JP6242269B2 - フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂 - Google Patents
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Description
ジカルボン酸成分(ジカルボン酸成分(A)などということがある)は、フルオレン系ジカルボン酸成分を少なくとも含んでいる。
フルオレン系ジカルボン酸成分(又はフルオレン骨格を有するジカルボン酸成分、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)、ジカルボン酸成分(A1)などということがある)としては、フルオレン系ジカルボン酸(フルオレン骨格を有するジカルボン酸)およびそのエステル形成性誘導体が含まれる。なお、エステル形成性誘導体としては、例えば、エステル{例えば、アルキルエステル[例えば、メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル(例えば、C1−4アルキルエステル、特にC1−2アルキルエステル]など}、酸ハライド(酸クロライドなど)、酸無水物などが挙げられる。エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)又はジエステルであってもよい。フルオレン系ジカルボン酸成分は、ポリエステル樹脂の製造方法に応じて選択できるが、溶融重合法では、フルオレン骨格を有するジカルボン酸、フルオレン骨格を有するジカルボン酸エステルなどを使用する場合が多い(以下同じ)。
上記式(1a)(1b)において、基X1a,X1bで表される二価の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基{例えば、アルキレン基(又はアルキリデン基、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、テトラメチレン基、1,2−ブタンジイル基、エチルエチレン基、ブタン−2−イリデン基、1,2−ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ペンタン−2,3−ジイル基などのC1−8アルキレン基、好ましくはエチレン基、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基などのC2−4アルキレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、シクロへプチレン基などのC5−10シクロアルキレン基、好ましくはC5−8シクロアルキレン基、さらに好ましくはC5−6シクロC2−4アルキレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−シクロアルキレン基[又はシクロアルキレン−アルキレン基、例えば、メチレン−シクロへキシレン基、エチレン−シクロへキシレン基、エチレン−メチルシクロへキシレン基、エチリデン−シクロへキシレン基などのC1−6アルキレン−C5−10シクロアルキレン基(好ましくはC1−4アルキレン−C5−8シクロアルキレン基)などの脂環式炭化水素基、ビ又はトリシクロアルキレン基(ノルボルナン−ジイル基など)などの橋架環式炭化水素基など]など}、芳香族炭化水素基{例えば、アリーレン基(フェニレン基、ナフタレンジイル基などのC6−10アリーレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−アリーレン基[又はアリーレン−アルキレン基、例えば、メチレン−フェニレン基、エチレン−フェニレン基、エチレン−メチルフェニレン基、エチリデンフェニレン基などのC1−6アルキレン−C6−20アリーレン基(好ましくはC1−4アルキレン−C6−10アリーレン基、好ましくはC1−2アルキレン−フェニレン基)などの芳香脂肪族炭化水素基など]、フェニルエチレン基などのC6−10アリールC2−4アルキレン基など}が例示できる。なお、アルキレン−シクロアルキレン基およびアルキレン−アリーレン基とは、−Ra−Rb−(式中、Raは、式(1a)(1b)においてカルボキシル基又はフルオレンの9位に結合したアルキレン基、Rbはシクロアルキレン基又はアリーレン基を示す)で表される基を示す。なお、2つの基X1aは、同一又は異なる基であってもよい。
ジカルボン酸成分(A)は、フルオレン系ジカルボン酸成分のみで構成してもよく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他のジカルボン酸成分(非フルオレン系ジカルボン酸成分、フルオレン系ジカルボン酸成分でないジカルボン酸成分、他のジカルボン酸成分(A2)、ジカルボン酸成分(A2)などということがある)を含んでいてもよい。
ジオール成分(ジオール成分(B)ということがある)は、非フルオレン系ジオール(すなわち、フルオレン骨格を有するジオールを含まないジオール成分)であり、かつ脂環族ジオールを少なくとも含んでいる。
脂環族ジオール(脂環族ジオール(B1)、ジオール(B1)などということがある)としては、例えば、シクロアルカンジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオールなどのC4−10シクロアルカンジオール、好ましくはC5−8シクロアルカンジオール)、架橋(橋架環式)シクロアルカンジオール(例えば、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオールなどのビ又はトリシクアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン[例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C4−10シクロアルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC1−3アルキル)C5−8シクロアルカン、さらに好ましくはジ(ヒドロキシC1−2アルキル)C5−6シクロアルカンなど]、ジ(ヒドロキシアルキル)架橋(橋架環式)シクロアルカン[例えば、トリシクロデカンジメタノール(トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール)、アダマンタンジメタノール、ノルボルナンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)ビ又はトリC4−10シクロアルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC1−3アルキル)ビ又はトリC5−10シクロアルカン、さらに好ましくはジ(ヒドロキシC1−2アルキル)ビ又はトリC6−10シクロアルカン]、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体(後述の化合物など)の水添物{例えば、ジ(ヒドロキシシクロアルキル)アルカン[例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなどのジ(ヒドロキシC4−10シクロアルキル)C1−10アルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC5−8シクロアルキル)C1−4アルカンなど]など}、ヘテロシクロアルカン骨格を有するジオール{例えば、オキサモノ又はポリシクロアルカンジオール(イソソルビドなど)、オキサスピロ環骨格を有するジオール[例えば、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのジ(ヒドロキシアルキル)オキサスピロアルカン(例えば、ジ(ヒドロキシC1−10アルキル)テトラオキサスピロアルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC1−6アルキル)テトラオキサスピロアルカン)など]}などが挙げられる。脂環族ジオールは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
ジオール成分(B)は、脂環族ジオールのみで構成してもよく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他のジオール(又は他の非フルオレン系ジオール、他のジオール(B2)、ジオール(B2)などということがある)を含んでいてもよい。
ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分(A)とジオール成分(B)とを重合成分とするポリエステル樹脂である。このようなポリエステル樹脂は、通常、低複屈折(複屈折の絶対値が小さい)又は負の複屈折を有するという特色がある。そのため、このようなポリエステル樹脂は、単独で低複屈折の樹脂又は負の複屈折を有する樹脂として用いることができるし、後述のように正の複屈折を有する樹脂の複屈折を負の方向に低減するための複屈折調整剤(複屈折低減剤)として使用することもできる。
本発明のポリエステル樹脂は、樹脂成分として単独で成形体を構成することができる。なお、このような本発明のポリエステル樹脂は、添加剤(後述の成分など)とともに、樹脂組成物(又は樹脂成形体)を構成することもできる。
ゲル浸透クロマトグラフィ(東ソー(株)製、HLC−8120GPC)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で、分子量を測定した。
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製、DSC 6220)を用い、アルミパンに試料を入れ、30℃から200℃の範囲でTgを測定した。
多波長アッベ屈折計「DR−M2/1550」(株式会社アタゴ製)を用い、測定温度20℃で測定した。屈折率は、波長589nmにおける屈折率ndのことである。また、ここでいうアッベ数(νd)とは、屈折率の波長依存性、すなわち分散の度合いを示すものであって、次式で求めることができる。
上記式中における各記号は、νd:アッベ数、nd:d線(波長589nm)における屈折率、nF:F線(波長486nm)における屈折率、nC:C線(波長656nm)における屈折率をそれぞれ意味する。
大塚電子社製リタデーション測定装置RETS−100を用いて、600nmの単色光で複屈折を測定した。測定に用いた試験片は、樹脂を160〜240℃でプレス成形し、厚み100〜400μmのフィルムを得た。得られたフィルムを15×50mmの短冊状に切り出すことにより得た。ガラス転移温度(Tg)+10℃の温度で測定用試験片を25mm/分で2倍、3倍又は4倍延伸し、延伸フィルムを得た。これらのフィルムの複屈折を、上記の装置を使用して測定し、延伸倍率から配向度を算出し、配向度と複屈折から固有複屈折を求めた。具体的には、フィルムを2倍、3倍及び4倍に延伸したときの複屈折を測定した。このうち、3倍延伸のものを「3倍複屈折」とした。各延伸倍率(λ)に対応する配向度(F)を下式の換算式より求め、各配向度に対する複屈折の値をプロットした。
F=(3<cos2θ>−1)/2
<cos2θ>=(1+r2)(r−tan−1r)/r3
r=(λ3−1)0.5
λ:延伸倍率,F:配向度
最小二乗法を用い近似直線を得て、外挿法により配向度(F)=1.0(すなわち、無限延伸倍率)のときの複屈折を求めた。ここで、フィルム内の分子は理想的に極限まで配向していると仮定し、本発明においては、このときの複屈折の値を「固有複屈折」とした。
樹脂を160〜240℃においてプレス成形することにより作成した厚み1mmのフィルムを30×30mmの正方形に切り出すことで、試験片を得た。得られた試験片を80℃において8時間真空状態で乾燥させ、その後、室温になるまで放冷した。放冷後、試験片の重量を測定した後、23℃の水中に浸漬した。24時間後経過後、試験片表面の水を拭き取り、重量を測定し、浸漬前後の重量変化より吸水率を求めた。
9,9−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)フルオレン(9,9−ジ(2−カルボキシエチル)フルオレン又はフルオレン−9,9−ジプロピオン酸のジメチルエステル、以下、FDPMという。特開2005−89422号公報の実施例1のアクリル酸t−ブチルをアクリル酸メチル(37.9g(0.44モル))に変更したこと以外は同様にして合成したもの)1.00モル、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、CHDMという)0.80モル、エチレングリコール(以下、EGという)2.20モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10-4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
実施例1において、CHDM0.80モルに代えて、トリシクロデカンジメタノール(トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール)0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
実施例1において、CHDM0.80モルに代えて、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下、スピログリコールという)0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
実施例1において、CHDM 0.80モルに代えて、スピログリコール0.50モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
実施例1において、FDPM 1.00モルに代えて、FDPM 0.80モル及びテレフタル酸ジメチル(以下、DMTという)0.20モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
実施例1において、EG 2.20モルに代えて、1,2−ブタンジオール2.20モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
実施例1において、CHDM0.80モルおよびEG2.20モルに代えて、EG3.0モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
実施例1において、CHDM0.80モルに代えて、1,4−ベンゼンジメタノール(1,4−ジヒドロキシメチルベンゼン)0.80モルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
複屈折調整剤としての実施例1で得られたポリエステル樹脂と、他の樹脂としてのポリエステル樹脂とを、二軸押出機((株)テクノベル製、KZW15−30MG)を用いて240〜280℃で溶融押出(押出混練)し、ペレットを得た(比較例1は比較のため樹脂のみを用いた)。なお、いずれのペレットも透明であり、相溶性良好であった。
Claims (15)
- フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)が9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類およびそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種であり、脂環族ジオール(B1)が、シクロアルカンジオール、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン、ジ(ヒドロキシアルキル)架橋シクロアルカン、ジ(ヒドロキシシクロアルキル)アルカン及びジ(ヒドロキシアルキル)オキサスピロアルカンから選択された少なくとも1種である請求項1記載のポリエステル樹脂。
- フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)が9,9−ビス(カルボキシC2−5アルキル)フルオレン類及びそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種であり、脂環族ジオール(B1)がC5−8シクロアルカンジオール、ジ(ヒドロキシC1−3アルキル)C5−8シクロアルカン、ジ(ヒドロキシC1−3アルキル)ビ又はトリC5−10シクロアルカン、ジ(ヒドロキシC5−8シクロアルキル)C1−4アルカン及びジ(ヒドロキシC1−6アルキル)テトラオキサスピロアルカンから選択された少なくとも1種である請求項1又は2記載のポリエステル樹脂。
- ジカルボン酸成分(A)が、フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)を30モル%以上含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
- ジカルボン酸成分(A)がフルオレン系ジカルボン酸成分(A1)を50モル%以上含み、かつ非フルオレン系ジオール成分(B)が脂環族ジオール(B1)を50モル%以上含む請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
- ジカルボン酸成分(A)が、さらに、非フルオレン系アレーンジカルボン酸、シクロアルカンジカルボン酸、ビ又はトリシクロアルカンジカルボン酸及びそれらのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種で構成された他のジカルボン酸成分(A2)を含み、ジオール成分(B)が、さらに、アルカンジオールで構成された他のジオール(B2)を含む請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
- フルオレン系ジカルボン酸成分(A1)と他のジカルボン酸成分(A2)との割合が、前者/後者(モル比)=100/0〜50/50であり、脂環族ジオール(B1)と他のジオール(B2)との割合が、前者/後者(モル比)=99/1〜50/50である請求項6記載のポリエステル樹脂。
- 固有複屈折が、+40×10−4以下である請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル樹脂で形成された光学用成形体。
- 光学フィルムである請求項9記載の光学用成形体。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル樹脂と、芳香環を有する他の樹脂とを含む樹脂組成物。
- 他の樹脂が、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する樹脂である請求項11記載の樹脂組成物。
- ポリエステル樹脂の割合が、他の樹脂100重量部に対して1〜500重量部である請求項11又は12記載の樹脂組成物。
- 請求項11〜13のいずれかに記載の樹脂組成物で形成された光学用成形体。
- 光学フィルムである請求項14記載の光学用成形体。
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