ここに開示され、請求の範囲に要求された発明概念の少なくとも1つの実施形態について、代表的な図面、実験、結果、および実験手順によって、説明する前に、本発明の概念は、本出願において、以下に記載されるあるいは、図面、実験および/または結果に示される、成分の構成およびアレンジメントの詳細に何ら限定されるものではないことが理解されるべきである。発明概念は、他の実施形態においても可能であり、また種々の方法において実施することが可能である。そういうものとして、それゆえ、本明細書において用いられる言葉は、最も広い可能な範囲と意味を意図するものであり、また実施形態は代表的なものであることを意味し、網羅的なものを意味するものではない。また、本明細書において用いられた表現法および用語は、記述の目的のためにあって、限定的に見なされるべきでないことが理解されるべきである。
本明細書において別途、特に定義しない場合、ここに開示され、請求の範囲に要求された発明概念に関して使用された科学的および専門的用語は、当業者に一般的に理解されている意味を持っているものである。さらに、文脈によって特に要求されない場合、単数形の用語は、複数形および複数の用語を含んでいるものとする。概して、本明細書において述べられる、細胞および組織培養、分子生物学、並びにタンパク質およびオリゴ−またはポリ−ヌクレオチド化学およびハイブリダイゼーション、に関連して用いられる標準名称、およびこれらの技術は、当分野においてよく知られており、一般的に使用されるものである。標準的技術は、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに、組織培養法および形質転換(例えば、電気穿孔法、リポフェクション)に用いられる。酵素反応と純化技術は、製造者の仕様書に従って、あるいは当分野において一般的になされるように、あるいは本明細書中において記載するように、行なわれる。前述の技術と手順は、当分野でよく知られている周知の方法に従って、並びに、本明細書中で引用され、記述された、多くの一般的なおよびより詳細な文献において記載されるように、一般的に実施される。例えばサムブルックら、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル(第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス、子^ルドスプリングハーバー、ニューヨーク(1989年)[Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)]、およびコーリガンら、カレント プロトコルズ イン イムノロジー(カレント プロトコルズ、ウィーレイ インターサイエンス(1994年)[Coligan et al. Current Protocols in Immunology (Current Protocols, Wiley Interscience (1994)]を参照のこと。これらの文献はその関連により、本明細書中に組込まれる。本明細書において記載される分析化学、有機合成化学、並びに、医薬および薬化学に関する専門的用語、これらの実験手順およびおよびこれらの技術は、当分野において、よく知られているものであり、また一般的に使用されるものである。標準的技術は、化学合成、化学分析、薬剤調製、処方、供給、および患者の治療に使用される。
本明細書で参照されたすべての刊行物と特許出願は、本願において開示され、そして請求の範囲に要求された発明概念に関係する当業者の技能のレベルを暗示するものである。これらすべての刊行物と特許出願は、個々の刊行物または特許出願が、関連により本明細書中に組込まれるものであると、明確にかつ個々に示したものと同一の程度をもって、関連により本明細書中に組込まれるものである。
本願において開示され、そして請求の範囲に要求されたすべての組成物および/または方法は、本明細書の開示に照らして、過度の実験を行なうことなく、製造することおよび実施することができるものである。本願において開示され、そして請求の範囲に要求された発明概念の組成物および方法は、好ましい実施形態に照らして記載されているが、発明概念のその概念、本質および範疇を逸脱することなく、当該組成物および/または方法に対して、および本明細書において述べられた方法の各段階の順序において、種々の変更が適用可能であることは、当業者にとって明らかであろう。当業者にとって明らかであるそのような全ての置換および変更は、添付の請求の範囲によって定義されるような発明概念の本質、範疇およびその概念の範囲内のものであると考えられるものである。
本開示に従って利用される場合、特に別途示されない限り、以下の用語は、以下の意味を持ってると、理解されているものであろう:
請求の範囲および/または明細書において「〜から構成される」[comprising]という用語と共に用いられる単語“a"または“an"の使用は、「1つ」を意味するかもしれませんが、また、それも「1つまたはそれ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1以上」の意味と一致するものである。開示は、代替手段および「および/または」[and/or]である定義を支持するが、請求の範囲における用語「または」[or]の使用は、代替手段のみに関することを明示的に示すまたは代替手段が相互に排他的である場合以外には、「および/または」[and/or]を意味するために使用される。本出願全般を通じて、用語「約」[about]は、装置、値を決定するのに使われる方法に関する固有の変動、または研究対象群の中に存在する変動、を含む値を示すために用いられる。「少なくとも1つ」[at least one]という用語の使用は、1つ並びに、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むがこれらに何ら限定されるわけではない、1つ以上の任意の量を包含するものであると理解されるべきである。「少なくとも1つ」という用語は、それが付されている用語に応じて、100あるいは1000ないしそれ以上まで広がり得、さらに、100または1000の量は、より高い限度もまた満足な結果を生じ得るゆえに、これらが限度であると考慮されるべきではない。
用語「約」[about]は、装置、値を決定するのに使われる方法に関する固有の変動、および/または研究対象群の中に存在する変動、を含む値を示すために用いられる。
請求の範囲および明細書において用いられる場合、「〜から構成される」[comprising](および"comprise"および"comprises"のような、「〜から構成される」[comprising]の任意の形態)、「〜を有する」[having](および"have"および"has"のような、「〜を有する」[having]の任意の形態)、「〜を含む」[including](および"includes"および"include"のような、「〜を含む」[including]の任意の形態)、または「〜を包含する」[containing](および"contains"および"contain"のような、「〜を包含する」[containing]の任意の形態)の語群は、非排他的ないし解放端的なものであり、付加的な、言及されていない要素または方法工程を排除するものではない。
本願において用いられる「またはそれらの組合わせ」[or combination thereof]の用語は、この用語に先行する列挙された項目の全ての順列組合わせを示すものである。例えば、「A、B、C、またはそれらの組み合わせ」は、Aか、Bか、Cか、ABか、ACか、BCか、またはABCかの、少なくとも1つを含むことを意図するものであり、そしてある特定の文脈において順序が重要である場合には、さらにまたBA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABも含まれる。この例で続けると、明白に含まれているのは、1ないしそれ以上の項目ないし用語の反復を含む組合わせ、例えば、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど、である。当業者は、文脈から明らかである場合以外では、どんな組み合わせにも項目ないし用語の数に何ら制限が通常ないことを理解するであろう。
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」の用語は、アミノ酸残基の重合体について言及するために本願において用いられる。本願において使用される「ポリペプチド」という用語は、天然タンパク質、タンパク質フラグメント、またはポリペプチド配列の類似体を示す総称である。したがって、天然タンパク質、タンパク質フラグメント、および類似体はポリペプチド類の種群である。本願において用いられる「単離ペプチド/ポリペプチド/タンパク質」「isolated peptide/polypeptide/protein]という用語は、cDNA、組換え型RNA、合成起源またはこれらのいくつかの組合せを意味するものであり、その起源、または由来の源によって、「単離ペプチド/ポリペプチド/タンパク質」は、(1)自然界に見出されるペプチド/ポリペプチド/タンパク質に関連しているものではない、(2)同じ源からの他のペプチド/ポリペプチド/タンパク質から遊離されたものである、例えば、マウスタンパク質群がない、(3)異なる種からの細胞によって発現される、および/または、(4)自然界において発生するものではない、というものである。
本願において使用される場合、「アミノ酸」という用語は、天然であるかまたは合成であるかにかかわらず、アミノ官能基と酸官能基の双方を含み、そして天然に発生するアミノ酸の重合体中に含まれることのできる、すべての分子を包含するものである。代表的なアミノ酸は、天然に発生するアミノ酸;その類似体群、誘導体群および同属体群; 異形側鎖を有するアミノ酸類似体群; ならびに、前記したいずれかのものの任意の全ての立体異性体群を含むものである。
「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、互換性を持って使用される。これらは、任意の長さのヌクレオチド群(デオキシリボヌクレオチドか、リボヌクレオチドのいずれでもよい)の重合形態、またはその類似体を意味するものである。以下は、ポリヌクレオチドの非制限的な例である: 遺伝子または遺伝子フラグメントのコード化または非コード化領域群、連鎖解析から定義された遺伝子座群(遺伝子座)、エキソン群、イントロン群、メッセンジャーRNA(mRNA)群、転移RNA群、リボソームRNA群、リボザイム群、cDNA群、組換え型ポリヌクレオチド群、分枝ポリヌクレオチド群、プラスミド群、ベクター群、任意の配列の単離DNA群、任意の配列の単離RNA群、核酸プローブ群、およびプライマー群。ポリヌクレオチドはメチル化ヌクレオチドやヌクレオチド類似体のような、修飾ヌクレオチドから構成され得る。もし存在しているなら、ヌクレオチド構造への修飾は、重合体の組み立ての前または後に行われ得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識成分との結合によることのごとき、さらなる修飾をなされ得る。「単離核酸」および「単離ポリヌクレオチド」という用語は、互換性を持って使用される。核酸またはポリヌクレオチドは、(1)「単離ポリヌクレオチド」が自然界に見出されるポリヌクレオチドの全体または一部に関連しているものではない、(2)自然界において結合しないポリヌクレオチドに結合している、または(3)より大きな配列の一部として自然界において発生しない、場合には、「単離された」と考慮されるものである。
本願において用いられる「ベクター」という用語は、それが結合された別の核酸を輸送することができる核酸分子を意味することを意図するものである。ベクターの1つのタイプは、「プラスミド」であり、これは付加的DNAセグメントがその内部に結合されているものであってもよい円形の二本鎖DNAループを意味するものである。ベクターの別のタイプは、ウイルス性ベクターであり、ここにおいて付加的DNAセグメントがウイルス・ゲノムに結合されているものであってもよいものである。あるベクター群は、それらが導入される宿主細胞の中で自律複製ができるものである(例えば、複製の細菌性開始点を有する細菌性ベクター群およびエピゾーム性哺乳類ベクター群)。他のベクター群(例えば、非-エピゾーム性哺乳類ベクター)は、宿主細胞の中への導入において、宿主細胞のゲノムと組み込まれることができ、その結果、宿主ゲノムと共に複製される。さらにまた、あるベクター群は、遺伝子の発現を引き起こすことができるものである。そのようなベクター群は、本願において、「組換え型発現ベクター」(または、単に「発現ベクター」)と呼称される。
本願において使用される場合、ある物に付される「自然に発生する〜」[naturally-occurring]という用語は、その物が自然界において見出され得るという事実を意味するものである。例えば、有機体(ウイルスを含む)中に存在しかつ自然界において起源から単離されることができ、また研究所ないしその他の所において人兼によって作為的に修飾されたものでない、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、「自然に発生する」ものである。「自然に発生する〜」という用語は、本願において「天然の〜」という用語と、互換性を持って使用され得るものである。
本願において示した「選択的に交雑形成する」[selectively hybridize]という用語は、検出可能でかつ特異的な結合を意味するものである。本発明の概念に係るポリヌクレオチド群、オリゴヌクレオチド群、およびペプチド/ポリペプチド/タンパク質をコード化するそれらのフラグメントは、非特異的核酸への検出可能な結合のかなりの量を最小化するハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で、核酸鎖と選択的に交雑形成する。高度に厳密な条件群が、当分野において公知であるおよび本願において述べられるような選択的ハイブリダイゼーション条件群を達成するために用いられることができる。一般に、本発明概念の、ポリヌクレオチド群、オリゴヌクレオチド群およびフラグメント群と、興味対象の核酸配列との間の核酸配列相同性は、少なくとも80%であり、より典型的には、少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%のより高い相同性となるであろう。2つのアミノ酸配列は、これらの配列間に、部分的または完全な同一性があれば、相同である。例えば、85%の相同性は、2つの配列が最大の一致をもって位置合わせされた際に、アミノ酸群の85%が同一であることを意味する。ギャップ(位置合わせされている2つの配列のどちらかのもの)は、一致を最大とする際に許容されるものであり; 5ないし以下のギャップ長が好ましく、さらに、2ないしそれ以下のギャップ長がより好ましいものである。本願において、代替的に、そして望ましく用いられる用語である、2つのタンパク質配列(または、これらから誘導された、少なくとも30のアミノ酸の長さを有するポリペプチド配列)が相同であるとは、変異データマトリックスおよび6ないしそれ以上のギャップペナルティを有するプログラムALIGNを用いて、(標準偏差ユニットにおける)5以上のアライメントスコアを有する場合である。デイホッフ、エム、オー、アトラス オブ プロテイン シーケンス アンド ストラクチャー中、101〜110頁(第5巻、ナショナル バイオメディカル リサーチ ファウンデーション(1972年)[Dayhoff, M. O., in Atlas of Protein Sequence and Structure, pp. 101-110 (Volume 5, National Biomedical Research Foundation (1972)]およびその巻の補遺2の1〜10頁[Supplement 2 to this volume, pp. 1-10]を参照のこと。当該2つの配列またはその部分は、それらのアミノ酸群が、ALIGNプログラムを用いて最適に位置合わせした際に50%同一性より高いかあるいはそれに等しい同一性である場合に、より好ましい相同性である。「〜に対応している」[correesponding to]という用語は、あるポリヌクレオチド配列が、参照ポリヌクレオチド配列の全部または一部分に相同である(すなわち、厳密に進化的に関係することなく、同一である)、またはあるポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一であることを意味するために、本願において用いられる。 これと対比して、「〜と相補的である」[complementary to]という用語は、相補的な配列が、参照ポリヌクレオチド配列の全部または一部分に相同である相同であることを意味するために、本願において用いられる。例えば、ヌクレオチド配列"TATAC"は、参照配列"TATAC"に対応しており、参照配列"GTATA"と相補的である。
次の用語は2つまたはそれ以上のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の配列関係を説明するのに使用される: 「参照配列」[reference sequence]、「比較ウィンドウ」[comparison window]、「配列同一性」[sequence identity]、「配列同一性の割合」[percentage of sequence identity]、および「実質的同一性」[substantial identity]。「参照配列」は、配列比較に関する基礎として使用される定義された配列であり;参照配列は、例えば、全長cDNAまたは配列表で与えられる遺伝子配列のセグメントとして、または完全なcDNAまたは遺伝子配列から構成され得るものである、比較的長い配列のサブセットであり得る。一般に、参照配列は、長さが少なくとも18のヌクレオチドまたは少なくとも6つのアミノ酸であり、頻繁に、長さが少なくとも24のヌクレオチドまたは少なくとも8つのアミノ酸であり、さらに、しばしば、長さが少なくとも48のヌクレオチドまたは少なくとも16つのアミノ酸である。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ(1)当該2つの分子間で類似する、1つの配列(すなわち、完全ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)で構成され得、そして(2)さらに当該2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間で異なる配列で構成され得るものであるので、2つ(ないしはそれ以上)の分子間での配列比較は、典型的には、配列類似性の局地的領域を特定し、そして比較するための「比較ウィンドウ」上で、2つの分子の配列をと比較することによって行われる。本願において使用される「比較ウィンドウ」は、少なくとも18個の連続したヌクレオチド位置または6つのアミノ酸配列の構想的セグメントを指すものであり、ここにおいて、1つのポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、少なくとも18個の連続したヌクレオチドまたは6つのアミノ酸配列である参照配列と比較され、そして比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分が、参照配列(付加または欠失を有していない)と、これら2つの配列の最適な位置合わせにおいて比較された際に、この比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分が、20%ないしそれ以下の付加、欠失、置換、およびその他(すなわち、ギャップ)を有し得るものである。「比較ウィンドウ」を位置合わせするための配列の最適の位置合わせは、スミスとウォーターマン[Smith and Waterman] (Adv. Appl. Math., 2:482 (1981))の局地的相同性アルゴリズムによって、ニードルマンとウィンシュ[Needleman and Wunsch] (J. Mol. Biol., 48:443 (1970))の局地的相同性アルゴリズムによって、ピアーソンとリップマン[Pearson and Lipman] (Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 85:2444 (1988))の相似法に関する研究によって、種々の方法で生成されたこれらのアルゴリズム群の自動計算機化された実施(ザ ウィスコンシン ジェネティック ソフトウェア パッケージ リリース 7.0、(ジェネティック コンピューター グループ、ウィスコンシン州マディソン、サイエンス ドライブ575 )、ジーンワークス、またはマックベクター ソフトウェア パッケージ中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA [GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, (Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.), Geneworks, or MacVector software packages])によって、あるいは検査によって、実施されることができ、そしてこれらの種々の方法によって得られた最高の位置合わせ(すなわち、比較ウインドウにおける相同性の最高パーセンテージとなる。)が選択される。
「配列同一性」という用語は、比較ウィンドウの上で、2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列が同一である(すなわち、ヌクレオチド単位での、あるいは残基単位において)ことを意味する。「配列同一性の割合」という用語は、2つの最適に位置合わせされた配列を比較ウィンドウ上で比較し、同じ核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)または同じ残基が両方の配列で起こる位置の数を一致した位置の数を得るために計測し、この一致した位置の数を比較ウィンドウにおける位置の全数(すなわち、ウィンドウのサイズ)で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって、計算されるものである。本願において用いられる「実質的同一性」は、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)位置の比較ウィンドウにおいて、頻繁には少なくとも24-48ヌクレオチド(8-16 アミノ酸)位置の比較ウィンドウにおいて、参照配列と比較した際に、例えば、少なくとも90〜95%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性などのように、少なくとも85%の配列同一性を有する配列により、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸が構成されている、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の特性を指す用語であり、ここにおいて、配列同一性の割合は、比較ウィンドウ上で参照配列の合計20%ないしそれ以下の欠失または付加を含み得る配列に、参照配列を比較することによって計算されたものである。なお、参照配列は、より大きな配列のサブセットであり得る。
本願において用いているように、20個の通常のアミノ酸とそれらの略語は慣例的用法に従うものである。イムノロジー−−ア シンセシス(第2版、イー エス ゴラブおよびディー アール グレン編集、シナウアー アソシエートス、マサチューセッツ州サンダーランド (1991年))[Immunology--A Synthesis (2nd Edition, E. S. Golub and D. R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))]を参照のこと。なお、本書はその関連により本明細書中に取り込まれる。20個の通常のアミノ酸の立体異性体群(例えば、D−アミノ酸群)、または、α−,α−二置換型アミノ酸群、N−アルキルアミノ酸群、乳酸、その他の特殊なアミノ酸などの非天然アミノ酸もまた、本願において開示され、そして請求の範囲に要求された発明概念のポリペプチド類のための好ましい成分であり得る。特殊なアミノ酸の例は、4-ヒドロキシプロリン、α-カルボキシグルタメート、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-フォスフォセリン、N-アセチルセリン、N-フォルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、σ-N-メチルアルギニン、並びにその他の同様のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)を含むものである。本願において用いられるポリペプチド表記法においては、標準的な用法と規則に従い、左手方向がアミノ末端方向であり、右手方向がカルボキシ末端方向である。
ポリペプチドに適用される場合、「実質的同一性」という用語は、2つのペプチド配列が、例えば、規定値ギャップ重量を用いるプログラムGAPやBESTFITなどによって、最適に位置合わせされた際に、例えば、少なくとも90パーセントの配列同一性、少なくとも95パーセントの配列同一性、または少なくとも99パーセントの配列同一性などのように、少なくとも80パーセントの配列同一性を共有することを意味する。望ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なるものとされている。保存的アミノ酸置換は、同様の側鎖を有する残基同士の相互置換性を意味するものである。例えば、脂肪族側鎖を有しているアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり; 脂肪族水酸基側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンとトレオニンであり; アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンとグルタミンであり; 芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり; 塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニンおよびヒスチジンであり; そして、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインとメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換のグループは、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
参照ポリペプチドの「異形」[variant]という用語は、参照ポリペプチドと較べて1つないしそれ以上のアミノ酸の置換、欠失または付加を有するポリペプチドを意味する。アミノ酸置換は、「保存的」[conservative]あるいは「非保存的」[non-conservative]であり得る。「保存的」アミノ酸置換は、特に限定されるわけではないが例えば、大きさおよび電荷などのような、特性の同じものを有する他のアミノ酸での、ポリペプチド中のアミノ酸の置換を意味するものである。保存的置換は、それらの側鎖において関係づけられるアミノ酸のファミリーの中で行われるものである。一般に、遺伝学的にコード化されたアミノ酸は、一般に、(1)酸性であるアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩; (2)塩基性であるリジン、アルギニン、ヒスチジン; (3) 非極性であるアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン; および(4) 非荷電極性であるグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンというファミリーに分類される。より特別なファミリーは以下の通りである:セリンとトレオニンは脂肪族水酸基ファミリーであり; アスパラギンとグルタミンはアミド含有ファミリーであり; アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンは脂肪族ファミリーであり; そして、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは芳香族ファミリーである。例えば、ロイシンのイソロイシンかバリンでの単独置換、アスパラギン酸塩のグルタミン酸塩での単独置換、トレオニンのセリンでの単独置換、またはあるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸での同様の置換が、結果として生じる分子の結合または特性において大きな影響を与えないこと期待することは妥当であり、特に置換がフレームワーク部位の範囲内のアミノ酸に関わらない場合にはなおさらである。アミノ酸交換が官能性ペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性を検査することによって容易に決定することができる。抗体または免疫グロブリン分子のフラグメントまたは類似体は、当業者によって容易に調製することができる。フラグメントまたは類似体の好ましいアミノ−およびカルボキシ−末端は、官能性ドメインの境界の近くに生じる。構造的で官能性のドメイン群は、当該ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを、公共のまたは専有の配列データベースと比較することによって同定することが可能である。望ましくは、自動計算機化された比較法が、配列モチーフを同定するため、あるいは公知の構造および/または官能性を有する他のタンパク質に生じる予測されたタンパク質配座ドメインを同定するために使用される。公知の三次元構造に折りたたまれたタンパク質配列を同定するための方法は公知である(ボウイら、サイエンス、253:164 (1991年)[Bowie et al., Science, 253:164 (1991)])。したがって、前述した例は、当業者が、本願において開示され、そして請求の範囲に要求された本発明概念に係る官能的ドメイン群を定義するために用いられ得る配列モチーフおよび構造的配座を認識することができることを、実証するものである。
好ましいアミノ酸置換は、 (1) タンパク質分解に対する感受性を減ずる、(2) 酸化に対する感受性を減ずる、(3) タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変容する、(4) 結合親和性を変容する、および(5) このような類似体のその他の物理化学的または官能的特性を授けるまたは修飾する、類似体は、自然に発生するぺプチド配列以外の、配列の様々な変異を含むことが可能である。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(望ましくは保存的アミノ酸置換)は、自然に発生する配列において行われ得るものである(望ましくは、分子間接合を形成するドメイン(ドメイン群)の外部であるポリペプチドの部分で)。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的な特性を実質的に変更するべきではない(例えば、交換アミノ酸は、親配列で生じているらせんを破壊するか、または親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造を撹乱させる傾向を有するべきではない。)。当分野で認識されたポリペプチド二次的および三次的構造の例は、プロテインズ、ストラクチャーズ アンド モレキュラー プリンシプルズ(クレートン編、ダブリュ エッチ フリーマン アンド カンパニー、ニューヨーク州 (1984年) [Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton, Ed., W. H. Freeman and Company, New York (1984))]; イントロダクション ツゥ プロテイン ストラクチャー(ブランデンおよびジェイ トゥーズ編、ガーランド パブリッシング、ニューヨーク州ニューヨーク (1991年) [Introduction to Protein Structure(c) (Branden and J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, N.Y. (1991))]; および、ソーントンら (ネイチャー 354: 105(1991年)) [Thornton et al. (Nature 354:105 (1991))]において記載されており、これらの文献はその関連によりそれぞれ本明細書中に取り込まれる。
本願において用いられる「ポリペプチドフラグメント」という用語は、アミノ末端欠失および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残存するアミノ酸配列が、自然に発生する配列における対応している位置群と同一であるポリペプチドを意味する。ポリペプチドフラグメントは、参照ポリペプチドの長さよりも短い任意の長さであり得る。
「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、そして特に、モノクローナル抗体群(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、および所望の生物学的活性を発揮する限りにおいての抗体フラグメントを包含するものである。したがって、「抗体」あるいは「抗体ペプチド(抗体ペプチド群)」という用語は、全長免疫グロブリン分子(すなわち、完全抗体)、または、特異的抗原結合に関して当該完全抗体と競合するそれの結合フラグメントを指すものである。結合フラグメントは、 組み換えDNAの技術によって、または完全抗体の酵素的または化学的開裂によって、調製され得る。結合フラグメントは、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv、ジスルフィド結合Fv、Fd、二特異性抗体群[diabodies]、一本鎖抗体群、単一ドメイン抗体群、NANOBODIES(登録商標名)、および、少なくとも完全抗体の可変領域の一部を保有するその他の抗体フラグメントを含むものである。例えば、ハドソンら (ネイチャー メディシン、9: 129-134 (2003年) [Hudson et al. (Nature Med., 9:129-134 (2003))]を参照のこと。)
本願において用いられる抗体の「抗原結合フラグメント」または「抗原結合部位」という用語は、抗原に対して結合する能力を保持する、抗体の1個ないしそれ以上のフラグメントを指すものである。抗体の抗原結合機能は、完全抗体のフラグメント群によって発揮され得る。抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に包含される結合フラグメントの例としては、特に限定されるわけではないが、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv、ジスルフィド結合Fv、Fd、二特異性抗体群[diabodies]、一本鎖抗体群、NANOBODIES(登録商標名)、単離CDRH3、および、少なくとも完全抗体の可変領域の一部を保有するその他の抗体フラグメントがある。これらの抗体フラグメント群は、従来の組換えおよび/または酵素的技術を使用することで得られ、完全抗体群と同じ方法において抗原結合に関してスクリーニングされる。
「CDR」およびその複数形の「CDRs」という用語は、抗体または抗体フラグメントの結合特性を決定する、抗体または抗体フラグメントの相補性決定領域(CDR)を指すものである。多くの例において、3つのCDRsが、1つの軽鎖可変領域に存在しており(CDRL1、CDRL2、およびCDRL3)、また3つのCDRsが重鎖可変領域に存在している(CDRH1、CDRH2、およびCDRH3)。CDRsは、抗体分子の官能的活性に貢献しており、そして足場ないしフレームワーク領域を構成するアミノ酸配列群によって分離される。 様々なCDRsの中で、CDR3配列群、および特にCDRH3は、最も多様なものであり、したがって、抗体の特異性に最も強い貢献を有している。CDRsを決定するための少なくとも2つの技術: (1) 異種間配列可変性に基づくアプローチ(すなわち、カバットら、シーケンシズ オブ プロテインズ オブ イムノロジカル インタレスト(ナショナル インスティテュート オブ ヘルス、メリーランド州ベセスダ、 (1987年) [Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institute of Health, Bethesda, Md. (1987)]、関連により本明細書中に本文献全体が取り込まれる。)、および(2) 抗原−抗体複合体の結晶写真的研究に基づくアプローチ(コチアら、ネイチャー、、342:877 (1989年) [Chothia et al., Nature, 342:877 (1989)]、関連により本明細書中に本文献全体が取り込まれる。)が、存在する。
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞レセプターに対して特異的に結合し得る任意のタンパク質決定基を含むものである。いくつかの実施形態においては、1つのエピトープは、1つ抗体によって特異的に結合される1つの抗原の1つの領域である。通常、エピトープ性決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基などのような分子の、化学的に活性な表面配列を含んでいる。いくつかの実施形態においては、エピトープは、特異的な三次元構造的な特徴(例えば、「配座エピトープ」[conformational epitope])、並びに特異的な電荷特性を有するものであり得る。
あるエピトープは、ある特定の抗体がこのエピトープおよび他のエピトープの双方に対して特異的に結合する場合には、このエピトープは当該他のエピトープと「同一」であると定義される。いくつかの実施形態においては、異なる一次アミノ酸配列を有するポリペプチド群が、同一であるエピトープ群から構成され得る。また、いくつかの実施形態では、同一であるエピトープ群は、異なる一次アミノ酸配列を有し得る。異なる抗体群は、同一エピトープへの特異的結合に関して競合する場合には、当該同一エピトープに対し結合すると言われる。
1つの抗体が、タンパク質および/または巨大分子の複合混合物中において1つの抗体を優先的に認識する場合、当該抗体は、当該抗原に「特異的に結合する」。いくつかの実施形態においては、抗体は、特定のエピトープに対し特異的に結合する抗原結合部位を有している。このようないくつかの実施形態においては、当該抗原は、異なった抗原群がその特定のエピトープまたは密接に関連するエピトープ群を有する限り、これらの異なった抗原群を結合する能力を有する。いくつかの例においては、例えば、異なった種からの相同タンパク質群は、同一のエピトープを有し得る。いくつかの実施形態においては、抗体は、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下または10-9 以下の解離定数をもって、抗原と特異的に結合する。ある抗体がレセプターまたはリガンド(すなわち、対抗レセプター)に特異的に結合する場合、それは当該レセプターのリガンドに対する接着を実質的に抑制し得る。本願において用いられるように、抗体の過剰が、リガンドに結合するレセプターの量を少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または、少なくとも約90%減少させる(生体外(イン ビトロ)競合結合測定法で測定された場合)場合、当該抗体は、当該レセプターの当該リガンドに対する接着を実質的に抑制する。
「単離」抗体は、これが産生された環境の成分から、分離されたおよび/または回収されたものである。その産生環境の汚染成分群は、当該抗体の診断的または治療的な用途を妨害するものであり、そして、酵素群、ホルモン群、その他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質群を含み得るものである。いくつかの実施形態においては、抗体は、少なくとも3つの異なった方法で、計測可能なものとして純化され得る: 1) ロウリー法[the Lowry method]で測定した際に、例えば、75質量%以上、85質量%以上、95質量%以上、または99質量%以上というような、50質量%より大きなものとする; 2) 回転カップシークエンテーター[spinning cup sequentator]の使用により、例えば、配列の少なくとも15残基というように、N端末の、または、内部のアミノ酸配列の少なくとも10残基を得るのに十分な程度とする; または3) 、クーマシーブルー、または、好ましくはシルバー染色を用いて還元または非還元条件下におけるSDS-PAGEにより均質化する。抗体が産生される環境における少なくとも1つの成分が存在しないため、単離抗体は、組換え型細胞中の元の位置の抗体を含んでいる。しかしながら、通常、単離抗体は少なくとも1回の純化工程によって調製されるであろう。さらに、「単離抗体」は、異なった抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まないものである。しかしながら、単離抗体は、他の、関連する抗原群に何らかの交叉反応性を持っている可能性がある。
「抗体変異体」という用語は、アミノ酸残基の1つまたはそれ以上が変更された、抗体のアミノ酸配列抗体のアミノ酸配列変異体を指す。そのような変異体は、抗体の重鎖または軽鎖可変領域のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列と、100%未満の配列同一性または類似性、例えば、少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%などというような、同一性または類似性を必然的に有するものである。
本願において用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、同一エピトープに特異的に結合する実質的に均質な抗体の個体群から得られる抗体を意味する。すなわち、少量で存在するかもしれない起こり得る自然発生的な突然変異を除いて、前記個体群を構成する個々の抗体は同一である。異なる決定基群(エピトープ群)に対して指向する異なる抗体群を典型的に含む旧来の抗体(ポリクローナル抗体)とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の上にただ一つの決定基に対して指向する。それらの特異性に加えて、1つの産生方法においてモノクローナル抗体は1つのハイブリドーマ培地によって合成され、そして、それゆえこれらは他の免疫グロブリン群により汚染されないといった利点を、モノクローナル抗体は有している。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体の個体群から得られるという、抗体の特性を示すものであり、そして、ある特定の方法による抗体の産生を必要とするものであるといった意味に解釈されるべきではない。例えば、1つの実施形態では、本願において開示され、そして請求の範囲に要求された本発明概念に従い産生されるモノクローナル抗体は、コーラーとミルスタイン(ネイチャー、256:495 (1975年)[Kohler and Milstein (Nature, 256:495 (1975)])によって最初に開示されたハイブリドーマ法によって得られ得るものである。
本願において開示され、そして請求の範囲に要求された本発明概念に係るモノクローナル抗体は、特に限定されるわけではないが、例えば、周密免疫処理要綱[deliberate immunization protocol]の結果; 疾患または癌の経過の間に自然に抗体の産生をもたらす免疫反応の結果; ファージ由来抗体などといったものを含む、当分野において公知の任意の方法によって産生され得る。上に列挙したハイブリドーマ産生法に加えて、本願において開示され、そして請求の範囲に要求された本発明概念に係るモノクローナル抗体は、特に限定されるわけではないが、例えば、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと。); ファージディスプレイライブラリーからの抗体フラグメントの単離(例えば、クラックソンら、ネイチャー、352: 624-628 (1991年) [Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)]およびマークスら、ジェィ. モル. バイオル.、222:581-597 (1991年) [Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)]を参照のこと。); ならびの種々のその他のモノクローナル抗体産生技術(例えば、ハーローとレイン (1988年) アンチボディ:ア ラボラトリ マニュアル (コールドスプリングハーバー ラボラトリー、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー[Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.]を参照のこと。)などのような、その他の種々の方法によって産生可能である。
例えば、ひとたび個々のB細胞が同定され、および/またはモノクローナル抗体が産生される、というように、ひとたび抗体が得られると、これらの抗体の可変領域をコード化する配列を得ることができる。可変領域配列は、例えば、ハイブリドーマ、B細胞またはファージによって生産される抗体タンパク質を最初に配列決定にかけ、そしてコード化核酸配列を決定する、ことによって得ることができる。1つの実施形態では、免疫グロブリン可変領域(VHおよびVL)DNAまたはcDNAが、代わりに配列決定される。ハイブリドーマ細胞系統または単離B細胞から抗体が誘導される場合には、可変領域をコード化するcDNAsは、例えば、バブクックら[Babcook et al.](プロク. ナトル. アカド. サイ. ユーエスエイ 93:7843-7848 (1996年) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:7843-7848 (1996)]および国際公開公報WO92/02551。)によって述べられた方法によって、PCRを用いて増幅され得る。これら双方の文献の内容は、関連により、それらの全体が本明細書中に明確に取り入れられる。
「キメラ」抗体は、少なくとも2つの異なった源からの成分群から作製された抗体を指すものである。いくつかの実施形態においては、キメラ抗体は、別の分子、例えば、第2の種由来の抗体の一部に融合された、第1の種由来の抗体の一部から構成されるものである。あるこのような実施形態では、キメラ抗体は、ヒト由来抗体の一部に融合された、非ヒト動物由来の抗体の一部から構成される。また、あるそのような実施形態では、キメラ抗体は、第2の動物からの抗体の一部に融合された、第1の動物由来の抗体の可変領域の全部または一部から構成される。特に限定されるわけではないが、例えば、キメラ抗体は、ヒト由来の抗体の定常領域に融合された非ヒト動物由来の抗体の可変領域の全部または一部から構成される。
本願において開示され、そして請求の範囲に要求された本発明概念に係るモノクローナル抗体の利用は、特に限定されるわけではないが、例えばヒトなどのような、対象への当該モノクローナル抗体の投与を必要とするかもしれない。しかしながら、モノクローナル抗体が、齧歯動物などの非ヒト動物で産生される場合には、このような抗体のヒト患者への投与は、一般に、免疫反応を惹起するであろう。ここで、当該免疫反応は、抗体の前記配列に対して向けられる。免疫反応が抗体の配列に向けられるところで。このような反応は、その治療法の持続時間と有効性を制限する。そのような問題を解決するために、本願において開示され、そして請求の範囲に要求された本発明概念に係るモノクローナル抗体は、「ヒト化」[humanized]される。すなわち、当該抗体は、所望のエピトープに関する抗体親和性は維持しつつ、当該抗体の1つないしそれ以上の抗原部位を除去し、あるヒト抗体の類似部位をこれらと置換するように工学処理される。この工学処理は、少数のアミノ酸を包含するのみであっても、または完全な抗体の相補性決定領域だけを残して、抗体の完全フレームワーク領域を含むものであってもよい。抗体をヒト化するいくつかの方法が、当分野において公知であり、そして、2001年1月30日にクィーンら[Queen et al.]に対して発せられた米国特許第6,180,370号、2000年4月25日にブリッケル[Brickell]に対して発せられた米国特許第6,054,927号、1999年2月9日にスチュディニカ[Studnicka]に対して発せられた米国特許第5,869,619号、1999年1月19日にリン[Lin]に対して発せられた米国特許第5,861,155号、1998年1月27日にロドリクェズら[Rodriquez et. al.]に対して発せられた米国特許第5,712,120号、1989年3月28日にカビリーら[Cabilly et al.]に対して発せられた米国特許第4,816,567号において開示されている。これらの特許の明細書は、関連により、それらの全体が本明細書中に明確に取り入れられる。
上述したように、「ヒト化」抗体は、ヒト抗体により近く合致(アミノ酸配列において)するように変更された非ヒト抗体を指すものである。これゆえ、ヒト化抗体は一種のキメラ抗体である。上述したように、抗体は、主に、重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDRs)に位置しているアミノ酸残基を介して、目標抗原と相互作用する。これゆえ、個々の抗体の相互間では、CDRs内のアミノ酸配列は、CDRs外の配列よりも多様なものである。CDR配列は、ほとんどの抗体−抗原相互作用の原因となるゆえ、特異的な自然に発生した抗体の特性を模倣する組換え型抗体を発現させることが可能であり、これは、当該自然に発生した抗体からのCDR配列を、例えば、ヒト抗体フレームワーク領域のような、異なった特性を有する異なった抗体からのフレームワーク領域にグラフト化する発現ベクターを構築することによって行われる。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータベースまたは公開された文献から入手可能である。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子に係る生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(インターネットにおけるwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseにて入手可能)、並びに、カバット イー エイら、(1991年) シーケンシズ オブ プロテインズ オブ イムノロジカル インタレスト、第5版、ユーエス デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシズ、エヌアイエッチ パブリケーション、No. 91-3242 [Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242]; トムリンソン アイ エムら、(1992年) ザ レペトリエ オブ ヒューマン ジャームライン ブイエッチ シーケンシズ リビールズ アバウト フィフティ グループス オブ ブイエッチ セグメントス ウィズ ディファレント ハイパーバリアブル ループス、ジェイ. モル. バイオル.227:776-798 [Tomlinson, I. M., et al. (1992) "The Repertoire of Human Germline VH Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops" J. Mol. Biol. 227:776-798]; およびコックス ジェイ. ピー. エルら、 (1994年)、ア ディレクトリィ オブ ヒューマン ジャーム−ライン ブイエッチ セグメントス リビールズ ア ストロング バイアス イン ゼェア ユーゼイジ、ユル. ジェイ. イムノル.、24:827-836 [Cox, J. P. L. et al. (1994) "A Directory of Human Germ-line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage" Eur. J. Immunol. 24:827-836]において、見ることが可能である。これらのそれぞれの内容は、関連により、本明細書中に明確に取り入れられる。
抗体群のヒト化形態群は、キメラ免疫グロブリン群、それの免疫グロブリン鎖群またはフラグメント群(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、または抗体群のその他の抗原結合配列群)であり、これらは基本的に、ヒト免疫グロブリンの配列から成り、そして非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含むものである。ヒト化処理は、ウィンターおよびその協力者(ジョーンズら、1986年;リッチマンら、1988年; ヴァーホイェンら、1988年)[Winter and co-workers (Jones et al., 1986; Riechmann et al., 1988; Verhoeyen et al., 1988)]の方法に従い、齧歯動物のCDRsまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することによって行うことができる(米国特許5,225,539号も参照のこと。)。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基群が、相応する非ヒト残基群によって置き換えられる。また、ヒト化抗体群は、受入抗体側と移入CDRまたはフレームワーク配列群側のいずれにも見出すことのできない残基群を有することが可能である。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および通常2つの、可変領域の実質的に全てを有しているであろう(ここでCDR領域群の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのそれらと対応しており、かつ、フレームワーク領域群の全てまたは実質的全てはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のフレームワーク領域群である)。また、ヒト化抗体は、好ましくは、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものを有しているであろう(ジョーンズら、1986年;リッチマンら、1988年; およびプレスタ、1992年 [Jones et al., 1986; Riechmann et al., 1988; and Presta, 1992])。
従来技術としては、ヒト化抗体の生成または使用に関連する公開文献が多数存在する。これらの研究の多くは、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念と共に利用することができる実施要綱群の有用な例群を教示している。特に限定されるものではないが、例えば、サンドボーンら、ガトレントロジィ、120:1330 (2001年) [Sandborn et al., Gatroenterology, 120:1330 (2001)]; ミハラら、クリン. イムノル.、98:319 (2001年) [Mihara et al., Clin. Immunol., 98:319 (2001)]; エナリら、ニューロル. レス.、23:72 (2001年) [Yenari et al., Neurol. Res., 23:72 (2001)]; モラレスら、ナクル. メド. バイオル.、27:199 (2000年) [Morales et al., Nucl. Med. Biol., 27:199 (2000)]; リチャーズら、キャンサー レス.、59:2096 (1999年) [Richards et al., Cancer Res., 59:2096 (1999)]; エナリら、エクスプ. ニューロル、153 : 223 (1998年)[Yenari et al., Exp. Neurol., 153:223 (1998)]; および、シンクラら、アンチキャンサー レス.、18:1217 (1998年) [Shinkura et al., Anticancer Res., 18:1217 (1998)]などである。これら全て文献は、関連により、それらの全体が本明細書中に明確に取り入れられる。しかしながら、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、上記に示した処理実施要綱群に何ら限定されるものではなく、そして当業者に公知のその他の処理実施要綱群も、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念に係る方法において利用可能であることが、理解されるべきである。
ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、さらに完全ヒトモノクローナル抗体群の使用を含むものである。完全ヒト抗体群は、本質的には、CDRsを含む、軽鎖と重鎖の双方の全配列がヒト遺伝子群から生じる抗体分子群に関連するものである。そのような抗体群は、ここにおいて「ヒト抗体群」[human antibodies]または「完全ヒト抗体群」[fully human antibodies]と称呼される。「ヒト抗体群」は、ヒト抗体配列群を含んでおり、非ヒト動物からの抗体配列群は含んでない。いくつかの実施形態においては、1つのヒト抗体は、天然抗体群には見られない合成の配列群を含み得る。この用語は、当該抗体群が産生される方法によっては何ら限定されない。
ヒトモノクローナル抗体群は、トリオーマ [trioma]法; ヒトB細胞ハイブリドーマ法(コズボアら、ハイブリドーマ、2:7 (1983年) [Kozbor et al., Hybridoma, 2:7 (1983)]を参照のこと。); および、ヒトモノクローナル抗体群を産生するためのEBVハイブリドーマ法(コールら、ピーエヌエイエス、82:859 (1985年)[Cole et al., PNAS, 82:859 (1985)]を参照のこと。)によって、調製することが可能である。ヒトモノクローナル抗体群は、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念の実施において利用され得、そして、ヒトハイブリドーマ群を用いることによって(コールら、ピーエヌエイエス、82:859 (1985年)[Cole et al., PNAS, 82:859 (1985)]を参照のこと。)、または生体外(イン ビトロ)でヒトB細胞群をエプスタイン‐バールウイルス[Epstein Barr Virus]を用いて形質転換することによって(コレーら、1985年[Cole et al., 1985]を参照のこと。)、で産生され得る。
さらに、ヒト抗体群は、遺伝子導入動物(例えば、内在性免疫グロブリン遺伝子群が部分的にまたは完全に不活性化されたマウス)にヒト免疫グロブリン遺伝子座群を導入することによって、製造することが可能である。誘発において、ヒト抗体産生が観測され、これは、遺伝子再配列、組み立て、および抗体レパートリーを含む全ての観点においてヒトにおいて見られるものと非常に似通っている。 このアプローチは、特に限定されるわけではないが、例えば、米国特許第5,545,807号; 第5,545,806号; 第5,569,825号; 第5,625,126号; 第5,633,425号; 第5,661,016号、並びに、マークスら、ジェイ バイオル. ケム.、267 : 16007 (1992年)[Marks et al., J Biol. Chem., 267:16007 (1992)]; ロンバーグら、ネイチャー、368: 856 (1994年)[Lonberg et al., Nature, 368:856 (1994)]; モリソン、1994年[Morrison, 1994]; フィッシュワイルドら、ネイチャー バイオテクノル.、14:845 (1996年)[Fishwild et al., Nature Biotechnol., 14:845 (1996)]; ニュウバーガー、ナット. バイオテクノル.、14:826 (1996年)[Neuberger, Nat. Biotechnol., 14:826 (1996)]; および、ロンバーグとヒューザー、イント. レブ.イムノル.、13:65 (1995年)[Lonberg and Huszar, Int Rev Immunol., 13:65 (1995)]において、記載されている。
ヒト抗体群はまた、抗原による誘発に対して、非ヒト動物の内在性抗体群よりもむしろ完全ヒト抗体群を産生するように修飾された、遺伝子導入非ヒト動物を使用することで、産生され得る(国際公開公報WO94/02602を参照のこと。)。非ヒト宿主における免疫グロブリン重鎖群および軽鎖群をコード化する内在性遺伝子が無能力化され、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン群をコード化する活性な遺伝子座群が、当該宿主のゲノムに挿入された。ヒト遺伝子群は、例えば、必要なヒトDNAセグメント群を含有する酵母人工染色体を使用することで、取り込まれる。次いで、全ての所望される修飾群を与える動物が、当該修飾群の総数よりも少ない数を有する中間遺伝子導入動物を異種交配することによって、得られる。このような非ヒト動物の1つの実施形態は、マウスであり、国際公開公報WO96/33735およびWO96/34096において開示されるように、XENOMOUSE(商標名)と呼ばれている。この動物は、完全ヒト免疫グロブリン群を分泌するB細胞を生産する。抗体群は、興味対象の免疫原での感作後に当該動物から直接得ることができ(例えば、ポリクローナル抗体の調製として)、または、これに代えて、モノクローナル抗体群を産生するハイブリドーマのような、当該該動物由来の不死化B細胞から得ることができる。さらに、ヒト可変領域群を有する免疫グロブリン群をコード化する遺伝子群は、回収され、当該抗体群を直接得るために発現されることができ、あるいはまた、単鎖Fv分子群などの抗体類似体を得るためにされに修飾さることができる。
1つの内在性免疫グロブリン重鎖の発現を欠くマウスとして例示される、非ヒト宿主を生産する方法の一例が、1999年8月17日にクッチャーラパティら[Kucherlapati et al.]に発せられた米国特許第5,939,598号において開示されており、関連により本明細書中に取り込まれる。これは、1つの胚性幹細胞中の少なくとも1つの内在性重鎖遺伝子座からJセグメント(連結部分)遺伝子群を欠失させる(当該欠失は選択マーカーをコード化する遺伝子を含む標的ベクターによって果たされる。)ことによって、当該遺伝子座の再配列を阻害し、また再配列された免疫グロブリン重鎖遺伝子座の転写物の形成を阻害すること; そして、この胚性幹細胞から遺伝子導入マウス(当該マウスの体細胞群および生殖細胞群は選択マーカーをコード化する遺伝子を含むものである。)を産することを含む、方法によって得ることが可能である。
1つのヒト抗体などのような、興味対象の1つの抗体を産生するための方法が、ホリらに1999年6月29日に発せられた米国特許第5,916,771号において開示されており、関連により本明細書中に取り込まれる。それは、1つの重鎖をコード化する1つのヌクレオチド配列を含む発現ベクターを、培地中の1つの哺乳類宿主細胞に組み入れること; 1つの軽鎖をコード化する1つのヌクレオチド配列を含む発現ベクターを、別の哺乳類宿主細胞に組み入れること; および、これらの2つの細胞を融合しハイブリッド細胞を形成すること、を含んでいる。、当該ハイブリッド細胞は、当該重鎖と当該軽鎖を含む抗体を発現する。
「中和抗体」[neutralizing antibody]または「〜を中和する抗体」[antibody that neutralizes]という用語は、抗体が特異的に結合するエピトープを含むポリペプチドの少なくとも1つの活性を抑制する抗体を指すものである。いくつかの実施形態においては、中和抗体は、生体外(イン ビトロ)および/または生体内(イン ビボ)で活性を抑制する。
「抗原結合部位」という用語は、特異的に抗原を結合し得る抗体の部位を指す。いくつかの実施形態においては、1つの抗原結合部位は、1つないしそれ以上の抗体可変領域(群)によって提供される。
本願において用いられる場合、「実質的に純粋」は、ある目的の種が、存在する支配的な種(すなわち、モル基準で、組成中のいかなる他の個々の種よりも、それが豊富である)であることを意味する。 一般に、実質的に純粋な組成は、例えば、約55%超、約60%超、約65%超、約70%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、および約99%超などというように、組成中に素材する全ての高分子種の約50%超を構成するものである。1つの実施形態では、ある目的の種が、本質的な均質性のために純化され(汚染種群が、周知の検出方法では組成中に検出できない。)、ここにおいては当該組成は本質的にただ一つの高分子種から成ることとなる。
「薬剤」という用語は、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的高分子、または生物学的高分子群から得られる抽出物を指す。いくつかの実施形態においては、「薬剤」は、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念に係るモノクローナル抗体であり得る。
「拮抗物質」という用語は、あるタンパク質/酵素の活性を減少させる薬剤を指す。。
「アゴニスト」という用語は、あるタンパク質/酵素の活性を増加させる薬剤を指す。
「患者」という用語は、ヒトおよび獣医学的被験体群を包むものである。いくつかの実施形態においては、患者は哺乳動物である。他のいくつかの実施形態においては、患者は人間である。
「処置」は、治療的処置と予防的または防止的手段の双方に関するものである。処置を必要とするものは、特に限定されるわけではないが、例えば、既に特定の状態または障害[disorder]なっている個体群、ならびに、特定の状態または不全となる危険性を負っている個体群(例えば、予防的/防止的手段を必要としている者)を含むものである。「処置する」という用語は、ある薬剤を治療および/または予防/防止の目的のために患者に投与することを指す。
「治療薬」は、治療および/または予防/防止の効果を生じさせるために、生体内(イン ビボ)に投与され得る薬剤を指す。
「治療抗体」は、治療および/または予防/防止の効果を生じさせるために生体内(イン ビボ)に投与され得る抗体を指す。
「障害」は、ポリペプチドを用いた処置からの恩恵を受け得るあらゆる状態そ指す。これは慢性および急性の障害、または問題の障害へと哺乳動物を罹患させやすくする病理学的な状態を含む疾患を含むものである。
「癌」および「癌性の〜」という用語は、典型的には異常細胞成長によって特徴づけられる哺乳動物における病理的状態を指すまたは述べるものである。特に限定されないが、その例としては、癌腫、リンパ腫、真性腫瘍、肉腫、および白血病が含まれる。そのような癌の、より特定の例としては、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓癌、腎癌、前立腺癌、外陰腺癌、甲状腺癌、肝癌および様々なタイプの頭頸部癌が含まれる。
処置の目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家畜および農耕用動物、非ヒト霊長類、および、犬、馬、猫、牛などのような動物園用、スポーツ用またはペット用動物などをふくむ、哺乳動物として分類されるいかなる動物をも指すものである。
「有効量」という用語は、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念の方法で使用された場合に、妥当な利益/リスク比率に対応して、過度の有害な副作用(例えば、毒性、炎症およびアレルギー反応など)を起こすことなしに検知可能な治療的効果を示すのに十分である、生物学的活性な分子、またはその抱合体(コンジュケート)もしくは誘導体の量を指す。治療的効果は、特に限定されるものではないが、例えば、LRP6の少なくとも1つの活性を阻害する、および/または中和することを含み得る。患者にとっての有効量は、患者の種類、患者の大きさおよび健康状態、処置すべき状態の種類および重篤度、投与の方法、処置の期間、同時療法の種類(もしある場合)、用いられた特定の処方などに依存するものである。これゆえ、あらかじめ正確な有効量を特定することは不可能である。しかしながら、当業者であれば、本願において与えられる情報に基づき、慣用的な実験をおこなうことによって、与えられた状況に関しての有効量を決定することは可能であろう。
本願において用いられる場合、「同時療法」という用語は、「組合わせ療法」および「付加療法」という用語群と、互換性を持って使用されるものであり、処置を必要とする患者を、請求の範囲に要求された本発明概念の組成物と共に、疾患/障害のための他の薬剤で治療するないしはこれを与えることを意味するものであると理解されるべきである。この同時療法は、患者が最初に一方の薬剤で治療され、次いで他方の薬剤で治療されるといった連続的治療であっても、あるいは2つの薬剤が同時に与えられるものであってもよい。
「薬学的に許容される〜」という用語は、妥当な利益/リスク比率に対応して、例えば、毒性、炎症およびアレルギー反応などの過度の有害な副作用を起こすことなしに、ヒトおよび/または動物に投与するのに適した化合物群および組成物群を指すものである。
「生物学的に活性な〜」は、有機体の生理学的なシステムを変更することのできる能力を意味するものである。ある分子は、それ自身の機能性を通して生物学的に活性であり得る、または生物学的活性を自ら持っている分子群を活性化するまたは阻害する能力に基づいて、生物学的に活性となり得る。
ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念に係る組成物群は、特に限定されるわけではないが、例えば、経口、局所、経皮、非経口、皮下、鼻腔内、筋肉内、腹腔内、硝子体内、および静脈内を含む、当分野で公知の任意の方法によって患者へと投与されることができ、また局部的および全身的適用の双方を含むものである。さらに、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念に係る化合物群は、当分野で公知の処方技術を用いて、遅延、制御または持続的放出をもたらすように設計され得る。
ここにおいて用いられる「Wnt」またはその複数形である「Wnts」という用語は、Frizzled(Fz)レセプター群と低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質5または6(LRP5/6)とのコレセプター複合体に結合し、そして細胞内シグナル伝達経路、すなわち、Wntシグナル伝達経路を介していくつかの標的遺伝子群の発現を規制する分泌された、システインリッチな、糖タンパク質の一属を指す。ヒトにおいては、Wntsは、WNT1、WNT2、WNT2B、WNT3、WNT3A、WNT4、WNT5A、WNT5B、WNT6、WNT7A、WNT7B、WNT8A、WNT8B、WNT9A、およびWNT9Bを含んでいる。Wntリガンド群が不在のとき、古典的Wnt経路の下流エフェクターである、β-カテニンは、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3β(GSK-3β)を含むタンパク質複合体によってリン酸化される。このリン酸化β-カテニンは、その蓄積を防ぐために絶えず分解される。Fz-LRP5/6コレセプターへのあるWntsの結合においては、β-カテニンのリン酸化は阻害され、これによりβ-カテニンの分解が抑制され、結果としてその蓄積がなされる。次に、β-カテニンは、核内へと移行し、ここにおいてβ-カテニンは、DNA結合に関するT細胞因子と会合し、そしてこれゆえ、特に限定されるわけではないが例えばVEGFを含む、標的遺伝子群の発現を規制する。
「LRP」という用語は、「低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質(群)」[low-density lipoprotein receptor-related protein(s)]を指すものであることが理解されるであろう。ヒトLRP6は、配列番号1[SEQ ID NO:1]によって表される。LRP5/6が、Wnt/β-カテニン シグナル伝達における重要な役割を果たすことが知られている。Wntリガンド群との結合において、LRP6はFzレセプターで二量化されるが、これは、Wnt経路の活性化における最初でかつ必須の段階である。LRP6の細胞質領域は、複数のモジュールのリン酸化部位群を有しており、そして、LRP6のリン酸化は、古典的Wnt経路の活性化に必須な事象である。これは、LRP6のリン酸化は、骨格タンパク質Axinの加入を促進して、その結果、古典的Wnt経路を活性化するゆえである。
本願において開示されたモノクローナル抗体群は、抗体の機能的および/または構造的な特徴によって、一部特徴付けられる。
ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、LRP6タンパク質、並びに同様の構成を有する化合物群を特異的に結合するモノクローナル抗体(または、それの抗原結合フラグメント)、並びに同様の構成を有する化合物群に関するものである。1つの実施形態では、当該モノクローナル抗体はヒトLRP6タンパク質を特異的に結合する; さらに別の実施形態では、当該モノクローナル抗体は、配列番号1のアミノ酸における1つのエピトープを特異的に結合する。さらに別の実施形態では、当該モノクローナル抗体はLRP6の細胞外領域を特異的に結合する; また、さらなる別の実施形態では、当該モノクローナル抗体は配列番号2のアミノ酸における1つのエピトープを特異的に結合する。別の実施形態では、当該モノクローナル抗体は、LRP6のリガンド結合領域を特異的に結合する。さらに別の実施形態では、当該モノクローナル抗体はLRP6の第1および第2ベータプロペラ領域群(E1およびE2ドメイン)の少なくとも一方における1つのエピトープを特異的に結合する。さらに、別の実施形態では、当該モノクローナル抗体は、LRP6の2Eドメインの少なくとも一部位において1つのエピトープを特異的に結合する; さらに別の実施形態では、当該モノクローナル抗体は配列番号3のアミノ酸における1つのエピトープを特異的に結合する。
抗体の結合能を評価する標準的検定法は、当分野において公知であり、例えば、ELISA、ウェスタンブロッド法、RIAなどがあり、そして、適当な検定法は実施例において詳述する。抗体の結合反応速度論(例えば、結合親和性)もまた、当分野で公知の標準的検定法によって、例えば、Biacore分析によって、評価することができる。いくつかの実施形態では、本願において開示される抗体群は、配列番号1、配列番号2、および/または配列番号3に対して、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、または10-9M以下の解離定数をもって、結合するものである。1つの実施形態においては、当該抗体は、LRP6の細胞外領域に、約10-7M以下の解離定数をもって、結合するものである。
また、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、ATCC受託番号PTA-10663を付された、ハイブリドーマHLS2F1、並びに同様の構成を有する化合物群に関するものである。このハイブリドーマは、2010年2月18日に、ザ アメリカン タイプ カルチャー コレクション パテント デポジトリィ(ヴァージニア州20110-2209、マナッサス、ユニヴァーシティ ブルーバード10801)[the American Type Culture Collection Patent Depository (10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209)]に、ブダペスト条約における諸条件下に寄託された。寄託物質の公衆に対する入手可能性の全ての制限は、前述のモノクローナル抗体(mAb)に対する特許が許可された際に撤回不能に取り除かれるであろう。そして寄託は、30年間または、最新の要求後の5年間(いずれか遅い方)まで維持されるであろう。ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念はまた、前述ハイブリドーマによって産生された単離モノクローナル抗体に関するものである。前述の寄託されたハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体は、マウスIgG2抗体であり、本願において以下、「抗LRP6-1」[Anti-LRP6-1]と称呼される。加えて、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、受託番号PTA-10663のハイブリドーマHLS2F1の細胞、並びに同様の構成を有する化合物群に関するものである。
また、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、上述したモノクローナル抗体群のいずれかが結合するエピトープと同一のものに結合する単離モノクローナル抗体(または、それの抗原結合フラグメント)、並びに同様の構成を有する化合物群に関するものである。1つの実施形態では、当該モノクローナル抗体は、抗LRP6-1と同じエピトープに結合する。 別の実施形態では、当該モノクローナル抗体は、ATCC受託番号PTA-10663のハイブリドーマHLS2F1によって産生された抗体と同じエピトープに結合する。このような抗体群は、標準的LRP6細胞外領域結合検定法において、抗LRP6-1と交差競合するこれらの能力に基づいて同定することが可能である。被験抗体がLRP6細胞外領域への抗LRP6-1の結合を抑制する能力は、当該被験抗体が、LRP6 細胞外領域への結合に関して、抗LRP6-1と競合することができることを示し、それゆえ、抗LRP6-1と同じLRP6 細胞外領域のエピトープに結合する。
また、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、配列番号群1〜3のいずれかと少なくとも85%の同一性を有する配列、配列番号群1〜3のいずれかと少なくとも90%の同一性を有する配列、および配列番号群1〜3のいずれかと少なくとも95%の同一性を有する配列を含む、配列番号群1〜3のいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列に対し、特異的に結合する単離モノクローナル抗体、並びに当該単離モノクローナル抗体を有する組成物群に関するものである。また、さらに、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、上記の詳述したATCCに寄託されたハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体のアミノ酸配列と、少なくとも80%の同一性(例えば、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性)を有するアミノ酸配列を有する単離モノクローナル抗体に関するものである。
抗LRP6-1(上記に詳述した寄託されたハイブリドーマによって産生された抗体であり、互換的に「mAb2F1」とも称呼される。)は、配列番号4のヌクレオチド配列によってコード化された、そして配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する1つの重鎖可変領域を有している。抗LRP6-1は、配列番号6のヌクレオチド配列によってコード化された、そして配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する1つの軽鎖可変領域を有している。重鎖は、それぞれCDRH1、CDRH2、およびCDRH3と呼ばれる、3つの相補性領域(CDRs)から構成される。また、軽鎖はそれぞれCDRL1、CDRL2、およびCDRL3とよばれる3つの相補性領域(CDRs)から構成される。CDRsのアミノ酸配列群、および当該アミノ酸配列群をコード化するヌクレオチド配列を表1に示す。
さらに、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、配列番号4のヌクレオチド配列によってコード化されたアミノ酸配列、および/または、配列番号5に示されるアミノ酸配列から構成される1つの重鎖可変領域を有している、抗体または抗原結合フラグメント、並びにそれらと同様の構成を有する組成物群に関するものである。さらに、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、配列番号6のヌクレオチド配列によってコード化されたアミノ酸配列、および/または、配列番号7に示されるアミノ酸配列から構成される1つの軽鎖可変領域を有している、抗体または抗原結合フラグメント、並びにそれらと同様の構成を有する組成物群に関するものである。また、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、配列番号8、10、および12の少なくとも1つによってコード化されたアミノ酸配列を有する、および/または、配列番号9、11、13の少なくとも1つによって示されるアミノ酸配列を有する、少なくとも1つのCDRを有する1つの重鎖可変領域を有している、抗体または抗原結合フラグメント、並びにそれらと同様の構成を有する組成物群に関するものである。さらに、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、配列番号14、16、および18の少なくとも1つによってコード化されたアミノ酸配列を有する、および/または、配列番号15、17、19の少なくとも1つによって示されるアミノ酸配列を有する、少なくとも1つのCDRを有する1つの軽鎖可変領域を有している、抗体または抗原結合フラグメント、並びにそれらと同様の構成を有する組成物群に関するものである。
1つの好ましい実施形態においては、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、配列番号19のアミノ酸配列を有する1つの軽鎖可変領域CDR3(本願において互換的に「CDRL3」とも称呼される。)および配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域CDR3(本願において互換的に「CDRH3」とも称呼される。)を有している単離モノクローナル抗体(または、それの抗原結合フラグメント)に関するものである。当該抗体は、LRP6 細胞外領域内で1つのエピトープに特異的に結合する。ここで、LRP6細胞外領域は、配列番号2のアミノ酸配列を有している。当該抗体は、さらに、配列番号15および17のアミノ酸配列をそれぞれ有する、軽鎖可変領域CDR1およびCDR2(本願において互換的に、それぞれ「CDRL1」、「CDRL2」とも称呼される。)を含む得、またさらに、当該抗体は、配列番号9および11のアミノ酸配列をそれぞれ有する、重鎖可変領域CDR1およびCDR2(本願において互換的に、それぞれ「CDRH1」、「CDRH2」とも称呼される。)を含む得る。さらに、当該抗体は、配列番号5と少なくとも90%の同一性を示すアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号7と少なくとも90%の同一性を示すアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有し得る。
いくつかの実施形態においては、抗体群とそれらの抗原結合フラグメント群は、抗LRP6-1の対応するCDRと同じアミノ酸配列を持っている1ないしそれ以上のCDR(CDRs)を含んでいるが、いくつかの実施形態では、抗体群とそれらの抗原結合フラグメント群のいくつかのCDRsは、抗LRP6-1の対応するCDRと実質的に同様であるが、同一ではないアミノ酸配列を有している。また、いくつかの実施形態では、抗体群とそれらの抗原結合フラグメント群は、6、5、4、3、2または1のCDRアミノ酸における変異群以外は、抗LRP6-1の対応するCDR配列群と同一のCDR配列群を有している。いくつかの実施形態では、当該アミノ酸変異群はCRDL1、CDRL2、CDRH1またはCDRH2にのみ存在している。いくつかの実施形態では、当該変異群はCDRL1、CDRL2またはCDRH1にのみ存在している。いくつかの実施形態では、当該変異群は、保存的配列変更群である。
いくつかの実施形態においては、抗体群とそれらの抗体フラグメント群は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む1つの重鎖可変領域、およびCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む1つの軽鎖可変領域を有しており、ここで当該軽鎖可変領域CDR3は、配列番号19のアミノ酸配列またはその保存的修飾されたアミノ酸配列を有しており、また当該重鎖可変領域CDR3は、配列番号13のアミノ酸配列またはその保存的修飾されたアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域CDR2は、配列番号11のアミノ酸配列またはその保存的修飾されたアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域CDR2は、配列番号17のアミノ酸配列またはその保存的修飾されたアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、重鎖CDR1は、配列番号9のアミノ酸配列またはその保存的修飾されたアミノ酸配列を有している。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号15のアミノ酸配列またはその保存的修飾されたアミノ酸配列を有している。。
いくつかの実施形態においては、抗体群とそれら抗体フラグメント群は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有する1つの重鎖可変領域を有している。いくつかの実施形態においては、抗体群とそれらの抗体フラグメント群は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有する1つの軽鎖可変領域を有している。
いくつかの実施形態においては、抗体群とそれらの抗体フラグメント群は、配列番号13のアミノ酸配列を有する1つの重鎖可変領域CDR3、および配列番号11のアミノ酸配列を有する1つの重鎖可変領域CDR2を有している。また、いくつかの実施形態では、抗体群とそれら抗体フラグメント群は、配列番号9のアミノ酸配列を有する1つの重鎖可変領域CDR1をも有している。いくつかの実施形態においては、抗原結合性抗体フラグメント群は、軽鎖可変領域を有していない。例えば、例えば、いくつかの実施形態では、抗体結合性フラグメント群はNANOBODIES(登録商標名)である。
いくつかの実施形態では、抗体群とそれらの抗体フラグメント群は、配列番号19のアミノ酸配列を有する1つの軽鎖可変領域CDR3、および配列番号17のアミノ酸配列を有する1つの軽鎖可変領域CDR2を有している。また、いくつかの実施形態では、抗体群とそれら抗体フラグメント群は、配列番号15のアミノ酸配列を有する1つの重鎖可変領域CDR1をも有している。いくつかの実施形態においては、抗原結合性抗体フラグメント群は、重鎖可変領域を有していない。
抗体群とそれらの抗体フラグメント群は、ある修飾抗体を工学するために、出発物質として抗LRP6-1のVHおよび/またはVL配列を有している抗体を用いることによって調製され得る。当該修飾抗体は、抗LRP6-1から変容された特性群を有する一方で、抗LRP6-1のエピトープ特異性は保持するもの、となり得る。ある抗体とその抗体フラグメントは、一方または双方の可変領域(すなわち、重鎖可変領域または軽鎖可変領域)内で、例えば、1つまたはそれ以上のCDR領域(群)内でおよび/または1つまたはそれ以上のフレームワーク領域(群)内で、1つないしそれ以上の残基(群)を修飾することによって工学されることができる。それに加えてまたはそれに代えて、抗体は、例えば、抗体のエフェクター機能(群)およびまたは免疫原性を変容するために、定常領域(群)内で残基群を修飾することによって、工学されることもできる。
ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念はさらに、少なくとも、抗LRP6-1(すなわち、ハイブリドーマHLS2F1、ATCC受託番号PTA-10663によって産生されたモノクローナル抗体)の1つの可変領域の一部と、ヒト由来のある抗体の1つの定常領域とから構成される、キメラ抗体群を含むものである。このような抗体群は、抗LRP6-1の有していた抗原特異性およびWntシグナル伝達経路を阻害する能力を保持する一方で、抗LRP6-1と比べて低減されたヒトでの免疫原性を有している。
いくつかの実施形態では、抗体群と抗体フラグメント群は「ヒト化される」。これゆえ、いくつかの実施形態では、当該抗体群と当該それらの抗体フラグメント群は、あるヒト抗体または抗体フラグメントの配列を主として有するが、抗LRP6-1からの1ないしそれ以上のCDR(CDRs)を含む、抗体群またはそれらの抗体フラグメント群(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、または抗体群のその他の抗原結合配列群)のヒト化形態である。
このようなヒト化抗体群またはヒト化抗体フラグメント群は、あるヒト抗体またはヒト抗体フラグメントの対応する配列を、抗LRP6-1の1ないしそれ以上のCDR(CDRs)で置換することによって、作製することができる。いくつかの実施形態においては、ヒト化抗体は、あるヒト抗体のCDRsの1、2、3、4、5または6を、抗LRP6-1からCDRsに交換することによって構築される。いくつかの実施形態においては、当該ヒト化抗体またはヒト化抗体フラグメントは、CDRsのすべてが抗LRP6-1のCDRsに対応し、そして、フレームワーク領域(FRs)のすべてがあるヒト抗体のFRsに対応してなる可変領域群から構成される。いくつかの実施形態では、当該ヒト化抗体またはヒト化抗体フラグメントは、抗LRP6-1のCDRL3とCDRH3を持っているが、CDRL1、CDRL2、CDRH1またはCDRH2のうちの1ないしそれ以上に関してはヒト配列群を保持してなる。いくつかの実施形態では、ヒトCDR配列群が、対応する抗LRP6-1 CDRと配列において同様であるように選択されている。そのような実施形態では、ヒトCDRsは、それらの対応する抗LRP6-1 CDRと比較して、5、4、3、2または1の変異を、集合的にまたは個別的に有し得る。。いくつかの実施形態では、当該変異群は、保存的配列修飾である。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体はさらに、あるヒト抗体の定常領域(Fc)を有している。
いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのいくつかのFvフレームワーク残基群は、対応する非ヒトの残基と置換される。また、いくつかの実施形態では、ヒト化抗体群は、受入抗体側と移入CDRまたはフレームワーク配列群側のいずれにも見出すことのできない残基群をさらに有することが可能である。ヒト化モノクローナル抗体群の作製および/または使用方法は、例えば、例えば、サンドボーンら、ガトレントロジィ、120:1330 (2001年) [Sandborn et al., Gatroenterology, 120:1330 (2001)]; ミハラら、クリン. イムノル.、98:319 (2001年) [Mihara et al., Clin. Immunol., 98:319 (2001)]; エナリら、ニューロル. レス.、23:72 (2001年) [Yenari et al., Neurol. Res., 23:72 (2001)]; モラレスら、ナクル. メド. バイオル.、27:199 (2000年) [Morales et al., Nucl. Med. Biol., 27:199 (2000)]; リチャーズら、キャンサー レス.、59:2096 (1999年) [Richards et al., Cancer Res., 59:2096 (1999)]; エナリら、エクスプ. ニューロル、153 : 223 (1998年)[Yenari et al., Exp. Neurol., 153:223 (1998)]; および、シンクラら、アンチキャンサー レス.、18:1217 (1998年) [Shinkura et al., Anticancer Res., 18:1217 (1998)]において見出すことができ、これら全て文献は、関連により、それらの全体が本明細書中に明確に取り入れられる。
いくつかの実施形態では、抗体群のCH1のヒンジ領域が修飾され、当該ヒンジ領域のシステイン残基群の数が変えられる、例えば、増加するまたは減少される、ようにされている。このアプローチは、ボドマーら[Bodmer et al.,]による米国特許第5,677,425号においてさらに詳しく説明されており、関連により、この特許文献の全体が本明細書中に明確に取り入れられる。CH1の当該ヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖と重鎖の組立てを容易とするか、または当該抗体の安定性を高めるかまたは低減させるために、変更される。
いくつかの実施形態では、当該抗体またはその抗原結合フラグメントのグリコシル化(糖鎖形成)が変更される。例えば、非グリコシル化抗体(すなわち、抗体はグリコシル化を欠く)を作製することが可能である。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体または抗体フラグメントの親和性を増加させるために、変更されることができる。このような糖質修飾は、例えば、抗体配列中のグリコシル化の1またはそれ以上の部位を変容することによって行い得る。例えば、1ないしそれ以上のアミノ酸置換が行なわれ、その結果1ないしそれ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位群が消失し、これによって、これらの部位におけるグリコシル化が排除される。このような非グリコシル化は、抗原に対する当該抗体の親和性を増加させ得る。このようなアプローチは、コゥら[Co et al.]による米国特許第5,714,350号および第6,350,861号においてさらに詳しく説明されており、関連により、これら特許文献の全体が本明細書中に明確に取り入れられる。
いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、例えば、フルコシル残基の低減された量を有する低フルコシル化抗体、または増加したバイセクティングGlcNac構造群(バイセクティングN-アセチルグルコサミン構造群)[bisecting GlcNac structures]を有する抗体などのように、グリコシル化の変容されたタイプを有するように作製される。そのような変容されたグルコシル化パターン群は、当該抗体群のADCC能力を増加させることで示された。このような糖質修飾は、例えば、変容されたグルコシル化機構を有する宿主細胞中において抗体を発現させることによって行い得る。変容されたグルコシル化機構を有する細胞群は、当分野において開示されており、そしてこれらは本発明の組替え抗体群を発現し、変容されたグルコシル化を有する抗体を産生するための宿主細胞群として使用すること可能である。例えば、ハンアイら[Hanai et al. ]による欧州特許公報第1,176,195号は、フルコシルトランスフェラーゼをコード化する機能的に破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞系統を開示しており、このような細胞系統において発現された抗体群は、低フルコシル化を示すものとなる。プレスタ[Presta]による国際公開公報WO 03/035835は、Asn(297)結合糖質類へフルクトースが付着する能力が減じられた、異形CHO細胞系統、Lec13細胞群を開示しており、同様に、この宿主細胞に発現された抗体群の低フルコシル化という結果がもたらされる(シールド アール. エル.ら、(2002年) ジェイ. バイオル. ケム.、277:26733-26740 [Shields, R. L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740]も参照のこと。)。ウマナら[Umana et al.]による国際公開公報WO 99/54342は、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)--N-アセチルグルコサミニルトランスフェナーゼ III [beta(1,4)-N-acetylglucosaminyltransferase III] (GnTIII))を発現するように工学された細胞系統を開示しており、この工学された細胞系統中で発現された抗体群は、増加したバイセクティングGlcNac構造群を示し、当該抗体群のADCC能力を増加させるという結果がもたらされる(ウマナら、(1999年) ナット. バイオテック.、17:176-180 [Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-180]も参照のこと。)。
いくつかの実施形態では、抗体群またはその抗原結合フラグメント群のぺグ化[pegylation](ポリエチレングリコール化)が修飾される。ある抗体は、例えば、当該抗体の生物学的な(例えば、血清)半減期を増加させるように、ぺグ化され得る。抗体をぺグ化するためには、典型的には、当該抗体またはそのフラグメントを、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)の反応性エステルまたはアルデヒド誘導体のような、ポリエチレングリコール(PEG)と、1ないしそれ以上のPEG基(群)が当該抗体またはその抗体フラグメントに付着するような条件下で、反応させる。好ましくは、ぺグ化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)を用いたアクリル化反応またはアルキル化反応を介して行なわれる。本願において用いる場合、「ポリエチレングリコール」という用語は、他のタンパク質類を変性するために用いられてきた、例えば、モノ(C1-C10)アルコキシ-またはアリルオキシ- ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなどのような、PEGのいずれの形態をも包含することを意図している。いくつかの実施形態においては、ぺグ化されるべき抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質群をぺグ化する方法は当分野において公知であり、本発明の抗体群に適用することが可能である。例えば、ニシムラらによる欧州特許公開公報第0 154 316 号およびイシカワらによる欧州特許公開公報第0 401 384 号を参照のこと。
いくつかの実施形態では、抗体群および抗体フラグメント群は、元のアミノ酸配列の、例えば、少なくとも80%、90%、95%、または99%などのように、少なくとも75%を維持し、かつ抗体群/抗体フラメント群がLRP6の細胞外領域を特異的に結合する能力を維持しているという条件下に、上記に述べたような抗体群またはそれらの抗原結合フラグメント群のアミノ酸配列群においてわずかな変更を有している。いくつかの実施形態では、この修飾は保存的配列修飾である。
いくつかの実施形態では、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念のモノクローナル抗体は、LRP6の活性を中和する。したがって、前述のモノクローナル抗体は、中和抗体、および/または、治療的抗体とも称呼され得るものである。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は特異的にWntシグナル伝達経路の活性化を阻害する。さらに別の実施形態では、モノクローナル抗体はWntシグナル伝達経路の1つのレセプターに対する1つのWntリガンドの結合を阻害し、それによって、WntリガンドによるWntシグナル伝達経路の活性化を抑制する。別の実施形態では、モノクローナル抗体は、LRP6のリン酸化を阻害する。いくつかの実施形態においては、抗体群および抗体フラグメント群は、LRP6に対するWnt1とWnt3aの双方の結合を阻害する。さらなる別の実施形態では、モノクローナル抗体は、糖尿病の状態によって引き起こされた、少なくとも1つの炎症誘発性因子および/または少なくとも1つの血管新生促進性因子の過剰な発現を防止する。このような因子としては、特に限定されるものではいが、例えば、VEGF、ICAM-1、TNF-α、CTGF、およびそれらの組合わせ、などが含まれる。
ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念はまた、本願において開示されたモノクローナル抗体群またはそれらの抗原フラグメント群のうちの少なくとも1つの治療学的に有効な量で構成される薬学的組成物、およびこれと同じものを薬学的に許容される担体と組合わせて構成される薬学的組成物を含むものである。本願において使用される場合、「薬学的に許容される担体」とは、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念の化合物群を、ヒトまたは動物へと送達するための、薬学的に許容される、溶剤、懸濁剤または賦形剤である。当該担体は、液状でも、固体状でもよく、そして、意図される投与の計画された方法によって選択される。ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念に従い利用され得る、薬学的に許容される担体としては、特に限定されるものではないが、例えば、PEG、リポソーム類、エタノール、DMSO、水性緩衝液類、油類などが含まれる。
ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念に係る組成物群(特に限定されるわけではないが直上で述べた薬学的組成物を含む)は、さらに、前記モノクローナル抗体と相乗効果を有している第2の薬剤をさらに含み得る。当該第2の薬剤としては、特に限定されるわけではないが例えば、抗-脈管形成剤、抗-VEGF試薬、VEGF Trap、AVASTIN(登録商標名)などが含まれる。
また、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、上記で述べたモノクローナル抗体(または、それの抗原結合フラグメント)を製造する方法を含むものである。ここにおいて開示されたモノクローナル抗体群および抗体フラグメント群は、当分野で知られているいかなる適切な方法論によっても製造され得るものである。例えば、モノクローナル抗体の調製は、適当な被験体(例えば、マウス)をポリペプチド免疫原(例えば、LRP6 細胞外領域の一部を含むポリペプチド)で免疫感作することによって生じるポリクローナル抗体の産生に開始することができる。免疫感作後の適当な時間において、例えば、抗体力価が最も高い時に、抗体産生細胞群が当該被験体から得られることができ、そして当該抗体産生細胞群は、例えば、コーラーとミルスタイン(ネイチャー、256:495 (1975年)[Kohler and Milstein (Nature, 256:495 (1975)])によって最初に開示されたハイブリドーマ技術(ブラウンら、(1981年) ジェイ. イムノル.127:539-46 [Brown et al. (1981) J. Immunol. 127:539-46]; ブラウンら、(1980年) ジェイ. バイオル. ケム.255:4980-83 [Brown et al. (1980) J. Biol. Chem. 255:4980-83]; イェら、(1976年) プロク. ナトル. アカド. サイ. 6:2927-31 [Yeh et al. (1976) Proc. Natl. Acad. Sci. 76:2927-31]; およびイェら、(1982年) イント.ジェイ. キャンサー、29:269-75 [Yeh et al. (1982) Int. J. Cancer 29:269-75]も参照のこと。)、より最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(コズボアら、(1983年) イムノル. トゥデイ、4:72 [Kozbor et al. (1983) Immunol. Today 4:72])、EBVハイブリドーマ法(コールら、 (1985年) モノクローナル アンティボディズ アンド キャンサー セラピー、アラン アール. リス、インコーポレーテッド、77頁〜96頁[Cole et al. (1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 ]、またはトリオーマ技術などの、標準的技術を用いて、モノクローナル抗体群を調製するのに用いられる。
モノクローナル抗体ハイブリドーマを製造するための技術は、公知である(ケネス、アール. エッチ.、モノクローナルアンチボディズ:ア ニュー ディメンジョン イン バイオロジカル アナリシス、プレナム パブリッシング コープ.、ニューヨーク州ニューヨーク(1980年) [Kenneth, R. H. in Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analyses, Plenum Publishing Corp., New York, New York (1980)]; ラーナー、イー. エイ.(1981年) エール ジェイ. バイオル.メド.54:387 402 [Lerner, E. A. (1981) Yale J. Biol. Med. 54:387 402]; ゲフテル、エム. エル.ら、(1977年) ソマティック セル ジャネット.3:231 36 [Gefter, M. L. et al. (1977) Somatic Cell Genet. 3:231 36]を一般に参照のこと)。簡潔には、不死細胞系統(典型的には、骨髄腫)が、上記で述べたような免疫原で免疫感作された哺乳動物からリンパ球(典型的には脾細胞群)に融合され、そして、結果として得られるハイブリドーマ細胞群の培地上澄液が、ポリペプチド抗原に結合する、好ましくは特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するためにスクリーニングされる。
一旦、抗体群が得られると、例えば、一旦、個々B細胞が同定され、および/またはモノクローナル抗体が産生されると、これらの抗体群の可変領域群をコード化する配列群を得ることができる。可変領域配列群は、例えば、最初に当該ハイブリドーマ、B細胞またはファージによって産生された抗体タンパク質を配列決定にかけ、そしてコード化核酸配列を決定する、1つの実施形態では、免疫グロブリン可変領域(VHおよびVL)のDNAまたはcDNAが代わりに配列決定にかけられ得る。ハイブリドーマ細胞系統または単離B細胞から抗体が誘導される場合には、可変領域をコード化するcDNAsは、例えば、バブクックら[Babcook et al.](プロク. ナトル. アカド. サイ. ユーエスエイ 93:7843-7848 (1996年) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:7843-7848 (1996)]および国際公開公報WO92/02551。によって述べられた方法によって、PCRを用いて増幅され得る。これら双方の文献の内容は、関連により、それらの全体が本明細書中に明確に取り入れられる。
したがって、ここにおいて開示された抗体群および抗原結合フラグメント群は、ここにおいて開示されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを産生する細胞を供給し、当該モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの産生を可能とする条件下で細胞を培養する工程を含むモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントを製造する方法により、作り出すことが可能である。いくつかの実施形態では、当該細胞は、ATCC受託番号PTA-10663を有するハイブリドーマでである。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製することに代わる手段として、適切なポリペプチドで組換え結合型免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリまたは抗体イーストディスプレイライブラリ)をスクリーニングすることによって、LRP6に特異的なモノクローナル抗体を同定し単離すること可能であり、これによって当該ポリペプチドを結合する免疫グロブリンライブラリメンバーを単離することができる(例えば、クラックソンら、ネイチャー、352: 624-628 (1991年) [Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)]; および、マークら、ジェイ. モル. バイオル.、222: 581-597(1991年) [Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)]を参照のこと。これらのいずれも関連により本明細書中に取り込まれる。)。
さらに、ここにおいて提供されたおよび当分野において公知である、抗体および抗原結合フラグメント配列群を用いることによって、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体群を含む、モノクローナル抗体群および抗原結合フラグメント群は、標準的組み換えDNA技術を使用することで調製され得る。このようなモノクローナル抗体群および抗体フラグメント群は、例えば、米国特許第4,816,567号; 米国特許第5,565,332号; ベターら、(1988年) サイエンス240:1041-1043[Better et al. (1988) Science 240:1041-1043]; リュウら、(1987年) プロク. ナトル. アカド. サイ. ユーエスエイ 84:3439-3443 [Liu et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443]; リュウら、(1987年) ジェイ. イムノル. 139:3521-3526 [Liu et al. (1987) J. Immunol. 139:3521-3526]; サンら (1987年) プロク. ナトル. アカド. サイ. 84:214-218 [Sun et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. 84:214-218]; ニシムラら (1987年) キャンサー レス. 47:999-1005 [Nishimura et al. (1987) Cancer Res. 47:999-1005]; ウッドら (1985年) ネイチャー 314:446-449 [Wood et al. (1985) Nature 314:446-449] ; ショウら (1988年) ジェイ. ナトル. キャンサー インスト. 80:1553-1559 [Shaw et al. (1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559]; モリソン エス. エル. (1985年) サイエンス 229:1202-1207 [Morrison, S. L. (1985) Science 229:1202-1207]; オイら (1986年) バイオテクニックス 4:214 [Oi et al. (1986) Biotechniques 4:214]; ウィンター[Winter] 米国特許第5,225,539号; ジョーンズら (1986年) ネイチャー 321:552-525 [Jones et al. (1986) Nature 321:552-525]; ヴァフォーイェンら (1988年) サイエンス 239:1534 [Verhoeyan et al. (1988) Science 239:1534]; およびベイドラーら (1988年) ジェイ. イムノル. 141:4053-4060 [Beidler et al. (1988) J. Immunol. 141:4053-4060]、もしくは米国特許第5,916,771号において述べられる方法を用いることによって、製造することが可能である。なお、これらの文献のいずれもが、関連により、それらの全体が本明細書中に明確に取り入れられる。
また、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、また、ここにおいて上述したモノクローナル抗体群(またはそれらのフラグメント群)のいずれかのアミノ酸配列(特に限定されるわけではないが、例えば、当該モノクローナル抗体群の重鎖および/または軽鎖可変領域群、ならびに前記重鎖および/または軽鎖可変領域群の1ないしそれ以上のCDR (CDRS)が含まれる。)をコード化する単離核酸分子群を含むものである。1つの実施形態では、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、少なくとも(a)配列番号9の1つのCDR1を持っている重鎖可変領域、(b)配列番号11の1つのCDR2を持っている重鎖可変領域、(c)配列番号13の1つのCDR3を持っている重鎖可変領域、(d)配列番号15の1つのCDR1を持っている軽鎖可変領域、(e)配列番号17の1つのCDR2を持っている軽鎖可変領域、および(f)配列番号19の1つのCDR3を持っている軽鎖可変領域のうちの、少なくとも1つをコード化する単離核酸分子群からなるものである。別の実施形態では、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、配列番号4、6、8、10、12、14、16、および18の少なくとも1つで構成される単離核酸分子群からなるものである。
1つの好ましい実施形態では、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、配列番号13の1つのCDR3を持っている重鎖可変領域をコード化する単離核酸分子からなるものである。当該核酸分子の重鎖可変領域は、さらに配列番号9のCDR1および配列番号11のCDR2を含み得る。
別の好ましいの実施形態では、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、配列番号19の1つのCDR3を持っている軽鎖可変領域をコード化する単離核酸分子からなるものである。当該核酸分子の軽鎖可変領域は、さらに配列番号15のCDR1および配列番号17のCDR2を含み得る。
本発明の核酸群は、標準的な分子生物学的技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ群(例えば、上述したように調製されたハイブリドーマ群)によって発現された抗体群に関して、当該ハイブリドーマにより作られた抗体の重鎖および軽鎖をコード化するcDNA群は、標準的PCR増幅またはcDNAクローン技術を使用することで得ることが可能である。免疫グロブリン遺伝子ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ技術を用いる)から得られた抗体群に関しては、抗体をコード化する核酸は、当該ライブラリから回収することが可能である。
いくつかの実施形態では、単離核酸分子群は、上述した核酸分子群と少なくとも80%、85%、90%、95%または100%の配列同一性を有している。
また、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、ここにおいて上述された単離核酸分子群のいずれかを有するベクターを含むものである。 ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、さらに前記核酸分子(群)、および/または、前記ベクターを含む宿主細胞を含むものである。
また、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、さらに、ここにおいて上述されたモノクローナル抗体群(特に限定されるわけではないが、例えば、抗LRP6-1を含む)を発現する細胞または細胞系統を含むものである。1つの実施形態では、細胞系統はハイブリドーマ細胞系統である。さらに別の実施形態では、細胞系統は、ここにおいて上述したように寄託されたハイブリドーマ細胞系統である。
ここにおいて記載される、モノクローナル抗体群、抗体フラグメント群、および核酸組成物は、Wnt経路関連障害群またはLRP6活性を包含する障害群の治療のための多くの治療方法を有している。これらの分子群および/または組成物は、ヒト患者を含む患者に対し、特に限定されるわけではないが、例えば、炎症、血管漏出、繊維症、異常な新生血管形成、および癌を含む、種々の障害群を治療するまたは予防するために投与されることができる。
ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、さらに、ここにおいて上記で詳述したモノクローナル抗体群のいずれかを有して構成される組成物を投与することでなる、Wntシグナル伝達経路の活性化を阻害する方法に関するものである。前記組成物が第2の薬剤を含有していない場合、この方法はさらに、特に限定されるわけではないが、例えば、抗-脈管形成剤、抗-VEGF試薬、VEGF Trap、AVASTIN(登録商標名)などのような、当該モノクローナル抗体と相乗効果を有する第2の薬剤の投与を含み得るものである。
ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、さらに、DRの少なくとも1つの脈管形成性、炎症性および/または線維形成性の因子の酵素活性および/または酵素生産を阻害する方法に関するものである。このような因子は、特に限定されるわけではないが、例えば、VEGF、ICAM-1、TNF-αおよびCTGFを含むものである。当該方法は、DRを病んでいるまたはこれにかかりやすい患者に対して、ここにおいて上記に詳述した薬学的組成物のいずれかを投与することでなる。当該組成物が第2の薬剤を含有していない場合、この方法はさらに、特に限定されるわけではないが、例えば、抗-脈管形成剤、抗-VEGF試薬、VEGF Trap、AVASTIN(登録商標名)などのような、当該モノクローナル抗体と相乗効果を有する第2の薬剤の投与を含み得るものである。
また、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、さらに、網膜の白血球うっ滞、炎症、血管漏出、繊維症、異常な新生血管形成(特に限定されるわけではないが、例えば、網膜新生血管形成および/または慢性新生血管形成などの)、および、網膜における発癌からなる群から選択されてなる少なくとも1つの網膜の症状を仲裁する/やわらげる方法に関するものである。当該方法は、ここにおいて上記に詳述した薬学的組成物のいずれかを投与することでなる。当該組成物が第2の薬剤を含有していない場合、この方法はさらに、特に限定されるわけではないが、例えば、抗-脈管形成剤、抗-VEGF試薬、VEGF Trap、AVASTIN(登録商標名)などのような、当該モノクローナル抗体と相乗効果を有する第2の薬剤の投与を含み得るものである。
ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念はさらに、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、黄斑変性(特に限定されるわけではないが、例えば、加齢随伴黄斑変性を含む)、癌、およびその他の目の炎症性および新生血管関連障害からなる群から選択されてなる少なくとも1つの症状の発症および/または重篤度を阻害および/または緩和する方法に関するものである。当該方法は、上記の少なくともいずれか1つの症状を病んでいるまたはこれにかかりやすい患者に対して、ここにおいて上記に詳述した薬学的組成物のいずれかの有効量を投与し、これによって、当該薬学的組成物がWntシグナル伝達経路の活性化を阻害し、当該症状/障害の発症および/または重篤度を阻害および/または緩和する。患者に投与される当該組成物が第2の薬剤を含有していない場合、この方法はさらに、特に限定されるわけではないが、例えば、抗-脈管形成剤、抗-VEGF試薬、VEGF Trap、AVASTIN(登録商標名)などのような、当該モノクローナル抗体と相乗効果を有する第2の薬剤の投与を含み得るものである。
ここにおいて上記に述べた方法のいずれにおいても、投与の方法は、目の硝子体への当該組成物の注射を含み得るものである。
以下において実施例が示される。しかしながら、本発明の概念は、これらの特定の実験、結果、および実験手順に何らその適用を限定されるものではないことが理解されるべきである。これらの実施例は、様々な実施形態群の一例として単に示されたのみであって、代表的なものであり、非限定的なものであることを意味する。
就業年齢人口における盲目の主な原因である、糖尿病性網膜症(DR)は、タイプ1および2の糖尿病(DM)において共通の懸念を表す。蓄積された証拠は、DRが慢性の炎症性障害であることを示唆する。網膜の炎症は、血管漏出(これは糖尿病性黄斑浮腫を招く。)および網膜血管新生(NV)における使役的な役割を果たすと信じられている。可溶性の細胞間接着分子-1(ICAM-1)と血管細胞接着分子-1のレベルが、非-糖尿病患者の硝子体におけるものと比べて、増殖性糖尿病性網膜症の患者からの硝子体において、顕著に高いものであることが示された。増加したICAM-1、血管細胞接着分子-1、およびe-セレクチンレベルが、糖尿病性細小血管症の患者からの血清中で見出された。糖尿病の動物モデル群においては、増加した網膜のICAM-1の発現は、白血球接着または白血球うっ滞および増加した血管透過性を原因とするものであると信じられています。白血球うっ滞は、毛細血管の非潅流および局部乏血をもたらし、このことが次に、血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰発現を引き起こすと、信じられている。増加したVEGFレベルは、網膜の血管漏出と網膜のNVの原因となる。最近の研究は、高血糖症によって引き起こされた、酸化ストレスが、糖尿病における網膜の炎症の一因となることを示している。しかしながら、糖尿病および酸化ストレスが炎症を引き起こす病原性のメカニズムは、未だ明らかではない。
Wntsは、Frizzled(Fz)レセプター群と低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質5または6(LRP5/6)とのコレセプター複合体に結合し、そして細胞内シグナル伝達経路、すなわち、Wnt経路を介していくつかの標的遺伝子群の発現を規制する、分泌された、システインリッチな、糖タンパク質の一属である。Wntリガンド群が不在のとき、古典的Wnt経路の下流エフェクターである、β-カテニンは、グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3βを含むタンパク質複合体によってリン酸化される。このリン酸化β-カテニンは、その蓄積を防ぐために絶えず分解される。Fz-LRP5/6コレセプターへのあるWntsの結合においては、β-カテニンのリン酸化は阻害され、これによりβ-カテニンの分解が抑制され、結果としてその蓄積がなされる。次に、β-カテニンは、核内へと移行し、ここにおいてβ-カテニンは、DNA結合に関するT細胞因子と会合し、そしてこれゆえ、VEGFを含む標的遺伝子群の発現を規制する。
LRP5/6が、Wnt/β-カテニン シグナル伝達における重要な役割を果たすことが知られている。Wntリガンド群との結合において、LRP6はFzレセプターで二量化されるが、これは、Wnt経路の活性化における最初でかつ必須の段階である。LRP6の細胞質領域は、複数のモジュールのリン酸化部位群を有しており、そして、LRP6のリン酸化は、古典的Wnt経路の活性化に必須な事象である。これは、LRP6のリン酸化は、骨格タンパク質Axinの加入を促進して、その結果、古典的Wnt経路を活性化するゆえである。
最近の証拠は、古典的Wnt経路が脈管形成におけるある役割を果たすのことを示している。多くの研究は、Wnt経路が、核因子κB、シグナル伝達性転写因子3、およびいくつかの炎症性因子を、発現増加させること、そして、それゆえ、炎症に関して重要な役割を果たすのを示している。本実施例は、ヒトのドナーの目、糖尿病動物モデル、および培養細胞を使用することによって、Wntシグナル伝達経路の可能な役割を調査したものである。
実施例1の材料と方法
人体組織: 研究における使用への完全な倫理的承認の下にナショナル ディジィーズ リサーチ インターチェンジ(フィラデルフィア州フィラデルフィア)[National Diseases Research Interchange (Philadelphia, PA)]から入手され、検死解剖から12時間以内で、正常な目および糖尿病の目が、10%中性緩衝化ホルマリン(NBF)中で固定化された。糖尿病の目は、標準化されたプロトコル(クァリクら、ラボ インベスト、78:109-116 (1998年) [Khaliq et al., Lab Invest, 78:109-116 (1998)])に従い分類された。
動物: 秋田マウス群は、ジャクソン ラボラトリー(メーン州バーハーバー) [Jackson Laboratory (Bar Harbor, ME)]から購入し、ブラウンノルウェーラット群は、チャールズ リバー(マサチューセッツ州ウィルミントン) [Charles River (Wilmington, MA)]から購入した。本研究における全ての動物の飼育、使用および処理は、「視力および眼科学における研究に関する協会からの眼科学的および視力研究における動物の使用に関する声名での合意[the Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Research from the Association for Research in Vision and Ophthalmology]」に厳密に従った。
ウシ網膜毛細血管の内皮細胞と周皮細胞の単離および培養: ウシ網膜毛細血管内皮細胞(RCEC)と周皮細胞は、グラントとグアイ(インベスト オプサルモル ヴィス サイ、32:53-64 (1991年))[Grant and Guay (Invest Opthalmol Vis Sci, 32:53-64 (1991)]に述べられた方法に若干の修正を加えたものに従い、ウシの目から単離された。3または4の通過で、培地中の細胞群純度は測定された。RCECの同一性は、特徴的な玉石状形態[cobblestone morphology]で、および、蛍光標識、DiI (1,1'-ジオクタデシル-3,3,3′,3′-テトラメチルインドカルボシアニン パークロレート(バイオテックテクノロジーズ インコーポレーテッド、マサチューセッツ州スタウトン)[DiI (1,1′-dioctadecyl-3,3,3′,3′-tetramethylindocarbocyanine perchlorate) (Biomedical Technologies, Inc; Stoughton, MA)]で標識されたアセチル化低密度リポタンパク質の取り込みによって確認された。周皮細胞培地の純度は、α-平滑筋アクチンに対して特異的な、フルオレセイン イソチオシアナート抱合抗体(シグマ、ミズーリー州セントルイス [Sigma; St. Louis, MO])で免疫染色することによって測定した。
ラットにおける糖尿病誘発: 実験的糖尿病は、1晩の断食の後の麻痺したブラウンノルウェーラット群(8週齢)に対し、ストレプトゾトシン(STZ)(クエン酸塩バッファ10mmol/L中の50mg/kg; pH4.5)の腹腔内注射を行なうことによって、引き起こされた。周齢が同じ比較対照ラット群は、クエン酸塩バッファのみの注射を受け、非糖尿病比較対照とされた。血糖値は、STZ注射の48時間後に測定され、その後、毎週観測された。350mg/dlを超えるグルコース値を有する動物のみが、糖尿病であると考えられた。
酸素誘導網膜症モデルおよび網膜NVの分析: 酸素誘導網膜症(OIR)モデルは、以前に説明されるように(リッチ、ドック オプタルモル、74: 171-177 (1990年) [(Ricci., Doc Opthalmol, 74:171-177 (1990)])、ブラウンノルウェーラットにおいて誘発された。網膜前血管細胞の定量化は、スミスら(インバスト オプタルモル ヴィス サイ、35:101-111 (1994年)) [Smith et al. (Invest Opthalmol Vis Sci, 35:101-111 (1994))]によって述べられている。簡潔には、出生後18日目(P18)に、各グループからの8匹のラットの目が摘出され、10%のホルムアルデヒドで固定され、薄片に切断され、H&Eで染色された。網膜の硝子体側面の上の血管細胞の核が、二重盲検試験における光学顕微鏡の下で計数された。それぞれの目からの10個の矢状切断が調べられ、そして、細胞数は動物の各グループで平均された。網膜前血管の核の平均数は、比較対照グループのそれと、スチューデントのt検定を使用することによって、比較された。
高分子量フルオレセインを用いた網膜の血管造影: P18のラット群が、スミスら(インバスト オプタルモル ヴィス サイ、35:101-111 (1994年)) [Smith et al. (Invest Opthalmol Vis Sci, 35:101-111 (1994))]によって述べられるように、10mg/kgのキシラジンと75mg/kgのケタミンの腹腔内投与で麻痺され、50mg/mlの高分子量フルオレセインイソチオシアナート−デキストラン(分子量2×106、シグマ)が脳室内注射によって潅流された。動物はすぐに、安楽死させられた。目が摘出され、PBS中の4%パラホルムアルデヒドで10分間固定された。網膜は、次に、眼杯から分離され、4%のパラホルムで3時間固定された。いくつかの切込みを網膜に入れ、これは、ゼラチンでコーティングされたスライド上に平坦に載せられた。そして、脈管構造が、蛍光顕微鏡(Axioplan2 Imaging; カールツァイス; ドイツ国イエナ [Axioplan2 Imaging; Carl Zeiss; Jena, Germany])の下で調べられた。
免疫組織化学: 免疫組織化学は、文献記載に従い行なわれた(チェンら、インバスト オプタルモル ヴィス サイ、47:1177-1184 (2006年) [Chen et al., Invest Opthalmol Vis Sci, 47:1177-1184 (2006)]。 LRP5/6に特異的な一次抗体群(アブカム[Abcam]、マサチューセッツ州ケンブリッジ)および低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)(サンタクルス バイオテクノロジー[Santa Cruz Biotechnology]、カリフォルニア州サンタクルス)が1:200の希釈で用いられ、そして、β-カテニンに対する抗体(セル シグナリング テクノロジー、マサチューセッツ州ダンバース[Cell Signaling Technology, Danvers, MA])が1:300の希釈で用いられた。二次抗体群としては、フルオレセインイソチオシアナート抱合型ヤギ抗マウスIgG (ジャクソン イムノリサーチ ラボラトリー、ペンシルバニア州ウェストグローブ)およびテキサスレッド抱合型ヤギ抗ウサギIgG (ジャクソン イムノリサーチ ラボラトリー)を1:200の希釈で用いた。
反応性酵素種の発生の測定: 細胞酸化ストレスは、細胞内反応性酵素種(ROS)発生を測定することによって決定された(デグリ、メソッズ、26:335-340 (2002年) [Degli, Methods, 26:335-340 (2002)]およびアメールら、ユウル ジェイ ハエマトル 70:84-90 (2003年) [Amer et al., Eur J Haematol, 70:84-90 (2003)])。簡潔には、2×106細胞/mlの密度の処理細胞群および非処理細胞群が、新たに調製された5-(および6-)クロロメチル-2′, 7′-ジクロロジハイドロフルオレセインジアセテート、アセチルエステル(CM-H2-DCF-DA)と、暗室において37℃でインキュベートされた。このCM-H2-DCF-DAを負荷された細胞群は、PBS中で二度洗浄され、直ちに蛍光光度計によって488 nmの励起および530 nmの放出にて分析された。データは3つの別々の実験の平均から任意単位における蛍光強度として表された。
Dickkopf Homolog 1の硝子体内注射: 簡潔には、動物はケタミン(100mg/ml)とキシラジン(20mg/ml)の50:50混合物で麻痺させられた、そして、それらの瞳孔群はフェニレフリン(2.5%)とトロピカミド(1%)の局所適用で散大された。強膜切開は、ブレードで角膜輪部より約0.5mm後部で作成され、そして、3 μlの特定の濃度群のDickkopf Homolog 1(DKK1)またはウシ血清アルブミン(BSA)で満たされたシリンジに接続されたガラスインジェクタ(〜33ゲージ)が、強膜切開を介して硝子体腔内へと導入された。
可溶性ICAM-1酵素結合免疫吸着測定法: 市販の可溶性ICAM-1(sICAM-1)酵素結合免疫吸着測定法キット(アール アンド ディー システムズ、インコーポレーテッド、ミネソタ州ミネアポリス [R&D Systems, Inc; Minneapolis, MN])が、マウス網膜組織群中におけるsICAM-1レベルを測定するために、製造業者のプロトコルに従って、使用された。マウス組織群からのサンプル群は、sICAM-1濃度がsICAM-1の標準曲線の範囲の中に入ることを保証するために10倍希釈された。
ウエスタンブロット分析: 各ラットまたはマウスからの同じ量の網膜タンパク質が、各タンパク質に特異的な一次抗体を使用するウェスタンブロット分析に用いられ、西洋わさびペルオキシダーゼ抱合型二次抗体でブロットされた(チェンら、インバスト オプタルモル ヴィス サイ、47:1177-1184 (2006年) [Chen et al., Invest Opthalmol Vis Sci, 47:1177-1184 (2006)])。シグナルは、化学発光検出キット(ECL; アマーシャム インターショナル; ニュージャージー州ピスキャタウェイ [ECL; Amersham International; Piscataway, NJ])で展色された。ブロット群は、次いで剥がされ、β-アクチンに特異的な抗体で再ブロットされた。
使用された一次抗体はLRP5/6(サンタクルス バイオテクノロジー)とHIF-1α(サンタクルス バイオテクノロジー)に1:500の希釈で特異的であり、また抗β−カテニン抗体(セル シグナリング テクノロジー)に1:3000の希釈で特異的である。
血管透過性分析評価: 血管透過性は、エヴァンスブルー[Evans blue]を追跡子として用い、先に述べられたところ(ガオら、ディアベトロジカ、46:689-698 (2003年) [Gao et al., Diabetologica, 46:689-698 (2003)])に従って定量化された。
実施例1の結果
Wnt経路は、DRに罹患したヒト患者の網膜で活性化される: 糖尿病患者の網膜でのWnt経路の活性化状態を評価するために、古典的Wnt経路の必須のエフェクタである、β-カテニンの総量の網膜レベルが測定された。非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)の6人の糖尿病のドナーと、5人の非糖尿病ドナーからの、眼切片が、免疫組織化学を用いて、β-カテニンに関して染色された。同じ展開強度の下において、NPDRのドナー群からの網膜内方においてβ-カテニン染色強度における統計学的に顕著な増加が見られた一方、非糖尿病ドナー群からの網膜におけるβ-カテニンシグナルは基礎的なレベルでしかなかった(図1、A-E)。さらに、免疫組織化学は、NPDRのドナー群が、非糖尿病ドナー群と比較して、網膜細胞の核においてより強烈なβ-カテニンシグナル(茶色の色)を有しており(図1)、NPDRのドナー群からの網膜でのβ-カテニンの増大した核内移行を示していた。
秋田マウス、STZ誘発糖尿病ラット、およびOIRラットでのWnt経路の活性化: DR動物モデルの網膜でのWnt経路の活性化を確認するために、β-カテニンレベルが、タイプ-1の糖尿病の遺伝モデルである秋田マウス、STZ誘発糖尿病ラットおよび乏血で誘発された網膜NVのモデルであるOIRラットからの網膜において測定された。ウェスタンブロット分析によって示されるように、β-カテニンレベルは、16週齢での秋田マウス群からの網膜において、それらの非糖尿病同腹子群に比べて、上昇した(図2A)。また、同様に、網膜のβ-カテニンレベルは、糖尿病誘発16週目のSTZ誘発糖尿病ラット群で、齢が一致する非糖尿病のラット群と比べて、上昇した。(図2B)。定常的酸素正常状態下の出生後16日(P16)齢のラット群では、低レベルのβ-カテニンが網膜に検出されたが、同じ日齢のOIRラット群は網膜において劇的に増加したβ-カテニンレベルを示した(図2 C)。
β-カテニンが蓄積される細胞の位置を特定するために、秋田マウス群、STZ-糖尿病ラット群、OIRラット群、およびこれらのそれぞれの比較対照群からの目の眼切片が、免疫組織化学を用いて、β-カテニンに特異的な抗体で染色された。それぞれ比較対照と比較した際に、より強烈なβ-カテニンシグナル(緑色)が、秋田マウス群、STZ-糖尿病ラット群、およびOIRラット群の網膜内方に検出された(図2、D−Q)。また、網膜細胞の核内における増加したβ-カテニンシグナルが、糖尿病の動物群とOIRラット群で観察された(図2、D−Q)で観察されました。
糖尿病患者およびOIRラットにおけるLRP5/6の増加した網膜におけるレベル: さらにWnt経路の活性化状態を評価するために、Wnt経路におけるコレセプターである、LRP5/6の網膜におけるレベルを、ウェスタンブロット分析によって測定した。結果は、LRP6の網膜のレベルは、糖尿病誘発16週目のSTZ誘発糖尿病ラット群からの網膜において、齢が一致する非糖尿病の比較対照群における網膜と比較して、より高いものとなったことを示した(図3A)。また、同様に、網膜のLRP6レベルは、P16齢のOIRラット群において、齢が一致する酸素正常状態の比較対照群と比較して、より高いものとなったことを示した(図3B)。
目の断面における免疫組織化学は、非糖尿病比較対照群におけるものと比較して、STZ誘発糖尿病ラットの網膜内方に増加したLRP5/6シグナルを示した(図3、CおよびDにおける緑色)。OIRラット群では、より強烈なLRP5/6シグナルが、主として網膜の脈管構造において検出された(図3、EおよびF)。
酸欠と酸化ストレスは糖尿病でWnt経路活性化の一因となる: 糖尿病でWnt経路活性化の原因を特定するために、DRの公知の病原性の要因である、酸欠と多糖症、のWntシグナル伝達への効果が生体外に(イン ビトロ)において評価された。ウェスタンブロット分析によって示されるように、14時間の酸欠(2%の酸素)への第一のRCECの曝露は、総β-カテニンレベルを増加させ(図4A)、酸欠が糖尿病患者とOIRモデルの網膜でのWnt経路活性化のための原因因子であること賀示された。
また、RCECは、10 μmol/L アミノグアニジン(アミノグアニジンは抗酸化活性を持っていることが知られている)の存在下と不在下で、30mmol/Lグルコースに24時間曝露された。RCECにおけるβ-カテニンの細胞内分布は、免疫細胞化学を使用することによって、決定した。低グルコース媒体(5mmol/Lグルコースおよび25mmol/Lマンニトール)下で培養された細胞群中では、β-カテニンは主として細胞質ゾルと膜の中に分布され、核(図4Bの緑色)では検知されなかった。 高グルコース媒体は、β-カテニンの核内移行(図4C)を引き起こし、高グルコースだけがWnt経路を活性化するために十分であることを示した。同じ条件のもとで、アミノグアニジンは、高グルコースによって引き起こされたβ-カテニンの核内移行を阻害した(図4D)。一貫して、単離核タンパク質を使用するウェスタンブロット分析は、β-カテニンの核レベルが、高グルコース媒体に曝露されたRCECにおいて、低グルコース媒体のそれらと比べて、上昇することを示した。アミノグアニジンは、高グルコースで誘発された核におけるβ-カテニンレベルの増加を防止し、酸化ストレスが、Wnt経路の高グルコースで誘発された活性化の一因となると示唆した(図4E)。
Wnt経路の遮断は、DRモデルの網膜炎症、血管漏出、およびNVを改善する: さらにDRにおけるWnt経路活性化の使役的な役割を証明するために、Wnt経路活性化は、DRモデル群の網膜において、Wnt経路の特異的阻害剤であるDKK1を使用することによって、妨げられた。STZ-糖尿病ラットへの精製DKK1の種々異なった投与量の硝子体内注射は、反対側の目へのBSAの同量が注射されたものと比較して、投与量依存性をもって、網膜における可溶性ICAM-1レベルを減少させ、Wntシグナル伝達が糖尿病のラット群で網膜の炎症の一因となることを示した(図5A)。糖尿病のラット群での網膜の血管漏出におけるWntシグナル伝達の役割を評価するために、精製DKK1が、糖尿病誘発16週目のSTZ誘発糖尿病ラット群の右目の硝子体に注射され(1.2 μg/目)、一方、比較対照として反対側の目に等量のBSAが注射された。網膜の血管漏出は、注射の48時間後に追跡子としてエヴァンスブルーを使用することによって測定されて、総網膜タンパク質濃度で標準化された。一貫して、血管透過性分析は、糖尿病のマウスにおいて、反対側の目へのBSAの同量が注射されたものと比較して、DKK1が注入された目において網膜の血管漏出が顕著に低下したことを示した。
また、Wnt経路は、P16齢のOIRラット群へのDKK1(1.0μg/目)の注射によっても妨げられた。注射の2日後に、COX2などの炎症促進性因子および透過性因子VEGFの発現は、顕著に発現低下された(図5、CおよびD)。一貫して、血管透過性分析評価は、反対側の目へのBSAの同量が注射されたものと比較して、1 μg/目のDKK1が注入された目において網膜の血管漏出が顕著に低下したことを示した(図5E)。
乏血で誘発された網膜NVにおけるWntシグナル伝達の役割を評価するために、P14齢のOIRラットの硝子体にDKK1が注射された。P18齢で、網膜の脈管構造は蛍光眼底血管造影によって、全ての装着された網膜において可視化された。DKK1注射は、BSAが注射された反対側の目と比べて、新生血管領域とふさ状分岐の見かけの減少を引き起こした(図5、F−Iにおける緑色)。網膜NVは、網膜前血管細胞数を数えることによって、定量化され、BSAが注射された反対側の目と比べて、DKK1が注射された目における網膜前血管細胞における顕著な現象を示した。
Wntシグナル伝達の遮断は、高グルコース誘発HIF-1活性化とROS発生を減衰させる: HIF-1活性化が、DRにおけるVEGFと網膜NVの過剰発現において極めて重要な役割を発揮することが知られている。ここで、Wntシグナル伝達の役割はHIF-1を介するものであるかどうかが調べられた。培養されたRCECが、DKK1の異なった濃度の存在と不在の条件下、異なった時間で、30mmol/Lグルコースに、負の比較対照として5mmol/Lグルコースと25mmol/Lマンニトール、および正の比較対照としての腫瘍壊死因子(TNF)-αの1 μgと共に、曝露された。抗HIF-1α抗体を使用した免疫細胞化学によって示されるように、DKK1は、高グルコース媒体によって誘発された、活性化における重要な段階である、HIF-1αの核内移行を、阻害した(図6、A−Dにおける緑色)。
酸化ストレスが、DRにおける主要な病原性因子であると信じられているゆえに、高グルコースおよびTNF-αによって誘発されたROS発生におけるWntシグナル伝達の効果が評価された。ROS測定で示されるように、低グルコース媒体と比べて、TNF-αと高グルコース媒体(30mmol/L)の双方が、RCECにおけるROS生産を顕著に増加させた。DKK1は、TNF-αと高グルコースによって誘発されたROS発生の投与量依存性(6.25〜100nmol/L)低減化を示した。高濃度(50と100 nmol/L)のときに、DKK1は、アミノグアニジンの10μmol/Lのものと同程度にROS発生を減少させた(図6E)。
実施例1の検討
Wntシグナル伝達経路は、複数の生物学的および病理学的プロセス群を規制することが示されている。しかしながら、Wnt経路のDRとの関係は、以前に報告されてない。本実施例は、初めて、ヒトおよび動物モデルで、Wnt経路がDRにおける酸化ストレスと酸欠によって活性化されることを示した。さらに、ここにおいて、Wnt経路の特異的抑制剤でのWntシグナル伝達の遮断は、DRモデル群における網膜炎症、血管漏出、NVを改善することが示され、Wnt経路がDRにおける使役的な役割を果たすことが示された。したがって、これらの観測は、Wnt経路に関する新しい病原性の役割を確立した。
β-カテニンは、古典的Wnt経路における必須の下流エフェクタである。人間の目の断片を使用することで得られた今回の結果は、非糖尿病ドナーにおけるものと比較して、DRの患者における網膜内方細胞中での、β-カテニンの活性化における主要な段階として、β-カテニンの増加した網膜レベルおよび高められた核内移行を明らかにした。網膜内方での β-カテニン活性化の位置は、DRにおける病理学的な変化と互いに関連する。炎症と血管漏出を顕在化させるがNVを欠くものである、NPDRに罹った網膜でのWntシグナル伝達の活性化は、Wnt活性化が、増殖期の前で、DRの初期段階に起こり得ることを示した。
DRに罹患した網膜でのWnt経路の活性化を確認するために、網膜のβ-カテニンレベルが、DRの3つの動物モデルで調べられた。STZ誘発糖尿病は、共通して使用されたタイプ-1糖尿病患者のモデルである。 秋田マウスはタイプ-1糖尿病の遺伝的モデルである。これらのモデルの両方が、網膜の炎症と血管漏出を発生させたが網膜NVなく、そして、それゆえ、NPDRモデルである。ウエスタンブロット分析と免疫組織化学の両方が、STZ-糖尿病ラットの網膜では、β-カテニンの総量が、齢が同じ非糖尿病比較対照群におけるものより高いことを示した。同様に、非糖尿病同腹子と比べて、秋田マウスも増加したβ-カテニンレベルを有していた。これらの糖尿病モデルからの結果は、活性化Wnt経路が、網膜の炎症および血管漏出と互いに関連するのを示している。
OIRは乏血誘発網膜NVの一般的に使用されるモデルである。それは糖尿病モデルではないが、網膜前NV、血管漏出、網膜におけるHIF-1とVEGFの過剰発現などのこのモデルの病理学的な特徴は、増殖性糖尿病性網膜症のものに類似している。したがって、OIRは一般的に増殖性糖尿病性網膜症モデルとして受け入れられている。 OIRラットにおいて、β-カテニンレベルはまた網膜内方で増加した。 これらの結果は乏血誘発網膜NVにおけるWnt経路の潜在的役割を示す。
LRP5/6は、Wntリガンドの密接に関連のあるコレセプターである。DRでのWnt経路の活性化を確認するために、LRP5/6の網膜でのレベルが、DRモデルで測定された。ウエスタンブロット分析と免疫組織化学の両方が、LRP5/6の網膜レベルが、STZ誘発糖尿病患者とOIRモデルで上昇したことを示した。対照的に、Fzレセプターレベルの著しい変化は、双方のモデルの網膜において検出されなかった。これらのモデルにおけるβ-カテニン蓄積と共に、これらの結果は、Wnt経路がDRにおいて過剰活性化されることを示す。
DRは複合的な多因子性疾患である。酸欠と多糖症が主要な病原性因子であることが示されている。糖尿病でのWnt経路活性化の原因を特定するために、Wntシグナル伝達への酸欠と高グルコースの影響が評価された。培養された網膜の内皮細胞の中では、酸欠と高グルコース媒体はβ-カテニンの蓄積とその核内移行を引き起こした。これらの実験は、酸欠と多糖症が糖尿病におけるWnt経路活性化のための原因因子であることを示す。
多糖症によって引き起こされた酸化ストレスは、網膜炎症と血管外傷に関する主要な病原性因子であることが示されている。高グルコースによって引き起こされたWnt経路の活性化における酸化ストレスの役割を試験するのに、アミノグアニジンが、それに抗酸化活性があるゆえに、使用された。免疫細胞化学とウェスタンブロット分析の双方が、アミノグアニジンのみで、高グルコース媒体によって引き起こされたβ-カテニンの核内移行を減衰させることができるのを示し、これによって、アミノグアニジンは高グルコースによって引き起こされた酸化ストレスがDRでのWnt経路活性化の直接の原因であることを示した。
多くの病理学的な条件のもとで、Wnt経路活性化されることが知られている。DRにおける活性化Wntシグナル伝達の使役的な役割を証明するために、DRモデルにおけるWnt経路が、Wnt経路の特異的ペプチド抑制剤であるDKK1を使用することによって、遮断された。DKK1が、高い特異性と親和性をもってコレセプターLRP5/6に結合し、Wnt経路活性化における不可欠な段階である、FzレセプターでのLRP5/6の二量化、を防止することが知られています。DRモデルにおいて、DKK1のみの硝子体内注射は、これがICAM-1やCOX-2などの炎症促進性因子の過剰発現を妨げるゆえ、網膜の炎症を緩和するために十分である。同様に、DKK1はまた、網膜の血管漏出を減少させて、乏血で誘発された網膜NVを改善した。これらの結果は、Wnt経路の遮断のみでDRを改善するために十分であることを示した。さらに、培養細胞における、高グルコースなしでのWnt経路だけの活性化は、VEGF発現を引き起こすために十分であった。これらの結果は、Wnt経路活性化がDRにおける使役的な役割を果たすことを示す。この結論は、Wnt経路が炎症と脈管形成を仲介するという他の組織で先の観測と一致する。
Wntシグナル伝達がDRを仲介するメカニズムを解明するために、酸化ストレスにおけるWnt経路の効果が評価された。培養された内皮細胞中では、ROS発生は、高グルコースによって、および炎症性因子であるTNF-αによって、顕著に上昇した。DKK1でのWnt経路の遮断は、高グルコース媒体およびTNF-αによって引き起こされたROS発生を阻害した。これらの結果は、DRにおけるWnt経路の病原性の役割が、酸化ストレスの誘導とそれに続く網膜における炎症の誘導を介するものであるかもしれないことを示すものである。
概して、本実施例はWnt経路活性化が、ヒト患者と動物モデルの双方における、DRに関する目新しい病原性のメカニズムであることを示す最初の証拠を提供する。したがって、Wnt経路は、DRの薬学的介入のための新しい標的を表し、したがって、DRの治療における治療学的可能性を有している。
網膜NVは、DRにおける視覚喪失をまねく、主要な病理学的な特徴である。VEGFは、DRにおける網膜NVの形成を刺激することにおいて、よく知られている主要因である。上記した実施例1は、Wnt経路が、糖尿病の動物および乏血誘発動物モデルの網膜において発現増加されることを示している。さらに、実施例1は、LRP6の結合を介してのWnt経路抑制剤である、Dkk1を使用する、先端におけるWnt経路の抑制が、STZ誘発糖尿病モデルおよびOIRモデルの網膜において、網膜のVEGF発現、網膜の炎症および網膜の透過性を低減することを示している。
Dkk1がDRにおける網膜NVの治療で素晴らしい潜在能力を持っているのことを示す上記の事実にもかかわらず、網膜のDkk1の予防効果が、その短い半減期ゆえに一時的時であるだけであることは、注目に値する。このことは、目に複数回の硝子体内注射を必要として、その結果、目に深刻な傷害を与える。可溶性のタンパク質として、エシェリキア・コリ[E.coli]からDkk1を発現させることができず、従って、その合成は費用がかさむものである。したがって、抗脈管形成活性を有し、かつより長い半減期を有する他のWntの阻害剤が所望まれる。Dkk1の本質的抗脈管形成活性は、LRP6に結合することを介してLRP6活性を阻害するものであることから、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念は、直接LRP6活性を阻害し、これによってWnt経路を阻害し、その結果、網膜の炎症と網膜NVを防止する、抗体を提供するものである。ペプチド阻害剤を超えるこの抗体の1つの利点は、抗体の効果が4週間より長い間生体内(イン ビボ)で続くということである。そのうえ、抗原−抗体結合は、より特異的、そして、より高い親和性であるので、このモノクローナル抗体 抗LRP6-1は、DRにおいて、Dkk1のものと同じであるかより強力な抗脈管形成活性を有するであろう。
実施例2の結果
LRP6を中和するマウスmAbsの形成: マウスモノクローナル抗体のいくつかのクローンが、LRP6の組換え型のエクトドメイン(他の実施例で詳細に説明される)を用いた標準的ハイブリドーマ技術を使用することで形成された。mAbのいくつかの陽性のクローン、mAb 抗LRP6-1(上述したようにATCCに寄託したハイブリドーマが当該抗体を産生する)が、この方法によって同定された。抗LRP6-1は、様々な細胞系統で内在性LRP6に関する特異性に基づいて選択された。
抗LRP6抗体は、ヒトのLRP6によって仲介された細胞活性を中和する:
抗LRP6 mAbはLRP6活性を抑制する:次に、抗LRP6抗体によるLRP6リン酸化の抑制が測定された。正常な状況では、LRP6は活性ではない。WntはそのPPPSPモチーフでのリン酸化でLRP6活性化を刺激する。それは、LRP6の細胞質ドメインで5回繰り返される; したがって、Wnt 3aを含む培地が、リガンド仲介レセプター活性化に使用された。データは、抗LRP6-1が、細胞群への添加の前にWnt3a含有媒体に取り入れられたとき、LRP6リン酸化が、投与量依存性の様式(図7)でIC50値が0.21−0.44 μmol/Lの範囲にある状態で抑制されたことを示している。
抗LRP6-1 mAbは、Wntシグナル伝達経路活性化を抑制する: LRP6活性化が、コアエフェクタβ-カテニン蓄積を引き起こして、Wntシグナル伝達経路のための主要な段階となるゆえ、β-カテニン蓄積から下流に向かうWntシグナル伝達を阻害する抗LRP6-1の能力が評価された。RCEC細胞群は、抗LRP6-1でまたはこれなしで10分間前処理され、次に、Wnt3a含有媒体、酸欠、または高グルコースに曝露されたものの3つの異なったグループにそれぞれ別々に分配された。図8に示したデータは、抗LRP6-1が本質的に前述の刺激を完全に抑制したことを示す。
抗LRP6-1 mAbは内皮細胞の増殖を阻害する: Wntシグナル伝達経路は脈管形成に関係する; したがって、RCEC DNAへの[14C]チミジン取込みが、内皮性細胞増殖と生存の抑制のためのモデルとして測定された。シンチレーション近接アッセイが、RCECsへの[14C]チミジン取込みを測定するのに使用された。RCECsが96−穴シンチレーションプレート上にプレート付けされ、48時間後、[14C]チミジンが、当該細胞に加えられ、そして異なった濃度の抗LRP6-1またはDKK1と混合された。次に、RCECsは3日間1%のO2に曝され、そして、細胞単層に取り込まれた放射能が測定され、最大限度のシグナルの抑制割合が計算された。結果は、チミジン取込みが抗LRP6-1によって抑制されたことを示した; IC50値は、広範囲(0.5-2 μmol/L)にわたるもとなった。しかしながら、Dkk1と比べて、抗LRP6-1は内皮細胞の増殖により強力な抑制影響を与えた(図9)。
抗LRP6-1 mAbはVEGF過剰発現を減少させる:VEGF過剰発現への抗LRP6-1の生物学的効果はさらに測定された。RCECsは10分間、抗LRP6-1で前処理され、次に、24時間酸欠に曝された。培地のVEGFレベルは、製造業者のプロトコルに従って、ELISAキット(アールアンドディー システムス、インコーポレーテッド、ミネソタ州)を使用することで測定された。結果は、抗LRP6-1が酸欠状態に曝された内皮細胞の中で過剰発現VEGFを顕著に減少させたことを示した。 いくつかの追加実験で同様の結果が得られた(図10)。
抗LRP6-1は高グルコースによって引き起こされた反応性酵素種(ROS)の発生を減衰させる: RCECが抗LRP6-1またはDKK1の様々な濃度(6.25−125nM)の不在または存在下で30mMグルコースに2時間曝された。細胞内ROS発生検定法によって示されるように、高グルコースはROSの発生を引き起こした。 抗LRP6-1とDKK1の双方がROS発生を阻害した。しかしながら、抗LRP6-1は、Dkk1のものより強力な抑制効果を有しており、また濃度依存性の様式を示した(図11)。
抗LRP6-1 mAbは糖尿病ラットにおける網膜血管の白血球うっ滞を減衰させる: 糖尿病誘発2週目のSTZ糖尿病ラットが、処理グループにおいては抗LRP6-1の5 μg/目の硝子体内注射を、比較対照グループにおいては、前記と同じ投与量の比較対照マウスIgGおよびDkk1の硝子体内注射を受けた。注射の4週間後に、動物は、循環白血球を取り除くため潅流された。FITC抱合コンカナバリンAよって網膜の脈管構造と接着白血球は染色された(図12)。
抗LRP6-1 mAbは、網膜における乏血誘発VEGF過剰発現を減衰させと網膜の血管漏出を減少させる: 酸素誘発網膜障害(OIR)は、網膜の血管漏出とNVの両方を発生するゆえ、DRの一般的に使用されるモデルである。新しい生まれたブラウンノルウェーラットは出生後の7〜12日齢(P7-P12)のときに75%の酸素に曝された。抗LRP6-1をP12において硝子体に注射し、比較対照は同じ量の非特異的マウスIgGを硝子体に注射された。網膜の血管透過性は、エヴァンスブルーアルブミン漏出法を使用することで測定された。網膜に漏れたエヴァンスブルーアルブミン複合体は、分光光度計を使用することで定量化されて、網膜の総タンパク質濃度で正規化された。IgG比較対照(図13A)と比べて、結果は、抗LRP6-1が網膜の血管漏出をかなり減少させたこと示した。VEGFはNVと血管漏出のための重要な要因として知られているゆえ、網膜のVEGFレベルも測定された。ウェスタンブロット分析によって示されるように、IgGを注射されたOIRラットと比べて、抗LRP6-1はOIRラットで網膜のVEGFレベルをかなり減少させた(図13B)。。
抗LRP6-1 モノクローナル抗体は、糖尿病ラットでの網膜の血管漏出を減少させる: 実施例1は、また、Wnt経路がSTZ誘発糖尿病ラットの網膜でも活性化されるのを示した。抗LRP6-1の効力を評価するために、前述のモノクローナル抗体は糖尿病誘発の2週間後にSTZ-糖尿病ラットの硝子体に注射された。網膜の血管漏出は、モノクローナル抗体注射の3週間後にエヴァンスブルー法を使用することで測定された。非特異的IgG比較対照(図14)が注入されたそれらと比べて、結果は、モノクローナル抗体が注入されたラットが網膜の血管漏出を顕著に低下させたことを示した。抗LRP6-1が糖尿病によって引き起こされた網膜の血管漏出を減少させて、したがって、抗LRP6-1がDMEにおける治療的効果を有している。
抗LRP6-1はAMDモデルにおける網膜の血管漏出を減少させる: 網膜内NV、網膜の血管漏出、および炎症を発症するので、Vldlr/マウス-/-は、網膜内NV、網膜の血管漏出、および炎症を発症するのでウェットAMDの遺伝モデルとして十分に受け入れられている。AMDにおける抗LRP6-1の効力を評価するために、当該モノクローナル抗体は、アダルトVldlr/マウスの硝子体-/-に注射され、比較対照として非特異的IgGを硝子体に注射された。注射の2週間後における、透過率分析評価は、IgG比較対照と比較して、抗LRP6-1が注入された目が網膜の血管漏出を顕著に低下させたことを示した。持っていたのを示したル(図14)。この結果は、抗LRP6-1がAMD治療的効果を有していることをさらに示す。
盲目の主な原因である、糖尿病性網膜症は、タイプ1およびタイプ2の糖尿病の双方において、進行性の網膜の血管漏出、新生血管形成(NV)、および網膜剥離を含む重篤な眼性合併症である。血管の内皮性増殖因子などの複数の増殖因子(VEGF)が糖尿病性網膜症で網膜血管の異常における重要な役割を果たしている。
酸化ストレスがある多糖症状態における網膜の炎症が、糖尿病性網膜症の開発における極めて重要な役割を担うと信じられている。内皮に白血球付着を仲介する、可溶性接着分子-1(ICAM-1)と血管細胞接着分子-1(VCAM-1)のレベルが糖尿病患者の硝子体と血清で顕著に増加したのが示された。糖尿病性網膜症における炎症と 多糖症の関連は、数多くの観察において確証が強まったが、糖尿病性網膜症で慢性炎症に通じる病原性のメカニズムは不明瞭であった。最近、網膜の炎症で糖尿病性網膜症での古典的Wntシグナル伝達の病原性の役割は確立された。
Frizzled(Fz)レセプターと低比重リポ蛋白のレセプター関連タンパク質5/6(LRP5/6)から成るレセプター複合体に結合することで、分泌されたシステインリッチな糖蛋白質のグループであるWntsはシグナル伝達のカスケードを開始する。Wntリガンド結合が結合する際、LRP6のC-終点の保存されたモチーフ(PPPS/TP)は、スキャフォールドタンパク質Axinを介して膜に補充されるCK1とGSK3βによって規則的な方法でリン酸化される。 PPPS/TPモチーフの連続したリン酸化は細胞質ゾルキナーゼプールを減じ、および細胞質ゾルβ-カテニン安定化と蓄積という結果をもたらす。次に、β-カテニンは、VEGF、ICAM-1、および腫瘍壊死因子α(TNF-α)を含む目標遺伝子発現を活性化するために、核内移入し、TCF/LEFと会合する。
実施例1は、β-カテニンの網膜レベルが糖尿病性網膜症のヒトおよび糖尿病性網膜症動物モデルで増加するのを示した。また、LRP6の網膜のレベルは糖尿病性網膜症モデル群の網膜で増加した。 さらに、事実上、WntアンタゴニストDickkopf homolog 1(DKK1)の硝子体内注射は、動物モデルにおける糖尿病性網膜症を改善し、糖尿病性網膜症の病気の発生におけるWnt経路の異常調節の重要な役割を示した。さらに、正常なラットの網膜でのWnt経路の単独活性化は、網膜の炎症や血管漏出などの病理学的な変化を引き起こすために十分である。また、最近の証拠は、Wntシグナル伝達が直接、炎症性反応に一般に関連すること示した。これはWntシグナル伝達が、核因子κB(NFκB)を活性化させ、トランスクリプション33(STAT-3)のシグナル転写因子およびシグナル活性化因子を含むいくつかの炎症性因発現の増加させることが記録されているからである。これらの以前の発見は、Wnt経路の過剰活性化が糖尿病性網膜症で病原性の役割を果たし、糖尿病性網膜症の治療のために有望な薬剤標的となることを示すものである。
WntコレセプターLRP6は、Wntシグナル伝達活性化における重要な役割を果たす。これは、そのエクトドメイン(外部ドメイン)でWntリガンドとアンタゴニストDKK1の両方に結合部位を供給する。そのうえ、保存された細胞内PPPS/TPモチーフは、Wntリガンドから細胞内カスケードへとシグナルを伝えるために十分なシグナル増幅のための、タンパク質複合体Axin/GSK3βの接合部位に必須のものである。これらの事実は、LRP6がWnt経路を妨げるための理想的な標的を表すものであることを示している。。
多数の薬学的抗体が、上皮増殖因子レセプターなどの特異的発癌性レセプターを標的とするのみならず、多重疾患モデルにおけるVEGFなどの可溶性のタンパク質を中和するために報告されている。糖尿病性網膜症におけるWntシグナル伝達経路活性と網膜の炎症における、LRP6の封鎖の効果を評価するために、第1および第2プロペラドメインを含むLRP6の細胞外ドメインに特異的なモノクローナル抗体を発生させた。その古典的Wnt経路における抑制効果と糖尿病性網膜症へのその有益な効果は、糖尿病モデルを使用することでさらに評価された。
実施例3の材料と方法
プラスミド、抗体、および試薬: 全長LRP6、LRP6のエクトドメイン(LRP6N)、LRP5のエクトドメイン(LRP5N)、および低密度リポタンパク質レセプターのエクトドメイン(LDLRN)を発現するプラスミドは、ハーバード大学のエクス へ博士[Dr. X. He ]より寄贈された。LRP6の欠失変異体のヒトcDNAであるLRP6E1E2とLRP6E3E4は、ポリメラーゼ連鎖反応で増幅されて、BL21(DE3)発現のためにpET28b+プラスミドに形質移入された。ひと全長LRP5とVLDLR-Nは、哺乳類細胞における発現のためにそれぞれ、pGEMT-easyベクター、次いで、pcDNA3.1(-)およびpcDNA6プラスミドにサブクローニングされた。ヒトWnt1 cDNAはPCR増幅され、発現のためにpcDNA6プラスミドにクローンニングされた。
マウス抗β-アクチン抗体、ウサギ抗TNF-α抗体(アブカム、マサチューセッツ州ケンブリッジ [bcam, Cambridge, MA])、マウス抗VEGF抗体、ヤギ抗ICAM-1抗体、ウサギ抗β-カルチニン抗体(サンタクルスバイオテクノロジーズ、カリフォルニア州サンタクルス)、ウサギ抗pLRP6(Ser1490の)抗体、ウサギ抗pβカテニン(Ser33/37/Thr41)抗体(セルシグナリング、マサチューセッツ州ダンバース [Cell Signaling, Danvers, MA])はウェスタンブロット分析に使用された。 モノクローナル抗体抗LRP6-1は、タンパク質Gカラム(サーモフィッシャーサイエンティフィック インコーポレーテッド、マサチューセッツ州ウォルサム [Thermo Fisher Scientific Inc., Waltham, MA])を用い、製造業者の指示に従い、純化された。
シグマ-オルドリッチ株式会社(ミズーリー州セントルイス)からD-グルコース、塩化リチウム、塩化ナトリウムを購入した。ベクターラボラトリー(カリフォルニア州バーリンゲーム)[Vector laboratories (Burlingame, CA)]からh非特異的マウス免疫IgGを購入した。
細胞培養、移入、および抗体処理: hTERT-RPE(ATCC、バージニア州マナッサス)、ラットミューラー[Muller](rMC-1; ノースウェスタン大学のビジェイサルシィ博士から贈答品)、およびウシ網膜毛細血管内皮細胞(RCECs)は、10%のFBS(インビトロゲン、カリフォルニア州カールスバッド[Invitrogen, Carlsbad, CA])が補われたダルベッコ変性イーグル培地(DMEM; Cellgro, Manassas, VA)中で維持された。マウスL細胞を安定的に発現するWnt3Aは、10%のウシFBSが補われたDMEMでそして、Wnt3Aコンディション培地(WCM)はWntリガンドの源として使用された。製造業者によって推薦されたプロトコルに従って、Lipofectamine2000(Invitrogen、Carlsbad, CA)はTOP FALSHプロモーター構造物と発現プラスミドの移入に使用された。細胞は、3時間、無血清培地で同調培養して、非特異的IgGが各ウェルでの総免疫グロブリンの等しい濃度に補われた、抗LRP6-1の異なった濃度で0.5時間処理された。そして、細胞は20%WCMまたは30mM D-グルコースによって処理されて、Wntシグナル伝達を活性化させた。
6xhistidineタグを有するVLDLRN含有コンディション培地(VLDLRN-his)、mycタグを有するLDLRN (LDLRN-myc)、LRP5N-myc、およびLRP6-mycを以下の手順で入手した。60%培養密度のHEK-293T細胞が、lipofectamine 2000 (Invitrogen, Carlsbad, CA)を使用し、発現プラスミドを用いて遷移的に形質移入された、そして、培養培地は48時間のインキュベーション後に集められた。培地は濾過され、コンディション培地(CM)として使用された。
抗原調製、モノクローナル抗体選択、および純化: LRP6E1E2とLRP6E3E4をヒトの起源cDNAからのポリメラーゼ連鎖反応でpGEMT-easyベクターにサブクローニングし、pET28b+プラスミドに形質移入した。そして、LRP6E1E2を含むpET28b+およびLRP6E3E4配列は発現のためにBL21(DE3)に移された。封入体は、純化され、6Mのグアニジン塩酸塩を含むバッファの中に溶解された。変性タンパク質は、Ni-NTA樹脂(Novagen, Madison, WI)を用い、製造業者の指示に従って、純化された。純化抗原がクマーシーブルー染色およびウェスタンブロット分析によって確認された。
カラム上の再折畳[On-column refolding]は連続のバッファ交換によって実行された。10カラム容量(CV)のバッファA(PBS中の0.1%トリトンX-100、GSH/GSSG、pH7.8)、10CVのバッファB(PBS中の5mMベータサイクロデキストリン、GSH/GSSG、pH7.8)、および10CVの洗浄バッファ(PBS中の20mMイミダゾール、pH7.8)は、順次、再折畳に使用された。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の300 mM イミダゾールで溶出された。そして溶出液は、PBS中で透析され、そして、タンパク質濃度はブラッドフォードの分析評価で測定された。
LRP6 エクトドメインに対するモノクローナル抗体は、プロテインリッチグループ[Proteintech Group (Chicago, IL) ]によって構築されたサービスで純化抗原を用いて産生した。ELISAから別々にスクリーニングされた種々の陽性のクローンの中は、抗LRP6-1が特異的でかつ遮断活性を有するものと、ELISAおよびウェスタンブロット分析を用いて、同定された。
周知の方法に従って、細胞培養と硝子体内注射に使用される抗LRP6-1が産生されそして純化された(Hendriksen et al., Res immunol, 149:535-542 (1998))。簡潔には、6週齢メスBALB/Cマウス腹腔は、ハイブリドーマ細胞(1X106/ml)を注入され、そして、腹水は注射7日後に集められた。製造業者のプロトコルに従って、集められたマウス腹水はタンパク質Gカラムに適用された。カラムからのモノクローナル抗体溶出液は夜通し、PBSに対して透析された。
ルシフェラーゼレポーター分析評価: 24穴プレート中に2 × 104 細胞/ウェルでプレート付けされた、hTERT-RPE細胞が、lipofectamine2000を用いて、0.25 μg TOPFlashおよび0.05 μg pRL-TK構造物に移された。移入の4時間後、培地を新鮮な培地に取り替え、そして、細胞が、抗LRP6-1および各ウェルにおける総IgGの濃度が同じとなるように補われた補充量の比較対照IgGで、0.5時間予め処理し、次にWnt3A CMが16時間加えられた。Wnt1を使用する分析において、Wnt1の発現プラスミドは、プロモーター構造物で移入されて、おなじ手順でその後処理された。ルシフェラーゼ活性は、製造業者のプロトコルに従って、デュアルルシフェラーゼアッセイキット(Promega, Madison, WI)を使用することで実行された。レニラ ルシフェラーゼ活性は、移入効率を正規化するために測定された。すべての実験が少なくとも三重で行なわれた。
ウェスタンブロット法: 培養細胞は、冷たいリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗われて、セル溶解バッファ(150mM NaCl、1% NP-40、0.5% デオキシコレート、0.1% SDS、50mM Tris、pH8.0、10mMピロリン酸ナトリウム、100mMフッ化ナトリウム、および2mMフェニルメチルスルホニルフッ化物)の中で溶解された。PBSで洗浄した後に、細胞はプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)を含むPBSに懸濁された。そして、2回の凍結/融解サイクルが、細胞質ゾル分画を単離させるように実行された。各動物からの同じ量の網膜のタンパク質が、溶解バッファ(上記と同じ)中で続いての超音波処理で得られ、そしてブラッドフォードの分析評価による総タンパク質濃度測定の後にウェスタンブロット分析に用いられた。さらに、各タンパク質のための特異的一次抗体は一夜インキュベートされ、そして、HRP抱合二次抗体が検出に使用された。 シグナルは、化学イムノルミネッセンス検出キット(ECL; Amersham International, Piscataway, NJ)で展開された。ブロットは次いで、剥がされ、比較対照を負荷するために、β-アクチンに対して特異性の抗体で再ブロットされた。画像は、Chemi Genius Image Station (SynGene, Frederick, MD)によって取り込まれた。個々のタンパク質バンドは、密度計測によってGENETOOLSプログラム(SynGene, Frederick, MD)を使用することで予備定量化された。
免疫組織化学:免疫染色が以前に説明されるように実行された(Zhang et al., Am J Pathol, 166:313-321 (2005))。簡潔には、目は角膜と視神経頭の中央を通る十字で外科的に区分された。そして、中央が下を向いるように眼球の両方の半分は埋め込まれました。連続の凍結切片(5μmの厚さ)はPBS中の1%BSAでブロックされ、FITC抱合抗LRP6-1と共に、比較対照としてのFITC-IgGとともにインキュベートされた。負の比較対照に関して、FITC抗LRP6-1は抗原、LRP6E1E2ペプチド、によって予備吸着され、抗体染色に特異性を示した。PBS-0.1% tween-20での洗浄の後に、スライドは、次に、PBSでリンスされ、蛍光顕微鏡の下で観察された。
OIRとSTZ誘発糖尿病ラットモデル: 動物実験のすべてが、ARVO Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Researchの合意に従って行なわれた。ブラウンノルウェーラット(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)はOIRモデルに使用された。 糖尿病が以前に説明されるようにアダルトブラウンノルウェーラットで、STZ(クエン酸塩バッファ10mmol/L中の55mg/kg、pH4.5)の腹腔内注射で引き起こされて、モニターされた(Zhang et al., Am J Pathol, 166:313-321 (2005))。糖尿病誘発2週間後の糖尿病のマウスは、比較対照IgG または抗LRP6-1の硝子体内注射を受けた。
硝子体内注射: 動物はケタミン(100mg/mL)とキシラジン(20mg/mL)の50:50混合物で麻痺させられました、そして、それらの瞳孔群はフェニレフリン(2.5%)とトロピカミド(1%)の局所適用で散大された。強膜切開は、針(〜32ゲージ)で角膜輪部より約1mm後部で作成され、そして、2 μlの特定の濃度群のLRP6 mAbまたは純化マウスIgG で満たされたシリンジに接続されたガラスインジェクタ(33ゲージ)が、強膜切開を介して硝子体腔内へと導入された。
網膜の血管透過性分析評価: 網膜の血管透過性が確立したプロトコルに従って、エヴァンスブルー[Evans blue]を追跡子として用い、先に述べられた確立したプロトコル(Aiello et al., Am J Opthalmol, 132:760-776 (2001))に従って定量化された。
白血球うっ滞検定: 分析評価は以前に(Chen et al., Microvasc Res, 78:119-127 (2009))説明されるように実行された。簡潔には、マウスは、麻痺させられて、血管の循環白血球を取り除くために左室を通してPBSで灌流された。脈管構造中の接着白血球を、FITC抱合コンカナバリン-A(Con-A, 40 μg/ml, Vector Laboratories, Burlingame, CA)を灌流することで染色した。目は除去され、4%のパラホルムで固定化された。 網膜は、解剖されて平らに載せられた。網膜の脈管構造における接着白血球は蛍光顕微鏡の下で数えられた。
統計分析: 量的なデータは、ススチューデントのt検定を使用することによって分析されて、比較された。 統計的な意味はp<0.05で設定された。
実施例3の結果
LRP6 LRP6 E1E2ドメインのための抗LRP6-1の特異性: モノクローナル抗体のいくつかのクローンが、LRP6の組換え型のエクトドメインを使用することで上昇した。モノクローナル抗体のいくつかの陽性のクローンから、内在性LRP6に関する特異性に基づいて抗LRP6-1は様々な細胞系統で選択された。 抗LRP6-1は、LRP6を単一のバンドとして認識するが、ヒトのLRP6への71%のアミノ酸配列の同一性がある他のWntコレセプターである、LRP5は認識しなかった。さらに、抗LRP6-1はヒト、マウス、マウス、およびウシを含む異なった種類から様々な細胞系統で内在性LRP6を認識した(図15AおよびB)。LRP6が低密度リポタンパク質レセプター(LDLR)ファミリーのものであるので、LDLRや非常に低密度のリポタンパク質レセプター(VLDLR)のようなLDLRファミリーの他のメンバーへの抗LRP6-1結合が評価されたに(図15 C)。ウエスタンブロット分析は、抗LRP6-1がLDLRやVLDLRを認識しなかったことを示し、このためLRP6に特異的であると同定された。さらに、抗LRP6-1がLRP6の全長エクトドメイン、および1E2Eフラグメントを認識するが、3E4Eドメインは認識しないことが確かめられ、抗LRP6-1のエピトープがLRP6の1E2Eのドメインで存在していることが示された(図15 C)。
次に、ラットとマウスの網膜断面は、網膜のLRP6の空間的な発現を決定するためにFITC標識化抗LRP6-1で免疫染色された。 FITC抗LRP6-1を使用する免疫組織化学は、LRP6がラットで網膜内方で主として発現されるのを示した。 しかしながら、マウス網膜では、強烈なLRP6シグナルは網膜内方とRPE(図15 C)で観察された。アイソトープ比較対照(非特異的IgG)(D1、D4、D7、D10)と抗原(LRP6 エクトドメインペプチド)(D3, D6, D9, D12) で予め吸着させたFITC抗LRP6-1(D3、D6、D9、D12)と共に同じ条件のもとでの免疫染色では、特異的なシグナルを示さず、LRP6シグナルが特異的であることが示された。
抗LRP6-1は効率的にレセプターレベルでWntのリガンドによって誘発されたWntシグナル伝達を阻害した。抗LRP6-1が古典的Wnt経路に抑制影響を与えるかどうかを明らかにするため、hTERT-RPE(人間の網膜色素epithelial(RPE)セルから誘導され、内在性LRP6を発現する細胞系統)は、Wnt3Aの条件培地に露出されたか、または古典的Wnt経路を動かすためにWnt1と共に移入された。抗LRP6-1は効率的に、Wnt経路活性化における早めの段階である、セリン1490残基におけるLRP6のWnt3A仲介リン酸化を抑制し、一方、総LRP6 レベル上には何らの効果もしめさなかった。また、抗LRP6-1はβ-カテニン蓄積の減衰を示して、細胞質ゾルβ-カテニンレベルのWntのリガンドによって誘発された増加を減衰させました。 対照的に、負の制御免疫グロブリンはpLRP6と細胞質ゾルβカテニンレベル(図16A)で効き目がなかった。 βTCF/カテニンの転移活性への抗LRP6-1の効果は、βカテニン TCF/結合サイトを含むプロモーターによって誘導されたルスフェラーゼ活性を測定するTOPFLASH活性検定を使用することで評価された。Wnt3Aは40倍でルスフェラーゼ活性を引き起こした、そして、抗LRP6-1はEC50およそ20μg/mlで投与量依存性をもってWnt3Aによって誘発されたルスフェラーゼ活性を抑圧した。 また、同様に、抗LRP6-1はEC50およそ20μg/ml(図16 C)があるWnt1によって誘発されたTOPFLASH活性を抑制した。
塩化リチウム(LiCl)はリン酸化β-カテニンを構成するGSK3βの知られている抑制剤であり、β-カテニンのプロテアソーム分解を仲介する。したがって、リチウムはWntリガンド、Wntレセプター、およびコレセプターの如何にかかわらず、古典的Wntシグナル伝達を活性化する。TOPFLASH検定によって示されるように、25mmol/L LiClはβTCF/カテニン活性を著しく引き起こした。抗LRP6-1はリチウムで誘発されたTOPFLASH活性化を抑制せず、抗LRP6-1による抑制がレセプターリガンド相互作用(図16D)のレベルにあるのを示した。
抗LRP6-1は高グルコース(25mM)活性化古典的Wntシグナル伝達を阻害した。古典的Wnt経路が糖尿病患者と動物モデルの網膜で活性化し、また、高グルコース培地は培養細胞の中でWnt経路を活性化することが記載されている。RPE、ミュラー[Muller]および内皮細胞を含む糖尿病性網膜症の病気の発生に関連している網膜細胞はWnt経路を動かすために高グルコース培地(30mM)に露出され、比較対照としては低グルコース媒体(5mMグルコースと25mMマンニトール)が用いられた。 抗LRP6-1は、高グルコースで誘発されたWntシグナル伝達への抑制効果を決定するために培地に添加された。ウエスタンブロット分析は、6時間の高グルコース露出がRPEセルの中でp-LRP6とβ-カテニンレベルを増加させたのを示した。
抗LRP6-1は高グルコースで誘発されたp-LRP6の増加とβ-カテニン蓄積に対し濃度依存性をもって(図17A、17B)、その増加を十分減衰させた。さらにWntシグナル伝達の活性化を確認するために、cyclin D1やc-mycなどのWnt標的遺伝子の発現レベルが測定された。 ウェスタンブロット分析によりcyclin D1とc-mycの高グルコース培地で発現増加された発現が見られたが、抗LRP6-1はcyclin D1とc-myc(図17 C)のレベルを減衰させた。
網膜のミュラー細胞が網膜の炎症で糖尿病性網膜症で重要な役割を果たすのが知られています。抗LRP6-1はまた、ミュラー細胞の中で、細胞質ゾルβ-カテニンレベル(図17D)の高グルコースで誘発された増加を減衰させました。網膜の内皮細胞は、糖尿病性網膜症で網膜の血管漏出、白血球うっ滞および新生血管形成の主要な役割体であるので、ウシ網膜毛細血管内皮細胞(BRCEC)が、Wntシグナル伝達を活性化するために、30mM D-グルコースに露出された。低グルコース比較対照(5mmol/Lグルコースと25mmol/Lマンニトール)と比べて、30mM D-グルコースは細胞質ゾルβ-カテニンを増加させた。一方、抗LRP6-1は、BRCECで高グルコースによって引き起こされた増加を抑制した。GSK3β(Ser33/37/Thr41)によるβ-カテニンのリン酸化はβ-カテニンの分解につながるので、測定リン酸化β-カテニンレベルがまた測定された。 結果は、高グルコースがp-β-カテニンレベルをかなり減少させたのを示したが、抗LRP6-1は高いグルコースによって引き起こされた変化を逆にした(図17 E)。
概して、これらの結果は高グルコースが網膜細胞の中でWntシグナル伝達経路と、RPE、ミュラー細胞、およびBRCECを含むその標的遺伝子発現を活性化したのを示した一方、抗LRP6-1は濃度依存性をもって、高グルコースで誘発されたWntシグナル伝達を減衰させました。
抗LRP6-1は、網膜の炎症性および脈管形成性因子群の高グルコース誘発発現を抑圧した。網膜の炎症性および脈管形成性因子群の過剰発現が糖尿病性網膜症で網膜新生血管と炎症における病原性の役割を果たすのが知られている。これらの炎症性お因子の多くがWntシグナル伝達で規制される。以前に、VEGFが古典的Wntシグナル伝達で規制された直接標的であると述べられている。培養されたRPE、ミュラー細胞、およびBRCECでは、高グルコース媒体はVEGFの過剰発現を引き起こしたが、抗LRP6-1は、この過剰発現を濃度依存性をもって阻害する。また、同様に、高グルコースは炎症性因子のICAM-1とTNF-αの過剰発現を引き起こした。 抗LRP6-1は網膜細胞(図18)におけるこれらの因子の過剰発現を抑圧した。 同じ細胞の中では、非特異的IgGはこれらの因子のレベルを減少させなかった。高い濃度における抗LRP6-1はVEGF、ICAM-1、およびTNF-αのレベルを低グルコース比較対照のレベルまでに減少させた(図18)。これらの結果は、高グルコースがWntシグナル伝達を介してのこれらの因子の過剰発現を引き起こすのを示します。
抗LRP6-1は内皮性細胞移動を抑制した。内皮性移動への抗LRP6-1の効果は、一次BRCECを使用しながら、かすり傷治癒分析評価とチューブ形成分析評価で評価された。内皮性細胞移動が網膜新生血管で重要なステップであるゆえである。 かすり傷創傷治癒分析評価は、高グルコース培地がかすり傷の48時間後にBRCEC創傷治癒を高めたのを示した。 抗LRP6-1の存在下で、高グルコース誘発されたBRCEC創傷治癒は実質的に減少した(図19A、B)。BRCECチューブ構成分析評価では、BRCECは12時間でチューブ状パターンを形成し、これは抗LRP6-1によって減衰されてるが、免疫グロブリンによっては減衰させられなかった(図19 C、D)。これらの結果は、抗LRP6-1が内皮性細胞移動を抑制したことを示した。
抗LRP6-1はOIRモデルの網膜で血管漏出を減少させて、炎症を抑制した。血液網膜バリアの故障のために糖尿病性網膜症の特徴の1つは漏れやすい血管である。OIRラット(増殖性糖尿病性網膜症のモデル)はVEGF(Wntシグナル伝達の目標の遺伝子)などの血管新生性因子の乏血で仲介された過剰発現のため増加する網膜の血管透過性を表します。血管漏出への抗LRP6-1の抑制効果はOIRモデルで評価された。抗LRP6-1はP12齢で硝子体内的に右眼(10μg/目)に注がれ、同じ量の比較対照免疫グロブリンで反対の目を処理した。網膜の血管漏出は、P16齢でエヴァンスブルー−アルブミン漏出方法を使用することで測定された。比較対照免疫グロブリンが注入されたそれと比べて、抗LRP6-1が注入された目が低い網膜の血管透過性をかなり持っていたのを示した(図20A)。次に、血管漏出と炎症に貢献する因子の網膜のレベルが測定された。 比較対照の免疫グロブリンと比べて、抗LRP6-1はOIRラットの網膜でICAM-1、TNF-α、およびVEGFの発現を抑圧した。また、抗LRP6-1はLRP6とβ-カテニンの網膜のレベルを下に規制し、Wntシグナル伝達活性化(図20B-D)を抑制することを通して抗LRP6-1がOIRの網膜で脈管形成性であるか炎症性の活性化を減衰させたのを示した。
抗LRP6-1はSTZ誘発糖尿病ラットで網膜の血管漏出と白血球うっ滞を減少させました。 糖尿病性網膜症への抗LRP6-1の有益な効果を評価するために、抗LRP6-1は硝子体内的にSTZ誘発糖尿病ラットに注がれました。比較対照のための同じ投与量の非特異的IgGで処理した。網膜の血管透過性は、エヴァンスブルー−アルブミン漏出方法を使用することで抗LRP6-1注射に続いて、2週間測定されて、免疫グロブリン比較対照に較べられました。 結果は、免疫グロブリンを注入したものよりかなり低い血管透過性が、抗LRP6-1が注入された目で示された(図21A)。
白血球うっ滞などの網膜の炎症は糖尿病性網膜症の別の特徴です。網膜の炎症への抗LRP6-1の効果を決定するために、STZ-糖尿病患者網膜でモノクローナル抗体注射に続いて、白血球うっ滞分析評価は2週間実行された。非糖尿病患者比較対照と比べて、未処置のSTZ糖尿病の、そして、免疫グロブリンで扱われたSTZ-糖尿病患者の網膜は、網膜の脈管構造(図21B)でかなり増加する数の粘着性の白血球を見せました。白血球の数は抗LRP6-1が注入されたSTZ-糖尿病患者グループでかなり減少し、抗LRP6-1が網膜の炎症(図21B)に抑制影響を与えるのを示した。
ICAM-1とTNF-αが糖尿病の下で網膜の炎症における重要な役割を果たすとき、ICAM-1とTNF-αの網膜のレベルは、ウェスタンブロット分析を使用することでさらに測定された。
非糖尿病患者マウスでそれと比べて、STZ誘発糖尿病の網膜はICAM-1とTNF-αの過剰発現を示した。非特異的IgGではなく、抗LRP6-1は、糖尿病の網膜(図21 C)でICAM-1とTNF-αの過剰発現を抑圧した。さらに、非糖尿病患者マウスでそれと比べて、LRP6の網膜のレベルはSTZ誘発糖尿病の網膜で増加した。しかしながら、レベルは、糖尿病の抗LRP6-1が注入されたマウスで減少したが、非特異的IgGが注入されたそれで減少したというわけではない。これらのデータは、糖尿病の網膜でのWnt経路の活性化が一部LRP6の過剰発現のためであったのを示します。そして、抗LRP6-1はLRP6の下方への規制を通してICAM-1とTNF-αの過剰発現を抑圧します。一緒に取って、結果は、それが糖尿病の網膜の血管漏出と炎症を減衰させて抗LRP6-1が糖尿病性網膜症に有益な影響を与えるのを示した。
実施例3の議論
前の実施例群は、糖尿病性網膜症で、網膜でWntシグナル伝達の異常調節するのを示して、その結果、Wntシグナル伝達経路が糖尿病性網膜症で主要な病原性であることを示している。 DKK1(Wntシグナル伝達の特定の抑制剤)が糖尿病性網膜症モデルにおける網膜の炎症、血管漏出、および炎症を改善することができるという観測で、糖尿病性網膜症でのWntシグナル伝達の病原性の役割は支持されます。これらの調査結果は、Wntシグナル伝達が糖尿病性網膜症の潜在的治療法の目標を表すのを示します。Wntシグナル伝達のよく研究された分子カスケードにもかかわらず、Wnt経路を妨げる効果的な戦略は糖尿病性網膜症の治療法のアプリケーションのために確立されていません。Wntシグナル伝達のDKK親族や、SERPINA3KやIGF1BPなどの自然な抑制剤は特定されたが、治療法としてこれらのアプリケーションで生産の低い安定性と高いコストを含むこれらの自然な抑制剤を使用することの制限があります。本実施例は、初めて、抗LRP6モノクローナル抗体が糖尿病性網膜症でWnt/β-カテニンシグナル伝達の抑制で網膜の血管漏出と網膜の炎症を減衰させると報告します。さらに、これらの結果は糖尿病性網膜症の発展とLRP6の不可欠でのWnt経路活性化の原因的な役割を支持することを提供します。治療法の可能性を示して、これらの観測は、まず第一に、抗LRP6-1でLRP6を妨げると糖尿病性網膜症を改善することができるのを確証した。 そのうえ、この実施例はWntシグナル伝達経路を妨げるための十分な目標としてそのLRP6を明らかにします。
ここに、LRP6(E1E2)の1番目と2番目のプロペラドメインに特異的な抗LRP6-1が様々な網膜細胞におけるWntシグナル伝達ならびにその後の脈管形成性であって炎症性の因子の発現を阻害したのが示されます。生体外でのWntシグナル伝達と炎症性因子への抑制効果に基づいて、糖尿病性網膜症への潜在的有益な効果は動物モデルで決定した。まず最初に、OIRと糖尿病のマウスの両方で、モノクローナル抗体は糖尿病の黄斑浮腫(DME)(糖尿病患者の視力の損失の一番の原因)の根本原因である網膜の血管漏出を減少させました。2番目に、抗LRP6-1は網膜の白血球うっ滞、次に局部乏血をもたらす毛細血管の損なわれた内皮、血管漏出、および閉鎖に通じることができる主要な炎症性の変化、を抑圧した。網膜の血管漏出と白血球うっ滞への効果のためのメカニズムに向かって、これらの生体外の、そして、生体内の結果は、抗LRP6-1が糖尿病における網膜の炎症で重要な役割を果たすために示されたVEGF、ICAM-1、およびTNF-αの発現を下に規制するのをともに示した。VEGFはWntシグナル伝達の標的遺伝子として確固とします。ICAM-1とTNF-αのプロモータ領域の配列分析は、TCF/LEFの結合サイトが、ICAM-1とTNF-αの発現がWnt経路によって直接規制されるかもしれないことを示して、これらのプロモーターの末端の領域にあるのを明らかにした。
古典的Wnt経路は、単一のエフェクタを利用する保存されたシグナル経路であり、当該エフェクタは、多くの目標の遺伝子の発現を規制するための多機能転写活性剤β-カテニンです。しかしながら、Wnt経路のさまざまの時空的な活性化は20のWntリガンド、10のFrizzledレセプター、および2つのコレセプターの中の複数の組み合わせから起こります。多数の多様性を提供する。これらの多様性はWntリガンドかFrizzledレセプターの封鎖でWnt経路を阻害する治療法のアプローチを抑制します。しかしながら、以下の事実に基づいて、LRP6はWntシグナル伝達を妨げるための理想的な目標であると信じられています。 1) 古典的Wnt経路は2つのコレセプター、LRP5またはLRP6の1つを必要とします。 2) LRP6のノックアウトはLRP5のノックアウトより厳しい表現型を表し、これはLRP6がWntシグナル伝達でLRP5より重要な役割を果たすのを示すものです。 3) LRP6には、抗体によって細胞外的にアクセスしやすい大きい細胞外ドメインがあります。 さらに、実施例1で糖尿病患者と動物モデルから特異的に概説された研究は、DKK1でLRP6を妨げると動物モデルにおける糖尿病性網膜症を改善することができるのを示した。糖尿病におけるWntシグナル伝達活性化のための正確なメカニズムは不鮮明ですが、現在および以前の研究は、脂質酸化製品(4-hydroxynonenal)での、および高グルコースでのLRP6のリン酸化がWntシグナル伝達活性化に十分であることを示した。 Wntリガンド仲介シグナル伝達化はこの特定の状態における副次的効果であるように思えます。 これらの調査結果は、LRP6を妨げると、WntリガンドやFrizzledレセプターよりむしろ、糖尿病の状態での少なくとも正準な経路を阻害するための効果的な手段が提供されるのを強く示しています。
LRP6はタイプ1 シングルトランスメンブランレセプターです。そのより大きいエクトドメインはYWTDプロペラドメインで4つの同様のEGFのような反復(1Eから4E)から構成されます。 1番目と2番目のベータプロペラ領域を含んでいるLRP6E1E2ドメインがWnt-Fzと相互作用するのに協働するのが示されたが、LRP6E3E4はアンタゴニストDKK1に結合サイトを供給します。しかしながら、最近の生体外の再構成研究は、Wnt3Aが3E4Eドメインに特異的に、そして、DKK1が相互作用の協働的パターンで1E2Eおよび3E4Eの双方へ結合することを示した。 また、Wnt1が優先的に1Eのドメインに付くのも、さらに3EがWnt3A結合に十分であることも示されている。LRP6に関するそれらの異なった拘束力があるサイトにもかかわらず、Wnt1とWnt3Aによって誘発されたTOPFLASH活性化の両方が抗LRP6-1によって抑制されます。これは抗LRP6-1が1EドメインにWnt1リガンドが結合することを妨げるだけではなく、3Eドメインに対するWnt3A相互作用にも抑制影響を与えることを示すものである。Wnt3Aによって誘発されたWntシグナル伝達における抗LRP6-1の抑制は、二価抗LRP6-1がLRP6に付いて、Wnt3Aの近づきにくさを引き起こすLRP6 エクトドメインの三次元構造を変える可能なメカニズムによって説明されるかもしれません。また、抗LRP6-1がWntリガンド結合に利用可能なLRP6の下方への規制を引き起こすLRP6を動揺させるのも、ありそうです。
OIRとSTZ誘発糖尿病ラットモデルを使用する生体内の研究は、抗LRP6-1が古典的Wnt経路の活性化を抑制するだけではなく、LRP6レベルを下方に規制することを示した。これは、総LRP6の網膜のレベルが比較対照免疫グロブリンが注入されたそれより抗LRP6-1(注射の1週間後の)が注入されたマウスで低いからである。 しかしながら、細胞培養結果は、抗LRP6-1がLRP6の活性化を妨げるが、6時間の処理の後に総LRP6レベルを減少させないのを示した。 生体外の、そして、生体内の結果の間のこの不一致は抗LRP6-1よる処理時間の違いによって説明されるかもしれない。これは、糖尿病患者では、1週間網膜は治療されたが、糖尿病ラットでは網膜は1週間処理されたからである。抗LRP6-1がOIRと糖尿病の動物モデルのLRP6の総レベルを下に規制するメカニズムは不明瞭です。 しかしながら、LRP6のエクトドメインとの抗体結合がLRP6を動揺させるか、内面化を引き起こして、またはその結果、LRP6の総レベルを減少させることがありそうです。
糖尿病性網膜症にかかわる複数の病原性のメカニズムの規制におけるWntシグナル伝達の見かけのかかわり合いは対象とされた療法の好奇心をそそる候補にWnt経路を作ります。 VEGF(脈管形成、血管透過性、および内皮細胞の移動を規制する)は糖尿病性網膜症の網膜で過剰発現され、β-カテニンによって規制されたWnt目標の遺伝子です。 この実施例は、抗LRP6-1が高グルコースに露出された網膜細胞における、およびOIRラットの網膜におけるVEGFの過剰発現を抑圧したのを示した。さらに、Wnt経路がNF−κBの直接活性化による網膜の炎症を抑制する、およびSTAT3を含む転写調節因子がクロストークするのを規制するのが知られています。また、結果は、ICAM-1とTNF-αの一時的発現がWntシグナル伝達活性化のVEGF発現と平行していたのを示し、これらの発現がWntシグナル伝達のコントロールの下にあるという補足的証拠を提供した。したがって、これらの調査結果は糖尿病性網膜症における重要な病原性の役割を果たすのが知られている重複因子の表現がWnt経路によって下方に規制されているという可能性のある証拠を提供します。
最近の臨床実験は、抗VEGF化合物がAMDに有望な影響を与えるのを示した。 しかしながら、糖尿病性網膜症では、抗VEGF化合物はAMDほど有効ではない。可能な理由は糖尿病性網膜症が複合したそして多因子疾患であるということです。VEGFに加えて、複数の増殖因子が糖尿病性網膜症における役割を果たすのが知られています。 したがって、VEGFのみを妨げるのは糖尿病性網膜症を改善するのに十分でないかもしれません。 Wnt経路が糖尿病性網膜症で巻き込まれるICAM-1や、PDGFや、VEGFや、TNF-αや、MMPやCOX2などの炎症性の、そして、脈管形成性な複数の因子を規制するので、糖尿病性網膜症では、抗LRP6抗体は抗VEGF化合物より強力な効力を持っているかもしれません。
治療法の目的にヒト化されたモノクローナル抗体を使用する利点は、内在性Wnt抑制剤と比べて、それらの高い特異性と安定性であり、低い免疫原性(immunogenecity)と毒性です。現在の研究が単に概念研究の証拠であることは注目に値します。抗体は、ヒト化される必要があります。効力、毒性、および免疫原性は、測定する必要があるでしょう。
結論として、これらの調査結果は、まず第一に、抗LRP6モノクローナル抗体が糖尿病性網膜症で治療法の可能性を持っているのを示した。また、データは網膜の血管漏出と網膜の炎症の主要な原因としてLRP6活性化を含意します、その結果、同様の病原性のメカニズムで続いたAMDのLRP6と対象とされた療法のかかわり合いを広げます。その上、これらの結果は、抗LRP6-1がLRP6の総レベルを減少させるのを示し、異なったwntリガンドにかかわらず拮抗効果を示した。細胞生存、安定性問題、および効力における副作用のための問題は残っていましたが、それはまず第一に、糖尿病性網膜症における、LRP6ターゲッティング療法の治療法の可能性を示した。さらに、この研究はWntシグナル伝達の活性化および/または、LRP6の過剰発現に関連している病気で、抗体ベースの、そして、LRP6によって対象とされた療法を調査する強い原理を提供します。
CTGF(繊維症にかかわる因子)への抗LRP6-1の効果: 抗LRP6 モノクローナル抗体はICAM-1とCTGFの低酸素で誘発された過剰発現を減衰させる。 ICAM-1は糖尿病で内皮における主要な接着分子であり、そして、白血球うっ滞と内皮損害に原因となる。 CTGFは繊維形成性因子であり、DRで基底膜を肥大化させる一因である。これゆえ、ICAM-1とCTGFの発現への抗LRP6-1の効果は測定された。酸欠はCoCl2を使用してARPE19細胞中引き起こされ、ウェスタンブロット分析(図22)によって示されるように、これはICAM-1とCTGFの重要な過剰発現を引き起こした。濃度依存する方法(図22)で抗LRP6-1はICAM-1とCTGFの過剰発現を減衰させた。
脈絡新生血管形成(wetAMD)への抗LRP6-1の効果: Wnt経路はレーザで誘発されたCNVを病む眼杯の中に活性化される。抗LRP6-1はこのCNVを減衰させる。 CNVはBNマウスのレーザー光凝固術によって引き起こされた。レーザと同じ日に、CNVマウスのグループは抗LRP6-1の硝子体内注射を受けた、そして、別のグループは同じ量の非特異性マウスIgGを受けまた。 レーザの7日目後に、マウスは灌流され、そして、眼杯(網膜、RPE、および脈絡膜)は、β-カテニンに抗体を使用するウェスタンブロット分析のために隔離された。 レーザなしで目と比べて、結果は、β-カテニンがレーザ-CNVの目で上昇することを示した。 免疫グロブリン比較対照(図23)と比べて、抗LRP6-1の注射はβ-カテニンレベルをかなり減少させました。 β-カテニンの蓄積がWntシグナル伝達の活性化で主要なステップであるので、これらの結果は、レーザで誘発されたCNVがWnt経路を活性化することを示し、抗LRP6-1はCNV目でWntシグナル伝達活性化を減衰させることを示した。
抗LRP6-1はレーザで誘発されたCNVを改善します。 レーザの誘発されたCNVへの抗LRP6-1注射の効果は蛍光眼底血管造影によって調べられました、そして、CNVの重篤度は、基底部イメージにおけるGrade4傷害を定量化することによって、評価された。 結果は、非特異性マウス免疫グロブリン(図24)が注入された比較対照の目と比べて、抗LRP6-1がGrade4傷害の数をかなり減少させたのを示し、網膜下の血管漏出とCNVへの有益な効果を示した。
抗LRP6-1はレーザで誘発されたCNVの領域を減少させる。 抗LRP6-1はレーザで誘発されたCNVがある目の硝子体内に、レーザ処理と同じ日に注射された。比較対照としては同じ量の免疫グロブリンが用いられた。注射の2週間後に、CNV傷害は網膜脈絡膜複合体の蛍光眼底血管造影によって可視化された。CNVの領域は、コンピュータ利用画像解析で測定されて、平均された。結果は、免疫グロブリンが注入されたものおよび注射なしのもの比べて、抗LRP6-1の注入されたグループがCNV領域をかなり減少させたのを示した(図25)。これらの結果は、抗LRP6-1がマウスモデルでレーザで誘発されたCNVを阻害するのを示します。
したがって、ここに開示され、請求の範囲に要求された本発明概念によると、Wntシグナル伝達経路を妨げるモノクローナル抗体ならびにその製造方法および使用が開示された。ここに開示され、明らかにされた発明的な概念は上に詳しく説明された特定の図面と言語に関連して説明されますが、多くの代替手段、変更、および変化が当業者に明らかにであることが理解されよう。従って、発明的な概念の精神と広い範囲の中に包含されるそのようなすべての代替手段、変更、および変化は、本発明に含まれるものである。