以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルまたはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルまたはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートまたはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
〔硫黄原子含有化合物〕
本発明の硫黄原子含有化合物は、下記一般式(1)で示される硫黄原子含有化合物である。
一般式(1)中、A1とA2はそれぞれチオール基またはチイルラジカルを発生する活性エネルギー線重合開始ユニットであり、A1とA2は同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
チオール基またはチイルラジカルを発生する活性エネルギー線重合開始ユニットとは、活性エネルギー線の照射によって、チオール基(−SH)またはチイルラジカルを発生する活性エネルギー線重合開始ユニットである。かかる活性エネルギー線重合開始ユニットとしては特に限定されないが、例えば、後述の一般式(2)または一般式(3)で示される活性エネルギー線重合開始ユニットが挙げられる。
一般式(1)中、Bは開裂型または水素引き抜き型の活性エネルギー線重合開始ユニットである。開裂型または水素引き抜き型の活性エネルギー線重合開始ユニットとは、活性エネルギー線の照射によって、開裂または水素引き抜きによりラジカルを生じる活性エネルギー線重合開始ユニットである。かかる開裂型の活性エネルギー線重合開始ユニットとしては特に限定されないが、一般式(1)におけるB−X2−[−A2]mが、下記一般式(4)または一般式(5)で示される活性エネルギー線重合開始ユニットが挙げられる。また、水素引き抜き型の活性エネルギー線重合開始ユニットとしては特に限定されないが、一般式(1)におけるB−X2−[−A2]mが、下記一般式(6)〜(8)のいずれかで示される活性エネルギー線重合開始ユニットが挙げられる。
一般式(1)中、X1はアルキル基、エーテル基、エステル基およびフェニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の置換基を含んでもよい有機基であり、X2はアルキル基、エーテル基、エステル基およびフェニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の置換基を含んでもよい有機基、または水素原子である。
かかる有機基は、直鎖構造、分岐構造、環状構造、あるいはこれら構造を組み合わせた複合構造でもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
かかる有機基は、従来公知の有機基を使用することができ、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数7〜20のアルキニレン基、オキソ、アゾ、ヒドラゾ、ヒドラジ、チオ、スルホニル、スルフィニル、カルボニル、チオカルボニル、これらの組合せが挙げられる。
直鎖構造や分岐構造の有機基における炭素数としては、好ましくは1〜18、特に好ましくは1〜15、更に好ましくは1〜10である。
環状構造の有機基における炭素数としては、好ましくは3〜20、特に好ましくは3〜15である。
かかる有機基は、アルキル基(例えば炭素数1〜20)、エーテル基、エステル基およびフェニル基からなる群から選ばれる少なくとも一種の置換基を含んでもよい。
一般式(1)中、lは1〜5の整数、nは1〜5の整数であり、lとnの合計は2〜6である。mは、X2が前記有機基のときは1であり、X2が水素原子のときは0である。
一般式(1)におけるチオール基またはチイルラジカルを発生する活性エネルギー線重合開始ユニットの例として、下記一般式(2)または一般式(3)で示される活性エネルギー線重合開始ユニットについて説明する。
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、スルフィド基、ニトロ基、シアノ基、または炭素数6〜20のアリール基であり、oおよびpはそれぞれ0〜5の整数である。oが2〜5である場合、複数のR1の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR1が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。pが2〜5である場合、複数のR2の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR2が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。)
(式中、R3はハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、スルフィド基、ニトロ基、シアノ基、または炭素数6〜20のアリール基であり、qは0〜5の整数である。qが2〜5である場合、複数のR3の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR3が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。)
R1〜R3におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
R1〜R3における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、アルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜18、特に好ましくは1〜15である。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
R1〜R3における炭素数2〜20のアルケニル基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、アルケニル基の炭素数としては、好ましくは2〜18、特に好ましくは2〜15である。具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペテニル基、2−ヘキセニル基等が挙げられる。
R1〜R3における炭素数7〜20のアラルキル基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、アラルキル基の炭素数としては、好ましくは7〜18、特に好ましくは7〜15である。具体的には、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
R1〜R3における炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、ヘテロアリールアルキル基の炭素数としては、好ましくは4〜18、特に好ましくは4〜15である。ヘテロアリールアルキル基におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。かかるヘテロアリールアルキル基としては、具体的には、例えば、トリアジニルメチル基、トリアジニルエチル基、2−ピリジルメチル基、2−ピリジルエチル基、3−ピリジルメチル基、3−ピリジルエチル基、4−ピリジルメチル基、4−ピリジルエチル基等が挙げられる。
R1〜R3における炭素数3〜20のシクロアルキル基は、好ましくは炭素数が3〜18、特に好ましくは炭素数が3〜15である。具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタン基、シクロオクタン基等が挙げられる。
また、上記アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、ヘテロアリールアルキル基、およびシクロアルキル基は置換基を有するものであってもよい。かかる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、エステル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニル基、フェニル基等が挙げられ、好ましくはシアノ基、アルコキシ基、アミノ基、エステル基、フェニル基である。かかるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、アルコキシ基の炭素数としては、好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜15である。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
R1〜R3におけるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、アルコキシ基の炭素数としては、好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜15である。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
R1〜R3における炭素数6〜20のアリール基の炭素数としては、好ましくは炭素数6〜18、特に好ましくは6〜15である。具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
o、pおよびqはそれぞれ0〜5の整数である。o、pおよびqがそれぞれ2〜5である場合、同一芳香環に結合している複数の基の全部または一部は同じ原子または基であっても良く、2つ以上の基が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。
2つ以上の基が結合して、単環または縮合環を形成した構造としては、例えば、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
一般式(1)における開裂型の活性エネルギー線重合開始ユニットの例として、一般式(1)におけるB−X2−[−A2]mが、下記一般式(4)または一般式(5)で示される活性エネルギー線重合開始ユニットについて説明する。
(式中、R4はハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、スルフィド基、ニトロ基、シアノ基または炭素数6〜20のアリール基であり、rは0〜4の整数である。rが2〜4である場合、複数のR4の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR4が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。R5〜R7はそれぞれ独立してO−X2−[−A2]m(X2、A2およびmは一般式(1)におけるX2、A2およびmと同義)、アルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基であり、R5〜R7の少なくとも1つの基がO−X2−[−A2]m、アルコキシ基またはアミノ基である。R5〜R7のうちの2つの基は、それらの基が結合している炭素原子と一緒になって3〜8員の飽和炭素環を形成してもよい。)
(式中、R8はアルキル基、アシル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基である。R9はハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、スルフィド基、ニトロ基、シアノ基または炭素数6〜20のアリール基であり、sは0〜5の整数である。sが2〜5である場合、複数のR9の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR9が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。)
R4およびR9におけるハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基は、R1〜R3について説明したものと同様である。
一般式(4)におけるrは0〜4の整数である。rが2〜4である場合、複数のR4の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR4が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。
2つ以上のR4が結合して、単環または縮合環を形成した構造としては、例えば、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
一般式(4)におけるR5〜R7はそれぞれ独立してO−X2−[−A2]m(X2、A2およびmは一般式(1)におけるX2、A2およびmと同義)、アルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基であり、R5〜R7の少なくとも1つの基がO−X2−[−A2]m、アルコキシ基またはアミノ基である。R5〜R7のうちの2つの基は、それらの基が結合している炭素原子と一緒になって3〜8員の飽和炭素環を形成してもよい。
一般式(4)で示される開裂型の活性エネルギー線重合開始ユニットの具体例としては、下記のものが挙げられる。
一般式(5)におけるR8はアルキル基、アシル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜20のアリール基である。
R8におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基が挙げられ、かかるアルキル基は直鎖状でも分岐状であってもよく、アルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜18、特に好ましくは1〜15である。
R8におけるアシル基は、直鎖構造、分岐構造、環状構造、あるいはこれら構造を組み合わせた複合構造であって、飽和または不飽和の基を有する。アシル基の炭素数としては、好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜15である。具体的には、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
R8における炭素数3〜20のシクロアルキル基および炭素数6〜20のアリール基は、R1〜R3について説明したものと同様である。
一般式(5)におけるsは0〜5の整数である。sが2〜5である場合、複数のR9の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR9が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。
2つ以上のR9が結合して、単環または縮合環を形成した構造としては、例えば、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
一般式(5)で示される開裂型の活性エネルギー線重合開始ユニットの具体例としては、下記のものが挙げられる。
一般式(1)における水素引き抜き型の活性エネルギー線重合開始ユニットの例として、一般式(1)におけるB−X2−[−A2]mが下記一般式(6)〜(8)で示される活性エネルギー線重合開始ユニットについて説明する。
(式中、R10はハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、スルフィド基、ニトロ基、シアノ基または炭素数6〜20のアリール基であり、tは0〜5の整数である。tが2〜5である場合、複数のR10の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR10が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。)
(式中、R11はハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、スルフィド基、ニトロ基、シアノ基または炭素数6〜20のアリール基であり、uは0〜4の整数である。uが2〜4である場合、複数のR11の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR11が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。R12はハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、スルフィド基、ニトロ基、シアノ基または炭素数6〜20のアリール基であり、vは0〜5の整数である。vが2〜5である場合、複数のR12の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR12が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。)
(式中、R13はハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、スルフィド基、ニトロ基、シアノ基または炭素数6〜20のアリール基であり、wは0〜3の整数である。wが2〜3である場合、複数のR13の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR13が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。R14はハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、スルフィド基、ニトロ基、シアノ基または炭素数6〜20のアリール基であり、xは0〜4の整数である。xが2〜4である場合、複数のR14の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR14が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。Yは酸素原子、硫黄原子またはカルボニル基である。)
R10〜R14におけるハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基、炭素数3〜20のシクロルキル基、アルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基は、R1〜R3について説明したものと同様である。
一般式(6)におけるtは0〜5の整数である。tが2〜5である場合、複数のR10の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR10が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。
2つ以上のR10が結合して、単環または縮合環を形成した構造としては、例えば、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
一般式(6)で示される水素引き抜き型の活性エネルギー線重合開始ユニットの具体例としては、下記のものが挙げられる。
一般式(7)におけるuは0〜4の整数である。uが2〜4である場合、複数のR11の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR11が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。2つ以上のR11が結合して、単環または縮合環を形成した構造としては、例えば、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
また、vは0〜5の整数である。vが2〜5である場合、複数のR12の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR12が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。2つ以上のR12が結合して、単環または縮合環を形成した構造としては、例えば、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
一般式(7)で示される水素引き抜き型の活性エネルギー線重合開始ユニットの具体例としては、下記のものが挙げられる。
一般式(8)におけるwは0〜3の整数である。wが2〜3である場合、複数のR13の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR13が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。2つ以上のR13が結合して、単環または縮合環を形成した構造としては、例えば、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
また、xは0〜4の整数である。xが2〜4である場合、複数のR14の全部または一部が同じ原子または基であっても良く、2つ以上のR14が結合して、単環または縮合環を形成した構造であっても良い。2つ以上のR14が結合して、単環または縮合環を形成した構造としては、例えば、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
一般式(8)におけるYは酸素原子、硫黄原子またはカルボニル基である。
一般式(8)で示される水素引き抜き型の活性エネルギー線重合開始ユニットの具体例としては、下記のものが挙げられる。
一般式(1)で示される硫黄原子含有化合物の具体例としては、例えば、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−[2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチル、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)酢酸2−[2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチル、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−(4−{2−メチル−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシ]プロピオニル}フェノキシ)エチル、3−(2−オキソ−2,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−エチル−2−[3−(2−{2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−フェノキシ]エトキシカルボニル}エチルスルファニル)プロピオニルオキシメチル]−5−オキソ−7−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)ヘプチル等が挙げられる。
本発明において、一般式(1)で示される硫黄原子含有化合物は、常法に従って製造することができる。
〔活性エネルギー線硬化性組成物〕
次に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物について説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、一般式(1)で示される硫黄原子含有化合物からなる活性エネルギー線重合開始剤[I]および活性エネルギー線重合性化合物[II]を含有してなるものである。
活性エネルギー線重合性化合物[II]としては、エチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物であればよく、具体的には、エチレン性不飽和基を1つ有するエチレン性不飽和化合物[II−1]及びエチレン性不飽和基を2つ以上有するエチレン性不飽和化合物[II−2]の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
エチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート、スチレン系化合物、ビニル化合物、アリル化合物、アクリロニトリル等が挙げられる。
(メタ)アクリレートとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化された油、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エチレン性不飽和基を1つ有するエチレン性不飽和化合物(以下、「単官能モノマー」と略記することがある。)[II−1]としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリルレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、ポリオキシエチレン第2級アルキルエーテルアクリレート等が挙げられる。
更に、その他に、アクリル酸のマイケル付加物あるいは2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルも併用可能であり、アクリル酸のマイケル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等が挙げられる。また、2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、特定の置換基をもつカルボン酸であり、例えば、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。更に、その他オリゴエステルアクリレートも挙げられる。
また、エチレン性不飽和基を2つ以上有するエチレン性不飽和化合物(以下、「多官能モノマー」と略記することがある。)[II−2]としては、2官能モノマー、3官能以上のモノマーが挙げられる。
2官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
活性エネルギー線重合性化合物[II]としては、上記の中から1種を用いてもよいし2種以上併用してもよい。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物において、活性エネルギー線重合開始剤[I]と活性エネルギー線重合性化合物[II]の含有量としては、活性エネルギー線重合性化合物[II]100重量部に対して、活性エネルギー線重合開始剤[I]が0.1〜100重量部であることが好ましく、特には1〜50重量部、更には4〜20重量部であることが好ましい。活性エネルギー線重合開始剤[I]の含有量が多すぎると、光分解物の影響で硬化物の物性が低下する傾向があり、少なすぎると硬化反応が進行し難くなる傾向がある。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、感光波長領域を拡大し、感度を高めるべく、増感剤を配合することができる。かかる増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p’−テトラエチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、アントロン、9−エトキシアントラセン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェノチアジン、ベンジル、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、9,10−ジフェニルアントラセン、9−フルオレノン、アセトフェノン、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3’−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルクマリン)またはコロネン等が挙げられる。これらの増感剤は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、増感剤の含有量は、使用する活性エネルギー線重合開始剤[I]、及び必要とされる感度等により適宜決定すればよいが、活性エネルギー線重合開始剤[I]100重量部に対して1〜300重量部であることが好ましく、更には5〜200重量部であることが好ましい。増感剤が少なすぎると、感度が十分に高められない傾向があり、増感剤が多すぎると、感度を高めるのに過剰となり、硬化物の物性が低下する傾向にある。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、必要に応じて希釈剤、可撓性付与剤、シラン系カップリング剤、消泡剤、レベリング剤、補強剤、充填剤、無機ナノフィラー、難燃剤、連鎖移動剤、着色剤、顔料、染料等の各種添加剤を配合することができる。
上記希釈剤としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、α−ピネンオキシド、メタクリル酸グリシジル、1−ビニル−3,4−エポキシシクロヘキサンなどの反応性希釈剤や、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メタノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの非反応性希釈剤などが挙げられる。
上記可撓性付与剤としては、例えば、ジオクチルフタレートやジイソプロピルフタレートなどのフタル酸エステルやポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
上記シラン系カップリング剤としては、例えば、イミダゾール系シランカップリング剤、アミン系シランカプリング剤、メルカプト系シランカップリング剤などが挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、アルコール消泡剤、金属石鹸消泡剤、リン酸エステル消泡剤、脂肪酸エステル消泡剤、ポリエーテル消泡剤、シリコーン消泡剤、フッ素系消泡剤、鉱物油消泡剤、アクリル系消泡剤などが挙げられる。
上記レベリング剤としては、例えば、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
上記補強剤、及び充填剤としては、例えば、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、ケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ等のケイ素化合物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物などの粉末状材料や、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボンファイバー、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、ポリエステル繊維等の繊維質材料などが挙げられる。
上記難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、トリブロモフェノール、ヘキサブロモベンゼン等のハロゲン化合物、トリフェニルホスフェート、ポリリン酸塩等のリン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン系化合物などが挙げられる。
上記連鎖移動剤としては、例えば、多官能メルカプタン系化合物が挙げられ、具体的には、ペンタエリストールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート等が挙げられる。
上記着色剤、顔料、及び染料としては、例えば、二酸化チタン、鉄黒、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤、三酸化アンチモン、赤燐などが挙げられる。
本発明の活性エネルギー線重合開始剤[I]は、それ単独で用いることもできるし、従来公知の一般的に用いられる光重合開始剤、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等の光重合開始剤と併用することもできる。
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
かくして本発明において、一般式(1)で示される硫黄原子含有化合物からなる活性エネルギー線重合開始剤[I]と活性エネルギー線重合性化合物[II]を含有してなる活性エネルギー線硬化性組成物を得ることができ、上記活性エネルギー線硬化性組成物を硬化することにより硬化物を得ることができる。
かかる活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば、基板またはフィルム等の支持体上に塗工し、活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。基板またはフィルム等の支持体上に塗工するにあたっては、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等を用いたり、ディッピング方式による塗工を行なうことができる。
かかる活性エネルギー線の照射には、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。
かかる紫外線照射を行う時の光源としては、例えば、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト、LED等が用いられる。
かかる紫外線照射は、2〜20000mJ/cm2、好ましくは10〜10000mJ/cm2の条件で行われる。
かくして活性エネルギー線硬化性組成物が硬化されてなる硬化物が得られ、その厚さは、通常0.01〜1000μm、好ましくは0.1〜100μm、特に好ましくは1〜30μmである。かかる厚さが厚すぎても薄すぎても硬化性が低下する傾向がある。
一般式(1)で示される硫黄原子含有化合物からなる本発明の活性エネルギー線重合開始剤[I]によれば、硬化時に酸素による重合阻害を受けにくく、低照射量でも硬化性に優れ、さらに、表面硬度と屈曲耐久性といった相反する物性にも優れ、硬化収縮も小さい硬化物を得ることができる。したがって、その活性エネルギー線重合開始剤[I]を含有する活性エネルギー線硬化性組成物は長期の保存安定性に優れるものであり、例えば、塗料または印刷インキ、インクジェットインキ、粘着剤、接着剤、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、版材、フォトレジスト、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築材料の構成部材として広く用いられ、印刷物、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材または建築部材等が提供される。
特に、インクジェットインキや粘着剤、接着剤、フォトレジスト、光学部材、電子部品などに用いる際は、薄膜で使用することが多く、酸素の影響を受け易いので、酸素による重合阻害を受けにくく保存安定性に優れている本発明の化合物は有用である。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて形成されたパターン等は、耐熱性や絶縁性を備え、例えば、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、電子部品、半導体装置、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、その他の光学部材または電子部材として有利に使用することができる。
〔ベンゾインチオエーテル化合物〕
また、本発明は下記一般式(9)で示される新規なベンゾインチオエーテル化合物をも提供するものである。
一般式(9)で示されるベンゾインチオエーテル化合物は、一般式(1)におけるB−X2−[−A2]mが、一般式(4)においてrが0であり、R5〜R7のうち2つがメチル基、残りの1つがO−X2−[−A2]mであり、nが1である開裂型の活性エネルギー線重合開始ユニットである。
(式中、xは1または2、yは0または1であり、xが1のときyは0、xが2のときyは1である。A1とA2は一般式(2)である。X1は下記一般式(10)、X2は水素原子または下記一般式(10)、mは、X2が水素原子のとき0であり、X2が下記一般式(10)のとき1である。)
(式中、zは1または2であり、メチレン基と結合するのが一般式(9)のA1またはA2であり、アシル基と結合するのが一般式(9)の酸素原子である。)
一般式(10)におけるR1およびR2は、一般式(2)におけるR1およびR2について説明したものと同様である。
R1およびR2におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
R1およびR2における炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、アルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜18、特に好ましくは1〜15である。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
R1およびR2における炭素数2〜20のアルケニル基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、アルケニル基の炭素数としては、好ましくは2〜18、特に好ましくは2〜15である。具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペテニル基、2−ヘキセニル基等が挙げられる。
R1およびR2における炭素数7〜20のアラルキル基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、アラルキル基の炭素数としては、好ましくは7〜18、特に好ましくは7〜15である。具体的には、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
R1およびR2における炭素数4〜20のヘテロアリールアルキル基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、ヘテロアリールアルキル基の炭素数としては、好ましくは4〜18、特に好ましくは4〜15である。ヘテロアリールアルキル基におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。かかるヘテロアリールアルキル基としては、具体的には、例えば、トリアジニルメチル基、トリアジニルエチル基、2−ピリジルメチル基、2−ピリジルエチル基、3−ピリジルメチル基、3−ピリジルエチル基、4−ピリジルメチル基、4−ピリジルエチル基等が挙げられる。
R1およびR2における炭素数3〜20のシクロアルキル基は、好ましくは炭素数が3〜18、特に好ましくは炭素数が3〜15である。具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘプタン基、シクロオクタン基等が挙げられる。
また、上記アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、ヘテロアリールアルキル基、およびシクロアルキル基は置換基を有するものであってもよい。かかる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、エステル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホニル基、フェニル基等が挙げられ、好ましくはシアノ基、アルコキシ基、アミノ基、エステル基、フェニル基である。かかるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、アルコキシ基の炭素数としては、好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜15である。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
R1およびR2におけるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状であってもよく、アルコキシ基の炭素数としては、好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜15である。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
R1およびR2における炭素数6〜20のアリール基の炭素数としては、好ましくは炭素数6〜18、特に好ましくは6〜15である。具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基等が挙げられる。
一般式(9)で示されるベンゾインチオエーテル化合物の具体例としては、例えば、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチル、(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)酢酸2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチル、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−(4−{2−メチル−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシ]プロピオニル}フェノキシ)エチル、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−[3−(2−{2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エトキシカルボニル}エチルスルファニル)プロピオニルオキシメチル]−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシムエチル]ブチル等が挙げられる。
本発明において、一般式(9)で示されるベンゾインチオエーテル化合物は、公知の合成条件に準じて製造することができる。
本発明の一般式(9)で示されるベンゾインチオエーテル化合物は、活性エネルギー線重合開始剤として非常に有用であり、活性なチオール基が保護されているため、かかるベンゾインチオエーテル化合物を活性エネルギー線重合性化合物に配合してなる活性エネルギー線硬化性組成物は、保存安定性に優れる。また、本発明の一般式(9)で示されるベンゾインチオエーテル化合物は、光照射によりチオール基あるいはチイルラジカルが発生するため、硬化時に酸素による重合阻害を受けにくい。さらに、かかる活性エネルギー線硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、表面硬度と屈曲耐久性に優れ、硬化収縮も小さいことから、本発明の一般式(9)で示されるベンゾインチオエーテル化合物は活性エネルギー線重合開始剤として大いに期待される。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
<実施例1>
〔合成例1:3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチル[I−1]の合成〕
本化合物は、一般式(9)におけるxが1、yが0、mが0、X2が水素原子であり、X1が一般式(10)おけるzが2であり、A1が一般式(2)におけるoおよびpがいずれも0のベンゾインチオエーテル化合物であり、下記構造式を有する。
100mL四つ口フラスコに、メルカプトプロピオン酸3.0g(0.028mol)、トリエチルアミン8.8g(0.087mol)、アセトニトリル20mLを仕込み、室温下で撹拌した。そこに、2−クロロ−フェニルアセトフェノン5.0g(0.022mol)、アセトニトリル20mLの混合溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で2時間反応させた。反応終了後、10%塩酸と酢酸エチルを添加し、抽出を行った。分取した有機層を濃縮し、取得した固体を再結晶にて精製し、白色の固体の3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸を取得した。
取得した3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸の量は4.6gであり、収率は71%であった。
続いて、200mL四つ口フラスコに、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2.0g(0.0067mol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩1.4g(0.0073mol)、4−ジメチルアミノピリジン0.1g(0.0008mol)、アセトニトリル25mLを仕込み、氷冷下で撹拌した。そこに、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン2.2g(0.0098mol)、アセトニトリル30mLの混合溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で15時間反応させた。反応終了後、水と酢酸エチルを添加し、抽出を行った。分取した有機層を濃縮し、取得した濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、薄黄色の粘調液体の3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−[2−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチルを取得した。
取得した3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチルの量は2.1gであり、収率は62%、全収率は44%であった。
なお、合成例1により得られた、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチル[I−1]の1H−NMRスペクトル(Bruker社製「Ascend400」使用、内部標準物質:テトラメチルシラン、溶媒:CDCl3)は図1に示される通りであり、その帰属は以下の通りである。
8.0−8.1ppm(m,2H,Ar−H)
7.9−8.0ppm(m,2H,Ar−H)
7.2−7.5ppm(m,8H,Ar−H)
6.7−7.0ppm(m,2H,Ar−H)
5.64ppm(s,1H,−S−CH−Ar)
4.44ppm(t,2H,Ar−O−CH2−)
4.2−4.3ppm(m,3H,CO−O−CH2−,−OH)
2.7−2.8ppm(m,2H,−S−CH2−)
2.6−2.7ppm(m,2H,−O−CO−CH2−)
1.6−1.7ppm(m,6H,−CH3)
さらに、調製用ガラス瓶に、合成した化合物[I−1]4部、トリメチロールプロパントリアクリレート[II−1]100部を同時に仕込み、混合することで活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、以下の評価を行った。
〔保存安定性〕
得られた活性エネルギー線硬化性組成物を20℃で放置し、ゲル化の発生具合を目視で観察し、下記の基準にて評価した。
○・・・1か月以上ゲル化しなかった。
×・・・1か月未満でゲル化してしまった。
〔表面硬度〕
得られた活性エネルギー線硬化性組成物を、PETフィルム(東洋紡株式会社製:商品名「コスモシャインA4300」、膜厚125μm)上に20μmの厚さとなるように塗工した後、高圧水銀ランプの取り付けられた紫外線照射装置にてピーク照度:200mW/cm2で2J/cm2(365nm)の紫外線照射を行い、硬化物を得た。得られた硬化物の表面硬度を、JIS K5600−5−4に準拠して測定した。
〔屈曲耐久性〕
上記方法により得られた硬化物の屈曲耐久性を、JIS K5600−5−1に準拠して測定した。
〔硬化収縮率〕
得られた活性エネルギー線硬化性組成物(硬化前)と紫外線照射後の硬化物(硬化後)を用いて、乾式密度測定装置(アキュピック1330(島津製作所))を用いて密度( 温度23℃) を測定し、[{(硬化後の密度)−(硬化前の密度)}/(硬化後の密度)]×100より、硬化収縮率(%)を算出した。
〔酸素阻害〕
得られた活性エネルギー線硬化性組成物を酢酸エチル100部で希釈した後、かかる組成物をPETフィルム(東洋紡株式会社製:商品名「コスモシャインA4300」、膜厚125μm)上に1μmの厚さとなるように塗工した。その後、80℃で1分間乾燥させ、高圧水銀ランプの取り付けられた紫外線照射装置にてピーク照度:200mW/cm2で5J/cm2(365nm)の紫外線照射を行い、硬化物を得た。
上記の表面硬度測定及び屈曲耐久性測定における紫外線照射時に、薄膜(1μm)と厚膜(20μm)の硬化に要する照射量を比較し、下記のように評価した。
A・・・薄膜の照射量が厚膜の照射量と同じであった。
B・・・薄膜の照射量が厚膜の照射量の1倍より多く2倍未満であった。
C・・・薄膜の照射量が厚膜の照射量の2倍以上であった。
<実施例2>
実施例1において、化合物[I−1]の配合量を10部に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、表面硬度の評価方法での紫外線照射量を1J/cm2、屈曲耐久性の評価方法での紫外線照射量を2J/cm2とした以外は同様に行った。
<実施例3>
〔合成例2:(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)酢酸2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチル[I−2]の合成〕
本化合物は、一般式(9)におけるxが1、yが0、mが0、X2が水素原子であり、X1が一般式(10)におけるzが1であり、A1が一般式(2)におけるoおよびpがいずれも0のベンゾインチオエーテル化合物であり、下記構造式を有する。
200mL四つ口フラスコに、メルカプト酢酸7.8g(0.085mol)、トリエチルアミン26.4g(0.261mol)、アセトニトリル40mLを仕込み、氷浴下で撹拌した。そこに、2−クロロ−フェニルアセトフェノン15.0g(0.065mol)、アセトニトリル35mLの混合溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で5時間反応させた。反応終了後、10%塩酸と酢酸エチルを添加し、抽出を行った。分取した有機層を濃縮し、取得した固体を再結晶にて精製し、白色の固体の3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)酢酸を取得した。
取得した(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)酢酸の量は15.4gであり、収率は83%であった。
続いて、100mL四つ口フラスコに、(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)酢酸1.9g(0.0066mol)、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン1.0g(0.0061mol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩1.4g(0.0073mol)、4−ジメチルアミノピリジン0.1g(0.0008mol)、アセトニトリル20mLを仕込み、25℃で1時間反応させた。反応終了後、水と酢酸エチルを添加し、抽出を行った。分取した有機層を濃縮し、取得した濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、薄黄色の粘調液体の(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)酢酸2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチルを取得した。
取得した(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)酢酸2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチルの量は0.80gであり、収率は27%、全収率は22%であった。
なお、合成例2により得られた、(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)酢酸2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エチル[I−2]の1H−NMRスペクトル(Bruker社製「Ascend400」使用、内部標準物質:テトラメチルシラン、溶媒:CDCl3)は図2に示される通りであり、その帰属は以下の通りである。
8.0−8.1ppm(m,2H,Ar−H)
7.9−8.0ppm(m,2H,Ar−H)
7.2−7.5ppm(m,8H,Ar−H)
6.9−7.0ppm(m,2H,Ar−H)
5.97ppm(s,1H,−S−CH−Ar)
4.50ppm(t,2H,Ar−O−CH2−)
4.2−4.3ppm(m,2H,CO−O−CH2−)
4.18ppm(s,1H,−OH)
3.23ppm(d,1H,−S−CH2−)
3.05ppm(d,1H,−S−CH2−)
1.6−1.7ppm(m,6H,−CH3)
実施例1において、化合物[I−1]の代わりに、化合物[I−3]の配合量を4部に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、紫外線照射量を5J/cm2とした以外は同様に行った。
<実施例4>
実施例1において、化合物[I−1]の代わりに、化合物[I−2]を10部に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、紫外線照射量を1J/cm2とした以外は同様に行った。
<実施例5>
〔合成例3:3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−(4−{2−メチル−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシ]プロピオニル}フェノキシ)エチル[I−3]の合成〕
本化合物は、一般式(9)におけるxが1、yが0、mが1、X1とX2が一般式(10)で示され、X1とX2におけるzが2であり、A1とA2が一般式(2)におけるoおよびpがいずれも0のベンゾインチオエーテル化合物であり、下記構造式を有する。
200mL四つ口フラスコに、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2.4g(0.0067mol)塩化チオニル2.9g(24.4mol)、トルエン30mLを仕込み、80℃で1.5時間撹拌した。反応終了後、反応液を濃縮し、ジクロロメタン20mLを仕込み、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン0.70g(0.0031mol)、ピリジン0.63g(0.0080mol)、4−ジメチルアミノピリジン0.10g(0.0008mol)、トリエチルミン1.0g(0.0010mol)を滴下し、還流下で加熱撹拌した。反応終了後、水と酢酸エチルを添加し、抽出を行った。分取した有機層を濃縮し、取得した濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、橙色固体の3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−(4−{2−メチル−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシ]プロピオニル}フェノキシ)エチルを取得した。
取得した3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−(4−{2−メチル−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシ]プロピオニル}フェノキシ)エチルの量は0.60gであり、収率は20%、全収率は18%であった。
なお、合成例3により得られた、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−(4−{2−メチル−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシ]プロピオニル}フェノキシ)エチル[I−3]の1H−NMRスペクトル(Bruker社製「Ascend400」使用、内部標準物質:テトラメチルシラン、溶媒:CDCl3)は図3に示される通りであり、その帰属は以下の通りである。
7.9−8.0ppm(m,4H,Ar−H)
7.8−7.9ppm(m,2H,Ar−H)
7.2−7.5ppm(m,16H,Ar−H)
6.7−6.8ppm(m,2H,Ar−H)
5.65ppm(s,1H,−S−CH−Ar)
5.53ppm(s,1H,−S−CH−Ar)
4.41ppm(t,2H,Ar−O−CH2−)
4.13ppm(t,2H,Ar−O−CH2−)
2.7−2.8ppm(m,2H,−S−CH2−)
2.4−2.5ppm(m,4H,−O−CO−CH2−,−S−CH2−)
2.1−2.2ppm(m,2H,−S−CH2−)
1.6−1.7ppm(m,6H,−CH3)
実施例1において、化合物[I−1]の代わりに、化合物[I−3]を4部に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、紫外線照射量を7J/cm2とした以外は同様に行った。
<実施例6>
実施例1において、化合物[I−1]の代わりに、化合物[I−3]を10部に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、紫外線照射量を3J/cm2とした以外は同様に行った。
<実施例7>
〔合成例4:3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−[3−(2−{2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エトキシカルボニル}エチルスルファニル)プロピオニルオキシメチル]−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシムエチル]ブチル[I−4]の合成〕
本化合物は、一般式(9)におけるxが2、yが1、mが0、X2が水素原子であり、X1が一般式(10)におけるzが2であり、A1が一般式(2)におけるoおよびpがいずれも0のベンゾインチオエーテル化合物であり、下記構造式を有する。
200mL四つ口フラスコに、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオナート)5.0g(0.013mol)、トリエチルアミン4.6g(0.046mol)、アセトニトリル20mLを仕込み、室温下で撹拌した。そこに、アクリル酸0.82g(0.011mol)、アセトニトリル15mLの混合溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で3時間反応させた。さらに、そこに、トリエチルアミン10g(0.099mol)を添加し、氷冷下で2−クロロ−フェニルアセトフェノン7.0g(0.030mol)、アセトニトリル15mLの混合溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で2時間反応させた。反応終了後、10%塩酸と酢酸エチルを添加し、抽出を行った。分取した有機層を濃縮し、取得した取得した濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、薄黄色の粘性液体の3−(2−{2,2−ビス−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシメチル]ブトキシカルボニル}エチルスルファニル)プロピオン酸を取得した。
取得した3−(2−{2,2−ビス−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシメチル]ブトキシカルボニル}エチルスルファニル)プロピオン酸の量は1.1gであり、収率は11%であった。
続いて、100mL四つ口フラスコに、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン0.31g(0.0014mol)、アセトニトリル5mLを仕込み、25℃で撹拌した。そこに、3−(2−{2,2−ビス−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシメチル]ブトキシカルボニル}エチルスルファニル)プロピオン酸1.0g(0.0012mol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.27g(0.0014mol)、4−ジメチルアミノピリジン0.020g(0.00016mol)、アセトニトリル20mLの混合溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で28時間反応させた。反応終了後、水と酢酸エチルを添加し、抽出を行った。分取した有機層を濃縮し、取得した濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、薄黄色の粘性液体の3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−[3−(2−{2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エトキシカルボニル}エチルスルファニル)プロピオニルオキシメチル]−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシムエチル]ブチルを取得した。
取得した3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2−[3−(2−{2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エトキシカルボニル}エチルスルファニル)プロピオニルオキシメチル]−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシムエチル]ブチルの量は0.30gであり、収率は24%、全収率は2.6%であった。
なお、合成例4により得られた、3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオン酸2[3−(2−{2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ]エトキシカルボニル}エチルスルファニル)プロピオニルオキシメチル]−2−[3−(2−オキソ−1,2−ジフェニルエチルスルファニル)プロピオニルオキシムエチル]ブチル[I−4]の1H−NMRスペクトル(Bruker社製「Ascend400」使用、内部標準物質:テトラメチルシラン、溶媒:CDCl3)は図4に示される通りであり、その帰属は以下の通りである。
8.06ppm(d,2H,Ar−H)
7.9−8.0ppm(m,4H,Ar−H)
7.2−7.5ppm(m,16H,Ar−H)
6.94ppm(d,2H,Ar−H)
5.65ppm(s,1H,−S−CH−Ar)
4.48ppm(t,2H,Ar−O−CH2−)
4.2−4.3ppm(m,3H,−CO−O−CH 2 −CH2−,−OH)
3.9−4.0ppm(m,6H,−CO−O−CH 2 −C−)
2.5−2.8ppm(m,16H,−CH2−)
1.6−1.7ppm(m,6H,−CH3)
1.62ppm(q,2H,−CH 2 −CH3)
0.82ppm(t,3H,−CH2−CH 3 )
実施例1において、化合物[I−1]の代わりに、化合物[I−4]を4部に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、紫外線照射量を8J/cm2とした以外は同様に行った。
<比較例1>
実施例1において、化合物[I−1]の代わりに、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、「Irgacure184」)に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、紫外線照射量を1J/cm2とした以外は同様に行った。
<比較例2>
実施例2において、化合物[I−1]の代わりに、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン社製、「Irgacure184」)を10部に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、紫外線照射量を1J/cm2とした以外は同様に行った。
<比較例3>
実施例1において、化合物[I−1]の代わりに、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(BASFジャパン社製、「Irgacure1173」)を4部に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、紫外線照射量を2J/cm2とした以外は同様に行った。
<比較例4>
実施例2において、化合物[I−1]の代わりに、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(BASFジャパン社製、「Irgacure1173」)を10部に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例2と同様の評価を行った。
なお、紫外線照射量を1J/cm2とした以外は同様に行った。
<比較例5>
実施例1において、化合物[I−1]の代わりに、1,4−ブタンジオールビス(チオグリコラート)を4部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、「Irgacure184」)を1部に変更した以外は同様の方法で活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
得られた活性エネルギー線硬化性組成物について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、紫外線照射量を10J/cm2とした以外は同様に行った。
実施例1、3、7は、比較例1及び3より表面硬度と屈曲耐久性に優れており、実施例2、4、6も同様に、比較例4よりも表面硬度と屈曲耐久性が優れていた。さらに、実施例2、4、7は、比較例1及び3よりも硬化収縮率が低いことがわかった。
さらに、合成例1〜4に記載の化合物は、比較例5に比べ非常に優れた保存安定性を有する光重合開始剤であることがわかる。