JP2015147830A - 全脂環族ポリエステルおよびその製造方法 - Google Patents

全脂環族ポリエステルおよびその製造方法 Download PDF

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安彦 友成
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Abstract

【課題】成形品の耐衝撃性や透明性、さらには耐候性に優れた全脂環族ポリエステルおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。尚、本発明で得られる全脂環族ポリエステルは単独でも良いし、PETやPENなどとブレンドして使用することもできる。【解決手段】ジカルボン酸成分として1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートを、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールとを繰り返し単位に含む全脂環族ポリエステルであって、1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートのTrans/Cis比率が60/40〜100/0であり、特定化学構造式を有するチタン化合物と芳香族多価カルボン酸との反応生成物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来するチタン元素、特定化学構造を有するリン化合物に由来するリン元素を含有し、その含有量が特定の数式を同時に満たすことを特徴とする全脂環族ポリエステルにより上記課題を解決できることを見出した。【選択図】なし

Description

本発明は優れた耐衝撃性や引張強度などの機械物性ならびに耐候性に優れた結晶性の全脂環族ポリエステル樹脂およびその製造方法に関するものである。本発明で得られた全脂環族ポリエステル樹脂は食器や食品包装用途、シート材料およびフィルムに好適に用いることができる。また、本発明で得られた全脂環族ポリエステル樹脂は単独で用いても良いし、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどの熱可塑性ポリエステル樹脂とのブレンドで用いることができる。
近年、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル(以下「DMT」と略記する。)に1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下「CHDM」と略記する。)と第2、第3のグリコール成分を共重合した非晶質なコポリエステル樹脂の研究開発が精力的に行われており、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール(以下「CBDO」と略記する。)を第2成分に用いたコポリエステルは耐衝撃性や透明性に優れるものの、反応時間が長く生産効率が低く、食品安全性が懸念されるスズ触媒を用いていること、さらには重合反応中にCHDMやCBDOの固体が溜出系へ飛散し配管を詰まらせてしまうことといった問題が生じてしまう(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。また第2、第3成分に1,2−エタンジオール(以下「EG」と略記する。)とスピログリコール(以下「SPG」と略記する。)を第2、第3成分に用いたコポリエステル樹脂は透明性に優れるものの、耐衝撃性が低く成形品としての耐衝撃性に欠ける、さらにはSPGが熱安定性に乏しいことから重合反応中に分解し架橋(ゲル化)してしまい好ましくない(例えば、特許文献3参照。)。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートは透明性や耐熱性に優れているものの、耐衝撃性が低く成形品としての耐衝撃性に欠ける(例えば、特許文献4、特許文献5参照。)。一方、シクロヘキサンジカルボン酸とシクロヘキサンジメタノールを反応させた全脂環族ポリエステル樹脂が提案されているものの、これらのTrans/Cis比率に関しては何ら言及されていない(例えば、特許文献6参照。)。
特許第3448158号公報 特表2010−526904号公報 特開2003−183421号公報 特開2000−080156号公報 特開平10−245433号公報 特許第4869617号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために検討した結果達成されたものであって、Trans体比率の高い1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを反応させることにより、成形品の耐衝撃性や透明性、さらには耐候性に優れた全脂環族ポリエステルおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。尚、本発明で得られる全脂環族ポリエステルは単独でも良いし、PETやPENなどとブレンドして使用することもできる。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、成形品に必要な耐衝撃性や透明性を持った全脂環族ポリエステルならびにその製造方法を提供できることを見出し本発明を解決した。即ち、本発明は、全脂環族ポリエステルを構成する繰り返し単位において、ジカルボン酸成分として下記式(I)で表される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分を、ジオール成分として下記式(II)で表される1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を繰り返し単位に含む全脂環族ポリエステルであって、前記式(I)で表される化合物のTrans/Cis比率が60/40〜100/0であり、
下記式(III)で表されるチタン化合物と下記式(IV)で表される芳香族多価カルボン酸との反応生成物および下記式(V)で表されるリン化合物を含有し、前記反応生成物に由来するチタン元素および前記リン化合物に由来するリン元素を含有し、その含有量が下記式(1)および(2)を同時に満たすことを特徴とする全脂環族ポリエステルである。
Figure 2015147830
[上記式中、Rはアルキル基である。]
Figure 2015147830
Figure 2015147830
[上記式中、R,R,R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基である。]
Figure 2015147830
[上記式中、nは2〜4の整数である。]
Figure 2015147830
[上記式中、R、RおよびRは、同一または異なって炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、Xは、−CH−または−CH(Y)を示す(Yは、ベンゼン環を示す。)。]
20 ≦ Ti ≦ 50mmol% (1)
20 ≦ P ≦ 50mmol% (2)
[上記数式中、TiおよびPは脂環族ポリエステル中に含まれるチタン元素およびリン元素の脂環族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対する含有量を表す。]
更に本願の別発明は、全脂環族ポリエステルの製造方法であって、上記式(I)で示される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートを下記工程1にてTrans異性化した化合物を用い、下記工程2を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の全脂環族ポリエステルの製造方法である。
工程1:上記式(I)で示される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートを酢酸アルカリ金属塩の存在下で250℃以上の反応温度で3時間以上加熱し、含有するTrans体を加熱前より増加させる工程
工程2:工程1で得られたTrans体比率60〜100モル%の上記式(I)で示される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートと、上記式(II)で示されるジオールとをモル比が(II)/(I)=0.95〜1.40の範囲の状態でチタン化合物存在下、溶融状態で反応させる工程
すなわち、上記式(I)で表される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートを酢酸アルカリ金属触媒を使用してCis体の一部をTrans体へ異性化させる工程、およびそのCis体の含有量を増加させた1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートと1,4−シクロヘキサンジメタノールとをチタン化合物を使用してエステル交換反応ならびに重縮合反応せしめる工程、といった2つの製造工程を経て得られる全脂環族ポリエステルおよびその製造方法である。
本発明の全脂環族ポリエステルは透明性が高く、成形品に必要な耐衝撃性を持っている。また、単独で用いることもできるし、ポリエチレンテレフタレートはポリエチレンナフタレートといった熱可塑性樹脂にコンパウンドすることも可能で、これらポリマーの耐衝撃性を大幅に改善できる。また、ビスフェノールAなど人体に悪影響を及ぼす物質(例えば内分泌かく乱作用)を含んでいないため、食品容器材料や医療用材料に好適に用いることができる。
(脂環族ポリエステル)
本発明の全脂環族ポリエステルとは、ジカルボン酸成分とジオール成分からなるポリエステルの繰り返し単位のうち、ジカルボン酸成分として1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート(以下「DACD」と略記する。)成分を、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を含む全脂環族ポリエステルである。DACDを構成するアルキル基としては、アルキル基であれば限定はないが、その化合物自身の蒸留精製のしやすさ、DACDとジオール化合物によるエステル交換反応により脱離するモノヒドロキシアルキル化合物(アルコール)の回収・蒸留精製のしやすさを考慮すると、アルキル基は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。すなわちより具体的には、1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,4−ジエチルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,4−ジ−n−プロピルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,4−ジ−iso−プロピルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,4−ジ−n−ブチルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,4−ジ−sec−ブチルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,4−ジ−tert−ブチルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,4−ジペンチルシクロヘキサンジカルボキシレート、1,4−ジヘキシルシクロヘキサンジカルボキシレートが好ましい。より好ましくは1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート(以下「DMCD」と略記する。)である。
更に、1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分としては、ジメチルエステルに限定されず、そのジカルボン酸のエステル形成性誘導体を含む概念である。エステル形成性誘導体としては、具体的には、上述の炭素数1〜6個のジアルキルエステルの他、炭素数6〜10個のジアリールエステル、ジ酸ハライドを表す。より具体的にはジメチルエステル、ジエチルエステル、ジ−n−プロピルエステル、ジ−iso−プロピルエステル、ジ−n−ブチルエステル、ジ−sec−ブチルエステル、ジ−tert−ブチルエステル、ジペンチルエステル、ジヘキシルエステル、ジフェニルエステル、ジベンジルエステル、ジナフチルエステル、ジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸ジブロマイド、ジカルボン酸ジアイオダイド等を挙げることができる。その炭素数1〜6個のジアルキルエステルや炭素数6〜10個のジアリールエステルは更にその水素原子の1個または2個以上がハロゲン原子、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、アルキルエステル基、アリールエステル基、アセチル基等のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基等のアリールカルボニル基で置換されているものであっても良い。エステル形成性誘導体としてジカルボン酸その物以外にも、これらの化合物のいずれか1種または2種であることがより好ましい。
また本発明の全脂環族ポリエステルにおいては、その1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分のシクロヘキサン環が有するトランス体とシス体の比率(Trans/Cis比率)は60/40〜100/0であることが必要である。このようなシクロヘキサンジカルボキシレート構造を有し、上記のTrans/Cis比率を採用することによって、本発明の全脂環族ポリエステルは、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械強度に優れた全脂環族ポリエステルとすることができる。好ましくは、Trans/Cis比率は65/35〜98/2であり、より好ましくはTrans/Cis比率は70/30〜95/5である。
また本発明においては、その全脂環族ポリエステルの特性を失わない範囲で他のジカルボン酸成分が共重合されていたり、他のジカルボン酸成分を含むポリエステルとのブレンド物であっても良い。そのようなジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸を挙げることができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、3,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルチオエーテル−4,4’−ジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を表す。あるいはこれらの芳香族ジカルボン酸において置換基が4,4’−の位置に限定されず、2,4’−、3,4’−、2,5’−、2,2’−、3,3’−などの位置にある芳香族ジカルボン酸であってもよい。脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,1−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、パーヒドロナフタレンジカルボン酸(デカリンジカルボン酸)、テトラリンジカルボン酸、ダイマー酸、シクロブテンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。上記脂環ジカルボン酸化合物の中で置換基の位置を特段記載していない化合物は、取り得るすべての構造異性体を含んでいる。更に、これらは無水物や誘導体であってもよい。またこれらの芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸にあっても、上記の「エステル形成性誘導体」により共重合されている場合などを含む。これらのジカルボン酸成分はいずれか1種または2種を用いることがより好ましい。好ましくはこれらの化合物は全芳香族ジカルボン酸成分に対する共重合率が0〜20モル%、より好ましくは3〜15モル%であることである。更に1〜5モル%の範囲でトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリカルバリル酸等の分子内に3以上のカルボキシル基を有する化合物が共重合されていても良い。なお本発明の名称として「全脂環族ポリエステル」と称しているが、主たるジカルボン酸成分と主たるジオール成分として、芳香族基や、上記脂環族に該当しない脂肪族基のみからなる化合物合物を含まず、ジカルボン酸成分とジオール成分いずれの成分も上述の脂環族基を有する化合物から構成されることを表している。よって、上記のように1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートと1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる繰り返し単位以外の繰り返し単位を含むポリエステルが少量共重合されていたり、少量ブレンドされている態様を本発明が排除するものではない。
また本発明における、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分としては、まずは1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げることができるが、エステル形成性誘導体として、この化合物の低級カルボン酸ジエステルを挙げることもできる。具体的には、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアセテートまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールジプロピオネートである。ジカルボン酸成分として上記のような1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分を採用し、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール成分を採用することによって、衝撃強度、引張強度、曲げ強度に優れた全脂環族ポリエステルとすることができる。この1,4−シクロヘキサンジメタノールにおいても、構造異性体としてトランス体とシス体の2種が存在するが、これらの割合を表すTrans/Cis比率は、好ましくは、耐衝撃性に優れた脂環族ポリエステルとする観点からTrans/Cis比率が60/40〜90/10の範囲内である場合が好ましい。より好ましくは65/35〜85/15であり、更に好ましくは68/32〜80/20であることである。このようなシクロヘキサンジメタノール成分を50〜90モル%モル%とすることにより耐衝撃性に優れた全脂環族ポリエステルとすることができる。
また本発明においては、その全脂環族ポリエステルの特性を失わない範囲で他のジオール成分が共重合されていたり、他のジオール成分を含むポリエステルとのブレンド物であっても良い。そのようなジオール成分としては、好ましくは炭素数2〜20のジオール成分が挙げられ、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ウンデカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、トリデカメチレングリコール、テトラデカメチレングリコール、ペンタデカメチレングリコール、ヘキサデカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラペンチレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,1−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、p−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−(3−ヒドロキシプロキシ)ベンゼン、4,4’−(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、4,4’−(3−ヒドロキシプロポキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−γ−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸、ビス(4’−γ−ヒドロキシプロポキシフェニル)スルホン酸、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシエトキシフェニル)スルホン酸、芳香族環を水素化したビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、芳香族環を水素化したビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、芳香族環を水素化したビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物、芳香族環を水素化したビスフェノールSのプロピレンオキサイド付加物、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールを挙げることができる。上記の2種以外の他のジオール成分としてこれらの化合物のいずれか1種または2種であることがより好ましい。更に分子内に3以上のヒドロキシル基を有するペンタエリスリトール、テトラキス(ヒドロキシメチル)メタン等の化合物が、前芳香族ジカルボン酸成分を100%とした場合に、1〜3モル%の割合で共重合されていても良い。
さらに本発明においては、上記のジカルボン酸成分、ジオール成分、分子内に3以上のカルボキシル基を有する化合物、分子内に3以上のヒドロキシ基を有する化合物、以外の化合物成分、すなわち必要に応じて、ヒドロキシカルボン酸を共重合してもよい。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、リンゴ酸、酒席酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、4−(β−ヒドロキシ)エトキシ安息香酸、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸を共重合する場合、全カルボン酸成分中におけるヒドロキシカルボン酸の共重合量は20モル%以下とすることが好ましい。また、本発明の脂環族ポリエステルには、少量であれば、モノカルボン酸、モノアルコールを共重合してもよい。
本発明の全脂環族ポリエステルについては、下記式(III)で表されるチタン化合物と下記式(IV)で表される芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物との反応生成物および下記式(V)で表されるリン化合物を含有し、前記反応生成物に由来するチタン元素および前記リン化合物に由来するリン元素を含有し、その含有量が下記式(1)および(2)を同時に満たすことが必要である。
Figure 2015147830
[上記式中、R,R,R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基である。]
Figure 2015147830
[上記式中、nは2〜4の整数である。]
Figure 2015147830
[上記式中、R、RおよびRは、同一または異なって炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、Xは、−CH−または−CH(Y)を示す(Yは、ベンゼン環を示す。)。]
20 ≦ Ti ≦ 50mmol% (1)
20 ≦ P ≦ 50mmol% (2)
[上記数式中、TiおよびPは脂環族ポリエステル中に含まれるチタン元素、リン元素の脂環族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対する含有量である。]
チタン化合物が上記の反応生成物でない場合、またはチタン元素の含有量が脂環族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して20mmol%未満の場合には、固有粘度が充分に高い脂環族ポリエステルを得ることが困難である場合があり、チタン元素の含有量が50mmol%を超える場合には、重縮合反応中もしくは溶融成形中に副反応が生じ、脂環族ポリエステルの色調、透明性、および熱安定性が低下しやすくなる場合や、溶融成形時の大幅な分子量低下を生じる場合、または上記反応生成物が脂環族ポリエステル中の異物として成形性に問題が生じる場合があり、好ましくない。更にチタン元素の含有量のより好ましい範囲は22〜45mmol%であり、更により好ましい範囲は23〜40mmol%であり、最も好ましい範囲は25〜35mmol%である。またリン化合物が上記の反応生成物でない場合、またはリン元素の含有量が脂環族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して20mmol%未満の場合には、重縮合反応中もしくは溶融成形中に副反応が生じ、脂環族ポリエステルの色調が悪化する場合がある。またはリン元素の含有量が脂環族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対して50mmol%を超える場合には、固有粘度が充分に高い脂環族ポリエステルを得ることが困難な場合や、脂環族ポリエステル中の異物として成形性に問題が生じる場合がある。これらのチタン化合物、リン化合物はポリエステルの製造工程において、特段特殊な方法を採用する場合を除き反応槽内に添加したほぼ全量がポリエステル中に残存するので、製造工程に投入するジカルボン酸成分の量を考慮して、これらの化合物の添加量を決めることで上記数式(1)、(2)の数値範囲を達成することができる。リン元素の含有量のより好ましい範囲は22〜45mmol%であり、更により好ましい範囲は23〜40mmol%であり、最も好ましい範囲は25〜35mmol%である。
また、上記反応生成物は、例えば以下の操作により製造することができる。まず、上記式(III)で表されるチタン化合物としては、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシドなどのチタンテトラアルコキシドを挙げることができる。また、上記式(IV)で表される芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物、即ちフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ヘミメリット酸無水物が好ましく用いられる。
上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物の一部または全部を溶解し、この混合液にチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で少なくとも30分間、好ましくは30〜150℃の温度で40〜90分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力については特に制限はなく、常圧で十分である。なお、芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物を溶解させる溶媒としては、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼンおよびキシレン等から所望に応じていずれを用いることもできる。
ここで、チタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物との反応モル比には特に限定はないが、チタン化合物の割合が高すぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり、軟化点が低下したりすることがある。逆にチタン化合物の割合が低すぎると重縮合反応が進みにくくなることがある。このため、チタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物との反応モル比は、2/1〜2/5の範囲内とすることが好ましい。
本発明の全脂環族ポリエステルの固有粘度(IV)は機械的強度、成形性の点から0.60〜2.00dL/gが好ましい。固有粘度が0.60dL/g未満では機械的強度に劣り、2.00dL/gを超える場合には流動性が低下して成形加工性に劣るので好ましくない。より好ましい固有粘度範囲は0.65〜1.50dL/gであり、さらにより好ましい固有粘度範囲は0.70〜1.20dL/gである。固有粘度を上昇させるには、通常のポリエステルの製造工程において行われているように、重縮合温度を上げる、反応槽内の減圧度をより真空に近い方に調整する、重縮合時間を長くする、溶融している溶融粘度の高い全脂環族ポリエステルに対して表面積が多くなるような効率の良い撹拌を行う等の方法を溶融重合の条件として採用することができる。また溶融重合後に、固相重合を行う事によっても達成することができる。
本発明により得られる全脂環族ポリエステルのガラス転移温度は40℃以上が好ましい。ガラス転移温度が40℃以下では成形品の耐熱性や耐衝撃性が下がり好ましくない。なおガラス転移温度をこの値の範囲にするためには上記式(I)で表される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分のTrans体比率を60%以上にすることによってこのガラス転移温度の値の範囲を達成することができる。より好ましいガラス転移温度の範囲は42〜65℃であり、更により好ましい範囲は44〜60℃である。
本発明における全脂環族ポリエステルの末端カルボキシル基濃度は10eq(当量)/T(トン)以下が好ましい。末端カルボキシル基濃度が10eq/T(トン)を超えるとでは成形品の耐加水分解性に劣り好ましくない。なお、末端カルボキシル基濃度をこの値の範囲にするためには、全ジオール成分と全ジカルボン酸成分の仕込みモル比を1.0〜1.10の範囲とし、かつ工程1で得られたTrans比率の高いDMCDを用いて工程2の重合反応時間を調整することによってこの末端カルボキシル基濃度の値の範囲を達成することができる。より好ましい末端カルボキシル基濃度(末端COOH濃度)の範囲は0を超え9.0eq/T以下であり、更により好ましい範囲は1.0〜7.0eq/Tである。
(脂環族ポリエステルの製造方法:DACD異性化反応)
次に本発明の全脂環族ポリエステルの製造方法について説明する。本発明の全脂環族ポリエステルの製造方法に用いるDACDについては、ポリエステルとしたときのTrans/Cis比率が60/40〜100/0とする為に、原料の1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート(DACD)成分についても、同等のTrans/Cis比率を有する化合物を用いることが好ましい。しかしながら、テレフタル酸のジアルキルエステルを水素化反応して得られるDACDはそれぞれシス体およびトランス体の幾何異性体が存在し、それらの平衡濃度はシス体が約30%、トランス体が約70%であることが知られている。しかし、何らかの操作を行った結果、上記の平衡比率に比べてシス体の含有割合が高く、トランス体の含有割合が低い1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートも存在する場合がある。このようなシス体の含有比率の高いDACDをそのままの状態で、本発明のポリエステルの製造工程で用いた場合、重縮合反応時間が異常に長くなるばかりか、出来上がった脂環族ポリエステルの結晶性や融点が大幅に低下してしまい、本発明の効果を奏さない場合があるという問題がある。そのため、このようなシス体の含有比率の高いDACDの場合には、以下に示すような、トランス異性化反応により得られた高濃度でトランス−1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートを含む1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートを用いるのが好ましい。そうすることによって反応性が向上するばかりでなく、ポリエステルの結晶性や融点が高くなり機械強度に優れたポリエステルを製造することができる。
したがって、本発明の脂環族ポリエステルを製造する際に、原料の1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分のTrans/Cis比率が60/40より少なく、シス体比率が高い場合には、Trans/Cis比率を上げるために、1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分に対してトランス異性化反応を行うことが好ましい。より具体的には以下に示す工程1である。
工程1:上記式(I)で示される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートを酢酸アルカリ金属塩の存在下で250℃以上の反応温度で3時間以上加熱し、含有するTrans体比率を加熱前より増加させる工程
そのトランス異性化反応については、1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分を溶融下あるいは適切な溶媒に溶解した状態で酢酸アルカリ金属塩の触媒存在下で250℃以上の温度下にて3時間以上加熱することが好ましい。好ましい反応温度は255℃以上、より好ましい反応温度は260℃以上である。好ましい反応時間は4〜120時間、より好ましい反応時間は4〜100時間である。
より好ましくは溶融下でトランス異性化反応を行う事である。更に、触媒として用いる酢酸アルカリ金属塩としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、または酢酸セシウムを好ましく選ぶことができる。このような酢酸アルカリ金属塩は、原料である1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分1モルに対して1.00×10−3〜1.00×10−1モル用いることが好ましい。より好ましくは5.00×10−3〜5.00×10−2用いることである。またトランス異性化反応の進行状況については、試料をアセトニトリル5mlに溶解させたのち、0.45μmのメンブランフィルターで不要物を除去して液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS:島津製作所製、LC−10)にてTrans/Cis比率を測定することにより評価することができる。反応時間としては3時間以上行うことが好ましい。3時間未満であると、適正なTrans/Cis比率の1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分を得ること出来ず、結果的にTrans/Cis比率の高い脂環族ポリエステルを得ることができない。またトランス異性化反応を行う際には、化合物の酸化反応等の副反応を抑制するために、不活性ガス雰囲気下または不活性ガス気流下で反応を行うことが好ましい。用いる不活性ガスとしては窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスが好ましく採用することができる。尚、この工程1における反応槽は縦型反応槽、横型反応槽のいずれであっても構わず、その他通常の有機モノマー化合物の製造工程で用いられる製造設備を使用することもできる。このような操作にて、Trans/Cis比率を上げ、Trans体比率を加熱前、すなわち異性化反応前より増加させることができ、更に脂環族ポリエステルの製造に好適に用いることができる。
(脂環族ポリエステルの製造方法:PESの製造方法)
更に本発明における上記組成の脂環族ポリエステルの製造方法において、少なくとも下記の工程2を含んでなることが好ましい。
工程2:工程1で得られたTrans体比率60〜100モル%の上記式(I)で示される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートと、上記式(II)で示されるジオールとをモル比が(II)/(I)=0.95〜1.40の範囲の状態でチタン化合物存在下、溶融状態で反応させる工程
上記式(I)で表されるジカルボン酸成分、前記式(II)で表される1,4−シクロヘキサンジメタノールとエステル交換反応触媒を使用して、エステル交換反応を行い次いで重縮合反応を行う方法、またはエステル化反応を行い次いで重縮合反応を行う方法が好ましく挙げることができる。この場合に、DACDとしてはTrans体比率が50%以上のものを用いることが好ましい。Trans体比率が50%を下回り反応速度が遅くなるばかりか、固有粘度が規定値まで上がらず、成形品の耐衝撃性も低下してしまう。我々は上述したような異性化反応を行うことによって、Trans体比率の高い1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートを得るとともに、短時間でかつ固有粘度が高い全脂環族ポリエステルを製造する方法を見出すに至った。より好ましくはTrans体比率が60〜100モル%のDACD等を用いる事である。更により好ましくは、目的とする脂環族ポリエステルのTrans体比率と同等のTrans体比率を有するDACD等を用いることである。
そのエステル交換反応をさせるためにエステル交換反応触媒を用いるが、該触媒は、エステル交換反応性の観点から、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、チタン化合物、スズ化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、または、整色剤として使用することも有効なコバルト化合物を用いることが好ましい。これらの化合物の中で、食品安全性を考慮した場合、カルシウム化合物、マグネシウム化合物またはチタン化合物を用いるのが特に好ましい。具体的な化合物としては、カルシウム又はマグネシウムの金属元素を含む酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、グルコン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、次亜塩素酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、過リン酸塩、酸化物、過酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、過ハロゲン酸化合物、水素化物、炭化物、窒化物、硫化物、またはアルコキサイドが好ましく用いることができる。
更に、チタン化合物をエステル交換反応触媒に用いる場合は、後述する重縮合触媒と兼用できる場合があり、含有金属種類を減らすことができる観点から好ましく、具体的には、酢酸チタン、フタル酸チタン、イソフタル酸チタン、トリメリット酸チタン、ヘミメリット酸チタン、トリメシン酸チタン、ピロメリット酸チタン、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラノルマルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンテトラアルコラート(テトラアルキルチタネート)、テトラフェニルチタネート、テトラナフチルチタネート等のチタンアリールオキサイドを挙げることができ、これら以外のチタン錯体化合物として、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンテトラキスアセチルアセトナート錯体、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)錯体、チタンテトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)錯体、チタンジメトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジエトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジノルマルプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジブトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジヒドロキシビスグリコレート、チタンジヒドロキシビスラクテート、チタンジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオネート)、乳酸チタン、チタンオクタンジオレート、チタンジメトキシビストリエタノールアミネート、チタンジエトキシビストリエタノールアミネート、チタンジブトキシビストリエタノールアミネートなどが挙げられる。中でも多価カルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸および/または多価アルコールをキレート剤とするチタン錯体であることが、ポリマーの熱安定性、色調および口金まわりの堆積物の少なさの観点から好ましい。チタン化合物のキレート剤としては、乳酸、クエン酸、マンニトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの化合物群をエステル交換反応触媒として採用することにより、十分なエステル交換反応率を達成することができ、重縮合反応の段階においても固有粘度の高いポリエステルを結果として得ることができる。
また、重合触媒としては種々の金属化合物が用いられるが、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルには三酸化アンチモンなどのようなアンチモン(Sb)化合物が安価でかつ高重合活性を持つことから広く用いられる。しかし、Sb化合物は、その一部が反応中に還元されて金属Sbやその他の異物を生成し、その結果ポリマーの色を黒ずませたり、製造工程を不安定化させたりして成形品の品質を悪化させるといった問題を抱えている。
アンチモン化合物以外の重合触媒としては、ゲルマニウム(Ge)化合物、テトラ−n−ブトキシチタンのようなチタン(Ti)化合物が提案されている。Ge化合物は高価であるために、ポリエステルの製造コストが高くなるという問題がある。一方、Ti化合物を重合触媒として使用した場合、上記のような金属Sbやその他の異物の生成が抑制され、上述の異物に対する問題は改善される。しかし、チタン化合物を重合触媒として用いた場合、ポリマーが黄色く着色されたり、溶融熱安定性が乏しかったりするといったTi化合物特有の問題がある。そこで、Ti化合物による着色や溶融熱安定性を付与するために特定のリン化合物を加えた(特開2004−175837号公報参照)。これにより、ポリマーの着色は抑えられ、かつ溶融熱安定性が付与される。この安定剤の添加量は全脂環族ポリエステル中のリン含有量として60ppm以上であることが好ましい。
上述した安定剤として本願の全脂環族ポリエステルに含有されるリン化合物としては、下記一般式(V)により表されるリン化合物を用いることが好ましい。
Figure 2015147830
[上記式中、R、RおよびRは、同一または異なって炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、Xは、−CH−または―CH(Y)を示す(Yは、ベンゼン環を示す。)。]
ここで、前記一般式(V)により表されるリン化合物としては、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボプトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボプロトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸もしくはカルボブトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸のジメチルエステル類、ジエチルエステル類、ジプロピルエステル類またはジブチルエステル類から選ばれることが好ましい。より具体的にはトリメチルホスホノアセテート、トリエチルホスホノアセテート(ホスホノ酢酸トリエチル)、トリプロピルホスホノアセテート、トリブチルホスホノアセテート、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸ジメチルエステル、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸ジエチルエステルが好ましく選択される。
上述のリン化合物は、全脂環族ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸に対して20〜500mmol%含有することが好ましい。該リン化合物が下限値未満であると全脂環族ポリエステルの色調が低下しやすくなるばかりか溶融成形時の分子量低下を生じてしまう。また、上限値を超えると重合反応が進行しにくくなる為好ましくない。上記のリン化合物は、通常安定剤として使用されるリン化合物に比較して、チタン化合物またはチタン化合物成分(以下「チタン化合物等」と略称する。)との反応が比較的緩やかに進行するので、反応中におけるチタン化合物等の触媒活性持続時間が長く、結果として該チタン化合物のポリエステルへの添加量を少なくすることができ、また、本発明のように触媒に対し多量に安定剤を添加する場合であっても、ポリエステルの熱安定性を損ない難い特性を有している。
上記の工程2においては、上記のDACDまたはその誘導体と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを上記のエステル交換反応触媒の存在下で反応せしめることにより製造される。常圧条件下でのエステル交換反応も実施可能である。反応温度は150℃以上とし、反応の進行とともに昇温するのが好ましい。この場合の上限は275℃程度である。この加圧反応の際には、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下とすることが好ましい。なお、この工程における反応槽は縦型反応槽、横型反応槽のいずれであっても構わず、その他通常のポリエステルの製造工程で用いられる製造設備を使用することができる。またエステル交換反応率は80%以上が好ましい。反応率が80%を下回ると、重縮合反応の際、DACD等や1,4−シクロヘキサンジメタノールが昇華してしまい、反応系内(反応槽内)の減圧度に悪影響を及ぼすとともに、重合反応が進行しないことがある。
エステル交換反応終了後は、上記のリン化合物を添加してエステル交換触媒を失活した後重縮合反応槽に移して、重縮合反応を行うことが好ましい。上記の一部のチタン化合物を用いる場合など重縮合触媒とエステル交換反応触媒を兼用する場合には、この時点におけるリン化合物の添加は不要である。重縮合反応としては常圧から徐々に減圧していき、反応槽内温度を高めていくことにより、反応により生成する副生成物を反応槽から除去することにより重縮合反応を進行させ、高い固有粘度の脂環族ポリエステルを得ることができる。重縮合反応の温度は240〜320℃が好ましく、より好ましくは260〜300℃である。特に重縮合回反応の最終段階の反応温度を270〜300℃とすることが好ましい。重縮合槽内の真空度は好ましくは2.67kPa(20Torr)以下、より好ましくは0.67kPa(5Torr)以下である。副生成物を効率的に除去するために、溶融粘度の高くなった重縮合反応生成物を効率よく撹拌できる撹拌翼または撹拌設備を採用することが好ましい。
上記の特許文献6で開示されている従来技術においては、Trans体比率が不明な脂環族ジカルボン酸を用いて製造されているが、本発明においては、工程1で反応したTrans体比率の高いモノマーを用いて全脂環族ポリエステルの分子量を効率的に増大させることが大きな特徴となっている。該対応により、従来技術で得られていた全脂環族ポリエステルの抱えていた特性が大幅に改善され高品質な全脂環族ポリエステルを経済的に、かつ効率的に安定して製造できるようになった。
本発明により得られる全脂環族ポリエステルのノッチ付きシャルピー衝撃強さ値は、成形品の観点から5kJ/m以上が好ましく、7kJ/m以上がより好ましい。ノッチ付きのシャルピー衝撃強さ値が5kJ/m未満であれば、成形品の耐衝撃性に劣り好ましくない。なおノッチ付きのシャルピー衝撃強さ値をこの値の範囲にするためには、上記式(I)中のTrans体比率を60%以上とし、かつ固有粘度を0.60〜2.00dL/gの範囲にすることによってシャルピー衝撃強さ値の範囲を達成することができる。
本発明により得られる全脂環族ポリエステルの引っ張り強さは、成形品の観点から20MPa以上が好ましい。引っ張り強さが20MPa未満であれば、成形品の強度に劣り好ましくない。なお引っ張り強さの値をこの値の範囲にするためには、上記式(I)中のTrans体比率を60%とし、かつ固有粘度を0.60〜2.00dL/gの範囲にすることによって引っ張り強さの値の範囲を達成することができる。
本発明により得られる全脂環族ポリエステルの曲げ強さは、成形品の観点から50MPa以上が好ましい。曲げ強さが50MPa未満であれば、成形品の強度に劣り好ましくない。なお曲げ強さの値をこの値の範囲にするためには、上記式(I)中のTrans体比率を60%とし、かつ固有粘度を0.60〜2.00dL/gの範囲にすることによって曲げ強さの値の範囲を達成することができる。
本発明により得られる全脂環族ポリエステルの耐候性(耐候性試験後のCol−b)は、5以下であることが好ましい。Col−bが5を超える場合であれば、成形品の耐候性に劣り好ましくない。なお耐候性試験後のCol−bをこの値の範囲にするためには、上記式(I)と上記式(II)で表される化合物成分を組み合わせた全脂環族系のポリエステルにすること、さらには、上記式(IV)に記載のチタン化合物触媒の含有量が上記式(1)の値の範囲にするように使用することによって、耐候性試験後のCol−bの値の範囲を上記の数値範囲にすることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、得られた全脂環族ポリエステルの諸物性の測定は以下の方法により実施した。
1)1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールのTrans/Cis含有率
酢酸アルカリ金属塩の触媒下で加熱処理したあとのサンプルを少量抜出し、0.15gをアセトニトリル5mlに溶解させたのち、0.45μmのメンブランフィルターで不要物を除去して液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS:島津製作所製、LC−10)にて測定した。使用したカラムは同社製のULTRON VX−ODS 250L×4.6mmI.D.×2本、STR−ODS−II 150L×4.0mm I.D.で、使用温度は50℃とした。
2)固有粘度(IV)測定
常法に従って、溶媒であるオルトクロロフェノール中、35℃で測定した。
3)ガラス転移温度測定(Tg)
25℃で24時間減圧乾燥した全脂環族ポリエステルを、示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定した。測定試料はアルミニウム製パン(TA Instruments社製)に約10mg計量し、窒素雰囲気下で測定した。
4)末端カルボキシル基濃度測定(末端COOH濃度)
本発明により得られた全脂環族ポリエステルをベンジルアルコールに溶解して、0.1N−NaOHにて滴定した値であり、1×10g当たりのカルボキシル当量である。
5)ポリマー中の元素含有量
本発明により得られた全脂環族ポリエステルを蛍光X線(理学製、Rataflex RU200)により測定した。
6)ノッチ付きシャルピー衝撃強さ
本発明により得られた全脂環族ポリエステルをASTM D256の方法に従い測定を行った。
7)引張強度
本発明により得られた全脂環族ポリエステルをASTM D638の方法に従い測定を行った。
8)曲げ強度
本発明により得られた全脂環族ポリエステルをASTM D790の方法に従い測定を行った。
9)耐候性試験
本発明により得られた全脂環族ポリエステル成形品に東洋精機製作所(株)製のアトラスウエザオメータを用い、温度65℃、湿度50%、照射強度0.35w/m(350nm)の条件で紫外線を照射した。照射前後の成形品のCol−bを測定した。
10)DMCD
以下の実施例・比較例においては、1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートは品質の安定している市販品(小倉合成工業株式会社製)を使用した。上記の方法により幾何異性体比率(Trans/Cis含有率)を測定したところ、トランス体が約30%、シス体が約70%であった。
[実施例1]
ジカルボン酸成分として、Trans/Cis比率が30/70の1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレート(DMCD)を74重量部、酢酸ナトリウムをジカルボン酸の重量に対して総量として0.5重量%加え、窒素雰囲気下にて260℃で6時間加熱しトランス異性化反応を行った。その結果、反応生成物である1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートのTrans/Cis比率は90/10であった。この反応物にTrans/Cis比が68/32の1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を55重量部(このときの1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,4−ジカルボキシレートの仕込みモル比[CHDM/DMCD仕込モル比]は1.05であった。)、トリメリット酸チタンを1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートのモル数に対して総量として28ミリモル%加え反応温度が240℃となるように昇温しながらエステル交換反応を行った。反応温度が240℃になった時点で40分間反応を保持した。40分後にホスホノ酢酸トリエチル(以下、TEPAと称することがある。)を1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートのモル数に対して総量として28ミリモル%加えて反応させた。反応温度が250℃に到達した時点で反応生成物を重縮合反応槽に移して重縮合反応を開始した。重縮合反応は常圧から0.133kPa(1Torr)まで50分かけて徐々に減圧し、同時に所定の反応度280℃まで昇温し、以降は所定の重合温度、0.133kPa(1Torr)の状態を維持して30分間重縮合反応を行った。
重縮合反応開始から420分間が経過した時点で重縮合反応を終了して全脂環族ポリエステルを抜き出し、固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、金属元素・リン元素含有量、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さを評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[実施例2]
加熱処理時間を4時間に変更した以外は実施例1と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。トランス異性化反応の結果、反応生成物である1,4−ジメチルシクロヘキサンジカルボキシレートのTrans/Cis比率は70/30であった。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[実施例3]
酢酸ナトリウムを同重量比率の酢酸カリウムに変更した以外は実施例1と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[実施例4]
酢酸ナトリウムを同重量比率の酢酸カリウムに変更した以外は実施例2と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[実施例5]
1,4−シクロヘキサンジメタノールのTrans/Cis比率を75/25に変更した以外は実施例1と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[実施例6]
1,4−シクロヘキサンジメタノールのTrans/Cis比率を75/25に変更した以外は実施例2と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[実施例7]
1,4−シクロヘキサンジメタノールのTrans/Cis比率を75/25に変更した以外は実施例3と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[実施例8]
1,4−シクロヘキサンジメタノールのTrans/Cis比率を75/25に変更した以外は実施例4と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[比較例1]
酢酸ナトリウム存在下で2時間加熱処理した以外は実施例1と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[比較例2]
酢酸ナトリウム存在下で2時間加熱処理した以外は実施例5と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[比較例3]
酢酸カリウム存在下で2時間加熱処理した以外は実施例3と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[比較例4]
酢酸カリウム存在下で2時間加熱処理した以外は実施例7と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[比較例5]
酢酸アルカリ触媒金属下で未加熱の1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートを用いた以外は実施例1と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[比較例6]
1,4−シクロヘキサンジメタノールのTrans/Cis比率を75/25に変更した以外は比較例5と同様にして全脂環族ポリエステルを得た。得られた全脂環族ポリエステルの固有粘度、ガラス転移温度、末端カルボキシル基濃度、さらには成形品のシャルピー衝撃強さ、引っ張り強さ、曲げ強さ等を評価し、その結果を表1〜表3に示した。
[比較例7]
1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの仕込みモル比[CHDM/DMCD仕込モル比]を1.5に変更した以外は比較例1と同様にして反応を実施したが、重縮合反応は進まずペレット化は不可能であった。
[比較例8]
1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの仕込みモル比[CHDM/DMCD仕込モル比]を1.5に変更した以外は比較例2と同様にして反応を実施したが、重縮合反応は進まずペレット化は不可能であった。
[比較例9]
1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの仕込みモル比[CHDM/DMCD仕込モル比]を1.5に変更した以外は比較例5と同様にして反応を実施したが、重縮合反応は進まずペレット化は不可能であった。
[比較例10]
1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの仕込みモル比[CHDM/DMCD仕込モル比]を2.0に変更した以外は比較例7と同様にして反応を実施したが、重縮合反応は進まずペレット化は不可能であった。
[比較例11]
1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの仕込みモル比[CHDM/DMCD仕込モル比]を2.0に変更した以外は比較例8と同様にして反応を実施したが、重縮合反応は進まずペレット化は不可能であった。
[比較例12]
1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートの仕込みモル比[CHDM/DMCD仕込モル比]を2.0に変更した以外は比較例9と同様にして反応を実施したが、重縮合反応は進まずペレット化は不可能であった。
Figure 2015147830
Figure 2015147830
Figure 2015147830
本発明の全脂環族ポリエステルは透明性が高く、成形品に必要な耐衝撃性を持っている。また、単独で用いることもできるし、ポリエチレンテレフタレートはポリエチレンナフタレートといった熱可塑性樹脂にコンパウンドすることも可能で、これらポリマーの耐衝撃性を大幅に改善できる。また、ビスフェノールAなど人体に悪影響を及ぼす物質(例えば内分泌かく乱作用)を含んでいないため、食品容器材料や医療用材料に好適に用いることができる。故に食品容器材料分野・医療用材料分野に大きな影響を与えることができる本願技術内容の工業的意義は極めて大きい。

Claims (4)

  1. 全脂環族ポリエステルを構成する繰り返し単位において、ジカルボン酸成分として下記式(I)で表される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレート成分を、ジオール成分として下記式(II)で表される1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を繰り返し単位に含む全脂環族ポリエステルであって、前記式(I)で表される化合物のTrans/Cis比率が60/40〜100/0であり、
    下記式(III)で表されるチタン化合物と下記式(IV)で表される芳香族多価カルボン酸との反応生成物および下記式(V)で表されるリン化合物を含有し、前記反応生成物に由来するチタン元素および前記リン化合物に由来するリン元素を含有し、その含有量が下記式(1)および(2)を同時に満たすことを特徴とする全脂環族ポリエステル。
    Figure 2015147830
    [上記式中、Rはアルキル基である。]
    Figure 2015147830
    Figure 2015147830
    [上記式中、R,R,R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基である。]
    Figure 2015147830
    [上記式中、nは2〜4の整数である。]
    Figure 2015147830
    [上記式中、R、RおよびRは、同一または異なって炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、Xは、−CH−または−CH(Y)を示す(Yは、ベンゼン環を示す。)。]
    20 ≦ Ti ≦ 50mmol% (1)
    20 ≦ P ≦ 50mmol% (2)
    [上記数式中、TiおよびPは脂環族ポリエステル中に含まれるチタン元素、リン元素の脂環族ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対する含有量である。]
  2. 上記式(II)で表される化合物のTrans/Cisの比率が60/40〜90/10であることを特徴とする請求項1に記載の全脂環族ポリエステル。
  3. 溶融重合によって得られる全脂環族ポリエステルであって、固有粘度(IV)が下記式(3)を満たし、かつ末端カルボキシル基濃度が10eq/T以下である請求項1または2に記載の全脂環族ポリエステル。
    0.60≦IV≦2.00 (3)
  4. 全脂環族ポリエステルの製造方法であって、上記式(I)で示される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートを下記工程1にてTrans異性化した化合物を用い、下記工程2を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の全脂環族ポリエステルの製造方法。
    工程1:上記式(I)で示される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートを酢酸アルカリ金属塩の存在下で250℃以上の反応温度で3時間以上加熱し、含有するTrans体を加熱前より増加させる工程
    工程2:工程1で得られたTrans体比率60〜100モル%の上記式(I)で示される1,4−ジアルキルシクロヘキサンジカルボキシレートと、上記式(II)で示されるジオールとをモル比が(II)/(I)=0.95〜1.40の範囲の状態でチタン化合物存在下、溶融状態で反応させる工程
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