以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷方法の一例を示す。図1(a)は、本例の印刷方法において使用する印刷装置10の構成の一例を示す。印刷装置10は、例えば、本例の印刷方法を実行する印刷システムの少なくとも一部を構成する。
印刷装置10は、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、インクジェットヘッド12、紫外線光源14、キャリッジ16、ホルダ部18、及びヒータ20を備える。また、本例において、印刷装置10は、印刷の対象物である媒体(メディア)50への印刷について、媒体50へ直接インク滴を吐出するのではなく、中間媒体100を介して行う。
また、媒体50としては、例えば、表面に起毛を有する布地の媒体(起毛地テキスタイル)を用いる。このような媒体50としては、より具体的に、タオル地や絨毯等の起毛を有する布帛等を用いることが考えられる。また、例えば座席のシート等を用いることも考えられる。尚、中間媒体100の構成や、中間媒体100を介して行う媒体50への印刷の動作については、後に詳しく説明をする。
インクジェットヘッド12は、インク滴を吐出する印刷ヘッドである。本例において、インクジェットヘッド12は、ソルベントUVインク(SUVインク)のインク滴を中間媒体100へ吐出することにより、符号200を付して示したインクを中間媒体100に付着させる。また、これにより、インクジェットヘッド12は、媒体50へ描くべき画像に応じて予め設定された画像を中間媒体100上に描く。
ここで、ソルベントUVインクとは、例えば、疎水性の有機溶剤を主成分とする溶媒と、紫外線硬化性樹脂とを含むインクである。この場合、疎水性の有機溶剤を主成分とする溶媒とは、例えば、成分の50重量%以上が疎水性の有機有機溶剤である溶媒のことである。紫外線硬化性樹脂とは、例えば、紫外線の照射により硬化するモノマーやオリゴマー等のことである。ソルベントUVインクとしては、例えばカチオン重合型のインク又はラジカル重合型のソルベントUVインク等を好適に用いることができる。
また、ソルベントUVインクは、溶媒を蒸発させた後に紫外線を照射することで媒体に定着するインクの一例である。このようなインクとして、より一般化して示した場合には、例えば、溶媒と、紫外線硬化樹脂とを少なくとも含むインクを用いることができる。また、より具体的に、このようなインクとしては、ソルベントUVインク以外に、例えば溶媒として水性溶媒を含む水性UVインク等を用いることも考えられる。
インクジェットヘッド12は、例えば、予め設定された主走査方向(図中のY方向)へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行うことにより、中間媒体100へインク滴を吐出する。また、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ中間媒体100に対して相対的に移動する副走査動作を主走査動作の合間に行うことにより、中間媒体100においてインクジェットヘッド12と対向する位置を順次変更する。また、主走査動作及び副走査動作を繰り返し行うことにより、中間媒体100の各位置へインク滴を吐出し、画像の描画を行う。
尚、説明を簡略化するため、図1(a)においては、印刷装置10が1個のインクジェットヘッド12のみを備える場合の構成を図示している。しかし、印刷装置10は、例えば、複数のインクジェットヘッド12を備えてもよい。この場合、複数のインクジェットヘッド12のそれぞれは、例えば、互いに異なる色のインク滴を吐出する。
紫外線光源14は、中間媒体100上のインクに紫外線を照射する光源である。また、本例において、紫外線光源14は、ヒータ20と共に中間媒体100上のインクの粘度を高めるための構成であり、インクが完全には硬化しない程度の弱い紫外線を照射することにより、インクの粘度を高める。紫外線光源14としては、例えばUVLED等を好適に用いることができる。
キャリッジ16は、中間媒体100と対向させてインクジェットヘッド12を保持する保持部である。本例において、キャリッジ16は、インクジェットヘッド12と共に紫外線光源14を保持する。また、主走査動作時において、紫外線光源14は、例えば、図示を省略したガイドレールに沿って主走査方向へ移動することにより、インクジェットヘッド12及び紫外線光源14を主走査方向へ移動させる。
ホルダ部18は、インクジェットヘッド12と対向する位置において媒体50及び中間媒体100を保持する保持部材である。また、本例において、ホルダ部18は、内部においてインクジェットヘッド12と対向する位置にヒータ20を収容している。ヒータ20は、中間媒体100においてインクが付着した領域を加熱するヒータであり、加熱によりインク中の溶媒(揮発性有機溶剤)を揮発除去することにより、インクの粘度を高める。
ここで、上記においても説明をしたように、本例において、インクの粘度を高める構成としては、ヒータ20の他に、紫外線光源14も配設されている。しかし、ヒータ20のみでインクの粘度を適切に高められる場合、印刷装置10において、紫外線光源14を省略してもよい。また、インクの粘度を高める動作については、後に更に詳しく説明をする。
また、上記においては、説明の便宜上、印刷装置10の主な構成のみに着目して説明を行った。しかし、上記及び以下に説明をする点を除き、印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を有してよい。例えば、印刷装置10は、インクジェットヘッド12に主走査動作を行わせるための駆動部(主走査駆動部)や、副走査動作を行わせるための駆動部(副走査駆動部)等を更に備えてよい。また、印刷装置10の各部の動作を制御する制御部等を更に備えてよい。
以上の構成により、印刷装置10は、例えば、中間媒体100へインク滴を吐出し、画像を描画する。また、本例の印刷方法においては、その後、中間媒体100上のインクを媒体50に付着させる動作等を行うことにより、媒体50への印刷を行う。そこで、以下、本例の印刷方法の動作について、更に詳しく説明をする。
図1(b)は、本例の印刷方法における動作の一例を示すフローチャートである。本例の印刷方法においては、先ず、メッシュ状のスクリーン102を準備する(スクリーン準備段階S102)。この場合、例えば、枠体に張られた状態のスクリーンを準備することが考えられる。より具体的に、本例においては、例えば、スクリーン102及び支持枠104を有する中間媒体100を準備することにより、スクリーン102を準備する。
ここで、メッシュ状のスクリーン102とは、後に行う増粘段階で粘度が高められたインクが透過可能な孔の配列を有するスクリーンである。スクリーン102としては、例えば、縦糸と横糸で織られた薄い布地等を好適に用いることができる。また、支持枠104は、スクリーン102を張り渡す枠状体である。支持枠104は、例えば中央部が貫通した枠状体であり、この貫通部分にスクリーン102を張り渡すことにより、スクリーン102を保持する。
また、本例において、スクリーン準備段階S102では、準備したスクリーン102について、印刷装置10におけるインクジェットヘッド12と一方の面とを対向させ、かつ、他方の面と媒体50とを接触させた状態で設置する。この場合、より具体的に、例えば、印刷装置10において上面が平坦なホルダ部18を用い、ホルダ部18の上面とスクリーン102の他方の面との間に媒体50を挟むようにして、ホルダ部18で媒体50及び中間媒体100を保持する。また、これにより、ホルダ部18をスクリーン保持部として機能させ、スクリーン102の一方の面とインクジェットヘッド12とを対向させ、かつ、スクリーン102の他方の面と媒体50とを接触させた状態で、ホルダ部18にスクリーン102を保持させる。
尚、スクリーン102としては、例えば、公知のスクリーン印刷法で用いるスクリーンと同一又は同様のスクリーンを好適に用いることができる。例えば、スクリーン102として、ポリエステル等の合成繊維や絹等で織られた紗を好適に用いることができる。また、ポリエステル以外にも、例えば、ナイロンやテトロン等で形成されたメッシュ状のスクリーンを好適に用いることもできる。
また、スクリーン102として、布地等以外に、例えば、金属で形成された金属メッシュ状のスクリーン、様々な網状のスクリーン、又はエッチングにより形成されたメッシュ状のスクリーン等を用いることも考えられる。また、同一又は異種の複数(例えば2枚)のメッシュ状体を重ねたスクリーン102や、各種の補強枠や補強網で補強したスクリーン102等を用いることも考えられる。
スクリーン準備段階S102に続いて、本例の印刷方法では、スクリーン102における一方の面に対してインクジェットヘッド12からインク滴を吐出し、スクリーン102上に画像を描く。(インク吐出段階S104)。この場合、スクリーン102上に画像を描くとは、例えば、最終的に媒体50に対して印刷すべき画像を表現するためのインクの層をスクリーン102上に形成することである。また、画像とは、例えば、絵図や文字等を含む図柄のことである。また、印刷すべき画像とは、例えば、最終的に媒体50に描く画像の一部であってもよい。
インク吐出段階S104に続いて、本例の印刷方法では、スクリーン102上のインクの粘度を高める(増粘段階S106)。また、本例においては、スクリーン102上のインクの粘度を高める増粘手段としてヒータ20を用い、インク中の溶媒(例えば、揮発性有機溶剤)の少なくとも一部を揮発除去する。また、これにより、後に行うインク押込段階S108でスクリーン102を通過可能な粘度の範囲で、インクの粘度を高める。このように構成すれば、例えば、スクリーン102上でインクの滲みが発生すること等を適切に防ぐことができる。
尚、インクの滲み等を適切に防ぐためには、増粘段階S106において、インクの粘度を200mPa・sec以上、好ましくは1000mPa・sec以上にまで高めることが望ましい。そのため、本例においては、溶媒を蒸発させた状態での粘度が200mPa・sec以上になるインクを用いることが好ましい。また、溶媒を蒸発させた状態でのインクの粘度は、1000mPa・sec以上であることがより好ましい。
また、本例においては、上記のように、ヒータ20による加熱に加えて、紫外線光源14により弱い紫外線を照射することも可能である。そのため、増粘段階S106においては、必要に応じて、紫外線光源14によりインクに紫外線を照射してもよい。このように構成すれば、例えば、より短時間でインクの粘度を高めることができる。また、これにより、例えば、インクの滲みをより適切に防ぐことができる。
増粘段階S106に続いて、本例の印刷方法では、粘度が高められたインクをスクリーン102の一方の面側から他方の面側へ押し込む(インク押込段階S108)。また、この場合、より具体的に、例えば、スクリーン102における他方の面と媒体50とを接触させた状態で加圧(押圧)し、インクを押し込むことにより、粘度が高められたインクを媒体50に付着させる。また、これにより、スクリーン102上に描かれた画像を、媒体50に転写する。
ここで、本例においては、媒体50として、例えば、上記のように、表面に起毛を有する布地の媒体等を用いる。この場合、インク押込段階S108において、スクリーン102の他方の面について、例えば、媒体50の表面へ起毛を押さえつける状態で媒体50に接触させる。このように構成すれば、例えば、表面に起毛を有する布地の媒体50に対し、より適切にインクを付着させることができる。
また、インク押込段階S108において、インクの押し込みは、例えば、スクリーン102の一方の面上のインクを他方の面側へ向けて押し込む押込部材を用いて行う。押込部材を用いてインクを押し込むことにより、例えば、媒体50へ向けてインクを適切に押し込むことができる。
このような押込部材としては、例えば、公知のスクリーン印刷法でインクの押し込みに用いる部材等を好適に用いることができる。また、より具体的に、押込部材としては、スクリーン102の一方の面上を摺動させる摺動部材等を用いることが考えられる。この場合、摺動部材としては、例えば、スキージ(ヘラ)やローラ等を好適に用いることができる。
また、摺動部材を用いてインクを押し込む場合、摺動部材の摺動によりスクリーン上のインクが横方向(摺動方向)へ流れること等も考えられる。また、その結果、媒体50において、意図しない箇所にインクが付着し、印刷の品質が低下するおそれもある。
そのため、インク押込段階S108において、このような摺動部材を用いてインクの押し込みを行う場合、スクリーン102の一方の面上のインクと摺動部材との間にフィルムを挟んだ状態で摺動部材を摺動させてもよい。この場合、フィルムは、スクリーン102上のインクを押さえる押さえシートとして機能する。このようなフィルムとしては、インクが付着しにくい素材のフィルムを用いることが好ましい。また、より具体的に、このようなフィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム等を好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、インクが流れることにより生じる影響を適切に軽減することができる。押さえシートとしては、フィルム以外に、メッシュ状のシート等を用いることも考えられる。また、押込部材として、スキージ等以外に、例えばパッド等を用いてもよい。
インク押込段階S108に続いて、本例の印刷方法では、媒体50に付着したインクを媒体に定着させる(インク定着段階S110)。また、本例において、インク定着段階S110では、媒体50上のインクに紫外線を照射することにより、インクを媒体50に定着させる。
また、インク定着段階S110では、スクリーン102を媒体50から離した状態で紫外線を照射して、媒体50にインクを定着させることが好ましい。このように構成すれば、例えば、スクリーン102上に残ったインクがスクリーン102に定着することを防ぎつつ、媒体50上のインクを適切に定着させることができる。また、この場合、例えば、スクリーン102上のインクを洗浄等で除去することがより容易になるため、スクリーン102を再利用することも可能になる。
ここで、インク定着段階S110での紫外線の照射は、例えば、印刷装置10における紫外線光源14とは別の強い紫外線光源を用いて行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、強い紫外線をより適切に照射できる。また、この場合、例えば、媒体50上のより広い領域(例えば媒体50においてインクが付着している領域の全体等)に対し、一括して紫外線を照射すること等もできる。
また、インク定着段階S110での紫外線の照射は、印刷装置10における紫外線光源14を用いて行ってもよい。この場合、インク定着段階S110において、紫外線光源14は、媒体50上のインクに対し、例えば、インクの硬化を完了させる積算強度の紫外線を照射する。
また、紫外線光源14により、例えば増粘段階S106でも紫外線の照射を行う場合、増粘段階S106での紫外線の照射時と、インク定着段階S110での紫外線の照射時とで、紫外線の強度を異ならせることが考えられる。また、例えば、増粘段階S106で紫外線を照射しない場合、インク定着用の光源としてのみ紫外線光源14を用いてもよい。
本例によれば、インク吐出段階S104においてインクジェットヘッド12を用いることにより、例えば、版を用いることなく、印刷すべき画像をスクリーン102上に適切に描くことができる。また、増粘段階S106においてインクの粘度を高めることにより、例えば、スクリーン102上のインクが滲むこと等を適切に防ぐことができる。また、これにより、後のインク押込段階S108において、インクを適切に押し込むことが可能になる。更には、増粘段階S106においてインクの粘度を高めることにより、スクリーン102上のインクの厚みについて、例えば、必要に応じて適切に厚みを持たせることが可能になる。また、これにより、媒体50に対して十分な量のインクを付着させ、例えば、鮮明な発色を得ること等が可能になる。
また、本例のように、表面に起毛を有する布地の媒体50を用いる場合、例えばインクジェットヘッドで直接印刷を行うと、起毛の表面付近にインク浮いたような状態になりやすい。これは、例えば、インク滴の容量は極めて微小であるため、媒体50へ向かって飛翔するインク滴には、起毛を押さえて布地の表面にまで到達するほどの勢いはないためである。そして、この場合、不安定な状態のインクが溜まった状態になるため、インクの滲み等が発生しやすくなる。また、例えば複数色のインクを用いる場合には、色の混ざり方が不適切になり所望の色が適切に表現できないおそれがある。
これに対し、本例によれば、例えば、媒体50の表面の起毛をスクリーン102で押さえつけることにより、起毛の影響を適切に軽減できる。また、これにより、例えば、表面に起毛を有する布地の媒体50に対し、より適切に印刷を行うことができる。
また、例えばインクジェットヘッド12で媒体50に直接印刷を行う場合、媒体50の素材等によっては、手間のかかる前処理や後処理等が必要になる場合がある。より具体的に、例えば、インクが滲みやすい素材の媒体50を用いる場合には、滲み防止のための前処理等が必要になる場合がある。また、例えば昇華インク等を用いて布地の媒体50への印刷を行う場合、インクを発色させるためのスチーミング等の後処理等が必要になる場合がある。また、絨毯等の毛足の長い媒体50や、吸収性の高い媒体50に対しては、このような処理を行ったとしても、適切に印刷を行えない場合がある。
これに対し、本例の場合、従来のスクリーン印刷法と同様にして媒体50にインクを付着させる方法であるため、従来のスクリーン印刷法が適用可能な媒体であれば、手間のかかる前処理や後処理等を行うことなく、適切に印刷を行うことができる。そのため、本例によれば、例えば、様々な媒体50に対し、より簡易かつ適切に印刷を行うことができる。
また、本例において、インク押込段階S108でインクを押し込む動作は、例えば、従来のスクリーン印刷法と同一又は同様に行うことができる。そのため、起毛を有する布の媒体50を用いる場合以外にも、例えば従来のスクリーン印刷法で印刷を行う場合と同様にして、様々な素材や形状の媒体50に対し、適切に印刷を行うことができる。従って、本例によれば、例えば、予め版を作成することなく、様々な媒体50に対し、より適切に印刷を行うことができる。
また、本例においては、更に、ソルベントUVインクを用いることにより、例えば、増粘段階S106でインクの粘度を高める方法と、インク定着段階S110でインクを定着させる方法とを異ならせることができる。また、これにより、例えば、増粘段階S106においてインクの粘度が高まり過ぎることを防ぎつつ、インクの粘度を適切に高めることができる。また、これにより、例えば、インク押込段階S108において、より適切にインクを押し込むことができる。
また、本例の場合、粘度を高めたインクを媒体50に付着させるため、インクが必要以上に媒体50の内部にまで入り込むことを適切に防ぐことができる。また、これにより、媒体50の表面付近に付着するインクの割合を高め、濃い色をより適切に表現することができる。そのため、本例によれば、例えば、発色性の高い印刷をより適切に行うことができる。
また、上記においては、説明の簡略化のため、インク吐出段階S104の動作と、増粘段階S106の動作とを1回ずつ行う場合について、説明をした。しかし、実際の印刷時には、例えば、インク吐出段階S104の動作と、増粘段階S106の動作とを複数回繰り返すことが好ましい。このように構成すれば、例えば、粘度が高められたインクの層を、スクリーン102上に複数層形成することができる。
また、この場合、インク押込段階S108は、複数層のインクの層を媒体50へ向けて押し込む。このように構成すれば、例えば、厚みのあるインクの層をスクリーン102上に適切に形成し、媒体50へ適切に押し込むことができる。また、これにより、例えば、媒体50に対して十分な量のインクを付着させ、鮮明な発色をより適切に得ることができる。また、十分な量のインクを媒体50に付着させることにより、例えば、インクの耐候性を高めること等も可能になる。
尚、インクを媒体50により適切に付着させるためには、例えば、スクリーン102上のインクの厚さがスクリーン102と同程度又はそれ以上になるまで、インク吐出段階S104及び増粘段階S106の動作を繰り返すことが好ましい。また、インクジェットヘッド12から吐出されるインク滴によりスクリーン102上の形成されるインクのドットのサイズについて、必要に応じて大きくすることも考えられる。
また、上記においても説明をしたように、印刷装置10は、例えば、互いに異なる色のインク滴をそれぞれ吐出する複数のインクジェットヘッド12を備えてもよい。この場合、媒体50への印刷は、例えば、複数色のインクを用いて行う。このように構成すれば、例えば、版を用いることなく、高精彩なカラープリントを適切に行うことができる。
また、より具体的に、この場合、例えば、スクリーン準備段階S102の後、色毎に、インク吐出段階S104、増粘段階S106、及びインク押込段階S108を行うこと等が考えられる。この場合、例えば、一の色のインクに対してインク吐出段階S104、増粘段階S106、及びインク押込段階S108の動作を行った後に、他の色のインクに対して、インク吐出段階S104、増粘段階S106、及びインク押込段階S108の動作を行う。また、この場合、インク定着段階S110の動作については、例えば、全ての色のインクについて、まとめて行ってもよい。この場合も、色毎に版を作成することは不要であるため、印刷のコストを適切に抑えることができる。更には、この場合、例えば、異なる色のインクが混ざること等を適切に防ぐことができため、高品質の印刷をより適切に行うことができる。
また、求められる印刷の品質等によっては、例えば、複数色のインクを同時に用いて、各段階の動作を行ってもよい。この場合、インク吐出段階S104において、複数のインクジェットヘッド12を用いて、スクリーン102へインク滴を吐出する。また、その後の動作についても、複数色のインクに対し、同時に行う。このように構成すれば、例えば、より簡略な工程により、複数色のインクを用いた印刷を行うことができる。
尚、従来のスクリーン印刷法において、例えば複数色を用いて印刷を行おうとする場合、色毎に別の版を容易することが必要になる。また、その結果、印刷のコストが大きく上昇することになる。これに対し、本例においては、上記のように、複数色のインクを用いる場合にも、版を用いずに印刷を行うことが可能である。そのため、本例によれば、例えば、複数色のインクを用いた印刷を低いコストでより適切に行うことができる。
続いて、本例の印刷方法において行う各段階の動作について、更に具体的に説明をする。図2は、スクリーン準備段階S102について更に詳しく説明をする図である。図2(a)は、本例において用いる中間媒体100の構成の一例を示す側断面図である。図2(b)は、図2(a)に示した中間媒体100の下面図である。この場合、下面図とは、媒体50と接触する面側から見た中間媒体100を示す図のことである。図2(c)は、ホルダ部18により媒体50及び中間媒体100を保持する様子の一例を示す。
図1に関連しても説明をしたように、本例のスクリーン準備段階S102では、枠体である支持枠104にスクリーン102が張られた中間媒体100を準備することにより、スクリーン102を準備する。また、準備したスクリーン102について、ホルダ部18の上面とスクリーン102との間に媒体50を挟むようにして、ホルダ部18により媒体50及び中間媒体100を保持する。
ここで、本例において、スクリーン準備段階S102でスクリーン102と媒体50とを接触させた後には、例えば、その状態を維持したまま、インク吐出段階S104、増粘段階S106、及びインク押込段階S108の動作を行う。このように構成すれば、例えば、媒体50とスクリーン102との位置関係を保ったまま、各段階の動作を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、媒体50への印刷を高い精度でより適切に行うことができる。
図3は、スクリーン準備段階S102に続いて行う各段階の動作について更に詳しく説明をする図である。図3(a)は、インク吐出段階S104及び増粘段階S106について更に詳しく説明をする図である。
図1に関連しても説明をしたように、本例のインク吐出段階S104では、印刷装置10におけるインクジェットヘッド12からスクリーン102へインク滴を吐出する。また、これにより、例えば図中に符号200を付して示したように、インクをスクリーン102に付着させる。
また、増粘段階S106では、印刷装置10におけるヒータ20でスクリーン102を加熱することにより、スクリーン102上のインク中の溶媒(揮発性有機溶剤等)を揮発除去し、インクの粘度を高める。また、増粘段階S106において、必要に応じて、印刷装置10における紫外線光源14を用いて、スクリーン102上のインクへ弱い紫外線を照射する。
図3(b)は、インク押込段階S108について更に詳しく説明をする図である。本例のインク押込段階S108では、例えばスキージ32を用いて、増粘段階S106で粘度が高められたインクを布地の目に押し込むようにして、スクリーン102上のインクを押し込む。また、これにより、メッシュ状のスクリーン102に対してインクを通過させ、スクリーン102の他方の面と接触している媒体50に対し、インクを付着させる。
ここで、上記においても説明をしたように、スキージ32は、インク押込段階S108で用いる押込部材及び摺動部材の一例である。押込部材としては、例えばローラやパッド等を用いてもよい。この場合、ローラとしては、例えばゴム、金属、又はプラスチックのローラ等を好適に用いることができる。また、パッドとしては、例えば、ゴム等の弾性部材で形成されたパッドを好適に用いることができる。また、インク押込段階S108においては、付着したインクを媒体50に馴染ませるように、押込部材でスクリーン102を介して媒体50を押圧することが好ましい。
また、スキージ32の摺動方向にインクが流れること等によりインクの滲みが発生する場合等には、スクリーン102とスキージ32との間にフィルム等の押さえシートを挟んだ状態で、インクを押し込むことが好ましい。また、特に、例えばスクリーン102上のインクの層が厚い場合や、複数の色のインクを同時に押し込む場合等には、押さえシートを用いることが好ましい。
尚、スキージ32以外の押込部材を用いる場合等において、例えばスクリーン102上を移動させるローラを用いる場合等には、スキージ32でインクを押し込む場合と同様に、フィルム等の押さえシートを用いることが好ましい。一方、押込部材としてパッド等を用いる場合、パッド等を横方向へ動かさないのであれば、例えばインクの層が厚い場合等においても、押さえシートを用いなくてもよい。
図3(c)は、インク定着段階S110について更に詳しく説明をする図である。本例において、インク定着段階S110での紫外線の照射は、例えば図示したように、媒体50上からスクリーン102を外した状態で行う。このように構成すれば、例えば、媒体50上のインクにより適切に紫外線を照射することができる。
また、上記においても説明をしたように、インク定着段階S110での紫外線の照射は、例えば、印刷装置10における紫外線光源14とは別の強い紫外線光源を用いて行うこと等が考えられる。そのため、図3(c)においては、紫外線光源14とは別の紫外線光源42を用いて紫外線を照射する場合の構成を示している。紫外線光源42は、例えば、紫外線光源14よりも強い紫外線を照射することにより、媒体50に付着したインクの硬化を完了させる。この場合、インクの硬化を完了させるとは、例えば、印刷に求められる品質に応じて、十分な積算強度の紫外線をインクの照射することにより、必要な硬さにインクを硬化させることである。
また、紫外線光源42は、例えば、インクジェットヘッド12及び紫外線光源14と共に印刷装置10におけるキャリッジ16(図1参照)に保持されてよい。この場合、紫外線光源42は、例えば、主走査方向への走査を行うことにより、媒体50上の各位置へ紫外線を照射する。また、紫外線光源42は、キャリッジ16上以外の位置に配設されてもよい。また、紫外線光源42としては、例えば、印刷装置10とは別に用意した紫外線照射装置を用いてもよい。
本例によれば、印刷の動作における各段階の動作を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、インクジェットヘッド12及びスクリーン102等を使用して、媒体50に対して適切に印刷を行うことができる。
続いて、本例の印刷方法に対する様々な変形例について、説明をする。先ず、印刷の対象物として使用する媒体50を異ならせた変形例について、説明をする。
上記においては、主に、起毛を有する布地の媒体50に対して印刷を行う場合について、説明をした。しかし、印刷の対象物としては、その他にも、様々な媒体50を用いることも考えられる。例えば、媒体50として、従来のスクリーン印刷法で印刷可能な様々な媒体を用いることが考えられる。より具体的には、例えば、起毛を有する布地以外にも、様々な布地の媒体50を用いることが考えられる。また、例えばTシャツ等の衣類のような、加工後の布地の媒体50を用いることも考えられる。
また、例えば、光沢調又はマット調の印刷用紙(例えば、マット紙等)や和紙等の、表面に凹凸を有する媒体等を用いることが考えられる。また、表面がマット状又は凹凸状の粗面になっている様々な素材(例えば、ガラス、スリガラス、金属、又はプラスチック等)の媒体50を用いることも考えられる。また、媒体50として、立体物を用いること等も考えられる。
これらの媒体50を用いる場合、例えば媒体50の表面の凹凸差が大きくても、従来のスクリーン印刷法と同様に、適切に印刷を行うことができる。一方で、この場合も、上記においても説明をしたように、版を用いる必要はない。そのため、このように構成すれば、例えば、様々な媒体50に対し、低いコストで適切に印刷を行うことができる。
また、上記においては、主に、ソルベントUVインクを用いる場合の例を説明をした。しかし、印刷装置10及び印刷方法の変形例においては、ソルベントUVインク以外のインクを用いることも考えられる。
例えば、図1に示した印刷装置10と同一又は同様の構成において、溶媒を蒸発させた後に紫外線を照射することで媒体50に定着するインクとして、水性UVインク等を用いることも考えられる。また、使用するインクに合わせて印刷装置10の一部を変更することにより、インクジェットヘッド12で用いるインクとして、溶媒を蒸発させることで媒体50に定着するインク等を用いることも考えられる。
この場合、溶媒を蒸発させることで媒体50に定着するインクとは、例えばラテックスインクや水性インク等である。ラテックスインクとは、例えば、ポリマー素材と溶媒とを含み、乾燥によりポリマー素材を媒体に定着させるインクである。このポリマー素材は、例えば水性ポリマー素材である。また、このポリマー素材は、例えば、ゴム状のポリマー素材である。
このようなインクを用いる場合、増粘段階S106では、例えば、インク中の溶媒の一部を揮発除去することにより、インクの粘度を高める。また、インク定着段階S110では、例えば、媒体50上のインク中の溶媒を更に揮発除去することにより、インクを媒体50に定着させる。このように構成すれば、例えば、増粘段階S106において、インクの粘度を適切に高めることができる。また、インク定着段階S110において、インクを媒体50に適切に定着させることができる。
また、使用するインクに合わせて印刷装置10の一部を変更することにより、インクジェットヘッド12で用いるインクとして、紫外線硬化型インク(UVインク)等を用いることも考えられる。この場合、紫外線硬化型インクとは、例えば、紫外線の照射により硬化するインクのことである。紫外線硬化型インクとしては、例えばカチオン重合型のインク又はラジカル重合型のUVインク等を好適に用いることができる。このようなインクを用いる場合、増粘段階S106では、例えば、インクが完全には硬化しない積算強度の紫外線を照射することにより、インクの粘度を高める。また、インク定着段階S110では、媒体50上のインクに更に紫外線を照射することにより、インクを媒体50に定着させる。このように構成すれば、例えば、増粘段階S106において、インクの粘度を適切に高めることができる。また、インク定着段階S110において、インクを媒体50に適切に定着させることができる。
また、上記のインク以外にも、様々なインクを用いることが考えられる。例えば、ラテックスインク以外にも、各種の樹脂を水性溶媒等に分散させたインク等を用いることも考えられる。より具体的には、例えば、熱可塑性樹脂を水性溶媒に分散させた熱可塑性樹脂分散水性インクを用いること等が考えられる。また、熱可塑性のバインダー樹脂及び着色剤を溶媒に分散させたインクや、着色された熱可塑性のバインダー樹脂を溶媒に分散させたインク等を用いることも考えられる。また、求められる印刷に品質によっては、例えば、疎水性の有機溶剤を溶媒とするソルベントインク等を用いることも考えられる。更には、上記の様々なインクの2種類以上を混合した混成インクを用いること等も考えられる。
続いて、様々なインクを用いる場合について行う印刷の動作の変形例について、更に詳しく説明をする。図4は、溶媒を蒸発させることで媒体50に定着するインクであるラテックスインクや水性インク等を用いる場合の印刷の動作の一例を示す。
尚、以下に説明をする点を除き、図4に示した印刷の動作は、図1〜3を用いて説明をした印刷の動作と同一又は同様である。例えば、本変形例においても、図1〜3を用いて説明をした印刷の動作と同様に、スクリーン準備段階S102、インク吐出段階S104、増粘段階S106、インク押込段階S108、及びインク定着段階S110の動作を行って、媒体50への印刷を行う。また、以下に説明をする点を除き、図4において、図1〜3と同じ符号を付した構成は、図1〜3における構成と同一又は同様の特徴を有する。また、本変形例において、スクリーン準備段階S102の動作は、例えば、図1〜3を用いて説明をした場合と同一又は同様に行ってよい。
図4(a)は、本変形例において行うインク吐出段階S104及び増粘段階S106の動作の一例を示す。本変形例のインク吐出段階S104では、溶媒を蒸発させることで媒体50に定着するインクのインク滴を、インクジェットヘッド12により、スクリーン102上へ吐出する。また、増粘段階S106では、ヒータ20でスクリーン102を加熱することでインク中の溶媒の一部を揮発除去することにより、インクの粘度を高める。また、この場合、図中に示すように、例えば、ヒータ20に加え、他の加熱装置22を更に用いてもよい。加熱装置22としては、例えば、赤外線又は遠赤外線を照射する装置等を好適に用いることができる。加熱装置22は、増粘段階S106専用の装置であってもよく、例えば後に行うインク定着段階S110等と兼用して用いる装置であってもよい。
また、加熱装置22は、例えば、印刷装置において、スクリーン102に対してインクジェットヘッド12と同じ側に配設される。また、この場合も、インク中の溶媒の一部を揮発除去することにより、図1〜3を用いて説明をした場合と同一又は同様の粘度にまでインクの粘度を高めることが好ましい。
図4(b)は、本変形例において行うインク押込段階S108の動作の一例を示す。本変形例においても、例えば、図1〜3を用いて説明をした場合と同一又は同様に、インク押込段階S108の動作を行うことができる。また、この場合、必要に応じて、押込部材として用いるスキージ32とスクリーン102との間に、例えば図中に示すようにフィルム等の押さえシート52を挟むことが好ましい。
図4(c)は、本変形例において行うインク定着段階S110の動作の一例を示す。本変形例のインク定着段階S110では、例えば、媒体50からスクリーン102を外した状態で、ヒータ44を用いて媒体50を加熱する。また、これにより、媒体50上のインク中の溶媒を更に揮発除去して、インクを媒体に定着させる。ヒータ44としては、例えば、媒体50の背面側に配設したオーブン等を好適に用いることができる。また、ヒータ44として、増粘段階S106で用いるヒータ20を兼用してもよい。
また、ヒータ44に加え、他の加熱装置46を更に用いてもよい。加熱装置46としては、例えば、赤外線又は遠赤外線を照射する装置を好適に用いることができる。また、加熱装置46として、例えば、増粘段階S106で用いる加熱装置22を兼用してもよい。以上のようにすれば、例えば、ラテックスインクや水性インク等を用いる場合において、媒体50への印刷を適切に行うことができる。
図5は、紫外線硬化型インクを用いる場合の印刷の動作の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図5に示した印刷の動作は、図1〜4を用いて説明をした印刷の動作と同一又は同様である。例えば、本変形例においても、図1〜4を用いて説明をした印刷の動作と同様に、スクリーン準備段階S102、インク吐出段階S104、増粘段階S106、インク押込段階S108、及びインク定着段階S110の動作を行って、媒体50への印刷を行う。また、以下に説明をする点を除き、図5において、図1〜4と同じ符号を付した構成は、図1〜4における構成と同一又は同様の特徴を有する。
図5(a)は、本変形例において行うスクリーン準備段階S102の動作の一例を示す。本変形例において、スクリーン準備段階S102の動作は、例えば、図1〜4を用いて説明をした場合と同一又は同様に行ってよい。但し、本変形例のように、紫外線硬化型インクを用いる場合、印刷装置において、ヒータ20(図1参照)を用いる必要はない。そのため、本変形例で用いる印刷装置において、スクリーン102を加熱するヒータ20は省略してよい。
図5(b)は、本変形例において行うインク吐出段階S104及び増粘段階S106の動作の一例を示す。本変形例のインク吐出段階S104においては、紫外線硬化型インクを、インクジェットヘッド12により、スクリーン102上へ吐出する。また、増粘段階S106においては、紫外線光源14を用いて、インクが完全には硬化しない積算強度の紫外線を照射することにより、インクの粘度を高める。この場合も、図1〜4を用いて説明をした場合と同一又は同様の粘度にまでインクの粘度を高めることが好ましい。
図5(c)は、本変形例において行うインク押込段階S108の動作の一例を示す。本変形例においても、例えば、図1〜4を用いて説明をした場合と同一又は同様に、インク押込段階S108の動作を行うことができる。また、この場合、必要に応じて、例えば図中に示すように、スキージ32とスクリーン102との間にフィルム等の押さえシート52を挟むことが好ましい。
図5(d)は、本変形例において行うインク定着段階S110の動作の一例を示す。本変形例のインク定着段階S110では、例えば、媒体50からスクリーン102を外した状態で、紫外線光源48を用いて、媒体50上のインクに更に紫外線を照射する。また、これにより、インクの硬化を完了させて、インクを媒体50に定着させる。紫外線光源48は、例えば増粘段階S106で用いる紫外線光源14とは別の光源であってよい。また、紫外線光源48として、例えば紫外線光源14を兼用すること等も考えられる。以上のようにすれば、例えば、紫外線硬化型インクを用いる場合において、媒体50への印刷を適切に行うことができる。
続いて、印刷の動作の更なる変形例について、説明をする。上記においては、インク押込段階S108の動作について、主に、単にスキージ32等でインクを押し込む場合について、説明をした。しかし、インク押込段階S108においては、例えば、スクリーン102を振動させつつ、スクリーン102の一方の面側から他方の面側へインクを押し込むことがより好ましい。また、この場合、スクリーン102と共に、媒体50も振動させることが好ましい。
このように構成すれば、例えば、スクリーン102に対し、インクをより円滑に通過させることができる。また、これにより、媒体50により適切にインクを付着させることができる。また、例えば布地の媒体50のように、少なくともある程度のインクを吸収する媒体に対しては、振動を加えることにより、インクの粘度が高い場合にも、媒体50の内部へ適度にインクを浸透させることができる。また、これにより、媒体50に対し、より適切にインクを付着させることができる。
また、この場合、例えば、スキージ等の押込部材を振動させつつインクを押し込むことにより、スクリーン102を振動させることが考えられる。また、この場合も、押込部材として、例えば、ローラ又はパッド等のスキージ以外の部材を用いてもよい。また、振動の周波数は、インクの粘度やスクリーン102の特性等に応じて、インクの押込効率がよくなる周波数に設定することが好ましい。より具体的に、振動の周波数は、例えば数〜数十kHz(例えば、1〜90kHz、好ましくは、5〜50kHz程度)とすることが好ましい。
図6は、印刷の動作の更なる変形例を示す図であり、スクリーン102を振動させる場合の動作の例を示す。図6(a)、(b)、(c)は、インク押込段階S108においてスクリーン102を振動させる場合について、押込部材として振動ローラ34、振動パッド36、及び振動スキージ38を用いる場合の動作の一例を示す。振動ローラ34、振動パッド36、及び振動スキージ38は、予め設定された周波数で振動するローラ、パッド(例えばゴムパッド等)、及びスキージであり、例えば、振動付加手段(バイブレータ)から受ける振動に応じて、スクリーン102においてインクが付着している面と垂直な方向へ振動する。また、これらの部材は、振動を加えつつインクを押し込むことでスクリーン102から媒体50へ画像を転写する振動付加転写手段の一例である。
尚、以下に説明をする点を除き、図6に示したインク押込段階S108の動作は、図1〜5を用いて説明をした印刷の動作におけるインク押込段階S108の動作に代えて行うことができる。また、以下に説明をする点を除き、図6に示したインク押込段階S108の動作は、図1〜5を用いて説明をしたインク押込段階S108の動作と同一又は同様である。また、以下に説明をする点を除き、図6において、図1〜5と同じ符号を付した構成は、図1〜5における構成と同一又は同様の特徴を有する。
各図中に示すように、本変形例のインク押込段階S108では、振動ローラ34、振動パッド36、又は振動スキージ38を振動させつつ、スクリーン102の一方の面側から他方の面側へインクを押し込む。また、これにより、メッシュ状のスクリーン102に対して粘度が高められたインクを通過させ、媒体50にインクを付着させる。この場合、上記においても説明をしたように、例えば、スクリーン102に対し、インクをより円滑に通過させることができる。また、布地の媒体50等を用いる場合には、例えば、インクの粘度が高い場合にも、媒体50の内部へ適度にインクを浸透させることができる。
また、タオル地や絨毯等のような起毛を有する媒体50を用いる場合、振動を加えつつ圧力をかけてインクを押し込むことにより、例えば、起毛の間等へのインクの強制侵入を促進することもできる。また、これにより、媒体50の奥にまで適切にインクを浸透させ、内部まで適切に着色(染色)することができる。更には、起毛を有する媒体50に限らず、例えば被印刷面に凹凸を有する媒体50(特に、凹凸が激しい媒体50)等を用いる場合等にも、同様にして、媒体50により適切にインクを付着させることができる。
そのため、このように構成すれば、例えば、従来のインクジェットプリンタでは印刷が困難であった媒体50に対しても、より適切に印刷を行うことができる。また、この場合も、版を用いることなく印刷が可能である。そのため、例えば複数色のインクを用いて印刷を行う場合にも、コストを抑えつつ、高精細な印刷をより適切に行うことができる。
ここで、上記においては、スクリーン102において印刷がされる面(プリント面)と、媒体50においてスクリーン102を介してインクが付着する面(被転写面)との関係について、スクリーン102におけるプリント面の裏側である非プリント面と媒体50の被転写面とが接触するように媒体50とスクリーン102とを重ね合わせる場合について、説明をした。この場合、この状態でインク押込段階S108においてスクリーン102に圧力をかけることにより、メッシュ状のスクリーン102に対してインクを通過させ、媒体50への画像の転写を行うことになる。また、このような方法は、例えば、印刷に使用するインク(媒体50に付着させるインク)が多い場合に特に好ましいと考えられる。
しかし、インクジェットヘッド12及びスクリーン102を用いて印刷する方法としては、例えば、スクリーン102のプリント面と媒体50の被転写面とが直接接触するように、媒体50とスクリーン102とを重ね合わせる方法等も考えられる。この場合、例えば、上記において説明をした印刷の動作におけるインク押込段階S108の動作に代えて、スクリーン102のプリント面と媒体50の被転写面との直接的な接触により画像を転写する転写段階の動作を行うことが考えられる。また、より具体的に、転写段階においては、例えば、増粘段階S106で粘度が高められたインクを媒体50に転写する動作として、スクリーン102のプリント面と媒体50とを接触させた状態でスクリーン102を媒体50に押し付けることにより、粘度が高められたインクを媒体50に付着させる。
図7は、転写段階の動作の一例を示す。尚、以下に説明をする点を除き、図7において、図1〜6と同じ符号を付した構成は、図1〜6における構成と同一又は同様の特徴を有する。また、以下において説明をする転写段階の動作は、例えば、図1〜6を用いて説明をした印刷の動作において、インク押込段階S108の動作に代えて行うことができる。
図7(a)は、増粘段階S106においてヒータ20を用いる場合について、転写段階の動作の一例を示す。増粘段階S106においてヒータ20を用いる場合とは、例えば、ソルベントUVインク、水性UVインク、ラテックスインク、又は水性インク等を用いる場合のように、増粘段階S106においてスクリーン102を加熱する場合のことである。図7(b)は、増粘段階S106においてヒータ20を用いない場合について、転写段階の動作の一例を示す。増粘段階S106においてヒータ20を用いない場合とは、例えば、紫外線硬化型インクを用いる場合のように、増粘段階S106において加熱以外の方法でインクの粘度を高める場合のことである。
図7(a)、(b)のいずれに示した場合においても、転写段階では、スクリーン102のプリント面と媒体50の被転写面とが接触するように、スクリーン102と媒体50とを重ねる。また、この状態で、スキージ32等を用いてスクリーン102に圧力を加え、スクリーン102上のインクを媒体50に付着させる。また、これにより、スクリーン102上の画像を媒体50へ転写する。この場合、スキージ32等は、転写に用いる転写部材の一例である。転写部材としては、例えばローラやパッド等を用いてもよい。
また、この場合、スキージ32で押さえることで媒体50にインクを馴染ませた後、媒体50にインクを定着させる。より具体的には、例えば、この場合、例えば、媒体50からスクリーン102を外した後に、図1〜6を用いて説明をしたインク定着段階S110と同一又は同様の動作を行うことにより、使用するインクに合わせた方法で、媒体50にインクを定着させる。
このように構成した場合も、例えば、転写段階の前に行う増粘段階S106でインクの粘度を高めることにより、インクの粘度を転写に適した粘度に適切に高めることができる。また、その後に転写段階の動作を行うことにより、媒体50への画像の転写を適切に行うことができる。また、この場合、メッシュ状のスクリーン102を用いて転写を行うことにより、例えば、転写段階での転写時において、余分なインクをスクリーン内やスクリーンの他方の面側へ吸収することもできる。更には、転写段階の後にインク定着段階S110の動作を行うことにより、媒体50にインクを適切に定着させることができる。
そのため、このように構成すれば、例えば、直接的な転写による印刷を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、様々な素材や形状の媒体50に対し、適切に印刷を行うことができる。
尚、転写段階の動作により媒体50にインクを付着させる場合においても、スキージ32に代えて、ローラやパッド等を用いてもよい。また、例えば図6を用いて説明をした場合と同様に、振動ローラ34、振動パッド36、又は振動スキージ38等を用いてもよい。このように構成すれば、例えば、媒体50に対してインクをより適切に馴染ませることができる。また、これにより、例えば、媒体50により適切にインクを付着させることができる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。