JP2016197139A - 静電潜像現像用トナー及び静電潜像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくともスチレン−アクリル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含有する静電潜像現像用トナーであって、前記静電潜像現像用トナーは、フーリエ変換赤外分光分析測定装置を用いて全反射法により吸収スペクトルを測定したとき、少なくとも吸収波数が690〜710cm−1(P1)、1190〜1220cm−1(P2)、及び1230〜1300cm−1(P3)の範囲内に吸収極大ピークを持ち、前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1230〜1300cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P3)の比の値(P3/P1)が、0.02〜6.00の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
【選択図】図1
Description
トナーの粒径がそろい、粒径分布をシャープにすると個々のトナー母体粒子毎の現像挙動がそろうことにより、微小ドットの再現性が著しく向上する。しかしながら、従来の粉砕法によるトナー製造方法では、トナーの粒径分布をシャープにすることは容易ではなかった。
また、省エネルギーの観点から、少ないエネルギーで定着できる低温定着トナーの開発が進められている。トナーの定着温度を下げるためには、樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げることが必要である。しかしながら、樹脂の溶融温度や溶融粘度を下げるため、樹脂のガラス転移点や分子量を下げるとトナーの耐熱保管性が低下したりするなど新たな問題が生じる。
しかしながら、これら特許文献1〜4では、非晶性樹脂として非晶性ポリエステル樹脂をメインに用いており、スチレン−アクリル樹脂をメインとしている例でも10%も満たないため、この構成では、非晶性樹脂が結晶性樹脂と相溶することによる耐熱性低下が生じる。また、粉砕法によりトナーを作製しているため、トナー表面近傍における非晶性ポリエステル樹脂の存在状態を制御することは困難であった。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
前記静電潜像現像用トナーは、フーリエ変換赤外分光分析測定装置を用いて全反射法により吸収スペクトルを測定したとき、少なくとも吸収波数が690〜710cm−1(P1)、1190〜1220cm−1(P2)、及び1230〜1300cm−1(P3)の範囲内に吸収極大ピークを持ち、
前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1230〜1300cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P3)の比の値(P3/P1)が、0.02〜6.00の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
少なくともスチレン−アクリル樹脂の粒子と、非晶性ポリエステル樹脂の粒子と、結晶性ポリエステル樹脂の粒子とを凝集・融着し、得られたトナー母体粒子の水系分散液を冷却する際における冷却速度が、10〜30℃/minの範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナーの製造方法。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
前記(P1)と前記(P3)の比の値(P3/P1)を0.02〜6.00の範囲内とすることによって、トナー表面近傍のスチレン−アクリル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の存在量が適正化される。結晶性ポリステル樹脂と相溶した非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂と相溶しないスチレン−アクリル樹脂が存在していることから、相溶した非晶性ポリエステル樹脂による耐熱悪化をスチレン−アクリル樹脂で防ぐことができ、定着時に結晶性ポリエステル樹脂と相溶した非晶性ポリステル樹脂をトナー表面近傍に、ある程度存在させることで定着性が発現しやすくなり、低温定着性が良好となるので、耐熱性と低温定着性の両立を達成することができる。
前記(P2/P1)は、0.02〜0.20の範囲内であることがより好ましく、0.02〜0.10の範囲内であることが特に好ましい。
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくともスチレン−アクリル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー母体粒子を含有した静電潜像現像用トナーである。
そして、前記静電潜像現像用トナーが、少なくとも吸収波数が690〜710cm−1(P1)、1190〜1220cm−1(P2)、及び1230〜1300cm−1(P3)の範囲内に最大吸収極大ピーク(以下、単に「吸収極大ピーク」という。)を持ち、前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1230〜1300cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P3)の比の値(P3/P1)が、0.02〜6.00の範囲内である。
前記(P3/P1)を0.02〜6.00の範囲内としたのは、6.00以下とすることによって、結晶性ポリエステル樹脂と相溶しにくいスチレン−アクリル樹脂がトナー表面近傍に存在し、トナー保管時には結晶性ポリエステル樹脂と相溶した非晶性ポリエステル樹脂の影響を抑制することができるため、耐熱性が向上する。
また、0.02以上とすることによって、トナー表面近傍にスチレン−アクリル樹脂が多く存在することがなくなり、定着時には相溶した非晶性ポリエステル樹脂がより溶けやすくなるため、低温定着性の悪化を防止することができる。
前記(P2/P1)を0.20以下とすることにより、トナー表面に結晶性ポリエステル樹脂が過剰に存在することを防ぐことができ、結晶性ポリエステル樹脂のトナー表面存在量を少なくすることで、トナーの融点を下げる効果を発揮しやすくなるため、低温定着性をより向上させることができる。
さらに、結晶性ポリエステル樹脂のトナー表面存在量が多い場合は、トナー表面形状がいびつになったり、トナー表面がやわらかくなったりする現象が発生しやすくなり、トナー流動性が低下する傾向を示すが、上記のとおりトナー表面存在量を少なくすることで、この現象を抑制し、トナーの流動性を高くすることができる。
前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と、前記1230〜1300cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P3)の比の値(P3/P1)は、フーリエ変換赤外分光装置(Themo Fisher製Nicolet380)を使用して、全反射法(ATR法)で得られた吸収スペクトルのピーク強度比より求めることができる。
まず、試料としてトナー0.2gをペレット成形機(SSP−10A:島津製作所社製)で400kgfの荷重で1分間加圧して、直径10mmのペレットを作製した。
ATR測定は、ダイヤモンド結晶を用い、分解能4cm−1、積算回数32回の条件で行った。さらに、得られたATRスペクトルを機種の補正手法に基づいて、ATR補正を行ったスペクトルのピーク強度比から数値を規定した。
吸収波数690〜710cm−1の範囲内に、吸光度が1番目に小さくなる立下りピーク点(以下「第1立下りピーク点Fp1」という。)と、吸光度が2番目に小さくなる立下りピーク点(以下「第2立下りピーク点Fp2」という。)との間に、吸光度が最大となる最大立ち上がりピーク点Mp1があり、第1立下りピーク点Fp1と第2立下りピーク点Fp2とを結ぶ線分をベースラインとする。そして、最大立ち上がりピーク点Mp1から横軸に向けて垂線を引き、ベースラインとの交点における吸光度と、最大立ち上がりピーク点Mp1における吸光度との差分の絶対値を、最大立ち上がりピーク点Mp1の高さP1とする。
吸収波数1190〜1220cm−1の範囲内に、吸光度が1番目に小さくなる立下りピーク点(以下「第1立下りピーク点」という。)と、吸光度が2番目に小さくなる立下りピーク点(以下「第2立下りピーク点」という。)との間に、吸光度が最大となる最大立ち上がりピーク点があり、第1立下りピーク点と第2立下りピーク点とを結ぶ線分をベースラインとする。そして、最大立ち上がりピーク点から横軸に向けて垂線を引き、ベースラインとの交点における吸光度と、最大立ち上がりピーク点における吸光度との差分の絶対値を、最大立ち上がりピーク点の高さP2とする。
吸収波数1230〜1300cm−1の範囲内に、吸光度が1番目に小さくなる立下りピーク点(以下「第1立下りピーク点」という。)と、吸光度が2番目に小さくなる立下りピーク点(以下「第2立下りピーク点」という。)との間に、吸光度が最大となる最大立ち上がりピーク点があり、第1立下りピーク点と第2立下りピーク点とを結ぶ線分をベースラインとする。そして、最大立ち上がりピーク点から横軸に向けて垂線を引き、ベースラインとの交点における吸光度と、最大立ち上がりピーク点における吸光度との差分の絶対値を、最大立ち上がりピーク点の高さP3とする。
本発明においては、トナー母体粒子は、スチレン−アクリル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含有している。
以下、スチレン−アクリル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂について説明する。
スチレン−アクリル樹脂は、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーによって形成される。スチレン−アクリル樹脂を構成するスチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系モノマー及びその誘導体が挙げられる。
好ましくは、上記スチレン−アクリル樹脂の含有量が、60〜85質量%の範囲内である。
本発明における結晶性ポリエステル樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを示し、具体的には昇温速度10℃/分で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃未満であるものを結晶性ポリエステル樹脂という。
多価カルボン酸誘導体としては、多価カルボン酸のアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物が例示でき、多価アルコール誘導体としては、多価アルコールのエステル化合物及びヒドロキシカルボン酸が例示できる。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、示差熱量分析装置(DSC)により測定することができる。
例えば、DSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー社製)を用いて行うことができる。具体的には、試料4.50mgをアルミニウム製パン(KITNo.0219−0041)に封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットし、リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを取得する。融点は、吸熱ピークのピークトップの温度とする。
ハイブリッド構造を有する結晶性ポリエステル樹脂とは、結晶性ポリエステル樹脂ユニットとポリエステル以外の樹脂ユニットが化学的に結合した樹脂である。結晶性ポリエステル樹脂ユニットとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を示し、ポエステル樹脂以外の樹脂ユニットとは、ポチエステル以外の樹脂に由来する部分を示す。ポリエステル以外の樹脂としては、例えば、スチレン−アクリル系樹脂などのビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂などが挙げられる。ポリエステル以外の樹脂ユニットは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
なお、非晶性ポリエステル樹脂も、上記結晶性ポリエステル樹脂と同様にハイブリッド構造を取ってもよい。
非晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸(誘導体)及び多価アルコール(誘導体)を原料として重縮合反応によって製造されたものであって、明瞭な融点を有さないものをいう。
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点は、測定試料として非晶性ポリエステル樹脂を用いて、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418−82に規定された方法(DSC法)によって測定された値である。
トナー母体粒子が着色剤を含有したものとして構成される場合の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができる。
本発明に係るトナー母体粒子には、離型剤を用いることができ、離型剤としてはワックスを添加することができる。ワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような炭化水素系ワックス類、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラステアリン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニルなどのエステルワックス類などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、本発明に係るトナー母体粒子中には、荷電制御剤としては、種々の公知のものを使用することができる。
まず、本発明で用いられるトナー母体粒子の平均円形度について説明する。本発明で用いられるトナー母体粒子の平均円形度は0.850〜0.990の範囲内が好ましい。
また平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
次に、本発明で用いられるトナー粒子の粒径について説明する。本発明で用いられるトナー粒子の粒径は、体積平均粒径(D50%径)、すなわち体積基準メディアン径で3μm以上10μm以下のものであることが好ましい。
また、トナー母体粒子の粒径も同様にして測定することができる。
本発明のトナーの軟化点は、90〜120℃の範囲内が好ましい。トナーの軟化点がこの範囲であるときに、好ましい低温定着性が得られる。
<トナー母体粒子の製造方法>
本発明のトナー母体粒子を製造する方法としては、例えば、粉砕法、懸濁重合法、ミニエマルション法、乳化凝集法、その他の公知の方法などを挙げることができるが、ミニエマルション法や乳化凝集法を用いることが好ましい。
ミニエマルション法によりポリエステル樹脂を得てトナー母体粒子を製造することが、結晶性ポリエステル樹脂のトナー表面への露出を減らすことができる点で好ましい。
また、乳化凝集法によれば、製造コスト及び製造安定性の観点から、トナー粒子の小粒径化を容易に図ることができる。
(a)水系媒体中で、スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液を調製する工程
(b)水系媒体中で、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を調製する工程
(c)水系媒体中で、非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を調製する工程
(d)水系媒体中で、着色剤粒子の分散液を調製する工程
(e)前記スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液と、前記結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液と、前記非晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液と、前記着色剤粒子の分散液とを混合し、当該結晶性ポリエステル樹脂粒子と、当該スチレン−アクリル樹脂粒子と、当該着色剤粒子とを凝集し、次いで熱エネルギーにより融着する凝集・融着工程
(f)凝集・融着工程後、凝集粒子を熱エネルギーにより熟成させて、トナー母体粒子の形状を調整し、トナー母体粒子の水系分散液を得る熟成工程
(g)トナー母体粒子の水系分散液を冷却する冷却工程
スチレン−アクリル樹脂粒子の分散液は、乳化重合により調製することができる。
スチレン−アクリル樹脂の重合工程において、界面活性剤を使用する場合には、例えば、後述する結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液を調製する工程で使用する界面活性剤と同様の界面活性剤を使用することができる。
本工程は、下記工程を含んで構成されることが好ましい。
(A−2)結晶性ポリエステル樹脂溶液調製工程
(A−3)脱溶剤工程
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、多価カルボン酸及び多価アルコールとを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
工程(A−2)では、上記のようにして合成した結晶性ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解し、結晶性ポリエステル樹脂溶液を調製する。その後、当該結晶性ポリエステル溶液を、水系媒体中に乳化分散させることにより、結晶性ポリエステル溶液よりなる油滴を形成する。
工程(A−2)においては、水系媒体に対して結晶性ポリエステル樹脂溶液を徐々に添加することが好ましいが、結晶性ポリエステル樹脂溶液に対して水系媒体を徐々に添加する転相乳化法を行ってもよい。
有機溶剤としては、結晶性ポリエステル樹脂を溶解可能であればよく、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンなどを好ましく用いることができる。
本実施形態において、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒を用いることが好ましい。
また、水系媒体には、必要に応じて、アミンやアンモニアが溶解されていてもよい。
上記の水系媒体中においては、必要に応じて、通常のカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などの界面活性剤が溶解されていてもよい。界面活性剤としては、結晶性ポリエステル樹脂による油滴の分散安定性に優れ、また、温度変化に対する安定性が得られることから、アニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
工程(A−3)においては、工程(A−2)において形成された油滴から、有機溶剤を留去することにより、結晶性ポリエステル樹脂の粒子が生成され、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液が調製される。
結晶性ポリエステル樹脂の粒子の粒径は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて動的光散乱法によって測定されるものである。
分子量が5000以上であると、スチレン−アクリル樹脂と相溶することが抑制され、耐熱性の悪化が抑制される。100000以下であると、低温定着性の悪化を抑制できる。
本工程は、下記工程を含んで構成されることが好ましい。
(B−2)非晶性ポリエステル樹脂溶液調製工程
(B−3)脱溶剤工程
非晶性ポリエステル樹脂の微粒子の粒径は、「マイクロナノトラックUPA−EX150」(日機装社製)を用いて動的光散乱法によって測定されるものである。
分子量が5000以上であると、耐熱保管性の悪化を抑制できる。100000以下であると、低温定着性の悪化を抑制できる。
着色剤粒子の分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
この着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積基準のメディアン径は、「マイクロトラックUPA−150」(日機装社製)を用いて動的光散乱法によって測定されるものである。
凝集・融着工程においては、スチレン−アクリル樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子、非晶性ポリエステル樹脂粒子及び着色剤粒子とともに、必要に応じて、離型剤などのオフセット防止剤や荷電制御剤などのその他のトナー構成成分の粒子を凝集させることもできる。
このように、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液及びスチレン−アクリル樹脂粒子分散液よりも後に投入することにより、前記(P3/P1)が0.02〜6.00の範囲内となり、トナー表面近傍の非晶性ポリエステル樹脂とスチレン−アクリル樹脂の存在量を適正化することができる。
この凝集・融着工程において使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。
金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム及びリチウムなどのアルカリ金属の塩などの1価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン及び銅などの2価の金属塩;鉄及びアルミニウムなどの3価の金属塩などが挙げられる。
具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム及び硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の凝集・融着工程における加熱温度の制御により、ある程度トナーにおけるトナー母体粒子の形状の均一化を図ることができるが、さらなる形状の均一化を図るために、熟成工程を経ることが好ましい。
冷却工程は、熟成工程後のトナー母体粒子の水系分散液を冷却する工程であり、本発明
では、トナー母体粒子の水系分散液を冷却する冷却速度を、10〜30℃/minの範囲内に調整することが好ましい。これによって、結晶性ポリエステル樹脂の再結晶化が抑制されるため、上記(P2/P1)のピーク強度比が下がり、0.20以下とすることができる。
洗浄・乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。すなわち、上記熟成工程にて所望の平均円形度まで熟成し、冷却工程で冷却し後、例えば遠心分離器などの公知の方法により、固液分離し洗浄を行い、減圧乾燥にて有機溶媒を除去し、さらに、フラッシュジェットドライヤー及び流動層乾燥装置など公知の乾燥装置にて水分及び微量の有機溶媒を除去する。乾燥温度は、トナー母体粒子が融着しない範囲であればよい。
この外添剤処理工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に必要に応じて外添剤を添加、混合することにより、トナー粒子を調製する工程である。
外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
<スチレン−アクリル樹脂粒子分散液>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム(C10H21(OCH2CH2)2SO3Na)よりなるアニオン系界面活性剤4質量部をイオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を仕込み、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、液温を75℃に昇温させた後、スチレン532質量部、アクリル酸n−ブチル200質量部、メタクリル酸68質量部及びn−オクチルメルカプタン16.4質量部よりなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下後、75℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子(1h)を含有する樹脂粒子分散液(1H)を調製した。
得られた樹脂粒子(1h)の重量平均分子量は16500であった。
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、スチレン101.1質量部、アクリル酸n−ブチル62.2質量部、メタクリル酸12.3質量部及びn−オクチルメルカプタン1.75質量部からなる重合性単量体溶液を仕込み、その後パラフィンワックス「HNP−57」(日本製蝋社製)93.8質量部を添加し、内温を90℃に加温して溶解させることによって単量体溶液を調製した。
一方、第1段重合において用いたアニオン系界面活性剤3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を仕込み、内温が98℃となるよう加熱した。この界面活性剤水溶液に、第1段重合において得られた樹脂粒子(1h)32.8質量部(固形分換算)を添加した。さらに、パラフィンワックスを含有する単量体溶液を添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用い、8時間かけて混合分散することにより、分散粒子径340nmの乳化粒子(油滴)を含有する乳化粒子分散液を調製した。
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたって加熱撹拌することにより重合(第2弾重合)を行い、樹脂粒子(1hm)を含有する樹脂粒子分散液(1HM)を調製した。
得られた樹脂粒子(1hm)の重量平均分子量は23000であった。
第2段重合において得られた樹脂粒子分散液(1HM)に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン293.8質量部、アクリル酸n−ブチル154.1質量部及びn−オクチルメルカプタン7.08質量部からなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却しコア粒子用樹脂粒子を含有する樹脂粒子分散液を得た。
得られたコア粒子用樹脂粒子の重量平均分子量は26800であった。
(結晶性ポリエステルの作製)
両反応性モノマーを含む、下記の付加重合系樹脂(スチレン−アクリル樹脂:St/Ac)ユニットの原料モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
スチレン 34質量部
n−ブチルアクリレート 12質量部
アクリル酸 2質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部
また、下記の重縮合系樹脂(結晶性ポリエステル樹脂:CPEs)ユニットの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
セバシン酸 290質量部
1,12−ドデカンジオール 292質量部
次いで、撹拌下で付加重合系樹脂(St/Ac)の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行ったのち、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。なお、このとき除去されたモノマー量は、上記の樹脂の原料モノマー比に対してごく微量であった。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に、200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド構造を有する結晶性ポリエステル樹脂を得た。この結晶性ポリエステル樹脂をDSCにて10℃/分で測定したところ、明確なピークを有し、ピークトップの温度は77℃であった。半値幅は8℃であった。
上記で作製した結晶性ポリエステル樹脂30質量部を溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態の結晶性ポリエステル樹脂の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を、熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1リットルの移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm2の条件で運転することにより、体積基準のメディアン径が200nm、固形分量が30質量部の結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製した。
(非晶性ポリエステル樹脂の作製)
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 1.43質量部
を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した後、
アクリル酸 10質量部
スチレン 80質量部
ブチルアクリレート 20質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 16質量部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、スチレン、ブチルアクリレートを除去することにより、ハイブリッド構造を有する非晶性ポリエステル樹脂を得た。
この非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点は60℃であった。
上記で作製した非晶性ポリエステル樹脂100質量部を、「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)を用いてV−LEVEL、300μAで30分間超音波分散し、体積基準のメディアン径(D50V)が180nmである非晶性ポリエステルが分散された非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を作製した。
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液を調製した。この分散液の粒子径を、UPA(マイクロトラック社製)を用いて測定したところ、117nmであった。
<トナー1の作製>
(凝集・融着、熟成及び冷却工程)
撹拌装置、冷却管、及び温度センサーを備えた5リットルのステンレス製反応器に、一段目投入分散液として、「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液」を420質量部(固形分換算)、「結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」を90質量部(固形分換算)、「着色剤粒子分散液」を48質量部(固形分換算)投入し、さらにイオン交換水380質量部を投入して、撹拌しながら5(モル/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。
次いで、撹拌下、塩化マグネシウム・六水和物40質量部をイオン交換水40質量部に溶解した塩化マグネシウム水溶液を10分間かけて滴下し、内温を75℃まで昇温させ、Multisizer 3(ベックマン・コールター社製、アパチャー径;50μm)を用いて粒径を測定し、平均粒径が5.8μmに到達した時点で、二段目投入分散液として、「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」を90質量部(固形分換算)滴下し、非晶性ポリエステル樹脂粒子が凝集粒子表面に付着するまで加熱撹拌を続けた。この反応溶液を少量取り出し、遠心分離機により遠心分離を行い、上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム160質量部をイオン交換水640質量部に溶解させた塩化ナトリウム水溶液を加え、さらに加熱撹拌を続けてフロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス社製)を用い、平均円形度が0.960になった時点で内温を20℃/minの速度で25℃まで冷却し、「トナー母体粒子1」の分散液を得た。
(凝集・融着、熟成及び冷却工程)にて生成したトナー母体粒子1の分散液を、バスケット型遠心分離機を用いて、固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)」に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥して「トナー母体粒子1」を作製した。
上記の「トナー母体粒子1」100質量部に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量部及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、トナー1を作製した。
トナー1の作製方法において、(凝集・融着、熟成及び冷却工程)における冷却速度を25℃/minとした以外は、同様にしてトナー2を作製した。
トナー1の作製において、(凝集・融着、熟成及び冷却工程)における冷却速度を11℃/minとした以外は、同様にしてトナー3を作製した。
トナー1の作製において、(凝集・融着、熟成及び冷却工程)における冷却速度を7℃/minとした以外は、同様にしてトナー4を作製した。
トナー1の作製において、(凝集・融着、熟成及び冷却工程)における、平均粒径が4μmに到達した時点で、二段目投入分散液として、「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」を90質量部(固形分換算)滴下し、非晶性ポリエステル樹脂粒子が凝集粒子表面に付着するまで加熱撹拌を続けた。この反応溶液を少量取り出し、遠心分離機により遠心分離を行い、上澄みが透明になった時点で、さらに5.8μmまで到達させ、塩化ナトリウム160質量部をイオン交換水640質量部に溶解させた塩化ナトリウム水溶液を加え、さらに加熱撹拌を続けてフロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス社製)を用い、平均円形度が0.960になった時点で内温を20℃/minの速度で25℃まで冷却し、「トナー母体粒子5」の分散液を得た。その後、洗浄・乾燥及び外添剤処理工程は、トナー1の作製と同様にしてトナー5を作製した。
トナー1の作製において、(凝集・融着、熟成及び冷却工程)における、平均粒径が5.8μmに到達した時点で、加熱撹拌を続けてフロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス社製)を用い、平均円形度が0.922になった時点で、二段目投入分散液として、「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」を90質量部(固形分換算)滴下し、非晶性ポリエステル樹脂粒子が凝集粒子表面に付着するまで加熱撹拌を続けた。この反応溶液を少量取り出し、遠心分離機により遠心分離を行い、上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム160質量部をイオン交換水640質量部に溶解させた塩化ナトリウム水溶液を加え、さらに加熱撹拌を続けて、平均円形度が0.960になった時点で内温を20℃/minの速度で25℃まで冷却し、「トナー母体粒子6」の分散液を得た。その後、洗浄・乾燥及び外添剤処理工程は、トナー1の作製と同様にしてトナー6を作製した。
トナー6の作製において、二段目投入分散液を投入するタイミングにおける平均円形度が0.922を0.933に変更した以外は、同様にしてトナー7を作製した。
トナー6の作製において、二段目投入分散液を投入するタイミングにおける平均円形度が0.922を0.947に変更した以外は、同様にしてトナー8を作製した。
トナー1の作製において、一段目投入分散液として「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液」420質量部を330質量部(固形分換算)、二段目投入分散液として「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」90質量部を180質量部(固形分換算)に変更した以外は、同様にしてトナー9を作製した。
トナー1の作製において、一段目投入分散液として「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液」420質量部を210質量部(固形分換算)、二段目投入分散液として「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」90質量部を300質量部(固形分換算)に変更した以外は、同様にしてトナー10を作製した。
トナー1の作製において、一段目投入分散液として「スチレン−アクリル樹脂粒子分散液」420質量部を570質量部(固形分換算)、「結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」90質量部を10質量部(固形分換算)、二段目投入分散液として「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」90質量部を20質量部(固形分換算)に変更した以外は、同様にしてトナー11を作製した。
トナー1の作製において、二段目投入分散液として滴下した「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」を、一段目投入分散液として90質量部(固形分換算)を滴下した以外は、同様にしてトナー12を作製した。
トナー1の作製において、(凝集・融着、熟成及び冷却工程)における、平均粒径が5.8μmに到達した時点で、塩化ナトリウム160質量部をイオン交換水640質量部に溶解させた塩化ナトリウム水溶液を加え、さらに加熱撹拌を続けてフロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス社製)を用い、平均円形度が0.960になった時点で、二段目投入分散液として、「非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液」を90質量部(固形分換算)滴下し、非晶性ポリエステル樹脂粒子が凝集粒子表面に付着するまで加熱撹拌を続けた。この反応溶液を少量取り出し、遠心分離機により遠心分離を行い、上澄みが透明になった時点で内温を20℃/minの速度で25℃まで冷却し、「トナー母体粒子13」の分散液を得た。その後、洗浄・乾燥及び外添剤処理工程は、トナー1の作製と同様にしてトナー13を作製した。
トナー13の作製において、(凝集・融着、熟成及び冷却工程)における冷却速度を4℃/minとした以外は、同様にしてトナー14を作製した。
表1に記載の「スチレン−アクリル樹脂(質量%)」とは、トナーに含まれる樹脂全体(スチレン−アクリル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂)の質量に対する割合である。なお、例えば、結晶性ポリエステル樹脂又は非晶性ポリエステル樹脂がハイブリッド構造を取った場合は、トナー母体粒子に含有するスチレン−アクリル樹脂の含有量に加えて、結晶性ポリエステル樹脂ユニット又は非晶性ポリエステル樹脂ユニットが結合したスチレン−アクリル樹脂の含有量も含むものとする。
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子を5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成し、体積基準メディアン径40μmのキャリアを得た。
キャリアの体積基準メディアン径は、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「へロス・アンド・ロドス(HELOS & RODOS)」(シンパティック社製)により測定した。上記キャリアにトナー1〜14をそれぞれトナー濃度が7質量部になるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器械株式会社)に投入し、回転速度45rpmで30分間混合し現像剤1〜14を作製した。
<ピーク高さの比の値(ATR比率)>
フーリエ変換赤外分光装置(Themo Fisher製Nicolet380)を使用して、全反射法(ATR法)で得られた吸収スペクトルのピーク強度比より、前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1190〜1220cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P2)の比の値(P2/P1)、及び前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1190〜1220cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P2)の比の値(P2/P1)を、上述した方法と同様にして求めた。
画像評価は、市販のカラー複合機「bizhub PRO C6500(コニカミノルタ社製)」において、定着温度、トナー付着量、及びシステム速度を自由に設定できるように改造した改造機Aを作製した。この改造機Aの現像装置に、上記で作製したトナーと現像剤を順次装填して評価を行った。評価は、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、A4サイズのNPI128g/m2(日本製紙製)を用い、トナー付着量5g/m2のベタ画像を定着させる定着実験を、定着下ローラーの温度を100℃に設定し、定着上ベルトの温度を110℃から5℃刻みで増加させるように変更しながら220℃まで繰り返し行った。この実験を、定着速度300mm/secで実施した。
アンダーオフセットとは、定着機を通過する際に与えられた熱によるトナー層の溶融が不十分であるために記録紙等の転写材から剥離してしまう画像欠陥をいう。
上記の方法で画像を形成した際に、アンダーオフセットが発生しない定着上ベルトの定着下限温度を評価し、低温定着性の指標とした。この定着下限温度が低ければ低い程、定着性が優れており、160℃未満を合格とした。
上記で作製したトナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り、蓋を閉めて、振とう機「タップデンサーKYT−2000」(セイシン企業社製)を用い、室温で600回振とうした後、蓋を取った状態で温度55℃、湿度35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、「パウダーテスター」(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmとなる振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上の残存したトナー量の比率(質量%)を測定し、下記式によりトナー凝集率を算出した。この試験を、湿度は35%RHのまま、試験温度を0.1℃ずつ上げながら、トナー凝集率が50質量%を超えるまで繰り返し行った。トナー凝集率が50質量%を超えない最大の試験温度(限界耐熱保管温度)を、耐熱保管性の指標とした。本発明においては、限界耐熱保管温度が56℃以上である場合を合格とする。
トナー凝集率(質量%)=篩上の残存トナー質量(g)/0.5(g)×100
上記の方法で作製したトナーについて、それぞれ15gをプラスチック容器(ポリ軟こう瓶100mL;アズワン社製)に入れ、蓋を閉めて、振とう機「タップデンサーKYT−4000」(セイシン企業社製)を用い、室温で1800回振とうした。次いで、トナーを300メッシュ(目開き45μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、再び、前述の振とう機にセットし、振動の強さをレベル10に設定して、2分間振動させた。篩を通過したトナーの質量が10.5g以上のものを、流動性が高く、実用的問題のないものと判断した。
Claims (8)
- 少なくともスチレン−アクリル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を含有する静電潜像現像用トナーであって、
前記静電潜像現像用トナーは、フーリエ変換赤外分光分析測定装置を用いて全反射法により吸収スペクトルを測定したとき、少なくとも吸収波数が690〜710cm−1(P1)、1190〜1220cm−1(P2)、及び1230〜1300cm−1(P3)の範囲内に吸収極大ピークを持ち、
前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1230〜1300cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P3)の比の値(P3/P1)が、0.02〜6.00の範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。 - 前記スチレン−アクリル樹脂の含有量が、前記静電潜像現像用トナーに含まれる樹脂全体の質量に対して、50〜90質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1190〜1220cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P2)の比の値(P2/P1)が、0.20以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1190〜1220cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P2)の比の値(P2/P1)が、0.02〜0.20の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1190〜1220cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P2)の比の値(P2/P1)が、0.02〜0.10の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1230〜1300cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P3)の比の値(P3/P1)が、0.05〜1.00の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 前記690〜710cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P1)と前記1230〜1300cm−1の範囲内の吸収極大ピーク高さ(P3)の比の値(P3/P1)が、0.05〜0.50の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
- 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナーを製造する静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
少なくともスチレン−アクリル樹脂の粒子と、非晶性ポリエステル樹脂の粒子と、結晶性ポリエステル樹脂の粒子とを凝集・融着し、得られたトナー母体粒子の水系分散液を冷却する際における冷却速度が、10〜30℃/minの範囲内であることを特徴とする静電潜像現像用トナーの製造方法。
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