JP7360142B2 - アミロイドーシス治療薬の新規スクリーニング方法 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 平成30年12月17日、日本学術振興会 科学研究費助成事業における、「FAPの次世代型複合的免疫療法によるアミロイド掃討作戦」と題する研究課題についての2017年度の実績報告書において発表
本発明は、アミロイドーシス治療薬の新規なスクリーニング方法に関する。本発明はまた、アミロイドーシスの治療のための医薬組成物に関する。
アミロイドーシスは、局所または全身の臓器における、様々な種類のタンパク質に由来する不溶性アミロイド線維の細胞外沈着を特徴とする遺伝性または後天性難治性疾患である。今日までに、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、全身性免疫グロブリン軽鎖アミロイドーシス、全身性トランスサイレチン(ATTR)アミロイドーシスなどのアミロイド関連疾患の原因分子として36種類以上のアミロイド形成タンパク質が同定されている。加齢、遺伝子変異、炎症、及び腫瘍性疾患は、疾患特異的アミロイド関連タンパク質の過剰産生、ミスフォールディング、及びクリアランスの低下、ならびにタンパク質分解を介してこれらのアミロイドーシスの発症に影響していると報告されている。しかし、これらの病気の詳細な病理学的メカニズムはまだ判っておらず、病気の原因となる組織のアミロイド線維を破壊するような治療法もない。
トランスサイレチン(TTR)は主要なアミロイド形成タンパク質である。TTR は、シグナルペプチドである20個のアミノ酸を含む147個のアミノ酸からなるタンパク質として主に肝臓で産生され、細胞外に分泌される前にシグナルペプチドは切断される。127個のアミノ酸で構成される血清蛋白質として、血流中では二量体-二量体配置をもつホモ四量体を形成する。血中のTTR は四量体を形成し甲状腺ホルモン(T4)などの運搬に関与している。TTR は、組織内に病原性アミロイド沈着物を形成し、2つの主要なタイプの難治性全身性ATTRアミロイドーシスを引き起こす。
1つは、家族性アミロイドポリニューロパチーとして知られている、まれな遺伝性TTR (ATTRm)アミロイドーシスである。そのほとんどが高度にアミロイド形成性であり、TTR 遺伝子において140を超える異なる点突然変異が同定されている。これらの変異のうち、世界的に、ATTR Val30Met(p.Val50Met)が最も一般的な ATTRmアミロイドーシスの遺伝子型である。ATTR Val30Met(p.Val50Met)アミロイドーシスをもつ患者は、感覚運動性多発ニューロパチー、自律神経機能障害、心不全、及び他の全身症状を有し、それらが治療されない場合、通常、発症から10年以内に死亡する。
もう一つのタイプの ATTRアミロイドーシスは、以前は老人性全身性アミロイドーシスとして知られていた野生型(WT)TTR(ATTRwt)アミロイドーシスであり、今後ますます注目される。ATTRwtアミロイドーシスは、肝臓から分泌される野生型TTR によって引き起こされる非遺伝性の加齢に伴う全身性アミロイドーシスであり、高齢患者における心不全及び両側手根管症候群に関連することがよくある。ATTRwtアミロイドーシスの病理学的メカニズムはほとんど不明のままであり、ATTRwtアミロイドーシスのための具体的な疾患適用療法はない。
肝臓移植は、ATTRmアミロイドーシスを治療するために利用されてきた治療法であり、肝臓で合成される不安定な変異型 TTR を、血流中に見られるより安定な野生型 TTR で置き換えるものである。しかしながら、移植された肝臓移植片によって合成された野生型 TTR は、肝臓移植後でさえもある種の患者においてはアミロイド沈着物を形成し続けたと報告されている。TTR の酸誘導変性を用いたインビトロ研究で、TTR の四量体構造の単量体への解離が TTR アミロイド形成の初期段階における重要なステップであり得ることが示唆され、TTR の四量体が単量体へと解離することがアミロイド形成過程に重要であると考えられている。そして、突然変異型 TTR の四量体構造の不安定性は、遺伝性の ATTR アミロイドーシスにおいて極めて重要であると理解されている。そのため、アミロイドーシスの治療薬として四量体の安定化剤が開発されてきた。いくつかの治療化合物、例えば、ジフルニサル、タファミジス、AG10、及びトルカポンは、四量体 TTR 構造を安定化することが知られている。さらに、肝臓による TTR 発現を減少させるための遺伝子サイレンシング療法が開発されている。しかし、ATTR アミロイドーシスの原因となるアミロイド線維を直接崩壊させる治療法はまだない。また、TTR 四量体の解離後の TTR アミロイド線維形成に直接関連する後期の事象における詳細なメカニズムは完全にはわかっていない。
TTR のVal30Met(p.Val50Met)変異を有する早期発症患者を除くほとんどの ATTRm アミロイドーシス患者及び ATTRwt アミロイドーシスを有するすべての患者において、TTR のC末端フラグメントがアミロイド含有組織に頻繁に発生することがよく報告されている。TTR セグメントの短いペプチド及びトリプシン処理 TTR フラグメントのインビトロ研究から、TTR のC末端領域が TTR アミロイド形成において重要な役割を果たす可能性のあることが提唱されている。しかし、TTR 断片化の詳細な病理学的機序及び ATTR アミロイドーシスにおける TTR のC末端フラグメントの臨床病理学的影響は依然として明らかにされていない。
従来、アミドイドーシスの治療薬の探索に用いられてきたインビトロスクリーニング系は、全長 TTR を使用したインビトロ実験モデルであり、そこでは、低pHバッファーにより蛋白質の変性を惹起していた(非特許文献1:Laiら、Biochemistry, 1996, 35(20),6470-6482、及び非特許文献2:Bauresら、Bioorg Med Chem, 1998, 6:1389-1401)。そのため、生体内で生じている病態と乖離があるものであった。そこで、より生体内における病態に近いスクリーニング系が求められていた。
Zhihong Laiら、Biochemistry, 1996, 35(20), pp 6470-6482 Bauresら、Bioorg Med Chem, 1998, 6:1389-1401
本発明は、アミロイドーシスの治療薬の探索に用いることができる新規なスクリーニング方法を提供することを目的とする。より具体的には、従来のスクリーニング系に比べ、生体内における病態により近いスクリーニング系を提供することを目的とする。
本発明者らは、全長トランスサイレチン(TTR) 凝集体が培養神経細胞及びグリア細胞においてC末端断片に切断されること、そして、TTR の5-kDa のC末端断片である TTR81-127(p.101-147)が試験管中及び培養細胞表面で、中性pHでも高度にアミロイド形成性であることを見いだし、本発明を完成した。本発明の一つの態様は、アミロイド原性の高い TTR81-127(p.101-147)を用いた、インビトロでのアミロイドーシスの治療薬の探索に用いることができるスクリーニング方法である。本発明の別の一つの態様は、アミロイド原性の高い TTR81-127(p.101-147)を用いた、細胞ベースのアミロイドーシスの治療薬の探索に用いることができるスクリーニング方法である。本発明の他の一つの態様は、該スクリーニング方法を用いたアミドイドーシスの治療薬のハイスループットスクリーニング(HTS)法である。本発明は、以下の態様を含む。
[1]アミロイド線維形成を抑制する物質をスクリーニングする方法であって、
(a)凝集していない状態のトランスサイレチンのフラグメントであって、
(i) トランスサイレチンの81番目から127番目の配列(配列番号2に記載のアミノ酸配列)、
(ii) 配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1~10個(好ましくは1~5個、さらに好ましくは1又は数個)のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ配列、及び
(iii) 配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して85%(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)の同一性を有するアミノ酸配列、
からなる群より選ばれるいずれか一つ配列からなるフラグメント及び試験物質を中性の緩衝液に溶解する工程、
(b)形成されたアミロイド線維を検出する工程、及び
(c)試験物質を添加しなかった対照に比べてアミロイド線維形成が抑制された場合に、前記試験物質を、アミロイド形成を抑制する物質として選択する工程、
を含むスクリーニング方法。
[2]前記工程(b)におけるアミロイド線維の検出は、チオフラビン蛍光法、Congo Redを用いた染色、FSB(1-Fluoro-2,5-bis(3-carboxy-4-hydroxystyryl)benzene)を用いた染色、及びアミロイド線維を認識する抗体を用いたELISAからなる群のいずれか一つにより行われる上記[1]に記載のスクリーニング方法。
[3]前記 フラグメントが、フラグメントのC末端に付加された、GFP、EGFP、rsGFP、YFP、CFP、BFP及びウミシイタケ由来のGFPからなる群から選択されるいずれか一つの標識物質で標識されており、前記工程(b)におけるアミロイド線維の検出は該標識の蛍光強度を検出することにより行われる上記[1]に記載のスクリーニング方法。
[4]細胞ベースのアミロイド線維形成を抑制する物質をスクリーニングする方法であって、
(i)培地中で細胞を培養する工程、
(ii)凝集していない状態のトランスサイレチンのフラグメントであって、
(i) トランスサイレチンの81番目から127番目の配列(配列番号2に記載のアミノ酸配列)、
(ii) 配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1~10個(好ましくは1~5個、さらに好ましくは1又は数個)のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ配列、及び
(iii) 配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して85%(好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上)の同一性を有するアミノ酸配列、
からなる群より選ばれるいずれか一つ配列からなるフラグメント及び試験物質を培地に添加し溶解して、前記細胞に接触させる工程、
(iii)前記培養細胞表面で形成されたアミロイド線維を検出する工程、及び
(iv)試験物質を添加しなかった対照に比べてアミロイド線維形成が抑制された場合に、前記試験物質を、アミロイド形成を抑制する物質として選択する工程、
を含むスクリーニング方法。
[5]前記工程(iii)におけるアミロイド線維の検出は、チオフラビン蛍光法、Congo Redを用いた染色、及びFSBを用いた染色からなる群から選ばれるいずれか一つの方法により行われる上記[4]に記載のスクリーニング方法。
[6]前記フラグメントが、フラグメントのC末端に付加された、GFP、EGFP、rsGFP、YFP、CFP、BFP及びウミシイタケ由来のGFPからなる群から選択されるいずれか一つの標識物質で標識されており、前記工程(iii)におけるアミロイド線維の検出は該標識の蛍光強度を検出することにより行われる上記[4]に記載のスクリーニング方法。
[7]前記工程(iii)におけるアミロイド線維の検出は、アミロイド線維を認識する抗体を用いた細胞ベースELISAにより行なわれる上記[4]に記載のスクリーニング方法。
[8]前記細胞が、グロメテル細胞、線維芽細胞、及び SH-SY5Y細胞からなる群より選ばれる細胞である上記[4]~[7]のいずれか一つに記載のスクリーニング方法。
[9] ハイスループットスクリーニング分析法の一部である、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の方法。
[10]ピルビニウム、アポモルフィン、及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物を有効成分として含むアミロイドーシスを治療するための医薬組成物。
[11]ピルビニウムパモ酸塩を有効成分として含む上記[10]に記載の医薬組成物。
[12]アポモルフィン塩酸塩を有効成分として含む上記[10]に記載の医薬組成物。
[13]アミロイドーシスを罹患した患者に、治療有効量のピルビニウム、アポモルフィン、及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群より選ばれるいずれか一つの化合物を投与することを特徴とするアミロイドーシスの治療方法。
[14]前記化合物がピルビニウムパモ酸塩である上記[13]に記載の治療方法。
[15]前記化合物がアポモルフィン塩酸塩である上記[13]に記載の治療方法。
本発明により、アミロイドーシスの治療薬の探索に用いることができる新規なスクリーニング方法が提供された。
全長 TTR1-127(p.21-147)と TTR81-127(p.101-147)を連結した融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。下線のENLYFQは、TEVプロテアーゼの認識配列を示す。 全長 TTR1-127(p.21-147)と TTR81-127(p.101-147)を連結した融合タンパク質のDNA配列を示す。下線のGAAAACCTGTATTTCCAGは、TEVプロテアーゼの認識配列を示す。 図3Aは、未処理及び酸誘導凝集体の全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)でSH-SY 5Y神経細胞を処理した結果である。図3Bは、酸誘導凝集体の全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)でU87MG細胞を処理した結果である。 酸誘導凝集体の全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)でト血管平滑筋様グロモテル細胞、ヒト肝癌HepG2細胞、及びヒト網膜色素上皮ARPE-19細胞を処理した結果である。 5-kDa及び10-kDaフラグメントが由来するTTRの配列の位置を示した図である。 試験管内で組換え全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)の酸誘導凝集体をトリプシンで切断した後に、SDS-PAGEを行った結果である。 図7Aは、ATTRmアミロイドーシス患者からの硝子体 TTRアミロイド線維の成分をSDS-PAGE-免疫ブロティングで分析した結果である。図7Bは、ATTRmアミロイドーシス患者(Pt1)からの硝子体 TTRアミロイド線維をトリプシンで切断したのちSDS-PAGE-免疫ブロティングで分析した結果である。 中性pH、37℃にて、PBS中で、TTR及び TTRフラグメントを用い、インビトロでの凝集体又はアミロイド形成能を調べた結果である。図Aは TTR81-127(p.101-147)フラグメント、図Bは TTR49-127(p.69-147)フラグメント、図Cは全長野生型 TTR、図Dは全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)の結果である。なお、TTR1-80(p.21-100)フラグメントは凝集体もアミロイド線維も形成しなかったので、図示していない。バーは、200 nmを示す。 グロモテル細胞中に形成されたアミロイド沈着物をCongo Red染色で検出した結果である。右図は、偏光顕微鏡で確認した結果である。バーは、200 μmを示す。 中性pH、37℃にて、PBS中で、TTR及び TTRフラグメントを用い、インビトロで、凝集体又はアミロイドを形成させ、オフラビンT(ThT)蛍光アッセイを行った結果である。 Aは、中性pH、37℃にて、PBS中で、TTR81-127(p.101-147)が四量体を形成しているかを確認した結果である。Bは、経時的変化を確認した結果である。 細胞ベースのFSB分析及び細胞ベースのELISA分析の概略である。 グロメテル細胞を用いた細胞ベースのFSB分析及び細胞ベースのELISA分析により、TTR81-127(p.101-147)沈着物を測定した結果である。 Aは、TTR81-127(p.101-147)に対する抗血清を用いた細胞ベースELISAにより、培養細胞中の TTR81-127(p.101-147)沈着物の量を定量的に分析した結果である。Bは、本発明のスクリーニング法の質を評価した結果である。 本発明のスクリーニング法を用い、酸性pHにて全長 TTRを用いる従来の評価方法で TTR凝集を阻害する又は TTRの四量体構造を安定化させると報告されている化合物を検討した結果である。 本発明のスクリーニング法を用いて選択された28種類の化合物について、中性pHで、TTR81-127(p.101-147)のアミロイド形成を阻害するか否かを検討した結果である。 本発明のスクリーニング法を用いて選択された2つの化合物、ピルビニウムパモ酸塩及び塩酸アポモルヒネについて、アミロイド形成抑制を確認した結果である。Aは、細胞ベースFSBアッセイの概略を示している。Bは、細胞FSBアッセイにおけるピルビニウムパモ酸塩のアミロイド形成抑制効果を、Cは、細胞FSBアッセイにおける塩酸アポモルヒネのアミロイド抑制効果を確認した結果であり、D~Eは、培養細胞をFSBで染色した結果を示している。 予め形成された TTR81-127(p.101-147)のアミロイド線維を用いてアミロイド線維の破壊活性を測定した結果である。上段は、予め形成した TTR81-127(p.101-147)のアミロイド線維を用いた結果であり、後段は患者からの心臓アミロイド線維を用いた結果である。バーは、200 μmである。 尿素変性に対する TTR四量体の安定性に対する化合物の効果を評価した結果である。SDS-PAGEで分析した後、四量体の定量を行いグラフとして示した結果である。上段は、全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)を用いた結果、下段は、患者血漿中の TTRを用いた結果である。 Aは、全長 TTRの自然の四量体構造からの TTRアミロイド線維形成の仮説モデルを、Bは、TTR81-127(p.101-147)フラグメントを用いた本発明の方法を示す実験モデル及び標的を示している。 ピルビニウムパモ酸塩及び塩酸アポモルヒネについて、Aβ42 及びAβ40 のアミロイド線維形成阻害効果を確認した結果である。*P < 0.05, **P < 0.005, ***P < 0.001。
以下、本発明を、例示的な実施態様を例として、本発明の実施において使用することができる好ましい方法及び材料とともに説明するが、本発明は以下に記載の態様に限定されるものではない。なお、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。また、本明細書に記載されたものと同等又は同様の任意の材料及び方法は、本発明の実施において同様に使用することができる。また、本明細書に記載された発明に関連して本明細書中で引用されるすべての刊行物及び特許は、例えば、本発明で使用できる方法や材料その他を示すものとして、本明細書の一部を構成するものである。
本明細書中で、「X~Y」という表現を用いた場合は、下限としてXを上限としてYを含む意味で、或いは上限としてXを下限としてYを含む意味で用いる。
本発明は、アミロイド線維形成を抑制する物質を検出するための方法に関し、該方法は、ハイスループットスクリーニング法及び/又は自動化スクリーニング法での使用に容易に適用することができる。
本発明のスクリーニング方法においては、アミロイド線維を形成するトランスサイレチンとして、配列番号1で示される全長トランスサイレチン(TTR21-127(p.21-147))ではなく、トランスサイレチンの81番目から127番目の配列(配列番号2で表されるアミノ酸配列)からなるフラグメント(TTR81-127(p.101-147)フラグメント)用いることを特徴とする。従来、インビトロにてアミロイド線維形成を検出する方法として、全長 TTRを用いて酸変性を行い、TTRの酸変性の間及び酸変性した TTRのリホールディング中に観察されるアミロイド線維形成を指標としていた(非特許文献1及び2)。それに対し、本発明者らが見いだした方法により調製された TTR81-127(p.101-147)フラグメントは、中性又はその付近においてアミロイド線維形成が観察されるので、より生体内の近い状態でのアミロイド線維形成を検出できるという特徴をもつ。全長 TTRは、中性領域では、4量体を形成し、4量体 TTRはアミロイド線維を形成しない。一方、本発明により提供される TTR81-127(p.101-147)フラグメントは、中性領域でアミロイド線維形成を起こすことができる。
本発明のスクリーニング方法で用いることができるトランスサイレチンのフラグメントは、
(i) トランスサイレチンの81番目から127番目の配列である配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるフラグメント、
(ii) 配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1~10個、好ましくは1~5個、さらに好ましくは1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ配列からなるフラグメント、又は
(iii) 配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して85%、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるフラグメント、
である。
上記フラグメント(i)~(iii)は、中性の溶液に溶解可能であり、時間経過によりアミロイド線維を形成するという特徴を有する。これに限定される訳ではないが、上記フラグメントは、PBS又は細胞培養液に溶解し、37 ℃で静置又はインキュベートした場合、例えば、数時間~1日程度でアミロイド線維を形成する。
以下、上記フラグメント(i)を例に、本発明のスクリーニング方法を説明するが、上記フラグメント(ii)又は(iii)にも同様に適用できる。
スクリーニング方法-1
本発明のスクリーニング方法の一つの態様は、アミロイド線維形成を抑制する物質をスクリーニングする方法であって、以下の工程(a)~(c)を含む方法である。
工程(a):
工程(a)は、トランスサイレチンの81番目から127番目の配列(配列番号2で表されるアミノ酸配列)からなるフラグメント(以下、TTR81-127(p.101-147)フラグメントという場合がある)を中性の緩衝液に溶解する工程である。この際、アミロイド線維形成に影響を及ぼす物質を探索又は検討したい場合は、かかる物質(以下、試験物質という)を TTR81-127(p.101-147)フラグメントとともに緩衝液に添加する。試験物質と TTR81-127(p.101-147)フラグメントの添加は、2つを同時に添加火しても、あるいは一方を先に加えて他方を後に添加してもよく、実験系及び試験目的に応じて、適宜選択できる。
用いる TTR81-127(p.101-147)フラグメントは、凝集していない状態で保存されているものを用いる。例えば、これに限定されないが、凍結乾燥された状態、PBSの緩衝液に溶解して凍結された状態、又は、凝集を起こさない溶媒中、例えば、低濃度のアンモニア溶液中に溶解して凍結された状態で保存されているものを用いる。TTR81-127(p.101-147)フラグメントは、工程(a)において緩衝液に添加し、37 ℃にて静置すると時間経過とともに凝集が始まる。
用いる緩衝液は、本発明の測定系において影響が少なく、アミドロイド線維形成への影響が無視できる緩衝液であり、中性の緩衝液であれば特に制限なく用いることができる。「中性」とは、中性又は中性領域であればよく、pHは、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.5~7.5、さらに好ましくは6.8~7.2である。本発明において用いることができる緩衝液は、これに制限されないが、例えば、リン酸緩衝液(PBS)、Tris緩衝液、Bis-Tris緩衝液、HEPES緩衝液、NES緩衝液、ADA緩衝液、PIPES緩衝液、MOPS緩衝液、MOPSO緩衝液、TES緩衝液をあげることができる。
工程(b)
工程(b)は、緩衝液中で形成されたアミロイド線維を検出するステップである。アミロイド線維を検出できる方法であれば特に制限なく用いることができる。例えば、抗体を用いた検出、アミロイド線維を特異的に標識する試薬を用いた検出、フラグメントに結合した標識物質の検出をあげることができる。
抗体は、例えば、TTRのアミロイド線維を認識する抗体を用いることができる。アミロイド線維を認識する抗体については、多くの報告があり、また市販もされている。これらを適宜選択して用いることができる。抗体は、抗血清としてポリクローナル抗体を用いてもよく、また、モノクローナル抗体を用いてもよい。抗体を用い、例えば、ELISAによりアミロイド線維の形成を検出できる。
アミロイド線維を特異的に標識する試薬を用いた検出法としては、これに限定されないが、例えば、チオフラビン蛍光法、Congo Redを用いた染色、FSB(1-Fluoro-2,5-bis(3-carboxy-4-hydroxystyryl)benzene)を用いた染色をあげることができる。アミロイドを標識できる染色用試薬や蛍光試薬が種々市販されているので、これらを適宜選択して用いることができる。
フラグメントに結合した標識物質の検出における標識物質は、これに限定されないが、例えば、放射性標識物質、蛍光標識物質を用いることができ、好ましくは蛍光標識物質である。蛍光標識物質としては、これに限定されないが、例えば、GFP、EGFP、rsGFP、YFP、CFP、BFP及びウミシイタケ由来のGFPをあげることができ、これらの蛍光標識物質を、例えば、TTR81-127(p.101-147)フラグメントのC末端に結合して用いることができる。標識物質のシグナルを検出することにより、アミロイド線維の形成を検出できる。
上記の検出法は、ハイスループットスクリーニング法や自動化スクリーニング法に容易に組み込むことが可能である。
工程(c)
工程(c)は、工程(b)において検出したアミロイド線維形成が、対照(試験物質を添加していない場合に検出されるアミロイド線維形成)と比較した場合に、線維形成が抑制された場合は、試験物質はアミロイド線維形成を抑制する物質であると判断する工程である。
上記工程(a)~工程(c)を含むスクリーンニング方法により、アミロイド線維形成を抑制する物質を効率良くスクリーニングすることができる。
スクリーニング方法-2
本発明のスクリーニング方法の別の一つの態様は、アミロイド線維形成を抑制する物質をスクリーニングするための細胞ベースのスクリーニング方法であって、以下の工程(i)~(iv)を含む方法である。
工程(i):
工程(i)は、培地中で細胞を培養する工程である。細胞は、本発明で用いる TTR81-127(p.101-147)フラグメントから形成されるアミロイド線維が細胞表面で沈着する細胞であればいずれの細胞を用いることができるが、例えば、グロメテル細胞、線維芽細胞、SH-SY 5Y細胞をあげることができ、好ましくはグロメテル細胞である。アミロイド線維は、主として細胞の表面に沈着するが、一部が細胞内に沈着してもよい。
工程(i)で用いる培地は、本発明で用いる細胞の培養に用いることができる培地であれば制限なく用いることができ、一般に用いられている動物細胞培養用の培地を用いることができる。例えば、これに制限されないが、Opti-MEM培地、DMEM培地、DMEM/F-12培地、及びこれらの混合培地等をあげることができる。
工程(i)における培養は、細胞培養プレートを用いて行うことができる。ハイスループットスクリーニングを行う場合は、これに制限されないが、96ウェルプレート、384ウェルプレート、1536ウェルプレートを用いるのが好ましい。
工程(ii)
工程(ii)は、TTR81-127(p.101-147)フラグメントを細胞が入った培地に添加する工程である。この際、アミロイド線維形成に影響を及ぼす物質を探索又は検討したい場合は、試験物質を TTR81-127(p.101-147)フラグメントとともに培地に添加する。試験物質と TTR81-127(p.101-147)フラグメントの添加は、2つを同時に添加しても、あるいは、一方を先に加えて他方を後に添加してもよく、実験系及び試験目的に応じて、適宜選択できる。
用いる TTR81-127(p.101-147)フラグメントは、凝集していない状態で保存されているものを用いる。例えば、これに限定されないが、凍結乾燥された状態、又は、凝集を起こさない溶媒中、例えば、低濃度のアンモニア溶液中に溶解された状態で保存されているものを用いる。TTR81-127(p.101-147)フラグメントは、工程(ii)において培地に添加して細胞とともにインキュベートすると、時間経過とともに細胞表面で凝集が始まる。
工程(iii)
工程(iii)は、細胞表面に沈着したアミロイド線維を検出する工程である。アミロイド線維を検出できる方法であれば特に制限なく用いることができる。例えば、抗体を用いた検出、アミロイド線維を特異的に標識する試薬を用いた検出、フラグメントに結合した標識物質の検出をあげることができる。
抗体は、例えば、TTRのアミロイド線維を認識する抗体を用いることができる。アミロイド線維を認識する抗体については、多くの報告があり、また市販もされている。これらを適宜選択して用いることができる。抗体は、抗血清としてポリクローナル抗体を用いてもよく、また、モノクローナル抗体を用いてもよい。抗体を用い、例えば、細胞ベースELISAによりアミロイド線維の形成を検出できる。
アミロイド線維を特異的に標識する試薬を用いた検出法としては、これに限定しないが、例えば、チオフラビン蛍光法、Congo Redを用いた染色、FSB(1-Fluoro-2,5-bis(3-carboxy-4-hydroxystyryl)benzene)を用いた染色をあげることができる。アミロイドを標識できる染色用試薬や蛍光試薬が種々市販されているので、これらを適宜選択して用いることができる。
フラグメントに結合した標識物質の検出における標識物質は、これに限定されないが、例えば、放射性標識物質、蛍光標識物質を用いることができ、好ましくは蛍光標識物質である。蛍光標識物質としては、これに限定されないが、例えば、GFP、EGFP、rsGFP、YFP、CFP、BFP及びウミシイタケ由来のGFPをあげることができ、これらの蛍光標識物質を、例えば、TTR81-127(p.101-147)フラグメントのC末端に結合して用いることができる。標識物質のシグナルを検出することにより、アミロイド線維の形成を検出できる。
上記の検出法は、細胞ベースのハイスループットスクリーニング法や自動化スクリーニング法に容易に組み込むことが可能である。
工程(iv)
工程(iv)は、工程(iii)において検出した細胞表面のアミロイド線維が、対照(試験物質を添加していない場合に検出されるアミロイド線維)と比較した場合に、アミロイド線維の細胞内沈着が抑制された場合は、試験物質はアミロイド線維形成を抑制する物質であると判断する工程である。
上記工程(i)~工程(iv)を含む細胞ベーススクリーニング方法により、アミロイド線維形成を抑制する物質を効率良くスクリーニングすることができる。また、本発明の細胞ベーススクリーニング方法は、ハイスループットスクリーニング法に適している。
本発明のスクリーニング方法をHTSにおいて用いる場合は、HTSは、これに限定されないが、マイクロタイタープレート、自動コロニーピッカー、uHTS又はウルトラハイスループットスクリーニング、HTS薬物探索のための3Dスフェロイド分析法、ImageXpress(登録商標) Micro Confocal ハイコンテントイメージングシステム、Celigo 細胞イメージングサイトメーター、オートメションシステム、Carouselシステム、統合ロボットシステム、読出し・検出・データ収集プロセスなどの任意のシステムを組み合わせて用いることができる。
本発明の一態様によれば、スクリーニングを実施するために、ImageXpress(登録商標) Micro ConXLSシステムを用いることができる。
TTR81-127(p.101-147)フラグメントの調製
以下、本発明で用いる TTR81-127(p.101-147)フラグメントの調製方法の一例を記載するが、本発明で用いる TTR81-127(p.101-147)フラグメントの調製は以下に限定されるものではない。
TTR81-127(p.101-147)フラグメントは、全長の TTRのC末端に TTR81-127(p.101-147)フラグメントを連結した融合タンパク質を作成し、その融合タンパク質を、全長の TTRのC末端と TTR81-127(p.101-147)フラグメントの間で切断することで作成できる。融合タンパク質におけるTTRのC末端と TTR81-127(p.101-147)フラグメントは、直接結合させてもよいし、間に任意の数のアミノ酸を有する形で結合させてもよく、これに限定されないが、例えば、1~50、好ましくは2~30、さらに好ましくは3~20、最も好ましくは3~10のアミノ酸を介在させて結合させることができる。介在するアミノ酸配列は特に制限はないが、全長の TTRと TTR81-127(p.101-147)フラグメントの間を特異的に切断できる特定のアミノ酸配列である。例えば、これに限定されないが、Glu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-Gly(配列番号3)又はGlu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-Ser(配列番号4) をあげることができ、この配列は、Gln-Gl又は Gln-Serの間で、TEVプロテアーゼで特異的に切断できる。特定のアミノ酸配列及びその配列を認識して特異的に切断するプロテアーゼは種々報告されており、それらの配列及びプロテアーゼの組合せは、 TTR81-127(p.101-147)フラグメントの調製において適宜使用することができる。
全長TTRのC末端に TTR81-127(p.101-147)フラグメントを連結した融合タンパク質は、公知の遺伝子組換え技術を用いて作成することができる。遺伝子組み換え技術は、改変技術も含めて種々報告されているので、それらを参考にして融合タンパク質を作成することができる。例えば、全長 TTRのDNA配列の後に、任意のアミノ酸配列に対応するDNA配列を組み込み、さらにその後に、TTR81-127(p.101-147)フラグメントのDNA配列を連結したDNAを作成する。それをベクターに組み込み、そのベクターを用いて大腸菌を形質転換し、融合タンパク質を発現させることにより、目的の融合タンパク質を得ることができる。 TTR81-127(p.101-147)フラグメントは、得られた融合タンパク質を、介在させたアミノ酸配列を特異的に切断するプロテアーゼで切断して得ることができる。全長 TTRから切り離された TTR81-127(p.101-147)フラグメントは、任意に精製方法によって精製し、凍結乾燥状態で、又は、凝集を起こさない溶媒中で保存できる。これに限定されないが、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製し、0.02 % NH3 溶液もしくはPBSに溶解し、-80 ℃で保存できる。
本発明の他の一つの態様は、本発明のスクリーニング方法を用いて見いだされたアミロイドーシスを治療するための医薬組成物である。本発明の医薬組成物が対象とするアミロイドーシスは、これに限定されないが、AAアミロイドーシス、ALアミロイドーシス、アルツハイマー病、軽度認知障害、ATTRアミロイドーシス、アミロイド多発性神経障害、脳アミロイドーシス、限局性結節性アミロイドーシスを含む。
本発明の一態様は、ピルビニウム又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含む、アミロイドーシスを治療するための医薬組成物である。
本発明の他の一態様は、アミロイドーシスに罹患した患者に、治療上有効量のピルビニウム又はその薬理学的に許容される塩を投与するアミロイドーシスを治療する方法である。
ピルビニウムは、以下の構造式で表される。
ピルビニウムの塩としては、ピルビニウムとカウンターアニオンとの塩であって薬理学的に許容されるものであれば特に制限がない。適切な塩としては、例えば、これに限定しないが、ハロゲンとの塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、フタル酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメチルスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パモ酸塩などの有機酸塩、カルボン酸塩などの酸性基の塩などをあげることができる。好ましくは、ピルビニウムのハロゲン化物、トシル酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、パモ酸塩をあげあることができ、特に好ましくは、ピルビニウムパモ酸塩である。
ピルビニウムパモ酸塩は、以下の構造式で表される。
本発明の医薬組成物において用いることができるピルビニウム又はその塩は、それらの化合物又は塩から形成される溶媒和物及び水和物を含む。
本発明の一態様は、アポモルフィン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含む、アミロイドーシスを治療するための医薬組成物である。
本発明の他の一態様は、アミロイドーシスに罹患した患者に、治療上有効量のアポモルフィン又はその薬理学的に許容される塩を投与するアミロイドーシスを治療する方法である。
アポモルフィンは、以下の構造式で表される。
アポモルフィンの薬学的に許容されるその塩とは、上記化合物から形成されるあらゆる非毒性の塩を示す。適切な塩としては、例えば、これに限定しないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、フタル酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメチルスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩などの有機酸塩、アンモニウム塩などの無機塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、カルボン酸塩などの酸性基の塩、メチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの低級アルキルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの置換低級アルキルアミンなどの有機塩基との塩、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩などのアミノ酸塩などをあげることができる。好ましくは、塩酸塩である。
また、アポモルフィン又はその塩は、それらの化合物又は塩から形成される溶媒和物及び水和物を含む。
本発明の医薬組成物は、上記の化合物に加え、1以上の薬学的に許容される担体を含むことができる。本発明の医薬組成物はまた、上記の化合物に加え、他のアミロイドーシスの治療剤を含むことができる。
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、当業者に知られているように、任意及びすべての、溶媒、分散媒体、コーティング剤、酸化防止剤、キレート剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、界面活性剤、緩衝剤、浸透圧調節剤、吸収遅延剤、塩、薬物安定剤、賦形剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、甘味剤、芳香剤、潤沢剤、染料など、及びそれらの組合せを含む。何れかの担体が本発明の活性成分と不適合である場合以外は、本発明の治療または医薬組成物において使用することができる。
本明細書で使用される「治療上有効量」という用語は、治療を必要とするほ乳類に投与される場合、治療効果を生じさせるのに十分な量の上記化合物のいずれかで表される化合物をいう。治療上有効量は、対象及び治療する疾患症状、対象の体重及び年齢、疾患症状の重症度、投与方法などに依存して異なり、当該技術分野における当業者により容易に決定されることができる。
本明細書の医薬組成物を投与する対象は、哺乳動物、好ましくは霊長類、特に好ましくはヒトである。
本発明の上記化合物を含む医薬組成物は、医薬組成物の処方のための既知の方法に準じて処方することができる。代表的な医薬組成物には、上記した薬学的に許容される担体が含まれうる。これらの担体の使用は、当該技術分野においてよく知られている。また、活性成分を含む医薬組成物を調製するための方法は、当該技術分野においてよく知られている。
本発明の医薬組成物は、使用目的に応じた特定の投与経路に適合するように製剤化されうる。投与経路は、これに限定されないが、例えば、経口、非経口、静脈内、皮内、皮下、経皮、吸入、局所、経粘膜的、又は直腸投与がある。本発明の医薬組成物は、固体形態又は液体形態で製剤化されうる。固体形態は、これに限定されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、又は坐剤を含む。液体形態は、これに限定されないが、例えば、溶液剤、懸濁剤、又は乳濁剤を含む。本発明の医薬組成物は、好ましくは経口により投与される。
本発明の化合物の投与量は、疾患の種類、投与対象の症状、年齢、投与方法等により適宜選択される。例えば、これに限定されないが、経口剤であれば、通常、1日当たり0.1~5000mg、好ましくは1~2000mg、より好ましくは5~500mgを、1回又は数回に分けて投与すればよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1:組換えTTRの作製
(1-1)組換えTTRの発現と精製
ヒト野生型TTR及びその変異体(TTR Val30Met(p.Val50Met))は、水口らの報告(Mizuguchi M, et al. (2008) Unfolding and aggregation of transthyretin by the truncation of 50 N-terminal amino acids. Proteins 72:261-269)に記載されたようにして得た。
TTRフラグメントは以下のようにして得た。TTR1-48 及び TTR1-80 フラグメントのDNA配列をNdeI/BamHIで消化したpOPTHベクターに挿入した。N末端His6タグを有する TTR1-48 及び TTR1-80 フラグメントを大腸菌C41(DE3)RIPL細胞中で発現させ、そして Ni-アフィニティークロマトグラフィーで精製した。
TTR49-127 及び TTR81-127(p.101-147) フラグメントは、大腸菌M15細胞中でN末端His6タグ付き全長野生型 TTRとの融合タンパク質として発現させ、Ni-アフィニティークロマトグラフィーで精製した。His6タグ及び TTRタグは第Xa因子又はタバコエッチウイルスプロテアーゼ(TEVプロテアーゼ)によって切断し、TTRフラグメントは逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製した。目的のフラグメントを含むフラクションを集めて凍結乾燥した後、得られたサンプルを -30 ℃で保存した。得られたフラグメントの分子量を質量分析(MALDI-TOF-MS)で測定し、アミノ酸配列から推定される計算値に一致していることを確認した。得られたフラグメントはまた、0.02 % NH3 溶液に溶解し -80 ℃で保存し、その後使用した。全長 TTRと TTR81-127(p.101-147)を連結した融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号5)を図1に、DNA配列(配列番号6)を図2に示す。
(1-2)全長TTRの酸誘導凝集体の作製
全長 TTRの酸誘導性非晶質凝集体は、100 mM KClを含有する50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液中で 50 μMの組換え全長 TTRをpH4.0 でインキュベートして作製した。
(1-3)細胞と細胞培養
ヒト血管平滑筋細胞系グロモテル、ヒト神経芽細胞腫細胞系 SH-SY5Y、ヒト膠芽細胞腫細胞系 U87MG、ヒト肝細胞癌細胞系 HepG2、及びヒト網膜色素上皮細胞系 ARPE-19を含むいくつかの細胞系を用いた。これらの細胞はATCCから購入し、ギブコDMEM、10 %FCS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液を含む培地で、37 ℃、5% CO2 中で維持した。細胞培養液は2~3日ごとに交換した。
(1-4)培養細胞における全長 TTR凝集体のフラグメントへの切断
培養細胞における TTR断片化のメカニズムを調べるために、12ウェル培養プレートに細胞を播種した。細胞は、未処理の全長 TTR 又は全長 TTRの酸誘導凝集体で処理し、10 μM トリプシンインヒビターの存在下又は非存在下で48時間インキュベートした。細胞を氷冷PBS中で1回洗浄し、次いで Laemmliサンプル緩衝液を加え溶解した。続いて、SDS-PAGE分析を行った。ゲルはCBBで染色した。
まず、培養神経細胞及びグリア細胞において、全長 TTRがフラグメントに切断されるか否かを組換え TTR Val30Met(p.Val50Met)を用いて検討した。未処理(凝集していない)及び酸誘導凝集体の全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)(50 μM)で培養SH-SY 5Y神経細胞を24時間処理した後、細胞の溶解物を用いてSDS-PAGE分析を行った。結果を図3Aに示す。全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)の酸誘導凝集体で24時間処理した培養SH-SY 5Y細胞では、5-kDa及び10-kDaのバンドが確認され、これらは全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)の15-kDaバンドよりも小さかった。よって、それらのバンドは TTR断片であると推測した。対照的に、未処理の全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)で処理した細胞では、15-kDaのバンドよりも小さなバンドは見いだされなかった。ヒト U87MGグリア細胞を用いて同様の検討を行った。その結果、グリア細胞でも同様に、全長の TTR Val30Met(p.Val50Met)の酸誘導凝集体はより短いフラグメントに切断された。結果を図3Bに示す。
次いで他の培養細胞を用い、同様の検討を行った。しかし、ヒト血管平滑筋様グロモテル細胞、ヒト肝癌HepG2細胞、及びヒト網膜色素上皮ARPE-19細胞を含む他の種類の細胞では TTRフラグメントは見出されなかった。結果を図4に示す。なお、SH-SY 5Y神経細胞を用いて検討したところ、他の全長 TTRの酸誘導凝集体、例えば、Cyc10Argを除く、WT(野生型)、Leu55Pro、Thr60Ala、Ser77Tyr、Ile84Ser、及び Tyr114Cysなどの他の全長 TTRの酸誘導凝集体も同様に、より小さな 5-kDa 及び10-kDaのフラグメントに切断された。
アミノ酸配列分析の結果、5-kDaフラグメントは TTRの81位で始まり、そして10-kDaフラグメントは TTRの49位で始まることが判った。それぞれの起点の配列上の位置を図5に示す。両切断部位ともにリジンのカルボキシル側であり、このことは、トリプシン又はトリプシン様酵素が、それぞれの位置で、全長 TTRを 5-KDa及び10-kDaフラグメントに切断したことを示唆している。また、トリプシンインヒビターを添加したところ、トリプシンインヒビターは、SH-SY 5Y細胞において全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)の酸誘導凝集体のフラグメント化を抑制した。
実施例2:インビトロでの全長 TTRの酸誘導凝集体のトリプシン切断
試験管内にて、組換え全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)の酸誘導凝集体をトリプシンと共に37℃で24時間インキュベートした。トリプシンは、酸誘導凝集体を、培養細胞に見られる TTR断片に類似した5-kDa及び10-kDaのC末端フラグメントを含むいくつかの小さいフラグメントに直接切断した。加えて、その他少数のC末端及びN末端フラグメントを生じた。対照的に、トリプシンは未処理(凝集していない)全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)をほとんど切断しなかった。結果を図6に示す。
実施例3:ATTRmアミロイドーシス患者由来の硝子体アミロイド沈着物中のTTRフラグメントの検出
TTRのC末端フラグメント TTR81-127(p.101-147)に対する抗体を用いた免疫ブロット法により、TTR Val30Met(p.Val50Met)変異を有する2人のATTRmアミロイドーシス患者からの硝子体 TTRアミロイド線維の成分を分析した。図7Aに示すように、1人の患者(Pt2)の硝子体 TTRアミロイド線維中に10-kDa及び5-kDaの TTRフラグメントが見つかった。図7Bに示すように、もう一人の患者(Pt1)の硝子体 TTRアミロイド線維をトリプシン処理したところ、5-kDa及び10-kDaフラグメントに切断された。
以上の結果は、C末端領域の TTR81-127(p.101-147)は全長 TTRの四量体及び二量体構造の内側に位置するが、N末端領域は全長の四量体及び二量体構造の外側に露出していることを示している。
実施例4:インビトロでの TTRフラグメントによるアミロイド形成
(4-1)中性条件でのTTRフラグメントによるアミロイド形成
中性pH、37℃にて、PBS中で、組換えタンパク質の全長 TTR及びフラグメント化したTTRを用い、インビトロでのアミロイド形成能を調べた。インビトロにて、中性pHでアミロイド線維形成を誘導するために、25 μM又は 50 μMの全長野生型 TTR、全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)、TTR1-80(p.21-100)フラグメント、TTR49-127(p.69-147)フラグメント、及び TTR81-127(p.101-147)フラグメントをそれぞれ PBS中、37℃で24時間インキュベートした。その後、電子顕微鏡(HT7700;日立ハイテクノロジーズ、日本)を用いて加速電圧100 kVでアミロイド線維又は TTR の非晶質凝集体の形態を調べた。簡単に説明すると、1μL のサンプルをカーボン/コロジオンコートしたグリッド上に置き、その後サンプルを1μL の0.2 %酢酸ウラニルで1分間染色した後、電子顕微鏡で検査した。
電子顕微鏡分析により、TTRの5-kDaのC末端フラグメントに対応する組換え TTR81-127(p.101-147)フラグメントが中性pHにて PBS中でアミロイド線維を形成することが判った。対照的に、組換え全長 WT TTR、TTR Val30Met(p.Val50Met)、及び TTRの10-kDaのC末端フラグメントに対応する TTR49-127は、中性pHにて PBS中で非晶質凝集体を形成した。結果を図8A-Dに示す。なお、TTRのN末端に対応する組換え TTR1-80は、非晶質凝集体もアミロイド線維も形成しなかった。
(4-2)細胞を用いたTTRフラグメントによるアミロイド形成
グロモテル細胞を用い、細胞を培養している培地に全長 TTR及び各 TTRフラグメントを直接添加してアミロイド沈着物の形成を確認した。培養細胞においてアミロイド形成を誘導するために、細胞をハーフエリア96ウェル培養プレート又は Lab-Tek チャンバースライドに播種した。細胞を、5 % CO2 中、37 ℃で、Opti-MEM(Thermo Fisher Scientific)中にて、種々のTTRで処理した。培養細胞中のアミロイド沈着は、Congo Red(CR)で染色することにより検出した。既報と同様に、アルカリ性CR染色を行い偏光下でCR反応性を確認した。
その結果、TTR81-127(p.101-147)フラグメントのみが培養細胞表面にアミロイド沈着物を形成した。Congo Redによる染色の結果を図9に示す。全長 TTR及び他の TTRフラグメントはアミロイド沈着物を形成しなかった。
(4-3)チオフラビンT(ThT)蛍光アッセイ
アミロイド線維を形成した TTR81-127(p.101-147)に対してチオフラビンT(ThT)蛍光アッセイを行った。TTRをインビトロインキュベーションし、442 nmおよび489 nmの励起波長及び発光波長下で分光蛍光光度計(F-2700; 日立ハイテクノロジーズ)を用いてThT蛍光を分析した。3 μL のサンプルを、50 mMグリシン- NaOH 緩衝液(pH 9.5)中、600 μL の 5μM ThTと混合し、測定に使用した。1サンプルにつき3回の分析を行い測定は室温で行った。
上記の電子顕微鏡分析においてアミロイド線維を形成した TTR81-127(p.101-147)のThT強度の変化を確認したところ、中性pHの PBS中で経時的に増加し、24時間後にアミロイド線維形成の典型的な動態を示した。対照的に、電子顕微鏡分析において非晶質凝集体を形成した TTR49-127(p.69-147)のThT強度は、中性pHの PBS中でのインキュベーション直後に増加した。全長 WT TTR、全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)、及び TTR1-80(p.21-100)を含む他の TTRのThT強度は、PBS中では増加しなかった。結果を図10に示す。
(4-4)中性条件での TTR81-127(p.101-147)フラグメントによる四量体形成の確認
全長 TTRと同様に TTR81-127(p.101-147)フラグメントが四量体を形成したかどうかを確認するために、TTRフラグメントを化学的に架橋してSDS-PAGE分析を行った。具体的には以下のようにして行った。TTR81-127 の四量体及びオリゴマーを評価するために、既報(Sekijima Y, Dendle MA, Kelly JW (2006) Orally administered diflunisal stabilizes transthyretin against dissociation required for amyloidogenesis. Amyloid 13:236-249)に従い、グルタルアルデヒドとの化学的架橋を利用した。25 μL の25 %グルタルアルデヒドを、50 μM TTRを含む PBS 25 μLに室温で4分間かけて添加し、続いて7 % NaBH4 を含む2.5 μL の0.1 M NaOHを添加することによりクエンチした。架橋サンプルをSDS-PAGEによって分析し、CBB染色を用いて可視化した。図11Aに示すように、全長 TTRは四量体を形成したが、TTR81-127(p.101-147)は単量体として存在し、四量体を形成しなかった。TTR81-127(p.101-147)は、図11Bに示されるように、中性pH、37℃で、PBS中で徐々に重合し、オリゴマーを形成した。
実施例5:培養細胞に対する高アミロイド形成性 TTR81-127(p.101-147)の影響の確認
(5-1)細胞毒性の確認
異なる TTRが培養細胞に対し細胞傷害作用を及ぼすか否かを調べるために、組換え TTRを培地に添加して培養した。細胞傷害性は、製造元の指示に従って、MultiTox-Fluor Multiplex Cytotoxicity Assay(Promega)を使用して分析した。カスパーゼ3/7活性は、製造業者の指示に従って、Apo-ONE Homogeneous Caspase-3/7 Assay(Promega)を用いて決定した。カスパーゼ8及びカスパーゼ9活性は、それぞれ、Caspase-Glo 8 Assay(Promega)及びCaspase -Glo 9 Assay(Promega)システムを用いて分析した。FilterMax F5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、CA)を用いて蛍光及び発光を測定した。アネキシンV染色は、Biozero BZ-8000蛍光顕微鏡(Keyence、日本)を用い、 Apoptotic, Necrotic and Healthy Cells Quantitation Kit Plus(Biotium、CA)を用いて行った。
TTRのC末端フラグメントである TTR81-127(p.101-147)及び TTR49-127(p.69-147)は細胞毒性効果を示したが、組換え TTR81-127(p.101-147)は培養細胞においてカスパーゼ3活性及びアネキシンVの結合を増加させた。また、TTR81-127(p.101-147)はカスパーゼ8及び9の活性を増加させた
(5-2)TTR81-127(p.101-147)で処理した培養細胞におけるアポトーシス関連蛋白質の分析
培養グロモテル細胞を Opti-MEM中の 25 μM TTR81-127(p.101-147)で6時間処理し、Proteome Profiler Human Apoptosis Array Kit(R&D Systems, MN)を用いてアポトーシス関連タンパク質の発現を製造元の指示に従って分析した。反応をLAS-4000 Mini(GE Healthcare)を用いて可視化した。TTR81-127(p.101-147)で処理した培養細胞のシグナル強度は、未処理細胞と比較して相対比で決定した。タンパク質アレイ分析の結果、TTR81-127(p.101-147)で処理したグロモテル細胞ではFas 及び BAXが増加し、Bcl-2は減少した。よって、TTR81-127(p.101-147)フラグメントのアミロイド沈着物は、Fas 媒介アポトーシスを誘導したことが判った。
(5-3)炎症性遺伝子発現の分析
TTR81-127(p.101-147)アミロイド形成に対する細胞応答を調べるために、TTR81-127(p.101-147)で24時間処理したグロモテル細胞においてRNA-Seqによるトランスクリプトーム分析を行った。製造業者の手順書に従い、TRIzol RNA単離試薬を用いて、Opti-MEM中で 25 μMの高アミロイド形成性 TTR81-127(p.101-147)で処理した又は処理していない培養グロモテル細胞から全RNAを抽出し、得られたRNAを分析した。
細胞性 TTR81-127(p.101-147)アミロイド形成は、グロモテル細胞における炎症関連遺伝子の発現を増強した。定量的リアルタイムPCR分析により、TTR81-127(p.101-147)アミロイド沈着物は、グロモテル細胞中、ICAM1、VCAM1、RELB、IL32、CXCL1、CCL2、C3、及びSOD2を含むこれらの分子のmRNAレベルを増加させ、KIT mRNAレベルを低下させることを確認した。RNA-Seq分析による定量的リアルタイムPCR分析では、LRWD1 mRNAレベルの上昇は見られなかった。ヒト神経芽細胞腫由来のSH-SY 5Y細胞では、TTR81-127(p.101-147)処理で、3つの遺伝子、すなわちSH-SY 5Y細胞では検出されなかったCXCL1 と C3、及び処理したSH-SY 5Y細胞では変化しなかったSOD2を除いて、上記のmRNAレベルに同様の変化が見られた。これらの分子の遺伝子発現は、炎症性サイトカイン遺伝子 TNF及び IL6に加え、TTR81-127(p.101-147)で処理されたグロモテル細胞において有意に増加した。FAS mRNAレベルはまた、TTR81-127(p.101-147)で処理されたグロモテル細胞において有意に増加し、これは上記のタンパク質アレイ分析の結果と一致した。 Fasリガンド依存性経路の選択的阻害剤であるRKTS-33は、TTR81-127(p.101-147)で処理したグロモテル細胞において、ICAM1、VCAM1、IL32、CCL2、及びTNFを含むこれらの炎症性遺伝子のmRNAの増加を抑制した。よって、TTR81-127(p.101-147)フラグメントのアミロイド沈着物は、Fas 媒介アポトーシス及び炎症性遺伝子発現を誘導したことが判った。
実施例6:抗アミロイド薬を検出するためのスクリーニング法
高いアミロイド形成性を有する組換え TTR81-127(p.101-147)を用い、培養細胞で TTRアミロイド形成を評価するために、ハーフエリア96ウェル培養プレートを用いた細胞ベースの HTS法を検討、開発した。細胞ベースのFSB分析及び細胞ベースのELISA分析の概略を図12に示す。蛍光アミロイド特異的プローブである1-フルオロ-2,5-ビス[(E)-3-カルボキシ-4-ヒドロキシスチリル]ベンゼン(1-Fluoro-2,5-bis(3-carboxy-4-hydroxystyryl)benzene:FSB)を用いて細胞ベースのFSBアッセイを開発し、TTR81-127(p.101-147)で処理した培養細胞中の沈着物中のアミロイド量を決定した。また、TTR81-127(p.101-147)に対するウサギポリクローナル抗血清を用いた細胞ベースの酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて、培養細胞表面の沈着物中の TTR81-127(p.101-147)の量を分析した。
細胞ベースのFSBアッセイにおいては、ハーフエリア96ウェル培養プレートにグロモテル細胞を播種した。24時間後、TTR81-127(p.101-147)フラグメントを細胞培養液に添加し、37℃で24時間インキュベートした。培養細胞を10 %ホルムアルデヒド中性緩衝液で30分間固定した。固定細胞をPBSで洗浄した後、50 % EtOH中の0.0001 % FSBで30分間培養細胞を染色した。FSB染色した細胞を50 % EtOHで1回洗浄した後、PBSで3回洗浄した。In Cell Analyzer 2200(GE Healthcare)を用いて、沈着物中のアミロイドの量を分析した。
さらに、ウサギポリクローナル抗TTR81-127(p.101-147)抗血清を用いて細胞ベースのELISAアッセイを行い、沈着物中の TTR81-127(p.101-147)の量を定量した。ハーフエリア96ウェル培養プレートにグロモテル細胞を播種した。24時間後、TTR81-127(p.101-147)フラグメントを細胞培養液に加え、インキュベーションを37℃で24時間行った。培養細胞を10 %ホルムアルデヒド中性緩衝液で30分間固定した。固定した細胞をPBSで洗浄した後、Blocking One溶液(Nacalai Tesque)を添加し、細胞を30分間インキュベートした。サンプルを PBSで3回洗浄した後、PBSに溶解した 5 %ウシ血清アルブミンで 1:2000に希釈したTTR81-127(p.101-147)に対するウサギポリクローナル抗血清を添加し、インキュベーションを1時間続けた。試料を PBSで3回洗浄した後、PBSに溶解した 5 %ウシ血清アルブミンで 1:5000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼと結合したヤギ抗ウサギ抗体を加え、1時間インキュベーションを続けた。サンプルを PBSで5回洗浄した後、KPL SureBlue TMB Microwell Peroxidase Substrate(1-Component)(SeraCare、Milford、MA)を加え、15分間インキュベートした後、1 N HClを加えて反応を停止させた。xMark Microplate Spectrophotometer(Bio-Rad)を用いて450 nmでウェルを読み取った。このスクリーニング方法の質を評価するために、細胞内のZ '因子、シグナル対バックグラウンド比(S / B)、シグナル対ノイズ比(S / N)、及び変動係数(CV)を計算し、 HTS法についてのこれらのパラメータの許容値(Z '因子> 0.5、S /B > 2、S/N > 10、CV < 20 %)と比較した。
グロメテル細胞を用いた細胞ベースのFSB分析及び細胞ベースのELISA分析により、種々の濃度のTTR81-127(p.101-147)を添加した時の培養細胞中の沈着物を測定した。結果を図13に示す。TTR81-127(p.101-147)は培養細胞中に用量依存的にFSB陽性アミロイド沈着物及び抗TTR81-127(p.101-147)抗体陽性TTR沈着物を形成することが確認された。
最初に TTR81-127(p.101-147)に対する抗血清を用いた細胞ベースELISAにより、培養細胞中の TTR81-127(p.101-147)沈着物の量を定量的に分析した。結果を図14Aに示す。また、図14Bに示すように、この細胞ベースのHTS法のZファクターは 0.72であり、このスクリーニング系は、HTS法として用いた場合に薬物スクリーニングに十分であることが示された。
本発明のスクリーニング系を用いたこのHTS法を用い、TTR81-127(p.101-147)のアミロイド形成に対する化合物の阻害効果を分析した。酸性pHにて全長 TTRを用いる従来の評価方法で TTR凝集を阻害するか又は TTRの四量体構造を安定化させると報告されている化合物を用いて検討した。検討した化合物は、ジフルニサル、エピガロカテキンガレート(EGCG)、タウロデオキシコール酸、ノルジヒドログアヤレチン酸、ドキシサイクリン、レスベラトロール、ミリセチン、クルクミン、及びクエルセチン二水和物である。本発明のスクリーニング方法において、EGCGは TTR81-127(p.101-147)アミロイド形成の最も強い阻害を示したが、全長 TTRの四量体構造を安定化させることがよく知られているジフルニサルは培養細胞における TTR81-127(p.101-147)のアミロイド形成に対して阻害効果を示さなかった。結果を図15に示す。本発明の新規なHTS法を用い、TTRアミロイド形成を直接評価できると判った
実施例7:抗アミロイド薬のスクリーニング
本発明の新規なHTS法を用い、ドラッグリポジショニング候補をスクリーニングした。1,280の特許外医薬化合物のスクリーニングライブラリ(Drug Discovery Initiative、東京大学、日本)を使用しスクリーニングを行った。参照化合物として EGCG及びジフルニサルを用いた。最初のスクリーニングにおいて、細胞ベースELISAを用い、TTRアミロイド沈着を阻害する候補化合物を選択した。単一のアッセイで各化合物を分析し、化合物を使用しなかった対照に対する相対値を計算し、相対値<88 %を示す化合物を選択した結果、75の候補化合物をスクリーニングした。2番目のステップでは、選択した75種類の化合物を使用し、細胞ベースELISA(3回の試験)に加えて、FSBアッセイ(3回の試験)を行った。細胞ベースのFSBアッセイで相対値が85%未満の化合物を選択した結果、28種類の候補化合物をスクリーニングした。
次に、3回目のスクリーニングにおいて、選択した28の候補化合物を用い、試験管中にて、中性pHでPBS中の TTR81-127(p.101-147)のアミロイド形成を直接阻害するか否かを、チオフラビンT(ThT)蛍光アッセイを用いて確認した。試験管に、2~50μMの各化合物を25 μMの TTR81-127(p.101-147)と同時に添加し、化合物のアミロイド阻害効果を調べ、ThT蛍光アッセイにおいて相対値<50 %を有する候補化合物を次のスクリーニングのために選択した。その結果、図16に示す、TTR81-127(p.101-147)のアミロイド形成を強く阻害する8つの候補薬を見いだした。
次のアッセイで、それら8つの候補薬を用いてアミロイド破壊を確認した。チューブ内で、PBS中にて24時間37℃でインキュベーションし、TTR81-127(p.101-147)を、予めアミロイド線維化させた。予め形成させた TTR81-127(p.101-147)のアミロイド線維を中性pHで PBS中にて24時間、候補化合物とともにインキュベートし、それらの化合物がアミロイド線維を破壊するかどうかを確認した。チューブ内で、25 μMの予め形成したTTR81-127(p.101-147)アミロイド線維に 2 ~ 50μMの8種類の化合物を添加し、ThT蛍光アッセイによって薬剤のアミロイド破壊効果を評価した。その結果、ピルビニウムパモ酸塩及び塩酸アポモルヒネは、チューブ内及び細胞ベースFSBアッセイにおいて用量依存的に予め形成された TTR81-127(p.101-147)アミロイド線維を有意に減少させた。結果を図17に示す。Aは、細胞ベースFSBアッセイの概略を示している。Bは、細胞FSBアッセイにおけるピルビニウムパモ酸塩のアミロイド形成抑制効果を、Cは、細胞FSBアッセイにおける塩酸アポモルヒネのアミロイド抑制効果を確認した結果であり、D~Eは、培養細胞をFSBで染色した結果を示している。
実施例8:候補化合物の TTRアミロイド線維の破壊作用活性
予め形成された TTR81-127(p.101-147)のアミロイド線維を用い、本発明の方法でスクリーニングしたピルビニウムパモ酸塩及び塩酸アポモルヒネのアミロイド線維の破壊活性を以下のようにして測定した。チューブ内で、中性pHで PBS中にて、0.2 μMの予め形成したTTR81-127(p.101-147)アミロイド線維に 50 μMの化合物を添加し、24時間、37℃でインキュベートした。活性は、ジフルニサルと比較した。電子顕微鏡分析によると、図18上段に示すように、ピルビニウムパモ酸塩及び塩酸アポモルヒネは、予め形成された TTR81-127(p.101-147)のアミロイド線維をインビトロで破壊したが、一方、ジフルニサルは TTR81-127(p.101-147)のアミロイド線維を破壊しなかった。そこで、ATTR Val30Met(p.Val50Met)Metアミロイドーシス患者からのアミロイド含有剖検心臓サンプルから単離された心臓アミロイド線維を用いて選択した2つの薬物の効果を調べた。
心臓アミロイド線維は、既報(Annamalai K, et al. (2016) Polymorphism of amyloid fibrils in vivo. Angew Chem Int Ed Engl 55:4822-4825.)と同様にして患者のアミロイド含有心臓組織サンプルから単離した。63歳で死亡した ATTR Val30Met(p.Val50Met)アミロイドーシスを有する剖検患者からの固定されていない凍結心臓試料 150 mg をメスでさいの目に切り、1 mL のトリス-カルシウム緩衝液(20 mM トリス、138 mM NaCl、 2 mM CaCl2 、0.1 %(wt/vol)NaN3、pH 8.0 )で洗浄した。ペレットを、5 mg/mL のクロストリジウムヒストリチカムコラゲナーゼ(Sigma-Aldrich)を含んだトリス-カルシウム緩衝液1 mL に再懸濁し、37 ℃で一晩インキュベートした後、組織試料を4℃で30 分間、3,100×gで遠心分離し、そして残ったペレットを 1 mL のトリス-エチレンジアミン四酢酸(EDTA)緩衝液(20mM トリス、140 mM NaCl、10 mM EDTA、0.1 %(wt/vol)NaN3、pH 8.0)に再懸濁した。懸濁液をペレット乳棒で均質化し、ホモジネートを4℃で3,100×gで5分間遠心分離し、そして上清を注意深く除去した。この工程を10回繰り返した。Tris-EDTAバッファーでの最後のホモジナイズ工程の後、残りのペレットを0.25 mL の氷冷水中、ペレット乳棒でホモジナイズした。ホモジネートを4℃で3,100×gで5分間遠心分離し、そして上清を除去し、水抽出物1として貯蔵した。この工程を10 回繰り返した。
患者のアミロイド線維を用いて、同様にしてアミロイド線維の破壊活性を測定した。図17A及びEに示されるように、予め形成された TTR81-127(p.101-147)のアミロイド線維は、患者のアミロイド線維と超微細構造的に類似していた。図17下段に示されるように、ピルビニウムパモ酸塩及び塩酸アポモルヒネは、生体外で患者の心臓アミロイド線維を有意に破壊することが確認できたが、TTRの四量体構造の安定剤であるジフルニサルは、心臓アミロイド線維を破壊しなかった。
実施例9:全長 TTRの四量体構造に対する安定化効果
2つの候補化合物、ピルビニウムパモ酸塩及び塩酸アポモルヒネが、アミロイド破壊作用に加えて全長 TTRの四量体構造を安定化するかどうかを以下のようにして確認した。尿素変性に対する TTR四量体の安定性に対する化合物の効果を評価するために、全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)、又はATTR Val30Met(p.Val50Met)アミロイドーシスに罹患した未治療の74歳男性から得た血漿試料を用いた。全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)血漿試料を、試験管中で 2 ~ 50 μM の化合物と共に25℃で30分間インキュベートし、続いて4.5 M の尿素にて、TTRを25℃で24時間変性させた。その後SDS-PAGEを行い、TTRは、ProteoSilver Silver Stain Kit(Sigma-Aldrich)を用いた銀染色、又はポリクローナルウサギ抗TTR抗体(Agilent Technologies)を用いたイムノブロッティングによって検出した。バンド強度は、NIH ImageJプログラム(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を用いて定量した。結果を図18に示す。上段は、全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)を用いた結果、下段は、患者血漿中の TTRを用いた結果である。組換え全長 TTR Val30Met(p.Val50Met)を用いたインビトロ試験では、ピルビニウムパモ酸塩が TTR四量体に対して安定化効果を有し、それはジフルニサルとほぼ同じであることが確認できた。また、ピルビニウムパモ酸塩は、ATTR Val30Met(p.Val50Met)アミロイドーシスを有する患者の血漿中で、全長 TTRの四量体構造を有意に安定化したが、血漿 TTRの四量体構造の安定化効果はジフルニサルよりも弱かった。
実施例10:Aβ42 及びAβ40 のアミロイド線維形成の抑制効果
スクリーニングされたピルビニウムパモ酸塩及び塩酸アポモルヒネについて、他のアミロイドであるAβ42 及びAβ40 について、アミロイド線維形成阻害効果を確認した。チューブ内で、25 μMのAβ42 又はAβ40を、2 ~50 μMの化合物とともに,PBS中、37℃で24時間インキュベートした。その後、形成されたアミロイド線維をThTアッセイにより測定した。結果を図21に示す。ピルビニウムパモ酸塩及び塩酸アポモルヒネともに、Aβ42 、Aβ40 のアミロイド線維形成を、用量依存的に顕著に阻害した。
全長TTRの酸性変性が TTR凝集体を形成するために、従来のインビトロ系では、全長 TTRの酸性変性凝集体が用いられていた。また、TTRのC末端断片、特に TTR49-127(P.69-147)に対応する 10-kDaのC末端が TTRアミロイド形成を促進することも報告されている(Marcoux J, et al. (2015) A novel mechano-enzymatic cleavage mechanism underlies transthyretin amyloidogenesis. EMBO Mol Med 7:1337-1349)。
本発明の方法においては、より小さなC末端の TTR81-127(p.101-147)フラグメントを用い、中性で、変性プロセスなしに、非常に容易にアミロイド線維を形成することができる。加えて、アミロイド線維は、PBS中及び細胞培養培地中で形成できる。一方、C末端のTTR49-127(p.69-147)フラグメント、N末端の TTR1-80(p.21-100)フラグメント、全長の野生型及び変異型 TTRなどの他の形態の TTRでは、中性pHでアミロイド線維を形成できない。
本発明者らはまた、トリプシンがインビトロで、酸誘導性全長 TTR凝集体をC末端フラグメント TTR81-127(p.101-147)及び TTR49-127(p.69-147)に切断するが、自然(凝集していない)な可溶性全長 TTR四量体をほとんど切断しないことを見出した。この結果は、TTRの断片化には自然なTTR四量体構造の破壊が必要である可能性があることを示しており、これは一般に、ATTRmアミロイドーシスの TTR突然変異によって引き起こされると考えられる。
そして、この仮説に拘束される訳ではないが、本発明者らは、全長 TTRの自然の四量体構造からの TTRアミロイド線維形成の仮説モデルにたどり着いた。TTRテトラマーの解離、それに続く TTRの高度にアミロイド形成性のC末端領域の重合の後に、TTRのC末端領域が分子の外側に露出されると考えられる。このようにして生じた変性 TTRは、トリプシン又はトリプシン様酵素によって断片に切断され得る。仮説モデルを図20に示す。
本発明の方法で用いる TTR81-127(p.101-147)アミロイド線維は患者のアミロイド線維と同様の特徴を持っている。超構造的には、中性pHにてインビトロで形成された TTR81-127(p.101-147)アミロイド線維の形態学的特徴は、ATTRmアミロイドーシスに罹患した患者のアミロイド含有組織から単離された心臓アミロイド線維に類似している。このことは、本発明の方法が、実際の疾患において起こるアミロイド線維形成を模していることを示唆している。また、このことは、TTR81-127(p.101-147)アミロイド沈着物が Fas媒介アポトーシス及び炎症性遺伝子の発現を誘導すること、及び、全長の TTR凝集体もアポトーシスと炎症を誘導したと報告されていることからも支持される。加えて、TTR81-127(p.101-147)フラグメントを用いた細胞ベースの本発明の方法において確認された特徴が、以前の組織病理学的研究で確認された、ATTRmアミロイドーシスに罹患した患者及びヒト TTR Val30Met(p.Val50Met)を発現するトランスジェニックマウスから得た組織サンプルにおいて FTR、カスパーゼ8、及びBaxが増加することとも一致した。
また、本発明の方法において、EGCGは、TTR81-127(p.101-147)のアミロイド形成を阻害したが、四量体 TTRのみを安定化したジフルニサルは効果を示さなかった。このことは、この仮説に拘束される訳ではないが、TTR81-127(p.101-147)を用いた本発明の方法がが TTRアミロイド線維形成の後期を直接評価できることを示唆している。
上記の詳細な記載は、本発明の目的及び対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更及び置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。
本発明のスクリーニング方法は、アミロイド線維形成を抑制する物質をスクリーニングするために有用であり、ハイスループットスクリーニングに適用可能な方法である。また、本発明の医薬組成物は、新規なアミロイドーシスの治療薬として有用である。

Claims (9)

  1. アミロイド線維形成を抑制する物質をスクリーニングする方法であって、
    (a)凝集していない状態のトランスサイレチンのフラグメントであってトランスサイレチンの81番目から127番目の配列である配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるフラグメント、及び試験物質を中性の緩衝液に溶解する工程、
    (b)形成されたアミロイド線維を検出する工程、及び
    (c)試験物質を添加しなかった対照に比べてアミロイド線維形成が抑制された場合に、前記試験物質を、アミロイド形成を抑制する物質として選択する工程、
    を含むスクリーニング方法。
  2. 前記工程(b)におけるアミロイド線維の検出は、チオフラビン蛍光法、Congo Redを用いた染色、FSBを用いた染色、及びアミロイド線維を認識する抗体を用いたELISAからなる群のいずれか一つにより行われる請求項1に記載のスクリーニング方法。
  3. 前記フラグメントが、フラグメントのC末端に付加された、GFP、EGFP、rsGFP、YFP、CFP、BFP及びウミシイタケ由来のGFPからなる群から選択されるいずれか一つの標識物質で標識されており、前記工程(b)におけるアミロイド線維の検出は該標識の蛍光強度を検出することにより行われる請求項1に記載のスクリーニング方法。
  4. 細胞ベースのアミロイド線維形成を抑制する物質をスクリーニングする方法であって、
    (i)培地中で細胞を培養する工程、
    (ii)凝集していない状態のトランスサイレチンのフラグメントであってトランスサイレチンの81番目から127番目の配列である配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるフラグメント、及び試験物質を培地に添加し溶解して、前記細胞に接触させる工程、
    (iii)前記培養細胞内で形成されたアミロイド線維を検出する工程、及び
    (iv)試験物質を添加しなかった対照に比べてアミロイド線維形成が抑制された場合に、前記試験物質を、アミロイド形成を抑制する物質として選択する工程、
    を含むスクリーニング方法。
  5. 前記工程(iii)におけるアミロイド線維の検出は、チオフラビン蛍光法、Congo Redを用いた染色、及びFSBを用いた染色からなる群のいずれか一つにチオフラビン蛍光法により行われる請求項4に記載のスクリーニング方法。
  6. 前記フラグメントが、フラグメントのC末端に付加された、GFP、EGFP、rsGFP、YFP、CFP、BFP及びウミシイタケ由来のGFPからなる群から選択されるいずれか一つの標識物質で標識されており、前記工程(iii)におけるアミロイド線維の検出は該標識の蛍光強度を検出することにより行われる請求項4に記載のスクリーニング方法。
  7. 前記工程(iii)におけるアミロイド線維の検出は、アミロイド線維を認識する抗体を用いた細胞ベースELISAにより行なわれる請求項4に記載のスクリーニング方法。
  8. 前記細胞がグロモテル細胞である請求項4~7のいずれか一つに記載のスクリーニング方法。
  9. ハイスループットスクリーニング分析法の一部である、請求項1~8のいずれか一つに記載の方法。

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JP2005529108A (ja) 2002-04-04 2005-09-29 アムジエン・インコーポレーテツド 薬理学的活性ペプチド/タンパク質の血清中半減期を上昇させるためのトランスサイレチンペプチド/タンパク質融合物の使用
JP2016514091A (ja) 2013-02-08 2016-05-19 ミスフォールディング ダイアグノスティクス, インコーポレイテッド トランスサイレチン抗体およびその使用

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