<ポリエステル樹脂>
本発明のポリエステル樹脂は、特定のジオール成分(A)と、特定のジカルボン酸成分(B)とを重合成分とするポリエステル樹脂である。すなわち、本発明のポリエステル樹脂は、特定のジオール成分(A)由来の単位と、特定のジカルボン酸成分(B)由来の単位とを構成単位に含むポリエステル樹脂(例えば、線状ポリエステル樹脂など)である。また、本発明のポリエステル樹脂は、線状ポリエステル樹脂などであってもよい。なお、以下の記載において、「ジオール成分」及び「ジカルボン酸成分」は、それぞれ重合成分(又はモノマー)を表す他に、それぞれの重合成分に由来する単位(又はポリエステル樹脂の構成単位)を表す場合がある。
[ジオール成分(A)]
ジオール成分(A)(又は、ジオール成分(A)由来の単位)は、フルオレン骨格の9,9-位にそれぞれヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式芳香族基を有するフルオレンジオール成分(A1)(又は、ジオール成分(A1)由来の単位)を含んでいる。本発明では、フルオレンジオール成分(A1)を含むことにより、耐熱性及び屈折率を向上できる。
(フルオレンジオール成分(A1))
フルオレンジオール成分(A1)は、代表的には、前記式(1)で示されるフルオレンジオール成分(フルオレン含有ジオール成分)であってもよい。
前記式(1)において、Z1で表される縮合多環式芳香族炭化水素環(縮合多環式アレーン環)としては、例えば、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。
前記縮合二環式アレーン環としては、ナフタレン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。
前記縮合三環式アレーン環としては、アントラセン環、フェナントレン環などが挙げられる。
好ましい環Z1としては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10-16アレーン環が挙げられる。さらに、前記縮合多環式C10-16アレーン環の中でも、縮合多環式C10-14アレーン環が好ましく、ナフタレン環が特に好ましい。
2つの環Z1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。なお、フルオレン環の9位に結合する環Z1の置換位置は、特に限定されない。例えば、環Z2がナフタレン環の場合、1位又は2位のいずれかの位置であってもよい。
前記式(1)において、R1で表される置換基としては、例えば、アルキル基やアリール基などの炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられる。
前記アリール基としては、フェニル基などのC6-10アリール基などが挙げられる。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
R1で表される置換基を有する場合、これらのうち、アルキル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、特にアルキル基が好ましい。さらに、アルキル基の中でも、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基が好ましく、C1-3アルキル基がさらに好ましく、メチル基などのC1-2アルキル基が最も好ましい。
R1の置換数kは、0~4の整数であり、例えば0~3、好ましくは0~2程度の整数であり、さらに好ましくは0又は1、特に0である。なお、フルオレン骨格を形成する2つのベンゼン環において、それぞれの置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、それぞれのR1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、kが2以上である場合、同一のベンゼン環に置換する2以上のR1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、R1の置換位置は特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位乃至7位(2位、3位及び7位など)であってもよい。
前記式(1)において、R2で表される置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;アルキル基、シクロアルキル基、アリール基などの炭化水素基;アラルキル基;アルコキシ基;シクロアルキルオキシ基;アリールオキシ基;アラルキルオキシ基;アルキルチオ基;シクロアルキルチオ基;アリールチオ基;アラルキルチオ基;アシル基;ニトロ基;シアノ基;ジアルキルアミノ基やビス(アルキルカルボニル)アミノ基などの置換アミノ基などが例示できる。
炭化水素基において、アルキル基としては、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基などが挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基などが挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基などが挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、メチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基などが挙げられる。
シクロアルキルチオ基としては、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基などが挙げられる。
アリールチオ基としては、チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基などが挙げられる。
アラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基などが挙げられる。
アシル基としては、アセチル基などのC1-6アシル基などが挙げられる。
置換アミノ基において、ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基などが挙げられる。ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基などが挙げられる。
これらのR2のうち、代表的には、ハロゲン原子;アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基;アルコキシ基;アシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基などが挙げられる。
R2で表される置換基を有する場合、好ましいR2としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基などが挙げられ、さらに好ましいR2としては、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基、フェニル基などのC6-14アリール基、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基が挙げられる。なかでも、特に、アルキル基、アリール基が好ましく、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基が最も好ましい。
なお、R2がアリール基であるとき、R2は、Z1とともに前記環集合アレーン環を形成してもよい。なお、異なるZ1にそれぞれ結合するR2の種類は、同一又は異なっていてもよい。
R2の置換数mは、0又は1以上の整数であればよく、Z1の種類に応じて適宜選択でき、例えば0~8程度の整数から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~4、0~3、0~2、0又は1であり、0が最も好ましい。なお、異なるZ1における置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換数m1が2以上である場合、同一のZ1に置換する2以上のR2の種類は、同一又は異なっていてもよい。特に、mが1である場合、R2はメチル基であってもよい。また、R2の置換位置は特に制限されず、Z1と、エーテル結合(-O-)及びフルオレン環の9-位との結合位置以外の位置に置換していればよい。
前記式(1)において、A1としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基、最も好ましくはエチレン基が挙げられる。
オキシアルキレン基(OA1)の繰り返し数(付加モル数)nは、0又は1以上の整数であればよく、例えば0~15、好ましくは0~8、さらに好ましくは0~4の整数である。さらに、nは、1以上がより好ましく、例えば1~10、好ましくは1~6、さらに好ましくは1~2の整数、最も好ましくは1である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)」は、平均値(算術平均値、相加平均値)又は平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、好ましい整数の範囲と同様であってもよい。繰り返し数nが大きすぎると、屈折率が低下するおそれがある。また、2つの繰り返し数nは、それぞれ同一又は異なっていてもよい。nが2以上の場合、2以上のオキシアルキレン基(OA1)は、同一又は異なっていてもよい。また、異なるZ1にエーテル結合(-O-)を介して結合するオキシアルキレン基(OA1)は互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(1)において、基[-O-(A1O)n-]の置換位置は、特に限定されず、Z1の適当な置換位置にそれぞれ置換していればよい。基[-O-(A1O)n-]の置換位置は、Z1がベンゼン環である場合、フルオレン環の9-位に結合するフェニル基の2位、3位、4位(特に、3位又は4位)のいずれかの位置に置換している場合が多い。
代表的な、ジオール成分(A1)(又は前記式(1)で表される化合物)には、9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類(ジオール成分(A1-1))などが含まれる。
9,9-ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン(前記式(1)において、環Z1がナフタレン環、nが1である化合物);9,9-ビス(ヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレン(前記式(1)において、環Z1がナフタレン環、nが2~5である化合物)などが含まれる。
9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレンとしては、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(ヒドロキシポリアルコキシナフチル)フルオレンとしては、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9-ビス[6-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス(ヒドロキシC2-4アルコキシC2-4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などが挙げられる。
これらのフルオレンジオール(A1)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
これらのフルオレンジオール成分(A1)のうち、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類、例えば、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシC2-4アルコキシナフチル]フルオレンが好ましい。
フルオレンジオール成分(A1)の割合は、全ジオール成分(A)中50モル%以上であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、50~100モル%、70~99モル%、80~98モル%、85~95モル%であり、最も好ましくは88~92モル%である。フルオレンジオール成分(A1)の割合が少なすぎると、耐熱性及び屈折率が低下する虞があり、逆に多すぎると、複屈折が上昇したり、成形性が低下する虞がある。なお、これらの割合は、モノマーの仕込み割合であってもよいが、ポリエステル樹脂中に導入される構成単位の割合であるのが好ましい。
(脂肪族ジオール成分(A2))
ジオール成分(A)(又は、ジオール成分(A)由来の単位)は、さらに、脂肪族ジオール成分(A2)(又は、脂肪族ジオール成分(A2)由来の単位)を含んでいてもよい。脂肪族ジオール成分(A2)(又は、脂肪族ジオール成分(A2)由来の単位)を組み合わせることにより、重合を効率よく行うことができるとともに、高屈折率、低複屈折、耐熱性及び成形性をバランス良く備えたポリエステル樹脂を得ることができる。
脂肪族ジオール成分(A2)としては、アルカンジオールやポリアルルカンジオールなどの鎖状脂肪族ジオール;シクロアルカンジオール、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン、イソソルバイドなどの脂環族ジオールなどが挙げられる。
鎖状脂肪族ジオールにおいて、アルカンジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2-10アルカンジオールなどが挙げられる。ポリアルカンジオールとしては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2-4アルカンジオールなどが挙げられる。
脂環族ジオールにおいて、シクロアルカンジオールとしては、シクロヘキサンジオールなどのC5-8シクロアルカンジオールなどが挙げられる。ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカンとしては、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1-4アルキル)C5-8シクロアルカンなどが挙げられる。
これらのジオール成分(A2)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのうち、耐熱性や屈折率の点から、アルカンジオールなどの低分子量の脂肪族ジオール(鎖状脂肪族ジオール)が好ましく、エチレングリコールなどのC2-4アルカンジオールがさらに好ましい。
前記フルオレンジオール成分(A1)と脂肪族ジオール成分(A2)とのモル比は、前者/後者=100/0~50/50程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、99/1~70/30、98/2~75/25、97/3~80/20、95/5~85/15であり、最も好ましくは92/8~88/12である。脂肪族ジオール成分(A2)の割合が少なすぎると、重合や成形性などの向上効果が発現しない虞があり、逆に多すぎると、屈折率や耐熱性が低下する虞がある。なお、この割合は、ポリエステル樹脂中に導入される構成単位の割合を示す。
(他のジオール成分)
ジオール成分(A)は、フルオレンジオール成分(A1)及び脂肪族ジオール成分(A2)に加えて、他のジオール成分を含んでいてもよい。
他のジオール成分には、芳香族ジオール成分や、前記式(1)で表されるフルオレンジオール成分(A1)以外のフルオレンジオール成分などが含まれる。
芳香族ジオール成分としては、ヒドロキノン、レゾルシノールなどのジヒドロキシアレーン;ベンゼンジメタノールなどの芳香脂肪族ジオール;ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;p,p’-ビフェノールなどのビフェノール類;及びこれらのジオール成分のC2-4アルキレンオキシド(又はアルキレンカーボネート、ハロアルカノール)付加体などが挙げられる。前記ジオール成分のアルキレンオキシド付加体としては、1モルのビスフェノールAに対して、2~10モル程度のエチレンオキシドが付加した付加体などが挙げられる。
前記式(1)で表されるフルオレンジオール成分(A1)以外のフルオレンジオール成分としては、例えば、フルオレン骨格の9,9-位にそれぞれヒドロキシ(ポリ)アルコキシ単環式アレーン環を有するフルオレンジオール成分、フルオレン骨格の9,9-位にそれぞれヒドロキシ(ポリ)アルコキシ環集合アレーン環を有するフルオレンジオール成分などが挙げられる。
フルオレン骨格の9,9-位にそれぞれヒドロキシ(ポリ)アルコキシ単環式アレーン環を有するフルオレンジオール成分には、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アルキルフェニル]フルオレンなどが含まれる。9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシフェニル]フルオレンなどが挙げられる。;9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アルキルフェニル]フルオレンとしては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-3-イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-4アルコキシ-(モノ又はジ)C1-4アルキル-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
フルオレン骨格の9,9-位にそれぞれヒドロキシ(ポリ)アルコキシ環集合アレーン環を有するフルオレンジオール成分としては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-C6-10アリールフェニル]フルオレンなどが挙げられる。
他のジオール成分の割合は、ジオール成分(A)中30モル%以下、好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。他のジオール成分を含む場合、他のジオール成分の割合は、例えば、ジオール成分(A)中0.1~5モル%である。なお、この割合は、モノマーの仕込み割合であってもよいが、ポリエステル樹脂中に導入される構成単位の割合であるのが好ましい。
また、必要に応じて、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール成分又はその成分に由来する単位を少量、例えば、ジオール成分とポリオール成分との総量に対して10モル%以下、好ましくは0.1~8モル%、さらに好ましくは0.2~5モル%使用してもよい。なお、前記割合は、モノマーの仕込み割合であってもよいが、ポリエステル樹脂中に導入される構成単位の割合であるのが好ましい。前記ポリオール成分又はその成分に由来する単位としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのアルカンポリオールなどが挙げられる。
[ジカルボン酸成分(B)]
ジカルボン酸成分(B)(又はジカルボン酸成分(B)由来の単位)は、フルオレン骨格を有するフルオレンジカルボン酸成分(B1)(又はフルオレンジカルボン酸(B1)由来の単位)及び単環式芳香族ジカルボン酸成分(B2)(又は単環式芳香族ジカルボン酸成分(B2)由来の単位)を少なくとも含む。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、いずれのジカルボン酸成分においても、ジカルボン酸成分は、ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体を意味する。エステル形成性誘導体としては、アルキルエステルなどのエステル、酸クロライドなどの酸ハライド(例えば、酸クロライドなど)、酸無水物などが挙げられる。アルキルエステルとしては、メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル、好ましくはC1-4アルキルエステル、さらに好ましくはC1-2アルキルエステルなどが挙げられる。エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)又はジエステルであってもよい。ジカルボン酸成分は、ポリエステル樹脂の製造方法に応じて選択できるが、溶融重合法では、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステルなどを使用する場合が多い。
本発明では、フルオレンジオール成分(A1)と、フルオレンジカルボン酸成分(B1)及び単環式芳香族ジカルボン酸成分(B2)とを組み合わせることで、耐熱性と低複屈折とを両立し、さらに高い屈折率及び低いアッベ数を備えたポリエステル樹脂を容易に得ることができる。また、さらに脂肪族ジオール成分(A2)と組み合わせることにより、ガラス転移温度(Tg)を低下させることなく、さらに、成形性を損なうことなく、耐熱性を向上できる。
(フルオレンジカルボン酸成分(B1))
フルオレン骨格を有するフルオレンジカルボン酸成分(B1)としては、フルオレン骨格を構成する2つのベンゼン環に2つのカルボキシル基含有基が置換した化合物、例えば、2,7-ジカルボキシフルオレンなどのフルオレンジカルボン酸であってもよいが、通常、フルオレンの9-位にカルボキシル基含有基が置換した化合物、例えば、前記式(2-1)で表されるフルオレン骨格を有するフルオレンジカルボン酸成分、前記式(2-2)で表されるフルオレン骨格を有するフルオレンジカルボン酸成分及び前記式(2-3)で表される化合物から選択された少なくとも1つを好適に使用できる。
前記式(2-1)及び(2-2)において、A2及びA3で表されるアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2-エチルエチレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-8アルキレン基が例示できる。好ましいアルキレン基は直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキレン基であり、さらに好ましいアルキレン基は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキレン基である。
アルキレン基の置換基としては、フェニル基などのアリール基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基などが例示できる。
A2は、エチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基である場合が多く、A3は、メチレン基、エチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルキレン基である場合が多い。置換基を有するアルキレン基A2は、1-フェニルエチレン基、1-フェニルプロパン-1,2-ジイル基などであってもよい。
係数rは0~4の整数から選択でき、通常、0~2、好ましくは0又は1である。
前記式(2-1)及び(2-2)において、基R3及びR4、p及びqは、好ましい態様を含め、前記式(1)記載のR1及びkとそれぞれ同一である。
前記式(2-1)で表される代表的な化合物は、A2がC2-6アルキレン基である化合物、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)フルオレン及びこれらのエステル形成性誘導体などを含む。前記式(2-2)で表される代表的な化合物は、r=0であり、かつA3がC1-6アルキレン基である化合物、9-(1,2-ジカルボキシエチル)フルオレン、r=1であり、かつA3がC1-6アルキレン基である化合物、例えば、9-(2,3-ジカルボキシプロピル)フルオレンなどの9-(ジカルボキシC2-6アルキル)フルオレン及びこれらのエステル形成性誘導体などを含む。
前記式(2-3)において、環Z2で表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。縮合多環式アレーン環は、好ましい態様も含め、前記式(1)記載のZ1と同一である。環集合アレーン環としては、ビアレーン環(例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環など)などのビC6-12アレーン環など)、テルアレーン環(例えば、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環など)などが例示できる。好ましい環集合アレーン環は、ビC6-10アレーン環などが挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
2つの環Z2の種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。環Z2のうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環などが好ましく、なかでもベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環が好ましく、特に、複屈折をより低減し易い点からはベンゼン環が、よりガラス転移温度を向上し、かつ高屈折率化できる点からはナフタレン環が好ましい。特に、高い屈折率、低い複屈折及び高い耐熱性とのバランスに優れる点からベンゼン環が好ましい。
なお、フルオレン環の9位に結合する環Z2の置換位置は、特に限定されない。例えば、環Z2がベンゼン環の場合、1~6位のいずれかの位置であってもよく、環Z2がナフタレン環の場合、1位又は2位のいずれかの位置であってもよく、環Z2がビフェニル環の場合、2位、3位、4位のいずれかの位置であってもよい。
前記式(2-3)において、基R5及びR6、s及びtは、好ましい態様を含め、前記式(1)記載のR1及びR2、k及びmとそれぞれ同一である。
カルボキシル基の置換位置は、環Z2とフルオレン環との結合位置以外の位置であれば、特に限定されず、例えば、環Z2がベンゼン環である場合、2~6位のいずれかの位置であればよく、通常、4位であることが多い。環Z2がナフタレン環である場合、通常、フルオレン環の9位に対して、1位又は2位で結合するナフチル基の5~8位のいずれかの位置に置換している場合が多く、フルオレン環の9位に対して、ナフタレン環の1位又は2位が置換し(1-ナフチル又は2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5位、2,6位(特に、2,6位)などの関係で置換しているのが好ましい。環Z2がビフェニル環である場合、ビフェニル環の2~6位及び2’~6’位のいずれかの位置に置換していればよいが、例えば、ビフェニル環の3位又は4位がフルオレンの9位に結合していてもよく、ビフェニル環の3位がフルオレンの9位に結合する場合、カルボキシル基の置換位置は、例えば、ビフェニル環の2位、4位、5位、6位、2’位、3’位、4’位のいずれの位置であってもよく、好ましくは6位、4’位のいずれかの位置であってもよく、さらに好ましくは6位であってもよい。ビフェニル環の4位がフルオレンの9位に結合している場合、カルボキシル基の置換位置は、ビフェニル環の2位、3位、2’位、3’位、4’位のいずれの位置であってもよく、好ましくは2位、4’位のいずれかの位置であってもよく、さらに好ましくは2位であってもよい。
前記式(2-3)で表される代表的な化合物としては、9,9-ビス(カルボキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシ-アルキルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシ-アリールフェニル)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(カルボキシフェニル)フルオレンとしては、9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(カルボキシ-アルキルフェニル)フルオレンとしては、9,9-ビス(4-カルボキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-カルボキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシ-(モノ又はジ)C1-4アルキルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(カルボキシ-アリールフェニル)フルオレンとしては、9,9-ビス(4-カルボキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシ-C6-10アリールフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(カルボキシナフチル)フルオレンとしては、9,9-ビス(6-カルボキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-カルボキシ-1-ナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
これらの前記式(2-3)で表されるフルオレンジカルボン酸成分は、慣用の方法で製造できる。慣用の方法としては、特開2009-149553号公報に記載の方法、例えば、第1のジカルボン酸成分のカルボキシル基に代えてヒドロキシル基を有するジオール化合物と、トリフルオロメタンスルホン酸無水物とを、ピリジンなどの塩基触媒及びアセトニトリル/トルエン混合溶媒などの溶媒の存在下で反応させてトリフラート化合物を調製する工程;このトリフラート化合物と一酸化炭素とを、酢酸パラジウムなどの遷移金属触媒、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンなどの配位性化合物、トリエチルアミンなどの塩基触媒、メタノールなどのエステル化剤及びトルエンなどの溶媒の存在下で反応させて、エステル化合物を調製する工程;このエステル化合物を塩基又は酸触媒により加水分解する工程などを含む方法が挙げられる。
これらのフルオレンジカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらフルオレンジカルボン酸成分(B1)のうち、前記式(2-1)又は前記式(2-2)で表される化合物を含むのが好ましく、前記式(2-1)で表される化合物、例えば、9,9-ビス(カルボキシC1-4アルキル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類を含むのが特に好ましい。
さらに、フルオレンジカルボン酸成分(B1)は、前記式(2-1)又は前記式(2-2)で表されるフルオレン骨格を有するフルオレンジカルボン酸成分と、前記式(2-3)で表されるフルオレン骨格を有するフルオレンジカルボン酸成分との組み合わせが好ましく、、前記式(2-1)で表されるフルオレン骨格を有するフルオレンジカルボン酸成分と、前記式(2-3)で表されるフルオレン骨格を有するフルオレンジカルボン酸成分との組み合わせが特に好ましい。前記式(2-1)又は前記式(2-2)で表されるフルオレン骨格を有するフルオレンジカルボン酸成分に加えて、前記式(2-3)で表されるフルオレン骨格を有するフルオレンジカルボン酸成分をさらに配合することにより、耐熱性をさらに向上でき、複屈折を高度に低減できる。
前記式(2-1)又は前記式(2-2)で表されるフルオレンジカルボン酸成分と、前記式(2-3)で表されるフルオレンジカルボン酸成分とのモル比は、例えば、前者/後者=99/1~30/70程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、97/3~50/50、95/5~60/40、92/8~70/30、90/10~80/20であり、最も好ましくは87/13~82/18である。前記式(2-3)で表されるフルオレンジカルボン酸成分の割合が少なすぎると、耐熱性及び複屈折の向上効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、成形性などが低下する虞がある。
フルオレンジカルボン酸成分(B1)は、全ジカルボン酸成分(B)中10モル%以上であってもよく、例えば10~90モル%、好ましくは20~80モル%、さらに好ましくは30~70モル%、最も好ましくは40~60モル%である。フルオレンジカルボン酸(B1)の割合が少なすぎると、複屈折が上昇する虞があり、逆に多すぎると、耐熱性が低下する虞がある。なお、これらの割合は、モノマーの仕込み割合であってもよいが、ポリエステル樹脂中に導入される構成単位の割合であるのが好ましい。
(単環式芳香族ジカルボン酸成分(B2))
ジカルボン酸成分(B)は、前記フルオレンジカルボン酸成分(B1)に加えて、単環式芳香族ジカルボン酸成分(B2)を含んでいてもよい。本発明では、フルオレンジオール成分(A1)に対して、フルオレンジカルボン酸成分(B1)及び単環式芳香族ジカルボン酸成分(B2)の組み合わせを重合させると、複屈折の低下だけでなく、意外にも耐熱性も向上でき、諸特性のバランスに優れる。
単環式芳香族ジカルボン酸成分(B2)としては、ベンゼンジカルボン酸;アルキルイソフタル酸などが挙げられる。
ベンゼンジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などが挙げられる。
アルキルイソフタル酸としては、4-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキルイソフタル酸などが挙げられる。
これらの単環式芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、耐熱性を維持して、複屈折を低減できる点から、テレフタル酸が好ましい。
前記フルオレン含有ジカルボン酸成分(B1)と単環式芳香族ジカルボン酸成分(B2)とのモル比は、前者/後者=90/10~10/90程度の範囲から選択でき、例えば80/20~20/80、好ましくは70/30~30/70、さらに好ましくは60/40~40/60、最も好ましくは55/45~45/55である。単環式ジカルボン酸成分(B2)の割合が少なすぎると、成形性が低下する虞があり、多すぎると、屈折率が低下する虞がある。なお、この割合は、モノマーの仕込み割合であってもよいが、ポリエステル樹脂中に導入される構成単位の割合であるのが好ましい。
(他のジカルボン酸成分)
ジカルボン酸成分(B)は、フルオレンジカルボン酸成分(B1)及び単環式芳香族ジカルボン酸成分(B2)に加えて、他のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。
他のジカルボン酸成分には、脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、多環式芳香族ジカルボン酸成分、前記式(2-1)及び(2-2)で表されるフルオレンジカルボン酸成分(B1)以外のフルオレンジカルボン酸成分などが含まれる。
脂肪族ジカルボン酸成分としては、アルカンジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
アルカンジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などのC1-20アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸成分としては、シクロアルカンジカルボン酸、架橋環式シクロアルカンジカルボン酸、シクロアルケンジカルボン酸、架橋環式シクロアルケンジカルボン酸などが挙げられる。
シクロアルカンジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸などのC4-12シクロアルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
架橋環式シクロアルカンジカルボン酸としては、ノルボルナンジカルボン酸などの(ジ又はトリ)シクロC7-10アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
シクロアルケンジカルボン酸としては、シクロペンテンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
架橋環式シクロアルケンジカルボン酸としては、ノルボルネンジカルボン酸などの(ジ又はトリ)シクロC7-10アルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
多環式芳香族ジカルボン酸成分としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸;4,4’-ビフェニルジカルボン酸などのアリールアレーンジカルボン酸などが挙げられる。
前記式(2-1)及び(2-2)で表されるフルオレンジカルボン酸成分(B1)以外のフルオレンジカルボン酸成分としては、例えば、2,7-ジカルボキシフルオレンなどのジカルボキシフルオレンなどが挙げられる。
他のジカルボン酸成分の割合は、ジカルボン酸成分(B)中30モル%以下、好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。他のジカルボン酸成分を含む場合、他のジカルボン酸成分の割合は、例えば、ジカルボン酸成分(B)中0.1~5モル%である。なお、この割合は、モノマーの仕込み割合であってもよいが、ポリエステル樹脂中に導入される構成単位の割合であるのが好ましい。
特に、本発明のポリエステル樹脂は、低複屈折と高い耐熱性とを両立できる点から、他のジカルボン酸成分のうち、多環式芳香族ジカルボン酸成分を含まないのが好ましい。多環式芳香族ジカルボン酸成分の割合は、ジカルボン酸成分(B)中10モル%以下、好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下であり、最も好ましくは0モル%である。多環式芳香族ジカルボン酸成分を含む場合、多環式芳香族ジカルボン酸成分の割合は、例えば、ジカルボン酸成分(B)中0.01~1モル%である。
また、必要に応じて、3以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸成分又はその成分由来の単位を少量、例えば、ジカルボン酸成分とポリカルボン酸成分との総量に対して10モル%以下、好ましくは0.1~8モル%、さらに好ましくは0.2~5モル%使用してもよい。なお、前記割合は、モノマーの仕込み割合であってもよいが、ポリエステル樹脂中に導入される構成単位の割合であるのが好ましい。前記ポリカルボン酸成分又はその成分由来の単位としては、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸など、またこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
[ポリエステル樹脂の特性及び製造方法]
本発明のポリエステル樹脂は、前記ジオール成分(A)と前記ジカルボン酸成分(B)とを重合成分とする樹脂であり、光学的特性、機械的特性、熱的特性など、特に光学的特性、機械的特性などの種々の特性において優れている。例えば、本発明のポリエステル樹脂は、特定のジオール成分(由来の骨格)と特定のジカルボン酸成分(由来の骨格)とを組み合わせて有し高い耐熱性と低い複屈折とを両立している。さらに、本発明のポリエステル樹脂は、高い屈折率及び低いアッベ数も有している。
本発明のポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は高く、160℃以上程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、160~200℃、162~190℃、163~180℃、165~175℃、168~172℃であり、最も好ましくは170~172℃である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定でき、詳しくは、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、例えば15000~70000程度の範囲から選択でき、例えば20000~60000程度、好ましくは23000~40000程度、さらに好ましくは25000~38000程度、最も好ましくは28000~35000である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定でき、詳しくは、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のポリエステル樹脂の20℃、波長589nmでの屈折率は、例えば1.65以上の範囲から選択でき、例えば1.655以上、好ましくは1.66以上、さらに好ましくは1.665以上である。さらに、前記屈折率は、例えば1.65~1.7、好ましくは1.655~1.69、さらに好ましくは1.66~1.68、最も好ましくは1.665~1.675である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、屈折率は、多波長アッベ屈折計を用いて測定でき、詳しくは、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のポリエステル樹脂の20℃でのアッベ数は、例えば23以下、好ましくは22以下、さらに好ましくは21以下である。さらに、前記アッベ数は、例えば17~23、好ましくは18~22、さらに好ましくは19~21である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、アッベ数は、多波長アッベ屈折計を用いて測定でき、詳しくは、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のポリエステル樹脂の20℃、波長600nmでの3倍複屈折の絶対値は、例えば60×10-4以下の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.01×10-4~60×10-4、0.05×10-4~58×10-4、0.1×10-4~55×10-4、1×10-4~50×10-4、5×10-4~48×10-4であり、最も好ましくは10×10-4~45×10-4である。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、3倍複屈折は、回転検光子法を用いて測定でき、詳しくは、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
本発明のポリエステル樹脂は、前記ジオール成分(A)と前記ジカルボン酸成分(B)とを反応(重合又は縮合)させることにより製造できる。重合方法(製造方法)としては、慣用の方法、溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などが例示できる。好ましい方法は、ジオール成分とジカルボン酸成分とを溶融混合下で重合させる方法である溶融重合法である。
また、反応において、ジオール成分(A)及びジカルボン酸成分(B)の使用量(使用割合)は、前記と同様の範囲から選択できるが、必要に応じて各成分などを過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどの脂肪族ジオール成分(A2)は、ポリエステル樹脂中に導入されるフルオレンジオール成分(A1)由来骨格の割合よりも過剰に使用してもよい。また、反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒又はエステル交換触媒、重縮合触媒などを利用できる。
エステル化触媒(エステル交換触媒)としては、ナトリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;、マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなどの遷移金属などの金属化合物などが挙げられる。金属化合物は、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩などの有機酸塩であってもよい。これらのエステル化触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、酢酸マンガンや酢酸カルシウムなどの酢酸塩が好ましい。
エステル化触媒の使用量は、ジカルボン酸成分1モルに対して、例えば0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~30×10-4モルである。
重縮合触媒としては、例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなどの遷移金属;アルミニウムなどの周期表第13族金属;ゲルマニウムなどの周期表第14族金属;アンチモンなどの周期表第15族金属などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物としては、例えば、アルコキシド;酢酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩;ホウ酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;金属酸化物などであってもよく、代表的には、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム-n-ブトキシドなどのゲルマニウム化合物;三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレンリコレートなどのアンチモン化合物;テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなどのチタン化合物などが例示できる。これらの重縮合触媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物が好ましい。
重縮合触媒の使用量は、ジカルボン酸成分1モルに対して、例えば0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
また、反応は、必要に応じて、熱安定剤や光安定剤、酸化防止剤などの安定剤、重合調整剤などの存在下で行ってもよい。熱安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、亜リン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどのリン化合物などが挙げられる。安定剤の使用量は、ジカルボン酸成分1モルに対して、例えば0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
反応は、通常、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行うことができる。また、反応は、1×102~1×104Pa程度の減圧下で行うこともできる。反応温度は、重合法に応じて選択でき、例えば、溶融重合法における反応温度は、例えば150~300℃、好ましくは180~290℃、さらに好ましくは200~280℃である。本発明のポリエステル樹脂は、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分(B1)を含む特定のジカルボン酸成分を原料とするためか、比較的低粘度であり、溶融重合により製造しやすい。
[成形体]
本発明のポリエステル樹脂は、前記のように、高屈折率、低複屈折などの優れた光学的特性、機械的特性、高耐熱性を有している。そのため、本発明には、前記ポリエステル樹脂(又はその樹脂組成物、以下、樹脂組成物を含めてポリエステル樹脂ということがある)で構成された成形体(特に、光学フィルム、光学レンズ、光学シートなどの光学用部材)も含まれる。成形体の形状は、特に限定されず、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、棒状、管状又はチューブ状、中空状などの三次元的構造などが挙げられる。
このような成形体は、前記ポリエステル樹脂で構成されていればよく、前記ポリエステル樹脂を含む樹脂組成物で構成してもよい。このような樹脂組成物は、各種添加剤を含んでいてもよい。
前記添加剤としては、充填剤又は補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、炭素材などが挙げられる。
前記安定剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など挙げられる。
前記低応力化剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などが挙げられる。
これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の割合は、ポリエステル樹脂100重量部に対して、例えば30重量部以下、好ましくは0.1~20重量部、さらに好ましくは1~10重量部である。
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
本発明のポリエステル樹脂は、種々の光学的特性に優れているため、フィルム(特に光学フィルム)を形成するのにも有用である。そのため、本発明には、前記ポリエステル樹脂で形成されたフィルム(光学フィルム)も含まれる。
このようなフィルムの厚みは、1~1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば1~200μm、好ましくは5~150μm、さらに好ましくは10~120μmである。
このようなフィルム(光学フィルム)は、前記ポリエステル樹脂を、慣用の成膜方法、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(又は成形)することにより製造できる。
フィルムは、延伸フィルムであってもよい。本発明の成形体は、延伸フィルムであっても、低複屈折を維持できる。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
延伸倍率は、一軸延伸又は二軸延伸において各方向にそれぞれ1.1~10倍、好ましくは1.2~8倍、さらに好ましくは1.5~6倍であってもよく、通常1.1~2.5倍、好ましくは1.2~2.3倍、さらに好ましくは1.5~2.2倍であってもよい。
なお、二軸延伸の場合、等延伸であっても、偏延伸であってもよい。等延伸は、例えば、縦横両方向に1.5~5倍延伸であってもよい。偏延伸は、例えば、縦方向に1.1~4倍、横方向に2~6倍延伸であってもよい。
また、一軸延伸の場合、縦延伸であっても横延伸であってもよい。縦延伸は、例えば、縦方向に2.5~8倍延伸であってもよい。横延伸は、例えば、横方向に1.2~5倍延伸であってもよい。
延伸フィルムの厚みは、例えば1~150μm、好ましくは3~120μm、さらに好ましくは5~100μmである。
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(又は未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限が無く、一軸延伸の場合、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法ともいわれる)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、用いた原料の略号及び詳細、並びに得られた樹脂又はフィルムの評価方法を以下に示す。
[原料]
BNEF:9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(後述する合成例1によって合成)
EG:エチレングリコール
FDPM:9,9-ジ(2-メトキシカルボニルエチル)フルオレン[9,9-ジ(2-カルボキシエチル)フルオレン又はフルオレン-9,9-ジプロピオン酸のジメチルエステル。特開2005-89422号公報の実施例1のアクリル酸t-ブチルをアクリル酸メチル(37.9g(0.44モル))に変更したこと以外は同様にして合成したもの)]
DMN:2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル
FDBA(フルオレンジ安息香酸):9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン(後述する合成例2によって合成)。
[1H-NMR]
BRUKER社製「AVANCE III HD」を用い、標準物質TMS(テトラメチルシラン)、重クロロホルムを利用して、得られたスペクトルから、それぞれのモノマー由来のピークより、ポリエステル樹脂に導入された各モノマー成分(構成単位)の割合を算出した。
[ガラス転移温度(Tg)]
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製「DSC 6220」)を用いて、アルミパンに試料を入れ、30~200℃の範囲でガラス転移温度(Tg)を測定した。
[分子量]
試料をクロロホルムに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー(株)製「HLC-8120GPC」)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
[屈折率]
試料を200~240℃で熱プレスすることによって、厚みが200~300μmのフィルムを成形した。このフィルムを縦20~30mm×横10mmの短冊状に切り出し、試験片を得た。得られた試験片について、多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製「DR-M2/1410(循環式恒温水槽60-C3)」)を用いて、測定温度20℃、光源波長589nmで測定した。
[アッベ数]
屈折率の測定に用いた試験片について、多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製「DR-M2/1410(循環式恒温水槽60-C3)」)を用いて、測定温度20℃で、接触液にジヨードメタンを使用して、測定波長486nm(F線)、589nm(D線)、656nm(C線)における屈折率nF、nD、nCをそれぞれ測定し、以下の式によって算出した。
アッベ数=(nD-1)/(nF-nC)。
[複屈折(又は3倍複屈折)]
リタデーション測定装置(大塚電子(株)製「RETS-100」)を用い、測定温度20℃、測定波長600nmの条件下、回転検光子法にてリタデーションを測定し、このリタデーション値を測定部位の厚みで除することで算出した。測定に用いた試験片は、以下の手順で作成した。樹脂を160~240℃でプレス成形し、厚み100~400μmのフィルムを得た。得られたフィルムを15mm×50mmの短冊状に切り出し、ガラス転移温度(Tg)+10℃の温度で延伸倍率3倍に25mm/分で一軸延伸し、測定用試験片を作成した。得られた試験片を上記方法で測定し、3倍複屈折を求めた。
[合成例1(BNEFの合成)]
1Lのセパラブルフラスコに、9-フルオレノン45g(0.25モル、大阪ガスケミカル(株)製)、エチレングリコールモノ(2-ナフチル)エーテル188g(1モル)、及び3-メルカプトプロピオン酸1gを投入した後に、60℃まで加温して完全に溶解させた。その後、硫酸54gを徐々に投入して、60℃を維持しつつ5時間攪拌したところ、HPLC(高速又は高性能液体クロマトグラフィー)にて9-フルオレノンの転化率が99%以上であることを確認できた。得られた反応液に48重量%水酸化ナトリウム水溶液を投入して中和した後、キシレン400gを添加して蒸留水にて数回洗浄し、冷却することで結晶を析出させた。さらに、ろ過して乾燥したところ、87g(収率67%)の結晶として、目的とする9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF)を得た。得られた結晶のHPLC純度を測定したところ、98.3%であった。なお、得られた結晶は、1H-NMR及びマススペクトルにより、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF)であることを確認した。
[合成例2(FDBA)の合成]
5Lのフラスコを窒素置換し、ピリジン308.5g(3.9mol)、アセトニトリル1.4L、トルエン1.2L及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-フェニル)フルオレン[BPF、大阪ガスケミカル(株)製]525.6g(1.5mol)を混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸無水物[Tf2O、[昭和電工(株)製]930.9g(3.3mol)を滴下して終夜撹拌した。次に、水及びトルエンを加えて撹拌し、Tf2Oを加水分解して水相を除去した。有機相を水、飽和食塩水で順次洗浄した後、減圧濃縮した。貧溶媒としてn-ヘキサンを用いて再結晶し、9,9-ビス(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニル)フルオレン(Tf体)763g(収率83%)を得た。
2LのオートクレーブにTf体を368.7g(0.6mol)、酢酸パラジウム[三津和化学薬品(株)製]270mg(1.2mmol)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン[DPPP、アヅマックス(株)製]990mg(2.4mol)、トリエチルアミン243g(2.4mol)、メタノール96g(3mol)、トルエン600mLを入れ、容器全体を窒素置換した後、一酸化炭素で置換した。この溶液を100℃に加熱し、一酸化炭素で2MPaに加圧して6時間撹拌した。得られた溶液に水を加えて撹拌後、水相を除去し、有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、減圧乾固した。得られた固体をトルエンに溶解し、貧溶媒としてn-ヘキサンを用いて15℃で再結晶し、9,9-ビス(4-メトキシカルボニル-フェニル)フルオレン(Meエステル体)224g(収率86%)を得た。
上記方法を繰り返して得られたMeエステル体692g(1.59mol)、テトラヒドロフラン(THF)1.5Lを窒素置換したフラスコ内で撹拌し、10重量%水酸化ナトリウム水溶液1.5Lを添加した。還流しながら5時間撹拌して、Meエステル体を加水分解した。THFを留去して、水及びトルエンを加えて撹拌し、有機相を除去した。60℃に加熱した水相に濃塩酸470g(4.5mol)を滴下し、徐々に冷却して析出した結晶をろ過した。得られた結晶を50℃で通風乾燥して、フルオレンジ安息香酸(FDBA)651g(収率99%)を得た。
比較例1
FDPM0.80モル、DMN0.20モル、BNEF0.75モル、EG2.25モル、エステル交換触媒として、酢酸マンガン・4水和物(関東化学(株)製)2×10-4モル、酢酸カルシウム・1水和物(関東化学(株)製)8×10-4モルを加えて撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルリン酸(関東化学(株)製)14×10-4モル、酸化ゲルマニウム(関東化学(株)製)20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。得られたペレットを、1H-NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の80モル%がFDPM由来であり、20モル%がDMN由来であった。また、ジオール成分の75モル%がBNEF由来であり、25モル%がEG由来であった。
比較例2~12及び実施例1~10
得られた構成単位の割合が表1に示す割合になるように、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂を製造し、1H-NMRにより構成単位を分析した結果、表1に示すモル比であった。
比較例及び実施例で得られたポリエステル樹脂の特性を評価した結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、実施例で得られたポリエステル樹脂は、ガラス転移温度及び屈折率が高く、アッベ数及び複屈折が低い。