JP2010195710A - アミロイド線維形成抑制剤及びその利用 - Google Patents

アミロイド線維形成抑制剤及びその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】安全かつ効果的なアミロイドーシスの予防及び/又は治療剤の提供。
【解決手段】アミロイド化TTRに特異的に反応し、かつ通常のTTRに実質的に反応しない抗体を含むアミロイド線維形成抑制剤。アミロイド化TTRを特異的に認識し、かつ通常のTTRを実質的に認識しない抗体を有効成分として含む、アミロイド線維形成抑制剤。抗体が、アミロイド化したTTRの中のS−Y−S−T−T−A−V−V−T−Nにおける少なくとも4個の連続したアミノ酸残基を認識するアミロイド線維形成抑制剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、アミロイド化したTTRに特異的に認識する抗体を有効成分として含むアミロイド線維形成抑制剤、並びに該アミロイド線維形成抑制剤を有効成分として含むアミロイドーシスを予防及び/又は治療するための医薬に関する。
アミロイドーシスとは、β−シート構造を有するタンパク質が重合して不溶性のアミロイド(amyloid)又はアミロイド線維と呼ばれる細線維を形成し、生体内に沈着して組織傷害をもたらす疾患群のことを指す。ドイツの病理学者であるVirchowは、アミロイドーシスの組織標本がヨードで紫色に染まることを発見した。この結果から、Virchowは組織に沈着した物質は多糖体であると考え、これを「デンプン様物質」すなわち「アミロイド」と命名し、アミロイドの沈着により惹起される病態をアミロイドーシスと呼ぶことを提唱した。その後の研究により、アミロイドの主成分はナイロン様に重合して線維を形成するタンパク質であり、アミロイドには血清アミロイドP成分やグリコサミノグリカンなどが含まれていることが分かっている。現在では、アミロイドは「コンゴーレッド染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下で観察すると緑色に強く輝く複屈折を起こす幅8−15nmの枝分かれのない細線維の集積からなる」と定義されている。
アミロイドーシスには、家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloid polyneuropathy;FAP)、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病(狂牛病)、ハンチントン病その他遺伝性の疾患など様々な疾患が含まれる。その中でもFAPは、末梢神経、自律神経、腎、皮膚などの全身諸臓器にアミロイド沈着をきたし、常染色体優性遺伝形式で遺伝浸透する全身性アミロイドーシスであり、我が国、特に九州地方及び中部地方で多くの症例が確認されている。1952年にポルトガル人のFAP症例が初めて報告されて以来、世界各国から同様の症例報告がなされている。FAPの原因となるアミロイド線維は、主として、血清タンパク質であるトランスサイレチン(TTR)が変異したもので構成されている。
正常TTRは、β−シート構造を多く含む立体構造をしており、肝臓、脳脈絡叢、網膜、膵α細胞などで産生されるが、特にその90%以上が肝臓で産生されるといわれている。正常TTRは、四量体を形成してサイロキシン(T4)やレチノール結合タンパク質(RBP)などを介したビタミンAの輸送体としての役割を担っている。正常TTRの変異体は、これまでに100種以上が報告されており、構造安定性が低く、四量体から単量体への構造変化を起こしやすいことが明らかになっている。
わが国で多いFAPは、Val30Met型の変異TTRを原因タンパク質とするI型FAPである。I型FAPの主要性状は、左右対称性に下肢末端から上行する知覚障害を伴う多発性神経炎と自律神経障害(交代性の下痢と便秘、起立性低血圧、排尿障害等)であり、これらはいずれもアミロイドによる神経障害が原因である。その後、心臓、腎臓、消化管へのアミロイド沈着が著しくなり、これらの臓器の機能不全を引き起こす。一般的には、20代後半から30代で発症し10年で歩行不能となり、10数年の経過で心不全、腎不全などで死亡する予後不良の疾患であり、厚生省特定疾患にも指定されている難病の一つである。
I型FAPをもたらし得る変異TTRタンパク質は、正常TTRタンパク質に比べ構造安定性が低く、分子中のβ−シート構造が互いに会合し不溶性のアミロイド線維を形成して組織に沈着するといわれている。I型FAPの治療としては、変異TTRの約90%以上が肝臓で産生されることから肝移植治療が行われている。一方で、アミロイド線維形成メカニズムに基づいたFAPの治療方法として、四量体TTR分子の乖離(解離)の阻害などが試みられている(非特許文献1及び2)。
Yukio Ando, (2005), Med Mol Morphol, 38: pp. 142-154 Yoshiki Sekijima et.al., "Long-term effects of diflunisal on familial amyloid polyneuropathy," 2008, VIIth International symposium on Familial Amyloid Polyneuropathy
I型FAPの治療方法として、肝移植治療法は、病状が進行した患者には無効で、ドナーも不足しているなど多くの問題がある。一方で、アミロイド線維形成メカニズムに基づいたFAPの治療方法は、変異TTRタンパク質によるアミロイド線維形成を抑制することにより、I型FAPを予防又は治療、或いはその両方をすることができると考えられている。この治療方法は、肝移植をしないことから、肝移植に関連する上記問題を回避することが期待できる。しかし、このような方法において、臨床的な治療効果が認められているI型FAPの治療方法はない。特に、TTRタンパク質がアミロイド化したアミロイド化TTRに特異的に反応し、かつ通常のTTRタンパク質には実質的に反応しない抗体を用いれば、安全かつ効果的にアミロイドーシスの予防及び/又は治療に応用できる可能性が高いが、このような抗体はこれまでに知られていない。
したがって、本発明の目的は、安全かつ効果的なアミロイドーシスの予防及び/又は治療に応用し得る、アミロイド化TTRに特異的に反応し、かつ通常のTTRに実質的に反応しない抗体を含むアミロイド線維形成抑制剤、並びに該アミロイド線維抑制剤を有効成分として含むアミロイドーシスの予防及び/又は治療のための医薬、特に家族性アミロイドーシスポリニューロパチー(FAP)の予防及び/又は治療のための医薬を提供することにあり、さらにはアミロイドーシスに起因する末梢神経障害と自律神経障害の発症を予防するための医薬、及び上記末梢神経障害と自律神経障害の進行防止などを可能にする治療のための医薬を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討したところ、TTRの第78位のチロシンがフェニルアラニンに置換された人工タンパク質(ATTR Y78F)を用いて行った能動免疫を利用したワクチン治療は、副作用を誘起する可能性があり、FAP患者への実用性は乏しいことを見出した。これは、ATTR Y78Fに対する抗体が組織沈着アミロイドに対して抑制効果を示すが、通常の血清TTRとも反応するという問題に基づく。そこで、本発明者らは、上記問題を回避すべく、アミロイド化TTRが形成される過程で、新たに分子表面に露出するエピトープの部分に相当するTTRのフラグメントペプチドに対する抗体について研究を進めた。その結果、本願発明者らは、TTRがアミロイド化したアミロイド化TTRを特異的に認識して結合するが、正常なTTRとは結合しない抗体を作製することに成功した。さらに、本願発明者らは、この抗体が認識する部位は、TTRのS−Y−S−T−T−A−V−V−T−N(TTRの115〜124位のアミノ酸)に関係があることを見出した。本発明は、上記知見に基づいて完成された発明である。
したがって、本発明によれば、アミロイド化したトランスサイレチン(TTR)を特異的に認識し、かつ通常のTTRを実質的に認識しない抗体を有効成分として含む、アミロイド線維形成抑制剤が提供される。
本発明のアミロイド線維形成抑制剤の好ましい態様は、抗体が、アミロイド化したTTRの分子表面に露出し、かつ通常のTTRの分子表面には露出しないアミノ酸残基を認識する。
本発明のアミロイド線維形成抑制剤の好ましい態様は、抗体が、アミロイド化したTTRの中のS−Y−S−T−T−A−V−V−T−Nにおける少なくとも4個の連続したアミノ酸残基を認識する。
本発明のアミロイド線維形成抑制剤の好ましい態様は、抗体が、アミロイド化したTTRの中のS−Y−S−T−T−A−V−V−T−Nを認識する。
本発明のアミロイド線維形成抑制剤の好ましい態様は、アミロイド化したTTRが、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列における第30位のバリンがメチオニンに置換されたアミノ酸配列からなるTTRに由来する。
本発明の別の側面によれば、本発明のアミロイド線維形成抑制剤を有効成分として含む、アミロイドーシスを予防及び/又は治療するための医薬が提供される。
本発明の医薬の好ましい態様は、アミロイドーシスが、I型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)である。
本発明のアミロイド線維形成抑制剤は、血中で四量体として存在する通常のTTRには露出しておらず、TTRがアミロイド化したアミロイド化TTRにのみ出現するエピトープを特異的に認識する抗体を有効成分として含む。したがって、本発明のアミロイド線維形成抑制剤は、ミスフォールディングを起こしていない血中の正常TTRとは反応せず、アミロイド化TTRに特異的に結合する抗体を含有することから、このアミロイド線維形成抑制剤をFAP罹患者に投与することにより副作用のないFAP抗体治療が可能となる。アミロイド前駆タンパク質であるTTRがアミロイド沈着過程で引き起こすミスフォールディング、及びそれによって露出する新たなエピトープに対する抗体を作成し治療を行う方法は、原因タンパク質のミスフォールディングメカニズムを利用したものであり、アルツハイマー病で提唱されている抗体治療、ツール及び戦略とは根本的に異なり、アミロイド沈着機構の最終ステップを制御するという、これまでにない独創的で実用性のある治療戦略をもたらす。
さらに本発明の医薬によれば、副作用を低減しつつ、生体内の免疫系を利用し、安全かつ効果的にアミロイドーシスを予防及び/又は治療することができる。そこで、本発明の医薬は、特に対症療法や肝臓移植しか治療方法のない家族性アミロイドーシスポリニューロパチー(FAP)に対して有効性の高い医薬として期待できる。
図1は、抗アミロイド化TTR抗体を用いた、種々のFAP患者由来のTTRに対するELISA結果を示す。 図2は、変異TTR(V30M)を安定に高発現するトランスジェニックラットに、抗アミロイド化TTR抗体を投与して1月後のTTR抗体を用いた免疫染色結果を示す。
本発明について以下に詳細に説明する。
本発明は、アミロイド化したトランスサイレチン(TTR)を特異的に認識し、かつ通常のTTRを実質的に認識しない抗体(以下、抗アミロイド化TTR抗体ともいう)を有効成分として含む、アミロイド線維形成抑制剤である。
(1)抗アミロイド化TTR抗体
トランスサイレチン(transthyretin;TTR)とは、血漿タンパク質の一種である。通常127個のアミノ酸残基から成り、サブユニットが血中で四量体を形成する。レチノール結合タンパク質と結合してレチノール(ビタミンA)を輸送すると同時にチロキシンとも結合する。電気泳動でアルブミンの前を移動することからプレアルブミン(prealbumin)とよばれていた。1アミノ酸の点突然変異を含む種々の異型トランスサイレチンは常染色体性優性遺伝性難病、家族性アミロイドポリニユーロパチーの病因となる。
通常のTTR(「正常TTR」又は単に「TTR」ともいう)は、例えば、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるTTRとして知られている。一方、変異TTR(異型TTRともいう)は、例えば、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸の欠失、置換、逆位、付加及び/又は挿入などの変異を有するものである。ここで、「アミノ酸の欠失」とは配列中のアミノ酸残基の欠落もしくは消失していること、「アミノ酸の置換」は配列中のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられていること、「アミノ酸の逆位」とは隣り合う2以上のアミノ酸残基の位置が逆になっていること、「アミノ酸の付加」とはアミノ酸残基が付け加えられていること、「アミノ酸の挿入」とは配列中のアミノ酸残基の間に別のアミノ酸残基が挿し入れられていることをそれぞれ意味する。
変異TTRの具体例としては、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、例えば、30位のバリンがメチオニンに置換されたもの(V30Mともいう)、114位のチロシンがシステインに置換されたもの(Y114Cともいう)などがこれまでに報告されている。これらの変異TTRの中でも、V30M変異TTRはI型FAPの病因タンパク質として知られている。
TTRがアミロイド化したアミロイド線維は、次の3段階を経て形成するといわれている:まず、四量体のタンパク質として血清中に存在するTTRは、なんらかの作用によって単量体に分解される。次いでこの単量体の大部分は分解され、一部は生体代謝経路を経て尿として体外に排出されるが、単量体の一部はミスフォールディングを起こし、TTRのβ−シート構造が線状に重合して不溶化線維状のアミロイド線維が生成される。変異TTRは、四量体のタンパク質が単量体へと乖離されやすい性質を有していることから、正常TTRに比べてアミロイド線維を生成させ易い傾向にある。
本発明者らは、四量体を形成する正常TTRと、単量体となりβ−シート構造を形成してアミロイド化したアミロイド化TTRとの間における、分子表面に露出している部位の違いに着目し、正常TTRにはなく、アミロイド化TTRのみに露出している部位を標的にした抗体を作製することに成功した。本発明のアミロイド線維形成抑制剤に供される抗体は、このように作製された抗体の一種であり、アミロイド化TTRと特異的に結合し、かつアミロイド化していない正常TTRに実質的に結合しない抗体である。抗アミロイド化TTR抗体の具体例は、TTRがアミロイド化したアミロイド化TTRへの反応性があり、TTRへの反応性がアミロイド化TTRへの反応性に対して好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、なおさらに好ましくは1%以下の抗体である。抗アミロイド化TTR抗体は、アミロイド化TTRの分子表面に露出し、かつTTRの分子表面に露出しないアミノ酸残基を認識することが好ましく、アミロイド化TTRの中のS−Y−S−T−T−A−V−V−T−Nにおける少なくとも4個の連続したアミノ酸残基を認識することがより好ましく、これらのすべてのアミノ酸残基を認識することがより好ましい。
抗アミロイド化TTR抗体は、アミロイド化TTR又はその一部に対して特異的親和性を有するものであり、特にアミロイド化TTRの中のS−Y−S−T−T−A−V−V−T−Nの一部又は全部を認識する抗体であれば特に制限されない。抗アミロイド化TTR抗体は、アミロイド化TTR又はその部分ペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体の製造法に従って製造することができる。
抗アミロイド化TTR抗体のポリクローナル抗体は、例えば、以下の通りに作製することができるが、これに限定されるものではない。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
アミロイド化TTRまたはその部分ペプチドに対するポリクローナル抗体は、自体公知の方法に従って製造することができる。例えば、アミロイド化TTR又はその部分ペプチド(例えば、正常TTRの50〜127位のアミノ酸残基)を抗原として、哺乳動物に対して、投与により抗体産生が可能な部位に、それ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与する。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる哺乳動物としては、例えば、ウサギ、サル、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ等が挙げられるが、ウサギ、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
例えば、抗原で免疫された哺乳動物、例えばウサギから抗体価の認められた個体を選択し、最終免疫の2〜5日後に該ウサギから抗アミロイド化TTR抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより製造することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、アルカリホスファターゼなどの酵素で標識化した抗免疫グロブリン、抗血清及び抗原を反応させた後、反応により生成した免疫複合体の標識活性を測定することにより行うことができる。融合操作は、既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔Nature、256、495(1975)〕に従い実施することができる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どのようなものをどのような比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプリングさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤、例えばグルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル碁を含有する活性エステル試薬等が用いられる。縮合生成物は、哺乳動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行われる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例:DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って分離精製することができる。
アミロイド化TTRの部分ペプチドを抗原とする場合は、アミロイド化TTRの中のS−Y−S−T−T−A−V−V−T−Nの一部又は全部を含むポリペプチドもしくはオリゴペプチドが好ましい。
抗アミロイド化TTR抗体のグロブリンタイプは特に限定されず、例えばIgG、IgM、IgA、IgE、IgD等が挙げられる。また、各種抗体の断片も本発明の範囲内である。抗体の断片としては、例えば、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメントなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
抗アミロイド化TTR抗体は、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列における第30位のバリンがメチオニンに置換されたアミノ酸配列からなるTTR(V30M変異TTRともいう)に由来するアミロイド化TTRを特異的に認識する抗体であることが好ましい。上記した通り、V30M変異TTRは、I型FAPの原因タンパク質でもある。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定において、標識として酵素を使用する場合には、例えば、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マレートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、β-グルコシダーゼ、ペルオキシダーゼ等を使用することができる。
標識として酵素を使用する場合、被験試料と標識抗体とをインキュベートした後、遊離した標識抗体を洗浄して除去してから、上記の標識酵素の基質を作用させて発色等で反応を測定することによって標識抗体を検出することができる。例えば、ペルオキシダーゼで標識される場合には、基質として過酸化水素、発色試薬としてジアミノベンジジンまたはO−フェニレンジアミンと組み合わさって褐色または黄色を生じる。グルコースオキシダーゼで標識される場合には、基質として、たとえば2,2’ −アシド−ジ−(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)等を用いる。その他の発色試薬としては、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなども制限なく用いることができる。
標識として蛍光色素を使用する場合には、例えば、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、TRITC(テトラメチルローダミンBイソチオシアネート)、フルオレスカミン等の蛍光色素で抗アミロイド化TTR抗体又はその断片を標識することができる。標識として呈色標識物質を使用する場合には、例えば、コロイド金属および着色ラテックスなどを標識として使用できる。上記以外にも、標識としては、アフィニティー標識(例えば、ビオチン-(ストレプト)アビジン系等)、又は、同位体標識(例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕等)等を使用することもできる。
抗アミロイド化TTR抗体と反応するアミロイド化TTRは、例えば、抗体、抗原もしくは抗体-抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出することにより定量できる。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法、サンドイッチ法や、これらを利用した、酵素免疫測定法、ラジオイムノアッセイ、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。酵素免疫測定法においては、抗アミロイド化TTR抗体を不溶性担体に結合させて抗体結合不溶性担体を調製し、この抗体結合不溶性担体を用いた、いわゆるサンドイッチ酵素免疫測定法(以下、サンドイッチELISAともいう)は、感度、特異性の点で好ましい。
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常のタンパク質あるいは酵素等を不溶化・固定化するために用いられる化学結合を用いてもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
例えば、サンドイッチELISAにおいては不溶化した抗原、例えば、S−Y−S−T−T−A−V−V−T−Nを有するポリペプチドに抗アミロイド化TTR抗体を含む試料液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した抗免疫グロブリン抗体を反応させ(2次反応)た後、不溶化担体上の標識剤の量もしくは活性を測定することにより、試料液中のアミロイド化TTRを定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序で行っても、また、同時に行ってもよいし、時間をずらして行ってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相化抗体あるいは標識化抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
その他の免疫学的測定方法としては、例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「統ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、同書Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、同書Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、同書Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、同書Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
(2)アミロイド線維形成抑制剤
本発明のアミロイド線維形成抑制剤は、抗アミロイド化TTR抗体を有効成分として含むことにより、変異TTRからのアミロイド線維の生成反応を抑制することができる。
本発明のアミロイド線維形成抑制剤は、抗アミロイド化TTR抗体又はその一部を含む限り、それらをどのような形態で含んでもよい。本発明のアミロイド線維形成抑制剤に含まれる、抗アミロイド化TTR抗体の割合は、変異TTRのアミロイド線維形成を抑制できる量であれば特に制限されるものではないが、例えば、80%〜100%が好ましい。
本発明のアミロイド線維形成抑制剤は、抗アミロイド化TTR抗体の有効量を含めば、固体又は液体のいずれの形態でも利用することができるが、これに薬学上許容される担体または添加剤を配合して、固体又は液体状の医薬組成物として調製することもできる。
(3)アミロイドーシスの予防及び/又は治療のための医薬
本発明には、本発明のアミロイド線維形成抑制剤を有効成分として含む、アミロイドーシスの予防及び/又は治療のための医薬が包含される。
本発明の医薬の適用対象となるアミロイドーシスとしては、例えば、トランスサイレチンを起因とする疾患、より具体的には、家族性アミロイドーシスポリニューロパチー(FAP)、老人性アミロイドーシスなどを挙げることができる。これらのうちFAP、特に抗アミロイド化TTR抗体がV30R変異TTRに対して特異的に結合することから、I型FAPは本発明の医薬の特に好適な対象である。
例えば、FAPを発病した患者のうち症状が軽度な患者は本発明の医薬を投与することにより症状の進行や悪化を防ぐことが可能であり、症状が重篤な患者に対しても治療効果を期待できる場合がある。また、変異トランスサイレチンを有する個体は加齢とともにFAPを発症する可能性の高い潜在患者であるが、本発明の医薬を投与することによりFAPの発症を予防することができる。
本発明の医薬としては、本発明のアミロイド線維形成抑制剤をそのまま用いてもよいが、通常は有効成分である本発明のアミロイド線維形成抑制剤と1又は2種以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態を調製して用いることが望ましい。
FAPの予防及び治療の際には、本発明の医薬だけでなく、トランスサイレチン四量体を安定化する非ステロイド性抗炎症薬、例えば、ジフルニサールなどと併用することも望ましい。
本発明の医薬は、非経口剤であることが好ましく、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、吸入剤等を挙げることができる。上記の医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物としては、例えば、乳糖やオリゴ糖などの賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、抗酸化剤、矯味剤、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、保存剤、pH調節剤、安定化剤、等張化剤、噴射剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、キャリアー、薬学的アジュバント及び粘着剤等を挙げることができるが、これらは医薬組成物の形態に応じて当業者が適宜選択することができ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の医薬のより好ましい形態として、注射剤を挙げることができる。注射剤としては、通常、非水溶媒(または水溶性有機溶媒)を実質的に含まず、媒体が実質的に水である溶媒で溶解または希釈可能である。注射剤は当該分野において周知の方法により調製することができる。例えば、注射剤は、生理食塩水、PBSなどの緩衝液、滅菌水等の溶剤に溶解した後、フィルター等で濾過滅菌し、次いで無菌容器(例えば、アンプル等)に充填することにより調製することができる。この注射剤には、必要に応じて、慣用の薬学的キャリアを含めてもよい。また、非侵襲的なカテーテルを用いる投与方法を用いてもよい。本発明で用いることができるキャリアーとしては、中性緩衝化生理食塩水、又は血清アルブミンを含む生理食塩水等が挙げられる。
さらに、本発明の医薬の好ましい形態として、凍結乾燥製剤(凍結乾燥した注射剤)もまた挙げることができる。このような凍結乾燥製剤であっても、注射用水(注射用蒸留水)、電解質液(生理食塩水など)などを含む輸液、栄養輸液などから選択された少なくとも1つの液体または溶媒により溶解可能であり容易に注射液を調製でき、その容器もガラス容器およびプラスチック容器が使用できる。注射剤内容物の100重量部に対して抗アミロイド化TTR抗体を0.01重量部以上、好ましくは0.1〜10重量部含有することができる。
本発明の医薬の投与量及び投与回数などは特に限定されず、患者の年齢、体重、及び性別などの条件、並びに疾患の種類や重篤度、予防又は治療の目的などに応じて適宜選択可能である。通常は、非経口投与による場合には有効成分量として成人一日あたり0.1μg〜10gが好ましく、10μg〜1000mgがより好ましく、100μg〜500mgがより好ましいが、このような投与量を一日数回に分けて投与してもよい。本発明の医薬の投与頻度は、例えば、一日一回〜数ヶ月に1回であればよいが、実施例2に記載の結果から、一ヶ月に1回の投与が好ましい。
以下の実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.実験材料及び方法
(1)組織標本:
ホルマリン固定及びパラフィン包埋を施したスウェーデン人TTR V30M患者11例、日本人TTR V30M患者2例、スウェーデン人SSA患者14例の心臓組織と、正常なヒト膵臓を利用した。それに加え、日本人TTR Y114C患者1例(患者1)から摘出された心臓、腎臓、膵臓、末梢神経、海馬及び肝臓を含む数種のホルマリン固定パラフィン包埋組織標本を利用した。スウェーデン人及び日本人のTTR V30M患者の凍結組織は-20°Cで保存した。TTRは通常グルカゴンを産生するランゲルハンス島のα細胞で発現し、正常時には恐らく折り畳まれた四量体として分泌顆粒中に貯蔵されるため(B. Jacobsson et al., IRCS Med. Sci. 7 (1979) 590及びC.N. Liddle et al., J. Pathol. 146 (1985) 107-113を参照)、ヒトの正常膵臓組織についても検討した。さらに、日本人TTR V30M患者1例及び日本人TTR Y114C患者2例(患者1及び2)の硝子体液の検体も利用した。また、パラフィン包埋したAA(アポ)-、Aβ(アミロイドβペプチド)-、AL(免疫グロブリンL鎖)-、AMed(ラクトアドヘリン)-、ATTR(トランスサイレチン)-及びAIAPP(アミリン)-アミロイドを含む組織アレイブロックも利用した(S. Peng, et al.. J. Protein Folding Disord. 12 (2005) 96-102を参照)。
(2)抗体及び免疫組織化学検査:
ウサギにおいて、10〜12のアミノ酸残基長の合成ペプチドに対する抗体を産生させた。成熟TTR分子の50〜127位の配列に相当するin vitroでの発現断片に対して惹起させた抗血清も用い、その特異性についてはすでに報告されている(J. Bergstrom et al., Lab. Invest. 84 (2004) 981-988を参照)。本試験に用いた様々な抗血清を表1に示す。
Figure 2010195710
これまでに、TTR115-124に対するポリクローナルウサギ抗血清が沈着アミロイド中のTTRまたは沈着アミロイドからのTTRとだけ反応することが示されているので(A. Gustavsson et al., Int. J. Exp. Clin. Invest. 4 (1997) 1-12を参照)、再現性を検討するため、同一配列に対する新規のウサギ抗血清(抗TTR115-124-a)を作製した。酵素免疫測定法(ELISA、下記参照)では、いずれの抗体もカップリングしていないペプチドと強く反応したが、交差反応は起きなかった。免疫組織化学検査はアビジン‐ビオチン法(G.T. Westermark et al, Meth. Enzymol. 309 (1999) 3-25を参照)で実施した。1:2000〜1:10000で希釈した一次抗体を切片に添加し、室温で一晩インキュベートした。二次抗体には1:800で希釈したビオチン標識ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン(Dako, Glostrup, Denmark)を用いた。1:500で希釈したペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Dako, Glostrup, Denmark)と反応させた後、3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)で処理して免疫反応の可視化を行った。陰性対照切片では、一次抗体をウサギ免疫前血清に変更し、適切にカップリングしていないペプチドで吸収されることで、反応を消失させた。アミロイド線維中のタンパク質のネイティブ構造を保持するため、抗原の回復は行わなかった。
(3)酵素免疫測定法(ELISA)
抗TTR115-124-a抗血清がTTR115-124配列のどの部分を認識したかをマッピングする目的で、2種類のペプチド鎖(ペプチド鎖1及び2)を合成した。それらの配列を表2に示す。
Figure 2010195710
ペプチド鎖1はTTR115-121からTTR115-127までの配列(合成元:SynPep Corporation, Dublin, CA)に相当した。また、ペプチド鎖2はTTR122-127からTTR115-127までの配列に相当する8個のペプチド(合成元:Biotechnology Center of Oslo, University of Oslo, Oslo, Norway)から構成した。いずれのペプチドも遊離したC-末端カルボキシ基を有し、質量分析法からは予想通りの分子量が得られた。
合成ペプチドは0.02%アジ化ナトリウムを含む50 mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH 9.6)に濃度20 μg/mLで溶解させた。Microlon(R) 600マイクロプレート(Greiner Bio-One, Frickenhausen, Germany)のウェルを100 μLのペプチド溶液でコートし、室温で一晩インキュベートした。1:100で希釈した抗TTR115-124-aを一次抗体として用い、免疫前抗TTR115-124-a抗血清を陰性対照として用いた。1:1500で希釈したアルカリホスファターゼ標識ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン抗血清(Dako, Glostrup, Denmark)を二次抗体として用い、p-ニトロフェニル-リン酸塩(Sigma, St. Louis, MO)で反応を可視化し、405 nmの吸光度を測定した。
既報の通り(Y. Ando et al., Transplantation 77 (2004) 345-349.を参照)、日本人TTR V30M患者1例及び日本人TTR Y114C患者2例の硝子体混濁からアミロイド線維を抽出し、精製した。精製後、線維溶液に対して強い超音波処理を施した。BCA(ビシンコニン酸)タンパク質検査キット(Pierce, Rockford, IL)を用いてタンパク質濃度を測定し、線維溶液を炭酸ナトリウム緩衝液で最終濃度が20 μg/mLになるまで希釈した。一部の検査では、線維溶液に2-メルカプトエタノールを、必要に応じて95°Cで5分間の追加加熱を行いながら、最終濃度が0.1 Mになるまで添加した。1ウェル当たり100 μLの線維溶液でMicrolon(登録商標)600マイクロプレート(Greiner Bio-One, Frickenhausen, Germany)をコートし、マイクロプレートを室温で一晩インキュベートした。一次抗体には、抗TTR115-124-a(1/100希釈)、抗TTR50-127(1/500希釈)、免疫前抗TTR50-127(1/500希釈)及び市販のTTR抗血清(1/100希釈、Dako, Glostrup, Denmark)を用いた。二次抗体には、1/2000希釈のホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ブタ抗ウサギ抗血清(Dako, Glostrup, Denmark)を用いた。TMPマイクロウェルペルオキシダーゼ基質システム(KPL, Gaithersburg, MD)を用いて免疫反応を検出し、450 nmの吸光度を測定した。
(4)ウェスタンブロット分析
既報の通り(J. Bergstrom et al., J. Pathol. 206 (2005) 224-232を参照)、ウェスタンブロット分析には、スウェーデン人TTR V30M患者1例及びスウェーデン人SSA患者1例からアミロイド線維を抽出した。タンパク質材料を3%SDS試料緩衝液に1 mg/mL濃度で再溶解させ、0.02 Mジチオスレイトールで還元、0.06 Mヨード酢酸でアルキル化した。アミロイド線維は日本人TTR V30M患者1例からも抽出し、その試料も同様に調製した。TTR Y114C患者2例からのアミロイド材料が足りず、SDS-PAGE及びウェスタンブロット分析の実施はかなわなかった。正常なTTRについては、血漿から精製した場合と、組換えでタンパク質を発現させた場合(Dr. J. W. Kellyからの御供与)のいずれのTTRも利用可能であった。両TTR検体は上記の試料緩衝液に1 mg/mL濃度で溶解させた。それらはトリス‐トリシン系を用いたドデシル硫酸ナトリウム‐ポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)で分析した(H. Schagger et al, Anal. Biochem. 166 (1987) 368-379を参照)。ウェスタンブロット分析には、1:500に希釈した抗TTR115-124-a抗血清を一次抗体として用いた。二次抗体には1:10000に希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ブタ抗ウサギ抗体(Dako, Glostrup, Denmark)を用い、高感度化学発光システム(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)で免疫ブロットを展開した。
(5)線維形成試験
合成ペプチドを10%酢酸(pH 2.1)又は20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0)のいずれかに10 mg/mL濃度で速やかに溶解させ、室温でインキュベートした。ペプチド溶液の線維形成能を光学顕微鏡により評価した。0.8 μLに分取した溶液をスライドガラス上で乾燥させ、コンゴレッドで染色し、偏光顕微鏡下にて緑色の複屈折について観察した。
2.結果
FAPの抗体治療の開発を行うため、アミロイド化TTRが形成される過程で、新たに分子表面に露出するエピトープに相当するTTRのフラグメントペプチドに対する抗体のスクリーニングを行った。
FAP患者由来のTTRに対するELISAを行った結果、本抗体はTTR V30M変異をもつ患者由来のTTRのみと反応し、他の変異(TTR Y114C)をもつ患者由来のTTRに対しては反応性を示さなかった(図1)。なお、Negative Controlは非免疫血清を表す。
抗TTR 115−124抗体のアミロイド化TTR沈着に対する影響を検討するため、TTR V30Mを安定に高発現するトランスジェニックラットに本抗体を投与し、TTR抗体を用いた免疫染色を行い、非投与群とのアミロイド化TTR沈着の程度の比較を行った(図2)。
生後18ヶ月目のTTR V30Mトランスジェニックラットに抗TTR 115−124抗体を投与し、約一ヵ月後、TTR抗体を用いた免疫染色を行った結果、本抗体を投与したトランスジェニックマウスの消化管筋層では、非投与群に対し顕著なアミロイド化TTR沈着量の減少が確認された。
アミロイド線維の沈着によって臓器障害が引き起こされる疾患には、FAPをはじめ、アルツハイマー病、クロイツフェルト・ヤコブ病(狂牛病)、ハンチントン病、及びその他の遺伝性の疾患が含まれる。例えば、アルツハイマー病は、65歳以上の高齢者の約10%を占め、今後高齢化がさらに進む日本において社会的な問題となっている。アミロイド線維の沈着は原因タンパク質のミスフォールディングに起因することから、アミロイド化した原因タンパク質のみに新たに出現するエピトープを認識する抗体は、これらの多様なアミロイドーシス疾患への治療にも高度な実現性を持って応用可能である。

Claims (7)

  1. アミロイド化したトランスサイレチン(TTR)を特異的に認識し、かつ通常のTTRを実質的に認識しない抗体を有効成分として含む、アミロイド線維形成抑制剤。
  2. 抗体が、アミロイド化したTTRの分子表面に露出し、かつ通常のTTRの分子表面には露出しないアミノ酸残基を認識する、請求項1に記載のアミロイド線維形成抑制剤。
  3. 抗体が、アミロイド化したTTRの中のS−Y−S−T−T−A−V−V−T−Nにおける少なくとも4個の連続したアミノ酸残基を認識する、請求項1又は2に記載のアミロイド線維形成抑制剤。
  4. 抗体が、アミロイド化したTTRの中のS−Y−S−T−T−A−V−V−T−Nを認識する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアミロイド線維形成抑制剤。
  5. アミロイド化したTTRが、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列における第30位のバリンがメチオニンに置換されたアミノ酸配列からなるTTRに由来する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアミロイド線維形成抑制剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のアミロイド線維形成抑制剤を有効成分として含む、アミロイドーシスを予防及び/又は治療するための医薬。
  7. アミロイドーシスが、I型家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)である、請求項6に記載の医薬。
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