JP2017025510A - 太陽電池モジュールを搭載した建物 - Google Patents

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Abstract

【課題】火災時における屋根構造に搭載された太陽電池モジュールの配線の断線による感電の危険性を下げること。【解決手段】太陽電池モジュール4の電気配線5を建物1の屋根裏6から屋上7へつなぐ貫通空間8を有し、太陽電池モジュール4を屋根構造2に搭載した建物1は、貫通空間8を覆う熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材10を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、太陽電池モジュールを搭載した建物に関する。
太陽電池モジュールを搭載した屋根構造を有する建物に火災等の災害が発生した場合、放水による消火活動のために消防隊員等の作業者が屋根構造に接近するが、火災により太陽電池モジュールの配線が断線すると作業者が感電するおそれがあるため、これを防ぐため太陽電池モジュールを停止する必要がある。
例えば特許文献1−3にはスイッチによる太陽光発電システムまたは装置の運転を停止できる太陽光発電システムまたは装置について記載している。
実用新案登録第3189106号 特開2014-207857 特開2015-5624
上記のような太陽光発電システムまたは装置の電気回路の接続を遮断する構成の代わりにまたは加えて、屋内で発生した火災が屋根構造に搭載された太陽電池パネルに至るまでの時間を稼げれば、作業者の安全性がより長時間確保され、有益である。
本発明の目的は、火災時における屋根構造に搭載された太陽電池モジュールの配線の断線による感電の危険性を下げることにある。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、(a)太陽電池モジュールの電気配線から貫通空間までの間の屋外の空間、(b)貫通空間、(c)建物の内部空間から貫通空間までの間の屋内の空間、のうちの少なくとも一つに、熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材を配置することにより、簡単な構成で火災の太陽光発電システムまたは装置の電気配線への延焼を遅らせることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
項1.太陽電池モジュールの電気配線を建物の内部空間から屋上へつなぐ貫通空間を有し、太陽電池モジュールを屋根構造に搭載した建物において、
(a)前記太陽電池モジュールの電気配線から貫通空間までの間の屋外の空間、(b)貫通空間、(c)建物の内部空間から貫通空間までの間の屋内の空間、のうちの少なくとも一つの少なくとも一部を覆う熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材を有する太陽電池を搭載した建物。
項2.前記封止部材は加熱時に膨張して、貫通空間を封止するか、または貫通空間に隣接する屋外の空間および屋内の空間の少なくとも一方において貫通空間の端部を封止するか、またはそれらの両方である項1に記載の建物。
項3.前記封止部材は前記貫通空間内に配置されている項1または2に記載の建物。
項4.前記封止部材は電気配線の周囲を覆うように配置されている項1〜3のいずれか一項に記載の建物。
項5.建物の屋根構造に搭載された太陽電池モジュールの電気配線への延焼を遅らせる方法であって、建物は太陽電池モジュールの電気配線を建物の内部空間から屋上へつなぐ貫通空間を有し、
熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材を、(a)前記太陽電池モジュールの電気配線から貫通空間までの間の屋外の空間、(b)貫通空間、および(c)建物の内部空間から貫通空間までの間の屋内の空間、のうちの少なくとも一つの少なくとも一部に配置することからなる方法。
本発明によれば、簡単な構成で火災の太陽光発電システムまたは装置の電気配線への延焼を遅らせることができ、作業者の感電の危険性を下げることが可能となる。
本発明の第1実施形態の屋根構造を示す略斜視図。 図1の屋根構造の拡大断面図。 本発明の第2実施形態の屋根構造を示す拡大断面図。 図2の別例を示す拡大断面図。 図2の別例を示す拡大断面図。 図2の別例を示す拡大断面図。 図2の別例を示す拡大断面図。
(第一実施形態)
本発明を木造家屋の屋根構造に具体化した第一実施形態について図1および図2に従って説明する。
図1を参照すると、建物としての木造家屋1は、屋根3に太陽電池モジュール4が搭載された屋根構造2を備えている。屋根3は木造家屋1の場合、通常、下から上に棟木、野地板、雨漏り用のルーフィング、ならびに瓦またはスレート等の屋根材が積層された構成となっており、屋根材の上に太陽電池モジュール4が設置される。太陽電池モジュール4の電気配線5は、本実施形態では太陽電池モジュール4の下方から延び、図2に示すように、屋根3の端まで延びて折り返し、屋根3を支持する2つの垂直壁9に貫通形成された貫通空間8を通り、屋根3の下かつ天井11の上の、建物1の内部空間13としての屋根裏6まで延びている。つまり、電気配線5は貫通空間8を介して木造家屋1の屋根裏6から屋上7までつながれている。貫通空間8は建物に設けられた建物の屋内と屋外の間を連通する空間である。
2つの垂直壁9は貫通空間8の位置において、貫通空間8を区画形成する屋根構造部分9aを構成する。電気配線5と貫通空間8を区画形成する屋根構造部分9aとの間には熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材10が配置されている。本実施形態では、封止部材10は貫通空間8の位置において、電気配線5の周囲を覆うように屋根構造部分9aに接触した状態で屋根構造部分9aの周方向全周に中空略円筒形に配置されている。
封止部材10は加熱時に膨張して、貫通空間8を封止または閉塞する。加熱により封止部材10が貫通空間8の断面を少なくとも部分的に、好ましくは完全に埋めることで、屋内から発生した火が貫通空間8を通って電気配線5へ到達するのを遅らせることができる。このため、簡便な構成で消防作業員等の作業者の感電の危険性を下げることができる。
封止部材10を構成する耐火性材料について以下に説明する。
耐火性材料は、樹脂成分に熱膨張性黒鉛と無機充填材とを含む樹脂組成物である。封止部材10は、樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法で成形することにより得ることができる。
樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂類が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂類及び/又はゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を持っているものが好ましい。この様な性質を持つものは無機充填材を高充填することが可能であり、得られる樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる。より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムやポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
熱膨張性黒鉛は加熱時に膨張する従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュかそれより大きいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層が得るのに十分であり、また粒度が20メッシュかそれより小さいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
さらに、耐火材材料を構成する樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
化学式(1)中、R1及びR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性黒鉛を10〜350重量部及び前記無機充填材を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
また、前記熱膨張性黒鉛および前記無機充填材の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記耐火性材料は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
前記樹脂組成物における熱膨張性黒鉛及び無機充填材の合計量は、50重量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600重量部以下であると機械的物性が維持される。
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
耐火性材料は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリーエム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトを含有する樹脂組成物からなる耐火性材料、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなる耐火性材料、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の耐火性材料等も挙げられる。
前記耐火性材料は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されないが、50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。
(第二実施形態)
次に、本発明の屋根構造の第二実施形態について図3に従って説明する。なお、第一実施形態と同じ部材については説明を省略する。
図3を参照すると、貫通空間8は図2の垂直壁9の代わりに、屋根3に設けられている。屋根3は貫通空間8の位置において、貫通空間8を区画形成する屋根構造部分3aを構成する。太陽電池モジュール4の電気配線5は、太陽電池モジュール4から延びて屋根3に貫通形成された貫通空間8を通り、屋根3の下の空間である屋根裏6まで延びている。つまり、電気配線5は貫通空間8を介して木造家屋1の屋根裏6から屋上7までつながれている。電気配線5と貫通空間8を区画形成する屋根構造部分3aとの間には熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材10が配置されている。封止部材10は貫通空間8の位置において、電気配線5の周囲を覆うように屋根構造部分3aに接触した状態で屋根構造部分9aの周方向全周に中空略円筒形に配置されている。
封止部材10は加熱時に膨張して、貫通空間8を封止または閉塞する。加熱により封止部材10が貫通空間8の断面を少なくとも部分的に、好ましくは完全に埋めることで、屋内から発生した火が貫通空間8を通って電気配線5へ到達するのを遅らせることができる。このため、第二実施形態の構成であっても、簡便な構成で消防作業員等の作業者の感電の危険性を下げることができる。
ここまで、本発明を第一実施形態および第二実施形態を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
○図4に示すように、図2の第一実施形態で封止部材10が垂直壁9の屋根構造部分9aに配置される代わりに、封止部材10は電気配線5に貼り付けられていてもよい。この場合でも、火災時の加熱により封止部材10が貫通空間8の断面を少なくとも部分的に埋めることで、屋内から発生した火が貫通空間8を通って電気配線5へ到達するのを遅らせることができる。
○図5に示すように、図2の第一実施形態で貫通空間8が天井11の上の屋根裏6に通じるように設けられる代わりに、貫通空間8は天井11よりも下の垂直壁9の部分(例えば戸建ての場合、2階の壁等)に設けられていてもよい。この場合、電気配線5は、貫通空間8を通り、天井11よりも下の建物1の内部空間13まで延びる。
○図6に示すように、図2の第一実施形態で2つの垂直壁9を横切る貫通空間8を設ける代わりに、2つの垂直壁9のうちの外側の垂直壁9に開ける孔8aと、2つの垂直壁9のうちの内側の垂直壁9に開ける孔8bとに高低差を設け、孔8a、孔8b、2つの垂直壁9の間に生じる空間12のうち孔8aと孔8bの間の空間8cを通って電気配線5が延びるようにしてもよい。孔8a、孔8b、および空間8cは貫通空間8を形成する。また、
孔8a、孔8b、および空間8cの周囲において熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材10を垂直壁9に貼付する。封止部材10は加熱時に膨張して、2つの垂直壁9の間に形成された空間12を封止する。加熱により封止部材10が空間12の断面を少なくとも部分的に、好ましくは完全に埋めることで、屋内から発生した火が貫通空間8を通って電気配線5へ到達するのを遅らせることができる。このため、簡便な構成で消防作業員等の作業者の感電の危険性を下げることができる。このような別例の屋根構造2の構成でも、図2に示した第一実施形態と同様の効果を奏する。
○図7に示すように、封止部材10の代わりに、太陽電池モジュール4の電気配線5から貫通空間8までの間の屋外の空間に、熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材10aを配置してもよい。封止部材10aの組成は封止部材10に説明した通りである。好ましくは、封止部材10aを、貫通空間8に隣接する屋外の空間に配置する。封止部材10aを外側の垂直壁9に接して貼付し、加熱時に膨張して貫通空間8の端部において貫通空間8の断面を少なくとも部分的に、好ましくは完全に側方から封止するようにすれば、延焼防止の効果に優れ、屋内から発生した火が貫通空間8を通って電気配線5へ到達するのを遅らせることができる。
また、屋根裏6から貫通空間8までの間の屋内の空間に、熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材10bを配置してもよい。封止部材10bの組成は封止部材10に説明した通りである。好ましくは、封止部材10bを、貫通空間8に隣接する屋内の空間に配置する。封止部材10aを内側の垂直壁9に接して貼付し、加熱時に膨張して貫通空間8の端部において貫通空間8の断面を少なくとも部分的に、好ましくは完全に側方から封止するようにすれば、延焼防止の効果に優れ、屋内から発生した火が貫通空間8を通って電気配線5へ到達するのを遅らせることができる。
封止部材10aおよび封止部材10bは、両方が配置されてもよいし、片方のみ配置されてもよい。
○図2に示した第一実施形態、図3に示した第二実施例、図4に示した別例、図5に示した別例または図6に示した別例と、図7に示した別例とが組み合わされてもよい。つまり、封止部材10,10a,10bは同一または異なる組成とし、連続的にまたは不連続に(a)太陽電池モジュール4の電気配線5から貫通空間8までの間の屋外の空間、(b)貫通空間8、(c)内部空間13から貫通空間8までの間の屋内の空間、のうちの少なくとも一つに設けてもよい。
○図1では建物として木造家屋1を示したが、本発明の屋根構造は、コンクリートの建物等、任意の建物の屋根構造であってよい。
○貫通空間8を設ける位置は、垂直壁9(図2,図5)と屋根3(図3)に設けた例を示したが、これらに限定されず、屋根構造の任意の位置に設けてもよい。
本明細書中に引用されているすべての特許出願および文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
1・・・屋根構造、3a,9a…屋根構造部分、4…太陽電池モジュール、5…電気配線、6…内部空間としての屋根裏、7…屋上、8,8a,8b,8c…貫通空間、10,10a,10b…封止部材、13…内部空間。

Claims (5)

  1. 太陽電池モジュールの電気配線を建物の内部空間から屋上へつなぐ貫通空間を有し、太陽電池モジュールを屋根構造に搭載した建物において、
    (a)前記太陽電池モジュールの電気配線から貫通空間までの間の屋外の空間、(b)貫通空間、(c)建物の内部空間から貫通空間までの間の屋内の空間、のうちの少なくとも一つの少なくとも一部を覆う熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材を有する太陽電池を搭載した建物。
  2. 前記封止部材は加熱時に膨張して、貫通空間を封止するか、または貫通空間に隣接する屋外の空間および屋内の空間の少なくとも一方において貫通空間の端部を封止するか、またはそれらの両方である請求項1に記載の建物。
  3. 前記封止部材は前記貫通空間内に配置されている請求項1または2に記載の建物。
  4. 前記封止部材は電気配線の周囲を覆うように配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物。
  5. 建物の屋根構造に搭載された太陽電池モジュールの電気配線への延焼を遅らせる方法であって、建物は太陽電池モジュールの電気配線を建物の内部空間から屋上へつなぐ貫通空間を有し、
    熱膨張性黒鉛を含有する耐火性材料からなる封止部材を、(a)前記太陽電池モジュールの電気配線から貫通空間までの間の屋外の空間、(b)貫通空間、および(c)建物の内部空間から貫通空間までの間の屋内の空間、のうちの少なくとも一つの少なくとも一部に配置することからなる方法。
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