JP6642214B2 - 積層多孔性フィルム、電池用セパレータ、及び電池 - Google Patents

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Description

本発明は、積層多孔性フィルムに関し、特に、リチウムイオン二次電池用セパレータとして使用時において、電池性能に寄与する優れた透気特性を有しながら、安全性の観点で重要な電池発熱時の熱収縮特性に優れた積層多孔性フィルムに関する。本発明はまた、この積層多孔性フィルムを用いた電池用セパレータ及び電池に関する。
二次電池はOA、FA、家庭用電器または通信機器等のポータブル機器用電源として幅広く使用されている。特に機器に装備した場合に容積効率がよく機器の小型化および軽量化につながることからリチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧および長期保存性に優れている点より非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
リチウムイオン二次電池の使用電圧は通常4.1Vから4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では水溶液は電気分解を起こすので電解液として使うことができない。そのため、高電圧でも耐えられる電解液として有機溶媒を使用したいわゆる非水電解液が用いられている。
非水電解液用の溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてポリプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステルが主に使用されている。また、溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶かして使用している。
リチウムイオン二次電池には内部短絡の防止の点から、電池用セパレータが正極と負極の間に介在されている。当該電池用セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、リチウムイオンの通路となる透気性と電解液の拡散・保持機能を付与するために微細孔構造である必要がある。これらの要求を満たすため、電池用セパレータとしては多孔性フィルムが使用されている。
電池用セパレータは極材である正極と負極の間に存在するため、リチウムイオン二次電池内部では、電解液を介して正極と負極に接している状態にある。リチウムイオン二次電池の正極材としては一般に金属酸化物が、負極材としては一般に炭素系材料が用いられる。これら正極材、負極材は金属酸化物や炭素系材料が用いられるため、表面状態は比較的粗く、電解液を介して、正極と負極に接している状態にあるセパレータに多大な影響を及ぼす。このような正極と負極に接している状態において、セパレータには、リチウムイオン二次電池が異常を起こし、熱暴走状態に陥った際に、絶縁性を保ち、破膜や収縮を生じることなく、電極間の短絡を確実に防止して、電池の異常発熱による発火等の事故を防止することが要求される。
従来、電池用セパレータとして用いられる微細孔構造を有するフィルムとして、特開平10−50287号公報(特許文献1)では、ポリオレフィン系樹脂と無機粉体及び/又は無機繊維からなる耐熱性に優れた無機物質含有多孔性フィルムが提案されている。
また、多孔性フィルムの透過性を高めるために、結晶形態の一つであるβ晶をポリプロピレン樹脂に含有させて、ポリプロピレンフィルムを延伸して多孔性フィルムを得る方法が、特開平6−100720号公報(特許文献2)で提案されている。
また、積層多孔性フィルムとして、無機粒子と熱可塑性樹脂からなる粒子層の両面にポリオレフィン樹脂からなる多孔層を形成したフィルムが特開2012−22911号公報(特許文献3)にて、無機粒子を含有した層と含有していない層を2層共押出し、セパレータを得る方法が特開2009−185093号公報(特許文献4)にて提案されている。
また、多孔性フィルムの摩擦係数に関して、特開2012−128979号公報(特許文献5)では、ポリオレフィン系樹脂多孔質層と融点が200℃以上の高分子を用いた耐熱層からなるセパレータが提案されている。このセパレータでは、静摩擦係数を制御することで、充放電に伴う活物質の体積変化に伴うセパレータと電極間でのズレ等が防止され、サイクル特性に優れるとしている。
特開平10−50287号公報 特開平6−100720号公報 特開2012−22911号公報 特開2009−185093号公報 特開2012−128979号公報
しかしながら、特許文献1のセパレータは、多孔性フィルム中の全層に無機粒子が含まれるため、延伸時に無機粒子を起点として形成される孔構造が粗大になりやすく、機械強度面に不安が残る。
また、特許文献2の多孔性フィルムは、電池用セパレータとして使用するには耐熱性が十分とは言えず、電池の安全性を確保するという点で改良の余地がある。
また、特許文献3の積層セパレータは、中間層に無機粒子を含む耐熱層を有することで、耐熱性に優れるとしているが、電池が異常を起こし、熱暴走状態に陥った際の熱収縮により短絡が生じるおそれがある。
また、特許文献4のポリオレフィン微多孔膜はポリプロピレンとポリエチレンを含む層及び無機粒子を含む層からなるが、電池の安全性に寄与する高温下での熱収縮特性には、ポリプロピレンと比較して融点の低いポリエチレンの使用は不利であり、改善の余地がある。
また、特許文献5のセパレータにおいて無機フィラーは必須とされておらず、その効果も明らかでない上、耐熱性多孔質層の静摩擦係数と電池のサイクル特性の関係のみが考慮されており、特定の動摩擦係数を有する多孔性フィルムと高温下での熱収縮特性の関係の重要性については、何ら考慮されていない。
加えて、特許文献1、4及び5では多孔性フィルムを製造する際、ポリオレフィン系樹脂と無機粒子に可塑剤を混合し、この混合物をシート状に成形する一次加工、該シートを延伸・圧延等して空孔を設ける二次加工を行った後に、配合している可塑剤を有機溶媒で抽出除去する工程が必要となり、この抽出工程で多量の有機溶媒等を使用するため、環境上の観点から好ましくない上、生産効率も低下するおそれがある。
以上のように、電池用セパレータとして好適に使用される多孔性フィルムには、透気性だけでなく生産性や耐熱性に優れることが要求され、特に高温時における電池の安全性に関する要望は強い。
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、透気性に優れるだけでなく、高温時における優れた熱収縮率特性を備え、かつ生産性も良好な電池の安全性の向上に有効な積層多孔性フィルム及びその製造方法と、この積層多孔性フィルムを用いた電池用セパレータ及び電池を提供することを課題とする。
本発明者らは上記の課題を鑑みて鋭意検討を行った結果、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)と特定の耐熱層(II層)を特定の構成で有し、かつ、II層表面について特定の動摩擦係数を有する積層多孔性フィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)と、ポリプロピレン系樹脂を20〜80質量部、無機粒子を80〜20質量部の割合で含有する耐熱層(II層)(ただし、ポリプロピレン系樹脂と無機粒子との合計で100質量部)とが、II層/I層/II層の順に積層された少なくとも3層より構成され、算術平均粗さRaが0.3μm以下のポリエチレンテレフタレートフィルムに対する、JIS K7125(1999年)に準拠して測定されたII層表面の動摩擦係数が0.6以上であることを特徴とする積層多孔性フィルム。
[2] 前記ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)がβ晶活性を有することを特徴とする[1]に記載の積層多孔性フィルム。
[3] 前記ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)にβ晶核剤が含まれていることを特徴とする[1]又は[2]に記載の積層多孔性フィルム。
[4] 延伸フィルムであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
[5] 200℃に昇温したときの面収縮率が10%以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の積層多孔性フィルムを用いた電池用セパレータ。
[7] [6]に記載の電池用セパレータを用いた電池。
[8] [1]〜[5]のいずれかに記載の積層多孔性フィルムの製造方法であって、前記I層を構成するポリプロピレン系樹脂組成物と、前記II層を構成する、ポリプロピレン系樹脂を20〜80質量部、無機粒子を80〜20質量部の割合で含有する樹脂組成物とを、II層/I層/II層の層構成となるように共押出して積層無孔膜状物を作製する工程と、当該積層無孔膜状物を少なくとも一軸方向に延伸して多孔化する工程とを有し、かつ、添加剤を溶媒で除去する工程を含まないことを特徴とする積層多孔性フィルムの製造方法。
本発明の積層多孔性フィルムは、II層/I層/II層の順に積層された少なくとも3層より構成され、II層表面が特定の動摩擦係数を有することにより、電池の内部において本発明の積層多孔性フィルムを用いたセパレータと電極との間の位置ズレが防止される。さらに、リチウムイオン二次電池の異常発熱に伴うセパレータの収縮も防止されるため、電極間の短絡を防止し、電池の安全性を高めることが可能となる。
また、本発明の積層多孔性フィルムは、厳密な製造条件の制御を必要とせず、原料を溶融混練し、得られた樹脂組成物を用いて作製した無孔膜状物を少なくとも一軸方向に延伸するのみで多孔化して製造することができ、添加剤を溶媒で除去する工程が不要であるため、生産性に優れると共に、環境への悪影響を低減することができる。
本発明の積層多孔性フィルムを収容している電池の概略的な内部展開斜視図である。 広角X線回折測定における積層多孔性フィルムの固定方法を説明する図である。
以下に、本発明の積層多孔性フィルム、電池用セパレータ及び電池の実施形態について説明する。
[積層多孔性フィルム]
1.ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)
本発明の積層多孔性フィルムにおいて、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)は、ポリプロピレン系樹脂を主成分として構成される層であり、ポリプロピレン系樹脂を通常80質量%以上、好ましくは90質量%以上含むポリプロピレン系樹脂組成物(以下「ポリプロピレン系樹脂組成物(I)」と称す場合がある。)により形成される層であり、好ましくはポリプロピレン系樹脂(A)とβ晶核剤(B)を含むポリプロピレン系樹脂組成物(I)により構成され、β晶活性を有することで、延伸後に均質な多孔性フィルムとされた層である。
1−1.ポリプロピレン系樹脂(A)
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(A)としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどαオレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、機械的強度の観点からホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂(A)としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率が80〜99%であることが好ましく、より好ましくは83〜98%、更に好ましくは85〜97%である。アイソタクチックペンタッド分率が80%以上であれば、機械的強度が低下するおそれが小さい。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合においてはこの限りではない。
アイソタクチックペンタッド分率とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素―炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al.(Macromol.8,687(1975))に準拠する。
また、ポリプロピレン系樹脂(A)は、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが1.5〜10.0であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂(A)のMw/Mnはより好ましくは2.0〜8.0、更に好ましくは2.0〜6.0である。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが1.5以上であることで、十分な押出成形性が得られ、工業的に大量生産が可能である。一方、Mw/Mnが10.0以下であることで、十分な機械的強度を確保することができる。
ポリプロピレン系樹脂(A)のMw/MnはGPC(ゲルパーエミッションクロマトグラフィー)法によって測定される。
また、ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂(A)のMFRが0.5g/10分以上であることで、成形加工時において十分な溶融粘度を有し、高い生産性を確保することができる。一方、ポリプロピレン系樹脂(A)のMFRが15g/10分以下であることで、十分な強度を有することができる。
ポリプロピレン系樹脂(A)のMFRはJIS K7210−1(2014年)に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
ポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂(A)としては、例えば、商品名「ノバテックPP」、「WINTEC」(以上、日本ポリプロ社製)、「ノティオ」、「タフマーXR」(以上、三井化学社製)、「ゼラス」、「サーモラン」(以上、三菱化学社製)、「住友ノーブレン」、「タフセレン」(以上、住友化学社製)、「プライムポリプロ」、「プライムTPO」(プライムポリマー社製)、「Adflex」、「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(以上、サンアロマー社製)、「バーシファイ」、「インスパイア」(以上、ダウケミカル社製)など市販されている商品を使用できる。
ポリプロピレン系樹脂(A)は1種のみを用いてもよく、組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の積層多孔性フィルムにおいてポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)は、β晶活性を有することが好ましい。β晶活性は、延伸前の膜状物においてポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の膜状物中のポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しなくても、その後延伸を施すことで微細かつ均一な孔が多く形成されるため、機械的強度が高く、透気性能に優れ、電池用セパレータとして電池特性を向上させることができる積層多孔性フィルムとすることができる。
本発明の積層多孔性フィルムにおいては、下記(1)の示差走査型熱量計によりポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出された場合、及び/又は、下記(2)のX線回折装置を用いた測定によりβ晶に由来する回折ピークが検出された場合に、「β晶活性」を有すると判断される。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶活性は、本発明の積層多孔性フィルムについて、その積層多孔性フィルム全層の状態で測定することができる。
(1) 示差走査型熱量計による場合
示差走査型熱量計で積層多孔性フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β晶活性を有すると判断する。
β晶活性度は、検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばポリプロピレン系樹脂が、エチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)のβ晶活性度は大きい方が好ましく、具体的には20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)が20%以上のβ晶活性度を有するものであれば、延伸前の膜状物中においてもポリプロピレン系樹脂のβ晶が多く生成することができることを示し、延伸により微細かつ均一な孔が多く形成され、結果として機械的強度が高く、透気性能に優れた積層多孔性フィルムとすることができる。
β晶活性度の上限値は特に限定されないが、β晶活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
(2) X線回折装置による場合
β晶活性の有無を、特定の熱処理を施した積層多孔性フィルムの広角X線回折測定により得られる回折プロファイルから判断する場合、詳細には、ポリプロピレン系樹脂の結晶融解ピーク温度を超える温度である170〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた積層多孔性フィルムについて広角X線測定を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°〜16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性が有ると判断する。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。広角X線回折を用いたβ晶活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
前述したβ晶活性を得る方法としては、ポリプロピレン系樹脂組成物(I)にポリプロピレン系樹脂(A)のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、ポリプロピレン系樹脂組成物(I)に特許3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及びポリプロピレン系樹脂組成物(I)にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。中でも、ポリプロピレン系樹脂組成物(I)にβ晶核剤(B)を添加してβ晶活性を得ることが特に好ましい。β晶核剤(B)を添加することで、より均質に効率的にポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶の生成を促進させることができ、β晶活性を有するポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を備えた電池用積層多孔性フィルムを得ることができる。
1−2.β晶核剤(B)
前述の通り、本発明では微細な多孔質構造を得るために、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)はβ晶活性を有することが好ましく、中でもβ晶核剤(B)を用いることが好ましい。本発明で用いるβ晶核剤(B)としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤(B)としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。
市販されているβ晶核剤(B)の具体例としては、新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂(A)に添加するβ晶核剤(B)の割合は、β晶核剤(B)の種類またはポリプロピレン系樹脂(A)の組成などにより適宜調整することが必要であるが、ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部に対しβ晶核剤(B)0.0001〜5.0質量部であることが好ましく、0.001〜3.0質量部であることがより好ましく、0.01〜1.0質量部であることが更に好ましい。ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部に対するβ晶核剤(B)の添加量が0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶を生成・成長させて十分なβ晶活性が確保でき、積層多孔性フィルムとした際にも十分なβ晶活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。一方、ポリプロピレン系樹脂(A)100質量部に対するβ晶核剤(B)の添加量が5.0質量部以下であれば、経済的にも有利になる上に、フィルム表面へのβ晶核剤(B)のブリードなどがなく好ましい。
1−3.他の成分
ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を形成するポリプロピレン系樹脂組成物(I)には、その性質を損なわない程度に添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜配合してもよい。またその性質を損なわない程度に他の樹脂を含んでも良く、特にエラストマーの添加により、透気特性の向上を図ることができる。
2.耐熱層(II層)
本発明の積層多孔性フィルムにおいて、耐熱層(II層)は、主成分としてポリプロピレン系樹脂(A)と無機粒子(C)を所定の割合で含むポリプロピレン系樹脂組成物(以下「ポリプロピレン系樹脂組成物(II)」と称す場合がある。)により形成される層である。このポリプロピレン系樹脂組成物(II)はポリプロピレン系樹脂(A)と無機粒子(C)とを合計で70質量%以上、特に80〜100質量%含むことが好ましい。
2−1.ポリプロピレン系樹脂(A)
耐熱層(II層)を構成するポリプロピレン系樹脂(A)としては、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を構成するポリプロピレン系樹脂(A)として例示したものの1種又は2種以上を用いることができる。ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を構成するポリプロピレン系樹脂(A)と耐熱層(II層)を構成するポリプロピレン系樹脂(A)とは同一であっても異なるものであってもよいが、同一であることが、材料の調達、後述の共押出成形性等の面において好ましい。
2−2.無機粒子(C)
本発明においては、耐熱層(II層)が無機粒子(C)を含んでなることが重要である。耐熱層(II層)が無機粒子(C)を含有することで、良好な透気性と寸法安定性を有する耐熱層(II層)を形成することができる。また、無機粒子(C)を含む耐熱層(II層)を最外層とすることにより表面が粗面化し、動摩擦係数の増加をもたらす効果がある。
本発明に用いることができる無機粒子(C)の例としては、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウムなどの金属硫酸塩;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化チタンなどの金属酸化物;塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化銀、塩化カルシウムなどの金属塩化物;タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイトなどの粘土鉱物が挙げられる。中でも電池用セパレータとして用いた場合、電池に組み込んだ際に化学的に不活性であるという観点で、金属酸化物が好ましく、酸化アルミニウムが特に好ましい。
無機粒子(C)の平均粒径の下限としては、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上である。一方、上限として好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。無機粒子(C)の平均粒径が0.01μm以上であると、本発明の積層多孔性フィルムが十分な耐熱性を発現することができるため好ましい。また、無機粒子(C)の平均粒径が3.0μm以下であると、無機粒子(C)の分散性が向上するという観点から好ましい。
なお、本実施の形態において「無機粒子(C)の平均粒径」は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される。
無機粒子(C)の比表面積は、1m/g以上、30m/g未満であることが好ましい。無機粒子(C)の比表面積が1m/g以上であれば、本発明の積層多孔性フィルムをリチウムイオン二次電池にセパレータとして組み込む際に電解液の浸透が速くなり、生産性が良好となるため好ましい。また、無機粒子(C)の比表面積が30m/g未満であれば、電解液成分の吸着を抑えられるため好ましい。
耐熱層(II層)におけるポリプロピレン系樹脂(A)と無機粒子(C)の含有割合は、ポリプロピレン系樹脂(A)が20〜80質量部、無機粒子が80〜20質量部である(ただし、ポリプロピレン系樹脂(A)と無機粒子(C)との合計で100質量部)。無機粒子(C)を上記下限以上含有することで、本発明の積層多孔性フィルムのII層表面の動摩擦係数の値を高くすることができ、面収縮率を低減し、電池の安全性を高めることができる。また、無機粒子(C)を上記上限以下とすることにより、安定した製膜を行うことができ、積層多孔性フィルムの生産性を高めることができる。より好ましい含有割合は、ポリプロピレン系樹脂(A)30〜70質量部に対し無機粒子(C)70〜30質量部であり、更に好ましくはポリプロピレン系樹脂(A)40〜60質量部に対し、無機粒子(C)60〜40質量部である(ただし、ポリプロピレン系樹脂(A)と無機粒子(C)との合計で100質量部)。
2−3.他の粒子成分
耐熱層(II層)は、上記に挙げた無機粒子(C)以外にも、ポリプロピレン系樹脂(A)とともに押出成形して膜状物化できるものとして、有機粒子を含有していてもよい。有機粒子としては、延伸温度において有機粒子が溶融しないように、延伸温度よりも高い結晶融解ピーク温度をもつ有機粒子が好ましく、ゲル分率が4〜10%程度の架橋した有機粒子がさらに好ましい。有機粒子の例としては、超高分子量ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、メラミン、ベンゾグアナミンなどの熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂よりなる粒子の1種又は2種以上が挙げられ、これら有機粒子の添加に伴い、本発明の積層多孔性フィルムの表面を粗面化し、動摩擦係数の増加をもたらすことができる。
耐熱層(II層)が上記の有機粒子を含む場合、その含有量は耐熱層(II層)に対して20質量%以下、例えば1〜20質量%であることが好ましい。
2−4.他の成分
耐熱層(II層)を形成するポリプロピレン系樹脂組成物(II)には、その性質を損なわない程度に添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜配合してもよい。またその性質を損なわない程度に他の樹脂を含んでも良く、特にエラストマーの添加により、透気特性の向上を図ることができる。
ポリプロピレン系樹脂組成物(II)にエラストマーを配合する場合、エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系、アイオノマーなどの1種又は2種以上を、ポリプロピレン系樹脂組成物(II)中の含有量として20質量%以下、例えば1〜20質量%の割合で用いることができる。
3.積層構成
本発明の積層多孔性フィルムは、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)と耐熱層(II層)がII層/I層/II層の順に積層された少なくとも3層より構成される。
耐熱層(II層)がポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を挟むように存在していることにより、本発明の積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いる際に、電池の異常発熱に伴うセパレータの収縮を防ぐことができ、電池の安全性を高めることが可能となる。
また、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)が耐熱層(II層)の中間に存在することにより、本発明の積層多孔性フィルムが高い透気特性と機械強度を維持することができる。
さらに、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)と耐熱層(II層)はいずれもポリプロピレン系樹脂が熱可塑性樹脂として主であることから、両層が直接接している場合に高い層間接着性を有すると共に、本発明の積層多孔性フィルムを製造する際に共押出法によってI層とII層を積層した状態で製造することができ、生産性を高めることができる。
ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)と耐熱層(II層)の積層厚み比に関しては、特に制限されるものではないが、後述の本発明の積層多孔性フィルムの製造方法における延伸前のII層/I層/II層の積層厚み比において、(1〜4)/(30〜1)/(1〜4)であることが好ましく、より好ましくは(1〜2)/(20〜1)/(1〜2)であり、更に好ましくは1/(20〜1)/1、特に好ましくは1/(20〜2)/1である。I層とII層の厚み層比が上記範囲内であれば、粘度の差によるムラが生じ難く、また、I層厚みをII層厚みに対して厚くすることにより、電池用セパレータとして必要な機械特性を十分に確保することができる。
なお、本発明の積層多孔性フィルムは、II層/I層/II層の順に積層されていればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、I層とII層との間やその表面に、他の樹脂から構成される層を含んでいてもよい。ただし、本発明では、II層/I層/II層の積層構成とし、耐熱層(II層)を積層多孔性フィルムの最外層とすることで、電極材との動摩擦係数が大きくなり、リチウムイオン二次電池の異常発熱に伴うセパレータの収縮を防ぐことができ、電池の安全性を高めることが可能となるという効果を確実に得ることができることから、少なくとも一方、好ましくは両方の耐熱層(II層)は、積層多孔性フィルムの最外層であることが好ましい。
4.積層多孔性フィルムの製造方法
次に、本発明の積層多孔性フィルムの製造方法について説明するが、以下の説明は、本発明の積層多孔性フィルムを製造する方法の一例であり、本発明の積層多孔性フィルムはかかる製造方法により製造される積層多孔性フィルムに限定されるものではない。
本発明の積層多孔性フィルムは、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)に関して、ポリプロピレン系樹脂(A)及び必要に応じて配合されるβ晶核剤(B)やその他の成分を含むポリプロピレン系樹脂組成物(I)を、また、耐熱層(II層)に関して、ポリプロピレン系樹脂(A)、無機粒子(C)及び必要に応じて配合されるその他の成分を含むポリプロピレン系樹脂組成物(II)を、それぞれ、ポリプロピレン系樹脂(A)の融点以上、分解温度未満の温度条件下で押出機等を用いて、混練・溶融成形することによって、積層無孔膜状物を得、これを延伸処理して延伸フィルムとすることにより製造することができる。
また、本発明の積層多孔性フィルムの製造方法においては、多孔化するために添加剤を溶媒で除去する工程を含まないことが好ましく、すなわち延伸のみによって多孔化することが好ましい。
4−1.積層無孔膜状物の製造
積層無孔膜状物の製造方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いてポリプロピレン系樹脂組成物(I)及びポリプロピレン系樹脂組成物(II)をそれぞれ溶融し、Tダイから共押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。また、チューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
より好ましい態様としては以下の製造方法が挙げられる。
押出成形において、押出温度はポリプロピレン系樹脂組成物(I)及び(II)の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、180〜370℃が好ましく、180〜300℃がより好ましく、180〜240℃が更に好ましい。押出温度を180℃以上とすることで、ポリプロピレン系樹脂(A)が溶融し、その溶融樹脂の粘度が十分に低く、成形性に優れ、生産性が向上するので好ましい。一方、押出温度を370℃以下にすることで、ポリプロピレン系樹脂組成物(I)及び(II)の劣化、ひいては電池用セパレータとなる積層多孔性フィルムの機械的強度の低下を抑制できる。
キャストロールによる冷却固化温度は本発明において重要であり、冷却固化温度を制御することで、ポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶を生成・成長させ、積層無孔膜状物中のβ晶の比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで冷却固化させた積層無孔膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができ、好ましい。また、冷却固化温度を150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく製膜することが可能なため好ましい。
前記温度範囲にキャストロールを設定することで、延伸前の積層無孔膜状物中のポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶比率は40〜100%に調整することが好ましく、50〜100%に調整することがより好ましく、60〜100%に調整することが更に好ましい。延伸前の積層無孔膜状物中のポリプロピレン系樹脂(A)のβ晶比率を40%以上とすることで、その後の延伸操作により多孔化が行われやすく、透気特性の良いフィルムを得ることができる。
4−2.積層無孔膜状物の延伸処理
得られた積層無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。
一軸延伸は縦一軸延伸であってもよいし、横一軸延伸であってもよい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。本発明の目的である高い透気性を有する積層多孔性フィルムを作製する場合には、各延伸工程で延伸条件を選択でき、多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましく、縦延伸後に横延伸を行う逐次二軸延伸が特に好ましい。なお、積層無孔膜状物押出時の流れ方向(MD)への延伸を「縦延伸」といい、流れ方向に対して垂直方向(TD)への延伸を「横延伸」という。
逐次二軸延伸を用いる場合、延伸温度は、用いるポリプロピレン系樹脂組成物(I)及び(II)の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時選択する必要があるが、逐次二軸延伸は多孔構造の制御が比較的容易であり、機械強度や収縮率など他の諸物性とのバランスがとりやすい。
縦延伸での延伸温度は概ね20〜140℃が好ましく、より好ましくは40〜120℃、更に好ましくは60〜110℃の範囲である。縦延伸における延伸温度が20℃以上であれば、延伸時の破断が抑制され、均一な延伸が行われるため好ましい。一方、縦延伸における延伸温度が130℃以下であれば、ポリプロピレン系樹脂(A)中の空孔形成と、ポリプロピレン系樹脂(A)と無機粒子(C)の界面剥離による空孔形成の2種の空孔形成が起こるため、効率よく空孔形成を行うことができる。
縦延伸倍率は、任意に選択できるが、一軸延伸あたりの延伸倍率は1.1〜10倍が好ましく、より好ましくは1.5〜8.0倍であり、さらに好ましくは1.5〜5.0倍である。一軸延伸あたりの延伸倍率を1.1倍以上とすることで白化が進行して、延伸による多孔化が十分起こっていることを示唆している。また、10倍以下とすることで、空孔の変形は抑制され、十分に白化した積層多孔性フィルムを得ることができる。
横延伸温度は、好ましくは100〜160℃であり、より好ましくは110〜155℃である。横延伸温度が上記範囲内であることによって、縦延伸時に生じた空孔が拡大されて多孔層の空孔率を増加することができ、十分な透気特性を有するものとすることができる。
横延伸倍率は、任意に選択できるが、好ましくは1.1〜10倍であり、より好ましくは1.5〜8.0倍、更に好ましくは1.5〜4.0倍である。上記横延伸倍率で延伸することによって、縦延伸時に生じた空孔を変形することなく、十分な透気特性を有するものとすることができる。
4−3.熱処理
上記のようにして得られた積層多孔性フィルムは、寸法安定性の改良を目的として熱処理を施すことが好ましい。この際、熱処理温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上とすることで、寸法安定性の効果が期待できる。一方、熱処理温度は好ましくは170℃以下、より好ましくは165℃以下、更に好ましくは160℃以下である。熱処理温度が170℃以下であれば、熱処理によってポリプロピレン系樹脂(A)の融解が起こりにくく、多孔構造を維持できるため好ましい。また、熱処理工程中には、必要に応じて1〜20%の弛緩処理を施しても良い。
熱処理後、均一に冷却して巻き取ることにより、積層多孔性フィルムの捲回体が得られる。
5.積層多孔性フィルムの物性ないし特性
5−1.動摩擦係数
本発明の積層多孔性フィルムにおいて、表面の算術平均粗さRaが0.3μm以下のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに対する、JIS K7125(1999年)に準拠して測定されたII層表面の動摩擦係数は0.6以上、より好ましくは0.7以上である。前記PETフィルムに対するII層表面の動摩擦係数が0.6以上であることによって、電池用セパレータとして使用した時に、リチウムイオン二次電池の異常発熱に伴うセパレータの収縮を防ぐことができ、電池の安全性を高めることが可能となる。本発明では、例えば、最外層となる無機粒子(C)を含有する耐熱層(II層)が、製膜工程で、前述の条件で延伸されることで、このような動摩擦係数を容易に実現することができる。本発明の積層多孔性フィルムの表面の動摩擦係数の上限は、フィルム製造時の生産性の観点より、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.0以下である。
動摩擦係数の測定に使用されるPETフィルムの算術平均粗さRaはJIS B0601(2013年)に準拠し、例えば非接触式三次元表面粗さ計を用いて測定され、算出される値であり、下限は特に限定されないが、製造上の制約から、通常0.01μm以上である。
なお、積層多孔性フィルムの表面の動摩擦係数は具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
5−2.面収縮率
本発明の積層多孔性フィルムは、40℃から200℃に、16℃/分にて昇温したときの面収縮率が10%以下であることが好ましい。この面収縮率はより好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。面収縮率が10%以下であることにより、電池用セパレータとしての使用において、電池が異常を起こし、熱暴走状態に陥った際に、破膜や収縮を生じることなく、絶縁性を保ち、電極間の短絡を確実に防止して、電池の異常発熱による発火等の事故を防止することができる。ここで、電池の異常発熱の温度に相当する「200℃」という温度は、一般的な電池の異常発熱の温度に相当する。
なお、積層多孔性フィルムの面収縮率は、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
5−3.厚み
本発明の積層多孔性フィルムの厚みは、100μm未満が好ましく、50μm未満がより好ましく、40μm未満がさらに好ましい。一方で下限として、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。厚みが100μm未満であれば、積層多孔性フィルムの電気抵抗を小さくできるため、蓄電デバイスの性能を十分に確保することができる。また、厚みが3μm以上あれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば大きな電圧がかかった場合にも短絡しにくく安全性に優れる。
5−4.透気度
本発明の積層多孔性フィルムは、25℃での透気度が300秒/100ml以下であることが好ましく、より好ましくは200秒/100ml以下、さらに好ましくは100秒/100ml以下である。25℃での透気度が300秒/100ml以下であることによって、優れた電気抵抗を有することができる。
透気度は積層多孔性フィルムの厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mlの空気が当該積層多孔性フィルムを通過するのに必要な秒数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方が積層多孔性フィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方が当該積層多孔性フィルムの厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは積層多孔性フィルムの厚み方向の孔のつながり度合いである。
積層多孔性フィルムの透気度は、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
[電池]
次に、本発明の積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして収容しているリチウムイオン二次電池について図1を参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体とする。
正極板21、電池用セパレータ10および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極および負極のリード体24、25と溶接する。ついで、下記電解液を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10などに十分に電解液が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行うことにより、筒型のリチウムイオン二次電池20が作製される。
電解液としては、リチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、またはスルホランなどが挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどが挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
以下に実施例および比較例を示し、本発明の積層多孔性フィルムについてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限を受けるものではない。
[各種評価・測定方法]
<示差走査型熱量測定(DSC)>
積層多孔性フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25℃から240℃まで走査速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃〜25℃まで走査速度10℃/分で降温後1分間保持し、次に25℃から240℃まで走査速度10℃/分で再昇温させた。この再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145〜160℃にピークが検出されるか否かによりβ晶活性の有無を以下の基準にて評価した。
○:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β晶活性あり)
×:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、β晶活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
<広角X線回折測定(XRD)>
図2(A)に示すように、積層多孔性フィルムを縦60mm、横60mm角に切り出したサンプル32を、中央部に40mmφの円形の孔が形成された2枚のアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚さ1mm)31,31の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップ33で固定した。
積層多孔性フィルムのサンプル32を2枚のアルミ板31,31間に拘束した状態で、設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点で取り出し、サンプル32を2枚のアルミ板31,31間に拘束した状態のまま、25℃の雰囲気下で5分間冷却したものについて、以下の測定条件で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。図2(B)中、34はフィルム縦方向を示し、35はフィルム横方向を示す。
・広角X線回折測定装置:株式会社マックサイエンス製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン
2θ範囲:5°〜25°
走査間隔:0.05°
走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来するピークより、β晶活性の有無を以下のように評価した。
○:2θ=16.0〜16.5°の範囲にピークが検出された(β晶活性あり)
×:2θ=16.0〜16.5°の範囲にピークが検出されなかった(β晶活性なし)
<面収縮率(耐熱性)評価>
40℃に設定したホットプレート(アズワン社製 ND−2)上に、115mm×140mmに切り出した耐水研磨紙#1000(理研コランダム社製)を研磨面が上になるよう載せ、空気が入らないよう50mm×50mm四方に切り出した積層多孔性フィルムを重ね合わせ、180℃で1時間熱処理したPETフィルム(三菱樹脂社製 ダイアホイル S100−50、厚み=50μm、表面のRa=0.22μm)を200mm×200mm四方に切り出して上に載せ、200mm×200mm×5mmの耐熱ガラス(東新理興社製)を更に2枚上に載せ、ホットプレートの設定温度を200℃に設定し、16℃/分にて200℃まで昇温し、200℃に到達後、常温まで冷却した後、当該積層多孔性フィルムを取り出した。
50mm×50mm四方に切り出したPETフィルム(三菱樹脂社製 ダイアホイル S100−50)の重量(以下Wとする)を測定し、これを該サンプル上に重ね、収縮後の該サンプルの形状を写し取り、その形状通りにPETフィルムを切り出して、その重量(以下Wとする)を測定し、以下の式にて積層多孔性フィルムの面収縮率を算出した。
面収縮率(%)={1−(W/W)}×100
得られた面収縮率について、200℃昇温後の面収縮率が低ければ、電池に組み込んだ際の位置ズレや収縮を抑制し、異常発熱時の短絡を防止できるという効果がある。面収縮率について、以下のように評価した。
○:200℃昇温後の面収縮率が10%以下である。
×:200℃昇温後の面収縮率が10%を超える。
<動摩擦係数>
JIS K7125(1999年)に準拠してPETフィルム(三菱樹脂社製 ダイアホイル S100−50、厚み=50μm、表面のRa=0.22μm)の表面と積層多孔性フィルムのII層側表面を重ね合せて動摩擦係数を測定し、以下の基準で評価した。
○:動摩擦係数が0.6以上である
×:動摩擦係数が0.6未満である
<厚み>
積層多孔性フィルムの厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、積層多孔性フィルムの面内を不特定に5箇所測定し、その平均値として算出した。
<透気度(ガーレ値)>
積層多孔性フィルムの透気度は、デジタル型王研式透気度専用機(旭精工社製)を用いて、JIS P8117(2009年)に準拠して温度25℃の空気雰囲気下にて測定した。
[製膜原料]
<ポリプロピレン系樹脂(A)>
・A−1;ポリプロピレン(ノバテックPP FY6HA、日本ポリプロ社製、MFR:2.4g/10分、Mw/Mn=3.2)
<β晶核剤(B)>
・B−1;3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン
<無機粒子(C)>
・C−1;アルミナ(LS235C、日本軽金属社製、平均粒径0.53μm、比表面積6.4m/g)
・C−2;アルミナ(LS710A、日本軽金属社製、平均粒径0.50μm、比表面積6.9m/g)
<エラストマー(D)>
・D−1;スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEPTON1001、クラレ社製)
[実施例1]
ポリプロピレン系樹脂(A−1)100質量部に対して、β晶核剤(B−1)を表1に示す配合部数にて配合し、2軸押出機に投入し、設定温度240℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を形成するポリプロピレン系樹脂組成物(I)のペレット(以下「ペレット(I)」と称す。)を作製した。同様の方法で、ポリプロピレン系樹脂(A−1)、無機粒子(C−1)を表1に示す配合部数にて配合し、ポリプロピレン系樹脂に無機粒子を含有する耐熱層(II層)を形成するポリプロピレン系樹脂組成物(II)のペレット(以下「ペレット(II)」と称す。)を作製した。
作製したペレットは、単軸押出機を用いて、200℃で溶融混合後、リップ開度1mmのTダイで表裏層側押出機にポリプロピレン系樹脂(A−1)と無機粒子(C−1)のペレット(II)、中層側押出機にポリプロピレン系樹脂(A−1)とβ晶核剤(B−1)のペレット(I)を用いて、200℃の押出温度で共押出成形を行い、127℃のキャストロールに導いて積層無孔膜状物を得た。その後、積層無孔膜状物は縦延伸機を用いて、105℃に設定したロール間において、延伸倍率4.5倍で縦方向に延伸を行った。縦延伸後のフィルムは、フィルムテンター設備(京都機械社製)にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃で横方向に3.0倍延伸した後、155℃で熱処理を行い、積層多孔性フィルムを得た。得られた積層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
[実施例2、5]
実施例1と同様の方法にて、表1に示す配合部数にて配合し、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を形成するペレット(I)と、耐熱層(II層)を形成するペレット(II)を作製した。
作製したペレット(I)及び(II)より、実施例1と同様の方法にて成形を行い、積層無孔膜状物を得た。その後、積層無孔膜状物は実施例1と同様の方法にて、縦延伸、横延伸、熱処理を行った。その際、横延伸倍率は2.0倍とした。得られた積層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
[実施例3、4]
実施例1と同様の方法にて、表1に示す配合部数にて配合し、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を形成するペレット(I)と、耐熱層(II層)を形成するペレット(II)を作製した。
作製したペレット(I)及び(II)より、実施例1と同様の方法にて成形を行い、積層無孔膜状物を得た。その後、積層無孔膜状物は実施例1と同様の方法にて、縦延伸、横延伸、熱処理を行った。得られた積層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
[比較例1]
実施例1と同様の方法にて、表1に示す配合部数にて配合し、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を形成するペレット(I)を作製した。
作製したペレット(I)を実施例1と同様の方法で、表裏層側押出機、及び中層側押出機に用いて成形を行い、単層無孔膜状物を得た。その後、単層無孔膜状物は実施例2と同様の方法にて、縦延伸、横延伸、熱処理を行った。得られた単層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
[比較例2、3]
実施例1と同様の方法にて、表1に示す配合部数にて配合し、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を形成するペレット(I)と、耐熱層(II層)を形成するペレット(II)を作製した。
作製したペレット(I)及び(II)より、中層側押出機にペレット(II)を、表裏層側押出機にペレット(I)を用いて成形を行い、積層無孔膜状物を得た。その後、積層無孔膜状物は実施例2と同様の方法にて、縦延伸、横延伸、熱処理を行った。得られた積層多孔性フィルムの評価結果を表1に纏める。
Figure 0006642214
実施例1〜5より、ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)とポリプロピレン系樹脂に無機粒子を含有する耐熱層(II層)とが、II層/I層/II層の順に積層された本発明の積層多孔性フィルムは、I層及びII層の積層厚み比や無機粒子の添加部数に関わらず、動摩擦係数0.6以上を示し、面収縮率を10%以下に抑えられることが示された。面収縮率が低いことで、リチウムイオン二次電池に組み込んだ際の位置ズレや収縮を抑制し、電池の安全性を高めることができる。
一方、比較例1に示したポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)のみからなる単層多孔性フィルムでは、動摩擦係数が低いために面収縮率を10%以下に抑えることはできなかった。また、比較例2、3より、積層多孔性フィルム中の積層構成がI層/II層/I層の場合、積層多孔性フィルム中の最外層に無機粒子を含まないポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)を有するため、動摩擦係数は0.6より低い値を示し、面収縮率を10%以下に抑えることはできず、電池異常発熱時の安全性が懸念される。
本発明の積層多孔性フィルムは、蓄電デバイスとして、ニッケル・水素電池、リチウムイオン二次電池のような電池系デバイス、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタのようなコンデンサ系デバイスとして幅広く利用が期待できる。また、透気特性が要求される種々の用途に応用することができ、使い捨て紙オムツ等の体液吸収用パット、もしくは手術衣等の医療用材料、ジャンパー、雨着等の衣料用材料、家屋防水材、断熱材等の建築用材料、乾燥剤、使い捨てカイロ等の包装材料等の資材としても好適に使用できる。
特に、本発明の積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用した時に、リチウムイオン二次電池の異常発熱に伴うセパレータの収縮を防ぐことができ、電池の安全性を高めることが可能となり、有用である。
10 電池用セパレータ(積層多孔性フィルム)
20 リチウムイオン二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋

Claims (9)

  1. ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)と、ポリプロピレン系樹脂を20〜80質量部、無機粒子を80〜20質量部の割合で含有する耐熱層(II層)(ただし、ポリプロピレン系樹脂と無機粒子との合計で100質量部)とが、II層/I層/II層の順に積層された少なくとも3層より構成される積層多孔性フィルムであって、少なくとも一方のII層が該積層多孔性フィルムの最外層であり、算術平均粗さRaが0.3μm以下のポリエチレンテレフタレートフィルムに対する、JIS K7125(1999年)に準拠して測定されたII層表面の動摩擦係数が0.6以上であることを特徴とする積層多孔性フィルム。
  2. 前記ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)がβ晶活性を有することを特徴とする請求項1に記載の積層多孔性フィルム。
  3. 前記ポリプロピレン系樹脂多孔層(I層)にβ晶核剤が含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層多孔性フィルム。
  4. 延伸フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルム。
  5. 200℃に昇温したときの面収縮率が10%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルム。
  6. 前記耐熱層(II層)にエラストマーが含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルム。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムを用いた電池用セパレータ。
  8. 請求項に記載の電池用セパレータを用いた電池。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムの製造方法であって、前記I層を構成するポリプロピレン系樹脂組成物と、前記II層を構成する、ポリプロピレン系樹脂を20〜80質量部、無機粒子を80〜20質量部の割合で含有する樹脂組成物とを、II層/I層/II層の層構成となるように共押出して積層無孔膜状物を作製する工程と、当該積層無孔膜状物を少なくとも一軸方向に延伸して多孔化する工程とを有し、かつ、添加剤を溶媒で除去する工程を含まないことを特徴とする積層多孔性フィルムの製造方法。
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