JP4908781B2 - ポリエステル樹脂組成物および光学部品 - Google Patents

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Description

本発明は、光学材料に好適に用いることのできるポリエステル樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、屈折率が高く、屈折率の波長分散が大きい、即ちアッベ数の小さく、透明性、機械的強度、寸法安定性に優れ、耐熱性が高く、流動性が良好で、カメラレンズ、眼鏡レンズなどのレンズ材料、光ディスク、光ファイバー、光学シート、カラーフィルターなどの光学材料に好適に用いることができる樹脂組成物に関する。
透明で機械特性に優れている樹脂は光学部品として多く用いられている。例えばポリメチルメタクリレート(以下PMMAと略する)やポリカーボネート(以下PCと略する)、アモルファスポリオレフィン(以下APO)などが、コンパクトディスク、レーザーディスク、プロジェクションレンズ、f−θレンズ、撮影系レンズ、ファインダー系レンズ、ピックアップレンズ、デジタルカメラレンズ、液晶に用いられる導光板などの光学部品として、また、自動車の透明部品、反射材料等に使用されている。
近年、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話、デジタルビデオカメラといたデジタル信号処理技術に基づいた光学機器が開発され普及してきている。とくにデジタルカメラやカメラ付き携帯電話は、小型化軽量が求められ、レンズ自体が小型、薄型化が求められている。一方画質においては数万画素といったCCDやCMOSの画像素子から、数百万画素といったCCDやCOMSの画像素子の開発が進行し、より精細な画像を提供できる素子が出現している。
より精細で小型な画像素子を用いて高精細な画像を得る為には、レンズの結像性能の向上も求められている。レンズには収差とよばれる、像を歪める現象がある。収差はあらゆるレンズに多かれ少なかれ存在し、レンズの直径や像の大きさによって大きく変化する。収差には単色収差と色収差に分けられる。単色収差には、球面収差、コマ収差、非点収差、像面歪曲、歪曲収差があり、色収差には軸上色収差、倍率色収差がある。種々の収差を補正する方法は種々の方法が考えられている。
例えば、軸上色収差は、光の波長によって、屈折率が異なることによって発生する収差である。屈折率の波長による分散を表す指標としてアッベ数がある。分散の小さい材料、即ちアッベ数の大きい材料は単レンズで用いる場合は軸上色収差が小さくなるので有利な材料である。さらに軸上色収差を小さくするには、分散の小さい材料、即ちアッベ数の大きい材料を凸レンズに、分散の大きい材料、即ちアッベ数の小さい材料を凹レンズにして組み合わせると、より軸上色収差を小さくすることができることが知られている。
携帯電話用のカメラレンズでは、当初は単レンズでのレンズ系から、複数枚を組み合わせたレンズ系の使用が増加している。複数枚の凹、凸レンズを用いる事で、色収差や種々の収差を補正し、より高精細の画像を得ることが求められている。
レンズとしては、古くからガラスが使用されてきている。ガラスは屈折率の大きなガラス材料から小さなガラス材料まで開発されており、アッベ数の大きな材料から小さな材料が種々あり、色収差の補正に使用されている。しかしガラスは、近年では、金型を用いたモールドによる成形がなされるようになってきたが、高温での成形であり、また、流動性も悪いことから、金型の寿命が短く、大量生産には不都合な点がある。また、ガラスレンズではプラスチックレンズに比べ、比重が大きいことから、レンズユニットを動かして、ピント調整を行ったりする場合は、不利となる。
プラスチック材料としては、PMMAは透明性に優れ、アッベ数が大きく、光学的異方性も小さいのでよく使われるが、吸湿性が高く、成形後、反り等の変形が起り易く形態安定性が悪い。
PCは耐熱性が高く、比較的アッベ数が小さく、透明性にすぐれているが、流動性が悪く成形品の複屈折が大きくなる等の問題があり、光学材料として十分に満足されたものとはいえない。また、APOは耐熱性が高く、アッベ数が大きく、透明性にすぐれているが、流動性が悪く、成形時に着色しやすい。また、蒸着膜やハードコート膜などを接着するには、プラズマ処理などの前工程を経ないと、十分な接着性が得られず、光学材料として十分に満足されたものとはいえない。
ポリエステル重合体やポリエステル共重合体としては、芳香族ジカルボン酸と9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン類を用いた重合体を発明者らは光学材料として提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照。)。脂環族ジカルボン酸と9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン類を用いた重合体が提案されている(たとえば、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照。)。これらのポリエステル共重合体は屈折率が高く、アッベ数は比較的小さく、複屈折率が小さく、耐熱性に優れ、透明であることから、光学材料として有用であるが、用途によっては、耐熱性が不足したりして、必ずしも満足できるものではない。
また、芳香族ジカルボン酸として、ナフタレンジカルボン酸と9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン類を用いた材料としては、特許文献6の例があるが、フィルム用途に使用したものであり、レンズ材料としての記述はない。
比重が小さく、射出成形を用いて大量生産できるプラスチック材料で、よりアッベ数が小さい材料が色収差をより効率的に補正する上で求められている。
また、近年、プラスチック材料でも、高温高湿下、例えば、85℃、相対湿度85%といった過酷な環境下での長期間保管されても、レンズの透過率が劣化しないといった、環境安定性も求められている。
特許第2843215号明細書 特許第2843214号明細書 特許第3331121号明細書 特開平11−60706号公報 特開2000−319366号公報 特開平8−104742号公報
本発明の目的は、上記問題点を解消し、複屈折が小さく、透明性、機械的強度、寸法安定性に優れ、屈折率が大きく、アッベ数の小さい、耐熱性が高く、流動性が良好で、高温高湿下での過酷な環境下でも変色や、にごりが生じない、カメラレンズ、デジタルカメラレンズ、ビデオカメラレンズ、眼鏡レンズ、光ディスク、光ファイバー、光学シート、カラーフィルター、光導波路、などの光学材料、光学部品に好適に用いることができる樹脂
を提供することにある。
さらには、カメラレンズなどのレンズの色収差を補正する凹レンズに特に好適に用いることができる樹脂を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため、種々研究を重ねた結果、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物からなるポリエステル重合体において、ジカルボン酸が主としてナフタレンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体であり、ジヒドロキシ化合物が一般式(1)で示される化合物を含み、d線のアッベ数が23以下でガラス転移温度が130℃以上であり、少なくとも1種類以上のリン酸化合物及び/または亜リン酸化合物を含むことを特徴とするポリエステル樹脂組成物を用いることで課題を解決できることを見いだし、本発明に到達した。
ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物からなるポリエステル重合体において、ジカルボン酸が主としてナフタレンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体であり、ジヒドロキシ化合物が一般式(1)で示される化合物を含み、d線のアッベ数が23以下でガラス転移温度が130℃以上であり、少なくとも1種類以上のリン酸化合物及び/または亜リン酸化合物を含むことを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
(Rは炭素数2から4のアルキレン基、R、R、R、及びRは水素または炭素数1から4のアルキル基、アリール基、アラルキル基であり同じであっても異なっていてもよい)
また、一般式(1)で示されるジヒドロキシ化合物がジカルボン酸に対し20mol%以上含有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂組成物であり、
また、ジカルボン酸が主としてナフタレンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体とテレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステル樹脂組成物であり、
また、一般式(1)で示されるジヒドロキシ化合物が、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンおよび/または9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンであることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
さらには、上述の樹脂組成物を成形してなる光学材料、光学部品である。
d線のアッベ数νdは、νd=(1−nd)/(nC−nF)で表される。ここで、
nC、nd、nFはそれぞれ波長656nm(C線)、589nm(d線)、486nm(F線)の屈折率、を示す。
本発明を実施するための形態を説明する。
本発明におけるポリエステル重合体において酸成分としては、主としてナフタレンジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体である必要が有る。中でも、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体が好適に用いられる。
本発明において、上記化合物以外に酸成分として用いられる化合物には次のようなものがある。ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸等の多環式芳香族ジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。1,4−シクロジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸等の脂還族ジカルボン酸が挙げられる。これらの酸成分を、1種のみ用いる場合は酸成分に対して10mol%を限度として使用してよく、また2種以上併用する場合は、酸成分に対して、2種以上併用した成分を10mol%を限度として使用して良い。
本発明において、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジエチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジ−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジフェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられ、これらは単独でも2種類以上を組み合わせて使用しても良い。これらの中でも9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ−3メチル)フェニル]フルオレンが光学特性、成形性の面から最も好ましい。
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンは、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンにエチレンオキサイド(以下、EOと略する)を付加して得られる。この際、フェノールの両水酸基にエチレンオキサイドが1分子ずつ付加した2EO付加体(9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン)の他に、さらに数分子過剰に付加した、3EO付加体、4EO付加体等の不純物が含まれる事がある。ポリエステル重合体の耐熱性を向上させるためには、2EO付加体の純度が95%以上で有ることが好ましく、さらに好ましくは97%以上である。
9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンを得る別の方法としては、フルオレノンに直接フェノキシエタノールを付加させて得られる。この場合は、EOが過剰に付加した付加体は含まれにくく、より好適に用いることができる。
本発明のポリエステル重合体は、例えば、エステル交換法、直接重合法等の溶融重合法、溶液重合法、界面重合法等の公知の方法から適宜の方法を選択して製造できる。またその際の重合触媒等の反応条件についても従来通りで良く、公知の方法を用いる事ができる。
ところで本発明のポリエステル重合体を製造する際に、溶液重合法、界面重合法等を採用する場合には、一般に酸成分の活性種として酸クロライドを用いたり、溶媒としてメチレンクロライド、クロロホルム等が使用するが、ポリマ−中には副生成物である塩化物や触媒化合物が残留する。これらは一般的に製品の品質上良くないので、重合工程後に一般に残留異物を除去せねばならない。これらは、シート、フィルム、プレート、繊維等の成形工程での操業性を低下させ、得られる成形体の品質をも低下させる。例えば高温加熱時に熱分解が多量に発生する。また光学材料等に使用する際は反射防止膜等の金属薄膜を成形体に蒸着、スパッタリング等の方法で、固着するが、塩素分が大量にあると、反射防止膜等、を腐食し、製品の寿命や信頼性を低下させるので、十分な、洗浄、ろ過等残留異物を除去する工程が必要である。
本発明のポリエステル重合体は、溶融重合法を用いる場合に特に良好である。即ち、9,9−ビス−(4−ヒドロキシエトキシフェニル)−フルオレンの化合物は、末端基が脂肪族グルコ−ルと良く似た性質であり、反応性が高い。これは9,9−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フルオレンと比べると著しく異なるものである。この為に、酸クロリドという原料を用いる必要もなく、従って本質的に塩素が混入しない製造方法が可能であり、高温度での反応条件で触媒使用量を少なくでき、残留異物が少ない方法が可能となった。
本発明のポリエステル重合体を溶融重合法のエステル交換法で製造するには、一般式(1)で表わされるジヒドロキシ化合物は、樹脂中のグリコール成分の20から95mol%であることが好まく、さらに好ましくは、50mol%以上95mol%以下が好ましい。95mol%以下の場合、溶融重合反応が進みやすく、重合時間が短いという利点がある。尚、95mol%より多い場合は、溶液重合法または界面重合法で製造することによって短時間で重合することができる。また、20mol%以上は、樹脂のガラス転移温度が高いという点で好ましい。また、非晶性になることからも好ましい。
50mol%以上は、複屈折がより小さくなるという点で好ましい。
本発明のポリエステル重合体を溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物を重合時に添加する。
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸等トリエチルのリン酸トリアルキル
が好適に用いられる。樹脂中の酸成分に対して、0.0001mol%以上0.005mol%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003mol%以上0.003mol%以下が好ましい。0.0001molより少ないと、着色防止の効果が小さく、0.005mol%より大きいと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、樹脂中のジエチレングリコールが増加させ耐熱性を低下させたりする。
溶融重合法で製造する際に亜リン酸化合物を添加する場合は、下記に示す熱安定剤を任意に選択して使用できる。特に、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好適に使用できる。樹脂中の酸成分に対して、0.0001mol%以上0.005mol%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003mol%以上0.003mol%以下が好ましい。0.0001molより少ないと、着色防止の効果が小さく、0.005mol%より大きいと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、樹脂中のジエチレングリコールを増加させ耐熱性を低下させたりすることもある。
リン酸化合物と亜リン酸化合物は併用して使用することができるが、その添加量はリン酸化合物と亜リン酸化合物の総量で、先に記載した、樹脂中の酸成分に対して、0.0001mol%以上0.005mol%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003mol%以上0.003mol%以下が好ましい。0.0001molより少ないと、着色防止の効果が小さく、0.005mol%より大きいと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、樹脂中のジエチレングリコールが増加させ耐熱性を低下させたりすることもある。
また、本発明の樹脂組成物には、ポリエステル重合体には成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。
かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。
これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の配合量は、溶融重合時に添加した添加量に加えて配合することができる。
溶融重合時には、亜リン酸化合物を過剰に添加しすぎると、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、樹脂中のジエチレングリコールを増加させ耐熱性を低下させたりするが、適当量、亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合して、ポリエステル重合体を得た後に、後に記載する配合方法で、さらに亜リン酸化合物を配合すると、これらの欠点を回避して、さらに多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。
配合量は、ポリエステル重合体を100重量部とした場合、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.2重量部が更に好ましい。
また、本発明の樹脂組成物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することもできる。
かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
これら酸化防止剤の配合量は、ポリエステルを100重量部とした場合、0.0001〜0.5重量部が好ましい。
また、本発明の樹脂組成物には溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。かかる離型剤としては、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基および/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。かかる離型剤の配合量は、ポリエステルを100重量部とした場合、0.01〜5重量部が好ましい。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリト
ールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。
なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましく用いられる。
本願発明の高級脂肪酸としては、炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸が好ましい。かかる脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、などが上げられる。
これらの離型剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。
本願発明の熱可塑性樹脂組成物には、本願発明の目的を損なわない範囲で、光安定剤を配合することができる。
かかる光安定剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。かかる光安定剤の配合量は、ポリエステル重合体を100重量部とした場合、0.01〜2重量部が好ましい。
これらの光安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。
本発明の樹脂組成物には、レンズに成形した場合、ポリエステル重合体やポリカーボネートや紫外線吸収剤に基づくレンズの黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。
一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725]、一般名Solvent Violet31[CA.No 68210、一般名Solvent Violet33[CA.No60725;、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500]、一般名Solvent Violet36[CA.No 68210]、一般名SolventBlue97[商標名バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」]および一般名Solvent Blue45[CA.No 61110]が代表例として挙げられる。これらブルーイング剤は通常ポリエステル重合体を100重量部とした場合、0.1×10-4〜2×10-4重量部の割合で配合される。
本発明のポリエステル重合体と添加剤の配合は、例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法、あるいは上記2成分を例えば塩化メチレンなどの共通の良溶媒に溶解させた状態で混合する溶液ブレンド方法などがあるが、これは特に限定されるものではなく、通常用いられるポリマーブレンド方法ならどのような方法を用いてもよい。
こうして得られるポリエステル重合体は、そのまま、または溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形物
にすることができる。
本発明のポリエステル重合体は、示差走査熱量測定(DSC)を行ったとき、単一のガラス転移温度を与える。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の混和性を高めて安定した離型性や各物性を得るためには、溶融押出において単軸押出機、二軸押出機を使用するのが好ましい。
単軸押出機、二軸押出機を用いる方法は、溶剤等を用いることがなく、環境への負荷が小さく、生産性の点からも好適に用いることができる。押出機の溶融混練温度は200から350℃好ましくは230℃から320℃である。200℃より低い温度であると、樹脂の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。350℃より高いと、樹脂の劣化が起こりやすくなり、樹脂の色が黄変したり、分子量が低下するため強度が劣化したりする。また、必要に応じて、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、光安定剤等を同時に混練してもよい。
押出機を使用する場合、押出時に樹脂の焼け、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの異物除去の大きさは、求められる光学的な精度依存するが、100μm以下が好ましい。特に異物の混入を嫌う場合は、40μm以下、さらには10μm以下が好ましい。
押出機から吐出された樹脂は、押出後の異物混入を防止するために、クリーンルーム中で実施することが望ましい。
また、押出された樹脂を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気はヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。フィルターの大きさは種々あるが、10〜0.45μmのフィルターの使用が好ましい。
ポリエステル重合体の重合度は、重量平均分子量にして20000以上で60000以下が好ましい。重量平均分子量が極端に低い物はレンズ等に成形した時の機械的強度が弱い。また、重量平均分子量が大きくなると、成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形品の複屈折率が大きくなり易い傾向がある。従って、ポリエステル重合体としては重合度が重量平均分子量にして20000以上で70000以下のものを用い、さらに好ましくは25000以上60000以下の範囲内のものを用いる。
本発明の樹脂組成物のガラス転移温度は130℃以上、好ましくは150℃以上である。ガラス転移温度が130℃以上だと温度85℃、相対湿度85%といった、高温高湿度下での変形が起こりにくく、レンズの面精度のバラツキが少ないので好ましい。
本発明において、ポリエステル重合体を製造する際に、溶液重合法、界面重合法等を採用する場合には、一般に酸成分の活性種として酸クロライドを用いたり、溶媒としてメチレンクロライド、クロロホルム等が使用するが、ポリマー中には副生成物である塩化物や触媒化合物が残留し、このものは一般的に製品の品質上良くないので、重合工程後に一般に残留異物を除去せねばならない。これらは、シート、フィルム、プレート、繊維等の成形工程での操業性を低下させ、得られる成形体の品質をも低下させる。例えば高温加熱時に熱分解が多量に発生する。
また、光ディスクや光磁気ディスク等の光学材料として本発明の樹脂組成物を使用する
際は、反射膜や記録膜等の金属薄膜を基板に蒸着、スパッタリング等の方法で固着するが、基板内に残留塩素分があると、反射膜、記録膜を腐食し、光ディスクや光磁気ディスクの寿命や信頼性を低下させるので、十分な、洗浄、ろ過等の残留する塩素を除去する工程が必要となる。ポリエステル重合体の重合方法としては塩素が混入しないエステル交換法の方が好ましい。
レンズの成形には射出成形機や、射出圧縮成形機がよく適合し、成形条件では、特に金型表面温度と樹脂温度が重要である。ポリエステル重合体の組成及び重合度などにより一概に規定できないが、金型表面温度は50℃以上170℃以下が好ましく、また、この時の樹脂温度は220℃以上330℃以下となるようにするのが良い。金型表面温度が50℃以下の場合には、樹脂の流動性と転写性が共に悪く、射出成形時に応力歪が残って、複屈折率が大きくなる傾向があり、また、成形サイクルも延びるので経済的でない。金型温度が160℃以上の場合、転写性は良いが、離型時に変形し易い。また、樹脂温度が330℃以上の場合は樹脂の分解が起こり易く、成形品の強度低下、着色の原因となる。
本発明の光学材料用樹脂組成物から光学材料、光学部品を成形する場合には、原料の投入工程を始め、重合反応、共重合体を冷媒中に押し出してペレット状またはシート状にする工程では塵埃等が入り込まないように留意して行う事が望まれる。このクリーン度は、通常コンパクトディスク用の場合には1000以下であり、更に高度な情報記録用の場合には100以下である。
レンズの成形には、射出成形や射出圧縮成形が一般に用いられている。成形条件では、特に金型表面温度と樹脂温度が重要である。ポリエステル重合体の組成及び重合度などにより一概に規定できないが、金型表面温度は50℃以上180℃以下が好ましく、また、この時の樹脂温度は220℃以上330℃以下となるようにするのが良い。金型表面温度が50℃以下の場合には、樹脂の流動性と転写性が共に悪く、射出成形時に応力歪が残って、複屈折率が大きくなる傾向があり、レンズとしての要求性能が満たされない場合がある。金型温度が180℃以上の場合、離型時に変形し易い。また、樹脂温度が220以下の場合、樹脂の流動性が乏しく、成形機に過大な負荷がかかる場合があり好ましくない。樹脂温度が330℃以上の場合は樹脂の分解が起こり易く、成形品の強度低下、着色の原因となる。
以下実施例を用いて説明する。
(1)屈折率及びアッベ数
アタゴ社製アッベ屈折計 DR−M2で、波長656nm(C線)、589nm(d線)546nm(e線)、486nm(F線)、436nm(g線)の干渉フィルターを用いて
屈折率、nC、nd、ne、nF、ngを測定した。測定試料は樹脂を160〜240℃でプレス成形し、厚み80〜200μmのフィルムを作製し、得られたフィルムを約8×20mmの短冊状に切り出し、測定試験片とした。界面液として1−ブロモナフタレンを用い20℃で測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(セイコー電子 DSC−110)に試料約10mgを用いて、10℃/minの昇温速度で加熱して測定した。JIS K 7121(1987)に準拠して、ガラス転移温度Tgを求めた。
(3)分子量
カラムとして東ソー製G―6000、G―4000、G―3000を直列につなぎ、流速1ml、溶離液をクロロホルム、検出器としてUV検出器、温度を40℃にて標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を用いて、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を算出した。
(4)カラー
カラーメーター(ミノルタ社製 CM−3500d)を用いて、成形品のカラーを測定した。成形品は射出成形機(住友重機製、ミニマット14/7B)を用い金型温度を100から120℃に設定して成形し、厚み3mmの平板成形品を得た。JIS K7105の色の測定に基づき、反射測定で測定した。成形品は透明であるので、測定の際、標準白板を測定面の反対側に設置してb*値測定した。
チップカラーは、ガラスセルに、チップを所定量入れ、その上に標準白板を設置して、反射測定で測定した。
(5)複屈折
カールツアイス社製偏光顕微鏡にて、セラルモン、ベレック、ブレースケラー式コンペンセーターを装着し、546nmの単色光で測定した。
(5−1)フィルムでの評価
樹脂を260〜300℃で溶融、押し出し成形で、直径30mm、厚さ1mmの円盤状の試験片を作製し、さらにその成形試験片を160〜240℃でプレス成形し、厚み80〜150μmのフィルムを得た。得られたフィルムを4×40mmの短冊状に切り出し、測定試験片を得た。ガラス転移温度+10℃の温度で測定試験片を10%/secで40%延伸後、急冷し、延伸フィルムを得た。これらのフィルムの複屈折率を測定した。
(5−2)成形品での評価
射出成形機(住友重機製、ミニマット14/7B)を用い金型温度を100から120℃に設定して成形した30×30×3mm平板成形品を得た後、Tg−20℃の温度で3時間アニールした成形品の中心部のレターデーションを測定した。
(6)リンの定量
サンプル調整
樹脂サンプル1gを100mlのトールビーカーに正秤し、硫酸を10ml加えホットプレート上で浮遊物がなくなるまで、加熱した。放冷後、硝酸を約5ml加え、ホットプレート上で加熱した。溶液の色が濃褐色から淡褐色になるまで、硝酸を適時加え、加熱する操作を繰り返した。淡褐色になったら、放冷後、過酸化水素水を5ml加え、ホットプレート上で加熱した。溶液の色が無色透明になるまで、放冷と過酸化水素水の添加操作を繰り返した。放冷後、50mlのメスフラスコを用いて定容した。
定量操作
ICP発光分析装置(セイコーインスツルメンツ製 SPS 1500VR)を用いて、検量線法により定量した。検量線はICP分析用多元素混合標準液W−1(和光純薬製)を用いて作成した。
実施例のポリエステルの重合に使用したモノマー、触媒、および安定剤は以下の製造元から供給されている。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルはアモコ社製、テレフタル酸ジメチルは三菱化学製、エチレングリコールは三井化学製、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酸化ゲルマニウム、トリメチルリン酸、は和光純薬製、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−
メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトは旭電化工業製、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BPEF)は大阪ガスケミカル製である。
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.3molに対して、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.21mol、エチレングリコール0.66molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00024mol、酢酸マンガン0.00006molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.002molと、着色を防止するため、トリメチルリン酸0.0014molとを投入して、昇温と減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、220℃でプレスし、厚さ150μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.658、アッベ数は19、フィルムの複屈折は100×10-4、リンの含有量は70PPM、ガラス転移温度は166℃であった。
[実施例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.4molに対して、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.16mol、エチレングリコール0.88molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00032mol、酢酸マンガン0.00008molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.0014molと、着色を防止するため、トリメチルリン酸0.0014molとを投入して、昇温と減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、220℃でプレスし、厚さ150μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.656、アッベ数は20、フィルムの複屈折は170×10-4、リンの含有量は130PPM、ガラス転移温度は150℃であった。
[実施例3]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.4molに対して、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.1mol、エチレングリコール2.0.88molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00032mol、酢酸マンガン0.00008molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.0014molと、着色を防止するため、トリメチルリン酸0.0014molとを投入して、昇温と減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、220℃でプレスし、厚さ150μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.655、アッベ数は19、フィルムの複屈折は180×10-4、リンの含有量は120PPM、ガラス転移温度は141℃であった。
[実施例4]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.3molに対して、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.24mol、エチレングリコール0.66molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00024mol、酢酸マンガン0.00006molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.002molと、着色を防止するため、トリメチルリン酸0.0014molとを投入して、昇温と減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、220℃でプレスし、厚さ150μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.661、アッベ数は21、フィルムの複屈折は95×10-4、リンの含有量は65PPM、ガラス転移温度は174℃であった。
[実施例5]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.3molに対して、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.15mol、エチレングリコール0.66molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00024mol、酢酸マンガン0.00006molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.0014molと、着色を防止するため、トリメチルリン酸0.0014molとを投入して、昇温と減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、220℃でプレスし、厚さ150μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.657、アッベ数は19、フィルムの複屈折は160×10-4、リンの含有量は83PPM、ガラス転移温度は155℃であった。
[実施例6]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.3molに対して、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.18mol、エチレングリコール0.66molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00024mol、酢酸マンガン0.00006molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.002molと、着色を防止するため、トリメチルリン酸0.0014molとを投入して、昇温と減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終
了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、220℃でプレスし、厚さ150μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.658、アッベ数は20、フィルムの複屈折は140×10-4、リンの含有量は80PPM、ガラス転移温度は160℃であった。
[実施例7]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.3molに対して、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.285mol、エチレングリコール0.66molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00024mol、酢酸マンガン0.00006molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.002molと、着色を防止するため、トリメチルリン酸0.0014molとを投入して、昇温と減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、220℃でプレスし、厚さ150μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.663、アッベ数は21、フィルムの複屈折は85×10-4、リンの含有量は61PPM、ガラス転移温度は184℃であった。
[実施例8]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.3molに対して、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.21mol、エチレングリコール0.66molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00024mol、酢酸マンガン0.00006molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.002molと、着色を防止するため、トリメチルリン酸0.0014molとビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.00029molを投入して、昇温と減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、220℃でプレスし、厚さ150μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.658、アッベ数は19、フィルムの複屈折は100×10-4、リンの含有量は115PPM、ガラス転移温度は166℃であった。
[実施例9]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.3molに対して、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.21mol、エチレングリコール2.2molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00024mol、酢酸マンガン0.00006molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.002molと、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.00029molを投入して、昇温と
減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、220℃でプレスし、厚さ150μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.658、アッベ数は19、フィルムの複屈折は100×10-4、リンの含有量は34PPM、ガラス転移温度は166℃であった。
[比較例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.7molに対して、エチレングリコール2.2molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00056mol、酢酸マンガン0.000114molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.002mol、トリメチルリン酸 0.0014molとを投入して、を投入して、昇温と減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、270℃でプレスし、厚さ100μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.649、アッベ数は18、フィルムの複屈折は結晶化するため測定不可であった。リンの含有量は150PPM、ガラス転移温度は120℃であった
また、この樹脂を成形したが結晶化が進み、透明な成形体は得られなかった。
[比較例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル0.3molに対して、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン0.21mol、エチレングリコール0.66molを原料とし反応槽に投入し、溶解した後、触媒として、エチレングリコールに溶解した、酢酸カルシウム0.00024mol、酢酸マンガン0.00006molを反応槽に投入し、撹拌しながら常法に従って、室温から230℃に徐々に加熱してエステル交換反応を行った。所定量のメタノールを系外へ抜き出した後、重合触媒である酸化ゲルマニウム0.002molを投入して、昇温と減圧を徐々に行い、発生するエチレングリコールを抜きながら、加熱槽温度を280℃、真空度を133Pa(1Torr)以下に到達させた。この条件を維持し、粘度の上昇を待ち、所定の攪拌トルクに到達後(約2時間後)反応を終了し、反応物を水中に押し出してペレットを得た。
この樹脂を、220℃でプレスし、厚さ150μmのフィルムを得た。d線の屈折率は1.658、アッベ数は19、フィルムの複屈折は100×10-4、ガラス転移温度は166℃であったが、表1に示すように、チップカラーのうち、b*値は同等の組成のものに比べて悪く、黄変が進行していた。
[実施例10]
実施例1の樹脂に、熱安定剤として、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを、ポリエステル樹脂を100重量部として0.1重量部添加し混練を行ったのち、30ミクロンのフィルターを通ったあとから押し出された樹脂を1μmのフィルターを通した水を張った水槽で冷却し、カッターにより連続的に裁断してチップを得た。このとき、吐出口金の出口での樹脂温度は280℃であった。得られたチップから長さ60mm、幅20mmで長さ方向に15mm毎に厚みが5mm、4mm、3mm、2mmと変化している、段プレートを成形し、3mmの部分のカラーを測
定した。b*値は4.0であった。このプレートを110℃の熱風乾燥機内に保管し、200時間後のカラーを測定した。b*値は5.0であった。
[実施例11〜17]
実施例2から実施例8の樹脂を実施例10と同様にしてチップを得た。実施例10と同様に成形して成形体を得た後、同様に熱風乾燥機内に保管し、200時間後のカラーを測定した。結果を表2に示す。
[比較例3]
比較例2の樹脂を実施例10と同様に成形し、成形体を得た。b*値は6.5であった。このプレートを110℃の熱風乾燥機内に保管し、200時間後のカラーを測定した。b*値は9.7であった。
表2の結果から、本発明の樹脂が熱安定性に優れることが解る。
[実施例18]
実施例10で得られた樹脂を射出成形機にて曲面の直径25mm、曲率R=65mm、中心肉厚1.2mmの球面の凹レンズを成形した。レーザー干渉計(富士写真光機製、球面観察システム F601)を用いて、レンズの球面精度を確認したところ良好な球面が得られていた。
比較例1はポリエチレンナフタレートホモポリマーでの測定値を示す。結晶性であるので、レンズには使用できない。表1からわかるように、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンで代表される化合物を共重合することで、非晶性となり、複屈折を小さくし、ガラス転移温度が上昇し、屈折率が大きくなり、従来にない光学材料としての物性が発現できていることがわかる。
即ち、本発明の樹脂は屈折率が高く、屈折率の波長分散が大きい、つまりアッベ数が小さく、透明性に優れ、耐熱性が高く、ポリエチレンナフタレートホモポリマーに比べて、結晶性がなく、従来の熱可塑性プラスチックにない特性のバランスを持っているので、特に、色収差補正用のレンズ材料に好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、カメラレンズ、ファインダーレンズ、CCDやCMOS用レンズなどのレンズ用途、液晶やプラズマディスプレイなどに利用されるフィルム、シート、光学材料、光学部品、色素、電荷移動剤等を固定化するバインダー用途への使用に適している。

Claims (2)

  1. ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物からなるポリエステル重合体において、ジカルボン酸が主としてナフタレンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体であり、ジヒドロキシ化合物が一般式(1)で示される化合物を樹脂中のジヒドロキシ化合物の50mol%以上含み、d線のアッベ数が23以下でガラス転移温度が130℃以上であり、少なくとも1種類以上のリン酸化合物及び/または亜リン酸化合物と、熱安定剤とを含み、リン酸化合物及び/または亜リン酸化合物が、ポリエステル重合体の溶融重合時に添加され、熱安定剤が、ポリエステル重合体を得た後に配合され、リン酸化合物及び/または亜リン酸化合物の割合が樹脂中の酸成分に対して0.0001mol%以上0.005mol%以下、熱安定剤の割合が、ポリエステル重合体100重量部に対して0.0001〜1重量部であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物を成形してなる、レンズの色収差を補正する凹レンズ。
    (Rは炭素数2から4のアルキレン基、R、R、R、及びRは水素または炭素数1から4のアルキル基、アリール基、アラルキル基であり同じであっても異なっていてもよい)
  2. 一般式(1)で示されるジヒドロキシ化合物が、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンおよび/または9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレンであることを特徴とする請求項1記載の凹レンズ。
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