JP6248862B2 - ゴムとの接着性に優れた極細めっき鋼線およびそれを用いたゴム複合体 - Google Patents

ゴムとの接着性に優れた極細めっき鋼線およびそれを用いたゴム複合体 Download PDF

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Description

本発明は、スチールコードなど、タイヤを始めとする各種ゴム製品の補強材に使用される、表面にめっき処理が施された極細鋼線であって、ゴムとの接着性に優れた極細めっき鋼線およびそれを用いたゴム複合体に関するものである。
ゴム補強材、例えば、タイヤの補強材として使用されているスチールコードの表面には、ブラスめっきが形成されている。このスチールコードを、未硫化ゴムに埋め込み、加硫することにより、スチールコードとゴムとを接着させる。なお、加硫は、ゴム製品を製造する際の最終工程であり、150〜200℃に20〜40分加圧、加熱する工程である。加硫によって、ゴムの架橋とともにスチールコードのブラスめっきとゴムとの界面に接着層が生成する。この接着層は、ブラスめっきのCu及びZnとゴムに含まれるS(硫黄)との反応によって形成された硫化物である。
このように、スチールコードとゴムとは、加硫時に生成する硫化物によって接着される。そのため、ゴム中には、硫化物の生成を促進する触媒としてCoを含む有機コバルト塩が配合されることがある。Coは、スチールコードとゴムとの初期の接着強度を確保するためには有用である。しかし、タイヤなどを高温、高湿環境で使用すると、ブラスめっきのCu及びZnとゴムに含まれるSとの反応が進行する。その結果、接着層が厚くなり、硫化物の組成が変化し、スチールコードとゴムとの接着強度が低下する。
さらに、有機コバルト塩は、ゴム分子の二重結合を切断し、ゴムを劣化させるという問題がある。また、CuとSとの加硫反応の触媒として作用するCoは希少金属であり、ゴムにCoを含有させると、コストが非常に高くなる。そのため、タイヤなどのゴムから有機コバルト塩を削減することが望まれている。
このような問題に対して、ブラスめっきの検討がなされ、Coを含むブラスめっきを設けたスチールコード(例えば、特許文献1、2参照)。また、Niを含むブラスめっきの提案(特許文献3)、Mnを含むブラスめっき(特許文献4)によりゴムとの接着性の改善について各種提案されている。しかし、CoやNi、Mnを含むブラスめっきはめっき層が硬くなるためにめっき後スチールコードを製造するための伸線性を低下させ、スチールコードの延性低下や断線確率が増加するため実際の適用は困難であった。
さらに、ブラスめっきや亜鉛めっきに比べて、ゴムとの接着性や伸線加工性に優れためっき層として、Zn−Mo−Xめっき(Xは、Co、Fe又はNi)が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかし、亜鉛合金めっきを設けた鋼線を伸線加工すると、伸線加工性が低下し、断線が発生しやすくなるという問題がある。
特開平1−98632号公報 特開2002−13085号公報 特開平1−177390号公報 特開昭61−243194号公報 特開2000−54185号公報
本発明は、Cu−Znに第三成分を含むめっきを設けた極細めっき鋼線よりも生産性を損なわず、また、伸線加工性を劣化させることなく、さらに、Co塩を配合しないゴムとの接着性に優れ、かつ時間が経過しても接着強度の劣化が少ない、ゴムとの接着性に優れた極細めっき鋼線を提供するものである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究し、その結果、Cu−Znめっきに少量のCo、Niに加え、極少量のMnを含有させることにより、極細めっき鋼線とゴム加硫処理時にそれぞれの成分元素の機能を分担させることにより、硫化物生成反応を促進させつつ、Cu硫化物の過剰反応を抑えることにより強固な接着層を形成し、接着強度を向上させ、かつ、接着強度の経年劣化を抑制することが可能な、極細めっき鋼線が得られることを見出して本発明を完成した。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)線径が0.1〜0.4mmであり、表面に、平均厚さが50〜500nmであるめっき層を有し、該めっき層が、質量%で、
Cu:60〜75%、
Mn:0.05〜1%、
CoまたはNiのいずれかまたは合計:0.1〜5%
を含有し、
Mn/(Co+Ni):0.2〜2であり、
残部がZn及び不可避的不純物からなることを特徴とするゴムとの接着性に優れた極細めっき鋼線。
(2)(1)記載の極細鋼線を補強材としてゴム組成物に埋設したゴム複合体。
(3)前記ゴム組成物に有機酸Co塩が含まれていない(2)記載のゴム複合体。
である。
本発明の極細めっき鋼線によれば、スチールコードなどの極細めっき鋼線とゴムとの接着強度が、加硫直後から良好であり、かつ、タイヤの使用時などの高温及び多湿の環境で時間が経過しても接着強度の劣化が小さく、優れたゴムとの接着性を確保することができる。さらに、ゴムに有機Co塩を含有させる必要がなく、ゴムの寿命も長くなり、伸線加工性も悪化しないため製造コストの削減が可能となり、産業上の貢献が極めて顕著である。
本発明のめっき組成の適正範囲を示す図である。 本発明の製造工程を示す図である。
極細めっき鋼線とゴムとの接着は、極細鋼線表面のブラスめっきとゴムに含まれるSが加硫処理時に反応し、接着層を形成することで発現する。接着強度は接着層の架橋密度に依存し、高い架橋密度の場合はCu硫化物の組成はCu2Sに近く、接着強度が高い。一方、過剰に反応が進行した場合は架橋密度が低下し、CuSに近い組成となり、接着強度は低下すると考えられている。また、Zn硫化物も接着強度を発現するものの、その接着強度はCu硫化物の50〜70%程度であると考えられている。
本発明者らは、接着性と伸線加工性を両立するためのブラスめっき組成について検討を行った。CuとZnからなるブラスめっき層の硬さは、他の第三元素が混在すると硬くなり、伸線加工時のダイスと鋼線の間の摩擦を高め、加工発熱による延性の低下、引き抜き力の増加による欠陥の導入により断線率が高まることが分かった。
本発明者らは、さらに詳細に、ブラスめっきとゴム組成物の接着界面の観察を行った結果、ブラスめっき中の第三元素の作用は、めっきとゴム界面に濃化し、めっき中Cuとゴム中Sの反応を促進させる触媒的な作用があることがわかった。
触媒的な作用はCuが硫化物を形成する前に、めっき中の第三元素がゴム中Sと優先的に反応することで達成されるため、第三成分の硫化物形成性能が接着性に大きく影響すると考えられる。
そこで、本発明者らは、めっき層を硬くする第三元素の添加量をより低減し、ゴム中Sとブラスめっき中Cuの反応を促進させる元素について検討し、Co、Ni、Mnに着目した。これらの元素はいずれも硫化物を形成するが、その中で、Mnが最も硫化物形成能が高く、極微量で効果が発現し、接着性が改善されることを見出した。
更に、本発明者らは、極細めっき鋼線とゴムとの接着強度の経年劣化についても検討を行った。タイヤを使用する際には、タイヤの発熱による温度の影響で、時間の経過とともに、スチールコードの表面に設けためっきに含まれるCuがゴム側へ拡散して接着層が厚くなる。また、接着層中のCuはゴム側に拡散し、Cu硫化物の厚い反応層を形成し、反応密度が低下するために接着強度が低下する。
本発明者らは、ブラスめっき中のそれぞれの組成の機能を明確化し、Co、Niはブラスめっき中に存在させることでCuの拡散を抑制し、硫化物の過剰生成を抑制する機能が発現される、接着劣化が抑制されることを見いだし、Cu、(Co+Ni)、Mnそれぞれの元素を適正な含有量に制御することでゴム組成物との加硫接着後の初期接着性、時間経過後の接着劣化を抑制するとともにブラスめっき後の伸線加工性の悪化を抑制した成分を見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明について、詳細に説明する。
極細めっき鋼線線径:0.1〜0.4mm
極細めっき鋼線の線径は、しなやかさを得るために、0.4mm以下とする。これは、線径が0.4mmより太くなり、しなやかさが低下すると、タイヤのゴム補強材に使用した場合に、自動車の乗り心地が低下するためである。また、線径が太くなると、伸線加工による加工強化代が小さくなり、十分な補強効果が得られない。したがって、極細めっき鋼線の線径は0.4mmを上限とする。一方、線径を細くすると、製造工程が長くなり、最終製品の生産性も低下するために製造に時間とコストがかかる。このため、極細めっき鋼線の線径の下限を0.1mm以上とする。極細鋼線の線径は、より好ましくは0.17〜0.34mmである。
極細めっき鋼線の強度は、補強効果を得るため、3200MPa以上であること好ましい。鋼線の成分は必ずしも限定はされないが、強度を確保するため、C含有量を、0.6〜1.1質量%とすることが好ましい。また、鋼線の金属組織は、強度を確保するため、伸線加工されたパーライトであることが好ましい。
本発明の極細めっき鋼線は、図2に示すように、熱間圧延、伸線加工によって製造され、めっき後にはめっき層を合金化する熱処理を施し、更に伸線加工を行う。製造工程の途中では必要に応じて熱処理を施してもよい。まず、線径が3〜5.5mmの鋼線を熱間圧延によって製造し、これを線径1〜3mmまで伸線加工する。次に、線径1〜3mmの鋼線に、必要に応じてパテンティング熱処理を行い、湿式めっきを施して、めっき層を合金化する熱処理を施し、線径が0.1〜0.4mmになるように伸線加工を行う。鋼線の引張強さは、伸線加工の加工度によって調整する。
本発明の極細めっき鋼線のめっき層は、Cu、Zn、Co、Ni、Mnからなる合金である。上述のとおり、本発明のめっき層は、適正な配合量に制御することでブラスめっきとゴムとの接着性を向上させる触媒作用とともに、かつ使用時のCuの拡散を抑制するために、接着劣化も少なく、湿式の伸線加工性の低下も抑制可能である。
以下、好ましいめっき組成について説明する。なお、めっき組成の「%」は、「質量%」を意味する。
Cu:65〜75%
Cuは、ゴムに含まれるSと硫化物を形成し、極細めっき鋼線とゴムとの接着強度に影響を及ぼす元素である。また、Cuは展伸性に富み、湿式伸線時の潤滑性を改善し、伸線加工性を向上させる元素である。Cuが少ない場合は、合金化熱処理を施した際に、非平衡層である硬質のβブラス相が増加し、伸線加工性が劣化する。極細めっき鋼線とゴムとの初期の接着強度及び伸線加工性を高めるためには、Cu量を65%以上にすることが好ましい。一方、Cu量が75%を超えると、時間経過とともにCuがゴム側に拡散し、接着層が成長して、Cu硫化物層の密度が低下し、接着強度の経年劣化を発生する。この劣化を顕著に抑制するには、Cu量の上限を75%以下にすることが好ましい。
Mn:0.05〜1%
Mnは、本発明では最も重要な元素である。Mnは、CoやNiよりもSとの親和性が強く、硫化物を生成しやすい元素であり、加硫時に極細めっき鋼線とゴムとの界面にMn硫化物を形成する。その結果、加硫初期にはCoやNi硫化物の生成が抑制され、界面近傍のSとCu硫化物の反応が促進され、強固な接着層が生成する。一方、Mnもブラスめっきの硬さを増す元素であり、適正量に制御することが重要である。Mnは、少量で効果を発現し、Cu硫化物の生成を促進させるには0.05%以上を含有させることが好ましい。一方、1%超のMnを含有させると、Cuの加硫物の生成が抑制されて初期の接着強度が低下すること、めっき層が硬くなり伸線加工性が低下するために、Mn量の上限は1%以下が好ましい。
Co、Niの一方または合計:0.1〜5%/(Co+Ni:0.1〜5%)
Co、Niともは、ブラスめっき中のCuの拡散を抑制する元素であるが、加硫時のCuとSとの反応を促進する触媒としても作用し、極細めっき鋼線とゴムとのブラスめっき中のCuの反応を短時間で行わせる作用を有する。一方、CoあるいはNi硫化物の生成によってゴム/めっき界面に多くの硫化物が生成すると、めっき中のCo、Ni濃度が減少し、Cuの拡散抑制効果が小さくなり、接着劣化が発生し易くなる。従って、Cuの拡散抑制機能を十分に発揮させるためにはCo+Niを0.1%以上含有させることが好ましい。一方、5%を超えるCo+Niを含有させるとCuの拡散が阻害され、初期の接着強度が低下する。さらに、Coの含有量が増加するとめっき層が硬化するため、伸線加工性が悪化するため、Co+Ni量の上限を5%以下にすることが好ましい。好ましくは0.5%〜3%である。
Mn/(Co+Ni):0.2〜2
本発明の、最も重要な指標である、Mn/(Co+Ni)について説明する。Mn、Co、NiのいずれもCuの拡散抑制、硫化物形成能力が高く、ゴムとの接着制御に重要な役割を果たしているが、ゴムとの接着性を高め、かつ伸線加工性を確保するためにはそれぞれの元素の機能を最大限に発揮させ、その機能を分担させることが重要である。
このために、それぞれの反応性、作用を最大限にはっきさせるためにMnと(Co+Ni)の含有量質量比率を適正に制御する。Mn/(Co+Ni)が0.2未満ではCo、Niに対するMnの優先的な硫化物形成によるCu硫化物の生成促進作用が低下し、本発明の効果が得られないためMn/(Co+Ni)は0.2以上とすることが好ましい。Mn/(Co+Ni)が2を超えて配合されると、Mn硫化物が多く生成し、Co、Ni硫化物が減少するためにめっき層でのCu拡散抑制効果が大きくなり、Cuがゴム中Sと反応し、接着層を形成する接着作用を阻害し、十分な接着強度が得られないため、Mn/(Co+Ni)の上限を2とした。より好ましくは0.4〜1.5である。
ブラスめっき中MnとCo+Niの本発明の範囲を図1に示す。
Co、Ni、Mnは、湿式めっきによりZnとの合金めっき析出が可能な元素であり、鋼線表面にCuめっき後、Zn−Co、Zn−Ni、Zn−Mnの合金めっきあるいはZn、Co、Ni、Mnそれぞれを層状にめっきし、拡散熱処理して合金化する。なお、本発明のめっきは、ブラスめっきにCo、Ni、Mnを添加したものであるから、Cu、Co、Ni、Mnの残部は、Zn及び不可避的不純物である。
Cu−Zn−(Co+Ni)−Mnめっきが薄すぎると、めっきを施す前の鋼線の表面の凹凸に起因して、めっき鋼線の表面に、局所的に鉄が露出した部分(Fe露出部)が生じることがある。このFe露出部では、ゴムとの接着は期待できず、時間の経過により酸素と水分が浸透し、鉄錆が発生する。鉄錆が生じると体積膨張に起因して、接着強度が著しく低下する。したがって、Cu−Zn−(Co+Ni)−Mnめっきの平均厚さを50nm以上にすることが好ましい。一方、Cu−Zn−(Co+Ni)−Mnめっきが厚すぎると、使用時に接着層に供給されるCu量が増加し、時間の経過とともに、接着層が成長、Cu硫化物の組成がCuSに近くなり、接着強度が低下することがある。したがって、極細めっき鋼線とゴムとの接着強度の経年劣化を抑制するには、Cu−Zn−(Co+Ni)−Mnめっきの平均厚さを500nm以下にすることが好ましい。Cu−Zn−(Co+Ni)−Mnめっきの平均厚さは150〜350nmがさらに好ましい。
極細めっき鋼線のめっき層の平均厚さは、70%アンモニア水溶液に25g/lのトリクロロ酢酸を混合したアルカリ溶液に浸漬して溶解した重量変化から単位長さ当たりの合計めっき質量(W)を求め、溶解液中のCu、Zn、Co、Ni、Mnの元素をICP(誘導結合プラズマ発光分光分析)あるいは原子吸光分析によりそれぞれの元素の濃度(Wx)を求め、各金属元素の濃度から、めっき層の平均比重ρを求め、以下の式でめっきの平均厚さを求める。
めっき厚t=W/(A×ρ)
ただし、t:平均めっき厚さ、W:単位長さのめっき質量、A:単位長さのめっき層の表面積、ρ:めっき層の平均比重である。めっき層の平均比重ρは、下記式によって算出することができる。
ρ=ρCu×WCu+ρZn×WZn+ρNi×WNi+ρCo×WCo+ρMn×WMn
ただし、ρCu:Cuの比重、ρZn:Znの比重、ρNi:Niの比重、ρCo:Coの比重、ρMn:Mnの比重である。また、WCu:めっき中Cuの質量比、WZn:めっき中Znの質量比、WNi:めっき中Niの質量比、WCo:めっき中Coの質量比、WMn:めっき中Mnの質量比である。
他にXPS(X線光電子分光分析)、AES(オージェ電子分光法)等の表面分析が可能な機器分析により、表面から元素のデプスプロファイルを測定しても推定可能である。ただし、機器分析では、鋼線の円周方向、長手方向での測定部位によって、めっき厚が変動するため、測定箇所が少ないと正確なめっき厚さを評価できない可能性がある。めっき溶解法によって平均めっき厚さを求めることが好ましい。
次に、本発明の極細めっき鋼線の製造工程の例について説明する。図2の製造工程のブロック図に示すように、まず、熱間圧延によって製造した線径が3〜5.5mmの圧延材を、デスケーリングして、これを線径1〜3mmまで伸線加工(乾式伸線)して、コイルに巻き取る。次に、コイルから繰り出した線径1〜3mmの鋼線に、パテンティング熱処理を施し、加工の影響を除去することが好ましい。さらに、必要に応じて、酸洗によるデスケーリング、脱脂のめっき前処理を施す。
めっき前処理に引き続き、湿式Cuめっきを行い、その後、Zn−CoあるいはZn−Niの合金めっきを行いさらにZn−Mn合金めっきを行う。ここで、Zn−Mn合金めっきに含まれるMn量は、電流密度を調整することで、変化し、定電流及び電流密度を周期的に変動(サイクル電流)させて制御することができる。また、場合によってはCuめっき、Znめっきを行った後、Co、Niめっきを単独で行ってもよい。ただし、比較的、めっき層に含まれる量が少ないMnの含有量を制御するためには、Zn−Mnが同時に析出する合金めっきが好ましいめっき処理形態である。
めっき後、鋼線に拡散熱処理(合金化処理)を施し、Cu、Zn、Co、Ni、Mnを合金化する。拡散熱処理は、CuとZnの合金化反応によりブラスめっきとする条件でよく、温度は450〜600℃、保持時間は2〜15sが好ましい。めっき層を合金化した後、必要に応じてコイルに巻き取り、繰り出して更に湿式伸線により、極細めっき鋼線の線径が0.1〜0.4mmになるように伸線加工する。その後、撚り加工してスチールコードとし、コイルに巻き取る。
Zn−Mn合金めっきは、硫酸亜鉛、硫酸亜鉛を主体としためっきに硫酸マンガンからなるめっき浴を用いて合金めっきが可能である。電流密度、処理時間でZn−Mn合金めっきの厚さ、Mn含有量を制御することができる。
低電流密度ではMn量が多くなるがめっきの効率が悪い。そのため、Mnを効率よく、安定的に析出させるためには、Mn析出が多くなる15A/dm2以下の低電流密度と、析出速度が速い20A/dm2以上の高電流密度を交互に付与することが好ましい。
高電流密度と低電流密度を交互に付与し、付与した電流でZn−Mn合金めっきを安定的に析出させるためには、電流の印加時間の下限を50ms以上にすることが好ましい。一方、電硫の印加時間の上限は、より安定しためっきを析出させるために1000ms以下が好ましい。高電流密度と低電流密度の印加時間の組み合わせは特に限定されず、最適めっきが得られる条件を適宜選定すればよい。
本発明の極細めっき鋼線をゴム複合体に埋設して補強したゴム複合体を得ることが可能であり、ゴムとの高い接着強度確保と接着劣化防止が可能となる。例えば、タイヤに適用する場合は、タイヤの走行性能にあわせて適宜複数本撚り合わせ、ゴムとカーボンブラック、硫黄、酸化亜鉛、その他各種添加剤を配合した原材料を練ったシート状ゴムに挟み込まれ、補強ベルト構造とする。その後、タイヤ構成部材を貼り合わせて加硫機にセットし、プレス、加熱し、ゴムの強度を発現するための架橋と同時にゴムと極細めっき鋼線との接着を行う。
また、ゴム配合原料にはブラスめっきとの接着促進剤として配合される、有機酸Co塩(例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト等)を含まなくてもMn、Co、Niの作用により十分な接着反応層を形成するために、高い接着強度のゴム複合体を得ることが可能である。
本発明の鋼材成分は特に限定はされないが、C:0.72〜1.1mass%、Si:0.2〜0.5mass%、Mn:0.2〜0.6mass%、P:0.01mass%以下、S:0.01mass%以下、Cr:0.01〜0.35mass%の成分を有し、パーライト面積率が95%以上からなる材料が極細線の強度を確保し、ゴム複合体の補強効果を発揮させるのに好ましい。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本実施例に記載の内容により本発明の内容は制限されない。
本発明の製造工程は図2に示すように、表1に示す成分を有する鋼材を熱間圧延し、線径が5.5mmの熱間圧延線材を製造した。得られた熱間圧延線材を酸洗し、スケールを除去した後、石灰処理を行い、ステアリン酸Naを主体とした乾式潤滑剤を用いて1.5mmまで伸線加工した。この伸線材を950℃に加熱して75s保持し、金属組織をオーステナイトにした後、585℃の鉛浴に20s浸漬するパテンティング処理を行った。
パテンティング処理を行った鋼線に、連続して、硫酸による電解酸洗とアルカリ溶液による電解脱脂を施し、ピロリン酸銅めっき、Zn−Co、あるいはZn−Niのいずれかまたは両方のめっきを行った後、更にZn−Mnの合金めっきを行い、480℃に加熱して8s保持する合金化処理を行い、Cu−Zn−Co(Ni)−Mnめっきとし、巻き取った。ここで、Zn−Co(Ni)−Mn合金めっきに含まれるMnは、電流密度を変えてMn共析量を変えて制御した。
さらに、湿式潤滑剤を用いた湿式伸線により、線径が0.1〜0.4mmになるように伸線加工を行い、極細めっき鋼線を製造した。比較のために、Cuめっき及びZnめっきと拡散熱処理によって、平均厚さが230nmであり、Cu濃度が63%であるブラスめっき設けた極細めっき鋼線を製造した。伸線加工性は、ダイス寿命と断線発生率によって評価し、ブラスめっき鋼線(下記表2の鋼線No.14)の伸線性を100とし、これに対する指数を極細めっき鋼線の伸線加工性として評価した。
極細めっき鋼線から試料を採取し、レーザー式非接触線径測定装置によって極細めっき鋼線の線径を測定した。めっき厚さは、70%アンモニア水溶液に25g/lのトリクロロ酢酸を混合したアルカリ溶液に浸漬し、めっきを溶解し、重量変化からめっき付着量を求め、溶解液をICP分析でCu、Zn、Co、Ni、Mn濃度を分析し、計算して求めた。表2に極細めっき鋼線の線径、めっき組成(なお、残部はZn及び不可避不純物である)、めっき組成から求めたMn/(Co+Mn)および平均めっき厚さを示す。
次に、極細めっき鋼線の引張試験を行い、引張強さを測定し、従来のブラスめっき鋼線(表2の鋼線No.14)の引張強さを100とした指数で評価した。極細めっき鋼線4本を、5mmのピッチで撚り合わせてコードとし、金型にセットして、表3に示すゴム組成物に埋め込み、160℃で、30分加熱するホットプレスにより加硫処理を行い、接着性評価用試料を製造した。
この試料を用いて、初期の接着強度(初期接着強度)及び接着強度の経時による劣化(経年劣化)を評価した。初期接着強度は、引張試験装置でコードをゴムから引き抜いた時の引抜力を測定し、最大引抜力で評価した。また、接着強度の経年劣化は、試料を80℃の水に3日浸漬した後、初期接着強度と同様にして、コードをゴムから引き抜いた時の最大引抜力として評価した。なお、初期接着強度及び経年劣化は、比較のために製造した、ブラスめっき鋼線(表2の鋼線No.14を用い、ゴム組成物のCo塩を有りとしたとき(表4の試験No.24))の初期接着強を100とし、これに対する指数で評価した。
表4に、ゴム組成物のCo塩の有無(ゴム種類)、極細めっき鋼線とゴムとの初期接着強度及び経年劣化の評価結果、伸線加工性の評価結果、極細めっき鋼線の引張強さ(極細鋼線の強度)を示す。本発明の極細めっき鋼線は、ナフテン酸コバルト塩を配合しない条件でも十分な初期接着強度が確保され、かつ経年劣化がブラスめっきに比べて小さいことがわかる。
一方、従来のCuとZnからなるブラスめっきである鋼線No.14は、ナフテン酸コバルトを配合したゴム組成(Co塩あり)の場合は試験NO.24に示すように加硫直後の初期接着性は高いものの、劣化処理後の接着性(経年劣化)は低下した。また、従来のブラスめっきは、試験No.14のナフテン酸コバルトの配合がないゴム組成(Co塩なし)では接着反応性が低下し、初期接着強度が低下している。なお、経年劣化も不十分である。
試験No.15は、めっきに含まれるCu量が少ないため、初期接着性が低下するとともに、めっき中のβブラスが増加し、伸線加工性が悪化した例である。試験No.16は、めっきに含まれるCu量が多いため、経年劣化が大きくなった例である。試験No.17はMnを含まず、Co+Ni量が本発明の範囲を超えて多く配合されたため、初期接着が著しく低下し、めっき層の加工性が低下し、伸線加工性が悪化した例である。試験No.18は、めっきに含まれるMn/(Co+Ni)が少なく、Mnの効果が得られないため、初期接着と共に劣化後の接着強度も低下した例である。No.19は、Mnが多いため、めっきが硬くなり伸線加工性が低下した例である。
試験No.20は極細鋼線の線径が太いため極細線の強度が低下し、ゴム複合体の補強効果が小さくなった例である。試験No.21は極細鋼線の線径が細いため、伸線時に断線が発生し、生産性が著しく低下した例である。
試験No.22は、めっきが薄く、局部的に地鉄が露出した部分が大きくなり、初期接着強度が低下し、伸線加工性が悪化した例である。試験No.23は、めっきが厚すぎるため、経年劣化が発生した例である。試験No.24は、CuとZnのブラスめっき極細鋼線とCo塩を配合したゴムを用いた例で、初期接着性は十分であるが劣化後の反応が進行し、接着劣化が進行した例である。
本発明の極細めっき鋼線は、ゴムと補強材が強固に接着され、時間が経過してもその接着強度の低下が著しく小さいため、ゴム複合体の補強効果が高く維持可能である。したがって、タイヤコード及びビードワイヤだけでなく、ゴムホースやベルトの補強材として使用することが可能であり、産業上の利用可能性が極めて高い。

Claims (3)

  1. 線径が0.1〜0.4mmであり、表面に、平均厚さが50〜500nmであるめっき層を有し、該めっき層が、質量%で、
    Cu:60〜75%、
    Mn:0.05〜1%、
    CoまたはNiのいずれかまたは合計:0.1〜5%
    を含有し、
    Mn/(Co+Ni):0.2〜2であり、
    残部がZn及び不可避的不純物からなることを特徴とするゴムとの接着性に優れた極細めっき鋼線。
  2. 請求項1記載のめっき鋼線とゴム組成物からなることを特徴とするゴム複合体。
  3. 前記ゴム組成物には有機酸Co塩を含まないことを特徴とする請求項2記載のゴム複合体。
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