本発明の新規ジカルボン酸類は、ヒドロキシアルカン酸類の第2級ヒドロキシ基を酸無水物でエステル化した化合物であり、下記式(1)で表される。
(基Aは脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示し、基R1はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基又はシアノ基を示し、基R2はアルキル基、R3、R4は同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示し、sは0又は1以上の整数を示し、nは0〜10の整数を示す)
基Aの脂肪族炭化水素基としては、例えば、飽和脂肪族炭化水素基{例えば、アルキレン基[例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基などの直鎖状C2−12アルキレン基、好ましくは直鎖状C2-6アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状C2-4アルキレン基、特に、エチレン基など]など};不飽和脂肪族炭化水素基{例えば、アルケニレン基[例えば、ビニレン基(エチニレン基)、プロペニレン基、2−ブテニレン基、メチルビニレン基、1,2−ジメチル−ビニレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-12アルケニレン基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルケニレン基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルケニレン基、特に、ビニレン基など]、アルカジエニレン基(例えば、1,3−ブタジエニレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C4-10アルカジエニレン基など)など}などが挙げられる。
基Aの脂環族炭化水素基としては、例えば、飽和脂環族炭化水素基{例えば、モノ又はジシクロアルキレン基[例えば、1,2−シクロブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−シクロオクチレン基、2,3−ノルボルネニレン基などのモノ又はジC4-10シクロアルキレン基、好ましくはモノ又はジシクロC5-8アルキレン基など]など}:不飽和脂環族炭化水素基{例えば、モノ又はジシクロアルケニレン基[例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジイル基、5−ノルボルネン−2,3−ジイル基などのモノ又はジC4-10シクロアルケニレン基、好ましくはモノ又はジC5-8シクロアルケニレン基など]、シクロアルカンジエニレン基[例えば、3,5−シクロヘキサジエン−1,2−ジイル基などのC4-10シクロアルカンジエニレン基など]など}などが挙げられる。
基Aの芳香族炭化水素基としては、例えば、単環式芳香族炭化水素基[例えば、1,2−フェニレン基(オルトフェニレン基)などのフェニレン基など]、多環式芳香族炭化水素基などが挙げられる。多環式炭化水素基としては、縮合多環式芳香族炭化水素基(例えば、1,8−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、2,3−アンチリレン基、4,5−フェナンチリレン基などの縮合多環式C10−16アリーレン基など)、環集合芳香族炭化水素基(例えば、2,2’−ビフェニレン基、2−フェニル−1,8−ナフチレン基などのビC6−12アリーレン基など)などが挙げられる。
これらの基Aのうち、アルキレン基(エチレン基など)、アルケニレン基(ビニレン基など)、モノ又はジシクロアルキレン基(1,2−シクロヘキシレン基、2,3−ノルボルニレン基など)、モノ又はジシクロアルケニレン基(4−シクロヘキセン−1,2−ジイル基、5−ノルボルネン−2,3−ジイル基など)、モノ又はビアリーレン基(1,2−フェニレン基、1,8−ナフチレン基、2,2’−ビフェニレン基など)などが好ましい。なお、生分解性の観点からは、脂肪族炭化水素基(例えば、エチレン基などのアルキレン基)が好ましい。特に、基Aがアルケニレン基などであるジカルボン酸(不飽和ジカルボン酸)を重合反応に供すると、不飽和結合が関与するためか、ポリマーの分子量を向上できる場合がある。
基R1としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などのC6−12アリール基、アルキルフェニル基(メチルフェニル(トリル)基、ジメチルフェニル(キシリル)基など)などのモノ又はジC1−4アルキル−C6−12アリール基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−10アルコキシ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など)、ニトロ基、シアノ基などが例示できる。これらの置換基R1は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの置換基R1のうち、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基など、特に、アルキル基が好ましい。
基R1の置換数sは、基Aの種類に応じて適宜選択でき、例えば、0〜10の整数(例えば、0〜6の整数)、好ましくは0〜4の整数、さらに好ましくは0〜2の整数(例えば、0又は1)、特に0であってもよい。
nは、0〜10の整数であり、例えば、0〜8の整数(例えば、0〜6の整数)、好ましくは1〜4の整数(例えば、1〜3の整数)、さらに好ましくは1又は2、特に1であってもよい。特に、式(1)において、nが1であるジカルボン酸類の原料である3−ヒドロキシアルカン酸類は、カルボキシル基に隣接するα位の活性水素と第2級ヒドロキシル基との脱水によりα,β−不飽和カルボン酸を生成しやすい。そのため、このような3−ヒドロキシアルカン酸類を重合に供すると、重合反応が停止してしまい、高分子量のポリマーを得ることが特に困難である。これに対して、式(1)で表されるジカルボン酸類を利用すると、第2級ヒドロキシル基がエステル化されているため、α,β−不飽和カルボン酸(副生成物)を生成せずに、高分子量のポリマーを生成できる。
基R2は、nの数により適宜選択でき、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−12アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−8アルキル基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基)などが例示できる。基R2は、特に直鎖状C1−4アルキル基(特にメチル基)である場合が多い。なお、nの数とR2の炭素数との合計は、例えば、1〜22の整数(例えば、1〜18の整数)、好ましくは2〜13の整数(例えば、2〜11の整数)、さらに好ましくは2〜6の整数、特に2〜4の整数であってもよい。nの数とR2の炭素数との合計が大きすぎると、生分解性が低下する虞がある。
R3及びR4はそれぞれ水素原子又はアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルキル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基(特にメチル基)であってもよい。R3及びR4は、同一又は異なるアルキル基であってもよい。
本発明の新規ジカルボン酸類は、ヒドロキシアルカン酸類の反応性の低い第2級ヒドロキシル基を酸無水物でエステル化しているため、縮合重合性を向上できる。また、副生成物である不飽和モノカルボン酸が生成しないため、ヒドロキシアルカン酸(特に、3−ヒドロキシアルカン酸)由来の骨格をポリマーに容易に導入可能である。
また、前記ジカルボン酸類は、酸無水物での変性により、融点(又は沸点)を向上できる。そのため、重合温度を向上でき、高分子量のポリマーを効率よく形成可能である。ジカルボン酸類の融点は、例えば、50〜150℃(例えば、55〜120℃)、好ましくは60〜100℃程度であってもよい。
さらに、前記ジカルボン酸類の熱分解温度は、例えば、150〜280℃、好ましくは170〜250℃、さらに好ましくは190〜240℃(例えば、200〜230℃)程度であってもよい。なお、融点及び熱分解温度は、示差熱−熱重量同時測定装置(TG−DTA)を用いて測定できる。
前記新規ジカルボン酸類は、製造原料である酸無水物を含んでいてもよく、新規ジカルボン酸類と酸無水物との組成物として利用してもよい。特に、酸無水物はポリマーのジカルボン酸成分として有用である。この組成物に含まれる酸無水物の割合は、新規ジカルボン酸類1モルに対して、0.01〜5モル(例えば、0.05〜4モル)、好ましくは0.1〜3モル(例えば、0.5〜2モル)、さらに好ましくは0.8〜1.5モル(例えば、0.8〜1.2モル)程度であってもよい。
[ジカルボン酸又はそのアルキルエステルの製造方法]
前記式(1)で表されるジカルボン酸又はそのモノ又はジアルキルエステルは、下記の反応工程により製造できる。すなわち、下記式(2)で表されるヒドロキシアルカン酸類と下記式(3)で表される酸無水物とを反応させて、下記式(1a)で表されるジカルボン酸又はモノアルキルエステルを調製できる。また、生成した下記式(1a)で表されるジカルボン酸又はモノアルキルエステルと下記式(4)で表されるアルコールとを反応させて、カルボキシル基をエステル化することにより、下記式(1b)で表されるジカルボン酸のジアルキルエステルを得てもよい。
(R4はアルキル基を示し、A、R1、R2、R3、s、nは前記に同じ)
前記式(2)において、R3が水素原子である代表的なヒドロキシアルカン酸類としては、例えば、nが0である2−ヒドロキシアルカン酸[例えば、2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、2−ヒドロキシブタン酸、2−ヒドロキシペンタン酸、2−ヒドロキシヘキサン酸などの2−ヒドロキシC3−14アルカン酸、好ましくは2−ヒドロキシC3−9アルカン酸、さらに好ましくは2−ヒドロキシC3−5アルカン酸など]、nが1である3−ヒドロキシアルカン酸[例えば、3−ヒドロキシブタン酸(3−ヒドロキシ酪酸)、3−ヒドロキシペンタン酸(3−ヒドロキシ吉草酸)、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸などの3−ヒドロキシC4−15アルカン酸、好ましくは3−ヒドロキシC4−10アルカン酸、さらに好ましくは3−ヒドロキシC4−6アルカン酸]、nが2である4−ヒドロキシアルカン酸(例えば、4−ヒドロキシペンタン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸、4−ヒドロキシオクタン酸などの4−ヒドロキシC5−16アルカン酸、好ましくは4−ヒドロキシC5−11アルカン酸、さらに好ましくは4−ヒドロキシC5−7アルカン酸)、nが3である5−ヒドロキシアルカン酸(例えば、5−ヒドロキシヘキサン酸、5−ヒドロキシヘプタン酸などのC6−17アルカン酸、好ましくは5−ヒドロキシC6−12アルカン酸、さらに好ましくは5−ヒドロキシC6−8アルカン酸)、nが4である6−ヒドロキシアルカン酸(例えば、6−ヒドロキシヘプタン酸、6−ヒドロキシオクタンなどの6−ヒドロキシC7−18アルカン酸、好ましくは6−ヒドロキシC7−13アルカン酸、さらに好ましくは6−ヒドロキシC7−9アルカン酸)、nが5である7−ヒドロキシアルカン酸(例えば、7−ヒドロキシオクタン酸、7−ヒドロキシノナン酸などの7−ヒドロキシC8−19アルカン酸、好ましくは7−ヒドロキシC8−14アルカン酸、さらに好ましくは7−ヒドロキシC8−10アルカン酸)、nが6である8−ヒドロキシアルカン酸(例えば、8−ヒドロキシノナン酸、8−ヒドロキシデカン酸などの8−ヒドロキシC9−20アルカン酸、好ましくは8−ヒドロキシC9−15アルカン酸、さらに好ましくは8−ヒドロキシC9−11アルカン酸)、nが7である9−ヒドロキシアルカン酸(例えば、9−ヒドロキシデカン酸、9−ヒドロキシウンデカン酸などの9−ヒドロキシC10−21アルカン酸、好ましくは9−ヒドロキシC10−16アルカン酸、さらに好ましくは9−ヒドロキシC10−12アルカン酸)、nが8である10−ヒドロキシアルカン酸(例えば、10−ヒドロキシウンデカン酸、10−ヒドロキシドデカン酸などの10−ヒドロキシC11−22アルカン酸、好ましくは10−ヒドロキシC11−17アルカン酸、さらに好ましくは10−ヒドロキシC11−13アルカン酸など)、nが9である11−ヒドロキシアルカン酸(例えば、11−ヒドロキシドデカン酸などの11−ヒドロキシC12−23アルカン酸、好ましくは11−ヒドロキシC12−18アルカン酸、さらに好ましくは10−ヒドロキシC12−14アルカン酸など)、nが10である12−ヒドロキシアルカン酸(例えば、12−ヒドロキシトリデカン酸などの12−ヒドロキシC13−24アルカン酸、好ましくは12−ヒドロキシC13−19アルカン酸、さらに好ましくは12−ヒドロキシC13−15アルカン酸など)などが例示できる。また、前記式(2)において、R3がアルキル基であるヒドロキシアルカン酸類としては、前記例示のヒドロキシアルカン酸に対応するアルキルエステル(例えば、C1−6アルキルエステル、好ましくはC1−4アルキルエステル、さらに好ましくはメチルエステル、エチルエステル、特にメチルエステル)などが例示できる。
これらのヒドロキシアルカン酸類は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのヒドロキシアルカン酸類のうち、nが1である3−ヒドロキシアルカン酸類(例えば、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸などの3−ヒドロキシC4−10アルカン酸、これらの3−ヒドロキシアルカン酸のC1−2アルキルエステルなど)、nが2である4−ヒドロキシアルカン酸(4−ヒドロキシペンタン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸などの4−ヒドロキシC5−11アルカン酸、これらの4−ヒドロキシアルカン酸のC1−2アルキルエステルなど)などが好ましい。特に、α,β−不飽和カルボン酸を生成せずに、ポリマーの合成が困難であるという観点から、nが1である3−ヒドロキシアルカン酸類を好適に使用して、ポリマーを合成してもよい。なお、前記ヒドロキシアルカン酸類は、光学異性体(R体又はS体)であってもよく、ラセミ体であってもよい。なお、R3がアルキル基であるヒドロキシアルカン酸類(ヒドロキシアルカン酸アルキル)は、市販品を用いてもよく、慣用のエステル化法[例えば、ヒドロキシアルカン酸とR3に対応するアルコール(例えば、メタノール、エタノールなどのC1−4アルカノールなど)との反応]により生成してもよい。
前記式(3)で表される酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、テトラヒドロ無水フタル酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(無水ハイミック酸)、無水ヘット酸などの飽和又は不飽和脂環族ジカルボン酸無水物;メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物などの飽和又は不飽和脂環族トリカルボン酸無水物;シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などの飽和又は不飽和脂環族テトラカルボン酸二無水物;無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、ニトロ無水フタル酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,2’−ビフェニルジカルボン酸無水物などの芳香族ジカルボン酸無水物;無水トリメリット酸などの芳香族トリカルボン酸無水物;無水ピロメリット酸などの芳香族テトラカルボン酸二無水物などが例示できる。
これらの酸無水物は、単独又は二種以上組合わせて使用できる。これらの酸無水物(ジカルボン酸無水物)のうち、生分解性の観点から、脂肪族ジカルボン酸無水物が好ましく、耐熱性などの観点から、脂環族又は芳香族ジカルボン酸無水物が好ましい。なお、トリカルボン酸無水物、テトラカルボン酸二無水物などのポリカルボン酸(3以上のカルボキシル基を有するカルボン酸)無水物を用いると、重合反応において、分岐構造を有するポリマーを形成可能なポリカルボン酸を形成できるため、ポリマーの分子量を大きくできる。
前記酸無水物の酸無水物基の割合は、ヒドロキシアルカン酸類のヒドロキシ基1モルに対して、例えば、0.8〜5モル、好ましくは1〜4モル(例えば、1.2〜4モル)、さらに好ましくは1.5〜3モル(例えば、2〜3モル)程度であってもよい。なお、過剰量の酸無水物(無水ジカルボン酸基)を用いて、前記式(1)で表されるジカルボン酸類と酸無水物との混合物を調製し、残存する酸無水物を重合反応において、ジカルボン酸成分として利用してもよい。このような方法は、式(1)で表されるジカルボン酸類を分離精製(又は単離)することなく重合反応に供することができるため、ポリマー(特にポリエステル樹脂)の生産性を向上できる。
反応は、無触媒下で行ってもよく、触媒下で行うと好ましい。触媒としては、慣用の酸触媒であってもよく、塩基性触媒であってもよい。酸触媒としては、例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩化水素(又は塩酸)、硝酸、リン酸など)、有機酸(例えば、スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)などが挙げられる。塩基性触媒としては、例えば、第三級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、第4級アンモニウム塩(塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)、金属アルコキシド[例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラt−ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、亜鉛t−ブトキシド、カリウムt−ブトキシドなど]などが挙げられる。これらの触媒は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの塩基性触媒のうち、第三級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンなど)、金属アルコキシド、テトラアルキルアンモニウムハライド(臭化テトラエチルアンモニウムなど)などが汎用される。
触媒の割合は、ヒドロキシアルカン酸に対して、0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜1モル%、さらに好ましくは0.1〜0.5モル%程度であってもよい。
なお、触媒に、第3級アミン類を用いて、塩を形成すると、比較的容易に前記ジカルボン酸を単離できる場合が多い。この場合に、第3級アミン類の割合は、前記ヒドロキシアルカン酸1モルに対して、例えば、0.5〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.2モル(例えば、0.9〜1.1モル)程度であってもよい。
反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中、攪拌しながら行ってもよく、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。また、還流しながら行ってもよい。さらに、反応は溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。
溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
反応温度は、例えば、20〜140℃、好ましくは50〜130℃、さらに好ましくは80〜120℃程度であってもよい。反応温度が高すぎると、不飽和モノカルボン酸が生成する虞があり、逆に反応温度が低すぎると、エステル化に長時間を要する。また、式(2)のR3がアルキル基であるヒドロキシアルカン酸類(例えば、ヒドロキシアルカン酸C1−2アルキル、特にヒドロキシアルカン酸メチル)の沸点は低いため、反応温度は、例えば、20〜110℃、好ましくは30〜90℃、さらに好ましくは40〜80℃(例えば、50〜70℃)程度であってもよい。このようなヒドロキシアルカン酸アルキルは、反応温度を低くできるとともに、アルキルエステル化により、カルボニル基のα位の水素の脱離性が低下する場合が多いため、不飽和モノカルボン酸の生成を有効に抑制できる。また、反応時間は、特に限定されず、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。
なお、式(2)のR3がアルキル基であるとき、式(1a)のモノアルキルエステルの生成反応(式(2)のヒドロキシルアルカン酸アルキルと式(3)の酸無水物との反応)において、平衡論的に他方のカルボキシル基がエステル化されたモノアルキルエステルが生成してもよい。
エステル化工程において、前記式(4)で表されるアルコールとしては、前記式(1b)のR4に対応するアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、i−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなどの直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルカノール、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1−4アルカノール、さらに好ましくはメタノール、エタノール(特にメタノール)などが挙げられる。
アルコールの割合は、式(1)で表されるジカルボン酸類のカルボキシル基に対して、例えば、1〜10モル、好ましくは1.2〜5モル、さらに好ましくは1.5〜3モル程度であってもよい。
反応には、触媒を使用してもよい。触媒は、前記酸触媒、塩基性触媒(例えば、金属アルコキシドなど)であってもよい。これらの触媒のうち、酸触媒を好適に使用できる。酸触媒としては、前記無機触媒、前記有機触媒、ホモ又はヘテロポリ酸(例えば、タングストリン酸、モリブドリン酸、タングストケイ酸、モリブドケイ酸など)、ルイス酸(例えば、三フッ化ホウ素エーテラート、四塩化スズなど)、陽イオン交換樹脂などの固体酸触媒などが挙げられる。酸触媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
前記触媒の割合は、特に限定されず、アルコール1モルに対して、例えば、0.001モル〜1モル、好ましくは0.01〜0.5モル程度であってもよい。
反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、前記例示の溶媒などが使用できる。
反応温度は、特に限定されず、例えば、50〜200℃、好ましくは70〜150℃(例えば、80〜120℃)程度であってもよい。また、還流しながら行ってもよい。さらに、反応は、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中、攪拌しながら行うことができ、常圧下、加圧下又は減圧下で行ってもよい。
なお、式(1b)で表されるモノ又はジアルキルエステルの生成反応(エステル化反応)において、前記式(4)で表されるアルコールにより、式(1a)で表されるジカルボン酸の一方又は双方のカルボキシル基がエステル化されてもよい。また、式(1a)のR3がアルキル基であるモノアルキルエステルのカルボキシル基(−COOR3)は、前記式(4)で表されるアルコールにより、エステル交換される場合がある。
生成した新規ジカルボン酸又はそのアルキルエステルは、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製してもよい。
なお、前記ジカルボン酸の誘導体(例えば、ジカルボン酸エステル)、ジカルボン酸を重合成分に含むオリゴマーなどは生分解性が高いため、生分解性可塑剤として利用することもできる。
[樹脂及びその製造方法]
本発明では、ヒドロキシアルカン酸類の反応性の低い第2級ヒドロキシル基を前記酸無水物で変性してジカルボン酸類を生成させるため、重合反応性を改善できる。また、第2級OH基を有するヒドロキシアルカン酸由来の骨格を比較的多く含むポリマーであっても、比較的高い分子量で、効率よく得ることができる。しかも、通常、微生物によりポリ(3−ヒドロキシアルカン酪酸)などは合成されるが、このような3−ヒドロキシ酪酸などの3−ヒドロキシアルカン酸由来の骨格を比較的多く含むポリマーであっても、高い分子量で形成できる。このような本発明のポリマー(ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂)は、優れた生分解性に加え、ジカルボン酸成分、ジオール成分の種類の組み合わせにより、種々の特性(例えば、高耐熱性、高い機械的強度など)を付与できる。このようなポリマーは生分解性プラスチックとして非常に有用性が高い。
本発明の樹脂は、化学的合成法により合成され、少なくとも前記式(1)で表されるジカルボン酸類及びこれらのエステル形成性誘導体[例えば、酸ハライド(酸クロライドなど)など]から選択された少なくとも1種[ジカルボン酸成分(A−1)という]を含むジカルボン酸成分(A)とジオール成分とを重合成分とするポリエステル樹脂であってもよい。
前記ジカルボン酸成分(A)は、ジカルボン酸成分(A−1)のみで形成してもよく、第2のジカルボン酸成分(A−2)を含んでいてもよい。
(第2のジカルボン酸成分(A−2))
第2のジカルボン酸成分(A−2)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが例示できる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アルカンジカルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などのC2−16アルカンジカルボン酸など)、不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2−10アルケン−ジカルボン酸など)などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1.4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカンジカルボン酸など)、ジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸など)、シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5−10シクロアルケン−ジカルボン酸)、ジ又はトリシクロアルケンジカルボン酸(例えば、ノルボルネンジカルボン酸など)などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸[例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキルイソフタル酸など)などのC6−10アレーンジカルボン酸など]、多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの異なる環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸;1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などの同一の環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、などの縮合多環式C10−24アレーン−ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10−16アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくは縮合多環式C10−14アレーン−ジカルボン酸など]、アリールアレーンジカルボン酸[例えば、ビフェニルジカルボン酸(例えば、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)などのC6−10アリール−C6−10アレーン−ジカルボン酸など]、ジアリールアルカンジカルボン酸[例えば、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸など)などのジC6−10アリールC1−6アルカン−ジカルボン酸など]、ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、ジフェニルケトンジカルボン酸(例えば、4.4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)などのジC6−10アリールケトン−ジカルボン酸)など]、フルオレン骨格を有するジカルボン酸など]などが挙げられる。また、これらのエステル形成性誘導体[例えば、低級アルキルエステル(C1−4アルキルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライドなど)、酸無水物など]などが挙げられる。これらの他のジカルボン酸は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
フルオレン骨格を有するジカルボン酸としては、例えば、ジカルボキシフルオレン(例えば、2,7−ジカルボキシフルオレンなど);9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC2−6アルキル)フルオレンなど];9−(カルボキシ−カルボキシアルキル)フルオレン[例えば、9−(1−カルボキシ−2−カルボキシエチル)フルオレン、9−(2−カルボキシ−3−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9−(カルボキシ−カルボキシC2−6アルキル)フルオレンなど];9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−カルボキシ−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−カルボキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC6−12アリール)フルオレンなど];9,9−ビス(カルボキシアルキル−アリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(カルボキシメチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−カルボキシエチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−(カルボキシメチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−(カルボキシメチル)−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−(カルボキシメチル)−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC1−6アルキル−C6−12アリール)フルオレンなど]、これらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
これらの第2のジカルボン酸(A−2)うち、生分解性の観点から、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸などのC2−6アルカンジカルボン酸など)、耐熱性などの観点から、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
なお、ジカルボン酸成分(A−1)の割合は、全ジカルボン酸成分(A)に対して、例えば、20モル%以上(例えば、30〜100モル%)、好ましくは40モル%以上(例えば、45〜95モル%)、さらに好ましくは50モル%以上(例えば、50〜90モル%)程度であってもよい。
(ジオール成分)
ジオール成分としては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオールなどが挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−6アルカンジオール、さらに好ましくはC2−4アルカンジオール)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2−4アルカンジオールなど)などが挙げられる。
脂環族ジオールとしては、例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5−8シクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C5−8シクロアルカンなど)、イソソルバイドなどが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、例えば、ジヒドロキシアレーン(例えば、ハイドロキノン、レゾルシノールなど)、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン(例えば、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーンなど)、ビスフェノール類(例えば、ビフェノール、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカンなど)、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体、フルオレン骨格を有するジオールなどが挙げられる。これらのジオール成分は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
フルオレン骨格を有するジオールとしては、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン骨格を有するジオール化合物、例えば、下記式(5)で表されるジオールが挙げられる。
(式中、環Zはアレーン環、R5はアルキレン基、R6及びR7及は置換基を示し、pは0又は1以上の整数、kは0〜4の整数、mは0又は1以上の整数である。)
前記式(5)において、環Zで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環[例えば、縮合二環式アレーン(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10−16アレーン)環などの縮合二乃至四環式アレーン環など]、環集合アレーン環[ビアレーン環(例えば、ビフェニル環、ビナフチル環)などのビC6−12アレーン環など]などが含まれる。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよい。好ましいアレーン環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などが挙げられる。
前記式(5)において、アルキレン基R5としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基などのC2−6アルキレン基などが例示できる。なお、mが2以上の整数である場合、アルキレン基R5の種類は、同一又は異なっていてもよい。また、アルキレン基R3の種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
オキシアルキレン基(OR5)の数mは、例えば、0〜15の整数(例えば、0〜10の整数)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜8(例えば、1〜8)の整数、好ましくは0〜4(例えば、1〜4)の整数、特に0〜3(例えば、1〜3)程度の整数であってもよく、通常、0〜2の整数(例えば、0又は1)であってもよい。
基[HO−(R5O)m−]は、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2〜4−位(特に、3−位又は4−位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8−位に置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9−位に対してナフタレン環の1−位又は2−位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5−位、2,6−位などの関係で基[HO−(R5O)m−]が置換している場合が多い。また、環集合アレーン環Zにおいて、基[HO−(R5O)m−]の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの4−位がフルオレンの9−位に結合しているとき、基[HO−(R5O)m−]の置換位置は、2−,3−,2’−,3’−,4’−位のいずれであってもよく、通常、2−,3’−,4’−位、好ましくは2−,4’−位(特に、2−位)に置換していてもよい。
前記式(5)において、置換基R6としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−6アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−8シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基);アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基など);アシル基(アセチル基などのC1−6アルキル−カルボニル基など);アルキルオキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルキルオキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など);ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)などが例示できる。
代表的な置換基R6としては、C1−6アルキル基(特にメチル基)、C6−10アリール基(特にフェニル基)、C6−8アリール−C1−2アルキル基、C1−4アルコキシ基などが挙げられる。なお、置換基R6がアリール基であるとき、置換基R6は、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基R6の種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
置換数pは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、例えば、0〜8程度の整数であってもよく、0〜4の整数、好ましくは0〜3(例えば、0〜2)の整数、特に0又は1であってもよい。特に、pが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、置換基R6がメチル基であってもよい。
置換基R7としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、カルボキシル基、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)などが挙げられる。置換基R7はアルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基などのC1−3アルキル基)などである場合が多い。置換数kは0〜4(例えば、0〜3)の整数、好ましくは0〜2の整数(例えば、0又は1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基R7の種類は互いに同一又は異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基R7の種類は同一又は異なっていてもよい。また、置換基R7の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、3−位及び/又は7−位など)であってもよい。
前記式(5)において、mが0である化合物としては、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−フェニル−3−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−12アリール−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−メチル−3−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレンなどが例示できる。
前記式(5)において、mが1である化合物としては、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)フルオレン類{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール)フルオレン、9,9−ビス[4−フェニル−3−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C6−12アリール−ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−メチル−3−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C1−4アルキル−ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール]フルオレンなど}などが例示できる。
前記式(5)において、mが2以上の化合物としては、前記mが0又は1の化合物に対応し、オキシアルキレン基(特にオキシC2−4アルキレン基)の繰り返し単位mが2〜5の化合物などが挙げられる。
これらのジオールのうち、生分解性の観点から、脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのアルカンジオールなど)、耐熱性の観点から、脂環族ジオール、芳香族ジオールなどが挙げられる。
なお、重合成分として、前記ジカルボン酸成分(A)、前記ジオール成分の他の成分、例えば、ヒドロキシカルボン酸(例えば、第1級又は第3級ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルカン酸、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸など)、そのエステル形成性誘導体[例えば、低級アルキルエステル(C1−4アルキルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライドなど)など]、ラクトンなどを用いてもよい。
第1級ヒドロキシル基を有するヒドロキシアルカン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシプロパン酸、4−ヒドロキシブタン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、7−ヒドロキシペンタン酸、8−ヒドロキシオクタン酸、9−ヒドロキシナノン酸、10−ヒドロキシデカン酸などのヒドロキシC2−15アルカン酸など)などが例示できる。また、第3級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカン酸としては、例えば、2−メチル、2−ヒドロキシ−2−メチル−ペンタン酸、3−ヒドロキシ−3−メチル−ブタン酸、4−ヒドロキシ−4−メチル−ブタン酸、5−ヒドロキシ−5−メチル−ペンタン酸、6−ヒドロキシ−6−メチル−ヘキサン酸などのC1−6アルキル−ヒドロキシC3−15アルカン酸などが例示できる。
ラクトンとしては、前記第1級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカン酸に対応するラクトン(例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのC3−15ラクトンなど)、前記第3級ヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカン酸に対応するラクトン(例えば、β−ジメチルプロピオラクトン、γ−ジメチルブチロラクトンなどのジC1−12アルキル−C3−15ラクトンなど)などが例示できる。これらの他の成分は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記ジカルボン酸成分(A)とジオール成分との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=0.5/1〜1.5/1、好ましくは0.8/1〜1.2/1、さらに好ましくは0.9/1〜1.1/1程度であってもよい。
反応は触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、例えば、金属触媒[例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなど)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)、周期表第14族金属(ゲルマニウム、スズなど)、周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む金属化合物など]、塩基触媒(例えば、前記ジカルボン酸の製造方法に例示の第4級アンモニウム塩など)、酸触媒(前記ジカルボン酸の製造方法に例示の酸触媒など)などが挙げられる。金属化合物としては、例えば、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物(酸化ゲルマニウムなど)、金属塩化物(塩化スズなど)、金属アルコキシド(チタンテトラアルコキシドなど)、アルキル金属(トリアルキルアルミニウムなど)などが例示できる。これらの触媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
触媒の使用は、例えば、ジカルボン酸成分(A)1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モル程度であってもよい。
反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。
溶媒としては、前記ジカルボン酸の製造方法に例示の溶媒を使用できる。溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
前記ポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸成分(A)と前記ジオール成分とを縮合重合させることにより製造できる。重合方法(製造方法)としては、慣用の方法、例えば、溶融重合法(ジオール成分とジカルボン酸成分とを溶融混合下で重合させる方法)、溶液重合法、界面重合法などが例示できる。
反応は、通常、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行うことができる。また、反応は、常温下又は減圧下(例えば、1×102〜1×104Pa程度)で行ってもよい。
本発明のジカルボン酸類は、α,β−不飽和ジカルボン酸が分子内脱水を生じる150℃以上の温度であっても、α,β−不飽和カルボン酸を生成しないため、高温下での反応に供してもよい。そのため、反応温度は、例えば、70〜250℃(例えば、100〜240℃)、好ましくは130〜230℃(例えば、150〜230℃)、さらに好ましくは160〜220℃程度であってもよい。また、ジカルボン酸のアルキルエステル(例えば、モノ又はジC1−2アルキルエステル)を利用すると、低温であっても、効率的に高分子量化できる。なお、反応時間は、特に限定されず、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間程度であってもよい。
また、反応終了後、ポリエステル樹脂は、慣用の分離方法、例えば、反応生成物を貧溶媒により再沈殿する方法(例えば、高分子量ポリマーの溶解性が低く、かつ未反応成分や低分子量ポリマーの溶解性が高い溶媒により分画する方法など)により分離精製してもよい。
貧溶媒としては、例えば、水性溶媒[例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノール)など]、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)などが例示できる。
前記新規ジカルボン酸(A−1)は、重縮合が容易であるため、比較的高い割合でヒドロキシアルカン酸由来の骨格をポリエステル樹脂に導入できる。すなわち、新規ジカルボン酸(A−1)単位の割合は、全ジカルボン酸単位に対して、例えば、20モル%以上(例えば、25〜100モル%)、好ましくは30モル%以上(例えば、35〜100モル%)であってもよく、例えば、50モル%以上(例えば、60〜90モル%)、好ましくは70モル%以上(例えば、80〜95モル%)、さらに好ましくは90モル%以上(例えば、95〜100モル%)程度にすることもできる。また、新規ジカルボン酸(A−1)単位の割合は、全ジカルボン酸単位に対して、例えば、20〜70モル%(例えば、25〜60モル%)、好ましくは30〜50モル%(例えば、35〜45モル%)程度であってもよい。
さらに、3−ヒドロキシアルカン酸類(例えば、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸メチルなど)と酸無水物とを反応させて、この反応混合物からジカルボン酸を分離精製することなく、重合反応に供しても、3−ヒドロキシアルカン酸類と酸無水物との反応を低温で行うことができるため、クロトン酸の生成量を少なくできる。このような方法で得られたポリエステル樹脂において、新規ジカルボン酸(A−1)単位の割合が大きくても、不飽和モノカルボン酸の生成量が少ない。すなわち、副生成物である不飽和モノカルボン酸の生成割合は、得られるポリエステル樹脂を構成する新規ジカルボン酸(A−1)単位(第2級OH基を有するヒドロキシアルカン酸由来の骨格)に対して、例えば、10モル%以下(例えば、0.1〜10モル%)、好ましくは7モル%以下(例えば、0.5〜6モル%)、さらに好ましくは5モル%以下(例えば、1〜4モル%)、特に、3モル%以下(例えば、1.5〜3モル%)程度であってもよい。なお、不飽和モノカルボン酸はポリエステル樹脂(例えば、ポリエステル樹脂の末端)に結合している場合が多い。特に、3−ヒドロキシアルカン酸アルキル(例えば、3−ヒドロキシ酪酸メチルなど)を分離精製することなく、重合反応に供すると、分子内脱水反応を促進する場合がある触媒(例えば、酸触媒)の存在下であっても、不飽和モノカルボン酸の生成を有効に抑制できる場合がある。
本発明のポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、5000以上(例えば、5000〜100000)、好ましくは7000以上(例えば、7000〜70000)、さらに好ましくは8000以上(例えば、8000〜50000)程度であってもよい。なお、前記不飽和ジカルボン酸を重合成分に利用すると、重合平均分子量が大きなポリエステル樹脂が得られる場合がある。また、分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、1.2〜3.5、好ましくは1.5〜3.0、さらに好ましくは1.7〜2.5(例えば、1.9〜2.2)程度であってもよい。
また、前記ジオール成分に代えて、ジアミン成分を使用し、前記ジカルボン酸成分(A−1)を含むジカルボン酸成分(A)と前記ジアミン成分とを重合成分とするポリアミド(ポリエステルアミド)樹脂を形成してもよい。
ジアミン成分としては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミンなどが挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、アルカンジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミンなどのC2−12アルカンジアミン、好ましくはC2−8アルカンジアミン、さらに好ましくはC2−4アルカンジアミン)などが挙げられる。
脂環族ジアミンとしては、例えば、シクロアルカンジアミン(例えば、ジアミノシクロヘキサンなどのC5−8シクロアルカンジアミン)、ジ又はトリシクロアルカンジアミン(例えば、ノルボルナンジアミンなど)、イソホロンジアミン、ジ(アミノシクロアルキル)アルカン[例えば、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンなどのジ(アミノC5−8シクロアルキル)C1−4アルカン]などが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、アレーンジアミン(例えば、p−フェニレンジアミンなどのC6−10アレーンジアミン)、アミノアルキル−アミノアレーン[例えば、α−(3−アミノフェニル)エチルアミンなどのアミノC1−4アルキル−アミノC6−10アレーンなど]、ジ(アミノアルキル)アレーン(例えば、p−キシリレンジアミンなどのジ(アミノC1−4アルキル)C6−10アレーン)など)、ジ(アミノアリール)アルカン[例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどのジ(アミノC6−8アリール)C1−4アルカン]などが挙げられる。これらのジアミン成分は単独又は二種以上組み合わせてもよい。これらのジアミンのうち、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミンなどを好適に使用できる。
前記ジカルボン酸成分(A)とジアミン成分との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=0.5/1〜1.5/1、好ましくは0.8/1〜1.2/1、さらに好ましくは0.9/1〜1.1/1程度であってもよい。
前記ポリアミド樹脂は、前記ジカルボン酸成分(A)と前記ジアミン成分とを縮合重合させることにより製造できる。重合方法(製造方法)としては、前記ポリエステル樹脂と同様の重合方法(例えば、溶融重合法など)などが例示できる。
反応は触媒の非存在下又は触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、例えば、前記ジカルボン酸の製造に例示の触媒(例えば、無機酸など);硫酸塩(硫酸カルシウムなど)、金属酸化物(二酸化ケイ素、酸化アルミニウムなど)、ゼオライト、ヘテロポリ酸、イオン交換樹脂などの固体酸などが挙げられる。これらの触媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。触媒の使用は、例えば、ジカルボン酸成分(A)1モルに対して、0.01×10−4〜100×10−4モル、好ましくは0.1×10−4〜40×10−4モル程度であってもよい。
反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、前記ジカルボン酸の製造方法に例示の溶媒などが挙げられる。溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
反応温度は、例えば、50〜250℃(例えば、80〜240℃)、好ましくは100〜230℃(例えば、130〜230℃)、さらに好ましくは150〜220℃程度であってもよい。また、ポリエステル樹脂と同様に、ジカルボン酸のアルキルエステル(例えば、モノ又はジC1−2アルキル)を利用すると、比較的低温であっても、高分子量化できる。
なお、反応条件(反応雰囲気、圧力、反応時間など)、分離方法などもポリエステル樹脂と同様の条件又は方法などを用いてもよい。
また、ポリアミド樹脂においても、重合成分に前記新規ジカルボン酸(A−1)を利用するため、比較的高い割合でヒドロキシアルカン酸由来の骨格を樹脂に導入でき、比較的高い分子量で得ることができる。しかも、不飽和モノカルボン酸の生成量も少ない。そのため、ポリアミド樹脂に導入された新規ジカルボン酸(A−1)単位の割合、不飽和モノカルボン酸の生成割合、ポリアミド樹脂の重量平均分子量及び分子量分布は、ポリエステル樹脂と同様の範囲であってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(分子量)
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(東ソー(株)製、「HLC−8320GPC」)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で測定した。
[1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトル]
1H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルは、溶媒としてCDCl3を用いて、NMR(ブルカー・バイオスピン(株)、「AVANCE III HD 300MHz」)装置によって測定した。
(熱分析)
示差熱−熱重量同時測定装置(TG−DTA)((株)島津製作所製、「DTG−60A」)を用いて、熱分析を行った。なお、温度25〜500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した。図中、TGAは熱重量変化を示し、DTAは示差熱分析を示す。
実施例1
無水コハク酸22.0g(0.22mol)、(R)−3−ヒドロキシ酪酸11.4g(0.11mol)、チタンテトラブトキシド0.25mlを200mlフラスコに入れ、窒素雰囲気下、115℃で1.5時間反応させた。さらに、30分間140℃で加熱真空引きし、下記式で表されるジカルボン酸を得た。得られたジカルボン酸の純度は、約90%であった。また、図1に1H−NMRスペクトル、図2に13C−NMRスペクトル、図3に熱分析データを示す。
1H−NMR(CDCl3、ppm):1.23−1.29(3H,−CH(CH 3)−)、2.50−2.68(6H,−CH 2CH 2COOCH(CH3)CH 2−)、5.21−5.33(1H,−CH(CH3)−)、11.00(2H,broad,(−COOH)2)
13C−NMR(CDCl3、ppm):19.72、28.94、29.09、40.34、67.45、171.30、176.31、178.29。
実施例2
(R)−3−ヒドロキシ酪酸メチル11.8g(100mmol)、無水コハク酸10.0g(100mmol)、トリエチルアミン10.1g(100mmol)、ジクロロメタン75mlを200mlフラスコに入れ、5分間窒素フローを行った。さらに、オイルバス設定温度50℃の条件下、1.5時間還流しつつ反応させ、反応生成物をエバポレータにより80℃で減圧濃縮して下記式で表されるジカルボン酸モノメチルを得た。得られたジカルボン酸モノメチルの純度は93%であった。図4に1H−NMRスペクトル、図5に熱分析データを示す。
1H−NMR(CDCl3、ppm):1.11−1.19(3H,−CH(CH 3)−)、2.34−2.59(6H,−CH 2CH 2COOCH(CH3)CH 2−)、3.56−3.60(3H,−COOCH 3)、5.09−5.22(1H,−CH(CH3)−)、11.77(1H,broad,−COOH)。
なお、NMRスペクトルの結果から、下記式のメトキシカルボニル基とカルボキシル基とが入れ替わったモノメチルエステル、カルボキシル基に代えてメトキシカルボニル基が置換したジメチルエステルも含まれていることがわかった。さらに、ジカルボン酸モノメチル1モルに対して0.5モルのトリエチルアミンが含まれることを確認した。このトリエチルアミンは、ジカルボン酸モノメチルと塩を形成していると考えられる。なお、トリエチルアミンの仕込み量に対する残量は濃縮時に除去されたものと考えられる。
実施例3
無水コハク酸17.31g(0.173mol)、(R)−3−ヒドロキシ酪酸9.00g(0.086mol)、チタンテトラブトキシド0.25mlを200mlフラスコに入れ、窒素雰囲気下、115℃で1.5時間反応させ、ジカルボン酸と無水コハク酸との割合が1:1である混合物を得た。さらに、1,4−ブタンジオールを15.59g(0.173mol)加え、2mmHg減圧下、190℃まで徐々に昇温し、190℃で1時間反応させてポリマー(ポリエステル)を得た。得られたポリマーの数平均分子量Mnは4000、重量平均分子量Mwは8000であった。また、ポリマーの構成単位のうち、(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位の割合は、無水コハク酸単位に対して37モル%であった。なお、クロトン酸は、無水コハク酸単位に対して1モル%[(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位に対して2.7モル%]の割合でポリマーに混在していた。なお、クロトン酸は、ポリマーの末端に付加していると考えられる。
実施例4
無水マレイン酸29.4g(0.300mol)、(R)−3−ヒドロキシ酪酸15.6g(0.150mol)、チタンテトラブトキシド0.25mlを200mlフラスコに入れ、窒素雰囲気下、115℃で1.5時間反応させ、ジカルボン酸と無水マレイン酸との割合が1:1である混合物を得た。さらに、1,4-ブタンジオールを28.4g(0.315mol)加え、2mmHg減圧下、220℃まで徐々に昇温し、220℃で3時間反応させてポリマーを得た。得られたポリマーは、重量平均分子量Mwが9000であったが、高分子量体である架橋成分を含んでいた。得られたポリマーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、ヘキサンにより再沈殿させることで重量平均分子量Mwが44500の高分子量のポリマー(ポリエステル)を得た。また、ポリマーの構成単位のうち、(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位の割合は、無水マレイン酸単位に対して40モル%であった。なお、クロトン酸は、無水マレイン酸単位に対して4モル%[(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位に対して10モル%]の割合でポリマーに混在していた。なお、クロトン酸は、ポリマーの末端に付加していると考えられる。
実施例5
(R)−3−ヒドロキシ酪酸20.8g(0.200mol)、無水マレイン酸19.6g(0.200mol)、トリエチルアミン20.2gを150mlのジクロロメタンに溶解させ、50℃の還流条件下で、1時間反応させて、ジカルボン酸を得た。得られたジカルボン酸のうち12.0g(0.059mol)とアジピン酸30.8g(0.211mol)とヘキサメチレンジアミン30.6g(0.263mol)とを180℃から230℃まで徐々に加熱しつつ反応させて茶色のポリアミド(ポリエステルアミド)を得た。
比較例1
アジピン酸38.43g(0.263mol)、エチレングリコール48.97g(0.789mol)、(R)−3−ヒドロキシ酪酸5.48g(0.0526mol)を300mlフラスコに入れ、130℃から145℃まで窒素雰囲気下で徐々に加熱した。さらに、0.9%水溶液の二酸化ゲルマニウム(GeO2)1.48gを加え、2mmHgに減圧下、200℃まで徐々に加熱し、200℃で1時間反応させてポリマーを得た。得られたポリマーの数平均分子量Mnは1300、重量平均分子量Mwは2100であった。また、ポリマーの構成単位のうち、(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位の割合は、無水マレイン酸単位に対して17モル%であった。なお、クロトン酸は、無水マレイン酸単位に対して2モル%[(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位に対して12モル%]の割合でポリマーに混在していた。
実施例3及び4に示されるように、実施例3及び4で得られたポリマー(ポリエステル)は、比較例1で得られたポリマー(ポリエステル)に比べ、高分子量であり、かつ(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位の割合が大きい。さらに、ジカルボン酸を分離精製することなく、重合反応に供しても、ポリマーに導入された(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位に対するクロトン酸の生成割合が低い。また、実施例5に示されるように、ポリアミドも得ることができた。