JP2016203621A - 積層多孔性フィルム、電池用セパレータ、及び電池 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧および長期保存性に優れている点より非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
[1]ポリプロピレン系樹脂(A)を主成分とする多孔層(I層)と、ポリプロピレン系樹脂(A)、無機粒子(B)、及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物(II)よりなる耐熱層(II層)との少なくとも2層を有し、前記ビニル芳香族エラストマー(C)の、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1g/10分以下であることを特徴とする積層多孔性フィルム。
[2]前記樹脂組成物(II)100質量部中に、前記ビニル芳香族エラストマー(C)を1〜30質量部含むことを特徴とする[1]に記載の積層多孔性フィルム。
[3]前記多孔層(I層)がβ晶活性を有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の積層多孔性フィルム。
[4]前記多孔層(I層)にβ晶核剤が含まれていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
[5]延伸フィルムであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
[6]25℃において、JIS P8117(2009年)に準拠して測定された透気度が100秒/100ml以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
[7]1Mの過塩素酸リチウムを含むプロピレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:1(v/v)溶液を含浸させて、25℃で測定した厚さ方向の電気抵抗値が0.7Ω以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の積層多孔性フィルムを用いた電池用セパレータ。
[9][8]に記載の電池用セパレータを用いた電池。
[10][1]〜[7]のいずれかに記載の積層多孔性フィルムの製造方法であって、前記I層を構成するポリプロピレン系樹脂組成物と、前記II層を構成する、ポリプロピレン系樹脂(A)、無機粒子(B)、及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物(II)とを、共押出して無孔膜状物を作製する工程と、当該無孔膜状物を少なくとも一軸方向に延伸して多孔化する工程とを有し、かつ、添加剤を溶媒で除去する工程を含まないことを特徴とする積層多孔性フィルムの製造方法。
1.多孔層(I層)
本発明の積層多孔性フィルムにおいて、多孔層(I層)は、ポリプロピレン系樹脂(A)を主成分として構成される層であり、ポリプロピレン系樹脂(A)を主成分とするポリプロピレン系樹脂組成物(以下「樹脂組成物(I)」と称す場合がある。)により形成される層であり、好ましくはポリプロピレン系樹脂(A)とβ晶核剤(D)を含む樹脂組成物(I)により構成され、β晶活性を有することで、延伸後に均質な多孔性フィルムとされた層である。
なお、ここで主成分とは、多孔層(I層)又は樹脂組成物(I)中の成分として、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上含むことをいう。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(A)としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどαオレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、機械的強度の観点からホモポリプロピレンがより好適に使用される。
アイソタクチックペンタッド分率とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素―炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al.(Macromol.8,687(1975))に準拠する。
ポリプロピレン系樹脂(A)のMw/MnはGPC(ゲルパーエミッションクロマトグラフィー)法によって測定される。
ポリプロピレン系樹脂(A)のMFRはJIS K7210−1(2014年)に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
示差走査型熱量計で積層多孔性フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β晶活性を有すると判断する。
β晶活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばポリプロピレン系樹脂が、エチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
β晶活性度の上限値は特に限定されないが、β晶活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
β晶活性の有無を、特定の熱処理を施した積層多孔性フィルムの広角X線回折測定により得られる回折プロファイルから判断する場合、詳細には、ポリプロピレン系樹脂の結晶融解ピーク温度を超える温度である170〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた積層多孔性フィルムについて広角X線測定を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°〜16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性が有ると判断する。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。広角X線回折を用いたβ晶活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
前述の通り、本発明では微細な多孔質構造を得るために、多孔層(I層)はβ晶活性を有することが好ましく、中でもβ晶核剤(D)を用いることが好ましい。本発明で用いるβ晶核剤(D)としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
多孔層(I層)を形成する樹脂組成物(I)には、その性質を損なわない程度に添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜配合してもよい。またその性質を損なわない程度に他の樹脂を含んでも良く、特にエラストマーの添加により、透気特性の向上を図ることができる。
本発明の積層多孔性フィルムにおいて、耐熱層(II層)は、ポリプロピレン系樹脂(A)と無機粒子(B)と特定のビニル芳香族エラストマー(C)を含む樹脂組成物(以下「樹脂組成物(II)」と称す場合がある。)により形成される層である。耐熱層(II層)及び樹脂組成物(II)は、ポリプロピレン系樹脂(A)と無機粒子(B)とビニル芳香族エラストマー(C)を主成分として合計で50質量%以上、特に70質量%以上、とりわけ90〜100質量%含むことが好ましい。
本発明においては、耐熱層(II層)がポリプロピレン系樹脂(A)を含んでなることが重要である。ポリプロピレン系樹脂(A)を含有することにより、II層が良好な透気性や耐熱性、機械強度、生産性を有するだけでなく、II層が多孔層(I層)と直接接触する場合の層間接着性に優れる。
本発明においては、耐熱層(II層)が無機粒子(B)を含んでなることが重要である。耐熱層(II層)が無機粒子(B)を含有することで、良好な透気性と寸法安定性を有する耐熱層(II層)を形成することができる。
なお、本実施の形態において「無機粒子(B)の平均粒径」は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される。
本発明においては、耐熱層(II層)がビニル芳香族エラストマー(C)を含んでなることが重要である。耐熱層(II層)がビニル芳香族エラストマー(C)を含有することにより、効率的に均一性の高い多孔構造を得ることができ、空孔の形状や孔径を制御し易くなるとともに、透気性やイオン透過性に優れた積層多孔性フィルムを得ることができる。
このような観点から、ビニル芳香族エラストマー(C)のMFRはより好ましくは0.7g/10分以下であり、更にこの好ましくは0.5g/10分以下である。MFRが0.5g/10分以下のビニル芳香族エラストマー(C)を用いることで、延伸時にフィルム中の多孔化をさらに促すことができる。
上記のビニル芳香族エラストマー(C)は、樹脂組成物(II)100質量部に対して、1〜30質量部含まれることが好ましく、より好ましくは10〜20質量部である。ビニル芳香族エラストマー(C)の含有量が、1質量部以上であることによって、延伸による多孔化が生じやすくなり、透気特性の向上が可能となる。一方、ビニル芳香族エラストマー(C)の含有量が、30質量部以下であることによって、延伸に伴う多孔構造の粗大化を防ぎ、機械強度を向上できるため好ましい。また、耐熱層(II層)中に耐熱性の向上に有用な無機粒子(B)を十分に充填することができる。
特に、無機粒子(B)とビニル芳香族エラストマー(C)を同時に含有することにより、各々単独では実現が難しい、均一な多孔性と耐熱性を兼ね備えた積層多孔性フィルムを得ることができる。
耐熱層(II層)を形成する樹脂組成物(II)には、その性質を損なわない程度に添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜配合してもよい。またその性質を損なわない程度に他の樹脂を含んでも良い。
本発明の積層多孔性フィルムは、多孔層(I層)と耐熱層(II層)との少なくとも2層を有するものであればよく、積層多孔性フィルム中の多孔層(I層)と耐熱層(II層)の積層構成に関して、特に制限されるものではない。
また、耐熱層(II層)が少なくとも1層存在することにより、本発明の積層多孔性フィルムを優れた透気特性、耐熱性と良好な電気抵抗値を有するものとすることができる。
さらに、I層とII層を少なくとも1層ずつ有することによって、各々の有する良好な特性や、I層とII層が直接接触している場合の良好な層間接着性が相俟って、本発明の積層多孔性フィルムを、透気特性に優れるだけでなく、製膜時の安定性、生産性に優れ、イオン透過性の向上した電気抵抗値の低いものとすることができる。
また、I層/II層/I層の2種3層構成の場合は、I層/II層/I層=(0.1〜10)/1/(0.1〜10)であることが好ましく、(0.2〜5)/1/(0.2〜5)であることがより好ましく、(0.33〜3)/1/(0.33〜3)であることがさらに好ましく、(0.5〜2)/1/(0.5〜2)であることが特に好ましい。
また、II層/I層/II層の2種3層構成の場合は、II層/I層/II層=(0.1〜10)/1/(0.1〜10)であることが好ましく、(0.2〜5)/1/(0.2〜5)であることがより好ましく、(0.33〜3)/1/(0.33〜3)であることがさらに好ましく、(0.5〜2)/1/(0.5〜2)であることが特に好ましい。
いずれの層構成の場合であっても、積層多孔性フィルムを形成する耐熱層(II層)の厚み比が、このような厚み比であれば、粘度の差によるムラが生じ難いため、製膜安定性及び延伸性に優れる。
次に、本発明の積層多孔性フィルムの製造方法について説明するが、以下の説明は、本発明の積層多孔性フィルムを製造する方法の一例であり、本発明の積層多孔性フィルムはかかる製造方法により製造される積層多孔性フィルムに限定されるものではない。
また、本発明の積層多孔性フィルムの製造方法においては、多孔化するために添加剤を溶媒で除去する工程を含まないことが好ましく、すなわち延伸のみによって多孔化することが好ましい。
積層無孔膜状物の製造方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて樹脂組成物(I)及び(II)をそれぞれ溶融し、Tダイから共押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。また、チューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
押出成形において、押出温度は樹脂組成物(I)及び(II)の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、180〜370℃が好ましく、180〜300℃がより好ましく、180〜240℃が更に好ましい。押出温度を180℃以上とすることで、ポリプロピレン系樹脂(A)が溶融し、その溶融樹脂の粘度が十分に低く、成形性に優れ、生産性が向上するので好ましい。一方、押出温度を370℃以下にすることで、樹脂組成物(I)及び(II)の劣化、ひいては電池用セパレータとなる積層多孔性フィルムの機械的強度の低下を抑制できる。
得られた積層無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。
上記のようにして得られた積層多孔性フィルムは、寸法安定性の改良を目的として熱処理を施すことが好ましい。この際、熱処理温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上とすることで、寸法安定性の効果が期待できる。一方、熱処理温度は好ましくは170℃以下、より好ましくは165℃以下、更に好ましくは160℃以下である。熱処理温度が170℃以下であれば、熱処理によってポリプロピレン系樹脂(A)の融解が起こりにくく、多孔構造を維持できるため好ましい。また、熱処理工程中には、必要に応じて1〜20%の弛緩処理を施しても良い。
熱処理後、均一に冷却して巻き取ることにより、積層多孔性フィルムの捲回体が得られる。
さらに、本発明の積層多孔性フィルムには、本発明を損なわない範囲で必要に応じて熱処理後に、コロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工、更にはミシン目加工などを施すことができる。
5−1.厚み
本発明の積層多孔性フィルムの厚みは、100μm未満が好ましく、50μm未満がより好ましく、40μm未満がさらに好ましい。一方で下限として、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。厚みが100μm未満であれば、積層多孔性フィルムの電気抵抗を小さくできるため、蓄電デバイスの性能を十分に確保することができる。また、厚みが3μm以上あれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば大きな電圧がかかった場合にも短絡しにくく安全性に優れる。
本発明の積層多孔性フィルムは、25℃において、JIS P8117(2009年)に準拠して測定された透気度が100秒/100ml以下であることが好ましい。透気度が100秒/100ml以下の積層多孔性フィルムであれば、優れた電気抵抗値を有することができる。積層多孔性フィルムの透気度は、より好ましくは90秒/100ml以下、更に好ましくは80秒/100ml以下である。
積層多孔性フィルムの透気度は、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
本発明の積層多孔性フィルムは、1Mの過塩素酸リチウムを含むプロピレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:1(v/v)溶液を含浸させて、25℃で測定した厚さ方向の電気抵抗値が0.7Ω以下であることが好ましい。厚さ方向の電気抵抗値は、0.65Ω以下であることがさらに好ましく、0.6Ω以下であることが特に好ましい。なお、厚さ方向の電気抵抗値の下限は特に限定されないが、材料選択上の制約から通常0.01Ω以上である。
厚さ方向の電気抵抗値を0.7Ω以下とすることによって、本発明の積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた電池の高出力化における大電流放電を得やすく、電池性能に優れたものとすることができる。このような低電気抵抗値を積層多孔性フィルムにおいて実現するためには、多孔構造を制御し、孔同士の連通性を高め、イオンの移動をしやすくする必要があり、積層多孔性フィルムの前記透気特性に電気抵抗は大きく依存する。すなわち、上記透気度の値が低いほど、電気抵抗値も低くなる関係にある。但し、透気度と電気抵抗値は必ずしも比例関係にある訳ではない。
積層多孔性フィルムの電気抵抗値は、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
次に、本発明の積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして収容しているリチウムイオン二次電池について図1を参照して説明する。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
<示差走査型熱量測定(DSC)>
積層多孔性フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25℃から240℃まで走査速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃〜25℃まで走査速度10℃/分で降温後1分間保持し、次に25℃から240℃まで走査速度10℃/分で再昇温させた。この再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145〜160℃にピークが検出されるか否かによりβ晶活性の有無を以下の基準にて評価した。
○:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β晶活性あり)
×:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、β晶活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
図2(A)に示すように、積層多孔性フィルムを縦60mm、横60mm角に切り出したサンプル32を、中央部に40mmφの円形の孔が形成された2枚のアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚さ1mm)31,31の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップ33で固定した。
積層多孔性フィルムのサンプル32を2枚のアルミ板31,31間に拘束した状態で、設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点で取り出し、サンプル32を2枚のアルミ板31,31間に拘束した状態のまま、25℃の雰囲気下で5分間冷却したものについて、以下の測定条件で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。図2(B)中、34はフィルム縦方向を示し、35はフィルム横方向を示す。
・広角X線回折測定装置:株式会社マックサイエンス製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン
2θ範囲:5°〜25°
走査間隔:0.05°
走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来するピークより、β晶活性の有無を以下のように評価した。
○:2θ=16.0〜16.5°の範囲にピークが検出された(β晶活性あり)
×:2θ=16.0〜16.5°の範囲にピークが検出されなかった(β晶活性なし)
積層多孔性フィルムの厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、積層多孔性フィルムの面内を無作為に10箇所測定し、その平均値として算出した。
積層多孔性フィルムの透気度は、25℃の空気雰囲気下にて、JIS P8117(2009年)に準拠して測定した。測定機器として、デジタル型王研式透気度専用機(旭精工社製)を用いた。
25℃の空気雰囲気下にて、積層多孔性フィルムを3.5cm×3.5cm角に切り、ガラスシャーレに入れ、電解液として、1Mの過塩素酸リチウムを含むプロピレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:1(v/v)溶液(キシダ化学社製)を積層多孔性フィルムが浸る程度入れ、電解液を浸み込ませた。その後、積層多孔性フィルムを取り出し、余分な電解液を拭い、φ60mmのステンレス製シャーレの中央に置いた。この上に、底面がφ30mmの円柱状の100gステンレス製分銅をゆっくり載せ、シャーレと分銅に端子を接続し、HIOKI LCR HiTESTER(日置電機社製、型番3522−50)を用いて電気抵抗値を測定した。得られた電気抵抗値について、以下のように評価した。
○:電気抵抗値が0.7Ω以下である。
×:電気抵抗値が0.7Ωを超える。
<ポリプロピレン系樹脂(A)>
・A−1;ポリプロピレン(ノバテックFY6HA、日本ポリプロ社製、MFR:2.4g/10分、Mw/Mn=3.2)
・B−1;アルミナ(LS235C、日本軽金属社製、平均粒径0.53μm、比表面積6.4m2/g)
・B−2;アルミナ(LS710A、日本軽金属社製、平均粒径0.50μm、比表面積6.9m2/g)
・C−1;スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(グレード名;SEPTON1001、スチレン含有量:35質量%、MFR:0.1g/10分、クラレ社製)
・C−2;スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(グレード名:SEPTON2007、スチレン含有量:30質量%、MFR:2.7g/10分、クラレ社製)
・D−1;3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン
ポリプロピレン系樹脂(A−1)100質量部に対して、β晶核剤(D−1)を表1に示す配合部数にて配合し、2軸押出機に投入し、設定温度240℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂からなる多孔層(I層)を形成する樹脂組成物(I)のペレット(以下「ペレット(I)」と称す。)を作製した。同様の方法で、ポリプロピレン系樹脂(A−1)、無機粒子(B−1)及びビニル芳香族エラストマー(C−1)を表1に示す配合部数にて配合し、耐熱層(II層)を形成する樹脂組成物(II)のペレット(以下「ペレット(II)」と称す。)を作製した。
実施例1と同様の方法にて、表1に示す配合部数にて配合し、多孔層(I層)を形成するペレット(I)と、耐熱層(II層)を形成するペレット(II)を作製した。
作製したペレット(I)及び(II)より、実施例1と同様の方法にて成形を行い、積層無孔膜状物を得た。その後、積層無孔膜状物は実施例1と同様の方法にて、縦延伸、横延伸、熱処理を行った。得られた積層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
実施例1と同様の方法にて、表1に示す配合部数にて配合し、多孔層(I層)を形成するペレット(I)と、耐熱層(II層)を形成するペレット(II)を作製した。
作製したペレット(I)及び(II)より、中層側押出機にペレット(I)を、表裏層側押出機にペレット(II)を用いて成形を行い、積層無孔膜状物を得た。その後、積層無孔膜状物は実施例1と同様の方法にて、縦延伸、横延伸、熱処理を行った。ただし、実施例3及び4では、横延伸倍率を3.0倍とした。得られた積層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
実施例1と同様の方法にて、表1に示す配合部数にて配合し、多孔層(I層)を形成するペレット(I)を作製した。
作製したペレット(I)を実施例1と同様の方法で、表裏層側押出機、及び中層側押出機に用いて成形を行い、単層無孔膜状物を得た。その後、単層無孔膜状物は実施例1と同様の方法にて、縦延伸、横延伸、熱処理を行った。得られた単層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
実施例1と同様の方法にて、表1に示す配合部数にて配合し、多孔層(I層)を形成するペレット(I)と、耐熱層(II層)を形成する、ポリプロピレン系樹脂(A−1)と無機粒子(B−1)を含み、ビニル芳香族エラストマー(C−1)を含まないペレット(II)を作製した。
作製したペレット(I)及び(II)より、実施例1と同様の方法にて成形を行い、積層無孔膜状物を得た。その後、積層無孔膜状物は実施例1と同様の方法にて、縦延伸、横延伸、熱処理を行った。得られた積層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
実施例1と同様の方法にて、表1に示す配合部数にて配合し、多孔層(I層)を形成するペレット(I)と、ポリプロピレン系樹脂(A−1)と無機粒子(B−1)を含み、ビニル芳香族エラストマー(C−1)を含まない耐熱層(II層)を形成するペレット(II)を作製した。
作製したペレット(I)及び(II)より、中層側押出機にペレット(I)を、表裏層側押出機にペレット(II)を用いて成形を行い、積層無孔膜状物を得た。その後、積層無孔膜状物は実施例1と同様の方法にて、縦延伸、横延伸、熱処理を行った。得られた積層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
実施例1と同様の方法にて、表1に示す配合部数にて配合し、多孔層(I層)を形成するペレット(I)と、耐熱層(II層)を形成する、ポリプロピレン系樹脂(A−1)と無機粒子(B−1)とビニル芳香族エラストマー(C−2)とを含むペレット(II)を作製した。
作製したペレット(I)及び(II)より、実施例1と同様の方法にて成形を行い、積層無孔膜状物を得た。その後、積層無孔膜状物は実施例1と同様の方法にて、縦延伸、横延伸、熱処理を行った。得られた積層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
20 リチウムイオン二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
Claims (10)
- ポリプロピレン系樹脂(A)を主成分とする多孔層(I層)と、ポリプロピレン系樹脂(A)、無機粒子(B)、及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物(II)よりなる耐熱層(II層)との少なくとも2層を有し、前記ビニル芳香族エラストマー(C)の、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1g/10分以下であることを特徴とする積層多孔性フィルム。
- 前記樹脂組成物(II)100質量部中に、前記ビニル芳香族エラストマー(C)を1〜30質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の積層多孔性フィルム。
- 前記多孔層(I層)がβ晶活性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層多孔性フィルム。
- 前記多孔層(I層)にβ晶核剤が含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルム。
- 延伸フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルム。
- 25℃において、JIS P8117(2009年)に準拠して測定された透気度が100秒/100ml以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルム。
- 1Mの過塩素酸リチウムを含むプロピレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:1(v/v)溶液を含浸させて、25℃で測定した厚さ方向の電気抵抗値が0.7Ω以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルム。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムを用いた電池用セパレータ。
- 請求項8に記載の電池用セパレータを用いた電池。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムの製造方法であって、前記I層を構成するポリプロピレン系樹脂組成物と、前記II層を構成する、ポリプロピレン系樹脂(A)、無機粒子(B)、及びビニル芳香族エラストマー(C)を含有する樹脂組成物(II)とを、共押出して積層無孔膜状物を作製する工程と、当該積層無孔膜状物を少なくとも一軸方向に延伸して多孔化する工程とを有し、かつ、添加剤を溶媒で除去する工程を含まないことを特徴とする積層多孔性フィルムの製造方法。
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