面で、母材表面から深さ方向に20μmまでの領域で、電子線後方散乱回折法(EBSD)による測定を行った。EBSDによる測定は、極細鋼線の伸線方向に垂直な断面にArイオンミリングを施し、観察する全断面で行い、20×20μmの領域で、0.05μmステップでフェライト結晶方位データマップを採取した。
また、パーライトコロニーの長さ方向略中心部の伸線方向に垂直な断面において、図5(c)に示す厚み中心線3cの全長Lを5分割したとき、外側に存在する2箇所の分割位置における厚みを測定し、その平均値を算出し、パーライトコロニーの幅とした。
本発明者らは、極細鋼線の母材におけるパーライトの面積率を測定するため、伸線方向に垂直な断面を電解腐食して、以下に説明するように、SEMにより組織観察を行った。非パーライト組織は、ベイナイト、初析フェライトなど、パーライト(板状のフェライトとセメンタイトの層状構造)以外の組織である。非パーライト組織は、層状構造であるパーライトと比較して、幅の広い領域のフェライトを有し、SEM写真上では黒いコントラストとして観察される。極細鋼線の略円形の伸線方向に垂直な断面の中心近傍と、極細鋼線の最表層から10μm程度の部分と、極細鋼線の線径をDとしたときD/4に対応する位置とにおいて、略円形の伸線方向に垂直な断面の周方向に0°、90°、180°、270°の合計12カ所で、2000倍で写真撮影を行った。そして、直径0.4μmに相当する円内の領域に、干渉するセメンタイトが存在しない場合、その円内は非パーライト組織であると判定し、非パーライト組織を除外してパーライトの面積率を求めた。
熱間圧延線材のパーライトブロックのサイズを測定する場合、EBSDによって結晶方位差が9°以上の境界をパーライトブロック粒界と定義する。境界の結晶方位差が9°以上の条件が途中で途切れる場合は、パーライトブロック粒界とは見なさず、無視する。このようにして、フェライト結晶方位のマップを作成した領域で、9°以上の結晶方位差を持つ境界を定義し、パーライトブロック粒界がひとつの閉じた領域を包囲する場合、この領域の円相当径をパーライトブロックとして求める。
めっき層の観察は、走査型電子顕微鏡(SEM)と、これに付属するエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いて行った。そして、EDSにより極細鋼線の伸線方向に垂直な断面のめっき層の組成マップを作成した。EDSのデータを基に、めっき層にCu、Zn、Feの3元素のみが存在するものと仮定して、ZAF法により、ブラスめっき層及びCuめっき層のCu含有量及びZn含有量を算出した。また、得られた組成マップを任意の視野で観察し、面積が5μm2以上のCuめっき層を目視で判断できる場合は、Cuめっき層が存在すると判断した。
本発明において、耐撚り線断線性は、極細鋼線の一端を把持して固定し、他端を回転させることにより破断するまで捻じりを加え、極細鋼線の破断部近傍の形態及びトルクの降下で延性を判定することによって、評価した。破断部近傍の形態観察では、鋼線長手方向に対して破断面が垂直で平坦な形状、かつ、捻じり変形中の鋼線のトルクの急激な降下が認められない場合、十分な耐撚り線断線性がある(デラミ無)と判定した。一方、耐撚り線断線性が劣る極細鋼線の場合、捻じり変形によって、いわゆるデラミネーションが発生する(デラミ有)。この場合、捻じり変形中にトルクが急激に降下したり、破断後の鋼線の破断形態が縦割れとなる。
本発明において、ゴム接着性は、極細鋼線をタイヤゴムに埋め込んだ後、湿熱劣化処理を施して評価した。湿熱劣化処理は、経時変化を促進させる処理である。
本発明においては、ゴム接着性は、下記の式で示される湿熱劣化処理前後の引き抜き力の比で評価した。
ゴム接着性(耐湿熱劣化性)=(湿熱劣化強度B/初期接着強度A)×100(%)
極細鋼線の片端部を、引張試験器の把持に必要な部分を適宜突き出した状態で、粘土状のタイヤゴムコンパウンド中に所定の長さで埋め込み、約1mmの厚みで覆われるように形成し、評価用試験体とした。次いで、評価用試験体に対して150℃の環境下で30分間加熱する加硫熱処理を行って極細鋼線とゴムとを接着した。その後、評価用試験体の極細鋼線の片端部の突き出した部分と、他端のゴム部とをそれぞれ引張試験装置にチャッキングして引き抜くことにより、初期の接着強度(初期接着強度A)を測定した。
初期接着強度Aの測定と同様の条件で加硫熱処理を行った評価用試験体に対し、さらに温度85℃、湿度95%の環境で150時間保持する湿熱劣化処理を行い、初期接着強度Aの測定と同様の方法で引き抜くことにより、湿熱劣化処理後の接着強度(湿熱劣化強度B)を測定した。
その結果、No.1〜5、No.8〜12、No.15〜19は、上記の第1界面および第2界面を有するものであった。これに対し、No.6、7、13、14、20〜22では、上記の第1界面および第2界面が形成されていなかった。
表1に示す伸線加工の真歪は、湿式伸線加工によって導入された加工歪みであり、素材径(熱間圧延線材の直径)と鋼線径(極細鋼線の直径)から、2ln(素材径/鋼線径)によって求めた。「ln」は自然対数である。
No.6は、前述の拡散ブラスめっき処理を行った後に、湿式伸線加工を行った例である。表1に示すように、No.6では、めっき層にブラスめっき層は存在するが、Cuめっき層が存在せず、上記の第1界面および第2界面が形成されておらず、耐撚り線断線性およびゴム接着性が低下している。
No.9及び10は、パーライトコロニーの曲率半径が小さく、幅が狭い例であり、耐撚り線断線性が低下している。この原因は、伸線加工の真歪が大きく、伸線加工中に鋼線の材質が劣化したことであると推定される。
No.14は、Cuめっきを施さずに、ブラスめっきのみを行った例であり、Cuめっき層が存在しない例である。No.14は、上記の第1界面および第2界面が形成されておらず、十分な応力緩和性が得られないため耐撚り線断線線性が不足している。また、No.14は、Cuの供給源であるCuめっき層がないためゴム接着性も不足している。
Claims (4)
- 母材と、前記母材の表面に形成されためっき層とを有し、線径が0.18〜0.45mmであり、引張強さが3000MPa以上である高強度極細鋼線であって、
前記母材は、質量%で、
C:0.60%〜0.80%、
Si:0.05〜0.35%、
Mn:0.20〜0.90%
を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、
金属組織は、面積率で85.0%以上がパーライトであり、伸線方向に垂直な断面における前記母材表面から深さ方向に20μmまでの領域に存在するパーライトコロニー粒界の湾曲の曲率半径が5.0〜10.0μm、パーライトコロニーの幅が0.2〜1.5μmであり、
前記めっき層は、前記母材表面に形成されたCu含有量が90質量%以上であるCuめっき層と、前記Cuめっき層の外側に形成されたCuとZnとの比率(Cu含有量(質量%)/Zn含有量(質量%))が1.2〜2.3であるブラスめっき層とを有し、
前記めっき層と前記母材との界面である第1界面は、前記高強度極細鋼線の外面形状に沿って延在する第1平坦部と、前記第1平坦部から前記母材の内部に向かって陥入している第1陥入部とを有し、
前記Cuめっき層と前記ブラスめっき層との界面である第2界面は、前記第1界面の形状に沿って延在する第2平坦部と、前記第2平坦部から前記ブラスめっき層の内部に向かって陥入して形成されている第2陥入部とを有することを特徴とする高強度極細鋼線。 - 前記母材が、更に、質量%で、
Cr:0.01〜1.00%、
を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度極細鋼線。 - 前記母材が、更に、質量%で、
Nb:0.010〜0.200%、
V :0.01〜0.50%、
Mo:0.01〜0.50%、
B :0.0004〜0.0030%
Al:0.002〜0.100%、
Ti:0.002〜0.100%
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高強度極細鋼線。 - 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の成分組成からなり、面積率で85.0%以上がパーライトであり、パーライトブロックのサイズが10〜30μmであり、線径が2.5〜4.5mmである熱間圧延線材を製造する工程と、
前記熱間圧延線材上にCuめっき層を形成するCuめっき工程と、
前記Cuめっき工程後の前記熱間圧延線材上にブラスめっき層を形成するブラスめっき工程と、
前記ブラスめっき工程後の前記熱間圧延線材を、加工発熱を抑制しながら伸線加工することにより、線径0.18〜0.45mmとする伸線加工工程とを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の高強度極細鋼線の製造方法。
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