JP2016214725A - 動態解析システム - Google Patents

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Abstract

【課題】動態画像の解析結果に基づく診断精度を向上させる。【解決手段】動態解析システム100によれば、コンソール2の制御部21は、放射線発生装置1とFPDカセッテ4の協働により生成された被写体の動態を示す複数のフレーム画像から人工物による画像信号成分を減弱処理し、減弱処理後の複数のフレーム画像に基づいて、被写体の動態を解析する。【選択図】図5

Description

本発明は、動態解析システムに関する。
近年、動画対応のFPD(flat panel detector)の登場に伴い、人体の診断すべき部位に連続的なX線撮影を行い、その部位の動態を撮影して、当該部位の機能の解析を行う手法が提案され始めている(例えば、特許文献1参照)。
また、動態撮影により得られた一連のフレーム画像に基づき、当該動態に係る機能、例えば、換気や血流機能に係る特徴量を生成して、診断支援情報とすることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2004−312434号公報 国際公開第2009/090894号
ところで、手術中、手術後では、患者に中心静脈カテーテル、ドレナージチューブ等の医療用チューブがつながれていることが多く(図8参照)、これらの患者を被写体として胸部のX線動態撮影を行い、得られた動態画像に対して動態解析を施した場合、患者の体動、拍動、呼吸動作に伴う医療用チューブ等の人工物の動きが解析結果のアーチファクトとなっていた。特に、手術中、手術後の診断では、医療用チューブ等の人工物が付けられていない状態での手術前の画像の解析結果との比較や、経過観察として過去画像の解析結果との比較を行うことが多く、医療用チューブ等の人工物の写り込みがあった場合、解析結果の差異が患者の状態の変化を表しているのか、それとも、医療用チューブ等の人工物の有無による差異を表しているのかを判断しづらいという問題があった。また、ペースメーカーや植込み型除細動器、骨折した鎖骨、肋骨、椎骨を固定するための金属製プレート、スクリュー、ボルト等の人工物も、同様に、患者の体動、拍動、呼吸動作に伴う動きによって解析結果のアーチファクトを生じる問題があった。
本発明の課題は、動態画像の解析結果に基づく診断精度を向上させることである。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明の動態解析システムは、
被写体の動態を撮影し、前記被写体の動態を示す複数のフレーム画像を生成する撮影手段と、
前記撮影手段により生成された複数のフレーム画像から人工物による画像信号成分を減弱する減弱処理手段と、
前記減弱処理手段による減弱処理後の複数のフレーム画像に基づいて、前記被写体の動態を解析する解析手段と、
を備える。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記撮影手段により生成された複数のフレーム画像から人工物の領域を認識する認識手段を備え、
前記減弱処理手段は、前記複数のフレーム画像の前記認識手段により認識された領域の画像信号成分を減弱することにより、人工物による画像信号成分を減弱する。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記認識手段は、前記複数のフレーム画像から人工物の領域を認識する前に、前記複数のフレーム画像から骨部領域を認識し、前記複数のフレーム画像の前記骨部領域として認識された領域以外の領域から人工物の領域を認識する。
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記認識手段は、前記複数のフレーム画像から人工物の領域を認識した後、前記複数のフレーム画像から骨部領域を認識し、前記人工物の領域と認識された領域のうち前記骨部領域として認識された領域以外の領域を最終的に人工物の領域として認識する。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明において、
前記減弱処理手段による減弱処理後の複数のフレーム画像に基づく動態画像を表示する表示手段を備える。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、
前記表示手段は、前記減弱処理手段による減弱処理後の複数のフレーム画像に基づく動態画像と、前記減弱処理手段による減弱処理を適用する前の複数のフレーム画像に基づく動態画像とを切り替え可能に、又は並べて表示する。
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、
前記解析手段は、更に、前記減弱処理手段による減弱処理を適用する前の複数のフレーム画像に基づいて、前記被写体の動態を解析し、
前記表示手段は、前記減弱処理手段による減弱処理後の複数のフレーム画像に基づいて前記解析手段により解析した解析結果と、前記減弱処理手段による減弱処理を適用する前の複数のフレーム画像に基づいて前記解析手段により解析した解析結果とを切り替え可能に、又は並べて表示する。
本発明によれば、動態画像の解析結果に基づく診断精度を向上させることができる。
本実施形態に係る動態解析システムの全体構成を示す図である。 図1のコンソールの機能的構成を示すブロック図である。 図2の制御部により実行される撮影制御処理を示すフローチャートである。 図2の制御部により実行される動態解析処理を示すフローチャートである。 図4のステップS11において実行される人工物減弱処理を示すフローチャートである。 人工物領域の断面方向の濃度プロファイル及びその修正を模式的に示す図である。 (a)は、放射線発生装置により、被写体のアイソセンターに対応する位置及び被写体の再構成処理によって複数の断層面の画像が生成される範囲にレーザービームを照射する様子を上面から見た図である。(b)は、(a)を放射線発生装置の反対側の側面から見たときの図である。(c)は、(a)を放射線発生装置側から見た被写体の側面を示す図である。 人工物が取り付けられた胸部の画像の一例を示す図である。
以下、図面を参照して本発明に係る好適な実施形態について説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
<第1の実施形態>
(動態解析システム100の構成)
まず、本発明に係る第1の実施形態の構成について説明する。
図1に、本実施形態における動態解析システム100の全体構成例を示す。
動態解析システム100は、例えば、手術中、手術後等の移動が困難な患者の撮影のための回診用のシステムであり、放射線発生装置1と、コンソール2と、アクセスポイント3と、FPD(Flat Panel Detector)カセッテ4と、を備えて構成されている。放射線発生装置1は、車輪を有し、コンソール2やアクセスポイント3を設置した移動可能な回診車として構成されている。動態解析システム100において、コンソール2は、アクセスポイント3を介して放射線発生装置1及びFPDカセッテ4と通信接続可能である。
動態解析システム100は、図1に示すように、手術室、集中治療室や病室Rc等に持ち込まれ、FPDカセッテ4を、例えばベッドBに寝ている被写体HとベッドBとの間もしくは、図示しないベッドBの被写体Hとは反対面に設けられた挿入口に差し込む等した状態で、放射線発生装置1のポータブルの放射線源11から放射線を照射して、被写体Hの動態撮影を行うシステムである。
動態撮影とは、被写体Hに対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、もしくは、低線量率にして途切れなく継続して照射する(連続照射)ことで、複数の画像を取得することをいう。動態撮影では、例えば、呼吸運動に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動等の、周期性(サイクル)を持つ被写体Hの動態を撮影する。この連続撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。
本実施形態においては、動態解析システム100は、被写体Hの胸部を撮影し、その動態を撮影するものとして説明するが、撮影部位はこれに限定されるものではない。
以下、動態解析システム100を構成する各装置について説明する。
放射線発生装置1は、パルス照射、連続照射の少なくともいずれか一方が可能な放射線発生装置である。放射線発生装置1は、放射線を照射する放射線源11と、放射線照射制御部12と、曝射スイッチ13等を備えて構成されている。
放射線源11は、放射線照射制御部12の制御に従って、被写体Hに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御部12は、コンソール2から送信された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、管電流、管電圧、フレームレート(1単位時間(1秒)当たりに撮影するフレーム画像数)、1撮影当たりの総撮影時間もしくは総撮影フレーム画像数、付加フィルター種、パルス照射の場合は1フレーム画像当たりの放射線照射時間等である。
曝射スイッチ13は、押下されることにより、放射線照射指示信号をコンソール2に入力する。
コンソール2は、放射線照射条件を放射線発生装置1に出力し、画像読取条件をFPDカセッテ4に出力して、放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御したり、FPDカセッテ4から送信された画像データをプレビュー表示したり、画像データを解析して肺の換気機能や血流機能に関する特徴量を算出したりする。
図2に、コンソール2の機能構成例を示す。図2に示すように、コンソール2は、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25、コネクター26等を備えて構成され、各部はバス27により接続されている。
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理、動態解析処理を始めとする各種処理を実行し、コンソール2各部の動作や、放射線発生装置1及びFPDカセッテ4の動作を集中制御する。制御部21は、減弱処理手段、解析手段、認識手段として機能する。
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、図3に示す撮影制御処理を実行するためのプログラムや、図4に示す動態解析処理を実行するためのプログラムを記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
また、記憶部22は、動態撮影時の放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。放射線照射条件及び画像読取条件は、操作部23の操作によりユーザーが設定可能である。
また、記憶部22は、FPDカセッテ4から送信された画像データに、被写体Hの患者情報や、画像データに基づいて算出された解析結果等を対応付けて記憶する。
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニタにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
通信部25は、無線LANアダプタ等を備え、アクセスポイント3を介して無線LAN等の通信ネットワークに接続された放射線発生装置1やFPDカセッテ4を始めとする外部機器との間のデータ送受信を制御する。
コネクター26は、図示しないケーブルを介してFPDカセッテ4と通信接続するためのコネクターである。
図1に戻り、アクセスポイント3は、放射線発生装置1とコンソール2との間の通信や、コンソール2とFPDカセッテ4との間の通信等を中継する。
FPDカセッテ4は、動態撮影対応の可搬型の放射線検出器である。FPDカセッテ4は、ガラス基板等の基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Hを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の放射線検出素子がマトリックス状(二次元状)に配列されて構成されている。各放射線検出素子には、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部が接続され、スイッチング部により各放射線検出素子への電気信号の蓄積及び読み取りが制御され、画像データ(フレーム画像)が取得される。FPDには放射線をシンチレータを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、放射線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
FPDカセッテ4は、スイッチング部による電気信号の蓄積及び読み取りを制御する読取制御部と、アクセスポイント3を介してコンソール2と通信接続するための通信部とを備えている(何れも図示せず)。フレームレート、1撮影当たりの撮影フレーム画像数、画像サイズ(マトリックスサイズ)等の画像読取条件は、通信部を介してコンソール2により設定される。読取制御部は、設定された画像読取条件に基づいて、スイッチング部による各放射線検出素子への電気信号の蓄積及び読み取りを制御する。また、FPDカセッテ4は、コネクターを有し、図示しないケーブルを介してコンソール2と通信接続可能である。
なお、FPDカセッテ4は、放射線技師等の撮影実施者が持参してもよいが、FPDカセッテ4は比較的重く、落下すると壊れたり故障したりする可能性があるため、回診車に設けられたカセッテ用のポケット61aに挿入されて搬送できるようになっている。
(動態解析システム100の動作)
次に、動態解析システム100の動作について説明する。
まず、撮影動作について説明する。
図3に、撮影実施者の操作に応じてコンソール2により実行される撮影制御処理の流れを示す。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されている撮影制御処理プログラムとの協働により実行される。
まず、撮影技師によりコンソール2の操作部23が操作され、撮影対象(被写体H)の患者情報(患者の氏名、身長、体重、体格、年齢、性別等)、検査対象部位、解析対象(算出する特徴量)等を含んだ撮影オーダー情報の入力が行われる(ステップS1)。
次いで、放射線照射条件が記憶部22から読み出されて通信部25を介して放射線照射制御部12に設定されるとともに、画像読取条件が記憶部22から読み出されて通信部25を介してFPDカセッテ4の読取制御部に設定される(ステップS2)。
次いで、曝射スイッチ13からの放射線照射指示が待機される(ステップS3)。この間、撮影技師は患者のポジショニングを行う。具体的には、被写体Hの胸部正面(又は背面又は側面)が放射線源11に対向するように被写体Hを配置する。また、FPDカセッテ4を被写体Hの放射線源11と反対側の面に、放射線源11に対向するように配置される。ポジショニングが終了すると、撮影技師は曝射スイッチ13を操作して放射線照射を指示する。
曝射スイッチ13により放射線照射指示が入力されると(ステップS3;YES)、放射線照射制御部12及びFPDカセッテ4に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される(ステップS4)。即ち、パルス照射の場合は放射線照射制御部12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、連続照射の場合は放射線照射制御部12に設定された線量率で放射線源11により途切れなく継続して放射線が照射され、FPDカセッテ4によりフレーム画像が取得される。なお、撮影するフレーム画像の枚数は、少なくとも呼吸1周期以上であることが好ましい。
撮影により取得されたフレーム画像は、順次FPDカセッテ4から通信部25を介してコンソール2に入力され、撮影順を示す番号と対応付けて記憶部22に記憶されるとともに(ステップS5)、表示部24に表示される(ステップS6)。撮影技師は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。もしくは、撮影終了後に、自動的もしくは操作部23を操作することによって、撮影した一連のフレーム画像が記憶部22から読み出され、表示部24に順次切り替えて表示される(動画表示される)か、もしくは表示部24に並べて表示された動態画像を確認することで、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、操作部23を操作して、判断結果を入力する。
操作部23の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS7;YES)、動態撮影で取得され、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像のそれぞれに、動態画像を識別するための識別IDや、患者情報、検査対象部位、解析対象、放射線照射条件、画像読取条件、撮影順を示す番号等の付帯情報が付帯され(例えば、DICOM形式で画像データのヘッダ領域に書き込まれ)る(ステップS8)。そして、本処理は終了する。一方、操作部23の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS7;NO)、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS9)、本処理は終了する。
次に、上記撮影制御処理によって記憶部22に記憶された動態画像に対して実行される動態解析処理について説明する。
ここで、手術中、手術後では、患者に、中心静脈カテーテル、ドレナージチューブ等の、医療用チューブがつながれていることが多い。従来、これらの患者を被写体として胸部X線動態撮影を行い、得られた動態画像に対して動態解析を施した場合、患者の体動、心臓の拍動、呼吸動作等に伴う医療用チューブの動きが解析結果のアーチファクトとなっていた。
そこで、本実施形態の動態解析処理では、解析前に動態画像から医療用チューブ等の人工物による画像信号成分を減弱する人工物減弱処理を実行し、得られた動態画像に動態解析を行う。
図4に、コンソール2により実行される動態解析処理の流れを示す。動態解析処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
まず、各フレーム画像について、人工物減弱処理が実行される(ステップS11)。
図5に、ステップS11において実行される人工物減弱処理の流れを示す。人工物減弱処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
人工物減弱処理においては、まず、各フレーム画像について、肺野領域の抽出が行われる(ステップS111)。
肺野領域の抽出方法は何れの方法を用いてもよい。例えば、フレーム画像の各画素の信号値(濃度値)のヒストグラムから判別分析によって閾値を求め、この閾値より高信号の領域を肺野領域候補として1次抽出する。次いで、1次抽出された肺野領域候補の境界付近でエッジ検出を行い、境界付近の小領域でエッジが最大となる点を境界に沿って抽出すれば肺野領域の境界を抽出することができる。
次いで、各フレーム画像の抽出された肺野領域に対し人工物認識処理が行われ、人工物の領域が認識される(ステップS112)。
患者の体内に含まれる人工物としては医療用チューブが代表的であるので、以下の説明では、人工物の領域として細いチューブ状の物体の領域を認識する場合を一例として説明するが、これに限定されるものではない。
ステップS112においては、まず、細いチューブ状の人工物のエッジ強調画像を生成し、エッジ強調画像からエッジ検出を行うことで人工物の領域を認識する。
具体的には、まず、各フレーム画像から抽出された肺野領域に空間周波数強調処理等の鮮鋭化処理を適用し、人工物のエッジが強調された画像を生成する。
このとき、使用している人工物のサイズ(太さ・径)をユーザーが操作部23から入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示部24に表示し、操作部23の操作により入力された人工物のサイズ(太さ・径)に対応する空間周波数が強調されるフィルターを用いて、入力されたサイズ(太さ・径)の構造物のエッジを強調することとしてもよい。これにより、人工物の認識精度を向上させることができる。
又は、操作部23から患者に挿入している人工物の種別を入力するためのGUIを表示部24に表示し、入力された人工物の種別に応じて人工物のエッジを強調することとしてもよい。例えば、人工物が中心静脈カテーテルであれば、成人なら、太さ(径)1〜3mm程度のカテーテルを用いるのが一般的であり、胸腔ドレナージ用のチューブであれば、成人なら、太さ(径)4〜15mm程度のチューブを用いるのが一般的であり、気管チューブは、肺野内に写り込むことはあまりないが、成人なら、太さ(径)6〜9mm程度のチューブを用いるのが一般的である。従って、例えば、入力された人工物の種別が成人用の中心静脈カテーテルであれば、1〜3mm程度の空間周波数を強調するフィルターを用いて、エッジ強調を行う。より具体的には、チューブ側面側(径方向に対する両端)にて形成される2本のエッジを強調するには、チューブの太さ(径)Dに対して小さいサイズD*c(ここでcは0<c<1)をフィルターにて強調する空間周波数として設定することが好ましい。これにより、人工物の認識精度を向上させることができる。また、Sobelフィルターや、Cannyフィルターを用いて、エッジ強調を行ってもよい。
或いは、動態画像の隣接するフレーム画像を差分することで、被写体Hの動きによって生じるフレーム画像間での人工物の移動を利用して、人工物のエッジを強調してもよい。
エッジ強調画像の生成後、エッジ強調画像を所定の閾値で2値化し、例えば、人工物のエッジ候補点(画素)に1を、それ以外の点(画素)に0を割り当てた、エッジ検出画像を生成する。エッジ検出画像は、近くに存在するエッジ候補点同士を一つの塊として連結させる膨張処理を施すことが好ましい。また、この膨張処理では、人工物のサイズに応じたパラメーターを用いて処理することが好ましく、例えば、対象とする人工物がチューブの場合は、チューブの太さ・径に応じた所定の距離範囲内に位置するエッジ候補点を連結することで、チューブ側面側(径方向に対する両端)にて形成される2本のエッジ候補点を一まとめにし、1本の線として表すことができる。さらに、連結されたエッジ候補点で形成された線形状を後述する線検出処理で検出しやすくするために、膨張処理によってエッジ候補点を連結したエッジ検出画像に対して、細線化処理を施し、幅が1点(画素)のエッジ候補点の線として表現することが好ましい。次に、エッジ検出画像に、直線/円弧/欠損楕円をモデルとした一般化ハフ変換、あるいは、スプライン補間法による多項式近似、あるいは、動的輪郭法等により、エッジ候補点を直線及び曲線として検出する輪郭線検出処理を施す。輪郭線検出処理を行う前に、検出する線の形状をシンプル化し、曲線の次数を下げる目的で、エッジ検出画像を数〜数十個の均等なサイズのブロックに分割し、各分割ブロックに対して輪郭線検出処理を施し、その後分割ブロックを結合して元の画像サイズに戻すことが好ましい。そして、輪郭線検出処理で検出された輪郭線(直線及び曲線)に囲まれた領域を人工物の領域(人工物領域)として認識する。対象とする人工物がチューブの場合は、検出した輪郭線の幅が、チューブの太さ・径に応じた幅となるよう、輪郭線検出処理後の画像に膨張処理を施し、膨張処理後の輪郭線を、人工物の領域(人工物領域)とすることが好ましい。また、対象とする人工物がチューブの場合は、前述の輪郭線検出処理を行わず、細線化処理を施した後のエッジ検出画像に対して、細線化したエッジ候補点がチューブの太さ・径に応じた幅となるよう、膨張処理を施し、膨張処理後のエッジ候補点を、人工物の領域(人工物領域)として認識してもよい。輪郭線検出処理を省くことで、人工物領域の認識にかかる処理時間を短縮することができる。
なお、フレーム画像中の肋骨や鎖骨等の骨部領域は人工物領域の認識においてまぎらわしいため、上述の人工物領域の認識の前に、別途、各フレーム画像から肋骨や鎖骨等の骨部領域を認識する処理を行っておき、例えば、認識した骨部領域の画像信号成分を減弱しておく等により、各フレーム画像の骨部領域以外の領域から人工物の領域を認識することとしてもよい。
骨部領域の認識は、例えば、米国特許出願公開第2014/0079309号明細書に記載のように、例えば、予め用意した肋骨テンプレート、鎖骨テンプレートとのテンプレートマッチングや、エッジ検出後にカーブフィッティング関数を当てはめる等の手法により行うことができる。また、肋骨や鎖骨等の骨の構造の前知識に基づき、位置、形状、サイズ、濃度勾配、方向、等の特徴をもとに、認識した骨部領域に誤りがないか精査を行い、過剰抽出されている部分を判別して骨部領域から取り除くこととしてもよい。
骨部の画像信号成分の減弱は、後述するステップS113とステップS114と同様に、骨部領域の濃度プロファイルを生成し、ノイズ等を除去した濃度プロファイルの値を元のフレーム画像から減算することにより行うことができる。
或いは、フレーム画像から人工物の領域を認識した後、骨部領域を認識し、人工物の領域と認識された領域のうち骨部領域として認識された領域以外の領域を最終的に人工物の領域として認識することとしてもよい。
次いで、認識された人工物領域の濃度プロファイルが生成される(ステップS113)。具体的には、元の各フレーム画像毎に、認識された人工物領域1つ1つに対してその断面方向の濃度プロファイルを作成する。例えば、チューブ状人工物の場合は、チューブの走行に対し垂直に横切る線における濃度プロファイルを、断面方向の濃度プロファイルとする。人工物領域の断面方向の濃度プロファイルは、図6に示すように、人工物領域の断面方向の濃度変化を、横軸を断面方向の位置、縦軸を信号値(画素値)としてプロットしたものである。
なお、各フレーム画像の人工物領域の断面方向の濃度プロファイルは、前後の複数のフレーム画像について作成された濃度プロファイルと照合し、減算する値を、前後の複数のフレーム画像で略一致するように修正しておくことが好ましい。
例えば、注目フレーム画像の各画素で、人工物領域の断面方向の濃度プロファイルの値と、前後の複数のフレーム画像の当該画素の濃度プロファイルから求めた代表値(例えば、中央値や平均値)、もしくは、隣接するフレーム画像(直前か直後のフレーム画像)の濃度プロファイルの値とを比較し、所定閾値以上の差があれば、比較した値(代表値)に置き換える等により、当該注目フレーム画像の濃度プロファイルを修正する。もしくは、図6に示すように、注目フレーム画像の或る位置での人工物領域の断面方向の濃度プロファイルの波形と同一位置において、前後の複数のフレーム画像の濃度プロファイルの代表値から求めた波形(例えば、各濃度プロファイルの中央値から作成した波形)、もしくは、隣接するフレーム画像(直前か直後のフレーム画像)の濃度プロファイルの波形と相関等(例えば、相互相関係数等)を求めることで波形の一致度を評価し、一致度(相関値)が所定閾値より低い場合は、比較した波形に置き換える等により、注目フレーム画像の断面方向の各位置における濃度プロファイル全体を修正しても良い。
これにより、ステップS114において元のフレーム画像に対して減算する濃度プロファイルの値が前後複数フレームと略一致するため、人工物減弱処理後の画像が、前後の複数のフレーム画像と極端に異なることを抑えることができ、例えば、隣接するフレーム画像等の異なるフレーム画像間で、対応する各画素、もしくは、各領域に対して差分値を算出する際に、人工物減弱処理の各フレーム画像毎のばらつきによる影響をなくし、より呼吸や血流による肺野内の変化のみを抽出することが可能となる。
次いで、作成した濃度プロファイルにローパスフィルターを適用してノイズ等の空間的な高周波成分を除去し、ノイズ等を除去した濃度プロファイルの値を元のフレーム画像から減算することにより、人工物による画像信号成分を減弱した画像が取得される(ステップS114)。
なお、小児の中心静脈カテーテル等、患者に太さ(径)1mm未満の細い人工物しか付けられていない場合は、人工物が解析結果に及ぼす影響は少ないため、ステップS112〜ステップS114の処理は行わず、1辺が人工物の径の数倍の大きさのブロックサイズの平滑化フィルターで平滑化することで人工物による画像信号成分を減弱することとしても良い。
人工物減弱処理が終了すると、図4のステップS12に移行し、人工物減弱処理後の動態画像が表示部24に表示される(ステップS12)。なお、動態画像の表示は、人工物減弱処理後の一連のフレーム画像を順次切り替えて表示部24に表示する(動画表示する)こととしてもよいし、一連のフレーム画像を並べて表示部24に表示することとしてもよい。
人工物減弱処理後の動態画像を表示することで、動態解析にどのような画像が入力されるのかをユーザーが確認することが可能となる。なお、ステップS12においては、人工物減弱処理後の動態画像と、人工物減弱処理前の動態画像とを操作部23の操作により切り替え可能に、又は並列して表示することが好ましい。人工物減弱処理後の動態画像と、人工物減弱処理前の動態画像とを比較可能に表示することで、人工物減弱処理によって動態画像がどのように変化したか、人工物減弱処理後の画像が動態解析に用いる動態画像として妥当かをユーザーが確認し判断することが可能となる。
次いで、人工物減弱処理後の動態画像に対して胸部の動態解析が行われる(ステップS13)。
胸部の動態解析としては、肺野の局所的な動きを示す特徴量を算出する解析と、肺野全体の動きを示す特徴量を算出する解析とがある。また、換気機能を対象とする解析と、血流機能を対象とする解析とがある。
肺野の換気機能による局所的な信号変化を示す特徴量を算出する解析としてはいくつかあるが、例えば、フレーム間差分画像の算出が挙げられる。換気のフレーム間差分画像は、一連のフレーム画像に以下の処理を施すことによって算出される。
ビニング処理→時間軸方向のローパスフィルター処理→フレーム間差分処理→ノイズ除去処理
ビニング処理は、各フレーム画像において、画像領域を所定サイズの画素ブロック単位の小領域に分割し、小領域毎に領域内画素の信号値の代表値、例えば、平均値を算出する(平均化する)処理である。なお、代表値としては、平均値に限らず、中央値、平均値、最頻値としてもよい。画素ブロックのサイズは、解析対象となる部位、及び/又は解析により算出される特徴量に応じたものとすることが解析精度向上の点から好ましい。また、画素ブロックのサイズを、肋骨の間隔の整数倍に設定することで、呼吸に伴う肋骨の移動があったとしても、画素ブロック内に存在する肋骨の割合が略一定となる為に、画素ブロック内における、呼吸に伴う肋骨の移動によって生ずる濃度変化を低減することができ、解析精度を向上させることが可能となる。
時間軸方向のローパスフィルター処理は、換気による信号値の時間変化を抽出するための処理であり、例えば、カットオフ周波数0.5Hzでフィルタリングする。
フレーム間差分処理は、一連のフレーム画像の同じ画素位置の小領域(FPDカセッテ4の同じ位置の検出素子から出力された領域)を互いに対応付け、各小領域毎に、隣接するフレーム画像間で信号値の差分値を算出し、フレーム間差分画像を作成する処理である。
なお、フレーム間差分画像の静止画像を作成する場合は、肺野全体の濃度変化又は横隔膜の位置の変化を解析することにより一連のフレーム画像における吸気期間と呼気期間を算出し、小領域毎に吸気期間については正のフレーム間差分値の絶対値を積算し、呼気期間については負のフレーム間差分値の絶対値を積算した画像を作成する。
換気の異常箇所では、フレーム間差分値が小さくなるため、このフレーム間差分画像を出力することで、換気の局所的な異常箇所を特定することが可能となる。
肺野内の血流による局所的な信号変化を示す特徴量を算出する解析としては、いくつかあるが、例えば、フレーム間差分画像の算出が挙げられる。血流のフレーム間差分画像は、一連のフレーム画像に以下の処理を施すことによって算出される。
ビニング処理→時間軸方向のハイパスフィルタ処理→フレーム間差分処理→ノイズ除去
時間軸方向のハイパスフィルタ処理は、血流による信号値の時間変化を抽出するための処理であり、例えば、カットオフ周波数0.7Hzでフィルタリングする。その他は、上述の換気のフレーム間差分画像で説明した処理と同様である。
血流の異常箇所では、フレーム間差分値が小さくなるため、このフレーム間差分画像を出力することで、血流の局所的な異常箇所を特定することが可能となる。
動態解析結果は、患者情報及び解析元の動態画像の一連のフレーム画像に対応付けて記憶部22に記憶される。
次いで、ステップS13における解析結果が表示部24に表示され(ステップS14)、動態解析処理は終了する。
例えば、解析結果としてフレーム間差分画像が得られている場合は、各画像の各小領域をフレーム間差分値に応じた輝度若しくは色で示して、一連の画像を表示部24に動画表示又は並べて表示する。或いは、フレーム間差分画像の静止画像を生成し、各小領域をフレーム間差分値に応じた輝度若しくは色で示して、表示部24に表示することとしてもよい。
また、フレーム間差分値を色で示した画像等の解析結果と解析前の動態画像とを、並列に表示もしくは、表示部24の同一位置にて任意のタイミングで切り替え可能に表示、もしくは、透過率を変えて重ね合わせて表示することとしてもよい。このような表示をすることで、解析結果と解析前の動態画像との対比が行いやすくなり、例えばフレーム間差分画像等の解析結果における局所的な値が、解析前の動態画像上のどの構造物の動きに起因して生じているかを把握しやすくなり、疾患部の状態をより正確に把握することができる。
また、前述の換気のフレーム間差分画像と、血流のフレーム間差分画像とを、並列に表示もしくは、表示部24の同一位置にて任意のタイミングで切り替え可能に表示、もしくは、透過率を変えて重ね合わせて表示することとしてもよい。このような表示をすることで、換気と血流の局所的な異常箇所の対比が行いやすくなり、疾患部の状態をより正確に把握することができる。
また、例えば癌等の診断支援に使用されるCAD(Computer-Aided Diagnosis)の結果と、フレーム間差分値を色で示した画像等の解析結果を並列に表示もしくは、表示部24の同一位置にて任意のタイミングで切り替え可能に表示、もしくは、透過率を変えて重ね合わせて表示することとしてもよい。
このような表示をすることで、例えば肺野内の結節や腫瘤影に似た領域にマーキングを施したCADの結果とフレーム間差分値を色で示した画像等の解析結果との対比が行いやすくなり、CADの結果においてマーキングされた領域とフレーム間差分画像等の解析結果における局所的な値とが整合するのかどうかを把握することにより、疾患部の状態をより正確に把握することができる。
また、肺野内の換気もしくは血流による局所的な信号変化を示す特徴量を算出する解析としては、特開2010−268979号公報に記載された、換気であれば、横隔膜の上下位置等の呼吸運動を示す指標値、血流であれば、心臓壁位置や心臓領域上の信号値時間変化等の心臓の拍動を示す指標値の時間変化を基準として、肺野領域を複数領域に分割した各領域毎に画素信号値時間変化の位相遅れ時間を算出し、肺野内のどの領域の画素信号値の時間変化が、どの程度遅れるかを算出し、表示部24に表示することとしてもよい。 もしくは、前述のように、換気であれば、横隔膜の上下位置等の呼吸運動を示す指標値、血流であれば、心臓壁位置や心臓領域上の信号値時間変化等の心臓の拍動を示す指標値の時間変化を基準の波形として、肺野領域を複数領域に分割した各領域毎に画素信号値時間変化との相互相関係数を算出し、肺野内のどの領域の画素信号値の時間変化が、基準の波形と相関があるかの指標を算出し、表示部24に表示することとしてもよい。
また、これらの、基準となる呼吸運動もしくは心臓の拍動を示す時間変化に対する肺野内局所の画素信号値時間変化の位相遅れ時間、相互相関係数に基づいて、例えば、位相遅れ時間が呼吸運動もしくは拍動の周期のおよそ半分の時間に相当し、位相がほぼ反転している領域、または、相互相関係数が所定の値より小さい領域を、肋骨等の構造物の移動により信号値変化が生じている領域すなわち骨部領域として認識し、前述のように、認識した骨部領域に対して、濃度プロファイルを生成し、ノイズ等を除去した濃度プロファイルの値を元のフレーム画像から減算する等の処理により、骨部の画像信号成分の減弱処理を施してもよい。
また、肺切除術等の手術の実施を検討中の被写体に対するフレーム間差分値を色で示した画像等の解析結果において、ユーザーが操作部23等の操作により、表示部24に表示された解析結果に対して、例えば肺切除範囲に相当する領域等の肺野内の一部の領域を選択可能とし、肺野全体から当該選択領域を除いた領域における換気もしくは血流の特徴量として、例えば肺野全体から当該選択領域を除いた領域における局所的なフレーム間差分値の積算値を算出し、次に、肺野全体における換気もしくは血流の特徴量として、例えば肺野全体における局所的なフレーム間差分値の積算値を算出し、さらに、算出した肺野全体から当該選択領域を除いた領域における換気もしくは血流の特徴量を、算出した肺野全体における換気もしくは血流の特徴量で除した値を両者の比として算出し、その結果を解析結果として表示部24に表示することとしてもよい。例えば、前述の選択領域として、肺切除領域を選択することで、算出された肺野全体から当該選択領域を除いた領域における換気もしくは血流の特徴量を、肺切除術後の換気もしくは血流量に相当するものとみなし、また、算出された肺野全体における換気もしくは血流の特徴量を、肺切除術前の換気もしくは血流量に相当するものとみなすことにより、前述のように算出された両特徴量の比は、肺切除術前に対する肺切除術後の換気もしくは血流量の比、すなわち、肺切除術を実施することで換気もしくは血流量が肺切除前に比してどの程度になるかの割合とみなすことができ、これにより、肺切除術の術前に、肺切除術後の状態を定量的に推定することが可能となる。
また、さらに、コンソール2に操作部23または通信部25を介して被写体Hに対する別検査の測定結果を入力可能として、入力された被写体Hに対する別検査の測定結果に、前述のように算出された両特徴量の比を乗じた値を算出し、その結果を解析結果として、表示部24に表示することとしてもよい。例えば、前述の選択領域として、同様に、肺切除領域を選択し、被写体Hに対する別検査の測定結果として肺切除術前のスパイロメトリー検査の結果を入力することで、被写体Hに対する別検査の測定結果に前述のように算出された両特徴量の比を乗じた値は、肺切除術前後のスパイロメトリー検査の推定値とみなすことができ、これにより、肺切除術の術前に、肺切除術後の状態として、肺切除術後のスパイロメトリー検査の結果を推定することが可能となり、この結果をもとに、被写体が当該選択領域を切除する肺切除術を実施するのが妥当か否かの判断を適切に行うことが可能となる。
なお、ステップS13において、人工物減弱処理を適用した動態画像だけでなく、人工物減弱処理を適用していない元の動態画像に対しても同様の動態解析を行い、ステップS14においては、人工物減弱処理を適用した動態画像に対する解析結果と、人工物減弱処理を適用する前の元の動態画像に対する解析結果とを操作部23の操作により切り替え可能に、又は並列して表示することが好ましい。人工物減弱処理後の動態画像に対する解析結果と、人工物減弱処理前の動態画像に対する解析結果とを比較可能に表示することで、人工物減弱処理によって動態画像の解析結果がどのように変化したか、人工物減弱処理後の解析結果が妥当であるかをユーザーが確認し判断することが可能となる。
なお、撮影技師によりコンソール2に撮影オーダー情報が入力されるとしたが、有線/無線ネットワークでつながったRIS(Radiology Information System)等の端末から、コンソール2に撮影オーダー情報が入力されることとしてもよい。
また、コンソール2に撮影オーダー情報が入力された際、当該撮影対象の患者が過去に撮影した動態画像の全てもしくは一部のフレーム画像、その動態画像に付帯した放射線照射条件、画像読取条件を、コンソール2もしくは、コンソール2に有線/無線ネットワークでつながったPACS(Picture Archiving and Communication System)等の画像保存サーバーから読み出し、表示部24に表示することが好ましい。コンソール2上に撮影対象の患者が過去に撮影した動態画像の全てもしくは一部のフレーム画像、放射線照射条件、画像読取条件を表示することで、過去撮影時と同様なポジショニング、患者動作、放射線照射条件、画像読取条件で患者を撮影することが容易となり、より過去画像と比較しやすい動態を得ることが可能となる。このため、コンソール2には、過去に撮影した動態画像が即参照可能となるよう、動態画像の特定フレーム画像、もしくは、動態画像の全部または一部を可逆または非可逆圧縮した画像を長期に保存しておくことが好ましい。
また、動態画像を散乱線除去グリッド無しで撮影した場合には、各フレーム画像について、人工物減弱処理を適用する前に、各フレーム画像に対して、散乱線成分を推定し、元のフレーム画像から散乱線成分を除去する散乱線除去処理を適用することが好ましい。これにより画像のコントラストが向上し、人工物減弱処理における人工物認識処理の認識精度を向上させることができる。
また、放射線発生装置1から1フレームあたりに照射される放射線照射量は、撮影中に変化する場合があり、この放射線照射量の時間変化が、解析結果の誤差要因となることが起こり得る。そのため、人工物減弱処理を適用する前に、各フレーム画像に対して、1フレームあたりに照射される放射線照射量の変化を相殺する放射線照射量時間変化補正処理を施すことが好ましい。この補正処理は、コンソール2が放射線発生装置1から各フレーム画像に対する放射線照射量の情報を得て、放射線照射量の情報に応じて、例えば、各フレームの画素値を各フレームの放射線照射量に比例した値で除する等の方法によって補正してもよいし、各フレーム画像から直接放射線照射領域もしくは被写体上で被写体が略静止している領域等の動きが無い領域を認識し、認識した動きが無い領域の画素値に応じて補正してもよい。これにより、放射線照射量の時間変化の影響を換気機能や血流機能に関する特徴量から取り除くことができ、動態画像の解析結果に基づく診断精度を向上させることが可能となる。
また、この補正処理が正常に動作するよう、動態画像の撮影中に各フレーム画像を順次取得した都度、もしくは、一連の動態撮影が終了した直後に、コンソール2の制御部21が、前述の直接放射線照射領域もしくは被写体上で被写体が略静止している領域等の動きが無い領域が、各フレーム画像に含まれているか否かの判定処理を実行し、含まれていなければ、表示部24にその旨を警告表示し、再撮等をユーザーに促すようにすることが好ましい。
また、コンソール2は、動態撮影直前にポジショニング確認用の静止画像の撮影(スカウト撮影)、もしくは、動態画像撮影開始直後の1〜数枚のフレーム画像を解析することによりFPDカセッテ4と放射線源11とのアライメントや、被写体Hのポジショニングが適正か否かの判定並びに、解析前の動態画像表示時の画像処理パラメーターの決定行うこととしてもよい。動態画像撮影開始直後のフレーム画像にこれらの解析を行う場合は、動態画像の撮影中に各フレーム画像を順次取得した都度、ほぼリアルタイムで画像を解析することが好ましい。FPDカセッテ4と放射線源11とのアライメントや、被写体Hのポジショングが適正か否かの判定としては、例えば胸部の撮影であれば、制御部21により実行される画像処理によって、まず放射線が直接照射される素抜け領域と被写体領域を認識し、次に被写体領域から肺野領域と縦隔領域を認識し、さらに縦隔領域から、縦に並ぶ椎骨の中のある椎骨の棘突起と、その棘突起を挟む椎弓根を認識する。そして、認識した両椎弓根の中央に棘突起が位置するか否かを自動計測することで、棘突起が椎弓根の正中にあるかを判定する。棘突起が椎弓根の正中にない場合は、FPDカセッテ4の表面に対して垂直ではなく斜めに照射されているとして、放射線源11のアライメントを変更すべき旨を、表示部24に表示する。このとき、棘突起と椎弓根を認識した椎骨を表示部24に拡大表示すると、ユーザーはどの程度放射線源11を動かせばよいかが把握しやすくなり、より好ましい。
また、コンソール2もしくはFPDカセッテ4において、動態撮影直前にポジショニング確認用の静止画像の撮影(スカウト撮影)、もしくは、動態画像撮影開始直後の1〜数枚のフレーム画像を解析することにより、当該フレーム画像における肺野領域を認識し、その外接四角形×α(α>1)の領域を対象領域として決定し、FPDカセッテ4における以降のフレーム画像の収集においては決定した対象領域しか読み取りを行わない、もしくは、FPDカセッテ4での読み取りは全領域に対して行うが、読み取ったフレーム画像の全領域うち、FPDカセッテ4からコンソール2へ転送する領域は前記決定した対象領域に限定してもよい。ここで、前記対象領域の決定においては、放射線源11から照射された放射線がFPDカセッテ4に直接照射された領域を予め定められた所定面積だけ含まれるように設定することとしてもよい。このように、FPDカセッテ4が読み取る領域、もしくは、FPDカセッテ4からコンソール2へ転送する領域を一部の領域に限定することで、読み取り、もしくは、転送で消費される電力量を抑えることができ、また、FPDカセッテ4内への記憶部、記憶部22で画像データを記憶するために消費される記憶容量を抑えることができる。
また、放射線発生装置1は、放射線源11及び被写体Hの移動によるボケ(モーションアーチファクト)を抑制するため、放射線源11からパルス照射で放射線を照射することが好ましく、放射線発生装置1が、放射線源11から連続照射で放射線を途切れなく継続して照射する機能しか有さない場合においても、放射線発生装置1が、放射線源11の照射口に、図示しない放射線の照射野を絞るための絞り部を備え、この絞り部が放射線の出力を完全に遮断するシャッターを有し、本シャッターの開閉を所望のタイミングで駆動することによって、絞り部が連続照射をパルス照射へと変更し、放射線発生装置1としてはパルス照射で放射線が照射される構成としてもよい。このとき、絞り部がシャッターを開いてパルス状の放射線を照射するタイミングが、FPDカセッテ4の蓄積時間に収まるように、絞り部とFPDカセッテ4が同期をとる構成とすることが好ましい。また、シャッター開閉機構を持つ前記絞り部は、放射線源11に着脱可能に外付け可能な構成とすることで、施設に既設の静止画撮影用の放射線発生装置が単発の放射線しか照射できず、単発の放射線を長めに照射することで連続照射を実現する場合においても、本着脱可能な絞り部を放射線源11に外付けで装着することにより、放射線発生装置1全体を入れ替えることなく、低コストでパルス照射を実現することが可能となる。また、静止画撮影用の放射線発生装置は、一般的には、設定可能な最小管電流が10[mA]や20[mA]である装置が多く、一方、動態撮影を行う場合には、被写体への総被曝量を抑えるために、被写体に照射される放射線の線量率が、管電流を例えば0.5〜3[mA]程度に設定した場合に被写体に照射される線量率まで下げる必要がある。したがって、静止画撮影用の放射線発生装置の放射線源11に前記絞り部を外付けで装着し、放射線源11から長めに照射された単発の放射線を絞り部にて周期的にシャッターを閉じて遮断し、パルス照射にすることで、被写体に照射される線量率を動態撮影に適した線量率に下げることができ、被写体への総被曝量を抑えることが可能となる。また、このとき、さらに線量率を下げるために、前記絞り部は、絞り部の照射口に付加フィルターを装填させる機構を有する構成としてもよい。
また、回診用や携帯用の放射線発生装置1は、移動可能なコンパクトな形態であることから、放射線照射開始直後に管電圧が設定値付近まで上昇する立ち上がり時間、及び、放射線照射終了直後に管電圧がほぼ0へと下降する立ち下がり時間が、大きいものが多い。このとき、管電圧が設定値付近まで上昇するまで、及び、管電圧がほぼ0へと下降するまでの間は、低管電圧の放射線が照射され、解析に適した所望の画質を満たすフレーム画像が生成されず、被写体に無駄な被曝を増加させることとなる。そこで、前記絞り部は、放射線照射開始直後や放射線照射終了直後等の管電圧が所望の値よりも低い場合において、前記シャッター開閉機構にてシャッターを閉じることで、放射線を遮断する機能を有することが好ましい。これにより、解析に適したフレーム画像を生成する管電圧の放射線のみが、被写体に照射されるため、被写体の無駄な被曝を軽減することができる。もしくは、放射線照射開始直後、最初の所定のフレーム数、もしくは、所定時間だけ、FPDカセッテ4の読み取り動作、もしくは/かつ、画像データのFPDカセッテ4内への記憶部への保存、もしくは/かつ、FPDカセッテ4から通信部25を介してコンソール2への画像データの送信を、行わないように制御しても良い。これにより、解析に不適切なフレーム画像を生成する低管電圧の放射線が照射されている間において、FPDカセッテ4の消費電力を抑えることができ、FPDカセッテ4がバッテリ駆動の場合は、バッテリの消耗を抑えることができる。また、FPDカセッテ4内の記憶部に解析に不適切なフレーム画像が保存されないため、FPDカセッテ4内の記憶部の保存容量を有効利用することが可能になる。
また、前述のように、放射線照射開始直後や放射線照射終了直後等で、管電圧が所望の値よりも低く、放射線源11から解析に適した放射線が照射されておらず、前記絞り部が、前記シャッター開閉機構にてシャッターを閉じることにより、放射線源11から照射される放射線を遮断している間の一部の期間において、FPDカセッテ4が1〜複数枚のフレーム画像を取得し、これらのFPDカセッテ4に放射線が照射されていない間に収集したフレーム画像を、FPDカセッテ4に放射線が照射されている間に収集した各フレーム画像に対して重畳された暗電流に起因するオフセット値を除去するためのオフセット補正用画像データとして使用もよい。このようにすることで、FPDカセッテ4に放射線が照射されている期間に対して、より近接した時間において、オフセット補正用画像データを収集することが可能となり、オフセット値を除去するオフセット補正の精度が高まり、解析及び診断により適した画像を得ることができる。
また、撮影した画像が胸部の呼吸状態の動態画像の場合、例えば、マイクロ波電波センサー等の非接触センサーを用いて、電波を発信し、被検者表面からの反射波を受信することで、被写体Hの呼吸動態を計測し、この被写体Hの呼吸動態情報を、リアルタイムにコンソール2の表示部24に表示することとしてもよい。このように、FPDカセッテ4とは別センサーにて、被検者の呼吸動態情報を抽出することで、ユーザーは放射線照射中でなくても、被検者の呼吸動態を監視することが可能となり、ユーザーは被写体Hの呼吸動態に応じて、放射線照射開始タイミングを定めることが可能となる。また、このような別センサー等によって取得した、例えば呼吸動作の位相等の呼吸動態情報は、動態画像や動態画像の解析結果に付帯させて保持させることが好ましいが、画像データに付帯させた場合、当該データをPACS等のサーバーやビューワー等の端末に転送し、当該データをPACS等のサーバーやビューワー等の端末上で画像データと呼吸動態情報を分離して表示するには、当該PACS等のサーバーやビューワー等の端末が、当該データ内の構成を予め保持している必要があり、画像データと呼吸動態情報を分離して表示する可能とするサーバーや端末の種類が非常の限定されてしまう。そこで、前述の呼吸動作の位相等の呼吸動態情報は、画像データ内の対応するフレーム画像に、例えば、アノテーションとしてテキスト情報で埋め込んだり、もしくは、波形データとしてグラフィカルな図として埋め込んだりしてもよい。これにより、サーバーや端末の種類が限定されることなく、より汎用的に、当該データを読み込んだサーバーや端末上で、画像データと、呼吸動作の位相等の呼吸動態情報を分離して、表示することが可能となる。
また、回診用や携帯用の放射線発生装置1は、移動可能なコンパクトな形態であることから、最大の放射線照射時間が短く、1回の動態撮影において、呼吸動態1サイクル分の撮影ができない場合がある。このような場合、例えば、前述のようにFPDカセッテ4とは別センサーにて、放射線照射中以外でも被写体Hの呼吸動態を監視し、1回目の動態撮影の放射線照射終了時の位相を保持しておき、次の2回目の撮影時は、ユーザーが放射線線照射開始を指示しても、放射線発生装置1が前述のセンサーの出力に基づき、被写体Hの呼吸動作が前述の保持した位相となるまで放射線照射を停止し、保持した位相となったタイミングから放射線照射を行うよう制御させてもよい。さらに、必要あれば、2回目の動態撮影の放射線照射終了時の位相を保持しておき、その次の3回目の撮影以降、同様な制御を行っていく。これにより、前に撮影した動態画像の最後のフレーム画像と、次に撮影した動態画像の最初のフレーム画像の位相を一致させることができるため、撮影した複数の動態画像を順次結合し、一つの動態画像を生成することにより、前述のように最大の放射線照射時間が短く、1回の動態撮影では呼吸動態の1サイクル分を撮影できない場合でも、被写体Hに無駄な被曝をさせることなく、呼吸動態1サイクル以上を連続的に撮影した場合と同等の動態画像を生成し、解析することが可能となる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態における動態解析システム100の構成は、第1の実施形態において図1、2を用いて説明したものと略同様であるが、第2の実施形態において、放射線発生装置1は、動態撮影の最初又は最後に、複数の異なるエネルギー(管電圧)の放射線を順次切り替えて照射して撮影を行い、エネルギーサブトラクション処理のためのk枚のフレーム画像を取得することが可能である。コンソール2においては、放射線照射条件として、動態撮影用の放射線照射条件の他、エネルギーサブトラクション処理用の画像取得のために撮影時に切り替えるエネルギー(管電圧)の種類(j;j≧2)、エネルギーを切り替えながら撮影する回数(k)、エネルギーを切り替える順序を操作部23により設定可能である。エネルギーを切り替えながら撮影するため、放射線発生装置1は、放射線源11からパルス照射で放射線を照射することが好ましい。
ここで、エネルギーサブトラクション処理は、時間的に連続してj種のエネルギーを切り替えて撮影されたj枚のフレーム画像を演算して、所定の線減弱係数の構造物を抽出又は減弱する処理である。エネルギーサブトラクション処理用にエネルギー種を切り替えながら撮影を行う回数kは、エネルギー種の数j以上である。
例えば、動態画像の最初にエネルギーサブトラクション処理のためのフレーム画像を取得する場合、エネルギーの種類が3種(エネルギーA、B、C)とすると、以下の(1)のように、k=jとすることもできるし、(2)のように、k≠jとすることもできる。
(1)A、B、C、C、C・・・のように、最初の3回の撮影において3種のエネルギー種を切り替えて放射線を照射してエネルギーサブトラクション処理用のフレーム画像を取得し、続いて、最後に切り替えられたエネルギー種Cと同じエネルギー種の放射線を複数回照射して撮影を行い、最後の連続したエネルギー種Cでの撮影で動態解析用のフレーム画像として取得するケース(k=j)
(2)A、B、C、A、B、B、B・・・のように、最初の5回の撮影において3種のエネルギー種を切り替えて放射線を照射してエネルギーサブトラクション処理用のフレーム画像を取得し、続いて、最後に切り替えられたエネルギー種Bと同じエネルギー種の放射線を複数回照射して撮影を行い、最後の連続したエネルギー種Bでの撮影で動態解析用のフレーム画像として取得するケース(k≠j)
即ち、第2の実施形態では、図3の撮影制御処理のステップS2において、エネルギーサブトラクション処理のために切り替える放射線のエネルギーの種類、エネルギーを切り替えながら撮影する回数及び順序を含む放射線照射条件が放射線発生装置1に設定される。また、ステップS4において、放射線発生装置1により、動態撮影の最初又は最後に、設定されたj種のエネルギーの放射線を切り替えてk回の撮影が行われ、k枚(k≧j)のエネルギーサブトラクション処理用のフレーム画像を含む動態画像が取得される。
また、コンソール2においては、撮影制御処理により取得された動態画像に対し、第1の実施形態と同様に動態解析処理が実行されるが、本実施形態では、ステップS2の人工物減弱処理における人工物認識処理(ステップS112)が第1の実施形態と異なる。以下、第2の実施形態において制御部21により実行される人工物認識処理について説明する。
まず、動態撮影により取得された動態画像の最初又は最後のk枚のフレーム画像を用いて、エネルギーサブトラクション処理による人工物認識処理を行い、k−j+1枚の人工物強調画像(人工物が認識された画像)を得る。ここで行うエネルギーサブトラクション処理による人工物認識処理は、例えば、動態画像の最初又は最後のk枚のフレーム画像のうち、j種の異なるエネルギーの放射線で撮影された時間的に連続するj枚のフレーム画像毎に演算を施して、動態画像に写り込んだ被写体の骨部及び軟部組織の画像信号成分を減弱させることで、人工物を認識した画像を得る処理である。
ここで、動態画像に写り込んだ被写体の骨部及び軟部組織の両方の画像信号成分を減弱させるために、前述の異なるエネルギーの種類jは、3以上であることが好ましい。また、動態画像中に線減弱係数のエネルギー特性が異なるi種の人工物が写りこんでいる場合は、前述の異なるエネルギーの種類jはi+2以上とし、j種の異なるエネルギーの放射線で撮影された時間的に連続するj枚のフレーム画像毎に、下記の[式]による演算により、被写体の骨部及び軟部組織の画像信号成分及びその他の線減弱係数のエネルギー特性を持つ人工物を減弱させることにより、特定の線減弱係数のエネルギー特性を持つ人工物のみをそれぞれ強調したi枚の人工物強調画像を得ることが好ましい。
j種の異なるエネルギーの放射線で撮影された時間的に連続するj枚のフレーム画像において、各フレーム間でそれぞれ対応する任意の画素の信号値をp1〜jとした場合、例えば、以下の[式]の演算を施すことにより、e1〜eiの線減弱係数のエネルギー特性を持つ人工物のみを強調(抽出)した画素値Pe1〜Peiをそれぞれ取得することができる。
[式]
Pe1 = α11*P1 + α12*P2 + α13*P3 + ・・・・・ +α1jPj
Pe2 = α21*P1 + α22*P2 + α23*P3 + ・・・・・ +α2jPj
・・・・
Pei = αi1*P1 + αi2*P2 + αi3*P3 + ・・・・・ +αijPj
11〜αijは実数の係数を表す)
このとき、人工物の種別に応じて、より具体的には、異なるi種の線減弱係数のエネルギー特性の人工物に応じてそれぞれ、j枚のフレーム画像に施す演算方法を変える(α11〜αijの係数を変える)ことが好ましい。ここで、操作部23から患者に挿入している人工物の種別もしくは材質を入力するためのGUIを表示部24に表示し、入力された人工物の種別もしくは材質に応じて人工物の線減弱係数のエネルギー特性が特定され、特定された人工物の線減弱係数のエネルギー特性をもとに、α11〜αijの係数が設定されるようにしてもよい。
上記[式]により得られるi枚の人工物強調画像の対応する画素値同士を加算した人工物強調画像を、人工物認識処理結果として出力する。もしくは、上記[式]により得られるi枚の人工物強調画像の各々に対してそれぞれ所定の閾値で2値化処理し、一方の値を示す領域を人工物領域画像として得、得られたi枚の人工物領域画像に対して、例えば、i枚のうち1枚でも対応する画素が人工物領域であれば当該画素を人工物領域とみなす等によって合成し、合成した結果を人工物認識処理結果として出力してもよい。このような人工物認識処理を、フレーム画像を1つずつずらしながらj種の異なるエネルギーの放射線で撮影された時間的に連続するj枚のフレーム画像を用いて行うことで、時間的に連続したk−j+1枚の人工物認識処理結果を得ることができる。例えば、上述の(2)のように、j=3種のエネルギーA、B、Cを切り替えてA、B、C、A、B、B、B・・・という撮影を行った場合、A、B、C、A、Bのk=5枚のフレーム画像を用いて、3種の異なるエネルギーの放射線で撮影された時間的に連続する3枚のフレーム画像毎、即ち、ABC、BCA、CABのグループ毎にエネルギーサブトラクション処理による人工物認識処理を行うことで、k−j+1=3枚の人工物強調画像が得られる。
なお、k−j+1>1の場合、最初もしくは最後のk−j+1枚の人工物認識処理結果を照合して、k−j+1枚のそれぞれの人工物認識結果を修正することが好ましい。また、上記の処理によって得られる人工物強調画像に対し、さらにこの人工物強調画像に対して、例えば、第1の実施形態の図5のステップS112の処理で説明した人工物認識処理等を行うことにより人工物を認識することとしてもよい。これにより、人工物の認識精度を向上させることができる。
エネルギーサブトラクション処理による人工物認識処理により、人工物が認識されたk−j+1枚のフレーム画像を取得した後、制御部21は、k−j+1枚のフレーム画像の人工物認識結果をもとに、未だ人工物認識処理が施されていない残りの各フレーム画像に対し、簡易な画像処理により人工物認識処理を行う。
簡易な人工物認識処理としては、例えば、直前のフレーム画像で認識された人工物領域を参照し、その人工物領域の境界部分の周辺数画素でのみ、人工物の空間的なエッジ(勾配)を探索して人工物のエッジを抽出することにより人工物の領域を認識する。これにより、全てのフレーム画像に完全な人工物認識処理を実行する場合に比べ、演算量を減らし、高速で処理することが可能となる。精度良く人工物の空間的なエッジを抽出する方法の一例として、動的輪郭抽出法を用いる方法がある。これは、直前のフレーム画像で抽出した人工物領域の座標を初期位置とし、人工物の形状と画像上のエッジ特徴を評価関数として、複数回の輪郭抽出を施行する手法であり、これにより人工物の輪郭を精度良く捉えることができる。また、この動的輪郭抽出法を用いることにより、対象とする人工物の形状の変化や位置の変化に柔軟に対応できるため、フレーム画像間の変化が大きな画像間でも利用可能である。
さらに簡易化する場合は、例えば、撮影した画像が胸部の呼吸状態の動態画像の場合、人工物は、通常はその人工物の種別に応じて、吸気時、呼気時に特定の方向に移動するので、各フレーム画像において、吸気又は呼気の何れのタイミングであるかを判定し、直前のフレーム画像で抽出した人工物領域に対して、例えば吸気時の場合は下方向にのみエッジを探索、呼気時の場合は上方向のみエッジを探索する等、人工物の種別に応じて吸気時、呼気時で特定の方向に人工物のエッジを探索することとしてもよい。また前述のように、複数種類の人工物が写りこんでいる場合には、各人工物に応じて、吸気時、呼気時においてエッジ探索する方向を変更し、各人工物毎に個別に抽出を行っても良い。
吸気又は呼気のタイミング判定は、直前のフレーム画像に対して横隔膜が移動する方向、もしくは、肺野領域の濃度変化が増えているか減っているかを検出することで判定できる。横隔膜が移動する方向では、横隔膜が下方向に動けば吸気、上方向に動けば呼気と判定できる。肺野領域の濃度変化では、濃度が増加すれば吸気、減少すれば呼気と判定することができる。横隔膜は濃度勾配が大きいため、横隔膜のエッジを検出することで、当該フレーム画像が吸気か呼気かを容易に認識することができる。また、肺野領域はステップS111の処理のように胸郭のエッジを検出することで認識可能であるが、肺野領域を認識しなくても、例えば、画像中央部の固定領域の濃度が増加しているか又は減少しているかによって吸気、呼気のタイミングは判定可能となる。
このように、直前のフレーム画像の人工物認識結果を参照して、順次各フレーム画像を処理していくことで、各フレーム画像の人工物認識処理を簡易化することができ、各フレーム画像の人工物認識処理の処理速度を速めることが可能となる。
なお、一回のエネルギーサブトラクション処理に用いるj枚のフレーム画像の撮影の間では、被写体Hの体動、呼吸動作、拍動が生じ、各フレーム画像内に写り込んだ同一構造物の陰影は位置ずれを生じるため、位置ずれを補正する位置合わせ処理を施すことが好ましい。また、低エネルギーの放射線で撮影された動態画像の各フレーム画像においては、被写体のX線透過率が低い構造物に対応する領域においてノイズ量が大きいため、ノイズを目立たなくするノイズ抑制処理を施すことが好ましい。しかし、これらの位置合わせ処理、ノイズ抑制処理は処理時間が大きい。また、フレーム間で異なるエネルギーの放射線を切り替える切替時間間隔には制限があり、フレームレートに制限(上限)がかかってしまう。
そこで、エネルギーサブトラクション処理に用いるフレーム画像数をk枚に制限することにより、動態画像全体に対する人工物認識処理の処理速度を速めることができ、当該フレーム画像を撮影してから、動態画像全体に人工物減弱処理を適用し、適用後の動態画像を、表示もしくは動態解析処理に入力するまでの時間間隔を短縮することができるとともに、動態画像の最初もしくは最後のk枚のみ放射線のエネルギーを切り替えるために所望のフレームレートより低フレームレートで撮影し、残りのフレームに対しては所望のフレームレートで撮影することが可能となる。処理時間、フレームレートが十分である場合には、エネルギーサブトラクション処理を用いた人工物認識処理を動態画像の全フレーム画像に対して適用しても良い。
ステップS113以降の処理は、第1の実施形態と同様であるので説明を援用する。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、完全な人工物認識処理は一部のフレーム画像に対してのみ行い、他のフレーム画像に対しては簡易な人工物認識処理を行うため、処理演算量を減らし、高速で処理することが可能となる。
なお、第2の実施形態においては、エネルギーサブトラクション処理を用いた人工物認識処理を一連のフレーム画像の一部を用いて行い、残りのフレーム画像に対しては、既に行われた人工物認識処理により認識された人工物領域を参照し、その人工物領域の境界部分の周辺数画素でのみ、人工物の空間的なエッジ(勾配)を探索して人工物のエッジを抽出することにより人工物を認識する簡易な人工物抽出処理を行うこととしたが、エネルギーサブトラクション処理を用いた人工物認識処理の代わりに、他の人工物認識処理、例えば、第1の実施形態で説明した人工物認識処理を行うこととしてもよい。
また、上述のエネルギーサブトラクション処理により軟部組織のみを抽出した画像を図4のステップS13の動態解析の入力画像としてもよい。エネルギーサブトラクション処理によって軟部組織のみを抽出した画像では、人工物の画像信号成分が減弱されているため、動態解析を精度良く行うことが可能となる。ただし、人工物に依っては、軟部組織との線減弱係数のエネルギー特性に大きな差異がない場合も多く、このとき、エネルギーサブトラクション処理によって軟部組織のみを抽出した画像には、人工物の画像信号成分が減弱しきれず、残存する場合がある。この場合は、一部のフレーム画像に対してのみ行う完全な人工物認識処理では、まず前述のように、エネルギーサブトラクション処理によって減弱の対象とする人工物毎に人工物強調画像を得、次に人工物毎の人工物強調画像に対して、第1の実施形態の図5のステップS112の処理で説明した人工物認識処理等により、エッジ強調の生成、直線及び曲線の検出等の処理を行って、人工物毎に人工物領域を認識する。他のフレーム画像に対しては、完全な人工物認識処理で認識した人工物毎の人工物領域をもとにして、人工物毎に簡易な人工物認識処理を行い、各フレーム画像に対して、人工物毎の人工物領域を認識する。そして、元の各フレーム画像に対して、第1の実施形態の図5のステップS113、S114の処理で説明した人工物領域の濃度プロファイルを生成、人工物領域の画像信号成分を減弱する処理を、人工物毎に施し、対象とする全ての人工物の画像信号成分を減弱した画像を取得する。このようにすることで、対象とする人工物の画像信号成分を精度良く減弱した画像を生成することができ、動態画像の解析結果に基づく診断精度を向上させることが可能となる。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態における動態解析システム100の構成は、第1の実施形態において図1、2を用いて説明したものと略同様であるが、第3の実施形態において、動態解析システム100は、更に、トモシンセシス撮影機能を備えている。
即ち、放射線発生装置1は、放射線源11を被写体Hの体軸方向に移動させる移動機構を備え、トモシンセシス撮影時には、放射線発生装置1はFPDカセッテ4に対して放射線源11を移動させながら所定回数の放射線照射を行い、FPDカセッテ4は、所定回数の画像取得を行い、コンソール2に送信する。なお、放射線発生装置1は、放射線源11及び被写体Hの移動によるボケ(モーションアーチファクト)を抑制するため、放射線源11からパルス照射で放射線を照射することが好ましいが、放射線源11から連続照射で放射線を途切れなく継続して照射し、その間にFPDカセッテ4が所定回数の画像の取得処理を行うように構成することも可能である。
コンソール2においては、放射線照射条件として、動態撮影時の条件の他、トモシンセシス撮影時の放射線照射条件を設定することが可能である。胸部の動態撮影が呼吸状態下で行われる撮影であるのに対し、胸部のトモシンセシス撮影は、息止め状態で撮影角度を変えて複数回の胸部の撮影を行う。そのため、動態撮影の前又は後に、操作者が操作部23によりコンソール2にトモシンセシス撮影の条件設定を行い、撮影を行う。
トモシンセシス撮影により取得された投影画像群は、コンソール2において制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により再構成処理され、複数の断層面(スライス面)の画像(断層画像)が生成される。そして、この複数スライス面の断層画像が、人工物認識処理のステップS112で動態撮影により得られた各フレーム画像での人工物領域の認識を行う際に利用される。ここで、トモシンセシス撮影で得られる断層画像は、被写体Hの放射線照射方向(z方向)の複数の異なる位置におけるz方向と直交する面(スライス)での断面像である。
トモシンセシス撮影で得られる断層画像を用いた人工物認識処理では、例えば、まず、前肋骨、後肋骨、鎖骨、椎骨を含む、被写体Hの体表に位置する領域のスライス面の断層画像を省いて、残りの全スライスの対応する画素の画素値を加算(積算)することで、骨部を除去した胸部画像を得る。この骨部を除去した胸部画像は、その前後で撮影される動態画像の一連のフレーム画像に対して、トモシンセシス撮影した息止め状態での呼吸位相と同じ呼吸位相のフレーム画像に対応させることができる。この骨部を除去した胸部画像に対して、第1の実施形態で説明した人工物認識を行う。即ち、人工物に対応する周波数強調処理によるエッジ強調、エッジ検出、直線及び曲線の検出を行って、人工物領域を認識する。断層画像から生成した上記胸部画像は肋骨が除去されているため、第1の実施形態に比べ、人工物の認識精度が高くなる。
次いで、動態撮影により得られた各フレーム画像に対して、上述の断層画像に基づいて作成した胸部画像に基づいて第2の実施形態で説明した簡易な人工物認識処理を実行することで、各フレーム画像の人工物領域を認識する。ここで、断層画像により得られる胸部画像における肺野のサイズは、動態画像の何れかのフレーム画像と一致する。そこで、まず、断層画像により得られる胸部画像と肺野のサイズが一致するフレーム画像を選択し、このフレーム画像に対して上記胸部画像で認識された人工物領域に基づく簡易な人工物認識処理を行う。そして、順次隣のフレーム画像に簡易な人工物認識処理を行っていくことで、各フレーム画像に人工物認識処理を行う。これにより、処理演算量を減らし、高速で処理することが可能となる。
ステップS113以降の処理は、第1の実施形態と同様であるので説明を援用する。
第3の実施形態によれば、骨部を除去した画像に基づいて人工物認識処理を行い、認識した人工物領域における人工物による画像信号成分の減弱を行うので、精度良く人工物の減弱を行うことができる。また、完全な人工物認識処理は一枚の胸部画像のみに行い、他のフレーム画像に対しては簡易な人工物認識処理を行うため、処理演算量を減らし、高速で処理することが可能となる。本実施形態では、同じ被写体の同じ検査対象部位に、動態撮影とトモシンセシス撮影の両方の撮影を行うため、解析前の動態画像、及び、動態画像に対する解析結果の画像、及び、トモシンセシス撮影画像を再構成処理して得た複数の断層面の画像を、並列に表示もしくは、このうちの2種の画像を、表示部24の同一位置にて任意のタイミングで切り替え可能に表示、もしくは、透過率を変えて重ね合わせて表示することが好ましい。このような表示により、動きに基づく機能情報と形態情報を同時に見比べながら診断することができるため、疾患部の状態をより正確に把握することができ、診断精度を向上させることが可能となる。並列表示及び切り替え表示では、例えばフレーム間差分画像等の解析結果を動画像として表示し、さらにトモシンセシスによる複数の断層面の画像を動画的に表示してもよい。また、透過率を変えて重ね合わせた表示においては、例えばフレーム間差分画像等の解析結果から抽出した最も局所的な動きを顕著に反映した1画像に対してトモシンセシスによる複数の断層面の画像を重ね合わせて動画的に表示してもよいし、もしくは反対に、トモシンセシスによる複数の断層面の画像から抽出した最も形態的特徴を示した1画像に対してフレーム間差分画像等の解析結果を重ね合わせて動画像として表示してもよい。これにより、検査対象部位内の同一位置における機能情報と形態情報の比較が容易に行えるようになり、疾患部の状態をより正確に把握することができる。さらには、トモシンセシスによる複数の断面像の画像に対して、癌等の診断支援に使用されるCAD処理を適用した結果と、フレーム間差分値を色で示した画像等の動態画像に対する解析結果を並列に表示もしくは、表示部24の同一位置にて任意のタイミングで切り替え可能に表示、もしくは、透過率を変えて重ね合わせて表示することとしてもよい。
また、動態撮影、トモシンセシス撮影ともに、放射線源11から放射状に照射される放射線の中心点における放射線の照射方向と、FPDカセッテ4の画像化領域の中心点から延ばした、FPDカセッテ4の法線とが一致するように、アライメントすることが好ましい。しかし、回診用システムでは、FPDカセッテ4と放射線発生装置1が分離した構成であるため、ユーザーが正確にこのようなアライメントにすることは難しく、正確なアライメントには時間を要する。そこで、例えばFPDカセッテ4内の内部、及び、放射線源11の照射口付近のそれぞれに、少なくとも3個以上の3次元磁気センサーを搭載する等により、回診用システムが、FPDカセッテ4の位置、水平面に対する角度、及び、放射線源11の照射口の位置、放射線照射方向を検知可能とし、放射線源11から放射状に照射される放射線の中心点における放射線の照射方向と、FPDカセッテ4の画像化領域の中心点から延ばした、FPDカセッテ4の法線とが一致するように、放射線発生装置1に搭載された図示しない駆動機構によって、放射線発生装置1の位置及び向き、放射線源11の位置及び向きが移動及び変更されるようにすることが好ましい。さらには、放射線発生装置1が、放射線源11の照射口に、図示しない放射線の照射野を絞るための絞り部を備え、さらに放射線の照射野を変更する駆動機構を備え、FPDカセッテ4の画像化領域に略一致するよう放射線の照射野を変更する構成としてもよい。もしくは、前記検知したFPDカセッテ4の位置、水平面に対する角度、及び、放射線源11の照射口の位置、放射線照射方向をコンソール2の表示部24に表示し、どの向きにどの程度、放射線発生装置1の位置及び向き、放射線源11の位置及び向きを移動及び変更すべきかをユーザーが識別可能なようにしてもよい。さらには、放射線源11から放射状に照射される放射線の中心点における放射線の照射方向と、FPDカセッテ4の画像化領域の中心点から延ばした、FPDカセッテ4の法線とが略一致したか否かを判定し、コンソール2の表示部24に表示するようにしてもよい。
このようにすることで、ユーザーがFPDカセッテ4とを放射線源11の正確なアライメントに要する時間を短縮できるとともに、正確にアライメントできることで被写体Hへの無駄な被曝、画像データの画質の劣化も抑えることができる。
また、臥位の被写体Hをトモシンセシス撮影する場合、一般的には、FPDカセッテ4が水平に置かれていない場合は、FPDカセッテ4に対して正確なアライメントで放射線源11を移動させるには、放射線発生装置1に複雑な駆動機構が必要となる。そこで放射線発生装置1のトモシンセシス撮影における放射線源11の駆動機構を簡易化するために、前述の3次元磁気センサー等により、FPDカセッテ4が水平面に対してどの程度傾いているかを検知し、FPDカセッテ4が略水平に置かれているか否かを判定し、コンソール2の表示部24に表示するようにしてもよい。また、FPDカセッテ4が水平面に対してどの程度傾いているかの角度は、被写体Hの体位を示す指標でもあるため、検知したFPDカセッテ4が水平面に対してどの程度傾いているかの角度に応じて、動態画像に対する解析処理や、トモシンセシス撮影画像に対する再構成処理のパラメーター等を変更してもよい。
また、トモシンセシス撮影においては、z方向において、アイソセンターC、すなわち、トモシンセシス撮影における放射線源11の移動時の回転中心(図7(b)参照)付近に対する断層面の画像が、最もアーチファクトが少なくなる。そこで、トモシンセシス撮影時に、被写体Hの検査対象部位の最も見たい部分がアイソセンターCに位置するようユーザーがポジショニング可能なように、図7(a)に示すように、放射線発生装置1から被写体Hに対して、アイソセンターCの位置を例えばLEDレーザービームLBを照射し、光を投影させる等により、図7(c)にCPで示すように、ユーザーに識別可能にすることが好ましい。これにより、ユーザーは、撮影時に、被写体Hの検査対象部位の最も見たい部分をアイソセンターC付近となるようにポジショニングすることが容易に行えるようになる。
また、トモシンセシス撮影画像を再構成処理して複数の断層面の画像を生成する範囲が、ユーザーが所望とする範囲と異なっている場合、見たい部分の断層面の画像が得られない、もしくは、余計な断層面の画像が生成され、無断に再構成処理時間がかかるとともに、データ容量が増大し、無断に記憶容量を消費することとなる。そこで、トモシンセシス撮影時に、予め再構成処理によって複数の断層面の画像が生成される範囲がユーザーの所望の範囲となるようユーザーがポジショニングまたは再構成処理パラメーターを変更することが可能なように、図7(a)に示すように、予め放射線発生装置1から被写体Hの再構成処理によって複数の断層面の画像が生成される範囲に対し、例えばLEDレーザービームLBを照射し、光を投影させる等により、図7(c)にRで示すように、ユーザーに識別可能にすることが好ましい。これにより、ユーザーは、撮影時に、被写体Hの検査対象部位の見たい範囲のみの断層面の画像が生成されるように、ポジショニングまたは再構成処理パラメーターを変更することが可能となり、検査の効率を上げることができる。
ここで、図7(a)は、放射線発生装置1により、被写体HのアイソセンターCに対応する位置及び被写体Hの再構成処理によって複数の断層面の画像が生成される範囲RにレーザービームLBを照射する様子を上面から見た図である。図7(b)は、(a)を放射線発生装置1の反対側の側面から見たときの図であり、被写体H、放射線発生装置1、FPDの関係も示されている。図7(c)は、(a)を放射線発生装置1側から見た被写体Hの側面を示す図である。
また、放射線源11の照射口付近に、照射口から被写体Hの表面までの距離を非接触で計測する、例えば、超音波測距センサーや赤外線発光素子と受光素子で構成され、発光素子から出た光の反射光を受光素子で検出し、評価・演算することで、距離に換算する赤外線センサー等を設け、コンソール2は、センサーで計測した放射線照射口から被写体Hの表面までの距離(FSD: Focal spot to Skin Distance)と、放射線照射制御部12へ送信する放射線照射条件に基づき、被写体Hの表面における線量率もしくは入射線量を推定する機能を搭載することが好ましい。これらの線量率もしくは入射線量を撮影した画像データに付帯させて保存することで、被写体Hがどの程度被曝したかの線量管理を行うことが可能となる。さらに、コンソール2は、算出した被写体Hの表面における線量率もしくは入射線量の推定値が所定閾値以上の場合に、放射線発生装置1からの放射線照射を禁止するよう制御させることにより、例えば被写体Hと放射線照射口が近付き過ぎて、被写体Hに所定以上の線量率もしくは入射線量の放射線が照射されてしまうことを防ぐことができる。
また、コンソール2は、前述の放射線源11の照射口並びにFPDカセッテ4に搭載した3次元磁気センサー等によって検出したFPDカセッテ4の位置、及び、放射線源11の照射口の位置に基づき、放射線照射口からFPDカセッテ4までの距離(SID: Source to Image Distance)を計測し、さらには、放射線源11の照射口に供えられた図示しない放射線の照射野を絞るための絞り部から照射野サイズを検出し、前述のFSD、放射線照射制御部12へ送信する放射線照射条件、及び、計測したSID、検出した照射野サイズから、NDD法等の計算式を用いて、入射表面線量を推定する機能を搭載することが好ましい。さらに、コンソール2は、前述のように計測したSIDからFSDを引き算することで、被写体Hの体厚情報を算出し、コンソール2は、算出した体厚情報に基づき、放射線照射制御部12へ送信する放射線照射条件を算出することとしてもよい。これにより、被写体Hの体厚に適した放射線照射条件で、放射線を照射することが可能となり、線量不足による画質の劣化、もしくは、線量過多による被写体Hへの無駄被曝増大を抑えることが可能となる。
また、コンソール2は、前述のセンサー等により計測したSID、FSD、放射線照射条件を撮影した画像データに付帯させて保存するようにし、被写体Hが、本回診システムにて過去に撮影した経験があり、コンソール2上の撮影した画像データが保持されている場合は、過去に撮影した画像データに付帯したSID、FSD、放射線照射条件を読み出し、放射線照射制御部12へ読み出した放射線照射条件を送信するとともに、読み出したSID、FSDと一致するよう、放射線発生装置1に搭載された図示しない駆動機構によって、放射線発生装置1の位置及び向き、放射線源11の位置及び向きが移動及び変更されるようにすることが好ましい。これにより、ユーザーは過去に撮影したアライメント及び放射線照射条件を正確に再現でき、過去に撮影した画像との比較が容易に行えるようになり、より過去画像と比較しやすい動態画像を得ることが可能となる。
<第4の実施形態>
第1〜第3の実施形態においては、動態画像の診断精度向上の観点から、動態画像において、動態の診断の妨げとなる人工物の画像信号成分を減弱し、人工物の画像信号成分が減弱された動態画像を表示し、動態解析に利用する例について説明した。しかし、一方で、人工物が適切に挿入されたのかを確認したいという要望もある。ところが、例えば、心臓ペースメーカーのリードやカテーテル等の人工物は、X線画像上では低コントラストを呈し、人工物減弱処理がされていない動態画像をそのまま表示するだけでは確認が難しい。そこで、第4の実施形態においては、第1〜第3の実施形態での動態画像の表示時に、人工物を強調した画像を作成し、併せて表示する例について説明する。
第4の実施形態の動態解析システムは、第1〜第3の実施形態で説明した動態解析システム100の構成とほぼ同様であるが、更に、静止画撮影(単純X線撮影)も可能である。
コンソール2においては、放射線照射条件として、動態撮影時の条件の他、静止画撮影時の放射線照射条件を設定することが可能である。静止画撮影は、動態撮影の前又は後に、操作者が操作部23によりコンソール2に静止画撮影の条件設定を行い、撮影を行う。
静止画撮影により取得された胸部単純X線画像に対しては、コンソール2において制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により、人工物強調処理が施され、人工物強調画像が生成される。人工物強調処理の手法としては、公知の画像処理技術を用いることができる。例えば、胸部単純X線画像に対し、メディアンフィルタによる平滑化と、ボケマスク処理による鮮鋭化を行い、得られた画像に対して、移動平均法を用いた閾値設定による2値化処理を行う手法(「胸部単純X線画像における心臓ペースメーカリードの描出改善」、日本放射線技術学会雑誌 第63巻 第4号 p420-p427)等を用いることができる。
人工物強調画像は、制御部21により、この胸部単純X線画像の撮影とともに撮影された動態画像に対応付けて記憶部22に記憶され、表示部24に表示される。例えば、第1〜第3の実施形態におけるステップS12において、人工物減弱後(又は、人工物減弱前後)の動態画像を表示する際に併せて表示することとしてもよいし、表示部24に人工物強調画像の表示を指示するための操作ボタン等を表示しておき、操作部23による操作ボタンの操作に応じて人工物強調画像を表示することとしてもよい。
このように、第4の実施形態においては、人工物を減弱した動態画像を表示することで、手術中、手術後での換気状態を人工物による影響なくユーザーが観察することが可能となるとともに、人工物強調画像を併せて表示することで、人工物が適切に挿入されたかをユーザーが容易に確認することが可能となる。
また、動態撮影のパルス照射時は、ペースメーカー、植込み型除細動器(以降、本願ではペースメーカー等と呼ぶ)に誤動作を及ぼす可能性があるため、ペースメーカー等の使用患者へは、連続照射を用いて撮影する必要がある。そこで、患者情報でペースメーカー等に有りが設定されている場合、もしくは、動態撮影直前の静止画撮影(スカウト撮影)またはパルス照射での動態撮影開始直後の1〜数フレーム画像を解析することで、肺野領域内のペースメーカー等を認識し、ペースメーカー等が有りと認識された場合は、パルス照射での動態撮影を禁止or停止する旨をコンソール2に表示することが好ましい。これにより、ペースメーカー等を使用されている患者撮影時のペースメーカー等の誤動作を回避することができる。パルス照射での動態撮影開始直後の1〜数フレーム画像を解析することにより、ペースメーカー等が有りを認識した場合は、コンソール2から放射線発生装置1に放射線照射を停止する信号を送信し、放射線照射を停止するか、もしくは、連続照射へ切り替える信号を送信し、自動的に同一被曝線量となる連続照射へ切り替える構成としてもよい。
また、放射線発生装置1がパルス照射、及び、連続照射の両方の照射が可能な場合には、被検者の対象部位の動きが比較的遅く、低いフレームレートにて動態撮影し、撮影した動態画像を解析する場合、各フレームにおける動きによるボケが少ないパルス照射が自動的に選択される構成とすることが好ましい。このようにすることで、低いフレームレートの場合でも、各フレームにおいて、動きによるボケが抑えられ、細かい対象物をより鮮明に描出することが可能となる。また、被検者の対象部位の動きが比較的早く、高いフレームレートにて動態撮影する場合は、FPDカセッテ4にて蓄積時間をなくし、読み取りのみを繰り返す制御とするとともに、放射線発生装置1からの放射線照射方法を連続照射とする構成としてもよい。このようにFPDカセッテ4の制御から蓄積時間をなくすことで、蓄積時間を確保したパルス照射時に比べ、より高いフレームレートの実現が可能となる。
以上第1〜第4の実施形態で説明したように、動態解析システム100によれば、コンソール2の制御部21は、放射線発生装置1とFPDカセッテ4の協働により生成された被写体の動態を示す複数のフレーム画像から人工物による画像信号成分を減弱処理し、減弱処理後の複数のフレーム画像に基づいて、被写体の動態を解析する。
従って、動態画像の解析結果の差異が患者の状態の変化を表しているのか、それとも、人工物の有無による差異を表しているのかを判断しづらいということがなくなり、動態画像の解析結果に基づく診断精度を向上させることが可能となる。
なお、上記実施形態及び変形例における記述内容は、本発明に係る動態解析システムの好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、動態解析システムが回診用のシステムである場合を例にとり説明したが、本発明は、撮影室で撮影を行い、得られた動態画像に解析を行う動態解析システムにおいても適用可能である。
また、上記実施形態においては、コンソール2にて静止画撮影用と動態撮影用の放射線照射条件を設定することとしたが、放射線発生装置1の放射線照射制御部12に静止画撮影用の放射線照射条件と動態撮影用の放射線照射条件を予め設定可能とし、さらに、曝射スイッチ13には、静止画撮影用と動態撮影用にそれぞれ別々のスイッチを設け、静止画撮影用のスイッチが押下された場合には静止画撮影用の放射線照射条件で曝射され、動態撮影用のスイッチが押下された場合には動態撮影用の放射線照射条件で曝射されるようにすることが好ましい。このような構成とすることで、静止画と動態撮影を素早く切り替えられるとともに、静止画撮影用と動態撮影用の放射線照射条件を間違えて設定して誤曝射するミスの発生を低減することができる。
また、上記実施形態においては、放射線照射条件が記憶部22から読み出されて通信部25を介して放射線照射制御部12に設定されることとしたが、放射線発生装置1が図示しない記憶部、表示部、操作部を持ち、放射線発生装置1の記憶部に記憶された放射線照射条件が、放射線発生装置1の表示部に表示され、放射線発生装置1の操作部にて選択/修正された後、放射線照射制御部12に設定されることとしてもよい。このとき、設定された放射線照射条件は放射線発生装置1からコンソール2へ通信部25を介して送信されることとしてもよい。
もしくは、設定された放射線照射条件は通信部25を介してやりとりされず、FPDカセッテ4が、放射線発生装置1から照射された放射線が静止画撮影か動態撮影のどちらであるかを、放射線照射開始直後の線量率もしくはフレーム画像の画素値に基づいて検知し、FPDカセッテ4が、検知した静止画撮影か動態撮影かの情報に応じて放射線照射開始直後に自動的にフレームレート、1撮影当たりの撮影フレーム画像数、画像サイズ(マトリックスサイズ)、感度(ゲイン)、ビニング数、放射線照射待ち受け時間等の画像読取条件を変更し、変更した画像読取条件でフレーム画像を取得する構成としてもよい。このとき、例えば、静止画撮影と検知した場合は、小さめのゲインで、ビニングなし、0.5〜数秒の放射線照射待ち受け時間で1回だけ読み出しを行うよう画像読取条件を設定する。また、動態撮影と検知した場合は、大きめのゲインで、数画素から十数画素のビニング、さらには0〜50ミリ秒の放射線照射待ち受け時間に設定し、1フレーム画像を読み出し後も、繰り返し放射線照射待ち受け時間へと移行して、繰り返し放射線照射待ち受けと読み出しを行うように画像読取条件を変更する。もしくは、FPDカセッテ4が、検知した静止画撮影か動態撮影かの情報と、現在設定された画像読取条件がとミスマッチする場合は、その旨をコンソール2に通知し、コンソール2上で放射線照射条件と画像読取条件がミスマッチのため撮影を中止する旨を放射線照射開始直後に表示することとしてもよい。
通常、静止画撮影と動態撮影では、線量率が異なり、動態撮影用の線量率は、静止画撮影用の線量率に比べ十分小さいため、FPDカセッテ4は、放射線照射開始直後に、照射された放射線の線量率もしくはフレーム画像の画素値をもとに、静止画撮影か動態撮影かを識別することが可能である。また、FPDカセッテ4は、放射線照射開始直後に照射された放射線の線量率の立ち上がり特性(線量率の変化速度)を検知し、静止画撮影か動態撮影かを識別することも可能である。線量率の検知手段としては、例えば、FPDカセッテ4の内部のガラス基板背面に、照射された放射線量に比例した出力値を出力する露出センサーを配備し、所定時間間隔、例えば数μ秒〜数百μ秒間隔でセンサー出力値を読み出す。そして、所定時間間隔におけるセンサー出力値の変化量から、線量率を算出する。また、所定時間間隔で算出した線量率から、線量率の変化速度を算出することも可能である。まずは、得られたセンサー出力値が所定閾値を超えたことを検知することで、所定放射線量が照射されたことを検知する。次に、算出された線量率、もしくは、線量率の変化速度をもとに、例えば、所定閾値以上か否かを判定することで、静止画撮影か動態撮影かを判別する。
また、FPDカセッテ4は、線量率の値、並びに、線量率が継続して所定閾値以上となっている時間間隔、または、線量率が所定閾値からほぼ0となる時間間隔に基づいて、静止画撮影か動態撮影か、さらには、動態撮影がパルス照射か連続照射かを識別し、それに応じた画像読取条件を設定することとしてもよい。例えば、まず線量率が所定閾値以下なら動態撮影の連続照射と判断し、次に、線量率が所定閾値以上、もしくは、線量率が継続して所定閾値以上となっている時間間隔が所定時間以上、もしくは、線量率と線量率が継続して所定閾値以上となっている時間間隔の積が所定閾値以上なら、静止画撮影と判断し、これ以外を動態撮影のパルス照射と判断する。また、ここでの所定閾値は、体格、年齢、性別等の患者情報に応じて変化させることが好ましい。例えば、体格がやせ型や小児の場合に、放射線発生装置1から照射(出力)される線量率に変化がないならば、閾値を大きい値に設定する。また、線量率が所定閾値からほぼ0となるタイミングを検知し、静止画撮影及び動態撮影のパルス照射における放射線1パルスの照射終了タイミングを検知することも可能である。フレーム画像の画素値から検知する場合は、例えば、FPDカセッテ4は放射線照射前から所定フレームレートでフレーム画像を収集し続け、得られたフレーム画像の全部もしくは一部画素値の代表値が所定閾値を超えたことを検知することで、所定放射線量が照射されたことを検知し、さらに同代表値から線量率を推定し、静止画撮影か動態撮影かを判別する。
ここでは、FPDカセッテ4が静止画撮影か動態撮影かを識別することとしたが、放射線照射開始直後にFPDカセッテ4から通信部25を介してコンソール2に線量率もしくは線量率の変化速度もしくはフレーム画像もしくはフレーム画像の画素値の代表値が送信され、コンソール2にて静止画撮影か動態撮影かを識別し、識別した静止画撮影か動態撮影かの情報に応じた画像読取条件を、コンソール2が通信部25を介してFPDカセッテ4に送信し、設定することとしてもよい。このような構成とすることで、放射線照射条件が放射線発生装置1とコンソール2もしくはFPDカセッテ4の間で通信されなくとも、放射線発生装置1が照射した放射線に基づき、放射線照射開始直後にコンソール2もしくはFPDカセッテ4が、静止画撮影か動態撮影かを識別し、FPDカセッテ4に適切な画像読取条件を設定してフレーム画像を収集するため、放射線発生装置1と、コンソール2もしくはFPDカセッテ4の製造会社が異なる等の理由で通信ができない場合においても放射線発生装置1にて放射線照射条件を変更するだけで、FPDカセッテ4は静止画撮影と動態撮影の切り替えをすばやくかつ手間なく行うことができる。もしくは、コンソール2上で放射線照射条件と画像読取条件がミスマッチのために撮影を中止する旨が表示され、患者が無駄に被曝することを防止することができる。
また、アクセスポイント3は、例えば3G回線や4G回線、衛星通信回線と通信接続し、これらの無線通信回線を経由して、携帯電話網、インターネットに接続する機能を有し、コンソール2の記憶部22に記憶された、画像データ、画像データに基づいて算出された解析結果、被写体Hの患者情報等の情報を、暗号化または/および圧縮して、回診用システムから直接、クラウド上のサーバー、もしくは、遠く離れた場所に位置する病院内のPACS等のサーバーまたは端末に、転送する機能を持たせてもよい。このとき、コンソール2には操作部23または通信部25を介して例えば呼吸数、心拍数、血圧等の被写体Hのバイタル情報または酸素飽和度、呼吸フロー、心電図等の被写体Hに対する別検査の測定結果も入力可能とし、コンソール2に入力されたバイタル情報または別検査の測定結果も、画像データに付帯して、転送する機能を持たせてもよい。このように、回診用システムから、患者情報、バイタル情報、別検査の測定結果、及び、解析結果を付帯した画像データを、直接、遠く離れた場所に位置する病院等の施設から閲覧できるよう送信する構成とすることで、本回診用システムが災害や救急等の現場で使用され、本回診用システムにて画像の撮影、撮影した画像データに基づく解析結果算出、バイタル情報または別検査の測定結果の取得及び入力を行っても、これらのデータや情報に基づき診断が行える適切な医師が現場にいない場合において、遠く離れた場所にいる医師がこれらのデータや情報を閲覧した上で迅速に診断する遠隔診断が可能となり、適切な医師の診断結果のもと被写体Hに現場で治療等の対処を素早く施すことが可能となる。ことのき、迅速性を優先する場合は、無線通信回線の単位時間あたりに通信可能な通信容量に応じて、例えば、通信容量が小さいときは、圧縮率を高めてデータ容量を減らしたり、非可逆圧縮とする等、圧縮方法を変更することが好ましい。
また、上記実施形態においては、アクセスポイント3は回診用のシステムに移動可能なように設置された構成としたが、アクセスポイント3は複数存在する構成としてもよく、このとき、そのうちの一部または全てのアクセスポイントは、病院内に固定的に設置された構成としてもよい。
また、上記実施形態においては、通信部25は、無線LANアダプタ等を備え、アクセスポイント3を介して無線LAN等の通信ネットワークに接続された放射線発生装置1やFPDカセッテ4を始めとする外部機器との間のデータ送受信を制御することとしたが、コンソール2は、一部もしくは全ての外部機器とはアクセスポイント3を介さず、例えば、無線LANのアドホックモードやBluetooth(登録商標)等を用いて、通信部25と外部機器とが直接データ送受信を行う構成としてもよい。これにより、アクセスポイント3の一部もしくは全てを省いた構成とすることができ、より軽量かつ低コストなシステムとすることが可能となる。
また、FPDカセッテ4が収集したフレーム画像を無線もしくは有線のネットワークを経由し、通信部25を介してコンソール2に送信する際、単位時間あたりに通信可能な通信容量に応じて、FPDカセッテ4は、動態画像の撮影中に各フレーム画像を順次取得した都度、各フレーム画像をFPDカセッテ4内の記憶部に一旦記憶し、さらに各フレーム画像に空間的もしくは時間的のうち少なくとも一方に対するデータの間引き処理を行い、間引き後の各フレーム画像データをほぼリアルタイムでコンソール2に送信し、コンソール2はFPDカセッテ4から受信したフレーム画像データを、ほぼリアルタイムで表示部24に表示することとしてもよい。このとき、FPDカセッテ4は、動態画像の一連の撮影終了後に、FPDカセッテ4内の記憶部に記憶された間引き前の各フレーム画像データ、もしくは、各フレーム画像データのうちコンソール2に未送信のデータのみを、コンソール2に送信することとしてもよい。このようにすることで、無線ネットワーク使用時等の単位時間あたりに通信可能な通信容量が少ない場合においても、動態画像の撮影中に、FPDカセッテ4で収集したフレーム画像をほぼリアルタイムで、表示部24に表示させるよう制御することが可能となり、これにより、技師等のユーザーは、表示部24に表示されたフレーム画像から、迅速に撮影の異常状態を把握し、撮影の中断を判断することができ、撮影異常時の患者への無駄な被曝を回避することが可能となる。
また、FPDカセッテ4の読み出し中に、FPDカセッテ4の周囲に置かれた回診用や携帯用の放射線発生装置、もしくは、高周波治療器などの治療装置から発せられる電磁波(環境起因ノイズ)がFPDカセッテ4に印加され、FPDカセッテ4から読み出した画像データに、アーチファクトを生じる場合がある。そこで、FPDカセッテ4もしくはコンソール2には、撮影前もしくは撮影中にFPDカセッテ4の周囲における電磁波並びに電磁波の周波数特性を検知し、検知した周波数特性に基づき画像データ上に発生する例えばスジ等のアーチファクトの空間的パタン(空間的周波数)を推定し、FPDカセッテ4もしくはコンソール2上にて、収集したフレーム画像に対し、推定した空間的パタンのアーチファクトを減衰する画像補正処理を施すことが好ましい。このようなアーチファクト推定および補正処理を搭載することにより、動態画像の解析結果に基づく診断精度を向上させることが可能となる。
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
その他、動態解析システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
100 動態解析システム
1 放射線発生装置
11 放射線源
12 放射線照射制御部
13 曝射スイッチ
2 コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 コネクター
27 バス
3 アクセスポイント
4 FPDカセッテ

Claims (7)

  1. 被写体の動態を撮影し、前記被写体の動態を示す複数のフレーム画像を生成する撮影手段と、
    前記撮影手段により生成された複数のフレーム画像から人工物による画像信号成分を減弱する減弱処理手段と、
    前記減弱処理手段による減弱処理後の複数のフレーム画像に基づいて、前記被写体の動態を解析する解析手段と、
    を備える動態解析システム。
  2. 前記撮影手段により生成された複数のフレーム画像から人工物の領域を認識する認識手段を備え、
    前記減弱処理手段は、前記複数のフレーム画像の前記認識手段により認識された領域の画像信号成分を減弱することにより、人工物による画像信号成分を減弱する請求項1に記載の動態解析システム。
  3. 前記認識手段は、前記複数のフレーム画像から人工物の領域を認識する前に、前記複数のフレーム画像から骨部領域を認識し、前記複数のフレーム画像の前記骨部領域として認識された領域以外の領域から人工物の領域を認識する請求項2に記載の動態解析システム。
  4. 前記認識手段は、前記複数のフレーム画像から人工物の領域を認識した後、前記複数のフレーム画像から骨部領域を認識し、前記人工物の領域と認識された領域のうち前記骨部領域として認識された領域以外の領域を最終的に人工物の領域として認識する請求項2に記載の動態解析システム。
  5. 前記減弱処理手段による減弱処理後の複数のフレーム画像に基づく動態画像を表示する表示手段を備える請求項1〜4の何れか一項に記載の動態解析システム。
  6. 前記表示手段は、前記減弱処理手段による減弱処理後の複数のフレーム画像に基づく動態画像と、前記減弱処理手段による減弱処理を適用する前の複数のフレーム画像に基づく動態画像とを切り替え可能に、又は並べて表示する請求項5に記載の動態解析システム。
  7. 前記解析手段は、更に、前記減弱処理手段による減弱処理を適用する前の複数のフレーム画像に基づいて、前記被写体の動態を解析し、
    前記表示手段は、前記減弱処理手段による減弱処理後の複数のフレーム画像に基づいて前記解析手段により解析した解析結果と、前記減弱処理手段による減弱処理を適用する前の複数のフレーム画像に基づいて前記解析手段により解析した解析結果とを切り替え可能に、又は並べて表示する請求項5又は6に記載の動態解析システム。
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