JP6225150B2 - フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂とその成形体 - Google Patents
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ジオール成分(A3−1)としてのC2−6アルカンジオール由来の単位を、ジオール成分(A)由来の単位全体に対して5〜25モル%程度の割合で含んでいてもよい。
本発明のポリエステル樹脂は、特定のジオール成分(A)と、特定のジカルボン酸成分(B)とを重合成分とするポリエステル樹脂[又は、特定のジオール成分(A)由来の単位と、特定のジカルボン酸成分(B)由来の単位とを構成単位に含むポリエステル樹脂(例えば、線状ポリエステル樹脂など)]である。なお、以降の記載において、「ジオール成分」及び「ジカルボン酸成分」という記載は、それぞれ重合成分(又はモノマー)を表す他に、それぞれの重合成分に由来する単位(又はポリエステル樹脂の構成単位)を表す場合がある。
ジオール成分(A)(又は、ジオール成分(A)由来の単位)は少なくとも、9,9−位にそれぞれヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式芳香族基を有するジオール成分(A1)(又は、ジオール成分(A1)由来の単位)を含んでいる。ジオール成分(A1)(又は、ジオール成分(A1)由来の単位)と、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分(B1)(又は、ジカルボン酸成分(B1)由来の単位)とを組み合わせることによって、高屈折率、低複屈折の両立しがたい特性を併せ持つことが可能となる。さらに、理由は定かではないが、柔軟性に欠けることが予想される縮合多環式芳香族骨格を有しているにもかかわらず、得られるポリエステル樹脂は、(脆くなることなく、逆に)高い靱性を備えている。
本発明に使用されるジオール成分(A1)は、代表的には、下記式(1−1)で示される化合物であってもよい。
ジオール成分(A2)は、代表的には、下記式(1−2)で表される化合物であってもよい。
前記ジオール成分(A)(又は、ジオール成分(A)由来の単位)は、さらに、脂肪族ジオール成分(A3)(又は、ジオール成分(A3)由来の単位)を含んでいてもよい。ジオール成分(A3)(又は、ジオール成分(A3)由来の単位)を組み合わせることにより、重合を効率よく行うことができる(特に、前記割合(例えば、導入割合)のジオール成分(A1)や(A2)(又は、ジオール成分(A1)や(A2)由来の単位)などの9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するジオール成分(又は、その成分に由来する単位)と組み合わせることにより、高屈折率、低複屈折、さらには、高い靱性及び耐熱性をバランス良く備えたポリエステル樹脂を得ることができる。)。
ジカルボン酸成分(B)(又は、ジカルボン酸成分(B)由来の単位)は、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分(B1)(又は、ジカルボン酸成分(B1)由来の単位)を少なくとも含んでいる。本発明では、このようなフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分(B1)(又は、ジカルボン酸成分(B1)由来の単位)と、フルオレン骨格の9,9−位にそれぞれヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式芳香族基を有するジオール成分(A1)(又は、ジオール成分(A1)由来の単位)とを組み合わせることで、高屈折率及び低複屈折を両立し、さらに高い靱性を備えたポリエステル樹脂を容易に得ることができる。また、ガラス転移温度(Tg)を低下させることなく、さらに、成形性を損なうことなく、耐熱性を向上できる。
フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分(B1)としては、フルオレン骨格を有するジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体が含まれる。なお、エステル形成性誘導体としては、例えば、エステル[例えば、アルキルエステル[例えば、メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル(例えば、C1−4アルキルエステル、特にC1−2アルキルエステル)など]など]、酸ハライド(例えば、酸クロライドなど)、酸無水物などが挙げられる。エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)又はジエステルであってもよい。フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分(B1)は、ポリエステル樹脂の製造方法に応じて選択できるが、溶融重合法では、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステルなどを使用する場合が多い(以下「カルボン酸成分」について同じ)。
他のジカルボン酸成分(B2)としては、芳香族ジカルボン酸成分(B2−1)、脂環族ジカルボン酸成分(B2−2)、脂肪族ジカルボン酸成分(B2−3)が含まれる。芳香族ジカルボン酸成分(B2−1)としては、例えば、多環式芳香族ジカルボン酸{例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの異なる環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸;1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などの同一の環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10−24アレーン−ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10−16アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくは縮合多環式C10−14アレーン−ジカルボン酸など];アリールアレーンジカルボン酸[例えば、ビフェニルジカルボン酸(例えば、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)などのC6−10アリール−C6−10アレーン−ジカルボン酸など];ジアリールアルカンジカルボン酸[例えば、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸など)などのジC6−10アリールC1−6アルカン−ジカルボン酸など];ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、ジフェニルケトンジカルボン酸(例えば、4.4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)などのジC6−10アリールケトン−ジカルボン酸)など]など};単環式芳香族ジカルボン酸[例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキルイソフタル酸など)などのC6−10アレーン−ジカルボン酸など]などが挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸成分(B2−1)としては、これらのエステル形成性誘導体も挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂は、前記ジオール成分(A)と前記ジカルボン酸成分(B)とを重合成分とする樹脂であり、種々の特性(例えば、光学的特性、機械的特性、熱的特性など、特に光学的特性、機械的特性)において優れている。例えば、本発明のポリエステル樹脂は、特定のジオール成分(由来の骨格)と特定のジカルボン酸成分(由来の骨格)とを組み合わせて有し、高屈折率と低複屈折とを両立している。さらに、本発明のポリエステル樹脂は、高い靱性をも有している。
本発明のポリエステル樹脂は、前記のように、優れた光学的特性(高屈折率、低複屈折など)、機械的特性、高耐熱性を有している。そのため、本発明には、前記ポリエステル樹脂(又はその樹脂組成物、以下、樹脂組成物を含めてポリエステル樹脂ということがある)で構成された成形体(特に、光学フィルム、光学レンズ、光学シートなどの光学用部材)も含まれる。成形体の形状は、特に限定されず、例えば、二次元的構造(例えば、フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(例えば、管状、棒状、チューブ状、中空状など)などが挙げられる。
BRUKER社製「AVANCE III HD」を用い、標準物質TMS(テトラメチルシラン)、重クロロホルムを利用して、得られたスペクトルから、それぞれのモノマー由来のピークより、ポリエステル樹脂に導入された各モノマー成分(構成単位)の割合を算出した。
ゲル浸透クロマトグラフィ(東ソー(株)製、HLC−8120GPC)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で、分子量を測定した。
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製、DSC 6220)を用い、アルミパンに試料を入れ、30℃から200℃の範囲でTgを測定した。
多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製、DR−M2/1550)を用い、光源波長589nm、測定温度20℃で測定した。
多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製、DR−M2/1550)を用い、測定温度20℃で、光源波長486nm(F線)、589nm(d線)及び656nm(C線)における屈折率nF、nd及びnCを測定し、(nd−1)/(nF−nC)より算出した。
リタデーション測定装置(大塚電子(株)製、RETS-100)を用い、測定温度20℃で、測定方式は平行ニコル回転法にて、波長600nmでリタデーションを測定し、このリタデーション値を測定部位の厚みで除することで算出した。測定に用いた試験片は、以下の手順で作成した。樹脂を160〜240℃でプレス成形し、厚み100〜400μmのフィルムを得た。得られたフィルムを15mm×50mmの短冊状に切り出し、ガラス転移温度(Tg)+10℃の温度で延伸倍率3倍に25mm/分で一軸延伸し、測定用試験片を作成した。得られた試験片を上記方法で測定し、3倍複屈折を求めた。
押出成形により得られたストランド(長さ20cm、直径2mm)を試験片とした。20℃の雰囲気下で、得られた試験片の両端を把持して角度約90°に曲げ、湾曲部又は屈曲部を観察し、下記の基準で評価した。
○:容易に折れないが、3個未満のクラックの発生が見られる
△:折れないが、3個以上のクラックの発生が見られる。
1Lのセパラブルフラスコに、9−フルオレノン45g(0.25モル、大阪ガスケミカル(株)製)、エチレングリコールモノ(2−ナフチル)エーテル188g(1モル)、3−メルカプトプロピオン酸1gを投入した後に、60℃まで加温して完全に溶解させた。その後、硫酸54gを徐々に投入して、60℃を維持しつつ5時間攪拌したところ、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて9−フルオレノンの転化率が99%以上であることを確認できた。得られた反応液に48%苛性ソーダ水を投入して中和した後、キシレン400gを添加して蒸留水にて数回洗浄し、冷却することで結晶を析出させた。さらに、ろ過して乾燥したところ、87g(収率67%)の結晶として、目的とする9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン(BNEF)を得た。得られた結晶のHPLC純度を測定したところ、純度が98.3%であった。また、アセトンに10重量%の割合で溶解させて、日本電色工業(株)製「COH 400」を用いて色相(APHA)を測定したところ、30であった。なお、得られたサンプルは、1H−NMR及びマススペクトルにより、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン(BNEF)であることを確認した。
反応器に、表1に記載の所定量のジオール成分及びジカルボン酸成分と、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルとを加え、撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
BPEF:9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
BOPPEF:9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
EG:エチレングリコール
FDPM:9,9−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)フルオレン[9,9−ジ(2−カルボキシエチル)フルオレン又はフルオレン−9,9−ジプロピオン酸のジメチルエステル。特開2005−89422号公報の実施例1のアクリル酸t−ブチルをアクリル酸メチル(37.9g(0.44モル))に変更したこと以外は同様にして合成したもの)]
DMN:2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル
DMI:イソフタル酸ジメチル。
Claims (11)
- フルオレン骨格の9,9−位にそれぞれヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式芳香族基を有するジオール成分(A1)を含むジオール成分(A)と、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分(B1)を含むジカルボン酸成分(B)とを重合成分とするポリエステル樹脂であって、ジオール成分(A1)由来の単位と、下記式(1−2)
で表されるジオール成分(A2)に由来する単位との割合が、前者/後者(モル比)=45/55〜100/0であり、
ジオール成分(A)が、脂肪族ジオール成分(A3)をさらに含むポリエステル樹脂。 - ジオール成分(A1)が、下記式(1−1)で表される9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式アリール)フルオレンであり、フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分(B1)が、下記式(2−1)又は下記式(2−2)で表されるフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分である請求項1記載のポリエステル樹脂。
- 脂肪族ジオール成分(A3)由来の単位を、ジオール成分(A)由来の単位全体に対して1〜30モル%の割合で含んでいる請求項1又は2記載のポリエステル樹脂。
- フルオレン骨格を有するジカルボン酸成分(B1)として、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン由来の単位を、ジカルボン酸成分(B)由来の単位全体に対して60〜100モル%の割合で含んでいる請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
- ジカルボン酸成分(B1)由来の単位と、芳香族ジカルボン酸成分(B2−1)由来の単位とを、前者/後者(モル比)=65/35〜100/0の割合で含む請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
- ジオール成分(A1−1)としての9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン由来の単位と、ジオール成分(A2−1)としての9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル)フルオレン由来の単位及びジオール成分(A2−2)としての9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシ−C6−10アリール−フェニル)フルオレン由来の単位の総量との割合が、前者/後者(モル比)=50/50〜100/0であり、
ジオール成分(A3−1)としてのC2−6アルカンジオール由来の単位を、ジオール成分(A)由来の単位全体に対して5〜25モル%の割合で含んでおり、
ジカルボン酸成分(B1)としての9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン由来の単位と、芳香族ジカルボン酸成分(B2−1)としての縮合多環式芳香族ジカルボン酸成分由来の単位との割合が、前者/後者(モル比)=70/30〜100/0である請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂。 - 20℃、波長589nmでの屈折率が1.650〜1.700であり、20℃でのアッベ数が15.0〜22.5であり、20℃、波長600nmでの3倍複屈折の絶対値が0.01×10−4〜31×10−4である請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
- 20℃、波長589nmでの屈折率が1.653〜1.690であり、20℃でのアッベ数が18〜21.8であり、20℃、波長600nmでの3倍複屈折の絶対値が0.01×10−4〜15×10−4である請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル樹脂で形成された成形体。
- 光学用部材である請求項9記載の成形体。
- 光学フィルム、光学レンズ、光学シートである請求項9又は10記載の成形体。
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