一般的な技法:
本発明の実施には、別段の指定のない限り、当技術分野の技術の範囲内である、免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノミクスおよび組換えDNAの従来の技法を使用する。例えば、Matthews, PLANT VIROLOGY、第3版(1991年);Sambrook、FritschおよびManiatis、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第2版(1989年);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F. M. Ausubelら編、(1987年));シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press、Inc.): PCR 2: A PRACTICAL APPROACH(M. J. MacPherson、B. D. HamesおよびG. R. Taylor編(1995年))、HarlowおよびLane編(1988年)ANTIBODIES、A LABORATORY MANUAL、およびANIMAL CELL CULTURE(R. I. Freshney編(1987年))を参照されたい。
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、文脈によりそうでないことが明確に規定されない限り、複数の参照対象を含む。例えば、「a cell(1つの細胞)」という用語は、それらの混合物を含めた複数の細胞を包含する。
定義
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、また、非アミノ酸によって中断していてもよい。この用語は、例えばジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化、または、標識用成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作で修飾されたアミノ酸のポリマーも包含する。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびD光学異性体またはL光学異性体、およびアミノ酸類似体およびペプチド模倣体を含めた、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸もしくは合成アミノ酸を指す。
「アミノ酸」という用語は、本明細書で使用される場合、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を包含する。天然に存在するアミノ酸とは、遺伝暗号によりコードされるもの、ならびに後で修飾されたアミノ酸、例えば、γ−カルボキシグルタミン酸、ヒドロキシプロリン、およびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合したα炭素を有する化合物を指す。例示的なアミノ酸類似体としては、これだけに限定されないが、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、およびメチオニンメチルスルホニウムが挙げられる。そのような類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する限りは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有してよい。「アミノ酸模倣体」とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化学化合物を指す。
アミノ酸は、本明細書では、一般に公知の3文字記号によって、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨されている1文字記号によって称することができる。
「抗体(antibody)」または「抗体(antidodies)」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫グロブリン(Ig)分子および免疫グロブリン分子の抗原結合性部分、すなわち、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。構造的に、単純な天然に存在する抗体(例えば、IgG)は、4つのポリペプチド鎖:ジスルフィド結合によって相互接続した2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む。天然の免疫グロブリンとは、IgD、IgG、IgA、IgMおよびIgEなどのいくつかの種類の分子を含む、分子の大きなファミリーを表す。
「抗体」とは、ハイブリッド抗体または変更された抗体を指す場合もある。抗体の抗原結合機能は、天然に存在する抗体の断片によりなされ得、したがって、「抗体」という用語は、これだけに限定されないが、Fab断片(複数可)、およびFv断片を含めた抗体の断片、変更された抗体、またはハイブリッド抗体も包含する。これらの断片は、「抗原結合性断片」としても公知である。「抗原結合性断片」という用語の範囲内に包含される結合性断片の例としては、これだけに限定されないが、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iii)抗体の単一の腕のVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(iv)(Wardら、(1989年)Nature 341巻:544〜546頁)に記載されているVHドメインからなるdAb断片、(v)単離された相補性決定領域(CDR);ならびに(vi)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインは、一般に、別々の遺伝子によってコードされるが、組換え方法により、それらを単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として公知;Birdら(1988年)Science 242巻:423〜426頁;およびHustonら(1988年)PNAS 85巻:5879〜5883頁)のようにすることを可能にする合成リンカーを作出することができる。そのような単鎖抗体も、「抗原結合性断片」という用語の範囲内に包含される。抗体断片は、それらの標的抗原と架橋することができるもの、例えば、F(ab’)2断片などの二価断片などであることが好ましい。あるいは、それら自体はそれらの標的抗原と架橋結合しない抗体断片(例えば、Fab断片)を、抗体断片と架橋結合し、それにより、標的抗原と架橋するのに役立つ二次抗体と併せて使用することができる。
抗体は本明細書に記載されているまたは当業界公知の従来の技法を使用して断片化することができ、その断片を有用性について全抗体に関して記載されているのと同じ様式でスクリーニングすることができる。免疫グロブリン分子のFab断片は、共有結合によりカップリングしており、抗原と特異的に組み合わせることができる、免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖の免疫学的に活性な部分を含有する免疫グロブリン分子の部分からなる多量体タンパク質である。Fab断片は、実質的にインタクトな免疫グロブリン分子を、当技術分野で周知の方法を使用してタンパク質消化することによって、例えばパパイン消化によって調製することができる。しかし、Fab断片は、例えば、本明細書に開示されている方法または任意の他の当業界公知の方法を使用して適切な宿主細胞において免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖の所望の部分を発現させることによって調製することもできる。
免疫グロブリン分子のFv断片は、共有結合によりカップリングしており、抗原に特異的に結合することができる、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域の免疫学的に活性な部分からなる多量体タンパク質である。Fv断片は、一般には、本明細書に記載の方法および/または当業者に公知の他の方法を使用して適切な宿主細胞において免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域の所望の部分を発現させることによって調製される。
「抗体」という用語は、所望の結合性部分を有する二特異性分子およびキメラ分子も含み得る。「抗体」という用語には、脊椎動物抗体、ハイブリッド抗体またはキメラ抗体も包含される。
「抗体」という用語は、ヒト化抗体も包含する。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態としては、非ヒトIgに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体が挙げられる。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、ヒトIg(レシピエント抗体)のCDRのうちの1つまたは複数が所望の特異性、親和性および結合機能を有するマウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体または非ヒト霊長類抗体などの非ヒトドナー抗体のCDRで置き換えられたヒトIg(レシピエント抗体)である。一部の実施形態では、ヒトIgの1つまたは複数のFRアミノ酸残基が対応する非ヒトアミノ酸残基で置き換えられている。いくつかの場合には、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体においては見出されない修飾された残基を含有する。これらの修飾された残基は、必要であれば抗体の性能を高めるために役立ち得る。ヒト化抗体は、少なくとも1つ、いくつかの場合には2つの可変ドメインの実質的に全てを含んでよく、超可変領域の全てまたは実質的に全てが非ヒトドナーIgの超可変領域に対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒトIg配列のFRである。ヒト化抗体は、場合により、一般にはヒト免疫グロブリンのIg定常領域(Fc)の少なくとも一部分も含み得る。詳細については、Jonesら、Nature 321巻:522〜525頁(1986年);Reichmannら、Nature 332巻:323〜329頁(1988年);およびPresta、Curr. Op. Struct. Biol. 2巻:593〜596頁(1992年)を参照されたい。
「ヒト化抗体」は、重鎖および軽鎖のCDRの一部または全部が非ヒトモノクローナル抗体に由来し、可変領域の残りの部分の実質的に全てがヒト可変領域(重鎖および軽鎖の両方)に由来し、定常領域がヒト定常領域に由来する抗体も包含する。一実施形態では、重鎖および軽鎖のCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域は非ヒト抗体に由来する。さらに別の実施形態では、重鎖および軽鎖の少なくとも1つのCDR(例えば、CDR3)は非ヒト抗体に由来する。当業者には、非ヒト抗体に由来するCDR1、CDR2、およびCDR3の任意の組合せが本発明の範囲内に入ることが理解されよう。
「抗体」という用語は、触媒抗体、例えば、抗原特異的触媒活性を有する抗体も包含する。抗原特異的触媒活性としては、例えば、抗原特異的タンパク質分解性切断を挙げることができる。触媒抗体およびそれを作製する方法は、例えば米国特許第5658753号および同第7205136号に記載されている。
「抗原」とは、本明細書で使用される場合、抗体が特異的に認識し、結合する物質を意味する。抗原としては、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、多糖および脂質;その一部およびこれらの組合せを挙げることができる。
「宿主細胞」は、主題のベクターのレシピエントになり得るまたはなっている個々の細胞または細胞培養物を包含する。宿主細胞は、単一の宿主細胞の後代を包含する。後代は、自然変異、偶発的変異、または意図的な変異に起因して、必ずしも元の親細胞と(形態または全DNA相補物のゲノムにおいて)完全に同一でなくてもよい。宿主細胞は、in vivoで本発明のベクターをトランスフェクトした細胞を包含する。
「細胞株」または「細胞培養物」とは、in vitroで成長または維持された細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞または高等真核細胞を指す。細胞の後裔は親細胞と(形態学、遺伝子型、または表現型のいずれかにおいて)完全に同一でなくてもよい。
「限定培地」とは、培養物中の細胞の生存および/または成長に必要である栄養要求量およびホルモン要求量を含み、したがって、培地の成分が分かっている培地を指す。伝統的に、限定培地は、成長および/または生存に必要な栄養因子および増殖因子を添加することによって配合されてきた。一般には、限定培地は、以下のカテゴリーのうちの1つまたは複数からの少なくとも1つの成分を供給する:a)全ての必須アミノ酸、および通常は20アミノ酸とそれに加えてシステインの基本的なセット;b)エネルギーの供給源、通常グルコースなどの炭水化物の形態で;c)低濃度の必要なビタミンおよび/または他の有機化合物;d)遊離の脂肪酸;およびe)微量元素、微量元素は、一般には非常に低い濃度、通常マイクロモルの範囲で必要である無機化合物または天然に存在する元素と定義される。限定培地は、場合により、以下のカテゴリーいずれかからの1つまたは複数の成分が補充されていてもよい:a)1種または複数種の分裂促進剤;b)例えば、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩などの塩および緩衝液;c)例えば、アデノシンおよびチミジン、ヒポキサンチンなどのヌクレオシドおよび塩基;ならびにd)タンパク質および組織加水分解産物。
「相同性」または「同一性」または「類似性」とは、2つのペプチド間または2つのポリヌクレオチド間の配列類似性を指す。相同性および同一性は、それぞれ、比較のために並べることができる各配列内の位置を比較することによって決定することができる。比較する配列内の相当する位置が同じ塩基またはアミノ酸で占められている場合、それらの分子はその位置において同一であり、相当する部位が同じまたは類似したアミノ酸残基(例えば、立体的性質および/または電子的性質が類似した)で占められている場合、その分子は、その位置において相同である(類似している)と称することができる。相同性/類似性または同一性の百分率という表現は、比較する配列により共有される位置における同一のまたは類似したアミノ酸の数の関数を指す。
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片が天然では通常付随する構成物、細胞性物質および他のものから分離されていることを意味する。当業者には明らかである通り、天然に存在しないポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、その天然に存在する対応物と区別するのに「単離」を必要としない。さらに、「濃縮された」、「分離された」または「希釈された」ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、またはその断片は、体積当たりの分子の濃度または数が、その天然に存在する対応物と比較して「濃縮」されたものよりも大きいか、または「分離」されたものよりも少ないという点で、その天然に存在する対応物と区別可能である。
富化は、溶液の体積当たりの重量など絶対的に測定することもでき、供給源混合物中に存在する第2の潜在的に干渉する物質に関して測定することもできる。本発明の複数の実施形態の富化を増大させることがますます好ましい。したがって、例えば、2倍富化が好ましく、10倍富化がより好ましく、100倍富化がより好ましく、1000倍富化がさらに好ましい。物質は、例えば化学合成または組換え発現などによる人工的な集合プロセスによって単離された状態でもたらすことができる。
「単離された」抗体は、天然では一般に付随する材料の大部分または全てを含まない場合、「実質的に純粋」でもあり得る。したがって、実質的に純粋な単離された抗体試料は、例えば抗体ライブラリー内の抗体またはゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリー内の核酸などの、数百万の他の配列の間で存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含まない。当然、「実質的に純粋」な分子は、1つまたは複数の他の分子と組み合わせることができる。したがって、「実質的に純粋」という用語は、組合せ組成物を排除するものではない。
単離された抗体の試料は、抗体が重量で試料の60%、70%、80%、90%、または、90%超を占める場合に、「実質的に純粋」であるとみなすことができる。純度は、これだけに限定されないが、UV分光法、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、気相)、ゲル電気泳動(例えば、銀またはクーマシー染色)および配列解析(核酸およびペプチド)を含めた任意の適切な方法によって決定することができる。
ポリペプチドに関しては、「直鎖状配列」または「配列」とは、ポリペプチド内のアミノ酸のアミノ末端からカルボキシル末端への方向の順序であり、ポリペプチドの一次構造において配列内の互いに近隣する残基が連続している。「部分配列」とは、一方向または両方向に付加的な残基を含むことが公知であるポリペプチドの一部の直鎖状配列である。
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「ヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用される。これらは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはその類似体のいずれかのヌクレオチドの任意の長さのポリマーの形態を指す。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を有してよく、既知または未知のいかなる機能も発揮し得る。以下はポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、連鎖解析により定義された遺伝子座(複数可)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体などの修飾されたヌクレオチドを含んでよい。存在する場合、ポリマーの組立て前、またはその後にヌクレオチド構造に対する修飾を付与することができる。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分によって中断していてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後に、標識用成分とのコンジュゲーションなどによってさらに修飾することができる。
本明細書で使用される場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセスおよび/または転写されたmRNA(「転写物」とも称される)がその後ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。転写物およびコードされるポリペプチドは、集合的に、遺伝子産物と称される。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。
「対象」とは、本明細書で使用される場合、発現される遺伝物質を含有する生物学的実体を指す。生物学的実体は、細菌、ウイルス、真菌、および原生生物を含めた植物、動物、または微生物であることが好ましい。in vivoで得られたまたはin vitroで培養された生物学的実体の組織、細胞およびそれらの後代も包含される。
「ベクター」とは、挿入される核酸分子を宿主細胞内に、かつ/または宿主細胞間で移行させる、好ましくは自己複製する核酸分子である。この用語は、主にDNAまたはRNAの細胞への挿入に関して機能するベクター、主にDNAまたはRNAの複製に関して機能するベクターの複製、およびDNAまたはRNAの転写および/または翻訳に関して機能する発現ベクターを包含する。上記の機能のうちの1つより多くをもたらすベクターも包含される。
「発現ベクター」とは、適切な宿主細胞に導入されると、転写され、ポリペプチド(複数可)に翻訳され得るポリヌクレオチドである。「発現系」とは、通常、所望の発現産物をもたらすように機能することができる発現ベクターを含む適切な宿主細胞を意味する。
「異種性」とは、比較対象の実体の他の部分とは遺伝子型が別個の実体に由来することを意味する。例えば、そのネイティブコード配列を除去し、ネイティブ配列以外のコード配列と作動可能に連結したプロモーターは、異種プロモーターである。「異種性」という用語は、ポリヌクレオチド、ポリペプチドに適用される場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、比較対象の実体の残りとは遺伝子型が別個の実体に由来することを意味する。例えば、異種ポリヌクレオチドまたは抗原は、異なる種起源、異なる細胞型、および別個の個体の同じ細胞型に由来するものであってよい。
「組換え」とは、ポリヌクレオチドに適用される場合、ポリヌクレオチドがクローニング、制限および/またはライゲーションステップの種々の組合せ、ならびに天然に見出されるポリヌクレオチドとは別個の構築物が生じる他の手順の産物であることを意味する。
「遺伝子」または「遺伝子断片」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは、転写され、翻訳された後に特定のタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。遺伝子または遺伝子断片は、ポリヌクレオチドが、コード領域全体またはそのセグメントを含み得るオープンリーディングフレームを少なくとも1つ含有する限りは、ゲノムDNAであってもcDNAであってもよい。
「作動可能に連結した(operably linkedまたはoperatively linked)」とは、そのように記載されている成分が、それらの意図された様式で機能することが可能になる関係にある近位を指す。例えば、プロモーター配列によりコード配列の転写が促進される場合、プロモーター配列はコード配列に作動可能に連結している。
発明の詳細な説明
本発明の態様は、非ネイティブTTRを選択的に認識し、それに結合する抗体に関する。そのような抗体は、広範囲の診断および治療への適用を有する。したがって、一態様では、本発明は、抗トランスサイレチン抗体であって、生理的に適切な条件下で、前記抗体の結合に関して四量体TTRと比較して非ネイティブ形態のTTRに対して選択的な結合を示す抗トランスサイレチン抗体を提供する。関連する態様では、本発明は、生理的に適切な条件下で、アミロイド疾患キャリアに存在する変異TTRの非ネイティブ形態に対して、前記変異TTRの四量体形態と比較して選択的な結合を示す、抗トランスサイレチン抗体を提供する。
「結合する」または「結合」という用語は、結合パートナーが互いに対する親和性を有するとみなされることを意味する。「特異的」または「選択的」という用語および文法上のその変形は、結合に関して使用される場合、結合パートナー間の結合が、他の分子との非特異的または非選択的な結合と区別することができるようなものであること意味する。例えば、抗体は、ポリペプチドまたは他の物質を含めた他の参照抗原に結合するよりも高い親和性または結合活性で結合する場合、抗原に対して「選択的な結合」を示す。一部の実施形態では、抗体は、非ネイティブTTRに対して、同じ組成のネイティブTTRと比較して1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、または、100倍超の結合を示す。特定の実施形態では、抗体は、非ネイティブTTRに対して、同じ組成のネイティブTTRと比較して2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、または、100倍超の結合を示す。選択的な結合は、例えばELISA、免疫沈降、共沈、ウエスタンブロット法、表面プラズモン共鳴、マルチプレックスイムノアッセイ、2ハイブリッドアッセイなどの結合アッセイを使用して確認することができる。一部の実施形態では、結合アッセイはELISAアッセイである。一実施形態では、ELISAアッセイは、間接的な(例えば、サンドイッチ)アッセイである。そのような結合アッセイでは、本発明の抗体を非ネイティブTTRと反応させる試料において、抗体をネイティブTTRと反応させる試料と比較してより強力な検出可能なシグナルが生じ得る。一般に、検出可能なシグナルは、検出可能な標識によって生じるシグナルとして記載することができる。検出可能な標識は、コンジュゲートした分子の検出が可能になるように別の分子とコンジュゲートすることができる任意の分子であってよい。検出可能な標識の非限定的な例としては、キレート化剤、光活動性薬剤、放射性核種(アルファ、ベータおよびガンマエミッター)、蛍光剤、発光剤、ナノ粒子、常磁性イオン、またはある特定の試薬の存在下で検出可能なシグナルを生じる酵素が挙げられる(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ)。
「四量体TTR」および「ネイティブTTR」という用語は、本明細書では、互換的に使用され、4つのTTR単量体の会合によって形成されるタンパク質を指す。構造的に、TTR四量体は、TTRの弱い二量体−二量体界面によって形成される2つのチロキシン結合部位を特徴とする。各TTR単量体は127アミノ酸を含む。ネイティブ四量体内で、単量体は、それぞれβ鎖CBEFおよびDAGHを含有する向かい合った2つのβ−シートで構成される。β鎖が標識されたTTR単量体のアミノ酸配列が図1に示されている。
「非ネイティブTTR形態」とは、本明細書で使用される場合、アミロイド線維を含めたTTR凝集体の形成に関連する構造的なTTRコンフォメーションを指す。TTRアミロイド形成の律速段階は、四量体TTRから単量体TTRへの解離である。四量体TTRから単量体TTRに解離すると、単量体TTRは不安定性を示し、オリゴマーへの凝集が促進される、部分的にアンフォールディングおよびミスフォールディングされたコンフォメーションをとると考えられている。その後、オリゴマーは会合してプロトフィブリルになり、これがさらに会合して不溶性TTRアミロイド線維および不溶性TTRアミロイド沈着になる。したがって、非ネイティブTTR形態としては、これだけに限定されないが、部分的にアンフォールディングまたはミスフォールディングされたTTR四量体、部分的にアンフォールディングまたはミスフォールディングされた単量体TTR、オリゴマーTTR、TTRプロトフィブリル、TTR原線維、およびTTRアミロイド沈着が挙げられる。一部の実施形態では、非ネイティブTTRは、タンパク質分解によって引き起こされる切断されたTTRを含有してよい。一部の実施形態では、本発明の抗体は、単量体TTRおよび/またはオリゴマーTTRに対する選択的な結合を示す。単量体TTRは本明細書に記載されている。一部の実施形態では、抗体は、TTRプロトフィブリル、TTR原線維、TTRアミロイド沈着、またはそれらの任意の組合せに対する選択的な結合をさらに示す。
「オリゴマーTTR」とは、本明細書で使用される場合、4つより多くのTTR単量体の会合によって形成される非ネイティブTTRタンパク質を指す。一部の実施形態では、TTRオリゴマーは、5〜10個のサブユニット、7〜20個のサブユニット、10〜50個のサブユニット、30〜100個のサブユニット、または100個超のサブユニットで形成される。一部の実施形態では、TTRオリゴマーは、100個超のサブユニットを含む。一部の実施形態では、TTRオリゴマーは、8個未満のサブユニットを含む。一部の実施形態では、TTRオリゴマーは、8個、12個、16個、24個、32個、40個、48個、56個、64個、72個、80個、88個、96個、またはそれより多くのサブユニットで形成される。一部の実施形態では、TTRオリゴマーは、五量体、六量体、七量体、または八量体である。一部の実施形態では、オリゴマーTTRは、56kDを超える分子量を示す。一部の実施形態では、オリゴマーTTR内のサブユニットは変異TTRで構成される。一部の実施形態では、前記オリゴマー内のサブユニットは野生型TTRで構成される。他の実施形態では、前記オリゴマー内のサブユニットは変異TTR単量体および野生型TTR単量体または切断された単量体の混合物で構成される。
アミロイド沈着は、不溶性の線維状タンパク質凝集体と特徴付けることができる。一部の実施形態では、アミロイド沈着は、ベータシート構造を示す。一部の実施形態では、アミロイド沈着は、タンパク質原線維を実質的に含む。アミロイド線維は、不溶性であり、かつプロテアーゼ活性に対して抵抗性である糸様タンパク質凝集体と特徴付けることができる。これらは、線維軸に対して垂直に走り、長さ不定のクロスβシートを形成するβ鎖を含む。「プロトフィブリル」は、一般に可溶性である細長いタンパク質凝集体と特徴付けることができる。
「生理的に適切な条件」とは、本明細書で使用される場合、一般に、タンパク質変性を促進しない環境条件を指す。生理的に適切な条件としては、in vivo条件(例えば、生理的条件)、細胞環境においてTTRが保持されるin vitro条件(例えば、生細胞イメージング)、またはTTRが細胞環境から単離されてはいるが、著しいタンパク質変性を促進しない環境中に留まっているin vitro条件を挙げることができる。タンパク質変性とは、一般に、ストレス要因の適用により、タンパク質がネイティブ状態で存在するそれらの四次構造、三次構造、および/または二次構造を失うプロセスを指す。したがって、生理的に適切な条件は、タンパク質変性を誘導する外部のストレス要因がないと一般に特徴付けることができる。
例えば、結合アッセイは、生理的に適切な緩衝液条件の下で行うことができる。一般に、生理的緩衝液は、生理的濃度の塩を含有し、約6.5から約7.8まで、好ましくは約7.0から約7.5までの範囲の中性pHに調整される。種々の生理的緩衝液が上記のSambrookら(1989年)に列挙されており、したがって本明細書では詳述しない。
タンパク質変性が誘導され得る別の例示的なストレス要因は、非生理的pHである。一般に、非生理的pHとは、酸性または塩基性の(すなわち中性でない)pHを指す。酸性のpHは、約7未満、約6.5未満、約6未満、約5未満、または約4未満のpHであり得る。例示的な酸性変性剤としては、これだけに限定されないが、酢酸、クエン酸、トリクロロ酢酸、スルホサリチル酸が挙げられる。塩基性pHは、約7.5超、約8.0超、または約8.5超であり得る)。生理的に適切なpH条件は約pH6〜8、約pH6.5〜7.8、約pH7.0〜7.5であり得る。
タンパク質変性を促進し得る別のストレス要因は非生理的塩濃度である。硫酸アンモニウムなどのいくつかの塩により、タンパク質の構造が安定化し、融解温度が上昇する傾向がある。塩化カルシウムなどの他の塩ではタンパク質が不安定化し、融解温度が低下し、これらの塩はカオトロピックと称される。例示的なカオトロピック塩としては、これだけに限定されないが、重金属塩、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiOTf)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF(6))、およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiNTf(2))、塩化グアニジニウム、塩化マグネシウム、酢酸リチウムが挙げられる。例示的な生理的塩濃度としては、本明細書に記載の生理的緩衝液の塩濃度が挙げられる。
高い、非生理的温度によってもタンパク質変性が誘導され得る。多くのタンパク質は、約41℃またはそれより高温で変性する。生理的に適切な温度としては、41℃未満、40℃未満、39℃未満、38℃未満の温度を挙げることができる。さらに、氷点下の温度も、ネイティブタンパク質構造に影響を及ぼし得る。生理的に適切な温度としては、0℃超、1℃超、2℃超、3℃超、または約4℃またはそれより高い温度を挙げることができる。一実施形態では、生理的に適切な温度は約4℃から約40℃の範囲である。
これだけに限定されないが、尿素、グアニジウム塩酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、およびアルコール(例えばエタノール)を含めたカオトロピック剤が存在することによっても、疎水性相互作用、静電気的相互作用、および水素結合などのネイティブ非共有結合性タンパク質分子内相互作用が撹乱され得る。したがって、カオトロピック剤の存在は生理的に関連しない条件の別の例である。
タンパク質は、界面で変性し得る。イムノアッセイの過程中、生物学的成分の構造および機能に影響を及ぼすいくつかの界面が形成される。例示的な界面は、固体表面と溶液の間の界面である。一部の実施形態では、界面(例えば、固体/液体界面)に存在するタンパク質は、生理的に関連しない条件下にある。例えば、タンパク質を固体表面に直接付着させること(例えば、直接ELISAアッセイの間)は、それによりタンパク質のコンフォメーションが変更され、変性が誘導され、したがって、生理的に関連しない条件とみなすことができる。したがって、in vitro結合アッセイは、試験試料中のタンパク質の50%超が溶液中に存在し、固体/液体界面には局在していない(例えば、固体表面に直接付着していない)場合に、生理的に適切な条件下で行われるものとみなすことができる。
一部の実施形態では、抗体は、野生型TTRまたは変異TTRに結合する。「変異TTR」という用語は、TTR遺伝子に変異を有するTTR遺伝子によりコードされる任意のTTRタンパク質種を指す。変異TTRタンパク質は、サブユニットの全てではなく一部(いくつかが野生型である)に、TTR遺伝子における一塩基変化によりTTRアミノ酸配列においてアミノ酸置換が引き起こされるミスセンス変異を有し得る。変異TTRタンパク質は、フレームシフト変異、例えば、遺伝子の読み枠を撹乱し、野生型TTRと比較して実質的に異なるアミノ酸配列をもたらす変異を有し得る。あるいは、変異TTRタンパク質は、タンパク質産物の著しい切断を引き起こす中途終止コドンをもたらすナンセンス変異を有し得る。特定の実施形態では、変異TTRタンパク質はミスセンス変異を有する。特に、アミロイド疾患に関連することが公知であるミスセンス変異形態のTTRが100種超存在する。一部の実施形態では、変異TTRは、アミロイド疾患に関連する変異TTR(アミロイド形成的変異TTR)である。一部の実施形態では、TTR遺伝子の単一の対立遺伝子(例えば、ヘテロ接合性変異)または対立遺伝子の両方(例えば、ホモ接合性変異)に散発性または家族性アミロイド形成的変異が存在する。一部の実施形態では、アミロイド形成的変異TTRは、Cys10Arg、Leu12Pro、Asp18Glu、Asp18Gly、Asp18Asn、Val20Ile、Ser23Asn、Pro24Ser、Ala25Thr、Ala25Ser、Val28Met、Val30Met、Val30Ala、Val30Leu、Val30Gly、Val32Ala、Phe33Ile、Phe33Leu、Phe33Val、Phe33Cys、Arg34Thr、Arg34Gly、Lys35Asn、Lys35Thr、Ala36Pro、Asp38Ala、Asp38Val、Trp41Leu、Glu42Gly、Glu42Asp、Phe44Ser、Ala45Asp、Ala45Ser、Ala45Thr、Gly47Arg、Gly47Ala、Gly47Val、Gly47Glu、Thr49Ala、Thr49Ile、Thr49Pro、Ser50Arg、Ser50Ile、Glu51Gly、Ser52Pro、Gly53Glu、Gly53Ala、Glu54Gly、Glu54Lys、Glu54Leu、Leu55Arg、Leu55Pro、Leu55Gln、Leu55Glu、His56Arg、Gly57Arg、Leu58His、Leu58Arg、Thr59Lys、Thr60Ala、Glu61Lys、Glu61Gly、Phe64Leu、Phe64Ser、Gly67Glu、Ile68Leu、Tyr69His、Tyr69Ile、Lys70Asn、Val71Ala、Ile73Val、Ser77Phe、Ser77Tyr、Tyr78Phe、Ala81Val、Ala81Thr、Ile84Ser、Ile84Asn、Ile84Thr、His88Arg、Glu89Gln、Glu89Lys、His90Asp、Ala91Ser、Gln92Lys、Val94Ala、Ala97Gly、Ala97Ser、Ile107Val、Ile107Met、Ile107Phe、Ala109Ser、Leu111Met、Ser112Ile、Tyr114Cys、Tyr114His、Tyr116Ser、Ala120Ser、Val122Ile、DelVal122、Val122Ala、またはAsn124Serという変異を含む。他の実施形態では、変異TTRはアミロイド疾患に関連しない(非アミロイド形成的変異TTR)。一部の実施形態では、非アミロイド形成的変異TTRは、Gly6Ser、Met13Ile、Asp74His、His90Asn、Gly101Ser、Pro102Arg、Arg104Cys、Arg104His、Ala108Ala、Ala109Thr、Ala109Val、Thr119Met、またはPro125Serという変異を含む。他の実施形態では、変異TTRは、1つより多くの変異を有し得る。特定の実施形態では、変異TTRは、同じ対立遺伝子上または異なる対立遺伝子上に2つの変異を有し得る。変異は、本明細書に記載の単一の変異の任意の組合せであってよい。一部の実施形態では、変異TTRは、Gly6Ser/Val30Met、Gly6Ser/Phe33Ile、Gly6Ser/Ala45Asp、Gly6Ser/Ser77Tyr、Gly6Ser/Tyr114Cys、Gly6Ser/Thr119Met、Gly6Ser/Val122/Ala、His90Asn/Val30Met、His90Asn Glu42Gly、His90Asn/Thr119Met、Arg104His/Val30Met、またはThr119Met/Val30Metという変異である。
「アミロイド疾患キャリア」とは、本明細書で使用される場合、一般に、アミロイド疾患を保有する症候性の対象または遺伝子変異もしくはアミロイド疾患の発生に関して公知の危険因子を保有する無症候の対象を指す。「アミロイド疾患」または「アミロイド関連疾患」という用語は、本明細書では、互換的に使用され、対象におけるアミロイドの沈着に関連する任意の疾患を指す。アミロイド沈着は1つまたは複数の器官または体内システム内に蓄積し、前記1つまたは複数の器官または体内システムの機能を撹乱する可能性がある。例示的なアミロイド疾患としては、例えば、とりわけ、アルツハイマー病、2型糖尿病、パーキンソン病、伝達性海綿状脳症、ハンチントン病、甲状腺の髄様癌、心不整脈、孤立性心房性アミロイドーシス、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、大動脈中膜アミロイドーシス、プロラクチノーマ、家族性アミロイドポリニューロパチー、遺伝性非神経障害性全身性アミロイドーシス、透析関連アミロイドーシス、フィンランド型アミロイドーシス、格子状角膜ジストロフィー、脳アミロイド血管症、全身性ALアミロイドーシス、多発性骨髄腫、家族性アミロイド心筋症、老人性全身性アミロイドーシス、アミロイドーシス、心筋症、多発ニューロパチー、糖尿病、加齢黄斑変性症などの眼の疾患および障害、特発性心筋症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、免疫グロブリン軽鎖アミロイドーシス(AL)、ならびに手根管症候群(carpel tunnel syndrome)が挙げられる。好ましい実施形態では、アミロイド疾患は、アミロイド形成的TTRに関連する疾患、例えば、家族性アミロイドポリニューロパチー、家族性アミロイド心筋症、老人性全身性アミロイドーシス、髄膜アミロイドーシス、家族性眼髄膜アミロイドーシス(familial oculoleptomeningeal amyloidosis)、特発性多発ニューロパチー、および有糸分裂後組織変性である。
エピトープ
一部の実施形態では、抗体は、四量体TTRと比較してより接近しやすい非ネイティブTTR上のエピトープに結合する。「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原性決定因子を指す。ポリペプチドエピトープは、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸もの短さであってもよく、または16〜50アミノ酸もしくはさらに多くのアミノ酸もの長さであってもよい。「立体構造エピトープ(conformational epitope)」という用語は、アミノ酸の2次元または3次元の近位で構成されるエピトープを指し、アミノ酸は連続していても連続していなくてもよく、同じポリペプチド上にあっても1つまたは複数の異なるポリペプチド上にあってもよい。
一部の実施形態では、抗体は、四量体TTRと比較してより接近しやすい単量体TTRおよび/またはオリゴマーTTR上のエピトープに結合する。エピトープへの接近しやすさは、エピトープと抗体の間の複合体の形成によって確認することができる。一部の実施形態では、複合体の形成を、結合アッセイ、例えばイムノアッセイによって検出する。
一部の実施形態では、エピトープは、立体構造エピトープである。一部の実施形態では、立体構造エピトープは、抗体に対する結合親和性を示す三次元構造を形成する任意の野生型TTR配列または変異TTR配列に由来する連続していないアミノ酸を含む。
一部の実施形態では、エピトープは、野生型TTR配列または変異TTR配列の30位〜66位の間の複数の連続していないアミノ酸を含む。他の実施形態では、エピトープは、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の70位〜127位の間、80位〜127位の間、90位〜127位の間、100位〜127位の間、110位〜127位の間、または115位〜127位の間の複数の連続していないアミノ酸を含む。他の実施形態では、エピトープは、野生型TTRまたは変異TTRが単量体またはオリゴマーである場合に野生型TTRまたは変異TTRが四量体形態にある場合と比較して異なるコンフォメーションを示す任意の野生型TTRタンパク質または変異TTRタンパク質に由来する複数の連続したアミノ酸を含む。
一部の実施形態では、エピトープは、結晶構造により予測される通りTTR四量体では埋もれているが、解離した単量体では露出していることが予測されるTTRアミノ酸配列の一部を含む。エピトープ予測は、PyMOL、BioBlender、Visual_Molecular_Dynamics、Jmol、Geneious Pro、RasMol、UCSF Chimera、STING、VisProt3DS、Polyview−3Dなどの分子可視化ソフトウェアによって容易にすることができる。一部の実施形態では、エピトープは、TTR四量体およびTTR単量体のどちらにおいても露出しているが、TTRが単量体である場合に四量体形態とは対照的に異なるコンフォメーションをとることが予測されるアミノ酸配列の部分である(例えば、立体構造エピトープ)。
一部の実施形態では、エピトープは、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の約30位〜約66位の間の複数の連続したアミノ酸を含む。他の実施形態では、エピトープは、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の約70位〜127位の間、80位〜127位の間、90位〜127位の間、109位〜121位の間、100位〜127位の間、110位〜127位の間、または115位〜127位の間の複数の連続したアミノ酸を含む。他の実施形態では、エピトープは、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の約115位〜127位の間の複数の連続したアミノ酸を含む。一部の実施形態では、エピトープは、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、12アミノ酸長、14アミノ酸長、16アミノ酸長、18アミノ酸長、20アミノ酸長、または、20アミノ酸を超える長さである。一部の実施形態では、エピトープは、3〜7アミノ酸長、4〜10アミノ酸長、7〜15アミノ酸長、10〜20アミノ酸長、または、20アミノ酸を超える長さである。
一部の実施形態では、エピトープは、アミノ酸配列ADDTWEPFASGKTまたはTSESGELHGLTTE内に含有されるか、またはそれを含む。一部の実施形態では、エピトープは、アミノ酸配列ALLSPYSYSTTAV内に含有されるか、またはそれを含む。
一部の実施形態では、抗体は、TTRが四量体コンフォメーションにある場合に、エピトープに対して弱い結合性を示す。一部の実施形態では、前記弱い結合性は、間接的な、例えばサンドイッチELISAアッセイによって確認される。例示的なサンドイッチELISAアッセイは本明細書に記載されている。
本発明の抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、触媒抗体、および組換え抗体の形態であってよい。
一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体集団を含む抗体組成物を指す。抗体の供給源または抗体が作出される様式に関しては限定されるものではない。モノクローナル抗体は、一般に、単一の抗原部位またはエピトープに結合する。一般には異なる決定因子(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一のエピトープを対象とする。モノクローナル抗体とは、全抗体またはその断片を包含し得る。
他の実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体またはその断片である。「ポリクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原に対して生じた不均一な抗体集団を含む抗体組成物を指す。不均一な抗体集団内の抗体は、前記抗原上の異なるエピトープを認識し得る。いくつかの場合には、不均一な抗体集団内の抗体は、前記抗原上の同じエピトープを認識する。一部の実施形態では、抗原は、TTRアミノ酸配列の一部を含むポリペプチドである。一部の実施形態では、抗原は、単量体TTRおよび/またはオリゴマーTTR上で、四量体TTRと比較してより接近しやすい。抗原への接近しやすさは、本明細書に記載の通り、抗原と抗体の間の複合体の形成によって確認することができる。一部の実施形態では、抗原は、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の30位〜66位の間の複数の連続したアミノ酸を含む。他の実施形態では、抗原は、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の60位〜127位の間の複数の連続したアミノ酸を含む。他の実施形態では、抗原は、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の70位〜127位、80位〜127位、109位〜121位、90位〜127位、100位〜127位、110位〜127位、または115位〜127位の間の複数の連続したアミノ酸を含む。一部の実施形態では、抗原は、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、12アミノ酸長,14アミノ酸長,16アミノ酸長,18アミノ酸長、20アミノ酸長、または、20アミノ酸を超える長さである。一部の実施形態では、抗原は、3〜7アミノ酸長、4〜10アミノ酸長、7〜15アミノ酸長、10〜20アミノ酸長、15〜30アミノ酸長、20〜40アミノ酸長、30〜60アミノ酸長、または、60アミノ酸を超える長さである。
一部の実施形態では、抗原は、アミノ酸配列ADDTWEPFASGKTまたはTSESGELHGLTTEを含む。
本発明の抗体は、機能性部分とコンジュゲートした抗体も包含する。機能性部分は、検出可能なシグナルを生成することができる検出可能な標識であってよい。例示的な検出可能な標識としては、これだけに限定されないが、蛍光化合物、化学発光化合物、生物発光化合物、酵素、放射性同位元素、コロイド金属、常磁性標識が挙げられる。これらの抗体を、例えば、対象における、または対象から得た試料における非ネイティブTTRを検出、イメージング、および/または定量化するための方法およびシステムにおいて使用することができる。他の機能性部分としては、例えば、シグナルペプチド、免疫学的反応性を増強する薬剤、固体支持体への付着を容易にする捕捉試薬、ワクチン担体、生物応答修飾因子、および薬物が挙げられる。シグナルペプチドは短いアミノ酸配列であってよい。そのような配列により、タンパク質を細胞の区画、例えば小胞体、ゴルジ複合体、核、非細胞性膜に標的化することもでき、タンパク質を分泌に標的化することもできる。例示的な免疫学的反応性を増強する薬剤としては、例えば細菌超抗原が挙げられる。例示的な捕捉試薬としては、例えば、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、カプトアビジン(captavidin)、ポリヒスチジンタグが挙げられる。ワクチン担体は、例えば、キーホールリンペットヘモシアニンまたは破傷風トキソイドであってよい。生物応答修飾因子は、例えば、腫瘍壊死因子、インターロイキン2、インターロイキン4、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、およびガンマインターフェロンなどのサイトカインであってよい。薬物部分は、例えば、抗凝集剤であってよい。例示的な抗凝集剤は本明細書に記載されている。
化学的機能性部分を当業界公知の任意の手段によって抗体に付着させることができる。例えば、機能性部分に作動可能に連結した抗体をコードする融合遺伝子を創製することができる。あるいは、種々のよく確立された化学的手順のいずれかによって抗体と部分を化学的に結合させることができる。例えば、部分がタンパク質である場合、連結は架橋剤、例えばSPDP、カルボジイミドグルタルアルデヒドなどを介するものであってよい。部分は、共有結合により連結することもでき、第2の抗体、プロテインA、またはビオチン−アビジン複合体などの二次試薬によってコンジュゲートすることもできる。体当技術分野で周知の手段によって常磁性部分を抗体とコンジュゲートすることができる。例えば、Miltenyiら(1990年)Cytometry 11巻:231〜238頁を参照されたい。
本発明のポリヌクレオチドおよびベクター
本発明は、本発明の抗体またはその断片をコードする種々のポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明の抗体の重鎖ポリペプチドをコードするコード配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明の抗体の軽鎖ポリペプチドをコードするコード配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明の抗体の軽鎖ポリペプチドをコードするコード配列および本発明の抗体の重鎖ポリペプチドをコードするコード配列の両方を含む。
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明の抗体の重鎖領域をコードするコード配列を含む。一実施形態では、コード配列は、配列番号2に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。別の実施形態では、コード配列は、配列番号3に対して少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号_____に対応するプラスミド寄託物に含有される配列に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号____に対応するハイブリドーマクローンによって産生される抗体の重鎖領域をコードする。
一部の実施形態では、コード配列は、配列番号4に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号5に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA配列を含む。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号_____に対応するプラスミド寄託物に含有される配列に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号____に対応するハイブリドーマクローンによって産生される抗体の重鎖領域をコードする。
一部の実施形態では、コード配列は、配列番号6に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号7に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA配列を含む。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号_____に対応するプラスミド寄託物に含有される配列に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号____に対応するハイブリドーマクローンによって産生される抗体の重鎖領域をコードする。
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明の抗体の軽鎖領域をコードするコード配列を含む。一実施形態では、コード配列は、配列番号8に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。別の実施形態では、コード配列は、配列番号9に対して少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号_____に対応するプラスミド寄託物に含有される配列に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号____に対応するハイブリドーマクローンによって産生される抗体の軽鎖領域をコードする。
一部の実施形態では、コード配列は、配列番号10に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号11に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA配列を含む。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号_____に対応するプラスミド寄託物に含有される配列に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号____に対応するハイブリドーマクローンによって産生される抗体の軽鎖領域をコードする。
一部の実施形態では、コード配列は、配列番号12に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13に対して少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列をコードするDNA配列を含む。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号_____に対応するプラスミド寄託物に含有される配列に対して少なくとも80%の配列相同性を有する。一実施形態では、コード配列は、ATCC寄託番号____に対応するハイブリドーマクローンによって産生される抗体の軽鎖領域をコードする。
抗体ヌクレオチド配列は、例えば、相同な非ヒト配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常領域のコード配列で置換することによって修飾することもできる。この様式では、元の抗体の結合特異性を保持するキメラ抗体が調製される。
本発明において具体化されるポリヌクレオチドは、例示されているポリペプチドの機能的等価物およびその断片をコードするものを含むことも理解される。機能的に等価であるポリペプチドは、それによりコードされるポリペプチドの性質を増強する、低下させるまたは著しく影響を及ぼさないものを含む。機能的等価物は、保存的アミノ酸置換を有するポリペプチド、融合体を含めた類似体、および変異体であってよい。
遺伝暗号の縮重に起因して、本発明のポリヌクレオチドおよびベクターの構築に適したL配列およびH配列のヌクレオチド、ならびにヘテロ二量体形成配列にはかなりの変動があり得る。配列バリアントは、修飾されたDNAまたはアミノ酸配列、1つまたは複数の置換、欠失、または付加を有してよく、その正味の効果は、所望の抗原結合活性が保持されることである。例えば、コードされるアミノ酸を変更しない、または保存的変化をもたらす種々の置換をコード領域において行うことができる。これらの置換は、本発明に包含される。保存的アミノ酸置換としては、以下の群内での置換が挙げられる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。保存的置換は、産生させようとするポリペプチドに含有される1つまたは複数のアミノ酸残基を効果的に変化させるが、その置換は、産生させようとする抗体の抗原結合活性には干渉しないことが予測される。コードされるアミノ酸残基を変化させないヌクレオチド置換は、異なる系における遺伝子発現を最適化するために有用である。適切な置換が当業者公知であり、例えば、発現系における好ましいコドン使用を反映するためにこれを行うことができる。
所望であれば、組換えポリヌクレオチドは、遺伝子産物の発現および精製の検出を容易にする異種配列を含んでよい。そのような配列の例は、当業界公知であり、それらとして、ベータガラクトシダーゼ、ベータ−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびそれらの誘導体などのレポータータンパク質をコードするものが挙げられる。精製を容易にする他の異種配列は、Myc、HA(インフルエンザウイルス赤血球凝集素に由来する)、His−6、FLAG、または免疫グロブリンのFc部分、グルタチオンS−転移酵素(GST)、およびマルトース結合性タンパク質(MBP)などのエピトープをコードしてよい。
ポリヌクレオチドを上記の種々の化学的機能性部分とコンジュゲートすることができる。
本発明のポリヌクレオチドは、同じ転写単位内の追加的なコード配列などの追加的な配列、プロモーター、リボソーム結合部位、およびポリアデニル化部位などの制御エレメント、同じまたは異なるプロモーターの制御下にある追加的な転写ユニット、宿主細胞のクローニング、発現、および形質転換を可能にする配列、ならびに本発明の複数の実施形態を提供するために望ましい可能性がある任意のそのような構築物を含んでよい。
本発明において具体化されるポリヌクレオチドは、化学合成、組換えクローニング方法、PCR、またはそれらの任意の組合せを使用して得ることができる。化学的なポリヌクレオチド合成の方法は当技術分野で周知であり、本明細書に詳しく記載する必要はない。当業者は、DNA合成機を使用することまたは商業的サービスに注文することによって所望のポリヌクレオチドを得るために、本明細書において提供される配列データを使用することができる。
所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なベクターに挿入することができ、それを今度は複製および増幅のために適切な宿主細胞に導入することができる。したがって、本発明は、本発明のポリヌクレオチドの1つまたは複数を含む種々のベクターを包含する。本発明の抗体をコードするベクターを少なくとも1つ含む選択可能な発現ベクターのライブラリーも提供される。
ベクターは、任意のプラスミド、ウイルス、ウイルスベクター、または核酸の挿入または組み入れによって操作することができる当業界公知の他のビヒクルであってよい。例えば、「クローニングベクター」は、遺伝子操作のために使用することができるものである。別の例として、「発現ベクター」は、挿入されたポリヌクレオチドを転写または翻訳するために使用することができるものである。一般に、発現ベクターは、発現制御エレメントに作動可能に連結した抗体をコードする核酸を含めた核酸を導入し、抗体をin vitroにおいて(例えば、溶液または固相中で)、細胞において、または対象においてin vivoで発現させるために有用である。
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、またはロタウイルスのゲノム、シミアンウイルス40(SV40)またはウシパピローマウイルスに基づくものであってよい(Coneら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81巻:6349頁(1984年);Eukaryotic Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、Gluzman編、1982年;Sarverら、Mol. Cell. Biol. 1巻:486頁(1981年)。発現のために有用な追加的なウイルスベクターとしては、ノーウォークウイルス、コロナウイルス、パラミクソおよびラブドウイルス、トガウイルス(例えば、シンドビスウイルスおよびセムリキ森林ウイルス)、パルボウイルス、および水疱性口内炎ウイルス(VSV)が挙げられる。
発現ベクターは、in vivoにおける発現およびex vivoにおける発現のために設計することができる。そのような哺乳動物発現ベクターの1つはAAV(米国特許第5,604,090号)である。AAVベクターにより、ヒトおよびマウスにおいて第IX因子の発現が治療的利益のために十分なレベルでもたらされることが以前に示されている(Kayら、Nat. Genet. 24巻:257頁(2000年);Nakaiら、Blood 91巻:4600頁(1998年))。アデノウイルスベクター(米国特許第5,700,470号、5,731,172号および同第5,928,944号)、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクターは分裂細胞ならびに非分裂細胞に感染させるために有用である)および泡沫状ウイルスベクター(米国特許第5,624,820号、同第5,693,508号、同第5,665,577号、同第6,013,516号および同第5,674,703号、ならびにWIPO特許出願公開第WO92/05266号および同第WO92/14829号)、単純ヘルペスウイルスベクター(米国特許第5,501,979号、ならびにパピローマウイルスベクター(例えば、ヒトおよびウシパピローマウイルス)は全て遺伝子療法に使用されている(米国特許第5,719,054号)。
ベクターは、サイトメガロウイルス(CMV)に基づくベクター(米国特許第5,561,063号)も包含する。遺伝子を腸管の細胞に効率的に送達するベクターが開発されてきた(例えば、米国特許第5,821,235号、同第5,786,340号および同第6,110,456号を参照されたい)。
ベクターは、一般には、細胞において繁殖するための複製開始点を含有する。転写および翻訳を容易にするために、ベクター内に存在する本明細書に記載の発現制御エレメントを含めた制御エレメントを含めることができる。
適切な転写または翻訳制御配列としては、これだけに限定されないが、転写および翻訳のための複製開始点、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー結合性領域、転写開始部位、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、および終結部位が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼに結合し、プロモーターの下流(3’方向)に位置するコード領域の転写を開始することができるDNA領域である。プロモーターは構成的なものであっても誘導性であってもよい。一般に、プロモーター配列は、その3’末端が転写開始部位と結合し、上流(5’方向)に進んで、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで転写を開始するために必要な最小数の塩基またはエレメントを含める。プロモーター配列内は、転写開始部位、ならびにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合性ドメインである。真核生物のプロモーターは、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含有してよい。
プロモーターの選択は、ベクターを導入する宿主細胞に大きく左右される。動物細胞については、ウイルスプロモーターおよび非ウイルスプロモーターの両方の種々のロバストなプロモーターが当業界公知である。ウイルスプロモーターの非限定的な例としては、CMV、SV40ウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーター、様々な種類のアデノウイルス(例えばアデノウイルス2)のプロモーターならびにアデノ随伴ウイルスが挙げられる。通常所望の軽鎖または重鎖遺伝子に付随するプロモーターを利用することも、そのような制御配列が宿主細胞系と適合するのであれば可能であり、多くの場合それが望ましい。
他の真核細胞に対する適切なプロモーター配列としては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ、またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどの他の解糖酵素に対するプロモーターが挙げられる。成長条件により制御される転写の追加的な利点を有する他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC(isocytochrome C)、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、および上述のグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用に関与する酵素に対するプロモーター領域である。
ある特定の好ましい実施形態では、本発明のベクターには強力なエンハンサーおよびプロモーター発現カセットを使用する。そのような発現カセットの例としては、ヒトサイトメガロウイルス最初期(HCMV−IE)プロモーター(Boshartら、Cell 41巻:521頁(1985年))、ベータアクチンプロモーター(Gunningら(1987年)Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 84巻:5831頁)、ヒストンH4プロモーター(Guildら(1988年)、J Viral. 62巻:3795頁)、マウスメタロチオネインプロモーター(McIvorら(1987年)、Mol. Cell. Biol. 7巻:838頁)、ラット成長ホルモンプロモーター(Milletら(1985年)、Mol. Cell Biol. 5巻:431頁)、ヒトアデノシンデアミナーゼプロモーター(Hantzapoulosら(1989年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻:3519頁)、HSV tkプロモーター25(Tabinら(1982年)Mol. Cell. Biol. 2巻:426頁)、アルファ−1抗トリプシンエンハンサー(Pengら(1988年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:8146頁)、および免疫グロブリンエンハンサー/プロモーター(Blankensteinら(1988年)Nucleic Acid Res. 16巻:10939頁)、SV40初期もしくは後期プロモーター、アデノウイルス2主要後期プロモーター、またはポリオーマウイルス、ウシパピローマウイルス、または他のレトロウイルスまたはアデノウイルスに由来する他のウイルスプロモーターが挙げられる。免疫グロブリン(Ig)遺伝子のプロモーターおよびエンハンサーエレメントにより、Bリンパ球に対する顕著な特異性が付与されるが(Banerjiら(1983年)Cell 33巻:729頁;Gilliesら(1983年)Cell 33巻:717頁;Masonら(1985年)Cell 41巻:479頁)、B−グロビン遺伝子の転写を制御するエレメントは赤血球系細胞においてのみ機能する(van Assendelftら(1989年)Cell 56巻:969頁)。
細胞特異的プロモーターまたは組織特異的プロモーターを使用することもできる。組織特異的プロモーターの大きな多様性が記載されており、当業者により使用されている。選択的な動物細胞において作動可能なプロモーターの例としては、肝細胞特異的プロモーターおよび心筋特異的プロモーターが挙げられる。レシピエント細胞型の選択に応じて、本発明の発現ベクターの構築に適用可能な他の適切な細胞特異プロモーターまたは組織特異的プロモーターを、当業者は認識していると予想される。
周知の制限およびライゲーション技法を使用して、適切な転写制御配列を種々のDNA供給源から切り取り、本発明に従って発現させるインタクトな選択可能な融合遺伝子と作動可能な関係になるように組み込む。
主題のベクターの構築において、mRNAのポリアデニル化および/または転写終結シグナルをもたらすために、外因性配列に付随する終結配列も、転写されることが望ましい配列の3’末端に挿入する。ターミネーター配列は、1つまたは複数の転写終結配列(例えばポリアデニル化配列など)を含有することが好ましく、転写リードスルーがさらに撹乱されるように追加的なDNA配列を含めることによって延長されていてもよい。本発明の好ましいターミネーター配列(または終結部位)は、それ自体の終結配列または異種終結配列のいずれかの転写終結配列が後ろにある遺伝子を有する。そのような終結配列の例としては、当業界公知であり、広範に入手可能であり、下に例示されている種々のポリアデニル化配列とカップリングした終止コドンが挙げられる。ターミネーターが遺伝子を含む場合、検出可能なマーカーまたは選択マーカーをコードする遺伝子を使用し、それにより、ターミネーター配列の存在および/または不在(したがって対応する転写単位の不活化および/または活性化)を検出および/または選択することができる手段をもたらすことが有利であり得る。
ベクターは、選択マーカーも含み得る。「選択マーカー」は、遺伝子を含有する細胞の選択を可能にする遺伝子である。「正の選択」とは、正の選択に曝露すると選択マーカーを含有する細胞のみが生存するプロセスを指す。薬物耐性は正の選択マーカーの1つの例であり、選択薬物を含有する培養培地において、マーカーを含有する細胞は生存し、マーカーを欠く細胞は死滅する。選択マーカーとしては、例えば、薬物耐性遺伝子(例えば、G418に対する耐性を付与するneo;ハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygr;およびピューロマイシンに対する耐性を付与するpuro)が挙げられる。他の正の選択マーカー遺伝子としては、マーカーを含有する細胞の視覚的な同定またはスクリーニングを可能にする遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子としては、とりわけ、蛍光タンパク質(GFPおよびGFP様発色団、ルシフェラーゼ)の遺伝子、lacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子、およびCD8などの表面マーカーが挙げられる。「負の選択」とは、適切な負の選択剤に曝露すると負の選択マーカーを含有する細胞が死滅するプロセスを指す。例えば、単純ヘルペスウイルス−チミジンキナーゼ(HSV−tk)遺伝子(Wiglerら、Cell 11巻:223頁(1977年))を含有する細胞は、薬物ガンシクロビル(GANC)に対して感受性である。同様に、gpt遺伝子により、細胞が6−チオキサンチンに対して感受性になる。
本発明において具体化されるベクターは、組換えクローニング方法を使用して、かつ/または化学合成によって得ることができる。PCR、制限エンドヌクレアーゼ消化およびライゲーションなどの膨大な数の組換えクローニング技法は当技術分野で周知であり、本明細書に詳しく記載する必要はない。当業者は、本明細書において、または公共もしくは独自のデータベースにおいて提供される配列データを使用して、当技術分野において利用可能な任意の合成手段によって所望のベクターを得ることもできる。
ベクターは、組換えクローニング方法を使用して、かつ/または化学合成によって作製することができる。PCR、制限エンドヌクレアーゼ消化およびライゲーションなどの膨大な数の組換えクローニング技法は当技術分野で周知であり、本明細書に詳しく記載する必要はない。当業者は本明細書において、または公共もしくは独自のデータベースにおいて提供される配列データを使用して、当技術分野において利用可能な任意の合成手段によって所望のベクターを得ることもできる。
宿主細胞
別の態様では、本発明は、本発明の抗体を産生する宿主細胞を提供する。一部の実施形態では、宿主細胞は、本発明の抗体またはその断片をコードする核酸が、in vitro、ex vivoまたはin vivoにおいて組換えDNA技術によって導入された、安定にまたは一過性に形質転換された細胞またはその後代である。一部の実施形態では、形質転換された細胞を繁殖させ、導入された核酸を転写し、かつ/またはコードされるタンパク質を発現させる。形質転換された細胞の非限定的な例として、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、および動物(例えば、ヒトを含めた哺乳動物)細胞などの原核細胞および真核細胞が挙げられる。
「形質転換された」という用語は、本明細書で使用される場合、核酸(例えば、導入遺伝子)を細胞に外因的に組み入れた後の、細胞における遺伝子変化を意味する。したがって、「形質転換された細胞」とは、組換えDNA技法によって核酸分子が導入された細胞またはその後代である。宿主細胞を作製するための細胞形質転換は、本明細書に記載されているまたは当業界公知の任意の技法を使用して行うことができる。
抗体および本発明の抗体をコードする核酸の標的細胞への導入は、例えば浸透圧ショック(例えば、リン酸カルシウム)、微量注射、電気穿孔、細胞融合などの当業界公知の方法によって行うことができる。核酸の導入は、他の技法によって実現することもできる。単に例として、核酸を、コアセルベーション技法によって、または界面重合によって、例えば、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチンマイクロカプセル、またはポリ(メチルメタクリレート(methylmethacrolate))マイクロカプセルを使用することによって調製されたマイクロカプセルに封入することができる。抗体またはそれをコードする核酸の導入は、コロイド薬物送達システムを使用して送達することもできる。コロイド送達系としては、例えば、巨大分子の複合体、ナノカプセル剤、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油エマルション、ミセル、ピペラジンに基づく両親媒性カチオン性脂質(米国特許第5,861,397号に記載されている)、カチオン性脂質系(米国特許第5,459,127号に記載されている)、およびリポソーム、例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リポフェクチンおよびDOTAP(例えば、米国特許第4,844,904号、同第5,000,959号、同第4,863,740号、同第4,975,282号を参照されたい)などの脂質に基づく系が挙げられる。宿主細胞の形質転換に適した他の方法は本明細書に記載されている。
大部分の動物細胞に関して、上記の方法はいずれもベクター送達に適している。好ましい動物細胞は、大きな数量、例えばミリグラムレベルで外因的に導入された遺伝子産物を発現することができる脊椎動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞である。好ましい細胞の非限定的な例は、NIH3T3細胞、COS、HeLa、およびCHO細胞である。
動物細胞は、種々の培地で培養することができる。宿主細胞の培養には、ハムF10(Sigma)、最小必須培地(MEM、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma)などの市販の培地が適している。さらに、動物細胞を、血清を欠くが、ホルモン、増殖因子または特定の細胞型の生存および/または成長に必要な任意の他の因子が補充された限定培地で成長させることができる。細胞生存を支持する限定培地では、生存能力、形態、代謝する能力および潜在的に細胞の分化する能力が維持され、一方、細胞の成長を促進する限定培地では、細胞増殖または増加に必要な全ての化学物質がもたらされる。in vitroにおける哺乳動物細胞の生存および成長を支配する一般的なパラメータは当技術分野においてよく確立されている。異なる細胞培養物系において制御することができる物理化学パラメータは、例えば、pH、pO2、温度、および容量オスモル濃度である。細胞の栄養必要量は、通常、最適な環境をもたらすために開発された標準の培地処方においてもたらされる。栄養分は、いくつかのカテゴリー:アミノ酸およびそれらの誘導体、炭水化物、糖、脂肪酸、複合脂質、核酸誘導体およびビタミンに分けることができる。細胞代謝を維持するための栄養分の他に、大部分の細胞は、以下の群の少なくとも1つからの1種または複数種のホルモンも必要とする:ステロイド、プロスタグランジン、増殖因子、下垂体ホルモン、および無血清培地で増殖させるためのペプチドホルモン(Sato、G. H.ら、「Growth of Cells in Hormonally Defined Media」、Cold Spring Harbor Press、N.Y.、1982年)。ホルモンに加えて、細胞は、in vitroにおいて生存および成長するために、トランスフェリン(血漿鉄輸送タンパク質)、セルロプラスミン(銅輸送タンパク質)、および高密度リポタンパク質(脂質担体)などの輸送タンパク質を必要とする場合がある。最適なホルモンまたは輸送タンパク質のセットは、各細胞型に対して変動する。これらのホルモンまたは輸送タンパク質の大部分は外因的に添加され、または稀なケースではあるが特定の因子を必要としない変異細胞株が見出されている。当業者には過度な実験を伴わずに細胞培養物を維持するために必要な他の因子を認識していると予想される。
植物細胞に関しては、種々のベクター送達技法が当技術分野において利用可能である。宿主細胞は、植物全体、単離された細胞またはプロトプラストの形態であってよい。ベクターを植物細胞に導入するための例示的な手順としては、アグロバクテリウムに媒介される植物の形質転換、プロトプラスト形質転換、花粉への遺伝子移入、生殖器官への注射および未成熟の胚への注射が挙げられる。当業者には明らかである通り、これらの方法のそれぞれに別個の利点および不都合がある。したがって、ベクターを特定の植物種に導入する1つの特定の方法が必ずしも別の植物種に対して最も有効であるとは限らない。
Agrobacterium tumefaciens媒介性移入は、ベクターを植物組織全体に導入することができ、それによりプロトプラストからインタクトな植物を再生する必要性が回避されるので、ベクターを植物細胞に導入するための広範に適用可能な系である。ベクターを植物細胞に導入するためのアグロバクテリウム媒介性発現ベクターの使用は当技術分野において周知である。この技法では、それらのDNAの一部(T−DNA)を宿主細胞に移入し、そこでT−DNAが核DNAに組み込まれることによって植物のコロニーを形成するアグロバクテリウムの一般的な特徴を使用する。T−DNAは、25塩基対長の境界配列によって定義され、これらの境界配列の間の任意のDNAを同様に植物細胞に移入する。T−DNA境界配列の間の組換え植物ウイルス核酸の挿入により、組換え植物ウイルス核酸が植物細胞に移入され、そこで組換え植物ウイルス核酸が複製され、次いで植物体全体に拡散される。
全ての植物がアグロバクテリウムの天然の宿主とは限らないので、プロトプラストの形質転換などの代替方法を使用して、主題のベクターを植物宿主細胞に導入することができる。ある特定の単子葉植物に関しては、植物プロトプラストの形質転換は、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール処理、電気穿孔、およびこれらの処理の組合せに基づく方法を使用して実現することができる。
プロトプラスト形質転換に加えて、粒子照射が、本発明ベクターを植物宿主細胞に送達するための代替的な都合のよい技法である。詳細には、植物細胞に、複数の主題のベクターでコーティングした微小粒子を照射する。植物および動物の両方において安定な形質転換体を作製するために、DNAでコーティングした微粒子銃の照射が首尾よく使用されている(例えば、Sanfordら(1993年)Methods in Enzymology、217巻:483〜509頁を参照されたい)。ベクターを植物細胞に導入するために適した微小粒子は、一般には金属、好ましくはタングステンまたは金でできている。これらの微小粒子は、例えばBio−Radから入手可能である(例えば、Bio−RadのPDS−1000/He)。He圧、コーティングされた粒子の数量、マクロキャリアとストッピングスクリーンの間の距離およびストッピングスクリーンから標的までの飛行距離などのパラメータを変動させることによって任意の植物に対して粒子照射プロトコールを最適化することができることを当業者は認識していると予想される。
Zhouら、Methods in Enzymology、101巻:433頁(1983年);D. Hess、Intern Rev. Cytol.、107巻:367頁(1987年);Luoら、Plant Mol. Biol. Reporter、6巻:165頁(1988年)に記載されている通り、花粉への直接DNA移入によってベクターを植物に導入することもできる。あるいは、Penaら、Nature、325巻:274頁(1987年)に記載されている通り、ベクターを植物の生殖器官に注射することができる。
核酸を植物細胞に導入するための他の技法としては、以下が挙げられる。(a)手による接種。手による接種は、セライトまたはカーボランダムを添加した(通常約1%)中性pH、低容量モル濃度のリン酸緩衝液を使用して実施する。調製物を1〜4滴、葉の上面に置き、穏やかにすりつける。(b)苗床への機械による接種。苗床への接種は、葉を切り取る間にトラクター駆動刈り取り機にベクター溶液を噴霧すること(ガス推進式)によって実施する。あるいは、苗床を刈り、切り取られた葉にベクター溶液をすぐに噴霧する。(c)単一の葉への高圧噴霧。葉に、緩衝したベクター溶液中およそ1%のカーボランダムを含有する狭い定方向の噴霧剤(50psi、葉から6〜12インチ)を用いて噴霧することによって単一の植物への接種も実施することができる。(d)真空浸潤(vacuum infiltration)。感染を容易にするために、宿主生物体を実質的に真空の圧力環境に供することによって接種を実現することができる。
主題のベクターをクローニングし、発現させるために適した他の宿主細胞は、原核生物および真菌または酵母細胞などの真核微生物である。この目的のために適した原核生物としては、グラム陰性生物体およびグラム陽性生物体を含めた細菌が挙げられる。このクラスの微生物の代表的なメンバーは、Enterobacteriaceae(例えば、E.coli)、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella(例えば、Salmonella typhimurium)、Serratia(例えば、Sefratia marcescans)、Shigella、Neisseria(例えば、Neisseria meningitidis)ならびにBacilli(例えば、Bacilli subtilisおよびBacilli licheniformis)である。宿主細胞は、発現されたAbusのタンパク質分解断片を最小量で分泌することが好ましい。一般に使用される真菌(酵母を含む)宿主細胞は、S.cerevisiae、Kluyveromyces lactis(K.lactis)、C.albicansおよびC.glabrataを含めたCandidaの種、C.maltosa、C.utilis、C.stellatoidea、C.parapsilosis、C.tropicalus、Neurospora crassas、Aspergillus nidulans、Schizosaccharomyces pombe(S.pombe)、Pichia pastoris、およびYarowia lipolyticaである。
細胞は、ex vivoでは培養物、組織または器官中に存在する可能性があり、またはin vivoでは対象に存在する可能性がある。後代細胞は、複製間に生じる変異が存在する場合があるので、親の細胞と同一である必要はない。
一部の実施形態では、宿主細胞は、ハイブリドーマ細胞、例えば、本発明の抗体を産生するBリンパ球と骨髄腫細胞を融合することによって作製されるハイブリッド細胞である。そのような本発明の抗体を産生するBリンパ球は、例えば、試験動物を本明細書に記載の抗原で免疫し、前記免疫された試験動物の脾臓からBリンパ球を回収することによって生成することができる。ハイブリドーマを作製するためのBリンパ球と骨髄腫細胞の融合は、当業界公知であり、例えば、Kohlerら、Nature 256巻:495頁(1975年)、Making and Using Antibodies: A Practical Handbook(第1版、2006年)に記載されている。所望の結合特性についてのハイブリドーマの選択は当業界公知であり、例えば、Kohlerら、Nature 256巻:495頁(1975年)、Making and Using Antibodies: A Practical Handbook(第1版、2006年)に記載されている。膨大な数の、モノクローナル抗体のハイブリドーマ細胞による産生アレイは、公共または私設貯蔵所から得ることができる。最も大きな受託機関はAmerican Type Culture Collectionであり、よく特徴付けられたハイブリドーマ細胞株の多様な収集物を提供している。一部の実施形態では、宿主細胞は、ATCC寄託番号_____、______、または______に対応するハイブリドーマ細胞である。
本発明の抗体が適切な宿主細胞に導入されると、当業界公知の任意の核酸またはタンパク質アッセイを使用してその発現を決定することができる。抗体の軽鎖または重鎖の転写されたmRNAの存在は、例えば、ポリヌクレオチドの任意の領域と相補的なプローブを使用した、従来のハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンブロット分析)、増幅手順(例えば、RT−PCR)、SAGE(米国特許第5,695,937号、これによって参照により組み込まれる)、およびアレイに基づく技術(例えば、これによって参照により組み込まれる米国特許第5,405,783号、同第5,412,087号および同第5,445,934号を参照されたい)によって検出および/または定量化することができる。
ベクターの発現は、抗体のタンパク質レベルを調査することによって決定することもできる。タンパク質分析のために当技術分野における様々な技法が利用可能である。それらとして、これだけに限定されないが、本明細書に記載されている結合アッセイ、およびSDS−PAGE分析が挙げられる。
抗体を作製する方法
本発明の抗体は、当業者に公知の任意の方法を使用して(例えば、Making and Using Antibodies: A Practical Handbook(第1版、2006年)を参照されたい)、または本明細書に記載の通り作製することができる。
一部の実施形態では、試験動物にTTRアミノ酸配列の一部を含む抗原ポリペプチドを接種することによって抗体を生成する。一部の実施形態では、抗原は、四量体TTRと比較して単量体TTRおよび/またはオリゴマーTTR上でより接近しやすい。抗原への接近しやすさは、抗原と抗体の間の複合体の形成によって確認することができる。一部の実施形態では、複合体の形成を、結合アッセイ、例えばイムノアッセイによって検出する。一部の実施形態では、抗原は、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の1位〜100位の間の複数の連続したアミノ酸を含む。一部の実施形態では、抗原は、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の5位〜90位の間、10位〜80位の間、20位〜70位の間、または30位〜66位の間の複数の連続したアミノ酸を含む。他の実施形態では、抗原は、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の60位〜127位の間の複数の連続したアミノ酸を含む。他の実施形態では、抗原は、任意の野生型TTR配列または変異TTR配列の70位〜127位の間、80位〜127位の間、90位〜127位の間、109位〜121位の間、100位〜127位の間、110位〜127位の間、または115位〜127位の間の複数の連続したアミノ酸を含む。一部の実施形態では、抗原は、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、12アミノ酸長,14アミノ酸長,16アミノ酸長,18アミノ酸長、20アミノ酸長、または、20アミノ酸を超える長さである。一部の実施形態では、抗原は、3〜7アミノ酸長、4〜10アミノ酸長、7〜15アミノ酸長、10〜20アミノ酸長、15〜30アミノ酸長、20〜40アミノ酸長、30〜60アミノ酸長、または、60アミノ酸を超える長さである。一部の実施形態では、標準の固相化学を使用して抗原を合成する。いくつかの場合には、抗原配列をTTRの結晶構造に基づいて選択する。単に例として、TTR四量体では埋もれているが、解離した単量体では露出していることが予測されるアミノ酸配列を含むTTRポリペプチド断片を抗原として選択することができる。エピトープ予測ツールは本明細書に記載されている。
一部の実施形態では、抗原は、設計ツールを活用して設計されたポリペプチドであってよい。そのようなツールとしては、これだけに限定されないが、そのProtScaleページに公共のツールのセットを集約したExpasy、ユーザーが、抗体を生成するために使用された以前の免疫原の関連エピトープマッピングデータベースに基づいて個々のペプチド配列をスコア化することを可能にするAntigen Profilerツールが挙げられる。一部の実施形態では、ある特定のアミノ酸配列、例えば、単なる例として、4アミノ酸長を超える単一のアミノ酸の反復(例えば、RRRR)、セリン(S)、トレオニン(T)、アラニン(A)、およびバリン(V)ダブレット、プロリン(P)で始まる配列もしくはプロリン(P)で終わる配列、または、非限定的な例としてVALIなどの非常に疎水性のペプチドなどが回避されるように抗原を設計することができる。
一部の実施形態では、小さな抗原(例えば、<10ダルトン)をより大きな免疫原性担体タンパク質とコンジュゲートまたは架橋結合して免疫原性を増大させる。担体タンパク質の例としては、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびウシ血清アルブミンが挙げられる。一部の実施形態では、小さなペプチド抗原は、リポソームを担体として使用して送達する。
試験動物は、抗原に対する免疫応答を生じることができる任意の動物であってよい。抗体産生のために、ニワトリ、ヤギ、モルモット、ハムスター、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、およびヒツジを含めた動物種が頻繁に使用される。当業者には、動物種の選択は、これだけに限定されないが、必要な抗体の量、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれが望ましいか、抗原のドナー種と抗体産生者の種の間の系統学的関係(例えば、系統学的関係が遠いほど、力価の高い抗体応答の潜在性が高くなる)および作出される抗体の所望の特性(例えば、クラス、サブクラス(アイソタイプ)、力価)を含めたいくつもの考察に基づいてよいことが理解されよう。
モノクローナル抗体は、例えば、Kohlerら、Nature 256巻:495号(1975年)、Making and Using Antibodies: A Practical Handbook(第1版、2006年)に記載のハイブリドーマ法、例えば、これによって参照により組み込まれる米国特許第4816567号に記載の組換えDNA法、およびタンパク質合成などの従来の技法に従って生成することができる。一部の実施形態では、抗体をコードする核酸を宿主細胞または翻訳抽出物に導入し、宿主細胞または抽出物を、核酸が翻訳産物として発現される条件下でインキュベートし、抗体を単離する。
ポリクローナル抗体は、従来の技法に従って生成することができる。一部の実施形態では、ポリクローナル抗体は組換えポリクローナル抗体である。組換えポリクローナル抗体およびそれを作出する方法は、その全てがこれによって参照により組み込まれる、PCT出願第WO2009065414号、同第WO2008145133号、同第WO2006007853号、同第WO2004061104号、欧州特許番号第EP2152872号、同第EP1583830号、ならびに米国特許第7910332号およびUS7749697、に記載されている。
本発明の抗体の使用
本発明の抗体により、非ネイティブTTRを検出および測定するための有効な手段がもたらされる。そのような検出および測定は、例えば、診断目的および/または治療目的などの広範囲の適用に使用することができる。例えば、検出方法は、疾患を発生させる可能性が増大している対象を同定するため、疾患を診断するため、複数の疾患に共有される1つまたは複数の症状を有する対象における疾患診断の正確度を改善するために、前記疾患に対する早期処置のために対象を同定するために、疾患の進行をモニターするために、治療剤の薬力学的性質を評価するために、前記疾患を標的とする療法の効果を決定するために、薬物スクリーニング目的のために、疾患に対する治療レジメンの選択を補助するために、対象における疾患の予後判定を評価するために、または治療剤として、使用することができる。
一実施形態では、本発明は、アミロイド疾患の症状が発生していない対象、例えば、無症候性である対象において前記アミロイド疾患の症状を発生させる可能性の増大を検出するための方法を提供する。関連する実施形態では、本発明は、複数の疾患に関連する疾患の症状が発生している対象における疾患を診断するための方法を提供する。単に例として、SSAの組織学的特質および症候性特質は他の型の全身性アミロイドーシスに共有されるので、SSAの正確な診断は難しい可能性がある。単に他の例として、FACの組織学的特質および症候性特質は他の型の心筋症に共有され、それによりFACの診断が難しいものになっている。したがって、本発明の方法および抗体により、例えば、他の疾患と共通する症状を特徴とするTTR関連アミロイドーシスと前記他の疾患とを区別することができる有用なバイオマーカーがもたらされ得る。これらのおよび他の方法では、方法は、本発明の抗体を使用して前記対象における非ネイティブTTRのレベルを測定することを含む。一部の実施形態では、前記対象は、前記レベルが対照の対象において測定された非ネイティブTTRのレベルと比較して上昇している場合に、前記アミロイド疾患の症状を発生させるかまたはアミロイド疾患を有する可能性が増大していると指定される。他の実施形態では、ある特定の変異(例えば、V30M変異)を保有する前記対象は、前記非ネイティブTTRレベルが、同じ対象において以前の時点で測定された非ネイティブTTRのレベルと比較して20%超変化(上昇または低下)した場合に、前記アミロイド疾患の症状を発生させるかまたはアミロイド疾患を有する可能性が増大していると指定される。
検出方法:
一部の実施形態では、本発明の方法は、前記対象における非ネイティブTTRのレベルを検出することを含む。一部の実施形態では、疾患を早期検出するための方法は、前記対象における非ネイティブTTRのレベルを測定または定量化することを含む。一部の実施形態では、本発明の抗体を活用して、前記対象における非ネイティブTTRのレベルを検出または測定する。他の実施形態では、四量体TTRと比較して非ネイティブTTRに選択的に結合する任意の分子を活用して、前記対象における非ネイティブTTRのレベルを検出または測定する。例示的な分子としては、例えば、アプタマーが挙げられる。
一部の実施形態では、前記対象における非ネイティブTTRのレベルを検出する。一部の実施形態では、対象における非ネイティブTTRのレベルを検出することは、前記対象から得た生物試料における非ネイティブTTRのレベルを検出することを含む。一部の実施形態では、生物試料は、液体試料である。一部の実施形態では、液体試料は、全血、血漿、血清、腹水、脳脊髄液、汗、尿、涙、唾液、頬部試料、腔または器官のすすぎ液である。他の実施形態では、生物試料は、固体の生物試料、例えば糞便または組織生検材料である。
一部の実施形態では、抗体を、例えば、ELISA、免疫沈降、共沈、ウエスタンブロット法、表面プラズモン共鳴、マルチプレックスイムノアッセイ、2ハイブリッドアッセイ、免疫組織化学的アッセイなどの結合アッセイにおいて使用する。一部の実施形態では、結合アッセイはELISAアッセイである。そのようなアッセイは、当業界公知であり、The Immunoassay Handbook、第4版(2005年)に記載されている。検出には、例えば、蛍光化合物、化学発光化合物、生物発光化合物、酵素、放射性同位元素、コロイド金属、常磁性標識などの検出可能な標識の使用を利用することができる。本明細書に記載の検出方法により、試料中の稀な非ネイティブTTRの感度の高い定量的検出が可能になる。単に例として、本明細書に記載の検出方法により、試料中の0.01ng〜100μg/mlのTTR、試料中の10ng〜500μg/mlのTTR、および/または試料中の100ng〜1000mg/mlのTTRの定量的検出が可能になる。そのような感度の高い検出方法は対象におけるTTR関連アミロイドーシスの早期診断の助けになり得る。
特定の実施形態では、ELISAアッセイは、間接的な(例えば、サンドイッチ)アッセイである。図2には、本発明の抗体を利用する例示的なサンドイッチ型ELISAアッセイの概略図(200)が提示されている。一部の実施形態では、当該方法は、対象から得た液体試料210をTTRに結合することができる捕捉用抗体220が固定化されたウェルに添加する第1のステップ(201)を含む。一部の実施形態では、液体試料210は、四量体TTR(230)と非ネイティブTTR(例えば、単量体TTR(240)とオリゴマーTTR(250))の不均一な混合物を含む。一部の実施形態では、捕捉用抗体220は、非ネイティブTTRおよび四量体TTRに結合することができる。他の実施形態では、捕捉用抗体220は非ネイティブTTRに対して選択的な結合を示す。前記液体試料210中の非ネイティブTTRおよび四量体TTRと捕捉用抗体220の結合複合体を形成させ、それにより、前記非ネイティブTTRおよび/または四量体TTRを前記ウェルに固定化する。第2のステップ(255)では、検出用抗体(260)をウェルに添加する。一部の実施形態では、検出用抗体は、四量体TTRと比較して非ネイティブTTRに選択的に結合することができる。他の実施形態では、検出用抗体は、非ネイティブTTRおよび/または四量体TTRへの結合を示す。一部の実施形態では、当該方法は、非ネイティブTTRおよび検出用抗体260を含む複合体の形成が可能になるのに十分な期間にわたって混合物をインキュベートすることをさらに含む。一部の実施形態では、当該方法は、一連の洗浄ステップにおいて複合体を形成していない検出用抗体165を前記ウェルから除去することをさらに含む。第3のステップ(270)では、ウェル中に残っている、複合体を形成した検出用抗体260のレベルを当業界公知の任意の手段によって検出および/または測定する。一部の実施形態では、ウェル中に残っている、複合体を形成した検出用抗体260のレベルは液体試料中に存在する非ネイティブTTRの量に比例する。
表2は、本発明で使用される種々の捕捉用抗体および検出用抗体の組合せを要約する。
一部の実施形態では、結合アッセイを使用して、固体生物試料、例えば組織生検材料における非ネイティブTTRのレベルを検出する。一部の実施形態では、固体生物試料を結合アッセイ、例えば本明細書に記載のサンドイッチELISAアッセイの前にホモジナイズする。一部の実施形態では、これだけに限定されないが、異好性相互作用を含めた非特異的な結合または干渉を最小限にするために、ELISA実験の間に添加剤をブロッキング緩衝液ならびに生物試料に添加する。そのような添加剤としては、担体タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン、カゼイン)、界面活性剤(例えば、Tween−20)、プールされた正常血漿、ポリプロピレングリコール、プロテインA/G、非特異的マウス抗体、非特異的ウサギ抗体、ならびにそのような目的に役立つブロッキング試薬の商業的供給源が挙げられる。他の実施形態では、固体生物試料をホモジナイズしない。一部の実施形態では、結合アッセイは免疫組織化学的アッセイである。免疫組織化学的アッセイは、本明細書に記載されているまたは当業界公知の任意の手段によって実施することができる。
一般に、免疫組織化学的アッセイは、組織生検試料を採取すること、前記組織生検試料を保護して細胞タンパク質および組織構造の分解を予防することを含む。前記組織生検試料の保護には、例えば灌流またはすすぎによって血液を除去することが伴い得る。組織生検試料の保護には、前記試料を、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、1種または複数種のアルコール、例えばエタノール、メタノールなど、アセトン、酢酸、四酸化オスミウム、二クロム酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム(potassium permangamate)、ピクリン酸溶液、またはHepes−グルタミン酸緩衝液媒介性有機溶媒保護効果固定液などの防腐剤と接触させることが伴い得る。組織試料は、組織切片を作製すること、例えば、厚さが実質的に均一な(例えば、1〜10マイクロメートル、7〜20マイクロメートル、10〜50マイクロメートル、30〜100マイクロメートル、50〜200マイクロメートル、100〜500マイクロメートル、または500マイクロメートル超)組織薄片にすることによってさらに調製することができる。一部の実施形態では、組織切片を緩衝溶液、例えばリン酸緩衝溶液を含む洗浄緩衝液で洗浄し、その後、非特異的な抗体結合を遮断する遮断剤と一緒にインキュベートする。一部の実施形態では、免疫組織化学的アッセイは、組織切片を本発明の抗体と接触させて、前記抗体とTTR非ネイティブタンパク質コンフォメーションの間の結合複合体の形成に影響を及ぼすことを含む。非特異的に結合した抗体を1つまたは複数の洗浄ステップにおいて除去することができ、結合複合体を当業界公知の任意の手段によって検出することができる。
一部の実施形態では、対象における非ネイティブTTRを、例えばin vivoイメージングによって直接検出する。単に例として、本発明の抗体を検出可能な標識とコンジュゲートすることができる。標識した抗体を対象の体内に、例えば前記対象に注射することによって導入し、対象においてin vivoで検出することができる。対象について、検出可能な標識が検出されるように構成された装置を使用してイメージングすることができる。単に例として、抗体を、MRI造影剤とコンジュゲートすることができる。コンジュゲートした抗体を、MRIによるイメージングのために対象に導入することができる。単に他の例として、抗体は、PETイメージングに適した放射性同位元素とコンジュゲートすることができる。次いで、コンジュゲートした抗体を、PETスキャンによるイメージングのために対象に導入することができる。さらに他の例として、抗体を、フルオロフォア、例えば近赤外フルオロフォアで標識することができる。次いで、コンジュゲートした抗体を、蛍光イメージング、例えば近赤外蛍光イメージングのために対象に導入することができる。
一部の実施形態では、検出は、TTRを含有しないことが分かっている試料(例えば、反応の成分のみを含有するウェル)によって決定されたバックグラウンドレベルを上回る、検出された非ネイティブTTRのレベルに基づく。一部の実施形態では、検出可能なシグナルを定量化することによって非ネイティブTTRのレベルを定量化することができる。一部の実施形態では、前記検出可能なシグナルを、既知量の非ネイティブTTRを含有する試料によって生成するシグナルと比較することによって非ネイティブTTRのレベルを定量化することができる。一部の実施形態では、レシオメトリック解析により、例えば、試料を本発明の抗体と接触させることによって生成するシグナルと、前記試料を四量体TTRのみに結合する抗体または同様の親和性または結合活性を有する非ネイティブTTRおよび四量体TTRに結合する抗体と接触させることによって生成するシグナルとを比較することにより、非ネイティブTTRのレベルを、総TTRレベルに対して正規化することができる。
一部の実施形態では、アミロイド疾患の症状を発生させる可能性が増大していると前記対象を指定すること、またはアミロイド疾患を有すると前記対象を指定することは、前記対象における非ネイティブTTRのレベルと対照の対象における非ネイティブTTRのレベルとを比較することを含む。前記対象における非ネイティブTTRのレベルが対照の対象における非ネイティブTTRのレベルを超える場合、アミロイド疾患の症状を発生させる可能性が増大していると前記対象を指定すること、またはアミロイド疾患を有すると指定することができる。対照の対象は、アミロイド疾患を有さないことが分かっている個体、またはTTR変異を有さないことが分かっている個体であってよい。対照の対象は、年齢を合わせた対照の対象、例えば、前記対象と0〜10歳差の範囲内の対照の対象であってもよく、または対照の対象は、異なる年齢、例えば、前記対象よりも若齢または高齢であってもよい。対照の対象は、前記対象と異なる個体でなくてもよく、以前の時点、例えば、前記疾患または前記疾患の症状を発生させる危険因子とみなされない年齢層に入る同じ対象であってよい。危険因子とみなされ得る年齢層は本明細書に記載されている。一部の実施形態では、前記対象における非ネイティブTTRのレベルを予測される対照の対象のレベルと比較することができる。一部の実施形態では、前記予測されるレベルは、検出不可能なレベルである。したがって、対象において非ネイティブTTRが検出された場合、疾患を有するまたは疾患を発生する可能性が増大していると前記対象を指定することができる。アミロイド形成のプロセスの間、本発明において検出される非ネイティブTTRレベルのレベルは、これだけに限定されないが、循環内の非ネイティブTTRのシンクまたはレザバーのいずれかとして作用し得るアミロイド沈着の形成を含めた多数の因子に影響される。したがって、アミロイド疾患キャリアにおける非ネイティブTTRのレベルは経時的に変化する。一部の実施形態では、前記対照の対象が以前の年齢の同じ個体である場合、変更、例えば、非ネイティブTTRのレベルの10%、20%、30%、40%、50%、100%、200%、500%またはそれより多くを超える上昇も、アミロイド疾患の症状を発生させる可能性の増大のシグナル、または前記対象がアミロイド疾患を有するとの指定になり得る。一部の実施形態では、非ネイティブTTRのレベル(例えば、一過性の低下または上昇)における変動の検出により、アミロイド疾患の症状を発生させる可能性の増大が示される。一部の実施形態では、検出された、対象における非ネイティブTTRのレベルの変動を使用して、アミロイド疾患を有すると前記対象を指定する。
アミロイド疾患は本明細書に記載されている。疾患は、アミロイド形成的TTRに関連するアミロイド疾患であってよい。例示的なアミロイド形成的TTRに関連する疾患は本明細書に記載されている。
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象またはその介護者に前記指定を通知することをさらに含む。通知する方法は本明細書に記載されている。
対象
「対象」という用語は、1つまたは複数の形態のTTRを保有する任意の生物学的実体を包含する。一部の実施形態では、対象は動物である。一部の実施形態では、動物は、哺乳動物、両生類、鳥類、または爬虫類などの脊椎動物である。例示的な哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウシ、ヒト、またはサルが挙げられる。例示的な両生類としては、例えば、カエル、ヒキガエル、サンショウウオ、およびイモリが挙げられる。例示的な爬虫類としては、例えば、ヘビ、トカゲ、カメが挙げられる。例示的な鳥類としては、例えば、ニワトリ、水鳥、フィンチ、鳴鳥が挙げられる。一部の実施形態では、対象は、無脊椎動物、例えば、C.elegansまたはDrosophila melongasterなどの昆虫である。
一部の実施形態では、対象は、下記のいくつもの危険因子、症状、アッセイ、および検査の任意の組合せに基づいて、疾患を有する疑いがあるまたは疾患症状を発生する可能性が増大している疑いがある。関連する方法では、対象はアミロイド疾患と診断され、抗凝集療法を受けている。
当業者には、下記の危険因子の有無、症状、アッセイ、および検査を、疾患の進行をモニターするためまたは薬剤の治療効果をモニターするための補助として使用することもできることが理解されよう。
対象は、疾患に関連する危険因子の任意の組合せに基づいて疾患または疾患の症状を有する危険性が高いとみなされ、本発明の方法のいずれかを使用する診断検査を受けるように選択される可能性がある。本明細書に記載の危険因子の任意の組合せが存在することを使用して、本明細書に記載の抗体のいずれかの使用に基づいた対象の診断を補助することができる。対象に当てはまり得る危険因子の数がより多いことが、疾患を発生させる対象の危険性がより高いことと相関する可能性があるが、本明細書に記載の危険因子のうちの1つでさえも、それに基づいて対象が疾患を発生させる危険性が高いとみなすことができることが当業者には理解されよう。本明細書に記載の危険因子のいずれも示していない対象も診断検査を受けるように選択することができる。
一部の実施形態では、対象は、前記対象においてTTR変異が検出されると、疾患を発生させる危険性が高いとみなされる。例えばFAPまたはFACを発生させる危険性の増大に関連するTTR変異は本明細書に記載されている。当業者には、TTRの新規の(すなわち新しい)変異が疾患に関連していると発見され得ること、対象においてこれらの新しい変異が検出されることにより、前記対象について疾患または疾患の症状(複数可)を発生させる危険性が高いことが示され得ることが理解されよう。
TTR変異の検出は、当業界公知であり、これだけに限定されないが、遺伝子型決定方法、次世代配列決定方法を含めたエキソームまたはゲノム配列決定方法、またはハプロタイプ解析を含み得る任意の手段を使用して実施することができる。
一部の実施形態では、変異TTRまたはバリアントTTRを、TTRタンパク質の分子量と野生型TTRの分子量を比較した差異を検出することによって検出する。TTRの分子量の差異は、これだけに限定されないが、質量分析、エレクトロスプレーイオン化質量分析、サイズに基づくクロマトグラフィー、およびサイズに基づく電気泳動を含めた、本明細書に記載されているまたは当業界公知の任意の方法によって検出することができる。分子量の差異は、約1ダルトン、2ダルトン、3ダルトン、4ダルトン、5ダルトン、6ダルトン、7ダルトン、8ダルトン、9ダルトン、10ダルトン、12ダルトン、14ダルトン、16ダルトン、18ダルトン、20ダルトン、25ダルトン、30ダルトン、30ダルトン、35ダルトン、40ダルトン、45ダルトン、50ダルトン、55ダルトン、60ダルトン、65ダルトン、70ダルトン、75ダルトン、80ダルトン、85ダルトン、90ダルトン、95ダルトン、100ダルトン、125ダルトン、150ダルトン、175ダルトン、200ダルトン、250ダルトン、300ダルトン、350ダルトン、400ダルトン、450ダルトン、500ダルトン、600ダルトン、700ダルトン、800ダルトン、900ダルトン、1000ダルトン、または1000ダルトン超の差異であり得る。分子量の差異は、1〜10ダルトン、2〜20ダルトン、5〜30ダルトン、10〜50ダルトン、20〜100ダルトン、50〜200ダルトン、100〜500ダルトン(0.5kDa)、200〜1000ダルトン(1kDA)、0.5〜5kDa、または5kDa超の差異であり得る。一部の実施形態では、分子量の差異は、1ダルトン、2ダルトン、3ダルトン、4ダルトン、5ダルトン、6ダルトン、7ダルトン、8ダルトン、9ダルトン、10ダルトン、12ダルトン、14ダルトン、16ダルトン、18ダルトン、20ダルトン、または、20ダルトン超と同等であるまたはそれを超える。好ましい実施形態では、分子量の差異は、10ダルトンと同等であるまたはそれを超える。特定の実施形態では、分子量の差異は、野生型TTRと比較して26ダルトンの増加である。
他の実施形態では、TTR変異を、野生型TTRと比較した等電点の変化によって検出する。そのような等電点の変化は、例えば等電点電気泳動などの本明細書に記載されているまたは当業界公知の任意の方法によって検出することができる。一部の実施形態では、対象から得た生物試料中のタンパク質を電気泳動によるサイズに基づく分離に供し、等電点電気泳動によって、例えば尿素勾配を使用した等電点電気泳動によって等電点に応じてさらに分離する。
一部の実施形態では、TTR変異またはバリアントを、前記対象から得た生物試料を分析することによって検出する。生物試料は、体液試料、例えば、全血、血漿、血清、腹水、脳脊髄液、汗、尿、涙、唾液、頬部試料であってよい。生物試料は固体生物試料、例えば糞便または組織生検材料であってもよい。
一部の実施形態では、対象は、地理/人種因子に基づいて、疾患を発生させる危険性が高いとみなされる。単に例として、ポルトガル、スウェーデン、および日本ではTTRバリアントの分布率が高い。したがって、対象がポルトガル人、スウェーデン人、または日本人である場合、前記対象は、疾患を発生させる危険性が高いとみなされる可能性がある。他の例として、V122I TTRバリアントの分布率はアフリカ人およびアフリカ系米国人において、白人と比較して高い。V122I TTRバリアントは、一般に、FACに関連し、神経障害の症状がわずかであるか全くない。したがって、対象がアフリカ人血統である場合、前記対象は、疾患、例えばFACを発生させる危険性が高いとみなされる可能性がある。単に他の例として、L111M TTR変異は、デンマーク人血縁において排他的な心合併症と関連することが報告されている。したがって、対象がデンマーク人血統である場合、前記対象は、疾患、例えば心疾患を発生させる危険性が高いとみなされる可能性がある。
一部の実施形態では、対象が疾患の家族歴を有する場合、その対象は、疾患または疾患の症状を発生させる危険性が高いとみなされる。一部の実施形態では、疾患の家族歴には、疾患を有すると診断されたまたはその疑いがある対象の、あらゆる親類が含まれる。一部の実施形態では、疾患の家族歴には、疾患を有すると診断されたまたはその疑いがある肉親構成員が含まれる。一部の実施形態では、疾患を有すると診断されたまたはその疑いがある家族構成員は、親、祖父母、曾祖父母、またはさらに前の世代の家族構成員である。一部の実施形態では、家族構成員は同胞である。特定の実施形態では、同胞は一卵性双生児である。一部の実施形態では、家族構成員は息子もしくは娘、または孫もしくはさらに後の世代の家族構成員である。一部の実施形態では、家族構成員は直近の家族以外であり、例えばいとこ、またいとこ、みいとこ、おば、おじ、いとこおばまたはまたいとこおば(second or third aunt)、いとこおじまたはまたいとこおじ(second or third uncle)、姪、甥、いとこ姪またはまたいとこ姪(second or third niece)、いとこ甥またはまたいとこ甥(second or third nephew)である。
一部の実施形態では、対象は、前記対象の年齢に基づいて、疾患または疾患の症状を発生させる危険性が高いとみなされる。例えば、FAPは、一般には、20〜40歳の間に発症する。一部の実施形態では、対象が約20〜40歳である場合、前記対象は、FAPの症状を発生させる可能性が高いとみなされる可能性がある。他の例として、FACは、一般には、高齢の個体(例えば、60歳またはそれより高齢)を襲う。一部の実施形態では、対象が約40歳、45歳、50歳、55歳もしくは60歳、またはそれより高齢である場合、前記対象は、FACの症状を発生させる可能性が高いとみなされる。さらに別の例として、SSAは、80歳以上の個体に高度に蔓延している。一部の実施形態では、対象が約60歳、65歳、70歳、75歳、もしくは80歳、またはそれより高齢である場合、前記対象は、SSAの症状を発生させる可能性が高いとみなされる。
いくつかの場合には、FAPまたはFACの対象は、多発ニューロパチーまたは心筋症の症状が発生する前に手根管症候群の症状を示す。したがって、一部の実施形態では、対象が手根管症候群の症状を示す場合、前記対象は、FAPまたはFACの症状を発生させる可能性が高いとみなされる。手根管症候群の症状としては、これだけに限定されないが、手または手指の疼痛、しびれ、刺痛、または衰弱が挙げられる。
症状
一部の実施形態では、前記対象は、疾患の症状に罹患していたまたは罹患している。いくつかの場合には、疾患の症状は、身体検査、対象による自己申告、神経学的検査、病歴、電気生理学的検査、検査室でのアッセイ、またはイメージングによって確認することができる。いくつかの場合には、身体検査または病歴には、症状の評価または履歴が含まれる。いくつかの場合には、神経学的検査には、患者の視覚、反射、平衡、協調、および/または筋力の評価が含まれる。そのような検査室での検査としては、神経機能の検査、例えば、神経伝導検査を伴う筋電図検査を挙げることができる。例示的な疾患および前記疾患の特徴的な症状が本明細書に記載されている。疾患の症状は多種多様に顕在化し得ること、各疾患に関して本明細書に記載されている症状は、症状の一覧を網羅するものではないことが当業者には理解されよう。
一部の実施形態では、疾患の症状とは、FAPに特徴的な症状である。FAPは、一般には、20〜40歳を襲い、進行性末梢神経変性を引き起こす進行性変性疾患である。FAPの症状は、感覚神経および/または自律神経機能不全に起因し得る。FAPの感覚運動性の症状は対象の下肢から始まり、側方に上昇し、それらとして、これだけに限定されないが、多発ニューロパチー、感覚機能障害、例えば、痛覚機能障害、温度感覚機能障害、触覚機能障害(例えば、しびれ)、または異常痛覚(painful parasthesias)(すなわち、例えばチクチク感などの普通でない感覚)、平衡困難、歩行困難を挙げることができる。自律神経の神経機能不全の症状としては、これだけに限定されないが、悪心、嘔吐、便秘、尿失禁または尿閉、腎症、体重減少(例えば、痩せ衰えること)、発汗異常、例えば、汗をかけないこと、性機能不全(例えば、インポテンス)、血液プレアルブミンレベルが高いこと、足部潰瘍、下痢、手根管症候群、胃内容排出の遅延、および起立性低血圧症を挙げることができる。疾患が進行すると、症状として、中枢神経系の徴候、例えば、水頭症、認知症、精神病、発作、視力障害、運動失調および心筋症などを挙げることができる。
一部の実施形態では、疾患の症状は、アミロイドーシスの髄膜形態に特徴的である。髄膜形態では、一般に感覚神経および自律神経の機能は残されるが、CNS組織へのアミロイド沈着により、単に非限定的な例として、水頭症、発作、運動失調、認知症、精神病、運動障害、および/または頭蓋内出血などの症状が引き起こされる可能性がある。
FAPの1つまたは複数の症状を評価する方法は当業界公知であり、下肢における運動機能、感覚機能および反射機能を定量化する下肢の神経障害評価スコア(Neuropathy Impairment Score-Lower Limbs)(NIS−LL)が挙げられる。下肢の運動および感覚機能障害は初期FAPの別の例示的な症候性特質である。
他の検査には、皮膚神経の神経支配を評価するための皮膚生検、または神経および筋肉生検を伴い得る。そのような検査により、影響を受けた神経の変性、例えば軸索変性を検出することができる。
他の実施形態では、疾患の症状はFAC(家族性アミロイド心筋症)に特徴的である。心筋症とは、一般に、心臓の筋肉(すなわち心筋)の機能の低下を指す。前記低下は、あらゆる理由で起こり得る。心筋症により、心不全が生じる可能性がある。心筋症の症状としては、例えば、呼吸困難(すなわち息切れ)、末梢性浮腫(すなわち脚の腫脹)、心拍数不整が挙げられる。いくつかの場合には、FACの症状の前に手根管症候群が起こる。心筋症の対象は、うっ血性心不全および心臓突然死の危険性が高い。多くのFAC患者は、多発ニューロパチー(polyneurophy)および自律神経系機能不全も示す。
FACの症状は、例えば、患者による自己申告、臨床検査、および/または検査室での検査によって確認することができる。そのような検査室での検査としては、心エコー検査、ECG、またはin vivoイメージング、例えばMRIを挙げることができる。
いくつかの場合には、FAC症状の発症は、60歳付近またはそれ以降に起こる。FACの症状は、伝導系疾患(例えば、洞結節または房室結節機能不全)うっ血性心不全、息切れ、末梢性浮腫、失神、労作性呼吸困難、全身疲労、または心ブロックの存在を含み得る。一部の実施形態では、FACの症状として、低ECG電圧、軸偏位、脚ブロック、AVブロック、および心房細動が挙げられる。
他の実施形態では、疾患の症状はSSAに特徴的である。SSAの症状は、例えば、うっ血性心不全、不整脈、および伝導欠損を含み、また、本明細書に記載のFACの1つまたは複数の症状を含み得る。
他の実施形態では、疾患の症状は家族性眼髄膜アミロイドーシスに特徴的である。家族性眼髄膜アミロイドーシスの症状としては、例えば、中枢神経系機能不全、脳出血、視覚機能障害、眼振、認知症、発作、昏睡、脳卒中、頭痛、運動失調、振戦、聴覚消失、構音障害、および痙縮が挙げられる。
本明細書に記載の疾患のいずれの症状も、患部組織(例えば、神経、髄膜血管、脳幹、脊髄、眼、脂肪パッド、および心臓組織)におけるアミロイド沈着の存在も含み得る。単に例として、家族性アミロイドニューロパチーが進行し、他の器官および器官系、例えば、心臓、腎臓、唾液腺および消化管などでアミロイド沈着が検出され得る。これらの器官におけるアミロイド沈着は悪化し、これらの器官系の機能不全、例えば、感染症、心不全、および腎不全などが引き起こされる可能性がある。一部の実施形態では、神経または他の組織におけるアミロイド沈着の存在は、当業界公知であるかまたは本明細書に記載されている任意の方法を使用して検出することができる。そのような方法としては、単に非限定的な例として、対象から得た生物試料をアミロイド特異的色素で染色すること、またはアミロイド特異的イメージング剤を用いた、生きている対象のin vivoイメージングが挙げられる。
アミロイド特異的色素としては、例えば、コンゴーレッド、チオフラビンS、チオフラビンT、クルクミン、アクリジンオレンジ、フッ素、DDNP、(トランス、トランス)−1−ブロモ−2,5−ビス−(3−ヒドロキシカルボニル−4−ヒドロキシ)−スチリルベンゼン(BSB)、クリサミンG(chyrsamine G)、ならびにそれらの任意の類似体および誘導体が挙げられる。コンゴーレッドで染色されたアミロイドは、一般に、アミロイドのベータ−プリーツシート構造によって生じる黄色−緑色の偏光色を示す二色の外観を特徴とする。アミロイドの生化学および組織化学についてのさらなる記載は、Glenner, G.、N. Eng. J. Med.、302巻:1333頁(1980年)に見出すことができる。
アミロイド特異的イメージング剤としては、例えば、放射性医薬品イメージング剤、例えば、これだけに限定されないが、放射標識されたフルテメタモル、フロルベタピル、およびフロルベタベンなどが挙げられる。例示的なアミロイド特異的イメージング剤およびイメージング法は、米国特許第7311893号、同第6001331号、同第7425318号、同第7700616号、同第7029655号、米国特許出願第20090123373号、同第20060035946号に記載されている。
特定の実施形態では、アミロイド特異的色素またはイメージング剤とTTR特異的マーカーの共局在によって証明される通り、検出されたアミロイド沈着はTTRタンパク質を含む。TTR特異的マーカーとしては、検出可能な標識と複合体を形成していてもしていなくてもよいTTR特異的抗体が挙げられる。一部の実施形態では、TTR特異的抗体は本発明の抗体である。
関連する実施形態では、本発明は、アミロイド疾患の処置を必要とする対象におけるアミロイド疾患を処置するための方法であって、前記対象において非ネイティブTTRが検出されたら前記対象に抗凝集剤を投与することを含む方法を提供する。別の関連する実施形態では、本発明は、対象に適用された抗凝集療法の有効性を評価する方法であって、前記療法中の前記対象における非ネイティブTTRのレベルの変化を測定することを含み、前記療法中の非ネイティブTTRのレベルの低下は、前記療法が効果的であることを示す、方法を提供する。一部の実施形態では、前記療法中の非ネイティブTTRのレベルの上昇は、前記療法が効果的ではないことを示す。したがって、本発明は、抗凝集剤の投与を必要とする対象に抗凝集剤を投与する方法であって、複数の時点で前記対象に前記抗凝集剤を投与することと、前記投与の少なくとも第1の時点および第2の時点で前記対象における非ネイティブTTRのレベルを測定することと、前記検出された非ネイティブTTRのレベルに基づいて投与するために、前記抗凝集剤の投薬量を調整し、かつ/または異なる抗凝集剤を選択することとを含む方法を提供する。好ましい実施形態では、前記対象における非ネイティブTTRの検出または測定を、本発明の抗体を使用して実施する。
「処置すること(treating)」、「処置(treatment)」、または「療法(therapy)」という用語は、互換的に使用され、治療的利益および/または予防的利益を実現するための方法(複数可)を利用することを指す。いくつかの場合には、治療的利益とは、疾患の症状(複数可)の重症度の低下を指し得る。いくつかの場合には、治療的利益とは、疾患の根底にある生物学的機構への対処またはその矯正を指し得る。他の場合では、治療的利益とは、疾患の進行の停止または速度低下を指し得る。さらに、予防的利益とは、疾患の症状を発生させる危険性の低下を指し得る。いくつかの場合には、予防的利益とは、疾患の症状(複数可)の発症の遅延を指し得る。
抗凝集剤/療法
本明細書で使用される場合、「薬剤」とは、生物学的化合物、医薬化合物、または化学化合物または他の部分を指す。非限定的な例として、単純または複雑な有機分子または無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体断片、ビタミンまたはビタミン誘導体、炭水化物、毒素、化学療法化合物、またはワクチンが挙げられる。様々な化合物、例えば、小分子およびオリゴマー(例えば、オリゴペプチドおよびオリゴヌクレオチド)、ならびに種々のコア構造に基づく合成有機化合物を合成することができる。さらに、種々の天然の供給源により、例えば植物抽出物または動物抽出物などの化合物がスクリーニングするためにもたらされる。当業者は、本発明の薬剤の構造的性質に関しては限定がないことを容易に理解することができる。
広範囲の抗凝集剤および療法が当業界公知であり、本発明において意図されている。本発明の実施において、本明細書に記載の通り疾患を有するまたは疾患の症状を発生させる危険性が高い対象に治療的利益をもたらす任意の抗凝集剤は本発明の範囲内に入る。下記は例示的な抗凝集剤および療法である。本明細書に記載されている抗凝集剤および療法は、抗凝集剤および療法の一覧を網羅するものではない。
一部の実施形態では、抗凝集剤は、TTR四量体を安定化し、それが解離して単量体になるのを予防する動力学的安定剤(kinetic stabilizer)である。他の実施形態では、抗凝集剤は、TTR単量体が会合してTTRオリゴマーになるのを予防する、またはTTRオリゴマーが会合してプロトフィブリルになるのを予防する、またはTTRプロトフィブリルが会合して原線維および/またはアミロイド沈着になるのを予防する薬剤である。
例示的な動力学的安定剤は、米国特許第7214696号、同第7560488号、同第7214695号、同第7868033号、米国特許出願第11/504134号、WIPO特許出願第WO/2011/140333号に記載されている。例示的な動力学的安定剤としては、例えば、ビフェニルアミン、ビフェニル、オキシムエーテル、ベンザゾール、または2つの芳香環で構成され、その一方が酸またはフェノールなどの親水基を有し、他方がハロゲンまたはアルキルなどの疎水性基を有する他の構造が挙げられる。追加的な例示的な動力学的安定剤としては、例えば、オルト−トリフルオロメチルフェニルアンスラニル酸およびN−(メタ−トリフルオロメチルフェニル)フェノキサジン 4,6−ジカルボン酸が挙げられる。
一部の実施形態では、動力学的安定剤は、ネイティブTTRに選択的に結合し、それを安定化する。そのような動力学的安定剤としては、単に非限定的な例として、ビアリール試薬、例えば、ビアリールアミン、ポリ塩化ビフェニル、ジフルニサル類似体、ベンゾオキサゾール、例えばタファミディスなどが挙げられる。
一部の実施形態では、化合物はビアリール試薬であり、一方の環が1つまたは複数の親水性置換基を有し、他方の環が1つまたは複数の疎水性置換基を含む。一部の実施形態では、ビアリール試薬の両方の環が1つまたは複数の親水性置換基を有する。親水基は、フェノール、COOH、ベンジルアルコール、ボロン酸またはエステル、テトラゾール、アルデヒド、水和アルデヒド、またはタンパク質に対するH結合ドナーまたはアクセプターのいずれかとしての機能を果たす任意の官能基であってよい。一部の実施形態では、ビアリール試薬は、対称的なビアリール試薬である。
一部の実施形態では、動力学的安定剤は、非ステロイド性抗炎症剤である。一部の実施形態では、非ステロイド性抗炎症剤は、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ジフルニサル、またはレスベラトロールである。
一実施形態では、動力学的安定剤は、ジフルニサル、またはその薬学的に許容される塩、誘導体、代謝産物、類似体、もしくは溶媒和化合物である。
一実施形態では、動力学的安定剤は、タファミディス、またはその薬学的に許容される塩、誘導体、代謝産物、類似体、もしくは溶媒和化合物である。
一部の実施形態では、動力学的安定剤は、イソフラボン、またはその薬学的に許容される塩、誘導体、代謝産物、類似体、もしくは溶媒和化合物である。一実施形態では、イソフラボンはゲニステインである。
一部の実施形態では、薬剤は、TTRプロトフィブリル、原線維および/またはアミロイド沈着の形成を妨げるものである。そのような薬剤は、その全てが参照により組み込まれる、Adamski-Werner, S. L.ら、J. Med. Chem. 2004年、47巻、355〜374頁;Baures, P. W.ら、Bioorg. Med. Chem. 1999年、7巻、1339〜1347頁;Baures, P. W.;Peterson, S. A.;Kelly, J. W. Bioorg. Med. Chem. 1998年、6巻、1389〜1401頁;Johnson, S. M.ら、J. Med. Chem. 2005年;Klabunde, T.ら、Nat. Struct. Biol. 2000年、7巻、312〜321頁;Oza, V. B.ら、J. Med. Chem. 2002年、45巻、321〜332頁;Peterson, S. A.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1998年、95巻、12956〜12960頁;Petrassi, H. M.ら、J. Am. Chem. Soc. 2000年、122巻、2178〜2192頁;Razavi, H.ら、Bioorg. Med. Chem. 2005年、15巻、1075〜1078頁;Razavi, H.ら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2003年、42巻、2758〜2761頁;Wiseman, R. L.ら、J. Am. Chem. Soc. 2005年)に記載されている。例示的な薬剤としては、例えば、エピガロカテキン−3−ガラート、クルクミンおよびノルジヒドログアヤレト酸が挙げられる。
一部の実施形態では、薬剤は、アミロイド形成性タンパク質の毒性を阻害するまたはアミロイド形成性タンパク質沈着の形成を阻害するものである。そのような薬剤は、米国特許第7901683号、同第7053116号、米国特許出願第11/103656号、Hsiao Y.H.ら、J Neurosci Res. 2008年9月;86巻(12号):2685〜95頁に記載されている。
アミロイドタンパク質沈着の毒性を阻害することができる例示的な薬剤としては、これだけに限定されないが、アミロイドベータシート模倣体、抗酸化剤、および他の薬剤が挙げられる。例示的な薬剤は、PCT出願公開第WO/2008/141074号および米国特許出願第12/687455号に記載されている。
炎症は、アミロイド毒性の特質であり得る。したがって、炎症を軽減する薬剤を凝集剤として使用することができる。炎症を軽減する薬剤の例は、例えば、米国特許出願第10/314428号に記載されている。例示的な抗炎症剤としては、これだけに限定されないが、リポキシゲナーゼ阻害薬、例えば5−リポキシゲナーゼ阻害剤など、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えばシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤など、インターロイキン受容体アンタゴニスト、例えばインターロイキン−1受容体アンタゴニストなど、NMDA受容体アンタゴニスト、一酸化窒素の阻害剤もしくは一酸化窒素合成の阻害剤、非ステロイド性抗炎症剤、またはサイトカイン抑制性抗炎症剤、例えば、アセトアミノフェン、アスピリン、コデイン、フェンタニル、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、モルヒネ、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、ステロイド性鎮痛薬、スフェンタニル、スリンダク、テニダップ、ステロイド、例えばベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、およびヒドロコルチゾンなどの化合物と共に;非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、例えばプロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、およびチオキサプロフェンなどが挙げられる。
アミロイドベータシート模倣体は、アミロイド形成性タンパク質の凝集を阻害し、アミロイド毒性を低下させる。一部の実施形態では、抗凝集剤は、アミロイドベータシート模倣体(ABSM)である。例示的なABSMはCheng, PNら、Nature Chemistry 4巻、927〜933頁(2012年)に記載されている。
一部の実施形態では、抗凝集療法は肝移植を含む。
一部の実施形態では、抗凝集療法はドミノ肝移植を含む。
一部の実施形態では、抗凝集療法は、総TTRタンパク質レベルを低下させることが意図された抗TTR剤を投与することを含む。抗TTR剤は、例えば、TTR mRNAの翻訳を減少させることによって、またはTTR mRNAの分解を引き起こすことによってTTRの発現を阻害する任意の薬剤であってよい。抗TTR剤は、核酸、タンパク質、ポリペプチド、化学化合物、またはそれらの任意の組合せであってよい。発現を阻害するために使用することができる例示的な核酸分子としては、TTRを標的とする二本鎖リボ核酸(dsRNA)またはアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。一部の実施形態では、dsRNAは、5’UTR、オープンリーディングフレーム(ORF)、または3’UTRを含み得るTTR mRNAの少なくとも一部分と相補的な領域を有するアンチセンス鎖を含む。TTRを標的とする例示的なdsRNA剤は、米国特許第8283460号、同第7,250,496号、米国特許出願第12/273,731号;同第13/503843号;同第12/582669号;WO2010/048228(国際出願第PCT/US2009/061381号、2009年10月20日出願)およびWO/2011/123468に記載されている。TTRを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、TTR mRNA配列内の少なくとも5つの連続したヌクレオチドと相補的な配列を有する任意のオリゴヌクレオチド配列であってよい。
一部の実施形態では、抗TTR剤の投与により、対象、または前記対象から得た生物試料におけるTTRタンパク質レベルまたはmRNAレベルが約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%、または、95%超低下する。TTRタンパク質レベルは、例えば、他のポリペプチドと比較してTTRに選択的に結合する抗体を使用する結合アッセイ、RT−PCRアッセイ、in situハイブリダイゼーションアッセイ、またはRNA分解酵素保護アッセイを含めた当業界公知の任意の手段によって確認することができる。
一部の実施形態では、抗TTR剤は、TTRの翻訳を阻害する薬剤である。例示的な薬剤としては、例えば、RXR/RARアゴニスト、RXR/RARアンタゴニスト、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、テストステロンアゴニスト、テストステロンアンタゴニスト、プロゲステロンアゴニスト、プロゲステロンアンタゴニスト、デキサメタゾンアゴニスト、デキサメタゾンアンタゴニスト、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、dsRNA、miRNA、脂肪酸結合性タンパク質アンタゴニスト、C/EBPアゴニスト、C/EBPアンタゴニスト、HNF−1アゴニスト、HNF−1アンタゴニスト、HNF−3アゴニスト、HNF−3アンタゴニスト、HNF−4アゴニスト、HNF−4アンタゴニスト、HNF−6アゴニスト、HNF−6アンタゴニスト、アプタマー、リボザイムおよびモノクローナル抗体が挙げられる。例示的な薬剤は、米国特許出願第11/296909号に記載されている。
一部の実施形態では、療法は、非ネイティブタンパク質コンフォメーションからネイティブコンフォメーションへのフォールディングを促進する薬剤を投与することを含む。特定の実施形態では、薬剤は分子シャペロンである。分子シャペロンとは、一般に、例えばタンパク質および小分子(ケミカル)シャペロンなどの高分子構造の非共有結合性フォールディングまたはアンフォールディングを補助するタンパク質または他の分子を指す。シャペロンタンパク質としては、熱ショックタンパク質、例えばHSP60、HSP70、HSP90、HSP100、BiP、GRP94、GRP170、カルネキシンおよびカルレティキュリンなど、タンパク質ジスルフィド異性化酵素(PDI)、ペプチジルプロリンシス−トランス異性化酵素(PPI)、およびERp57が挙げられる。ケミカルシャペロンとしては、メチルアミン、例えばトリメチルアミンN−オキシド(TMAO)、ベタイン、グリシンベタイン、およびグリセロ−ホスホリルコリンなど、炭水化物、例えばグリセロール、グリセロール、ソルビトール、アラビトール、ミオイノシトールおよびトレハロースなど、コリン、4−フェニル酪酸、ならびにタウリンとコンジュゲートしたウルソデオキシコール酸が挙げられる。
一部の実施形態では、療法は、小胞体(ER)ストレスを調節する薬剤を投与することを含む。ERストレスとは、アンフォールディングまたはミスフォールディングされたタンパク質が小胞体内に蓄積し、それにより、アンフォールディングされたタンパク質応答(UPR)経路の活性化が導かれることを指す。UPR経路は、いくつかの場合には、タンパク質のフォールディングを補助する遺伝子(例えば、本明細書に記載のものなどのタンパク質シャペロン)のタンパク質の翻訳および活性化を阻害することによってERストレスを低下させる進化的に保存された経路である。一部の実施形態では、薬剤は、UPR経路を活性化するまたはタンパク質のフォールディングを補助する遺伝子の発現を活性化するものである。
一部の実施形態では、療法は、ユビキチンプロテオソーム経路(UPS経路)を調節する薬剤を投与することを含む。UPS経路の例示的な調節物質としては、例えば、ボルテゾミブ、ペプチドボロン酸およびエステル、ジスルフィラム、エピガロカテキン−3−ガラート、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、ONX0912、CEP−18770、およびMLN9708などのプロテオソーム阻害剤が挙げられる。他の例示的な薬剤としては、プロテオソームを活性化するタンパク質、例えば、プロテアソーム活性化因子サブユニットPA28γ、プロテオソーム活性化因子タンパク質ファミリー11SおよびBlm10のメンバーなど、19S活性化因子、または前記タンパク質の発現を増加させる薬剤を挙げることができる。
一部の実施形態では、療法は、急性期反応を調節する薬剤を投与することを含む。一般に、急性期反応とは、炎症に応答して急性期タンパク質が増加または減少することを指す。炎症に応答して増加する例示的な急性期反応タンパク質としては、例えば、C反応性タンパク質、血清アミロイドP成分、血清アミロイドA、補体因子、マンナン結合性レクチン、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第VIII因子、フォンビルブランド因子、プラスミノーゲン、アルファ2−マクログロブリン、フェリチン、ヘプシジン、セルロプラスミン、ハプトグロビン、オロソムコイド、アルファ1−抗トリプシン、およびアルファ−1抗キモトリプシンが挙げられる。炎症に応答して減少する例示的な急性期反応タンパク質としては、例えば、アルブミン、トランスフェリン、トランスサイレチン、レチノール結合性タンパク質、アンチトロンビン、トランスコルチンが挙げられる。急性期応答調節物質は、本明細書に記載の正の急性期反応タンパク質の血漿中への放出を調節する任意の薬剤であってもよく、本明細書に記載の負の急性期反応タンパク質の血漿中への放出を調節する任意の薬剤であってもよい。例示的な薬剤として、例えば、R−1−[6−[R−2−カルボキシ−ピロリジン−1−イル]−6−オキソ−ヘキサノイル]ピロリジン−2−カルボン酸が挙げられる。例示的な薬剤は、例えば米国特許出願第11/471,018号および米国特許第7659299号に記載されている。
抗凝集剤または療法を「投与すること」とは、前記抗凝集剤または療法の前記対象に勧告すること、抗凝集剤または療法を前記対象に処方すること、抗凝集剤または療法を前記対象に投与することを包含する。薬剤の投与は、薬剤が前記対象における標的細胞または組織と接触する任意の経路によるものであってよい。例示的な投与経路としては、経口投与、注射、吸入、経皮注入、局所投与、または非経口投与が挙げられる。経口投与は、単に例として、固体剤形、例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット、ゼラチンカプセル、持続放出製剤、ロゼンジ剤、薄膜、棒付きキャンディー、チューインガムなど、または液体剤形、例えば、親水性懸濁剤、乳剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、溶液、エリキシル剤、ソフトゲル剤、チンキ剤、ヒドロゲル剤、または薬剤を含む飲料などを含めた経口剤形の摂取によるものであってよい。注射の例示的な経路としては、腹腔内注射、静脈内注射、動脈内注射、骨内注射、皮下注射、くも膜下腔内注射、または筋肉内注射が挙げられる。吸入の例示的な経路としては、例えば、ネブライザー、吸入器、気化器、フェイスマスク、または呼吸器による吸入が挙げられる。経皮投与または局所投与の例示的な経路としては、例えば、前記対象にゲル剤、水溶性ゼリー剤、クリーム剤、ローション剤、懸濁剤、フォーム剤、散剤、スラリー剤、軟膏剤、油、ペースト剤、坐剤、溶液、噴霧剤、乳剤、生理食塩水溶液、治療剤を含むジメチルスルホキシド(DMSO)に基づく溶液を接触させることが挙げられる。非経口投与は、胃腸管を介するもの以外の任意の投与経路(経口投与または直腸内投与以外の任意の経路)を含み、非腹腔内注射、吸入、経皮投与または局所投与、局部投与、例えば、点眼剤または点耳剤の投与など、脳内注射、脳血管内注射を包含する。
抗凝集剤または療法が効果的であるかを決定する方法は、前記療法中の前記対象における非ネイティブTTRのレベルの変化を測定することを含んでよい。一部の実施形態では、非ネイティブTTRのレベルの変化を測定することは、前記療法中の複数の時点で前記対象における非ネイティブTTRのレベルを測定することを含む。一実施形態では、非ネイティブTTRのレベルの変化を測定することは、療法を開始する前の第1の時点で第1の非ネイティブTTRのレベルを測定すること、前記療法を開始した後の第2の時点で第2の非ネイティブTTRのレベルを測定すること、前記第1のレベルと前記第2のレベルを比較することを含む。別の実施形態では、第1の時点および第2の時点の両方が、療法を開始した後に起こってよい。第2の時点は前記第1の時点よりも後の任意の時点であってよい。一部の実施形態では、変化を測定することは、複数の時点、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、または、25超の時点で非ネイティブTTRのレベルを測定することを含む。一部の実施形態では、第2の時点は、前記第1の時点の少なくとも12時間後、24時間後、(1日後)、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、1週間後、2週間後、4週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、4ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後、7ヶ月後、8ヶ月後、9ヶ月後、10ヶ月後、11ヶ月後、1年後、または、1年よりも後であってよい。一部の実施形態では、複数の時点は、12時間、24時間(1日)、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、または、1年超の間隔があいてよい。一部の実施形態では、療法は、レベルが、それよりも前の時点で測定されたレベルと比較して低下した場合に、前記対象において効果的であると指定される。一部の実施形態では、療法は、前記レベルが、前記それよりも前の時点と比較して約5%もしくはそれより多く、10%もしくはそれより多く、15%もしくはそれより多く、20%もしくはそれより多く、25%もしくはそれより多く、30%もしくはそれより多く、35%もしくはそれより多く、40%もしくはそれより多く、45%もしくはそれより多く、50%もしくはそれより多く、55%もしくはそれより多く、60%もしくはそれより多く、65%もしくはそれより多く、70%もしくはそれより多く、75%もしくはそれより多く、80%もしくはそれより多く、85%もしくはそれより多く、90%もしくはそれより多く、95%もしくはそれより多く、または100%低下した場合に、前記対象において効果的であると指定される。一実施形態では、療法は、前記レベルが、対照の対象において測定されたレベルに対してまたは検出不可能なレベルまで低下した場合に、前記対象において効果的であると指定される。一部の実施形態では、当該方法は、前記対象またはその介護者に前記療法が効果的であることを通知することをさらに含む。一部の実施形態では、療法は、前記レベルが、それよりも前の時点で測定されたレベルと比較して低下しなかった場合に、前記対象において効果的ではないと指定される。一部の実施形態では、当該方法は、前記対象またはその介護者に前記療法が効果的ではないことを通知することをさらに含む。
一部の実施形態では、抗凝集剤の投薬量を、前記薬剤の投与の経過中の前記対象における非ネイティブTTRのレベルの変化に基づいて調整する。単に例として、抗凝集剤の投薬量を、非ネイティブTTRの所望の速度での低下が実現されるように用量設定することができる。単に例として、抗凝集剤の投与の経過中に、非ネイティブTTRのレベルの低下がほんのわずかだけ(例えば、10%未満)である、またはゆっくりと徐々に低下する(例えば、1ヶ月超かけて10%未満)場合には、前記抗凝集剤の投薬量を増加させることができる。あるいは、前記抗凝集剤を投与する頻度を増やすことができる。単に他の例として、抗凝集剤の投与の経過中に、対象が前記投与の負の副作用を被った場合、および非ネイティブTTRのレベルが急速に低下した場合(例えば、1週間未満で50%超)には、前記対象の負の副作用を軽減しながら、なお前記対象における非ネイティブTTRのレベルの低下をできる限り遅い速度でもたらすために、前記薬剤の投薬量を減少させることができる。他の例として、抗凝集剤の投与の経過中に、前記対象における非ネイティブTTRのレベルが低下しない場合には、前記対象における非ネイティブTTRのレベルの低下をもたらすために、前記薬剤の投薬量を増加させることができる。一実施形態では、前記検出されたレベルが以前の時点で測定されたレベルと比較して20%またはそれより多く上昇した場合には、前記抗凝集剤の投薬量を増加させる。あるいは、異なる抗凝集剤を前記対象に投与するために選択することができる。例えば、前記第1の抗凝集剤の投与を終了し、異なる抗凝集剤の投与を開始することができる。他の例に関しては、前記第1の抗凝集剤の投与に加えて、第2の抗凝集剤の投与を開始することができる(例えば、併用療法)。
一部の実施形態では、本発明の抗体を使用して、細胞における非ネイティブTTRのレベルを低下または上昇させる薬剤を同定することができる。そのような薬剤を同定する方法は、TTR関連疾患に対する新しい療法を同定するために有用であり得る。一実施形態では、方法は、TTRを発現するまたは発現することができる細胞を試験化合物と接触させることと、前記細胞または前記細胞から得た試料における非ネイティブTTRのレベルを検出または測定することとを含む。接触させることは、in vitro(例えば、細胞培養系において)、in vivo(例えば、試験化合物を対象に投与することによって)、またはex vivo(例えば、対象から得た生物試料を試験化合物と接触させることによって)で行うことができる。前記接触させることの前の前記細胞と比較して、または前記試験化合物と接触させない対照細胞と比較して非ネイティブTTRのレベルの低下を引き起こす試験化合物を潜在的な治療剤として同定し、かつ/または選択することができる。したがって、一部の実施形態では、療法は、本明細書に記載の方法を使用して潜在的な治療剤として同定された薬剤を投与することを含む。
別の態様では、本発明は、本発明の抗体の治療剤としての使用を意図している。抗体は、対象において非ネイティブTTRと免疫複合体を形成し得る。免疫複合体の形成により、例えば、非ネイティブTTR(例えば、TTR単量体および/またはオリゴマー)のTTR原線維およびアミロイド沈着への凝集が阻害され得る。この阻害により、対象におけるアミロイド負荷が低下し得る。一部の実施形態では、免疫複合体の形成により、複合体を形成した非ネイティブTTRのタンパク質分解が誘導され、例えば、抗体は、非ネイティブTTRに選択的に結合し、そのタンパク質分解を誘導する触媒抗体である。触媒抗体およびそれを作製する方法は本明細書に記載されている。別の態様では、本発明は、非ネイティブTTRおよび本発明の抗体を含む免疫複合体を提供する。
キット
本発明は、さらに、適切な包装材料で包装された、医薬製剤を含めた1種または複数種の本発明の抗体を含むキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、本発明の抗体を含む。一部の実施形態では、キットは、本発明の抗体、および前記対象から得た生物試料における非ネイティブ形態のTTRを検出するための抗体の使用説明書を含む。他の実施形態では、キットは、本発明の抗体をコードする核酸を含む。他の実施形態では、キットは、本発明の抗体を発現する細胞を含む。
一部の実施形態では、キットは包装材料を含む。本明細書で使用される場合、「包装材料」という用語は、キットの成分を収納する物理的構造を指す。包装材料は、キット成分の滅菌状態を維持することができるものであり、そのような目的に一般に使用される材料(例えば、紙、段ボール(corrugated fiber)、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプルなど)でできていてよい。
一部の実施形態では、キットは、抗体の使用説明書、例えば、本発明の方法を実施するための説明書を含む。単に例として、説明書は、本発明の抗体を利用する結合アッセイを行うためのプロトコールであってよい。単に他の例として、説明書は、本発明の抗体または本発明の抗体をコードする核酸をin vitro、in vivo、またはex vivoで細胞において発現させるためのプロトコールであってよい。さらなる実施形態では、説明書は、対象(例えば、アミロイド疾患の症状を発生させる危険性がある対象)を、前記対象において非ネイティブTTRが検出された場合に、本発明の抗体を利用する抗凝集療法を投与することによって処置するための説明書を含んでよい。一部の実施形態では、説明書は、in vivo、ex vivo、またはin vitroで非ネイティブTTRの存在を検出するまたはそのレベルを測定するためのプロトコールであってよい。説明書は、本明細書に記載の本発明の方法のいずれかを実施するための説明書を含んでよい。
キットは、緩衝剤、防腐剤、またはタンパク質/核酸安定化剤も含み得る。キットは、標準曲線を算出するために使用することができる、非ネイティブTTRの濃度が分かっている対照試料も含み得る。一部の実施形態では、キットは、陰性対照試料、例えば、非ネイティブTTRを含有しない試料を含む。一部の実施形態では、キットは、陽性対照試料、例えば、既知量の非ネイティブTTRを含有する試料を含む。
一部の実施形態では、キットは、本発明の抗体と複合体を形成することができる検出可能な標識を含む。単に例として、検出可能な標識は、本発明の抗体と結合することができる検出可能部分とコンジュゲートした二次抗体であってよい。検出可能部分は、当業界公知であるかまたは本明細書に記載されている任意の検出可能部分であってよい。例示的な検出可能な部分としては、放射性同位元素、蛍光化合物、化学発光化合物、コロイド金属、発光化合物、酵素、および常磁性標識が挙げられる。検出可能な部分として使用することができる例示的な酵素としては、アセチルトランスフェラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ウレアーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられる。
例示的な蛍光化合物としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン(phycoerytherin)、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド(o-phthaldehyde)、フルオレスカミン、および市販のフルオロフォア、例えば、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 647、DyLight488、DyLight594、DyLight647などのDyLight色素、およびBODIPY493/503、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY530/550、BODIPY TMR、BODIPY558/568、BODIPY558/568、BODIPY564/570、BODIPY576/589、BODIPY581/591、BODIPY TR、BODIPY630/650、BODIPY650/665などのBODIPY色素、Cascade Blue、Cascade Yellow、Dansyl、lissamine rhodamine B、Marina Blue、Oregon Green488、Oregon Green514、Pacific Blue、rhodamine 6G、rhodamine green、rhodamine red、tetramethylrhodamineならびにTexas Red、Molecular Probes,Inc.、Eugene、Oreg.などが挙げられる。
例示的な発光化合物としては、例えば、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステル)、生物発光化合物(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンが挙げられる。
一部の実施形態では、キットは、固体支持体および本発明の抗体、ならびに説明書および/または前記抗体を前記固体支持体に固定化するための試薬を含む。他の実施形態では、キットは、本発明の抗体が固定化された固体支持体を含む。一部の実施形態では、固体支持体に固定化された抗体または固定化される抗体は、ネイティブTTRと非ネイティブTTRの両方を認識し、それに結合するTTR抗体である。他の実施形態では、固定化抗体または固定化される抗体は、ネイティブTTRと比較して非ネイティブTTRを認識し、それに選択的に結合するTTR抗体である。固体支持体は、例えばマイクロタイタープレートであってよい。一部の実施形態では、キットは、前記固体支持体に固定化されていない本発明の抗体をさらに含む。一部の実施形態では、前記固体支持体に固定化されていない抗体は、前記固体支持体に固定化されているものと同じ抗体である。他の実施形態では、前記固体支持体に固定化されていない抗体は、前記固体支持体に固定化されている抗体とは異なる抗体である。好ましい実施形態では、前記固体支持体に固定化されていない抗体は、ネイティブTTRと比較して非ネイティブTTRに選択的に結合する。
コンピュータ可読媒体
一態様では、本発明は、コンピュータ可読媒体を提供する。一部の実施形態では、コンピュータ可読媒体は、1つまたは複数のプロセッサにより実行されると、対象が疾患の症状を発生する可能性を決定する方法を遂行するコードを含み、当該方法は、(a)対象においてまたは前記対象から得た生物試料において検出された非ネイティブTTRのレベルに関する測定データを受け取ることと、(b)前記測定データを、症状を発生させる可能性が増大していると前記対象を指定するために設定した閾値レベルと比較することと、(c)前記検出された非ネイティブTTRのレベルが前記閾値レベルを超える場合に、前記疾患を発生させる危険性が高いと前記対象を指定することとを含む。
別の態様では、本発明は、コンピュータ可読媒体を提供する。一部の実施形態では、コンピュータ可読媒体は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、対象をTTRアミロイドーシスに関連する疾患に関して診断する方法を遂行するコードを含み、当該方法は、(a)対象においてまたは前記対象から得た生物試料において検出された非ネイティブTTRのレベルに関する測定データを受け取ることと、(b)前記測定データを、TTRアミロイドーシスに関連する疾患を有すると前記対象を指定するために設定した閾値レベルと比較することと、(c)前記検出された非ネイティブTTRのレベルが前記閾値レベルを超える場合に、TTRアミロイドーシスに関連する疾患を有すると前記対象を指定することとを含む。
別の実施形態では、コンピュータ可読媒体は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、対象が疾患の症状を発生する可能性を評価する方法を遂行するコードを含み、当該方法は、(a)対象においてまたは前記対象から得た生物試料において検出された非ネイティブTTRのレベルに関する測定データを受け取ることと、(b)前記測定データを、症状を発生させる可能性が増大していると前記対象を指定するために設定した閾値レベルと比較することと、(c)介護者に前記疾患に対する処置を開始するよう通知することであって、前記処置が、前記対象に抗凝集剤を投与することを含むこととを含む。
別の実施形態では、コンピュータ可読媒体は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、対象に適用された抗凝集療法の有効性を評価する方法を遂行するコードを含み、当該方法は、(a)前記療法中に対象においてまたは前記対象から得た生物試料において検出された非ネイティブTTRのレベルの変化に関する測定データを受け取ることと、(b)前記変化が非ネイティブTTRの減少である場合に、前記療法を効果的であると指定することと、(c)介護者に前記指定を通知することとを含む。
コンピュータシステム
別の態様では、本発明は、疾患の早期検出、診断、または予後判定のためのコンピュータシステムを提供する。一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に適用された抗凝集療法の有効性を決定するためのコンピュータシステムを提供する。一部の実施形態では、コンピュータシステムにより、前記疾患についての前記早期検出、診断、予後判定、または療法の有効性を伝達する報告がもたらされる。一部の実施形態では、診断、予後判定、治療有効性の予測のための本明細書に記載の方法の1つまたは複数のステップを、プロセッサ、例えば、コンピュータ可読媒体に含まれる命令を実行するコンピュータシステムを活用して実施する。一部の実施形態では、プロセッサは、1つまたは複数の制御器、算出ユニット、および/もしくはコンピュータシステムの他のユニットに付随する、またはファームウェアに埋め込まれている。一部の実施形態では、当該方法の1つまたは複数のステップは、ハードウェアで遂行される。一部の実施形態では、当該方法の1つまたは複数のステップは、ソフトウェアで遂行される。ソフトウェアルーチンは、フラッシュメモリ、RAM、ROM、磁気ディスク、レーザーディスク(登録商標)、または本明細書に記載されているもしくは当業界公知の他の記憶媒体などの任意のコンピュータ可読メモリユニットに記憶させることができる。ソフトウェアは、例えば、電話線、インターネット、無線接続などの通信チャネルを通じたもの、または、例えばコンピュータ可読ディスク、フラッシュドライブなどの可搬型媒体によるものを含めた任意の公知の通信方法によってコンピューティングデバイスと通信することができる。本明細書に記載の方法の1つまたは複数のステップは、種々の操作、ツール、ブロック、モジュールおよび技法として遂行することができ、これは、今度は、ファームウェア、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、ハードウェア、およびソフトウェアの任意の組合せで実行することができる。ハードウェアで遂行する場合、ブロック、操作、技法などの一部または全部は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、カスタム集積回路(IC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、またはプログラマブルロジックアレイ(PLA)で遂行することができる。
例えば、試料採取、試料の加工、遺伝子型決定、患者の病歴または医療記録の受け取り、検出された非ネイティブTTRのレベルに関する測定データの受け取りおよび記憶、診断、予後判定、または治療有効性を決定するための、前記測定データと設定した閾値レベルとの比較、報告の作成、および受け手への結果の報告を含めた1つまたは複数のステップにコンピュータシステムを使用することができる。
クライアント−サーバーおよび/またはリレーショナルデータベースアーキテクチャを本発明の複数の実施形態において使用することができる。一般に、クライアント−サーバーアーキテクチャは、ネットワーク上の各コンピュータまたはプロセスがクライアントまたはサーバーのいずれかであるネットワークアーキテクチャである。サーバーコンピュータは、ディスクドライブ(ファイルサーバー)、プリンター(プリントサーバー)、またはネットワークトラフィック(ネットワークサーバー)を管理するための専用の強力なコンピュータである。クライアントコンピュータとしては、PC(パーソナルコンピュータ)またはユーザーがアプリケーションを走らせるワークステーション、ならびに本明細書に開示されている例示的な出力デバイスを挙げることができる。クライアントコンピュータは、ファイル、デバイス、およびさらには処理能力などのリソースについてサーバーコンピュータに依拠するものであってよい。本発明の一部の実施形態では、データベース機能の全てをサーバーコンピュータで取り扱う。クライアントコンピュータは、フロントエンドデータ管理を取り扱うソフトウェアを有し、ユーザーからのデータインプットを受け取ることができる。
一部の実施形態では、検出された非ネイティブTTRのレベルに関連する機能を実行するためのコンピュータに対する命令を含むコンピュータで実行可能なソフトウェアがコードされたコンピュータ可読媒体が提供される。そのようなコンピュータ可読媒体は、完了すべき所望の評価の種類に応じて、そのようなコードまたはコンピュータで実行可能なソフトウェアの任意の組合せを含んでよい。当該システムは、非ネイティブTTRの1つまたは複数のレベルに基づいて重み付けされた危険性を算出するためのコードを有してよい。システムは、対象におけるTTRの変異の状態に基づいて遺伝子解析を行うためのコードをさらに含んでよい。当該システムは、以下のうちの1つまたは複数のコードも有してよい:本明細書に記載の通り、行うこと、分析すること、編成すること、または結果を報告すること。当該システムは、検出された非ネイティブTTRのレベルを閾値と比較するため、および閾値を超えるか否かに基づいて倍率ベースライン危険性を割り当てるためのコードを含んでよい。当該システムは、抗凝集療法、例えば抗凝集剤の投与と、前記療法中の対象における非ネイティブTTRのレベルの変化とを相関させるためのコードも有してよい。当該コードは、前記変化が前記療法中の非ネイティブTTRのレベルの低下である場合に、前記療法が効果的であると示されるようにさらに構成されていてよい。したがって、当該システムは、対象におけるアミロイド疾患の処置を調整するための本明細書に記載の方法を遂行するコードを含んでよい。当該システムは、報告を作成するためのコードも有してよい。
算出を実施した後、プロセッサにより、算出からなどの出力を、例えば、元の入力デバイスもしくは記憶ユニットに、同じもしくは異なるコンピュータシステムの別の記憶ユニットに、または出力デバイスに提供することができる。プロセッサからの出力は、データ表示、例えば、表示画面(例えば、デジタルデバイス上のモニタまたはスクリーン)、プリントアウト、データシグナル(例えば、パケット)、グラフィカルなユーザーインターフェース(例えば、ウェブページ)、アラーム(例えば、閃光または音)、または上記のいずれかの組合せによって提示することができる。ある実施形態では、出力はネットワーク(例えば、無線ネットワーク)を通じて出力デバイスに伝達される。出力デバイスは、ユーザーが使用して、データ処理コンピュータシステムからの出力を受け取ることができる。ユーザーが出力を受け取った後、ユーザーが医療関係者である場合には、ユーザーは、医学的処置などの方針を決定することもでき、方針を行うこともできる。一部の実施形態では、出力デバイスは入力デバイスと同じデバイスである。出力デバイスの例としては、これだけに限定されないが、電話機、無線電話機、携帯電話、PDA、フラッシュメモリドライブ、光源、音波発生装置、FAX装置、コンピュータ、コンピュータモニタ、プリンター、iPod、およびウェブページが挙げられる。ユーザーステーションは、サーバーにより処理される情報を出力するためのプリンターまたはディスプレイモニタと通信させることができる。そのようなディスプレイ、出力デバイス、およびユーザーステーションを使用して、対象またはその介護者に通知をもたらすことができる。
本開示に関するデータは、ネットワークまたは受け取り用接続を通じて伝達し、かつ/または受け手が見直すことができる。しかし、受け手は、報告が関係する対象;またはその介護者、例えば、医療提供者、管理者、他の医療専門家、または他の世話人;遺伝子型決定解析を実施し、かつ/または要求した人または実体;遺伝学的カウンセラーに限定しなくてよい。受け手は、そのような報告を記憶するための局所システムまたは遠隔システム(例えば、「クラウドコンピューティング」アーキテクチャのサーバーまたは他のシステム)であってもよい。一実施形態では、コンピュータ可読媒体として、非ネイティブTTRのレベルの分析などの生物試料の分析の結果を伝達するために適した媒体が挙げられる。媒体は、前記対象における非ネイティブTTRのレベルに関する結果、アミロイド疾患の症状を発生させる危険性(倍率ベースライン危険性など)、アミロイド疾患を有する危険性、および/または対象に対する措置計画または処置勧告などを含み、そのような結果は、本明細書に記載の方法を使用して導き出される。
一部の実施形態では、疾患の症状を発生させる危険性または疾患を有する危険性があると対象を指定した場合に、対象または別の個体(例えば、医療提供者、医療管理者、他の医療従事者、または他の世話人)に通知する。一部の実施形態では、当該方法は、対象の疾患の症状または疾患を有する危険性の評価に基づいて、措置に関する勧告をもたらすことをさらに含む。勧告は、危険性評価に基づいて作成される報告の一部を形成してもよく、そのような報告に基づいて受け手により成されるものであってもよい。勧告は、対象の一部および/または医療提供者、医療管理者、他の医療従事者、もしくは他の世話人などの第三者に対するさらなる措置に関するものであってよい。勧告は、これだけに限定されないが、1種または複数種の治療剤の処方または投与を含み得る。一部の実施形態では、治療剤を治療有効用量で処方、投与、または他のやり方で提供する。
(実施例1)
TTR免疫原の生成
四量体TTRおよび単量体TTRの発現および精製
四量体TTRおよび単量体TTRを以前に記載されている通り生成した(Babbesら、Biochemistry 2008年、47巻(26号):6969〜6984頁)。簡単に述べると、全てのTTRバリアントを、TTRおよびアンピシリン耐性遺伝子を含有する適切なpMMHa発現ベクターで形質転換したBL21(DE3)Epicurian Gold Escherichia coli細胞(Stratagene、La Jolla、California)において発現させた。E.coli培養物を成長させ、回収し、プロテアーゼ阻害剤の存在下で溶解し、細胞溶解物を遠心分離した。調査されるバリアントの全てが可溶性タンパク質として発現されたため、細胞の上清から精製した。上清を硫酸アンモニウム沈殿によって分画した;50〜100%硫酸アンモニウムペレットを、最小体積の25mMのTris、1mMのEDTA(pH8.0)に再懸濁させ、10,000MWCOの透析用チューブ(Pierce Biotechnology、Rockford、IllinoisからのSnakeskin)中、25mMのTris、1mMのEDTA(pH8.0)4Lに対して4℃で一晩透析した。透析後、試料を、0.22μmのフィルターを通して濾過し、25mMのTris、1mMのEDTA、50mMのNaCl(pH8.0)を用いて平衡化済みのSource 15Q陰イオン交換カラム(Amersham Biosciences、Piscataway、New Jersey)に適用し、4℃で流した。TTRを、1.5カラム体積中50〜350mMのNaClの直線勾配を用いて溶出し、その後、1.5カラム体積に対して350mMのNaClで洗浄した。TTRを含有する画分(全ての場合における主要なピーク)をプールし、濃縮し、いかなる可溶性TTR凝集体も除去するために、4℃、50mMのリン酸ナトリウム、100mMのKCl、1mMのEDTA(pH7.4)中Superdex 75ゲル濾過カラム(Amersham Biosciences、Piscataway、New Jersey)でさらに精製した。精製されたTTRバリアントのそれぞれの同一性を、HP Series 1100−MSD液体クロマトグラフィー/質量分光計(Agilent Technologies、Palo Alto、California)でのエレクトロスプレーLC/MSによって決定されるその質量によって確認した。TTR溶液の濃度はマイクロモル(μM)単位で表され、1.88×104M−1cm−1のε280を使用して分光光度的に決定したものである。典型的な精製では、細胞培養物2Lから60〜100mgの四量体TTRが得られた。全てのTTR溶液を4℃で保管し、精製してから1週間以内に使用した。
上記の手順に従い、アンモニウム分画ステップをわずかに改変させてM−TTRを精製した:25〜90%硫酸アンモニウムペレットを得、再懸濁し、3,500 MWCOのSnakeskin透析用チューブ(Pierce Biotechnology、Rockford、Illinois)で透析した。典型的な収量は、細胞培養物2Lから40〜60mgのM−TTRであり、このように得られたM−TTRは>95%が単量体である。
ペプチド免疫原の設計および合成
ヒトトランスサイレチンタンパク質の合成ポリペプチド断片および対応する免疫原性増強性コンジュゲートも、抗体産生のための抗原として生成した。通常、フォールディングされたTTRは、溶液中で四量体コンフォメーションをとる。Pymol(Schrodinger、USA)を使用して、四量体TTRの結晶構造(PBD 2QGB)に基づいてTTRの全てのアミノ酸側鎖の溶媒露出を算出し、可視化した。TTR上のG鎖およびH鎖の一部(アミノ酸108〜121)に対応するポリペプチド(ALA−ALA−LEU−LEU−SER−PRO−TYR−SER−TYR−SER−THR−THR−ALA−VAL)が、TTRが四量体にフォールディングされている場合には溶媒が接近しにくく、四量体が解離し、かつ/またはミスフォールディングされた場合にのみ、TTRアミロイド形成が導かれる種々の非ネイティブ中間体コンフォメーションの場合と同様に露出すると同定された。標準の固相化学を使用してペプチドを合成した。コンジュゲーションを容易にするためにペプチドのC末端にシステイン残基を付加した。
(実施例2)
非ネイティブTTR形態の調製および分析
2.1 非ネイティブTTR形態の調製
TTRタンパク質の非ネイティブ形態(オリゴマー形態を含めた)を、M−TTRを使用して、または正常にフォールディングされた四量体TTRタンパク質を100mM、pH4.3の酢酸緩衝液中0.2mg/mLのタンパク質の濃度、37℃で、16時間インキュベートすることによって調製した(Bourgaultら、Biochemistry 2011年、50巻(6号):1001〜1015頁)。非ネイティブ形態のTTRを、M−TTR(単量体)または野生型(四量体)TTRを4℃、室温(例えば、約20〜30、25〜40℃)、または37℃で1日にわたってインキュベートすることによっても調製した。
2.2 TTRの架橋
TTR試料のグルタルアルデヒド架橋を、1.6%v/vのグルタルアルデヒド溶液(水中25%v/v溶液)(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri)を室温で添加することによって実現した。2.8%v/v、1.85MのNaBH4溶液(0.1NのNaOH中に新しく調製した)を添加し、5分インキュベートすることによって反応をクエンチした。試料をすぐにSDS−PAGE試料緩衝液と混合し、Novex 4〜12%NuPAGE Bis−Trisプレキャスト勾配ゲル(Invitrogen、Carlsbad、CA)で分離した。電気泳動後、試料を0.2マイクロメートルのニトロセルロースに転写し、Western Breeze Chromogenic Immunodetection System(Invitrogen)を指示通りに使用し、抗TTR抗体を用いてウエスタンブロットを実施した。例えば、図4Bでは1マイクログラム/mlのウサギポリクローナルTTR抗体、MFD113を使用した。
(実施例3)
マウス抗TTRモノクローナル抗体の生成
3.1 マウス免疫/融合および抗体の精製
組換え単量体ヒトTTR免疫原、M−TTR、またはKLHとコンジュゲートしたM−TTR、および長い免疫プロトコールを使用してBalb/cマウスを免疫した。最初の免疫を、完全フロイントアジュバント(CFA)エマルション中に混合した抗原100マイクログラム(μg)を用いて腹腔内(ip)注射によって行い、その後、2〜3週間あけてip注射を3回行い、それぞれ不完全フロイントアジュバント(IFA)エマルション中に混合した抗原50μgを送達した。4回目の抗原注射の1週間後に血清を取得して、抗体の力価をELISAによって確認した。応答力価が高いマウス3匹を安楽死させ、ハイブリドーマクローニングのために脾臓を外科的に取り出した。
脾臓細胞の単一細胞懸濁液を、脾臓を100マイクロメートルのステンレス鋼ふるいに強制的に通し、次いで細胞濾過器に通し、30mlのRPMIで2回洗浄することによって調製した。脾臓細胞を、Sp2/0−Ag14細胞(Sigma、St.Louis、MO)または同様のものに3対1の比で混合し、50%PEG−1500を添加し、穏やかに撹拌することによって細胞融合を容易にした。細胞の混合物を遠心分離によって沈殿させ、RPMIを用いて穏やかに洗浄し、その後、20%ウシ胎仔血清(FCS)を伴うRPMI−1640培地中、37℃で30分インキュベートした。細胞を、20%FCS、標準のHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン(aminoptehn)およびチミジン)、25%脾臓馴化培地、2mMのグルタミン酸および100μg/mlのPen−Strip(Invitrogen;Calsbad、CA)を含有するRPMI−1640に懸濁させ、5つの96ウェルプレートに分注し、37℃/5%CO2インキュベーターで8〜20日間培養して、HAT耐性ハイブリドーマクローンを確立した。各ハイブリドーマクローン由来の馴化培地をELISAスクリーニングに供した。
マウスモノクローナル抗体をハイブリドーマにおいて、腹水において、または組換えタンパク質としてのいずれかで産生させ、標準のプロトコールに従ってプロテインGを用いて精製した。
3.2 mAb配列決定
本発明のモノクローナル抗体は、サブクラスIgG1、カッパ軽鎖の免疫グロブリンである。
全RNAを、凍結したハイブリドーマ細胞からTRIzol Plus RNA purification system(Life Technologies、USA)の技術マニュアルに従って抽出した。全RNAをアガロースゲル電気泳動によって分析した。全RNAを、アイソタイプ特異的アンチセンスプライマーまたは普遍的なプライマーを使用し、SuperScript III first−strand synthesis system(Life Technologies、USA)の技術マニュアルに従ってcDNAに逆転写した。抗体断片を5’cDNA末端の急速増幅によって増幅した(RACE)。次いで、RT−PCRを実施して抗体の可変領域(重鎖および軽鎖)を増幅し、次いで、それを、標準のクローニングベクターに別々にクローニングした。コロニーPCRスクリーニングを実施して正しいサイズの挿入を伴うクローンを同定した。少なくとも10個の独立した陽性コロニーについて、各抗体断片の配列決定を行った。VH遺伝子およびVL遺伝子が挿入された10クローンについて、抗体断片の配列決定を行い、各ハイブリドーマについてコンセンサス配列を引き出した。
(実施例4)
ウサギ抗TTRポリクローナル抗体の生成
4.1 H鎖ポリクローナル抗体
NZW−SPFウサギ2匹について、完全フロイントアジュバント(CFA)中、KLHとコンジュゲートしたH鎖ペプチド(ALLSPYSYSTTAV)それぞれ500マイクログラムを皮下に免疫することによってポリクローナル抗体を作出した。動物を、3週間後に不完全フロイントアジュバント中、KLHとコンジュゲートしたペプチド500マイクログラムを用いて追加刺激し、その後、3週間の間隔でさらに2回の追加刺激を行った。血液を抜き取り、血清を抗体反応性についてELISAによって試験した。最初の免疫の10週間後に最終的な採血を行い、ペプチドアフィニティーカラムを使用して抗体を精製した。ビオチン化H鎖ペプチドを使用した間接ELISAによって抗体の親和性および選択性を確認した。
4.2 総TTRポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体を以前に記載されている通り作出した(Purkeyら、PNAS 2001年、98巻:10号、5566〜5571頁)。簡単に述べると、ウサギに、完全フロイントアジュバントとN末端にメチオニンが付加された組換えヒトTTR、1mg/mlの1:1混合物を注射した。5週間後、ウサギに、2週間ごと、2ヶ月にわたって1:1不完全フロイントアジュバント:TTR(1mg/ml)の追加刺激を与えた。その後、1ヶ月に1回追加刺激を与えた。各追加刺激注射の30日後に各ウサギから血清50ミリリットルを抜き取り、血清を単離した。組換えブドウ球菌プロテインAカラム(Amersham Pharmacia Biotech)を通過させることによってウサギ血清から抗体を単離した。カラムを50mMのリン酸ナトリウム(pH7.2)5カラム体積で洗浄し、100mMのクエン酸ナトリウム(pH3.0)5カラム体積を用いて抗体を溶出させた。溶出画分を、5ml画分に1MのTrisHCl(pH9.0)1mlを添加することで中性pHに戻した。画分をプールし、100mMの炭酸水素ナトリウム、pH8.2と交換した。
(実施例5)
ハイブリドーマのELISAスクリーニング
5.1 直接ELISA
全ての酵素結合免疫吸着検査法(Enzyme−linked immunoabsorbent assay)(ELISA)を、Corningの96ウェルEIA/RIA高結合性ポリスチレンプレート(Thermo Fisher、Rochester、NY)を使用して実施した。50mM、pH9.6の炭酸ナトリウム緩衝液中2μg/mLのM−TTRを使用してプレートをコーティングし、次いで、プレートをTBST(0.05%Tween−20を含有する1×TBS)で3回洗浄し、次いで、Superblock(Pierce、USA)を用いてブロッキングした。無希釈からTBST中1:1,000希釈までの、ハイブリドーマクローン由来の馴化培地をウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。ウェルをTBSTで3回洗浄した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG抗体またはFc抗体を添加して、抗原に結合したmAbを検出した。各洗浄についてウェル当たり350μlのTBSTで3回洗浄することによって過剰なHRPを洗い流した。次いで、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液をHRP着色の基質として添加した。反応を停止させ、プレートリーダーによって450nmでプレートをスキャンした。陽性クローンを追加的なELISAスクリーニングに進めた。クローンのいくつかが表2に列挙されている。
5.2 サンドイッチアッセイ
この節には、ハイブリドーマスクリーニングの間に使用したサンドイッチELISAアッセイ形式について記載する。同じ形式が、表2に概説されている種々の組合せの精製された抗体にも適用可能である。
ハイブリドーマクローン由来の馴化培地を、正常にフォールディングされた四量体TTRタンパク質に対して、ミスフォールディングされた単量体形態の、およびオリゴマー形態の野生型TTRタンパク質および変異TTRタンパク質に選択的に結合するそれらの能力についてスクリーニングした。一実施形態では、ELISAプレートを、上記の通り野生型TTRを用いてウサギを免疫することによって生成したウサギ抗TTRポリクローナル抗体MFD113でコーティングすることによって調製した。プレートをSuperblock(Pierce、USA)でブロッキングした後に、様々な濃度のM−TTR、オリゴマー形態の野生型TTRタンパク質および変異TTRタンパク質、または正常にフォールディングされた四量体TTRタンパク質を添加し、室温で1時間インキュベートした。ウェルをTBSTで3回洗浄した。各ハイブリドーマクローン上清50マイクロリットルをウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。ウェルをTBSTで3回洗浄した。次いで、HRPとコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG抗体またはFc抗体およびTMBを、間接ELISAの場合と同じプロトコールに従って検出のために使用した。図4Aには、サンドイッチELISAアッセイにおいて四量体TTRに対して、非ネイティブ(オリゴマーを含めた)形態のTTRに選択的に検出するMFD102の例が示されている。
別の実施形態では、捕捉用抗体および検出用抗体は、同じ種に由来するが、検出用抗体がビオチン化されたものであった。この場合、次いで、検出用抗体とのインキュベート、およびその後の洗浄ステップの後に、HRPとコンジュゲートしたストレプトアビジンをELISA試料に添加する。結合していないストレプトアビジンを洗い流した後、TMB基質を添加して測定を可能にした。
本明細書の表2には、非ネイティブTTRレベルを検出するために本発明において使用される捕捉/検出用抗体の組合せのいくつかの例が列挙されている。非ネイティブTTRタンパク質のレベルは450nmにおいて検出されたシグナルと相関する。
一実施形態では、TTR全抗体を捕捉用抗体として使用し、異なる種(マウスまたはウサギ)において生成された非ネイティブTTR特異的抗体を検出用抗体として使用した。
別の実施形態では、非ネイティブTTR特異的抗体を捕捉用抗体として使用し、異なる種において生成されたTTR全抗体を検出用抗体として使用した。
別の実施形態では、非ネイティブTTR特異的抗体を捕捉用抗体として使用し、異なる種において生成された、異なるエピトープを標的とする別の非ネイティブTTR特異的抗体を検出用抗体として使用した。
別の実施形態では、捕捉用抗体および検出用抗体は同じ種において生成されたものであった。検出用抗体はビオチン化されたものであった。
別の実施形態では、捕捉用抗体および検出用抗体は同じ抗体であった。検出用抗体はビオチン化されたものであった。
5.3 競合アッセイ
正常にフォールディングされた四量体形態の野生型TTRタンパク質および変異TTRタンパク質と比較して、非ネイティブ(単量体およびオリゴマーを含めた)形態のTTRに対するハイブリドーマの上清の結合選択性を評価するために競合アッセイも使用した。Corning96ウェル高結合性EIA/RIAプレートを、50mM、pH9.6の炭酸ナトリウム/炭酸水素緩衝液中2μg/mLのM−TTRでコーティングし、Superblock(Pierce、USA)を用いてブロッキングした。各ハイブリドーマの上清50〜100マイクロリットルに様々な形態のTTRタンパク質またはウシ血清アルブミン(BSA、陰性対照として)を50μg/mLでスパイクした。混合物を、室温で1時間インキュベートした後に、コーティングしたプレートに添加し、室温でさらに1時間インキュベートした。ウェルをTBSTで3回洗浄した。次いで、HRPとコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG抗体またはFc抗体およびTMBを間接ELISAの場合と同じプロトコールに従って検出のために使用した。MFD102およびMFD108を含めたいくつものハイブリドーマクローンの、固定化されたM−TTRAへの結合は、非ネイティブ形態のTTRのみが競合し、四量体TTRは競合せず、これにより、好都合な選択性が示される。
(実施例6)
エピトープのマッピング
抗TTR抗体が認識する直鎖状の連続的な配列を同定するために、重複したペプチドライブラリーを設計し、合成した(表3)。
13アミノ酸長であり、野生型TTR配列全体にわたって4アミノ酸が重複しているポリペプチドを、標準の固相化学を使用して合成し、ビオチン化した。これらのペプチドを>75%の純度まで精製し、再蒸留水またはジメチルスルホキシド(DMSO)中に可溶化した。
次いで、ELISAアッセイを利用して、各抗体について対応するエピトープ(複数可)を同定した。50mM、pH9.6炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム緩衝液中5μg/mLのニュートラアビジン(Pierce、USA)を使用して96ウェルのCorning高結合性EIA/RIAプレートをコーティングした。プレートをTBST緩衝液で3回洗浄し、Superblock(Pierce、USA)を用いてブロッキングした。ビオチン化ペプチド50〜100マイクロリットルを、PBSを用いて2μg/mLまで希釈し、各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートをTBSTで再度洗浄し、PBS/0.2%BSAで希釈したハイブリドーマの上清または精製した抗体(2μg/mL)をプレートに添加した。室温で1時間のインキュベートおよび洗浄ステップの後、HRPとコンジュゲートした二次抗体を適用した。マウスモノクローナル抗体の場合にはヤギ抗マウスIgGまたはFc HRPコンジュゲートを使用し、ウサギポリクローナル検出のためにはヤギ抗ウサギIgG HRPコンジュゲート抗体を使用した。TMBを検出のためのHRP基質として使用した。
非ネイティブ形態のTTRを選択的に認識する抗体について3つの独特のエピトープを同定した(本明細書では表1)。図3には、抗体の、それぞれのペプチドエピトープに対するELISA結合親和性(MFD102についてはペプチドADDTWEPFASGKT、MFD108についてはペプチドTSESGELHGLTTE、およびMFD114についてはペプチドALLSPYSYSTTAV)が例示されている。例えば、マウスモノクローナル抗体MFD102は、ペプチド配列ADDTWEPFASGKTを認識し、下線が引かれているアミノ酸はこのペプチドに独特であり、本発明においてエピトープマッピングのために使用される隣接するペプチドには存在しない。第2の独特の非ネイティブエピトープは、ペプチド配列TSESGELHGLTTEに対応し、これはマウスモノクローナル抗体MFD108により例示される。これらの2つのエピトープは、それぞれTTR構造内のC鎖上およびD鎖上に存在する。C鎖およびD鎖は、その結晶構造に基づいて四量体TTRの表面上に位置し、MFD102およびMFD108の結合挙動により、本発明において同定された特異的な直鎖状エピトープがネイティブTTR構造と比較して異なる構造エピトープを表すことが示唆される。興味深いことに、この領域付近にはL55P TTRなどの多くの有害なTTR変異が存在する(Lashuelら、Biochemistry. 1999年10月12日;38巻(41号):13560〜73頁)。四量体の解離およびオリゴマー形成により、この領域付近でわずかな巻き戻しおよびコンフォメーションの変化が引き起こされ、それにより、これらの直鎖状構造エピトープが、MFD102およびMFD108などの抗体が接近しやすいものになる可能性がある。設計による第3の独特のエピトープはALLSPYSYSTTAVであり、これは、ウサギポリクローナル抗体MFD114によって認識される。ポリクローナル抗体に関して予測される通り、MFD114は、ペプチドALLSPYSYSTTAVと重複したアミノ酸を含有する隣接するペプチドによっても認識される。
さらに、ウサギ抗全TTR抗体、MFD113は、これだけに限定されないが、RGSPAINVAVHVF、ASGKTSESGELHGLTTEEEFV、GPRRYTIAALLSPおよびSTTAVVTNPKEを含めた複数の直鎖状エピトープを認識する。
マウスモノクローナル抗体MFD112は、複数の形態のTTRに同様に高い結合親和性で結合することができることが示されており(図3)、したがって、TTR全抗体であると考えられるが、TTR上の直鎖状エピトープのいずれも認識しないと思われる。
(実施例7)
結合親和性の決定
抗TTR抗体の物理的な結合親和性をELISAによって測定した。一実施形態では、ニュートラアビジン(NeutrAvidin)を使用して、2μg/mLの、目的の抗体の直鎖状の結合性エピトープに対応するビオチン化ペプチドを捕捉し、次いで、それをPBS+0.2%BSA中に段階的に希釈し、検出用抗体としてプレートに添加した。次いで、HRPとコンジュゲートした二次抗体を、酵素基質として使用されるTMBと一緒に使用し、酸性の溶液を用いて停止させた。最後に、450nmにおける吸収を抗体濃度に応じてプロットし、非線形回帰にフィッティングして、各抗体の結合親和性を決定した(図3)。アッセイした3種の抗体の全てで、それらの対応するペプチドエピトープに対してナノモル以下の結合親和性(KD)が示された。
非ネイティブおよび/またはネイティブ形態の変異TTRを検出する抗体の能力を決定するために、様々な変異(V30M、V122I、およびT119M)を有する組換えTTR、ならびに組換え野生型(WT)TTRを実施例2.1に記載の通り中性(pH7)条件または酸性(pH4.3)条件のいずれかの下でインキュベートして、非ネイティブ種の形成を誘導した。T119M置換は本明細書に記載のオリゴマー形成条件下でさえもネイティブ(例えば、四量体)形態のTTRを安定化するように作用するので、T119M TTRを陰性対照として使用した。試料を、本明細書に記載のサンドイッチELISAアッセイに供した(例えば、5.2節を参照されたい)。捕捉用抗体および検出用抗体は、例えば表2に従って選択した。図4Aには、サンドイッチアッセイの結果が示されており、ネイティブな野生型および変異形態のTTRと比較して非ネイティブな野生型および種々の変異形態のTTRが選択的に検出されることが実証されている。
TTR全抗体MFD113の結合親和性を決定するために、変異TTRバリアントおよびWT TTRを2.1節に記載の通り中性(pH7)条件または酸性(pH4.3)条件のいずれかの下でインキュベートして、非ネイティブTTR種の形成を誘導した。グルタルアルデヒドを用いてタンパク質を架橋させ、SDS−PAGEによって分離し、次いで、ニトロセルロースに転写し、MFD113を用いて検出した(図4B)。
別の実施形態では、抗全TTR抗体MFD113(ウサギポリクローナル)およびMFD112(マウスモノクローナル)をそれぞれ捕捉用抗体および検出用抗体として使用したサンドイッチELISA形式を用いた。MFD112の一連の希釈物を使用して、MFD113でコーティングしたELISAプレートに捕捉されたM−TTR、野生型および変異型の四量体TTRタンパク質を検出した。非線形回帰データフィッティングに基づいて、MFD112は試験したTTRバリアントの全てに対してナノモル以下の結合親和性を示した(図5)。
(実施例8)
サンドイッチELISAによるFAP患者の血漿の同定
薬物未投与の症候性V30M TTR家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)患者および年齢を合わせた対照から血漿試料を静脈穿刺により抜き取り、クエン酸ナトリウム/フィコール(Ficoll)(Becton Dickinson#362782)を含有するBD Vacutainer Cell Preparation Tube(CPT)に入れた。チューブを直立させて室温で30〜45分保管し、反転させることによって混合し、次いで、室温、1500RCFで20分遠心分離した。血漿を、単核細胞および血小板層が乱されることが回避されるように慎重に取り出した。血漿を急速冷凍し、−80℃で保管した。盲検式で、血漿試料をサンドイッチELISAによって分析した。
一実施形態では、ELISAプレートを、表2から選択されるTTR捕捉用抗体を用い、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム緩衝液、pH9.6中、4℃で一晩コーティングすることによって調製した。プレートを、Superblock(Pierce)を用いて室温で1時間ブロッキングし、その後、PBS+0.2%BSA(Sigma、Fraction V)中1/10〜1:200の希釈度の血漿試料と一緒に室温で2時間インキュベートした。次いで、ウェルをTBSTで3回洗浄し、その後、表2から選択される抗非ネイティブTTR抗体(例えば、検出用抗体)、0.5マイクログラム/ml(PBS+0.2%BSA中に希釈したもの)と一緒に室温で1時間インキュベートした。次いで、ウェルをTBSTで3回洗浄し、その後、ウサギ抗マウスIgG−HRPコンジュゲート(Pierce、PBS+0.2%BSA中に1:10,000希釈したもの)と一緒に室温で30分インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、TMB(Pierce)を用い、酸による停止および450nmにおける吸収の測定を伴ってシグナルを検出した。
バックグラウンド吸収レベルおよび対応するプレートカットポイントを決定し、吸収がカットポイントを上回る試料を非ネイティブTTRに関して陽性と定義し、FAPキャリアに分類した。この方法により、血漿試料54のうちの20がFAP患者に実験的に分類され、残りの34の血漿試料が年齢を合わせた対照に分類された。試料の非盲検化により、20/20のFAP患者および34/34の年齢を合わせた対照血漿試料が正しく同定されたことが独立に確認された(図6A)。
他の実施形態では、表2に列挙されている捕捉/検出用抗体の種々の組合せを使用して年齢を合わせた対照から症候性患者を同定した。
(実施例9)
サンドイッチELISAによるFAPキャリア血漿の同定
無症候性V30M TTR FAP患者および年齢を合わせた対照から血漿試料を静脈穿刺により抜き取り、クエン酸ナトリウム/フィコール(Ficoll)(Becton Dickinson#362782)を含有するBD Vacutainer Cell Preparation Tube(CPT)に入れた。チューブを直立させて室温で30〜45分保管し、反転させることによって混合し、次いで、室温、1500RCFで20分遠心分離した。血漿を、単核細胞および血小板層が乱されることが回避されるように慎重に取り出した。血漿を急速冷凍し、−80℃で保管した。盲検式で、血漿試料をサンドイッチELISAによって分析した。
一実施形態では、ELISAプレートを、表2から選択されるTTR捕捉用抗体を用い、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム緩衝液、pH9.6中、4℃で一晩コーティングすることによって調製した。プレートを、Superblock(Pierce)を用いて室温で1時間ブロッキングし、その後、PBS+0.2%BSA(Sigma、Fraction V)中1/10〜1:200の希釈度の血漿試料と一緒に室温で2時間インキュベートした。次いで、ウェルをTBSTで3回洗浄し、その後、表2から選択される抗非ネイティブTTR抗体(例えば、検出用抗体)、0.5マイクログラム/ml(PBS+0.2%BSA中に希釈したもの)と一緒に室温で1時間インキュベートした。次いで、ウェルをTBSTで3回洗浄し、その後、ウサギ抗マウスIgG−HRPコンジュゲート(Pierce、PBS+0.2%BSA中に1:10,000希釈したもの)と一緒に室温で30分インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、TMB(Pierce)を用い、酸による停止および450nmにおける吸収の測定を伴ってシグナルを検出した。
バックグラウンド吸収レベルおよび対応するプレートカットポイントを決定し、吸収がカットポイントを上回る試料を非ネイティブTTRに関して陽性と定義し、FAPキャリアに分類した。
この方法により、34の薬物未投与のFAPキャリアで非ネイティブTTRタンパク質のレベルの上昇が示され、非ネイティブTTRシグナルがバックグラウンドレベルである34の年齢を合わせた対照と明白に弁別された(図6B)。
他の実施形態では、表2に列挙されている捕捉/検出用抗体の種々の組合せを使用して、年齢を合わせた対照から無症候性キャリアを同定した。
(実施例10)
サンドイッチELISAによるタファミディス処置された患者の血漿の同定
薬物未投与の症候性V30M TTR FAP患者およびタファミディス(TTRの小分子動力学的安定剤)による処置された症候性V30M TTR FAP患者、ならびに年齢を合わせた対照から血漿試料を静脈穿刺により抜き取り、クエン酸ナトリウム/フィコール(Ficoll)(Becton Dickinson#362782)を含有するBD Vacutainer Cell Preparation Tube(CPT)に入れた。チューブを直立させて室温で30〜45分保管し、反転させることにより混合し、次いで、室温、1500RCFで20分遠心分離した。血漿を、単核細胞および血小板層が乱されることが回避されるように慎重に取り出した。血漿を急速冷凍し、−80℃で保管した。盲検式で、血漿試料をサンドイッチELISAによって分析した。
一実施形態では、ELISAプレートを、表2から選択されるTTR捕捉用抗体を用い、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム緩衝液、pH9.6中、4℃で一晩コーティングすることによって調製した。プレートを、Superblock(Pierce)を用いて室温で1時間ブロッキングし、その後、PBS+0.2%BSA(Sigma、Fraction V)中1/10〜1:200の希釈度の血漿試料と一緒に室温で2時間インキュベートした。次いで、ウェルをTBSTで3回洗浄し、その後、表2から選択される抗非ネイティブTTR抗体(例えば、検出用抗体)、0.5マイクログラム/ml(PBS+0.2%BSA中に希釈したもの)と一緒に室温で1時間インキュベートした。次いで、ウェルをTBSTで3回洗浄し、その後、ウサギ抗マウスIgG−HRPコンジュゲート(Pierce、PBS+0.2%BSA中に1:10,000希釈したもの)と一緒に室温で30分インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、TMB(Pierce)を用い、酸による停止および450nmにおける吸収の測定を伴ってシグナルを検出した。
図7には、薬物未投与の症候性FAP患者(N=20)、タファミディス処置されたFAP患者(N=20)および年齢を合わせた対照(N=34)からの血漿試料における非ネイティブTTRを検出するためのサンドイッチELISAの結果が示されている。図7に示されているように、タファミディス処置されたFAP患者由来の血清の非ネイティブTTRシグナルは未処置の症候性FAP患者のものよりも有意に低く、これにより、動力学的安定剤としてのタファミディスによるTTR構造の薬力学的安定化が示される。
他の実施形態では、表2に列挙されている捕捉/検出用抗体の種々の組合せを使用して、タファミディス処置の前後のFAP患者を弁別した。
(実施例11)
他の点では健康な血液ドナー由来の血漿試料における、TTRアミロイドーシスを発生させる危険性がある個体の同定
家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)または老人性全身性アミロイドーシス(SSA)を早期診断するための現行の方法は存在しない。図8には、50歳およびそれより高齢の、見たところでは健康なドナー50名からの血漿試料における非ネイティブTTRを検出するための本明細書に記載の通り実施されたサンドイッチELISAアッセイの結果が示されている。試料50のうち3が非ネイティブTTRに関して陽性である。当該アッセイを使用して陽性シグナルを示すドナーは、TTRアミロイドーシスを発生する危険性が高いまたはそのような疾患のキャリアであると考えられると仮定される。
図9には、症候性心筋症患者65名において非ネイティブTTRを検出するために本明細書に記載の通り実施された別のサンドイッチELISAアッセイの結果が示されている。数名の患者で検出可能なレベルの非ネイティブTTRが示された。そのような検出を使用して、TTRに関連しない心筋症に対するFACの診断を支持することができる。
(実施例12)
例示的な非ネイティブTTR選択的抗体のさらなる特徴付け
非ネイティブTTR選択的抗体MFD108およびMFD114をさらに特徴付けるために、組換え単量体TTR(M−TTR)を酸性条件下で(pH4.3、37℃で24時間)インキュベートして、非ネイティブTTR種の形成を誘導した。組換え野生型(WT)TTRをネイティブTTR対照試料として使用した。試料200ngをSDS−PAGE変性条件(Novex NuPAGE Bis−Tris、Invitrogen)またはネイティブPAGE条件(Novex NativePAGE、Invitrogen)に供した。変性条件に関しては、試料をNuPAGE還元(DTT)LDS緩衝液中で調製し、70℃で10分加熱することによって変性させた。変性した試料をNovex NuPAGE 4〜12%Bis−Trisゲルに流した。電気泳動した後、ゲルを、コロイド状クーマシーで染色するか、またはウエスタンブロット法のためにニトロセルロースに転写した。ネイティブPAGE条件に関しては、試料をNativePAGE試料緩衝液(非変性、界面活性剤を伴わない)中に調製した。非変性試料をNovex NativePAGE 4〜12%Bis−Trisゲル上で分離した。電気泳動した後、ゲルをPVDF膜に転写した。ブロットを、MFD108抗体またはMFD114抗体のいずれか(0.5mg/ml)を用いてプローブし、その後、APとコンジュゲートした二次抗体を使用して検出し、BCIP/NBTによって可視化した。
図10には、非ネイティブM−TTRおよびネイティブWT TTRのコロイド状クーマシー染色、ならびに対応する、MFD108抗体を使用した、変性PAGE条件下およびネイティブPAGE条件下のそれぞれでのウエスタンブロットが示されている。クーマシーゲルにより、変性後のM−TTRが主に単量体であること、およびWT−TTRが変性に対して抵抗性であり、主に四量体であることが実証されている。対応するMFD108のウエスタンブロットにより、MFD108が四量体TTRに対して単量体TTRを選択的に認識することが実証されている。ネイティブPAGEゲルではM−TTRレーンに高分子量のスメアが示され、これにより、非変性PAGE条件下ではオリゴマー形成したTTRが維持されること、およびMFD108はオリゴマーTTRと単量体TTRのどちらも認識するが(WTレーンの約14kDのバンド)、四量体TTRの認識は不十分であることが示される。
図11には、非ネイティブM−TTRおよびネイティブWT TTRのコロイド状クーマシー染色、ならびに対応する、MFD114抗体を使用した、変性PAGE条件下およびネイティブPAGE条件下のそれぞれでのウエスタンブロットが示されている。クーマシーゲルにより、変性後のM−TTRが主に単量体であること、およびWT−TTRが変性に対して抵抗性であり、主に四量体であることが実証されている。対応するMFD114のウエスタンブロットにより、MFD114が四量体TTRに対して単量体TTRを選択的に認識することが実証されている。ネイティブPAGEゲルではM−TTRレーンに高分子量のスメアが示され、これにより、非変性PAGE条件下では、オリゴマー形成したTTRが維持されること、およびMFD114はオリゴマーTTRと単量体TTRの両方を認識するが(WTレーンの約14kDのバンド)、四量体TTRの認識は不十分であることが示される。MFD114は、二量体形態のミスフォールディングされたTTRに対応する可能性がある28kDから39kDの間のマーカーの種も認識する。
(実施例13)
TTRアミロイドーシスによって引き起こされる心筋症の診断
老人性全身性アミロイドーシスは、多くの場合、他のアミロイドーシス、例えば、原発性免疫グロブリン軽鎖アミロイドーシス(AL)に共有される症状および組織学的特質を示し、臨床症状(心エコー所見など)が非常に類似している。これらの疾患の診断の補助に現在使用されている他のバイオマーカーは非特異的であり、多くの異なる生理的事象および病理学的事象がバイオマーカーのレベルに影響を及ぼす可能性がある。SSAまたはALを有すると考えられる患者を含めた症候性心筋症患者65名から血清試料を採取した。試料を、本明細書に記載の通りサンドイッチELISAを使用して非ネイティブTTRについてアッセイした。図9には、症候性心筋症患者65名の結果が示されており、点線はプレートカットポイントを表す。非ネイティブTTRレベルがプレートカットポイントを上回る患者は、このアッセイにおける陽性とみなされ、TTRアミロイドーシスによって引き起こされる心筋症を有することが予測される。AL患者の多くは、誤診された可能性があるSSA(もしくはFAC)患者である、またはTTRアミロイドーシスの影響を同時に受けていると考えられる。診断アッセイを検証するために、追加的な精選されたSSA試料およびAL試料が試験されている。
(実施例14)
V30M変異以外のTTR変異を有するヒト対象における非ネイティブTTRの検出。
TTR関連アミロイドーシスは、いくつものTTR変異に関連する。V30M変異およびV122I変異が一般にTTR関連アミロイドーシスに関連付けられているが、他の稀な変異(これだけに限定されないが、本明細書に記載の変異を含めた)が、例えば、心筋症および多発ニューロパチーに関連するアミロイドーシスに関連する。主題の抗体により、稀なTTR変異を有する対象における非ネイティブTTRが検出されるかどうかを決定するために、E89Q TTR変異に関してヘテロ接合性であり、TTR動力学的安定剤を用いた処置を受けている61歳の女性の心筋症患者(n=1)、T60A変異に関してヘテロ接合性であり、TTR動力学的安定剤を用いた処置を受けている57歳の男性の心筋症患者(n=1)、T59K変異に関してヘテロ接合性である55歳の女性の心筋症患者(n=1)、V30G変異に関してヘテロ接合性であり、TTR動力学的安定剤を用いた処置を受けている53歳の女性の心筋症患者(n=1)、および年齢を合わせた対照の対象(n=10、男性5名、女性5名)から血漿試料を採取した。試料を採取し、本明細書に記載の通り非ネイティブTTRについてアッセイした(例えば、実施例10を参照されたい)。図12には、非ネイティブTTRアッセイの結果が示されている。全ての変異が、年齢を合わせた対照の対象と比較して非ネイティブTTRシグナルの増加に関連し、これにより、主題の抗体により非ネイティブ形態の稀な変異TTRを検出することができることが示される。
(実施例14)
FAP患者における非ネイティブTTRに対するタファミディスの効果
タファミディスは、TTRの小分子動力学的安定剤である。ヘテロ接合性V30M FAP患者における非ネイティブTTRに対するタファミディス投与の効果を決定するために、対象にタファミディスを1日当たり20mg、6ヶ月間投与した。FAP患者から処置前、3ヶ月間タファミディス処置した後、および6ヶ月間タファミディス処置した後に血漿を採取した。試料を採取し、本明細書に記載の通り非ネイティブTTRについてアッセイした(例えば、実施例10を参照されたい)。非ネイティブTTRレベルを、非ネイティブTTR標準曲線と比較することによって決定した(データは示していない)。非ネイティブTTR標準物質を実施例2.1に記載の通り調製した。図13Aには、アッセイの結果が示されている。対象は、タファミディス処置の前には変動する非ネイティブTTRのレベルを示した。処置を受けて3ヶ月までに、対象4、19、56、および77で処置前レベルと比較してネイティブTTRのレベルの低下が示された。対照的に、処置を受けて3ヶ月までに、対象62および81では処置前レベルと比較して同様の非ネイティブTTRのレベルまたはその上昇が示された。処置を受けて6ヶ月までに、処置を受けた患者の全てで処置前レベルと比較して非ネイティブTTRレベルの低下が示された。
別の試験において、タファミディス処置前の症候性ヘテロ接合性V30M FAP患者56名、ならびに無症候性キャリアにおける非ネイティブTTRレベルを評価した。患者にタファミディスを1日当たり20mg投与した。同じ患者において、処置の3ヶ月後、6ヶ月後または12ヶ月後の時点で非ネイティブTTRレベルを評価した。さらに、追加的な患者20名を、1日当たり20mgのタファミディスを用いて24ヶ月超処置した(例えば、長期処置群)。図13Bに試験の結果が示されている。V30M対象(無症候性、症候性、およびタファミディス処置を受けた)の全てで検出可能なレベルの非ネイティブTTRが示されたが、年齢を合わせた対照では検出可能なレベルの非ネイティブTTRは示されなかった。これらの結果により、本明細書に記載の非ネイティブTTRアッセイがFAP患者の早期同定のために(例えば、無症候性FAP患者の早期同定のために)有用であることが示されている。さらに、症候性FAP患者では、無症候性キャリアと比較して非ネイティブTTRレベルの顕著な上昇が示された。これらの結果により、非ネイティブTTRアッセイを使用して、症候性患者群と無症候性患者群を生化学的に弁別できることが示されている。さらに、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、または24ヶ月超にわたってタファミディスを用いて処置された患者では、非ネイティブTTRレベルの低下が示され、長期処置群で非ネイティブTTRレベルの最大の低下が示された。このデータにより、非ネイティブTTRアッセイを使用して、TTR薬物処置に対する応答をモニターすることができることが示されている。
(実施例15)
非ネイティブTTRについての化学発光アッセイ
薬物未投与、症候性の男性および女性のヘテロ接合性V30M TTR FAP患者(N=20)および年齢を合わせた対照(N=12)から血漿試料を静脈穿刺により抜き取り、クエン酸ナトリウム/フィコール(Ficoll)(Becton Dickinson#362782)を含有するBD Vacutainer Cell Preparation Tube(CPT)に入れた。チューブを直立させて室温で30〜45分保管し、反転させることによって混合し、次いで、室温、1500RCFで20分遠心分離した。血漿を、単核細胞および血小板層が乱されることが回避されるように慎重に取り出した。血漿を急速冷凍し、−80℃で保管した。盲検式で、血漿試料をサンドイッチELISAによって分析した。
ELISAプレートを、表2から選択されるTTR捕捉用抗体を用い、炭酸ナトリウム/炭酸水素ナトリウム緩衝液、pH9.6中、4℃で一晩コーティングすることによって調製した。プレートを、Superblock(Pierce)中に1/20希釈した血漿(プールされた正常なヒトの血漿、Innovative Research)を用い、室温で1時間ブロッキングし、その後、TBS中1/20希釈の血漿試料と一緒に室温で2時間インキュベートした。次いで、ウェルをTBSTで3回洗浄し、その後、表2から選択されるビオチン化抗非ネイティブTTR抗体(例えば、検出用抗体)、0.5マイクログラム/ml(Superblock+0.05%Tween−20中に希釈したもの)と一緒に室温で1時間インキュベートした。次いで、ウェルをTBSTで3回洗浄し、その後、ストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(Invitrogen、Superblock+0.05%Tween−20中に1/5,000希釈したもの)と一緒に室温で30分インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、SuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce)を用いてシグナルを検出し、FlexStation 3マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて発光シグナルを検出した。血漿試料における非ネイティブTTRレベルを組換え非ネイティブTTR標準曲線から決定した(図14、パネルA)。
図14には、化学発光検出を用いた非ネイティブTTRアッセイの結果が示されている。パネルAには、非ネイティブTTR標準曲線から生成した発光読み取りが示されており、これにより、試料1ml当たりナノグラム未満から10マイクログラム超までの量の非ネイティブTTRが検出されることが実証されている。パネルBには、V30M対象の非ネイティブTTRと、それに対して年齢を合わせた対照の非ネイティブTTRの定量化が示されている。V30M FAP患者では、年齢を合わせた対照よりも有意に高い非ネイティブTTRレベルが示された(スチューデントのt検定、p<0.001)。
本発明の好ましい実施形態が本明細書において示され、記載されているが、そのような実施形態は単に例として提示されていることは当業者には明白であろう。当業者は、本発明から逸脱することなく多数の変形、変化および置換をすぐに思いつくであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する種々の代替を本発明の実施において使用することができることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲に本発明の範囲が定義されること、およびこれらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物がそれにより包含されることが意図されている。