JP2017128546A - (メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物、その合成方法および該イソシアヌレート化合物の利用 - Google Patents

(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物、その合成方法および該イソシアヌレート化合物の利用 Download PDF

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Abstract

【課題】イソシアヌレート化合物を含有する樹脂組成物ならびに、その硬化物の提供。【解決手段】トリグリシジルイソシアヌレートと(メタ)アクリル酸無水物を反応させて得られる、式(I)で示される(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物。(R1及びR2は各々独立にH又はメチル基;但し、R1及びR2が同時に水素原子である場合を除く)【選択図】なし

Description

本発明は、(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物、該イソシアヌレート化合物の合成方法、該イソシアヌレート化合物を含有する樹脂組成物およびその硬化物に関する。
イソシアヌレート化合物を熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の原料として使用した場合には、同化合物の有するリジッドなトリアジン骨格が、樹脂を構成する重合体の分子中に取り込まれることにより、樹脂の機械的強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性、耐候性(耐光性)、難燃性、電気的特性等を改善することができる。そのため、樹脂が使用される用途や、樹脂に求められる特性に応じて、種々のタイプのイソシアヌレート化合物が開発・検討され、また実用にも供されている。
本発明に関連する物質として、特許文献1〜3には、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレート(トリグリシジルイソシアヌレートに相当)と酸無水物との反応物が記載され、この反応物が、トリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートのグリシジル基に、化学式(IV)で示される酸無水物が1個付加した化合物、2個付加した化合物および3個付加した化合物の混合物と、未反応のトリス−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアヌレートを含む点が記載されている。
なお、グリシジル基に酸無水物が付加した態様は、化学式(V)で示される。
Figure 2017128546
(式中、R及びRは、それぞれアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、又はそれらのハロゲン化、アミノ化、若しくはニトロ化誘導体である。)
Figure 2017128546
(式中、R及びRは、化学式(IV)の場合と同様である。)
国際公開第2006/035641号パンフレット 国際公開第2009/008509号パンフレット 国際公開第2015/093370号パンフレット
本発明は、(メタ)アクリロイル基およびグリシジル基を有するイソシアヌレート化合物と、該イソシアヌレート化合物の合成方法、該イソシアヌレート化合物を含有する樹脂組成物ならびに、その硬化物を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、トリグリシジルイソシアヌレートと、(メタ)アクリル酸無水物を反応させることにより、所期の目的を達成し得ることを認め、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、第1の発明は、化学式(I)で示される(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物である。
Figure 2017128546
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子もしくはメチル基を表す。但し、RおよびRが同時に水素原子である場合を除く。)
第2の発明は、化学式(II)で示されるトリグリシジルイソシアヌレートと、化学式(III)で示される(メタ)アクリル酸無水物を反応させることを特徴とする第1の発明の(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物の合成方法である。
Figure 2017128546
Figure 2017128546
(式中、RおよびRは、化学式(I)の場合と同様である。)
第3の発明は、第1の発明の(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物である。
第4の発明は、第3の発明の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物である。
本発明の(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物は、分子中に2つの(メタ)アクリロイル基と2つのグリシジル基を有するので、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂の原料として使用される場合には、架橋剤として作用し、従来のグリシジル(メタ)アクリレート化合物を使用した場合に比べて、高い架橋密度と十分な硬度を有し、且つ、透明性、密着性や耐湿性に優れた硬化物(樹脂)を与えることができる。
実施例1において得られた無色透明液体のIRスペクトルチャートである。
本発明の(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物(以下、本発明のイソシアヌレート化合物と云うことがある)は、前記の化学式(I)に示されるとおり、イソシアヌレート環中の1つの窒素原子と、2つの(メタ)アクリロイル基が、接続子(3価の有機基)を介して結合し、イソシアヌレート環中の他の2つの窒素原子は、それぞれグリシジル基と結合した構造を有する。
なお、本発明および本発明の説明においては、「アクリロイル」と「メタクリロイル」の両者を総称して「(メタ)アクリロイル」と云い、「アクリル」と「メタクリル」の両者を総称して「(メタ)アクリル」と云い、「アクリレート」と「メタクリレート」の両者を総称して「(メタ)アクリレート」と云う。
本発明のイソシアヌレート化合物は、
1,3−ジグリシジル−5−(2−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシ)プロピルイソシアヌレート、
1,3−ジグリシジル−5−(2−メタクリロイルオキシ−3−アクリロイルオキシ)プロピルイソシアヌレート、
1,3−ジグリシジル−5−(2,3−ジメタクリロイルオキシ)プロピルイソシアヌレートを包含する。
本発明のイソシアヌレート化合物は、化学式(II)で示されるトリグリシジルイソシアヌレートと、化学式(III)で示される(メタ)アクリル酸無水物を反応させることにより合成することができる(反応スキーム(A)参照)。
この反応においては、反応を促進させる為の触媒(イ)と、副反応を抑制する為の重合禁止剤(ロ)を使用することが好ましい。また、反応を阻害しない限りにおいて、反応溶媒(ハ)を使用してもよい。
Figure 2017128546
(式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子もしくはメチル基を表す。但し、RおよびRが同時に水素原子である場合を除く)
前記の(メタ)アクリル酸無水物は、アクリル酸メタクリル酸無水物とメタクリル酸無水物を包含する。
なお、アクリル酸メタクリル酸無水物は、例えば、特開昭62−158237号公報に記載の方法に準拠して、アクリル酸とメタクリル酸を、無水酢酸と反応させることにより、アクリル酸無水物およびメタクリル酸無水物との混合物として合成される。そして、この混合物から、適宜の分離手段により、アクリル酸メタクリル酸無水物を取り出すことができる。
当該(メタ)アクリル酸無水物の使用量(仕込み量)は、トリグリシジルイソシアヌレートの使用量(仕込み量)に対して、0.01〜1.00倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
前記の触媒(イ)としては、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、クラウンエーテル等が挙げられる。
第四級アンモニウム塩の例としては、テトラブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、テトラデシルアンモニウム、ヘキサデシルトリエチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、オクチルトリエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)等の塩が挙げられる。
第四級ホスホニウム塩の例としては、テトラブチルホスホニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、テトラデシルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、トリエチルオクタデシルホスホニウム、トリオクチルエチルホスホニウム、ヘキサデシルトリエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウムのハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)等の塩が挙げられる。
また、クラウンエーテルの例としては、15−クラウン−5、18−クラウン−6、21−クラウン−7、24−クラウン−8等が挙げられる。
本発明の実施においては、触媒(イ)として、これらの物質を組み合わせて使用してもよい。
触媒(イ)の使用量(仕込み量)は、(メタ)アクリル酸無水物の使用量(仕込み量)に対して、0.0001〜1.0倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
前記の重合禁止剤(ロ)としては、例えば、
ハイドロキノン、4−メトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、4−tert−ブチルカテコール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、フェノチアジン、塩化銅、硫酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等が挙げられ、これらの物質を組み合わせて使用してもよい。
重合禁止剤の使用量(仕込み量)は、(メタ)アクリル酸無水物の使用量(仕込み量)に対して、0.0001〜1.0倍モルの範囲における適宜の割合とすることが好ましい。
前記の反応溶媒(ハ)としては、反応を阻害しない限りにおいて特に制限はなく、例えば、
テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の溶剤が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて、その適宜量を使用することができる。
本発明のイソシアヌレート化合物を合成する際の反応温度は、0〜150℃の範囲に設定することが好ましく、60〜100℃の範囲に設定することがより好ましい。また、反応時間は、設定した反応温度に応じて適宜設定されるが、1〜48時間の範囲に設定することが好ましい。
この反応の終了後、例えば、反応液の濃縮や溶媒抽出法等の手段によって、反応液から目的物である本発明のイソシアヌレート化合物を分離して取り出すことができる。
更に必要により、水等による洗浄や、活性炭処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の手段を利用して精製することができる。
本発明のイソシアヌレート化合物を重合させると硬化物(樹脂)が得られるが、この重合時に本発明のイソシアヌレート化合物とは別に、他の硬化性化合物を共存させることにより、本発明のイソシアヌレート化合物と、他の硬化性化合物が共重合した硬化物を得ることができる。
なお、当該他の硬化性化合物は、重合性モノマーと、重合性モノマーが一部重合した構造を有する重合性オリゴマー(半硬化物)の両者を包含する。
前記の重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート化合物や、エポキシ化合物等が挙げらる。
(メタ)アクリレート化合物(注:(メタ)アクリレート樹脂と称されることもある)の例としては、
メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N−n−ブチル−O−(メタ)アクリロイルオキシエチルカーバメート、アクリロイルモルホリン、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリブロモベンジル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等の一官能(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリロキシプロピルトリス(メトキシ)シラン等のケイ素含有(メタ)アクリレート類;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジグリシジルエーテル−エポキシ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテル−エポキシジ(メタ)アクリレート、フェノールグリシジルエーテル−エポキシ(メタ)アクリレート、レゾルシンジグリシジルエーテル−エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル−エポキシジ(メタ)アクリレート、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドジグリシジルエーテル−エポキシ(メタ)アクリレート、
フェノールノボラック型エポキシ樹脂−(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂−(メタ)アクリレート、ビスフェノール(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF)型エポキシ樹脂−(メタ)アクリレート、ビフェノール(例えば、3,3′,5,5′−テトラメチルビフェノール)型エポキシ樹脂−(メタ)アクリレート、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート−(メタ)アクリレート等のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシ(メタ)アクリレート類;
グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のグリシジル(メタ)アクリレート類;
ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリウレタン(メタ)アクリレート類、チオウレタンアクリレート類、ポリチオウレタンアクリレート類、エステルアクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類、ポリエーテル(メタ)アクリレート類、含硫黄(メタ)アクリレート類、含硫黄多官能(メタ)アクリレート類が挙げられる。
エポキシ化合物(注:エポキシ樹脂と称されることもある)としては、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、酸化型等のエポキシ化合物が挙げられ、
グリシジルエーテル型の例としては、Bis−A型エポキシ化合物、Bis−F型エポキシ化合物、High−Br型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、アルコール型エポキシ化合物、脂肪族型エポキシ化合物(例えば、1,4−ブタンジグリシジルエーテル)等が挙げられ、
グリシジルエステル型の例としては、ヒドロフタル酸型エポキシ化合物、ダイマー酸型エポキシ化合物が挙げられ、
グリシジルアミン型の例としては、芳香族アミン型エポキシ化合物、アミノフェノール型エポキシ化合物が挙げられ、
酸化型の例としては、脂環型エポキシ化合物等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、本発明のイソシアヌレート化合物を必須成分として含有し、必要により、前記の他の硬化性化合物を含有する。
この硬化性化合物としては、前述の重合性モノマーと重合性オリゴマーを組み合わせて使用してよく、重合性モノマーとしては、先に例示した重合性モノマーを組み合わせて使用してよく(種類の異なる重合性モノマーを組み合わせて使用してよく)、重合性オリゴマーについても、種類の異なる重合性オリゴマーを組み合わせて使用してよい。
本発明の樹脂組成物中における、本発明のイソシアヌレート化合物と前記の硬化性化合物の含有量については、硬化性化合物の含有量が、本発明のイソシアヌレート化合物の含有量に対して、0〜1000倍量(重量比)の範囲における適宜の割合とすることが好ましく、0.01〜100倍量(重量比)の範囲における適宜の割合とすることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物を硬化(重合)させる方法として、光硬化および熱硬化させる方法が挙げられる。
光硬化させる方法として、活性エネルギー線を照射する方法、光重合開始剤を使用する方法、またはこれらを組み合わせた方法等が挙げられる。活性エネルギー線は、光、放射線、電磁波や電子線等を包含するが、代表的には、光、特に紫外線を表すものとする。
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤から選択することができ、それらを樹脂組成物中に含有させればよい。なお、光硬化においては、生産効率や硬化物の特性を高める為に、熱重合(熱硬化)の手段を併用してもよい。
光ラジカル重合開始剤としては、一般に使用されるものであれば特に制限無く使用可能であり、例えば、
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;
ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン類;
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;
イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類や、その他、メチルフェニルグリオキシレート等が挙げられ、これらを組み合わせて使用してもよい。
なお、光ラジカル重合開始剤には、必要により、4−ジメチルアミノ安息香酸等の安息香酸類や3級アミン類等の公知の光重合促進剤を併用することができる。
光カチオン重合開始剤としては、一般に使用されるものであれば特に制限無く使用可能であり、オニウム塩類や有機金属錯体類等を例示することができる。
オニウム塩類としては、例えば、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩が挙げられ、有機金属錯体類としては、例えば、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤として市販されている工業薬品の例としては、ADEKA社製の「オプトマーSP−150(商品名)」、同「オプトマーSP−170(商品名)」や、ゼネラルエレクトロニクス社製の「UVE−1014(商品名)」、サートマー社製の「CD−1012(商品名)」、サンアプロ社製の「CPI−100P(商品名)」等が挙げられる。
光カチオン重合開始剤の対アニオンとしては、SbF6 -、AsF6 -、B(C654 -、PF6 -等が挙げられる。
光アニオン重合開始剤としては、一般に使用されるものであれば特に制限無く使用可能であり、オニウム塩類、カーバメート類等を例示することができる。
オニウム塩類としては、例えば、1,2−ジイソプロピル−3−(ビス(ジメチルアミノ)メチレン)グアニジウム 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオナート、1,2−ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアニジウム n−ブチルトリフェニルボレート等が挙げられ、
カーバメート類としては、例えば、2−ニトロフェニルメチルピペリジン−1−カルボキシレート、1−(アントラキノン−2−イル)エチルイミダゾールカルボキシレート、1−(3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル)ピペリジン、9−アントラニルメチルジエチルカーバメート等が挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物を光硬化させる際には、例えば、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ペンゾフラビン等の増感剤を使用することができる。
本発明の樹脂組成物中における光重合開始剤の含有量は、0.001〜20重量%の割合であることが好ましく、0.01〜10重量%の割合であることがより好ましい。
一方、本発明の樹脂組成物を熱硬化させる方法として、熱重合開始剤を使用する方法が挙げられる。熱重合開始剤は、熱ラジカル重合開始剤、熱カチオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤から選択することができ、それらを樹脂組成物中に含有させればよい。
熱ラジカル重合開始剤としては、一般に使用されるものであれば特に制限無く使用可能であり、例えば、
ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソブチレート等の過酸化物、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ系化合物が挙げられ、これらを組み合わせて使用してもよい。
熱カチオン重合開始剤としては、一般に使用されるものであれば特に制限無く使用可能であり、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等の各種オニウム塩類や、有機金属錯体類等を例示することができる。
工業薬品として市販されているオニウム塩類の例としては、ADEKA社製の「アデカオプトンCP−66(商品名)」、同「アデカオプトンCP−77(商品名)」、三新化学工業社製の「サンエイドSI−60L(商品名)」、同「サンエイドSI−80L(商品名)」、同「サンエイドSI−100L(商品名)」や、日本曹達社製の「CIシリーズ(商品名)」等が挙げられる。
また、有機金属錯体類としては、アルコキシシラン−アルミニウム錯体等が挙げられる。
熱アニオン重合開始剤としては、一般に使用される熱アニオン重合開始剤であれば特に制限無く使用可能であり、例えば、エポキシ硬化剤として知られるアミン類、チオール類、イミダゾール類等を使用することができる。
アミン類としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、1,3,4,6−テトラキス(3−アミノプロピル)グリコールウリル等が挙げられ、
チオール類としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス(2−メルカプトエチル)イソシアヌレート、1,3,4,6−テトラキス(2−メルカプトエチル)グリコールウリル等が挙げられ、
イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物中における熱重合開始剤の含有量は、0.001〜20重量%の割合であることが好ましく、0.01〜10重量%の割合であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、更に、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、
顔料(チタン白、シアニンブルー、ウォッチングレッド、ベンガラ、カーボンブラック、アニリンブラック、マンガンブルー、鉄黒、ウルトラマリンブルー、ハンザレッド、クロームイエロー、クロームグリーン等)、
無機充填剤(炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、硫酸バリウム、リトポン、石コウ、ステアリン酸亜鉛、パーライト、石英、石英ガラス、溶融シリカ、球状シリカ等のシリカ粉等、球状アルミナ、破砕アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類、炭化ケイ素等の炭化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物類、銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属類や合金類、ダイヤモンド、カーボン等の炭素系材料等)、
熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(高密度、中密度、低密度の各種ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等の単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、スチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂(フェノール化合物)、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリルゴム、ウレタンゴムなどの各種エラストマー樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体などのグラフト共重合体等)、
補強剤(ガラス繊維、炭素繊維等)、
垂れ止め剤(水添ヒマシ油、微粒子無水硅酸等)、
艶消し剤(微粉シリカ、パラフィンワックス等)、
研削剤(ステアリン酸亜鉛等)、
内部離型剤(ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸カルシウムの脂肪酸金属塩、ステアリン酸アマイド等の脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス等)、
界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、粘度調整用希釈剤(有機溶剤)、カップリング剤、香料、難燃化剤などの添加剤(改質剤)を含有してもよい。
本発明の樹脂組成物の調製方法に特に制限はなく、例えば、本発明のイソシアヌレート化合物と、前述の硬化性化合物と、光重合開始剤および/または熱重合開始剤と、添加剤を混合し、あるいは、粘度調整用希釈剤(有機溶剤)に、本発明のイソシアヌレート化合物を溶解または分散させた溶液と、以下同様に、硬化性化合物と、光重合開始剤および/または熱重合開始剤と、添加剤を混合することにより調製することができる。混合の手段としては、公知の方法を採用することができる。
本発明の樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射および/または加熱により重合(硬化)し、高い架橋密度と十分な硬度を有し、且つ、透明性、密着性や耐湿性に優れた硬化物(樹脂)を与えることが期待される。
本発明の樹脂組成物は、その用途に特に制限はなく、材質が樹脂であってよい様々な分野の製品(部品・部材)に適用可能であり、電気・電子、光学、建築、土木、自動車・航空機、医療の分野や、その他、日用・雑貨品等の材料の原料として使用し得る。
例えば、電気・電子分野における部品・部材や材料の例としては、樹脂付銅箔、プリプレグ、銅張積層板、プリント配線板や、ソルダーレジストインク、層間絶縁材、接着剤、シール材、封止材、絶縁性の材料、熱伝導性の材料、ホットメルト用材料、塗料、ポッティング剤等が挙げられるが、より具体的には、層間絶縁膜、配線被覆膜等のプリント配線板や電子部品の封止材料、層形成材料;
カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、レジスト材料、配向膜等の表示装置の形成材料;
レジスト材料、バッファーコート膜等の半導体装置の形成材料;
ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等の光学部品の形成材料が挙げられる。
また、半導体実装用のリジッド配線板やフレキシブルプリント配線板の形成材料、半導体実装用装着材料、フレキシブルプリント配線板用接着剤、半導体用封止材、太陽電池用封止材、半導体用絶縁膜、フレキシブルプリント回路保護用カバーレイフィルム、配線被覆用コーティング剤等が挙げられる。
光学分野における材料の例としては、光ファイバー用コア材、クラッド材、レンズ、レンズの耐摩耗性コーティング剤等が挙げられる。
建築分野における材料の例としては、各種金属パネル・サイディングボード等の外装材の目地用シール材、コーティング材、プライマー;外装材・下地材・天井材と内装材の間に使用するシール材、接着剤、注入材、制振材、防音材、電磁波遮蔽用導電性材料、パテ材;外壁材・下地材へのタイル・石材接着用の接着剤;各種床への木質フローリング材・高分子材料系床シート・床タイル接着用の接着剤、粘着剤;各種外装材・内装材のクラック補修用注入材等が挙げられる。
土木分野における材料の例としては、道路・橋梁・トンネル・防波堤などの各種コンクリート製品の目地用シール材、コーティング材、プライマー、塗料、パテ材、注入材、吹付材、型取材等が挙げられる。
自動車・航空機分野における材料の例としては、構造材、ボディーや部品の接着剤、シール材、コーティング材、緩衝材、制振材、防音材、吹付材;自動車内装用の接着剤、粘着剤、コーティング材、発泡材;鋼板継ぎ目用のシール材、接着剤、コーティング材等が挙げられる。
医療分野における材料の例としては、人工骨、歯科印象材、医療用ゴム材料、医療用粘着剤、医療機器シール材等が挙げられる。
以下、実施例および比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例において使用した主原料は、以下のとおりである。
[主原料]
・トリグリシジルイソシアヌレート:東京化成工業社製
・無水メタクリル酸:シグマ・アルドリッチ社製
・無水アクリル酸:特開2000−128871号公報記載の方法に準拠して合成した。
・触媒:塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、和光純薬工業社製
・重合禁止剤:4−メトキシフェノール、同上
・グリシジルメタクリレート:同上、化学式(VI)参照
・光ラジカル重合開始剤:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・ジャパン社製、商品名「イルガキュア184」
・光カチオン重合開始剤:ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、プロピレンカーボネート50%溶液、サンアプロ社製、商品名「CPI−100P」
Figure 2017128546
実施例および比較例において採用した評価試験は、以下のとおりである。
[評価試験]
(1)イソシアヌレート化合物の保存安定性
遮光して40℃に調整した恒温槽内に、イソシアヌレート化合物を静置し、ゲル化するまでの日数を示した。
(2)樹脂組成物の硬化性
樹脂組成物について硬化操作を行った結果、樹脂組成物が完全に硬化した場合を「○」、半硬化であった場合を「△」、未硬化であった場合を「×」と判定した。
(3)硬化物の硬度
旧JIS−K5400に準拠して、鉛筆硬度試験(鉛筆引っかき試験)を行い、試験結果を鉛筆硬度で示した。
(4)硬化物の透明性
ヘーズメーター(形式:NDH2000、日本電色工業社製)を使用して、硬化物の透明性(全光線透過率)を測定した。
(5)硬化物の密着性
旧JIS−K5400に準拠して、クロスカット試験(碁盤目試験)を行い、剥がれなかった硬化膜のマス目の数を示した。
(6)硬化物の耐湿性
温度60℃/湿度90%RHの環境下にて500時間静置した後、前記の「(5)硬化物の密着性」の評価試験を実施し、剥がれなかった硬化膜のマス目の数を示した。
〔実施例1〕
<1,3−ジグリシジル−5−(2,3−ジメタクリロイルオキシ)プロピルイソシアヌレートの合成>
300mlのナスフラスコに、トルエン100ml、無水メタクリル酸2.32g(15.0mmol)、トリグリシジルイソシアヌレート44.59g(150.0mmol)と、触媒0.15g(0.8mmol)および重合禁止剤0.02g(0.2mmol)を仕込み、80℃にて10時間撹拌した。
続いて、反応液を濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチル=9/1(v/v))により処理し、1.46gの無色透明液体を得た(収率21.6%)。
この無色透明液体のH−NMRスペクトルデータは、以下のとおりであった。
1H-NMR (d6-DMSO) δ: 6.02(s, 1H), 5.99(s, 1H), 5.70(s, 1H), 5.66(s, 1H), 5.31(m, 1H), 4.42(dd, 1H), 4.27(dd, 1H), 4.19(dd, 1H), 4.04(dd, 1H), 3.97(m, 2H), 3.86(dd, 2H), 3.12(quin, 2H), 2.72(t, 2H), 2.58(dd, 2H), 1.87(s, 3H), 1.82(s, 3H).
また、この無色透明液体のIRスペクトルデータは、図1に示したチャートのとおりであった。
これらのスペクトルデータより、得られた無色透明液体は、化学式(I-1)で示される表題のイソシアヌレート化合物であるものと同定した。
Figure 2017128546
このイソシアヌレート化合物について、保存安定性の評価試験を行ったところ、得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
〔比較例1〕
無水メタクリル酸の代わりに無水アクリル酸を使用した以外は、実施例1に示した合成試験と同様の操作を行って、1,3−ジグリシジル−5−(2,3−ジアクリロイルオキシ)プロピルイソシアヌレート(化学式(VII)参照)を合成した。
このイソシアヌレート化合物について、保存安定性の評価試験を行ったところ、得られた試験結果は、表1に示したとおりであった。
Figure 2017128546
Figure 2017128546
〔実施例2〕
実施例1において合成例を示した1,3−ジグリシジル−5−(2,3−ジメタクリロイルオキシ)プロピルイソシアヌレート100.00gと、光ラジカル重合開始剤2.00gおよび光カチオン重合開始剤2.00gを均一に混合し、樹脂組成物を調製した。
この樹脂組成物を、バーコーターを使用して、薄板(材質:ポリエチレンテレフタレート)の表面に、厚みが3〜10μmとなるように塗布した。
次いで、高圧水銀灯を使用して紫外線照射(照射積算光量1,000mJ/cm2)し、続いてポストキュア(90℃×10分)を行った。
得られた硬化物(硬化膜)について評価試験を行ったところ、得られた試験結果は表2に示したとおりであった。
〔比較例2〕
1,3−ジグリシジル−5−(2,3−ジメタクリロイルオキシ)プロピルイソシアヌレートの代わりにグリシジルメタクリレートを使用した以外は、実施例2と同様にして樹脂組成物を調製し、評価試験を行った。
得られた試験結果は、表2に示したとおりであった。
Figure 2017128546
本発明の(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物は、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂の原料として使用される場合には架橋剤として作用し、従来のグリシジル(メタ)アクリレート化合物を使用する場合に比べて、高い架橋密度と十分な硬度を有し、且つ、透明性、密着性や耐湿性に優れた硬化物を与えることが期待される。従って、本発明の産業上の利用可能性は多大である。

Claims (4)

  1. 化学式(I)で示される(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物。
    Figure 2017128546
    (式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子もしくはメチル基を表す。但し、RおよびRが同時に水素原子である場合を除く。)
  2. 化学式(II)で示されるトリグリシジルイソシアヌレートと、化学式(III)で示される(メタ)アクリル酸無水物を反応させることを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物の合成方法。
    Figure 2017128546
    Figure 2017128546
    (式中、RおよびRは、前記と同様である。)
  3. 請求項1記載の(メタ)アクリルエポキシイソシアヌレート化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
  4. 請求項3記載の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
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