JP2018016720A - 生分解性促進剤及びそれを含む生分解性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂の生分解性を促進するのに有用な生分解性促進剤又はその生分解性促進方法、この促進剤を含む生分解性樹脂組成物とその成形体を提供する。【解決手段】ポリエステル樹脂などのエステル結合又はアミド結合を有する樹脂100重量部に対して、生分解性促進剤として、3−ヒドロキシアルカン酸(3−ヒドロキシ酪酸など)の重合体(オリゴマー)を0.1〜50重量部の割合で添加し、前記樹脂の生分解性を改善する。【選択図】なし

Description

本発明は、3−ヒドロキシ酪酸(3−ヒドロキシブタン酸又は3HB)などの3−ヒドロキシアルカン酸の重合体で形成された生分解性促進剤とそれを添加して樹脂の生分解性を促進する方法、生分解性樹脂組成物並びにその成形体に関する。
環境保全の観点から、生分解性プラスチックの利用が進んでいる。環境中に放出されたプラスチックは、分解に百年単位の月日が必要であり、海洋上を漂ってプラスチックベルトとよばれる海上汚染域を形成し、鳥獣類の生育に被害を及ぼしている。また、それらの分解過程で発生する1mm以下の微小なプラスチック片は、スモールマイクロプラスチックと称され、生体内に取り込まれると、内分泌かく乱を引きおこすことが懸念されている。これらの微小プラスチック片の中には、シャンプーや歯磨きなどの製品に予め人為的に添加されるプラスチックもあり、使用禁止となる地域も出始めている。
また、欧州を中心に生分解性ゴミ袋の利用が進められている。このゴミ袋は、ゴミを堆肥化した場合に、プラスチックが残存しないことを目指している。しかし、堆肥化工程において生分解性ゴミ袋はすべて温暖化ガスの二酸化炭素となってしまう。従来販売されている生分解性ゴミ袋の殆どは嫌気条件でバイオガス化することができず、好気条件の堆肥化プロセスによってのみしか分解できないためである。
前記ゴミ袋などに利用される汎用の生分解性プラスチックとしては、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)などが知られている。しかし、前述のように、嫌気条件でのバイオガス化において十分な分解速度を有しておらず、例えば、海洋中での生分解性も低かった。
H.Yagi et al., Polymer Degradation and Stability 110 (2014)278-283(非特許文献1)には、各種の生分解性ポリエステルの嫌気条件での生分解性が評価されており、PLA、PCL、PBSに比べて、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)が嫌気条件で高い生分解性を示すことが開示されている。このようにPHBなどのポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、嫌気条件で十分な分解性能を有するプラスチックである一方で、PHA以外の生分解性プラスチックは、自然界に存在しないため、自然界に存在する微生物によって緩やかに分解できる構造を有しているにすぎない。しかし、PHAは、汎用のプラスチック成形体に必要な機械的特性などが不足している上に、経済性も低いため、普及が進んでいなかった。
また、機械的特性に優れた生分解性高分子として、特開平8−3296号公報(特許文献1)には、脂肪族オキシカルボン酸単位98〜70モル%、脂肪族ジオール単位1〜15モル%及び脂肪族ジカルボン酸単位1〜15モル%から主としてなり、数平均分子量が1万〜10万である脂肪族ポリエステル共重合体が開示されている。この文献の実施例では、L−乳酸、1,4−ブタンジオール、コハク酸を用いて得られたコポリエステルが製造されている。しかし、この脂肪族ポリエステル共重合体でも、嫌気条件での生分解性は低かった。
そこで、安価に生産が可能で石油系プラスチックを代替できるPBS、PBSA、PBAT、PLAなどの生分解性の向上が待望されている。
特開平8−3296号公報(請求項1、実施例)
H.Yagi et al., Polymer Degradation and Stability 110 (2014)278-283(Table 1)
従って、本発明の目的は、所定の樹脂の生分解性を改善又は促進するのに有用な生分解性促進剤又は生分解性促進方法、この促進剤を含む生分解性樹脂組成物とその成形体を提供することにある。
本発明の他の目的は、嫌気条件での生分解性を向上できる生分解性促進剤又はその生分解性促進方法、この促進剤を含む生分解性樹脂組成物とその成形体を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、生分解性樹脂の特性を低下させることなく、生分解性を制御可能な生分解性促進剤又はその生分解性促進方法、この促進剤を含む生分解性樹脂組成物とその成形体を提供することにある。
本発明者らは、自然界に存在するポリ(3−ヒドロキシ酪酸)(PHB)などのポリ(3−ヒドロキシアルカン酸)の生分解性が極めて高いことに着目し、PBS、PBSA、PBAT、PLAなどの生分解性プラスチックの高分子鎖に3−ヒドロキシ酪酸(3HB)のオリゴマー構造(繰り返し単位)を挿入すれば、3HB同士の結合部分が微生物的な分解を受けて生分解性を向上できると想定していた。また、ポリ(3−ヒドロキシアルカン酸)を生分解性樹脂に添加しても、ポリ(3−ヒドロキシアルカン酸)だけが優先的に微生物的な分解を受けて生分解し、生分解性樹脂の分解性は変化がないと想定していた。ところが、本発明者らは、驚くべきことに、エステル結合又はアミド結合を有する樹脂にポリ(3−ヒドロキシアルカン酸)のオリゴマーを添加すると、添加量が少量であっても、ポリ(3−ヒドロキシアルカン酸)のみならず、エステル結合又はアミド結合を有する樹脂の生分解性を大きく改善できること、しかも嫌気性条件下でも樹脂の生分解性を大きく改善できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の生分解性促進剤(又は生分解性改善剤)は、3−ヒドロキシアルカン酸の単独又は共重合体(ホモ又はコポリエステル)を含んでいる。3−ヒドロキシアルカン酸は、2位がメチレン基(活性メチレン基)である化合物、例えば、少なくとも3−ヒドロキシC4−12アルカン酸、例えば、3−ヒドロキシブタン酸(3−ヒドロキシ酪酸又は3HB)を含んでいてもよい。前記重合体の分子量は大きくてもよく、通常、数平均分子量180〜8000程度のオリゴマーであってもよい。
このような重合体は、樹脂の生分解性を高めるのに有用である。そのため、本発明は、連結基として少なくともエステル結合又はアミド結合を有する樹脂と、前記生分解性促進剤とを含む生分解性樹脂組成物;連結基として少なくともエステル結合又はアミド結合を有する樹脂に、前記生分解性促進剤を添加し、樹脂の生分解を促進する方法も包含する。
前記樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよく、微生物による分解が困難な樹脂であってもよい。前記樹脂は、通常、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも一種が使用できる。生分解性促進剤の使用量は、例えば、樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部程度であってもよい。
本発明は、さらに、生分解性樹脂組成物で形成された成形体も包含する。
また、本発明は、連結基として少なくともエステル結合を有する樹脂に、前記生分解性促進剤を添加し、樹脂の生分解を促進する方法も包含する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、ヒドロキシアルカン酸とは、対応するラクトン、及び反応性誘導体も含む意味で用いる場合がある。
本発明では、3−ヒドロキシアルカン酸を単量体として重合した重合体で生分解性促進剤を形成するため、重合体の生分解に誘発されるためか、エステル結合を含む樹脂の生分解性を大きく改善できる。特に、好気条件だけでなく、嫌気条件での生分解性を大きく向上できる。さらに、生分解性促進剤の添加量により、樹脂の生分解性を容易に制御できる。
[生分解性促進剤]
本発明の生分解性促進剤(生分解性改善剤)は、3−ヒドロキシアルカン酸の単独又は共重合体で形成できる。3−ヒドロキシアルカン酸(又は3−ヒドロキシアルカンカルボン酸)としては、例えば、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸(3−ヒドロキシ酪酸)、3−ヒドロキシペンタン酸(3−ヒドロキシ吉草酸)、3−ヒドロキシ−3−メチル−ブタン酸(3−ヒドロキシイソ吉草酸)、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシへプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシナノン酸、3−ヒドロキシデカン酸などの3−ヒドロキシC4−12アルカン酸(3−ヒドロキシC3−11アルカン−カルボン酸)などが例示できる。
3−ヒドロキシアルカン酸は、対応するラクトン、例えば、β−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、β−ピバロラクトンなどであってもよい。さらに、3−ヒドロキシアルカン酸は、反応性誘導体、例えば、酸ハライド(酸クロライドなど)、低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステルなどのC1−4アルキルエステル)であってもよい。
これらの3−ヒドロキシアルカン酸は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの3−ヒドロキシアルカン酸のうち、生分解性の点から、通常、少なくとも3−ヒドロキシC4−12アルカン酸(例えば、3−ヒドロキシC4−10アルカン酸、好ましくは3−ヒドロキシC4−8アルカン酸、さらに好ましくは3−ヒドロキシC4−6アルカン酸、特に3−ヒドロキシブタン酸)が使用される。3−ヒドロキシアルカン酸のヒドロキシル基は、一級ヒドロキシル基であってもよいが、通常、2級ヒドロキシル基である場合が多い。
生分解性促進剤は、少なくとも3−ヒドロキシアルカン酸を単量体として重合した重合体であればよく、3−ヒドロキシアルカン酸の単独重合体であってもよく、第1のヒドロキシカルボン酸(第1の単量体)としての3−ヒドロキシアルカン酸と、第2のヒドロキシカルボン酸(第2の単量体)との共重合体であってもよい。
第2のヒドロキシカルボン酸(第2の単量体)は、例えば、ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸(ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸など)、ヒドロキシアレーンカルボン酸(ヒドロキシ安息香酸など)であってもよいが、通常、ヒドロキシアルカン酸である場合が多い。ヒドロキシアルカン酸としては、例えば、グリコール酸、2−ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、2−ヒドロキシブタン酸(2−ヒドロキシ酪酸)、4−ヒドロキシブタン酸、2−ヒドロキシペンタン酸(2−ヒドロキシ吉草酸)、4−ヒドロキシペンタン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチル−ペンタン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、6−ヒドロキシヘプタン酸、7−ヒドロキシヘプタン酸、8−ヒドロキシオクタン酸、9−ヒドロキシノナン酸、10−ヒドロキシデカン酸などのC1−6アルキル基を有していてもよいヒドロキシC2−15アルカン酸などが例示できる。なお、第2の単量体としてのヒドロキシカルボン酸は、前記第1の単量体と同様に、対応するラクトン、例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−ジメチルブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのジC1−12アルキル基を有していてもよいC3−15ラクトン;酸ハライド若しくは低級アルキルエステルであってもよい。
第1のヒドロキシカルボン酸(第1の単量体)と第2のヒドロキシカルボン酸(第2の単量体)との割合は、前者/後者(モル比)=50/50〜100/0(例えば、65/35〜99/1)、好ましくは70/30〜100/0(例えば、75/25〜95/5)、さらに好ましくは80/20〜100/0(例えば、90/10〜95/5)程度であってもよく、通常、85/15〜100/0程度であってもよい。
なお、このような重合体(単独又は共重合体)に残存する遊離ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基は、熱安定性を高めるため、慣用の末端封止剤で封止又は保護してもよい。例えば、遊離ヒドロキシル基は、カルボン酸又は酸ハライドで封止してもよく、トリアルキルアルキルシリル基などで封止してもよく、カルボキシル基はアルコールとのエステル化などにより封止してもよい。
このような重合体(単独又は共重合体)は少なくとも3−ヒドロキシアルカン酸を単量体とし、かつ主たる骨格が脂肪族であるため、生分解性が高いだけでなく、所定の樹脂に対して高い生分解性を付与できる。
前記重合体(単独又は共重合ポリエステル)で形成された生分解性促進剤の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定したとき、ポリスチレン換算で、高分子量(例えば、数平均分子量Mn7000〜20000)であってもよいが、通常、数平均分子量Mnが180〜10000程度の低分子量、例えば、180〜8000(例えば、250〜5000)、好ましくは300〜3000(例えば、400〜2000)、さらに好ましくは500〜1500(例えば、600〜1200)、通常、500〜1500(例えば、700〜1000)程度のオリゴマーであってもよい。また、前記重合体(単独又は共重合ポリエステル)は、前記単量体の2〜20量体(例えば、3〜15量体、好ましくは4〜12量体、さらに好ましくは5〜10量体)程度のオリゴマーであってもよい。なお、生分解性促進剤の分子量を調整することにより、樹脂の生分解性をコントロールできるようである。
なお、カルボキシル基に隣接する2位がメチレン基であり、かつヒドロキシル基が二級ヒドロキシル基である3−ヒドロキシアルカン酸(3−ヒドロキシ酪酸(3HB)など)は自然界では微生物により高分子量の重合体が生成するものの、人為的にエステル化して重合すると、エステル化反応に伴って脱水反応が生じ、クロトン酸などの単官能の不飽和モノカルボン酸が生成し易い。そのため、このような3−ヒドロキシアルカン酸を用いると、通常、高分子量の重合体を生成することが困難であり、低分子量のポリエステル(例えば、オリゴマー領域のポリエステル)しか生成できない。本発明では低分子量のポリ(3−ヒドロキシアルカン酸)を所定の樹脂に添加しても高い生分解性を付与できるため、高分子量化する必要もない。
このような重合体は、例えば、慣用の方法でエステル化反応に供することにより調製できる。反応は、触媒の存在下又は非存在下で行ってもよく、触媒としては、例えば、金属触媒[例えば、アルカリ金属(ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、遷移金属(マンガン、亜鉛、鉛、コバルト、チタンなど)、周期表第13族金属(アルミニウムなど)、周期表第14族金属(ゲルマニウム、スズなど)、周期表第15族金属(アンチモンなど)などを含む金属化合物など]、塩基触媒(例えば、第三級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、第4級アンモニウム塩(塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)など)、酸触媒[例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩化水素(又は塩酸)、硝酸、リン酸など)、有機酸(例えば、スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸)など)など]などが挙げられる。金属化合物としては、例えば、有機酸塩(酢酸塩、プロピオン酸塩など)、無機酸塩(ホウ酸塩、炭酸塩など)、金属酸化物(酸化ゲルマニウムなど)、金属塩化物(塩化スズなど)、金属アルコキシド(チタンテトラアルコキシド、チタンテトラt−ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、亜鉛t−ブトキシド、カリウムt−ブトキシドなど)、アルキル金属(トリアルキルアルミニウムなど)などが例示できる。これらの触媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
触媒の使用量は、例えば、全単量体100モルに対して0.001〜1モル、好ましくは0.005〜0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.1モル程度であってもよい。
重合方法としては、慣用の方法、例えば、溶融重合法、溶液重合法、界面重合法などが利用できる。反応は、重合方法に応じて、溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
反応は、通常、不活性ガス(窒素、ヘリウムなど)雰囲気中で行うことができる。また、反応は、常温下又は減圧下で行ってもよく、生成する水などを反応系外に留出しつつ行ってもよい。
反応温度は、例えば、50〜200℃、好ましくは70〜180℃、さらに好ましくは100〜150℃程度であってもよい。反応時間は、特に限定されず、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間程度であってもよい。
また、反応終了後、単独又は共重合ポリエステルは、慣用の分離方法、例えば、反応生成物を貧溶媒により再沈殿する方法により分離精製してもよい。
生分解性促進剤は、前記3−ヒドロキシアルカン酸を構成単位として含む重合体で形成すればよく、必要であれば、添加剤、例えば、可塑剤(例えば、生分解性であってもよい可塑剤(例えば、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アルカンジオールジアリールエステル、フタル酸エステル、脂肪族ポリエステル系可塑剤などのエステル結合を有する可塑剤)など)などを含んでいてもよい。
[生分解性樹脂組成物]
生分解性を向上させるための樹脂は、連結基として少なくともエステル結合又はアミド結合を有していればよく、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂などが例示できる。これらの樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの樹脂のうち、通常、連結基として少なくともエステル結合を有する樹脂を用いる場合が多い。
ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分との反応、ヒドロキシカルボン酸成分(又はヒドロキシカルボン酸と等価なラクトン成分)の反応、ジカルボン酸成分とジオール成分とヒドロキシカルボン酸成分との反応により調製できる。
(ジカルボン酸成分)
ジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アルカンジカルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカン二酸などのC2−16アルカンジ−カルボン酸など)、不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC4−10アルケン−ジカルボン酸など)などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸など)、ジ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸など)、シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキセンジカルボン酸などのC5−10シクロアルケン−ジカルボン酸)、ジ又はトリシクロアルケンジカルボン酸(例えば、ノルボルネンジカルボン酸など)などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸[例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキルイソフタル酸など)などのC6−10アレーン−ジカルボン酸など]、多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、縮合多環式芳香族ジカルボン酸[例えば、ナフタレンジカルボン酸(例えば、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸)、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸などの縮合多環式C10−24アレーン−ジカルボン酸、好ましくは縮合多環式C10−16アレーン−ジカルボン酸、さらに好ましくは縮合多環式C10−14アレーン−ジカルボン酸など]、アリールアレーンジカルボン酸[例えば、ビフェニルジカルボン酸(例えば、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)などのC6−10アリール−C6−10アレーン−ジカルボン酸など]、ジアリールアルカンジカルボン酸[例えば、ジフェニルアルカンジカルボン酸(例えば、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸など)などのジC6−10アリールC1−6アルカン−ジカルボン酸など]、ジアリールケトンジカルボン酸[例えば、ジフェニルケトンジカルボン酸(例えば、4.4’−ジフェニルケトンジカルボン酸など)などのジC6−10アリールケトン−ジカルボン酸)など]、フルオレン骨格を有するジカルボン酸など]などが挙げられる。
前記フルオレン骨格を有するジカルボン酸としては、例えば、ジカルボキシフルオレン(例えば、2,7−ジカルボキシフルオレンなど);9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC2−6アルキル)フルオレンなど];9−(カルボキシ−カルボキシアルキル)フルオレン[例えば、9−(1−カルボキシ−2−カルボキシエチル)フルオレン、9−(2−カルボキシ−3−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9−(カルボキシ−カルボキシC2−6アルキル)フルオレンなど];9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−カルボキシ−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−カルボキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC6−12アリール)フルオレンなど];9,9−ビス(カルボキシアルキル−アリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(カルボキシメチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−カルボキシエチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−(カルボキシメチル)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(5−(カルボキシメチル)−1−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(6−(カルボキシメチル)−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC1−6アルキル−C6−12アリール)フルオレンなど]などが挙げられる。
これらのジカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジカルボン酸は、用途に応じて選択でき、生分解性を向上できる点から、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸などのC2−6アルカン−ジカルボン酸など)であってもよく、耐熱性などを向上できる点から、芳香族ジカルボン酸単位(例えば、フルオレン骨格を有するジカルボン酸)であってもよい。
(ジオール成分)
ジオール成分としては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオールなどが挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオールなど)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2−4アルカンジオールなど)などが挙げられる。
脂環族ジオールとしては、例えば、シクロアルカンジオール(例えば、シクロヘキサンジオールなどのC5−8シクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン(例えば、シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C5−8シクロアルカンなど)、イソソルビドなどが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、例えば、ジヒドロキシアレーン(例えば、ヒドロキノン、レゾルシノールなど)、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン(例えば、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーンなど)、ビスフェノール類(例えば、ビフェノール、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカンなど)、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加体、フルオレン骨格を有するジオールなどが挙げられる。
前記フルオレン骨格を有するジオールとしては、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン骨格を有するジオール化合物、例えば、下記式(1)で表されるジオールが挙げられる。
Figure 2018016720
(式中、環Zはアレーン環、Rはアルキレン基、R及びRは置換基を示し、nは0又は1以上の整数、kは0〜4の整数、mは0又は1以上の整数である)。
前記式(1)において、環Zで表されるアレーン環として、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環[例えば、縮合二環式アレーン(例えば、ナフタレン環などの縮合二環式C10−16アレーン)環などの縮合二乃至四環式アレーン環など]、環集合アレーン環[ビアレーン環(例えば、ビフェニル環、ビナフチル環)などのビC6−12アレーン環など]などが含まれる。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよい。好ましいアレーン環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などが挙げられる。
前記式(1)において、アルキレン基Rとしては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基などのC2−6アルキレン基などが例示できる。
オキシアルキレン基(OR)の数mは、例えば、0〜15の整数(例えば、0〜10の整数)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜8(例えば、1〜8)の整数、好ましくは0〜4(例えば、1〜4)の整数、特に0〜3(例えば、1〜3)程度の整数であってもよく、通常、0〜2の整数(例えば、0又は1)であってもよい。なお、mが2以上の整数である場合、アルキレン基Rの種類は、同一又は異なっていてもよい。また、アルキレン基Rの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
基[HO−(RO)−]は、環Zの適当な位置に置換でき、例えば、環Zがベンゼン環である場合には、フェニル基の2〜4−位(特に、3−位又は4−位)に置換している場合が多く、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5〜8−位に置換している場合が多く、例えば、フルオレンの9−位に対してナフタレン環の1−位又は2−位が置換し(1−ナフチル又は2−ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、1,5−位、2,6−位などの関係で基[HO−(RO)−]が置換している場合が多い。また、環集合アレーン環Zにおいて、基[HO−(RO)−]の置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9−位に結合したアレーン環及び/又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環Zの3−位又は4−位がフルオレンの9−位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの3−位がフルオレンの9−位に結合しているとき、基[HO−(RO)−]の置換位置は、ビフェニル環Zの2−,4〜6−位,2’〜6’−位のいずれであってもよく、通常、4−,5−,6−位,3’−,4’−位、好ましくは4−,6−位,4’−位(特に、6−位)に置換していてもよい。
前記式(1)において、置換基Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−6アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−8シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基);アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基など);アシル基(アセチル基などのC1−6アルキル−カルボニル基など);アルキルオキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルキルオキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジC1−4アルキルアミノ基など);ジアルキルカルボニルアミノ基(例えば、ジアセチルアミノ基などのジC1−4アルキル−カルボニルアミノ基など)などが例示できる。
代表的な置換基Rとしては、C1−6アルキル基(特にメチル基)、C6−10アリール基(特にフェニル基)、C6−8アリール−C1−2アルキル基、C1−4アルコキシ基などが挙げられる。なお、置換基Rがアリール基であるとき、置換基Rは、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。置換基Rの種類は、同一の又は異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよい。
置換数nは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、0〜8程度の整数であってもよく、例えば0〜4の整数、好ましくは0〜3(例えば0〜2)の整数、特に0又は1であってもよい。特に、nが1である場合、環Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、置換基Rがメチル基であってもよい。
置換基Rとしては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−6アルキル基)、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)などが挙げられる。置換基Rはアルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基などのC1−3アルキル基)などである場合が多い。置換数kは0〜4(例えば0〜3)の整数、好ましくは0〜2の整数(例えば0又は1)、特に0である。なお、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよく、kが2以上である場合、置換基Rの種類は互いに同一又は異なっていてもよく、フルオレン環の2つのベンゼン環に置換する置換基Rの種類は同一又は異なっていてもよい。また、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2−位乃至7−位(2−位、3−位及び/又は7−位など)であってもよい。
前記式(1)において、mが0である化合物としては、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−フェニル−3−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C6−12アリール−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−メチル−3−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(C1−4アルキル−ヒドロキシC6−12アリール)フルオレンなどが例示できる。
前記式(1)において、mが1である化合物としては、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)フルオレン類、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[5−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール)フルオレン;9,9−ビス[4−フェニル−3−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−フェニル−4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C6−12アリール−ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール]フルオレン;9,9−ビス[3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−メチル−3−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[C1−4アルキル−ヒドロキシC2−4アルコキシC6−12アリール]フルオレンなどが例示できる。
前記式(1)において、mが2以上の化合物としては、前記mが0又は1の化合物に対応し、オキシアルキレン基(特にオキシC2−4アルキレン基)の繰り返し単位mが2〜5の化合物などが挙げられる。
これらのジオール成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジオール成分は、用途に応じて選択でき、生分解性を向上できる点から、脂肪族ジオール[例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのC2−6アルカンジオール(特にC2−4アルカンジオール)など]であってもよく、耐熱性などを向上できる点から、芳香族ジオール単位(例えば、フルオレン骨格を有するジオール)であってもよい。
ヒドロキシカルボン酸成分としては、前記第2のヒドロキシカルボン酸の項で例示の第2のヒドロキシカルボン酸、この第2のヒドロキシカルボン酸と等価なラクトン成分、酸ハライド又は低級アルキルエステルが例示できる。
ポリエステル樹脂は、脂肪族ポリエステル樹脂(前記第2のヒドロキシカルボン酸の単独又は共重合体、例えば、ポリ乳酸(PLA)などのポリ(ヒドロキシカルボン酸);ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンセバケートなどのポリC2−6アルキレンC3−12アルカノエート)、脂環族ポリエステル樹脂(ポリエチレンシクロヘキサノエートなどのポリC2−6アルキレンC6−12シクロアルカノエートなど)、芳香族ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリテトラメチレンナフタレートなどのポリC2−6アルキレンC6−12アリレート(ホモポリエステル)、C2−6アルキレンC6−12アリレート単位を含むアルキレンアリレート系共重合体(コポリエステル)(例えば、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸を共重合したコポリエステルなど)、9,9−ビスアリールフルオレン単位を含むポリエステル樹脂など)などが例示できる。9,9−ビスアリールフルオレン単位を含むポリエステル樹脂としては、前記式(1)で表される化合物(例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン)と、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコールなど)と、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)及び/又はアレーンジカルボン酸(例えば、テレフタル酸、イソフタル酸など)と、必要によりアルカンジカルボン酸との重合体などが例示できる。
ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸成分とジアミン成分との反応、アミノカルボン酸成分又はそのラクタム成分の反応、ジカルボン酸成分とジアミン成分とアミノカルボン酸成分及び/又はそのラクタム成分の反応により調製できる。
ジカルボン酸成分としては、前記ポリエステル樹脂の項に記載のジカルボン酸成分と同様のジカルボン酸が例示できる。好ましいジカルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸(アルカンジカルボン酸)、例えば、アジピン酸などのC2−16アルカンジ−カルボン酸(例えば、C4−10アルカン−ジカルボン酸など)であってもよい。
ジアミン成分としては、例えば、脂肪族ジアミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状C2−16アルキレンジアミン(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C2−10アルキレンジアミン)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレンジアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状ポリC2−10アルキレンポリアミン)、脂環族ジアミン(例えば、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メンセンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなど)、芳香族ジアミン(例えば、フェニレンジアミン、ビス(4−アミノジフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタンなど)、芳香脂肪族ジアミン(例えば、キシリレンジアミンなど)などが例示できる。これらのジアミン成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ラクタム成分としては、例えば、γ−バレロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、w−ラウロラクタムなどのC4−12ラクタムなどが例示でき、アミノカルボン酸成分としては、例えば、アミノウンデカン酸、アミノドデカン酸などのアミノC4−12アルカン酸、アミノ安息香酸などのアミノアレーンカルボン酸などが例示できる。これらのラクタム成分及びアミノカルボン酸成分も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612など)、脂環族ポリアミド樹脂(ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとアジピン酸との重合体など)、芳香族ポリアミド(ポリアミドMXD(キシリレンジアミンとアジピン酸との重合体)、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸との重合体など)、これらのコポリアミド(ホモポリアミド成分が共重合したコポリアミド、例えば、コポリアミド6/66、コポリアミド6/11、コポリアミド66/12など)が例示できる。ポリアミド樹脂は、N−アルコキシメチル基を有するポリアミド、不飽和高級脂肪酸の二量体であるダイマー酸を重合成分とする重合脂肪酸系ポリアミド樹脂でなどあってもよい。ポリアミド樹脂は、結晶性又は非晶性であってもよく、透明性ポリアミド樹脂(非晶性透明ポリアミド樹脂)であってもよい。これらのポリアミド樹脂は単独で又は二種以上組合せて使用できる。ポリアミド樹脂は、通常、脂肪族ホモ又はコポリアミド樹脂である場合が多い。
ポリエステルアミド樹脂は、前記ポリエステル樹脂の調製において、ジオール成分の一部としてジアミン成分を用いる方法、ジカルボン酸成分及びジオール成分の一部、又はヒドロキシカルボン酸成分及び/又はラクトン成分の少なくとも一部としてラクタム成分及び/又はアミノカルボン酸成分を用いる方法により、高分子主鎖にアミド結合を導入することにより調製できる。
ジアミン成分、ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分としては、前記ポリアミド樹脂の項に記載の成分と同様のジアミン、ラクタム成分及びアミノカルボン酸が例示できる。
ポリカーボネート樹脂は、前記ポリエステル樹脂の項で例示のジオール成分と、炭酸ジフェニル又はホスゲンとを反応させることにより調製でき、例えば、ビスフェノール型ポリカーボネート(ビスフェノールA型、F型、S型、AD型などのポリカーボネート)及び共重合ポリカーボネートなどが例示できる。ポリエステルカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂の調製において、前記ポリエステル樹脂の項で例示のジカルボン酸成分を用いることにより調製できる。
これらの樹脂は、硬化性樹脂(例えば、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのC2−10アルケン−ジカルボン酸などをジカルボン酸成分とする不飽和ポリエステル樹脂など)であってもよいが、生分解性に優れる点から、熱可塑性樹脂が好ましい。
これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの樹脂のうち、少なくともエステル結合を有する樹脂を用いる場合が多く、生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸(PLA)などのポリ(ヒドロキシカルボン酸);PBS、PBSA、PBAT、PCL、ポリエチレンアジペートなどのポリC2−4アルキレンC3−10アルカノエート;これらのポリエステルにおいて、共重合単位としてC2−4アルキレンC6−10アリレート単位を含むコポリエステルなどを用いる場合が多く、これらのポリエステル樹脂に対応するポリエステルアミド樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂などを用いる場合も多い。
これらの樹脂(特に、生分解性樹脂)は、生分解性を有するだけでなく、機械的特性及び成形性にも優れている。
本発明の生分解性樹脂組成物は、前記樹脂と生分解性促進剤とを含んでおり、前記樹脂に対して生分解性促進剤を少量の割合で添加することにより、生分解性を大きく促進できる。そのため、樹脂の機械的特性などをさほど損なうことなく、樹脂の生分解性を大きく向上又は改善できる。また、生分解性促進剤の使用量により樹脂の生分解性をコントロールすることもできる。生分解性促進剤の割合は、樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部(例えば、0.5〜40重量部)、好ましくは1〜35重量部(例えば、3〜30重量部)、さらに好ましくは5〜25重量部(例えば、10〜25重量部)程度であってもよい。なお、生分解性促進剤が共重合体であるとき、生分解性促進剤の割合は、第1のヒドロキシアルカン酸(第1の単量体としての3−ヒドロキシアルカン酸)換算の割合であってもよい。生分解性促進剤の使用量が少なすぎると樹脂の分解性が低下し、多すぎると樹脂の機械的特性が低下する場合がある。
なお、微生物により分解されない非生分解性樹脂に対して生分解性樹脂を添加しても、非生分解性樹脂は分解されることなく、生分解性樹脂だけが微生物的な分解を優先的に受けて分解することが予想される。しかし、ポリ(3−ヒドロキシアルカン酸)を添加すると、生分解性に劣る樹脂であっても有意に、しかも嫌気条件であっても分解できる。そのため、好気条件での堆肥化プロセスのみならず、海洋中での生分解性も向上でき、近年新たな問題となっているマイクロプラスチックの問題も解決できる。
生分解性樹脂組成物は、必要により、種々の添加剤、例えば、前記樹脂の可塑剤、安定剤(抗酸化剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、界面活性剤、滑剤、着色剤、充填剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、分散剤、分散助剤、離型剤などを含んでいてもよい。添加剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
生分解性樹脂組成物は、樹脂と生分解性促進剤との混合物の形態であってもよく、樹脂と生分解性促進剤とが混練されて一体化した粉粒体又はペレットの形態であってもよい。生分解性樹脂組成物は、慣用の成形法(押出成形法、射出成形法などの溶融成形法、キャスティング法など)により、線状、フィルム又はシート状、筒状又はパイプ状、ケーシング、ハウジングなどの三次元形状などの所定の形態の成形体を作製できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、得られたコポリマーの特性及び評価は以下のようにして測定した。
(分子量)
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィ(東ソー(株)製「HLC−8320GPC」)を用い、試料をクロロホルムに溶解させ、ポリスチレン換算で測定した。
(3−ヒドロキシ酪酸単位の割合)
(好気条件での生分解性)
試験体である各ポリエステルについて、JIS K6950のプラスチック−活性汚泥による好気的生分解度試験方法に準拠し、好気条件下で20日後の分解性(分解率)を測定した。なお、「20日間」という処理時間は、一般的なバイオガス化プラントで採用されている処理時間である。
(嫌気条件での生分解性)
試験体である各ポリエステル0.5gをメタン発酵汚泥40mlに添加し、55℃の高温嫌気条件下で48日後の分解性(バイオガス化率)を測定した。
合成例
3−ヒドロキシ酪酸(3HB)40.0gをフラスコに投入し、窒素フロー下、140℃で2時間加熱した。その後、減圧条件下、140℃で24時間加熱して3HBオリゴマーを得た。得られた3HBオリゴマーの数平均分子量は740であった。
比較例1(PBS)
ポリブチレンサクシネートPBS(昭和電工(株)製「ビオノーレ1020MD」)を用いた。このPBS 0.5gをクロロホルム20mLに溶解し、得られた樹脂溶液の全量をシャーレ(直径12cm)に注入し、室温で乾燥することにより、試料として樹脂フィルムを調製した。
比較例2(PBSA)
比較例1のPBSに代えて、ポリブチレンサクシネートアジペートPBSAの市販品(昭和電工(株)製「ビオノーレ3020MD」)を用いる以外、比較例1と同様にして、樹脂フィルムを調製した。
比較例3
比較例1のPBSに代えて、ポリブチレンアジペートテレフタレートPBAT(BASF社製「ECOFLEX」)を用いる以外、比較例1と同様にして、樹脂フィルムを調製した。
実施例1
前記比較例1のPBS 0.4gに対して合成例で調製した3HBオリゴマー0.1gを添加し、クロロホルム20mLに溶解し、得られた樹脂溶液の全量をシャーレ(直径12cm)に注入し、室温で乾燥することにより、試料として樹脂フィルムを調製した。
実施例2及び3
実施例1のPBSに代えて、比較例2のPBSA及び比較例3のPBATを用いる以外、実施例1と同様にして試料を調製した。
実施例及び比較例で得られた樹脂フィルムについて、好気条件下及び嫌気条件下で生分解性を評価したところ、表1に示す結果を得た。
Figure 2018016720
表1に示す結果から明らかなように、好気条件下において、PHBの添加により、生分解性ポリエステルの分解性が著しく促進され、分解率が12倍以上も向上した。また、嫌気条件でも、1.5倍以上も分解率が向上した。
本発明の生分解性促進剤は、エステル結合を有する樹脂に対して高い生分解性を付与できるため、各種の分野、例えば、塗料、インキ、接着剤、粘着剤、帯電防止剤、電気・電子材料、電気・電子部品又は機器、機械部品又は機器(例えば、自動車、航空・宇宙材料、センサなど)などに利用できる。特に、樹脂組成物は、押出成形、射出成形などによって容易に成形でき、各種分野の成形体又は成形部材(例えば、ケーシング、ハウジングなどの成形体)、容器(食品、日用品、電気、電子機器及び部品などの容器)、フィルムやシートなどの包装材料などに好適に利用できる。なお、3−ヒドロキシアルカン酸(例えば、3HB)の重合体は、生体適合性も有するため、医療分野(例えば、医療機器など)にも利用できる。

Claims (9)

  1. 3−ヒドロキシアルカン酸の単独又は共重合体を含む生分解性促進剤。
  2. 3−ヒドロキシアルカン酸が少なくとも3−ヒドロキシC4−12アルカン酸を含む請求項1記載の生分解性促進剤。
  3. 3−ヒドロキシアルカン酸が少なくとも3−ヒドロキシブタン酸を含む請求項1又は2記載の生分解性促進剤。
  4. 数平均分子量が180〜8000のオリゴマーである請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性促進剤。
  5. 連結基として少なくともエステル結合又はアミド結合を有する樹脂と、請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性促進剤とを含む生分解性樹脂組成物。
  6. 樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも一種である請求項5記載の生分解性樹脂組成物。
  7. 樹脂100重量部に対して生分解性促進剤を0.1〜50重量部の割合で含む請求項5又は6記載の生分解性樹脂組成物。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物で形成された成形体。
  9. 連結基として少なくともエステル結合を有する樹脂に、請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性促進剤を添加し、樹脂の生分解を促進する方法。
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