以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
1.フルオレンジオール化合物
本発明のフルオレンジオール化合物は、分子内にシクロヘキサン骨格を有することを特徴とし、前記式(1)で表される。
前記式(1)において、R1およびR2で表される置換基としては、例えば、炭化水素基、基:-OR3、基:-SR3、基:-C(=O)-R3(R3は炭化水素基を示す)、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-デシル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-12アルキル基などが挙げられる。これらのうち、直鎖状または分岐鎖状C1-8アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられる。これらのうち、C5-8シクロアルキル基が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-14アリール基などが挙げられる。これらのうち、C6-10アリール基が好ましい。
アルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基などのC2-12アルケニル基などが挙げられる。これらのうち、C2-8アルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基としては、シクロヘキセニル基などのC5-10シクロアルケニル基などが挙げられる。これらのうち、C5-8シクロアルケニル基が好ましい。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、1-オクチニル基などのC2-12アルキニル基などが挙げられる。これらのうち、C2-8アルキニル基が好ましい。
炭化水素基は、これらの炭化水素基を組み合わせた基であってもよい。前記炭化水素基を組み合わせた基としては、アルキルアリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アルキルアリール基としては、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などのモノないしペンタC1-4アルキル-C6-10アリール基などが挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基などが挙げられる。
基:-OR3としては、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-12アルコキシ基などが挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基などが挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基などが挙げられる。
基:-SR3としては、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基などが挙げられる。
シクロアルキルチオ基としては、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基などが挙げられる。
アリールチオ基としては、チオフェノキシ基などのC6-10アリールチオ基などが挙げられる。
アラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基などが挙げられる。
基:-C(=O)-R3としては、アシル基などが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基などのC1-8アシル基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点では、フッ素原子が好ましい。
置換アミノ基としては、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基などが挙げられる。
モノ置換アミノ基としては、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基などが挙げられる。
アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基などのC1-4アルキルアミノ基などが挙げられる。
アルキルカルボニルアミノ基としては、アセチルアミノ基などのC1-4アルキル-カルボニルアミノ基などが挙げられる。
ジ置換アミノ基としては、ジアルキルアミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが挙げられる。
ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基などが挙げられる。
ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基などが挙げられる。
これらの置換アミノ基のうち、ジアルキルアミノ基などのジ置換アミノ基が好ましい。
フルオレンジオール化合物が置換基R1を有する場合、前記置換基R1のうち、炭化水素基、ハロゲン原子が好ましく、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が特に好ましい。
フルオレンジオール化合物が置換基R2を有する場合、前記置換基R2のうち、炭化水素基、基:-OR3(式中、R3は炭化水素基を示す)、ハロゲン原子が好ましく、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基、メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基、塩素原子が特に好ましい。
基R1の置換数m1は、好ましくは0~3の整数、さらに好ましくは0~2の整数、より好ましくは0または1、最も好ましくは0である。フルオレン骨格を構成する2つの異なるベンゼン環において、それぞれの置換数m1は、互いに同一または異なっていてもよい。また、前記異なるベンゼン環に置換する基R1の種類は、互いに異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。m1が2以上である場合、同一のベンゼン環に置換する2以上の基R1の種類は、互いに同一または異なっていてもよい。また、基R1の置換位置は、特に制限されず、フルオレン骨格の1位ないし8位のいずれの位置であってもよく、2位、4位、5位、7位などであってもよい。
基R2の置換数m2は、好ましくは0または1、さらに好ましくは0である。m2が2以上である場合、2以上の基R2の種類は、互いに同一または異なっていてもよい。また、基R2の置換位置は、シクロヘキサン骨格の2位および/または3位である。
メチレン基の繰り返し数n1およびn2は、例えば1~3の整数、好ましくは1または2、さらに好ましくは1である。n1およびn2が大きすぎると、重合成分として用いる場合などにおいて、得られる樹脂の耐熱性が低下する虞がある。なお、2つのn1は、互いに異なっていてもよいが、通常、同一である場合が多い。n2も同様である。なお、n1が0である場合、後述するように、シクロヘキサン骨格を有するフルオレンジオール化合物を製造する際に使用する塩基によって、原料であるハロゲン化物の脱ハロゲン化水素反応が進行し、目的の化合物が得ることが困難となる。また、n2が0である場合、ジオール化合物の嵩高さのため、重合物を得るのが困難である。
2.フルオレンジオール化合物(1)の製造方法
式(1)で表されるシクロヘキサン骨格を有するフルオレンジオール化合物は、例えば、下記反応式に従って調製できる。
(式中、Xはハロゲン原子を示し、R1、R2、m1、m2、n1およびn2は、前記と同じ)。
具体的には、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物とを、塩基および相間移動触媒の存在下で反応させて、式(1)で表される化合物を合成する。
式(3)において、Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。これらのうち、臭素原子が好ましい。式(3)で表される化合物は、例えば、特開2008-189629号公報などに記載の公知の手法により合成することができる。
式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=1/2~1/5、好ましくは1/2.1~1/3、さらに好ましくは1/2.3~1/2.5である。
塩基としては、アミン類(トリエチルアミンなどのトリアルキルアミンなど)などの有機塩基であってもよいが、通常、無機塩基を用いることが多い。無機塩基としては、金属炭酸塩、金属重炭酸塩(または金属炭酸水素塩)、金属水素化物、金属水酸化物などが挙げられる。これらの塩基は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの塩基のうち、無機塩基が好ましい。さらに、無機塩基の中でも、金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
塩基の割合は、式(2)で表される化合物1モルに対して、1.5~5モル、好ましくは1.8~3モル、さらに好ましくは2~2.5モルである。
式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応(以下、本明細書において、「フルオレンジオール化合物(1)の合成反応」という)は、通常、溶媒の存在下で行なわれる。この反応の溶媒としては、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、スルホキシド類、アミド類などが挙げられる。
炭化水素類としては、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素類としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類;クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類などが挙げられる。
エーテル類としては、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類;シクロペンチルメチルエーテルなどの脂環族エーテル類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類などが挙げられる。
スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。
アミド類としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、DMF、DMAなどのアミド類が好ましく、DMSOなどのアミド類が特に好ましい。
溶媒の割合は、式(2)および式(3)で表される化合物が溶解できれば特に制限されない。そのため、溶媒の割合は、式(2)で表される化合物および式(3)で表される化合物の総量100質量部に対して、例えば100~1000質量部である。
フルオレンジオール化合物(1)の合成反応において、水を共存させてもよい。水を共存させる場合、相間移動触媒を共存させることが好ましい。相間移動触媒としては、クラウンエーテル、オニウム塩、クリプタート、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。相間移動触媒は、これらの誘導体であってもよい。これらの相間移動触媒のうち、オニウム塩が好ましい。
好ましいオニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージドなどのテトラアルキルアンモニウムハライド;ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドなどのアラルキルトリアルキルアンモニウムハライド;テトラ-n-ブチルアンモニウム硫酸水素塩などのテトラアルキルアンモニウム硫酸水素塩;テトラ-n-ブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリドなどのテトラアリールホスホニウムハライド;トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムクロリドなどのトリアリールアルキルホスホニウムハライド;4-ジメチルアミノピリジンなどの4-ジアルキルアミノピリジニウム塩;テトラフェニルアルソニウムクロリドなどのテトラアリールアルソニムハライド;ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン]イミニウムクロリドなどのビス[トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン]イミニウムハライド;テトラトリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィンイミノ]ホスホニウムクロリドなどのテトラトリス[トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィンイミノ]ホスホニウムハライドが挙げられる。
相間移動触媒の割合は、式(2)で表される化合物1モルに対して、0.001~0.2モル、好ましくは0.002~0.1モル、さらに好ましくは0.005~0.05モルである。
フルオレンジオール化合物(1)の合成反応の反応温度は、-30℃~150℃程度の範囲から選択でき、例えば0~100℃、好ましくは5~100℃、さらに好ましくは15~50℃である。また、反応時間は、例えば1~48時間、好ましくは12~24時間である。反応終了後、反応生成物は、洗浄、抽出、濃縮、ろ過、再沈殿、遠心分離、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの慣用の分離精製手段や、これらを組み合わせた方法により、分離精製してもよい。
このようにして得られる式(1)で表される化合物は、種々の用途、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの樹脂の重合成分などとして有効に利用できる。これらのうち、ポリエステル樹脂の重合成分として利用するのが好ましい。
3.ポリエステル樹脂
前記式(1)で表される化合物は、樹脂の重合成分(単量体またはモノマ-)、例えば、ポリエステル樹脂の重合成分として利用でき、特に、ジオール単位を形成するためのジオール成分として利用するのが好ましい。
3-1.ジオール単位(A)
3-1-1.第1のジオール単位(A1)
ジオール単位(A)は、前記式(1)で表されるフルオレンジオール化合物由来の単位として、前記式(A1)で表される第1のジオール単位(A1)を含む。本発明では、ポリエステル樹脂が第1のジオール単位(A1)を含むことにより、屈折率を高めながら、複屈折を抑制できる。
代表的な第1のジオール単位(A1)としては、前記式(1)で表されるフルオレンジオール化合物の項で例示した化合物由来の単位を単独でまたは2種以上組み合わせて利用でき、好ましい態様も同様である。
本発明のポリエステル樹脂は、このような第1のジオール単位(A1)を含むことにより、屈折率および耐熱性を向上しつつ(または低下することなく)、複屈折を有効に低減できる。
第1のジオール単位(A1)の割合は、ジオール単位(A)全体に対して、1モル%以上(1~100モル%)であればよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、10モル%以上、20モル%以上、40モル%以上、60モル%以上、80モル%以上、90モル%以上である。また、他のジオール単位を含む場合、第1のジオール単位(A1)の割合は、ジオール単位(A)全体に対して、例えば30~99モル%、好ましくは50~97モル%、さらに好ましくは70~95モル%である。第1のジオール単位(A1)の割合は、実質的に100モル%がより好ましく、100モル%が最も好ましい。第1のジオール単位(A1)の割合が少なすぎると、耐熱性や屈折率が低下したり、複屈折を低減できない虞がある。
3-1-2.第2のジオール単位(A2)
ジオール単位(A)は、第1のジオール単位(A1)に加えて、第2のジオール単位(A2)をさらに含んでいてもよい。
第2のジオール単位(A2)に対応するジオール成分としては、具体的には、アルカンジオール、ポリアルキレングリコール(またはポリアルカンジオール)、脂環族ジオール、芳香族ジオール、前記式(1)で表されるフルオレンジオール化合物以外のフルオレンジオールなどが挙げられる。
アルカンジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール(1,3-プロパンジオール)、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール(1,4-ブタンジオール)、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオールなどの直鎖状または分岐鎖状C2-12アルカンジオールなどが挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリC2-6アルカンジオールなどが挙げられる。
脂環族ジオールとしては、シクロアルカンジオール、ビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン、後述する芳香族ジオールの水添物などが挙げられる。
シクロアルカンジオールとしては、シクロヘキサンジオールなどのC5-10シクロアルカンジオールなどが挙げられる。
ビス(ヒドロキシアルキル)シクロアルカンとしては、シクロヘキサンジメタノールなどのビス(ヒドロキシC1-4アルキル)C5-10シクロアルカンなどが挙げられる。
芳香族ジオールの水添物としては、ビスフェノールAの水添物などが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、ヒドロキノン、レゾルシノールなどジヒドロキシアレーン;ベンゼンジメタノールなどの芳香脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールG、ビスフェノールSなどのビスフェノール類;p,p’-ビフェノールなどのビフェノール類などが挙げられる。
脂環族ジオールおよび芳香族ジオールには、これらの脂環族ジオールおよび芳香族ジオールのヒドロキシル基にC2-4アルキレンオキシド、C2-4アルキレン-カーボネート、ハロC2-4アルカノールがさらに付加されていてもよい。このような付加体としては、ビスフェノールA1モルに対して、2~10モル程度のエチレンオキシドが付加した付加体などが挙げられる。
フルオレンジオールとしては、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アルキルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アリールフェニル]フルオレン、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アルキルフェニル]フルオレンとしては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-(モノまたはジ)C1-4アルキル-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ-アリールフェニル]フルオレンとしては、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-C6-10アリール-フェニル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレンとしては、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノないしデカ)C2-4アルコキシ-ナフチル]フルオレンなどが挙げられる。
これらのジオール成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、モノマーの重合性を向上でき、得られた樹脂の成形性も向上できる点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコールなどの直鎖状または分岐鎖状C2-4アルカンジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジないしテトラC2-4アルカンジオールが好ましく、前記重合性および成形性に加えて、ガラス転移温度も比較的維持できる点から、エチレングリコールなどの直鎖状または分岐鎖状C2-3アルカンジオールが特に好ましい。
第1のジオール単位(A1)と第2のジオール単位(A2)とのモル比は、前者/後者=100/0~1/99、好ましくは100/0~10/90、さらに好ましくは100/0~30/70程度の範囲から選択でき、要求されるガラス転移温度に応じて、任意の比率から選択できる。ジオール単位が第2のジオール単位(A2)を含み、かつ第2のジオール単位(A2)が直鎖状または分岐鎖状C2-3アルカンジオールである場合、前者/後者=99/1~3/97であってもよく、好ましくは95/5~10/90、さらに好ましくは90/10~30/70、より好ましくは80/20~50/50、最も好ましくは85/15~70/30である。
3-2.ジカルボン酸単位(B)
ジカルボン酸単位(B)としては、脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、芳香族ジカルボン酸成分由来の単位などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸成分は、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸に大別できる。
飽和脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、アルカンジカルボン酸などが挙げられる。アルカンジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などのC1-18アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。これらのうち、C1-12アルカン-ジカルボン酸が好ましい。
不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2-10アルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸成分は、飽和脂環族ジカルボン酸、不飽和脂環族ジカルボン酸成分に大別できる。
飽和脂環族ジカルボン酸は、シクロアルカンジカルボン酸、架橋環式シクロアルカンジカルボン酸などに大別できる。
シクロアルカンジカルボン酸としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
架橋環式シクロアルカンジカルボン酸としては、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのジまたはトリシクロアルカンジカルボン酸などが挙げられる。
不飽和脂環族ジカルボン酸成分としては、シクロアルケンジカルボン酸、架橋環式シクロアルケンジカルボン酸などが挙げられる。
シクロアルケンジカルボン酸としては、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5-10シクロアルケン-ジカルボン酸などが挙げられる。
架橋環式シクロアルケンジカルボン酸としては、ノルボルネンジカルボン酸などのジまたはトリシクロアルケンジカルボン酸などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、アレーンジカルボン酸、ジアリール骨格を有するジカルボン酸、フルオレン骨格を有するジカルボン酸などが挙げられる。
アレーンジカルボン酸としては、ベンゼンジカルボン酸、、アルキルベンゼンジカルボン酸などのベンゼンジカルボン酸類;縮合多環式アレーンジカルボン酸、環集合アレーンジカルボン酸などの多環式アレーンジカルボン酸類などが挙げられる。
ベンゼンジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
アルキルベンゼンジカルボン酸としては、メチルテレフタル酸、4-メチルイソフタル酸、5-メチルイソフタル酸などのC1-4アルキル-ベンゼンジカルボン酸などが挙げられる。
縮合多環式アレーンジカルボン酸としては、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10-18アレーン-ジカルボン酸などが挙げられる。ナフタレンジカルボン酸としては、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの異なる環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸;1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸などの同一の環に2つのカルボキシル基を有するナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。これらのうち、縮合多環式C10-14アレーン-ジカルボン酸が好ましい。
環集合アレーンジカルボン酸としては、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸などのビC6-10アレーン-ジカルボン酸などが挙げられる。
ジアリール骨格を有するジカルボン酸としては、ジアリールアルカンジカルボン酸、ジアリールケトンジカルボン酸などが挙げられる。
ジアリールアルカンジカルボン酸としては、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸などのジC6-10アリールC1-6アルカン-ジカルボン酸などが挙げられる。
ジアリールケトンジカルボン酸としては、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸などのジ(C6-10アリール)ケトン-ジカルボン酸などが挙げられる。
フルオレン骨格を有するジカルボン酸としては、9,9-ビス(カルボキシアルキル)フルオレン、9-(ジカルボキシアルキル)フルオレン、9,9-ビス(カルボキシアリール)フルオレン、ジカルボキシフルオレン、9,9-ジアルキル-ジカルボキシフルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(カルボキシアルキル)フルオレンとしては、9,9-ビス(2-カルボキシエチル)フルオレン、9,9-ビス(2-カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC2-6アルキル)フルオレンなどが挙げられる。
9-(ジカルボキシアルキル)フルオレンとしては、9-(1,2-ジカルボキシエチル)フルオレン、9-(2,3-ジカルボキシプロピル)フルオレンなどの9-(ジカルボキシC2-8アルキル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(カルボキシアリール)フルオレンとしては、9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(カルボキシC6-10アリール)フルオレンなどが挙げられる。
ジカルボキシフルオレンとしては、2,7-ジカルボキシフルオレンなどが挙げられる。
9,9-ジアルキル-ジカルボキシフルオレンとしては、2,7-ジカルボキシ-9,9-ジメチルフルオレンなどの9,9-ジC1-10アルキル-ジカルボキシフルオレンなどが挙げられる。
これらのうち、ポリエステル樹脂の複屈折を低減できる点から、脂環族ジカルボン酸成分が好ましく、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などのC5-10シクロアルカン-ジカルボン酸が特に好ましい。
脂環族ジカルボン酸成分の割合は、ジカルボン酸単位(B)の全単位中10モル%以上であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、80モル%以上、90モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。
4.ポリエステル樹脂の製造方法および特性
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、第1のジオール成分(A1)を少なくとも含むジオール成分(A)と、ジカルボン酸成分(B)とを反応させればよく、慣用の方法、例えば、エステル交換法、直接重合法などの溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などで調製できる。これらの方法のうち、溶融重合法が好ましい。なお、反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。
ジカルボン酸成分(B)とジオール成分(A)との使用割合(または仕込み割合)は、通常、前者/後者(モル比)=1/1.0~1/5程度の範囲から選択でき、好ましくは1/1.1~1/3である。なお、反応において、各ジカルボン酸成分(B)およびジオール成分(A)の使用量(使用割合)は、前記各ジカルボン酸単位およびジオール単位の割合と好ましい態様を含めて同様であってもよく、必要に応じて、各成分などを過剰に用いて反応させてもよい。例えば、反応系から留出可能なエチレングリコールなどの第2のジオール成分(A2)は、ポリエステル樹脂中に導入される割合(または導入割合)よりも過剰に使用してもよい。
反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用のエステル化触媒、例えば、金属触媒などが利用できる。金属触媒としては、ナトリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;マンガン、亜鉛、カドミウム、鉛、コバルト、チタンなどの遷移金属;アルミニウムなどの周期表第13族金属;ゲルマニウムなどの周期表第14族金属;アンチモンなどの周期表第15族金属などを含む金属化合物が用いられる。金属化合物は、アルコキシド;酢酸塩、プロピオン酸塩などの有機酸塩;ホウ酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;金属酸化物などであってもよく、これらの水和物であってもよい。
代表的な金属化合物としては、二酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、シュウ酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウム-n-ブトキシドなどのゲルマニウム化合物;三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエチレンリコレートなどのアンチモン化合物;テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、シュウ酸チタン、シュウ酸チタンカリウムなどのチタン化合物;酢酸マンガン・4水和物などのマンガン化合物;酢酸カルシウム・1水和物などのカルシウム化合物などが挙げられる。
これらの触媒は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。複数の触媒を用いる場合、反応の進行に応じて、各触媒を添加することもできる。これらの触媒のうち、酢酸マンガン・4水和物、酢酸カルシウム・1水和物、二酸化ゲルマニウムが好ましい。
触媒の使用量は、例えば、ジカルボン酸成分(B)1モルに対して、例えば0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
また、反応は、必要に応じて、熱安定剤や酸化防止剤などの安定剤の存在下で行ってもよい。熱安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、亜リン酸、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトなどのリン化合物などが挙げられる。安定剤の使用量は、ジカルボン酸成分(B)1モルに対して、例えば0.01×10-4~100×10-4モル、好ましくは0.1×10-4~40×10-4モルである。
反応は、空気中で行ってもよく、通常、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどが挙げられる。また、反応は、1×102~1×104Pa程度の減圧下で行うこともできる。反応温度は、重合方法に応じて選択でき、溶融重合法における反応温度は、例えば150~300℃、好ましくは180~290℃、さらに好ましくは200~280℃である。
本発明のポリエステル樹脂は、低い複屈折または負の複屈折を発現できる。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは50~250℃程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、70~230℃、80~220℃、85~190℃、90~180℃、95~175℃、100~170℃であり、最も好ましくは105~165℃である。ガラス転移温度Tgが低すぎると、使用時に樹脂が変形したり、変色(または着色)したりする虞があり、Tgが高すぎると、光学レンズなどの成形体表面を平滑に形成できなくなる虞がある。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、ポリスチレン換算で10000~200000程度の範囲から選択でき、例えば15000~100000、好ましくは20000~80000、さらに好ましくは25000~60000、最も好ましくは30000~40000である。また、ポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは、ポリスチレン換算で5000~500000程度の範囲から選択でき、例えば7000~300000、好ましくは8000~100000、さらに好ましくは10000~50000、最も好ましくは12000~30000である。ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは1~5程度の範囲から選択でき、例えば1.1~4、好ましくは1.2~3、さらに好ましくは1.3~2.8、最も好ましくは1.5~2.5である。なお、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnおよび分子量分布Mw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で測定できる。
ポリエステル樹脂の屈折率は、温度20℃、波長589nmにおいて、1.50~1.80程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.52~1.78、1.53~1.70、1.54~1.66、1.54~1.63であり、最も好ましくは1.55~1.60である。
ポリエステル樹脂のアッベ数は、温度20℃において、例えば20以上、好ましくは23以上、さらに好ましくは26以上である。さらに、アッベ数は、温度20℃において、例えば20~50、好ましくは24~45、さらに好ましくは27~40である。
ポリエステル樹脂の複屈折は、ポリエステル単独で形成したフィルムを、延伸倍率3倍で一軸延伸した延伸フィルムの複屈折(3倍複屈折)により評価してもよい。複屈折(3倍複屈折)は、フィルム面内において、延伸方向における屈折率と、この方向に垂直な方向における屈折率との差の絶対値で表される。そのため、延伸温度(ガラス転移温度Tg+10)℃、延伸速度25mm/分の延伸条件で調製した前記延伸フィルムの3倍複屈折は、測定温度20℃、波長600nmにおいて、50×10-4以下の範囲から選択でき、例えば30×10-4以下、好ましくは20×10-4以下、さらに好ましくは15×10-4以下である。さらに、前記3倍複屈折は、例えば50×10-4~-100×10-4、好ましくは30×10-4~-70×10-4、さらに好ましくは20×10-4~-50×10-4、最も好ましくは15×10-4~-30×10-4である。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ガラス転移温度Tg、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、分子量分布Mw/Mn、屈折率、アッベ数および3倍複屈折は、後述する実施例に記載の方法などにより測定できる。
本発明のポリエステル樹脂を用いて得られる成形体は、優れた耐熱性および高屈折率、低複屈折などの優れた光学的特性を有しているため、光学フィルム(または光学シート)、光学レンズなどの光学用部材として用いることができる。成形体の形状としては、特に限定されず、線状、繊維状などの一次元的構造;フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造;凹レンズ状、凸レンズ状、棒状、中空状(管状)などの三次元的構造などが挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂で形成された成形体は、各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、充填剤または補強剤;染顔料などの着色剤;導電剤;難燃剤;可塑剤;滑剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などの安定剤;離型剤;帯電防止剤;分散剤;流動調整剤;レベリング剤;消泡剤;表面改質剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などの低応力化剤;硫黄化合物、ポリシランなどの耐熱性改良剤;炭素材などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
前記成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などによって製造できる。
特に、本発明のポリエステル樹脂は、種々の光学的特性に優れているため、光学フィルムを形成するのに有用である。このようなフィルムの厚み(平均厚み)は1~1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、特に限定されないが、例えば1~200μm、好ましくは5~150μm、さらに好ましくは10~120μmである。
このようなフィルム(光学フィルム)は、前記ポリエステル樹脂を、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などの慣用の成膜方法を用いて成膜(または成形)することにより製造できる。
前記フィルムは、延伸フィルムであってもよい。本発明のフィルムは、延伸フィルムであっても、低複屈折を維持できる。なお、このような延伸フィルムは、一軸延伸フィルムおよび二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
延伸倍率は、一軸延伸又は二軸延伸において各方向にそれぞれ1.1~10倍であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、1.1~8倍、1.2~6倍、1.2~2.5倍、1.2~2.3倍であり、最も好ましくは1.5~2.2倍である。なお、二軸延伸の場合、等延伸、好ましくは縦横両方向に1.5~5倍の等延伸であってもよく、偏延伸、好ましくは縦方向に1.1~4倍、横方向に2~6倍延伸した偏延伸であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸、好ましくは縦方向に2.5~8倍の縦延伸であってもよく、横延伸、好ましくは横方向に1.2~5倍の横延伸であってもよい。
延伸フィルムの厚み(平均厚み)は、例えば1~150μm、好ましくは3~120μm、さらに好ましくは5~100μmである。
なお、このような延伸フィルムは、成膜後のフィルム(または未延伸フィルム)に、延伸処理を施すことにより得ることができる。延伸方法は、特に制限が無く、一軸延伸の場合、湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法ともいわれる)であってもチューブ法であってもよいが、延伸厚みの均一性に優れるテンター法が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。評価方法を以下に示す。
[評価方法]
(NMR)
NMRスペクトルは、Bruker BIOSPIN社製「AVANCE III HD(300MHz)」を用いて測定した。
(ガラス転移温度Tg)
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)製「EXSTAR6000 DSC6220 ASD-2」)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で、20~220℃の範囲で測定した。
(分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー(株)製、「HLC-8320GPC」)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で、重量平均分子量Mw、分子量分布Mw/Mnを測定した。
(屈折率nD)
多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製の品名「DR-M4」(循環式恒温水槽60-C3))を用いて、20℃、589nm(D線)の条件で測定した。
(アッベ数)
多波長アッベ屈折計(前出の「DR-M4」)を用いて、測定温度20℃で、接触液に1-ブロモナフタレンを使用して、測定波長486nm(F線)、589nm(D線)、656nm(C線)の屈折率nF、nD、nCを其々、測定し、以下の式によって算出した。
アッベ数=(nD-1)/(nF-nC)
(複屈折)
試料を150℃で熱プレスすることによって、厚みが500μmのフィルムを成形した。このフィルムを10mm×50mmの短冊状に切り出し、Tg+10℃の温度条件下、25mm/分で延伸倍率が3倍となるように一軸延伸して試験片を得た。
延伸した試験片を、大塚電子(株)製、RETS-100を用いて、測定温度20℃、測定波長600nmの条件下、リタデーションを測定し、その値を測定部位の厚みで除することで算出した。
複屈折の正負の符号は、一軸延伸した試験片を、偏光板を備え付けた多波長アッベ屈折計(前出の「DR-M4」)を用いて測定し、延伸方向に対して、平行方向の屈折率>直角方向の屈折率となった場合を正、延伸方向に対して、直角方向の屈折率>平行方向の屈折率となった場合を負とした。
[合成例1]9,9-ビス((4-ヒドロキシメチルシクロヘキサン-1-イル)メチル))フルオレンの合成
フルオレン7.0g(42.1mmol)のDMSO溶液(170mL)に50%水酸化ナトリウム溶液13.8g(173mmol)を加えて、アルゴン雰囲気下、室温で15分撹拌することにより、赤色の懸濁液を得た。得られた赤色の懸濁液に、テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド128mg(0.37mmol)と、4-(ブロモメチル)シクロヘキサンメタノール21.1g(102mmol)とを加えて、室温で20時間撹拌することにより、緑色の懸濁液を得た。得られた緑色の懸濁液に、水(250mL)と2-ブタノン(250mL)とを加えて、分液した。2-ブタノンを減圧留去後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=50/50)で精製し、表題の化合物を淡黄色固体(収量15.0g、収率85%)として得た。
1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=0.37-2.04(br、24H)、3.19(br、4H、主異性体)、3.39(br、4H、副異性体)、7.25-7.34(6H、芳香族)、7.68(d、J=7.5Hz、2H)。
[実施例1]ポリエステル樹脂の製造
合成例1で得られた9,9-ビス((4-ヒドロキシメチルシクロヘキサン-1-イル)メチル))フルオレン4.02gと、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル2.41gと、エチレングリコール1.64gと、チタニウムテトラブトキシド0.8mgとを反応器に加え、液温が260℃になるまで徐々に加熱して、エステル交換反応を行った。エステル交換により生じるメタノールを除去した後、酸化ゲルマニウム2.5mgを加え、液温が275℃、反応器の内圧が150Paになるまで昇温、減圧して、重縮合反応を行った。
こうして得られたポリエステル樹脂は、重量平均分子量Mwが32900(Mw/Mn=2.3)、ガラス転移温度Tgが101.8℃、屈折率nD(20℃)が1.5532、アッベ数が34.4であって、3倍延伸時の複屈折は-33×10-4であった。