[第一の実施形態]
以下、図1から図4を参照しつつ、本発明に係るインクジェットプリンタの第一の実施形態について説明する。
まず、図1に示すように、本実施形態において、インクジェットプリンタは、シリアルヘッド方式のインクジェットプリンタであり、プリンタ本体1と、プリンタ本体1を下方から支持する支持台2とを備えている。プリンタ本体1には、記録媒体Pを非記録面から支持するプラテン11がプリンタ本体1の長手方向に延在するように配設されている。プラテン11の設けられている領域は、画像記録を行う記録領域とされ、記録媒体Pは記録媒体搬送機構28(図4参照)によりプラテン11の上を所定の搬送方向である副走査方向Bに搬送されるようになっている。
プラテン11の上方であって記録媒体Pの副走査方向Bの上流にはプリンタ本体1の長手方向に延在する棒状のガイドレール3が設けられている。このガイドレール3には、キャリッジ4が支持されており、キャリッジ4はキャリッジ駆動機構29(図4参照)により副走査方向Bと直交する主走査方向Aをガイドレール3に沿って往復移動するようになっている。
キャリッジ4には、本実施形態におけるインクジェットプリンタで使用される各色(例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のインクを記録媒体Pに対して吐出する記録ヘッド5が搭載されている。イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の4つの記録ヘッド5によりヘッドユニット6,7が構成されており、本実施形態においては、2つのヘッドユニット6,7が副走査方向Bに位置をずらして配置されている。なお、インクジェットプリンタで使用されるインクは例示したものに限定されず、例えば、ライトイエロー(LY)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC)、その他白インクや透明インク等の各色のインクを使用することもできる。この場合には、各色に対応した記録ヘッドがキャリッジに搭載される。また、各記録ヘッド5の数、及びヘッドユニットの数はここに例示したものに限定されず、さらに多くの数の記録ヘッド、ヘッドユニットをキャリッジに搭載してもよい。
記録ヘッド5には、インクを吐出する複数のノズル8(図3参照)が副走査方向Bに沿って配列されており、記録ヘッド5のノズル8が形成された記録媒体Pと対向する面はノズル面9(図3参照)とされている。なお、ノズル面9には、インクが付着し難いように、FEP(フッ化エチレンプロピレン樹詣)等によるフッ素加工処理等の撥インク処理が施されていることが好ましい。
各記録ヘッド5の内部には、例えば、アクチュエータとして電圧を印加することにより変形する圧電素子としてのピエゾ素子(図示せず)が配設されている。このピエゾ素子に駆動電圧を印加することによってピエゾ素子を変形させ、ノズル8からインクを吐出させるようになっている。
なお、ノズル8の先端部ではインクがノズル8の内側に引き込まれて曲面形状(以下、メニスカスと称す)を形成するようになっており、この適正なメニスカスが形成されていると正常なインク吐出を行うことができるようになっている。
ここで、本実施形態に用いられるインクについて説明する。インクを硬化させる際にはインクに含まれる重合性化合物を重合反応させるが、本実施形態において画像記録に用いられるインクは、重合性化合物として活性化エネルギー線硬化性化合物を含んでおり、重合反応を開始させる活性化エネルギーとして紫外線を使用した紫外線硬化性インクである。
紫外線硬化性インクには、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル硬化性インクとカチオン重合性化合物を含むカチオン硬化性インクとに大別されるが、どちらのインクも本実施の形態に用いられるインクとして適用可能である。また、ラジカル硬化性インクとカチオン硬化性インクとを複合させたハイブリッド型インクを本実施の形態に用いられるインクとして適用してもよい。
しかしながら、酸素による重合反応の阻害が少ない又は無いカチオン硬化性インクのほうが機能性や汎用性に優れるため、本実施の形態では、特に、カチオン硬化性インクを用いている。本実施の形態に用いられるカチオン硬化性インクは、具体的に、少なくともオキセタン化合物、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物などのカチオン重合性化合物と、光カチオン開始剤と、色材とを含む混合物であり、上記の紫外線の被照射により硬化する性質を具備するものである。
キャリッジ4の記録ヘッド5の主走査方向Aにおける両側部には、ノズル8から記録媒体Pに吐出されたインクに対して紫外線を照射してインクを硬化させる紫外線照射装置10が設けられている。
キャリッジ4の移動可能範囲であって記録領域の外側一端には、記録ヘッド5のノズル8及びノズル面9のクリーニングや適正なメニスカスの形成(以下、メンテナンス動作と称す)をするインク拭き取り装置12が設けられている。ここで、本実施形態のインクジェットプリンタでは、所定回数の画像記録が行われると、キャリッジ4をインク拭き取り装置12の所定の位置まで移動させてメンテナンス動作を行うようになっている。なお、メンテナンス動作に移行するタイミングは所定回数の画像記録には限定されず、例えば、画像記録開始時から所定の時間が経過したときや所定枚数の画像記録を行うごとにメンテナンス動作を行うようにしてもよい。また、ユーザが記録ヘッド5のメンテナンス動作を行うタイミングを任意に設定できるようにしてもよい。
図2に示すように、インク拭き取り装置12は、多角形の箱型部材13を有しており、箱型部材13の上面中央には、開口部14が形成されている。開口部14からは、インクを吸収するインク吸収体15が露出するようになっている。
箱型部材13の内部であって副走査方向Bの両端には、インク吸収体15を送り出す送り出し軸16とロール軸駆動機構30(図4参照)により回転駆動されてインク吸収体15を巻き取る巻き取り軸17とが、それぞれ主走査方向Aに延在して配設されている。この送り出し軸16には、長尺なシート状のインク吸収体15がロール状に巻回されている。インク吸収体15は、複数のガイドローラ18により誘導されて開口部14から露出し、さらに複数のガイドローラ18により誘導されて巻き取り軸17に巻き取られるようになっている。開口部14から露出されたインク吸収体15は、メンテナンス動作時に記録ヘッド5のノズル面9と対向するようになっている。そして、インク吸収体15、前述の送り出し軸16、巻き取り軸17、ガイドローラ18及びロール軸駆動機構30によりインク吸収体移動装置19が構成されるようになっている。
また、インク吸収体15は、少なくとも各ヘッドユニット6,7を構成する複数の記録ヘッド5のノズル面9の全体を覆うことが可能な大きさ、すなわち、本実施形態においては各ヘッドユニット6,7において主走査方向Aのノズル面9の幅寸法よりも大きな幅寸法となるように形成されている。
インク吸収体15は、0.5デニール以下の繊度を有すような極細繊維である高密度繊維から形成されており、高密度繊維は、ポリエステル、アクリル、ナイロン等のうちいずれか一つあるいはこれらを組み合わせた材料により構成されている。このように、インク吸収体15は高密度繊維により形成されているため、その表面に接触するものを吸着しやすく、インクの粘度や濡れ性に関わらず記録ヘッド5のノズル8の先端部からインクを速やかに吸収することができる。すなわち、本実施形態におけるインク吸収体15は、例えば、紫外線硬化性インク、その他、油系やソルベント系等、通常使用されるインクよりも高粘度で濡れ性の高いインクであっても、ノズル8の先端部から吐出されたインクを確実に吸収することができるようになっている。
送り出し軸16と巻き取り軸17との間であって、インク吸収体15の下方には、支持台20が設けられており、この支持台20の下端部には、主走査方向Aに延在している支持軸21が、支持台20が走査方向Bに回動自在であるように取り付けられている。箱型部材13の副走査方向Bに平行な両側面の上方には、図2に示すように、箱型部材13の副走査方向Bに平行な両側面には、記録ヘッド5に対応する中央部分が記録ヘッド5のノズル面9とほぼ平行となるように水平方向に延在されるとともに、両端部が下方に折曲された形状を有しているガイド孔22が形成されている。なお、図3に示すように、ガイド孔22の両端部は、待避領域Cとされ、インク拭き取り装置12を動作させていない場合やインク拭き取り装置を動作させているときでキャリッジ4を移動させている場合等に後述する押し付け部材23を待機させている領域であり、キャリッジ4を移動させてきた際に記録ヘッド5の先端が押し付け部材23に直接当たらないようになっている。
また、図2に示すように、支持台20の上端部には、インク吸収体15をノズル面9に押し付ける押し付け部材23が上下動自在に取付けられており、押し付け部材23の両側上方には、ガイド軸24がガイド孔22に係合して取付けられている。支持台駆動機構31(図4参照)により支持台20が揺動動作されると、この支持台20の揺動動作に伴って、押し付け部材23が揺動するようになっている。これにより、押し付け部材23のガイド軸24がガイド孔22に誘導されるとともに、押し付け部材23が支持台20に対して上下動しながら、インク吸収体15の裏面を副走査方向Bに沿って移動するようになっている。なお、本実施形態においては、支持台20、支持軸21、ガイド孔22、ガイド軸24及び支持台駆動機構31から支持台移動接触装置25が構成されている。
本実施形態において、押し付け部材23は、図2及び図3に示すように、薄板状部材を湾曲させることにより断面形状円弧状に形成されており、押し付け部材23には、複数のスリット26が幅方向に所定間隔をもって形成されている。また、押し付け部材23の幅寸法は、インク吸収体15の幅寸法に対して少なくとも同等以上の長さに形成されており、インク吸収体15を適度な圧力で記録ヘッド5のノズル面9に対して均一に押し付けることができるようになっているとともに、支持台20を揺動させて押し付け部材23を副走査方向Bに一回往復移動させることによって、押し付け部材23によりインク吸収体15をノズル面9の全域にわたって接触させることができるようになっている。ここで、インク拭き取り装置12は、インク吸収体15をノズル面9に押し付ける押し付け部材23を備えているので、インク吸収体接触装置ともいう。なお、押し付け部材23は、インク吸収体15をノズル面9に対して均一に押圧することができるものであればよく、その形状等はここに例示したものに限定されない。
また、押し付け部材23は、ポリプロピレン、ポリエチレン、4−フッ化エチレン、4,6−フッ化プロピレンのうちいずれか一つの材料により形成されている。このような材料を使用している押し付け部材23は、ノズル面9に接触させた際に、例えばカチオン系の紫外線硬化性インク等のような有機系溶剤を含むインクが付着しても膨潤したり溶解することなく長年使用することができるようになっている。
その他、キャリッジ4の移動可能範囲であって記録領域の外側他端には、図示しないインク供給路を介して、記録ヘッド5に各色のインクを供給するインクタンク27が設けられている。また、インク供給路の途中には、インクタンク27から記録ヘッド5に対してインクを送液する送液ポンプ34(図示せず)が設けられている。これにより、本実施形態に用いられるような高粘度の濡れ性の高いインクであっても確実にインクタンク27から記録ヘッド5に送液することができるようになっている。
また、本実施の形態に用いられる記録媒体Pとしては、通常のインクジェットプリンタに適用される普通紙,再生紙,光沢紙などの各種紙,各種布地,各種不織布,樹脂,金属,ガラスなどの材質からなるものが適用可能である。また、記録媒体Pの形態としては、ロール状、カットシート状、板状などが適用可能である。
さらに、本実施の形態に用いられる記録媒体Pとして、樹脂により表面を被覆した各種紙,顔料を含むフィルム,発泡フィルム等の公知の記録媒体も適用可能である。
次に、図4を参照しつつ、本実施形態におけるインクジェットプリンタの制御構成について説明する。
インクジェットプリンタは、例えばCPU(Central Processing Unit)、各種の処理プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)、各種データ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)(いずれも図示せず)等から構成されインクジェットプリンタの各部を制御する制御部32を備えている。制御部32は、ROMに記録された処理プログラムをRAMの作業領域に展開してCPUによりこの処理プログラムを実行するようになっている。なお、本実施形態において、制御部32は、後述するように、前記インク拭き取り装置12を制御するメンテナンス制御部を兼ねるようになっている。
制御部32には、インクジェットプリンタに対して電力を供給する電源(図示せず)が接続されている。
また、インクジェットプリンタは、記録ヘッド5のメンテナンス動作を行うタイミングや画像記録条件等を設定、入力する設定手段としての入力部33を有しており、入力部33から入力された情報は、制御部32に送られるようになっている。入力部33は、例えばキーボードや操作パネルであり、ユーザは入力部33を操作することにより各種の設定を行うことができるようになっている。
さらに、制御部32は、キャリッジ駆動機構29を制御してキャリッジ4を主走査方向Aに往復移動させるとともに、キャリッジ4の動作に合わせて記録媒体Pの搬送と停止とを繰り返し、記録媒体Pを間欠的に副走査方向Bに搬送させるように、記録媒体搬送機構28を制御するようになっている。
また、制御部32は、記録ヘッド5を動作させて記録ヘッド5から記録媒体P上に所定量のインクを吐出させるとともに、紫外線照射装置8を制御して記録媒体Pに着弾したインクに対して紫外線光源から紫外線を照射させ、インクを硬化定着させて所定の画像を形成させるようになっている。
詳細には、制御部32は、図示しない外部装置や入力部33等から入力された画像情報に基づいた駆動波形を記録ヘッド5に出力するようになっている。そして、制御部32は、この駆動波形に基づき記録ヘッド5に駆動電圧を印加し、駆動制御するようになっている。ここで駆動波形とは、ピエゾ素子に電圧を印加してノズル8からインクを吐出する波形であり、ノズル8内を負圧状態にしてノズル8の先端にメニスカスを形成するオン波形と、ノズル8内のインクを押圧してノズル8の先端からインクを吐出させるオフ波形とからなっている。図5(a)に駆動波形の例を示す。
また、制御部32は、キャリッジ駆動機構29を制御してキャリッジ4をインク拭き取り装置12に移動させ、記録ヘッド5のメンテナンス動作を行わせるようになっている。本実施形態におけるメンテナンス動作を、以下説明する。
制御部32は、インク拭き取り装置12の支持台駆動機構31を駆動させることにより、インク吸収体15の裏面から押し付け部材23を押し当て、インク吸収体15を記録ヘッド5のノズル面9に押し付ける。そして、制御部32は、ノズル面9にインク吸収体15が接触しているときに、記録ヘッド5を動作させてインク吸収体15と接触しているノズル8からインクを吐出させる。ノズル8の先端部から吐出されたインクは、インク吸収体15の毛細管現象により、ノズル面9に付着したインクと共にインク吸収体15に確実に吸収される。これにより、ノズル8及びノズル面9に付着したインクを除去するクリーニングを行うとともに、ノズル8の先端部に適正なメニスカスを形成することができるようになっている。
さらに、制御部32は、押し付け部材23をインク吸収体15の裏面よりノズル面9に押し当てながら副走査方向Bに移動させ、メンテナンス動作を繰り返し、ノズル面9及びノズル8のクリーニング及び適正なメニスカスの形成を行うようになっている。
また、制御部32は、ロール軸駆動機構30を駆動させることにより適宜インク吸収体15を巻き取り軸17に巻き取らせるようになっている。本実施形態においては、開口部14から露出したインク吸収体15の裏面から押し付け部材23が一度押し当てながら移動すると、インク吸収体15のインク未吸収部分を開口部14から露出させるようになっている。
次に、本実施形態における作用について説明する。
インクジェットプリンタの電源がオンとなると、電源からインクジェットプリンタの各部に対して給電が行われる。インクジェットプリンタに所定の画像情報が送られ、記録媒体Pが記録領域における所定の位置まで搬送されると、キャリッジ4がガイドレール3に沿って記録媒体Pの直上を往復移動する。
そして、キャリッジ4の移動中に、制御部32は、図示しない外部装置や入力部33等から入力された画像情報に基づいた駆動波形を記録ヘッド5に出力し、記録ヘッド5を駆動制御して各ノズル8から記録媒体Pに向けてインクを吐出させる。
さらに、制御部32が紫外線照射装置10を制御することにより紫外線照射装置10から記録媒体P上に着弾したインクに対して紫外線が照射される。このとき、キャリッジ4の移動方向の各ヘッドユニット6,7を構成している記録ヘッド5よりも下流側にある紫外線照射装置10から照射される紫外線により、各ヘッドユニット6,7を構成している記録ヘッド5から吐出されたインクが速やかに硬化し、記録媒体P上に定着する。
その後、インクジェットプリンタが前記各動作を繰り返すことにより、記録媒体P上に画像が記録される。
所定回数の画像記録が行われると、制御部32は、キャリッジ4をインク拭き取り装置12の所定の位置まで移動させる。そして、制御部32は、インク拭き取り装置12の各部を動作させることにより、記録ヘッド5のノズル8及びノズル面9のメンテナンス動作を行う。
具体的には、制御部32は、キャリッジ4をインク拭き取り装置12の上方に移動させ、インク吸収体15と対向する位置にヘッドユニット6を構成する記録ヘッド5のノズル面9が位置するように制御する。そして、制御部32は、支持台駆動機構31を動作させ、図3に示すように、押し付け部材23を待避位置からガイド孔22に沿って移動させる。記録ヘッド5のノズル面9と押し付け部材23が対向する位置では、押し付け部材23が裏面からインク吸収体15に当接することによってインク吸収体15がノズル面9の一端部分に密着される状態となる。このとき、制御部32は、インク吸収体15と接触しているノズル8からインクを吐出させ、ノズル8及びノズル面9に付着したインクをインク吸収体15に吸収させると共に、ノズル8の先端部に適正なメニスカスを形成する。
なお、制御部32は、ノズル面9にインク吸収体15が接触しているときにノズル8からインクを吐出させるように制御するものであるが、これに限定されず、制御部32が記録ヘッド5に予備駆動波形を入力し、ノズルの先端のインクを揺動するようにしてもよい。ここで予備駆動波形とは、ノズルの先端のインクを揺動させるが、吐出には至らないオン波形とオフ波形とをいう。記録ヘッド5に予備駆動波形が入力されると、ノズルの先端のインクが揺動してインク吸収体と接触し、毛管現象により接触したインクがインク吸収体に吸収されるようになっている。
図5(b)に、予備駆動波形の例を示す。予備駆動波形は、駆動波形と同様に、ノズル8内を負圧状態にしてノズル8の先端にメニスカスを形成するオン波形と、ノズル8内のインクを押圧してノズル8の先端からインクを吐出させるオフ波形とからなっている。予備駆動のオン波形は、駆動波形のオン波形と同じ波形であり、インクを吐出するときと同様、ノズル8の先端にメニスカスを形成する。一方、予備駆動のオフ波形は、立ち上がるタイミングが駆動波形のオフ波形よりも遅いため、ノズル8の先端にメニスカスを形成してからインクを押圧するまでの時間がインクを吐出するときよりも長く設定されており、また電圧がかかる時間が短いため、ノズル8内のインクを押圧する時間がインクを吐出するときよりも短く設定されている。
そして、制御部32は、ガイド孔22に沿って押し付け部材23を往復移動させることによりインク吸収体15とノズル面9とが密着する部分を移動させ、インク吸収体15と接触しているノズル8からインクを吐出させる。制御部32は、以上のメンテナンス動作を繰り返し行い、ノズル面9とノズル8の全面のメンテナンスを行う。
その後、制御部32は、押し付け部材23を待避位置Cに位置させた状態で、インク吸収体15と記録ヘッド5のノズル面9とを離隔させる。さらに、制御部32がロール軸駆動機構30を動作させることにより、インク吸収体15が巻き取り軸17に巻き取られる。これにより、インク吸収体15のインク未吸収部分が開口部14から露出する。
続いて、制御部32は、キャリッジ4をインク吸収体15の位置に合わせてヘッドユニット6の幅だけ移動させて、ヘッドユニット7に対して同様にインク拭き取り装置12によるメンテナンス動作を行う。このようにして、ヘッドユニット6,7ごとに押し付け部材23の移動とインク吸収体15の移動とキャリッジ4の移動を順に行わせる動作を繰り返すことにより、インク拭き取り装置12によるメンテナンス動作が完了する。
そして、押し付け部材23を待避位置Cに位置させた状態で、インク吸収体15と記録ヘッド5のノズル面9とを離隔させ、この状態で、ロール軸駆動機構30を動作させ、インク吸収体15を巻き取り軸17に巻き取らせ、インク吸収体15のインク未吸収部分を開口部14から露出させる。
このようにインク拭き取り装置12での一連のメンテナンスを完了させると、再びキャリッジ4は記録領域に戻り、画像記録を再開させる。
以上のように、本実施形態におけるインクジェットプリンタでは、インク吸収体15を押し付け部材によりノズル8に密着させた状態でインクを吐出させる。これにより、高粘度で濡れ性の高いインクにおいても、ノズル8とノズル面9に付着したインクをインク吸収体15に吸収させて除去すると共に、ノズル8の先端部に適正なメニスカスを形成することができる。その結果、記録ヘッド5の各ノズル8から正常にインクを吐出させることができ、高精細な画像記録を行うことができる。
また、インク拭き取り装置12のインク吸収体15にノズル8の先端部のインクを吸収させることによりノズル8内に適正なメニスカスを形成することができるので、インクを空吐出させる必要がなくインク消費量を抑えることができる。また、インクを空吐出するための受け皿等を設ける必要もないため部材数を削減させることができ、インクジェットプリンタの小型化及びコスト削減を図ることも可能となる。
なお、本実施形態においては、支持台駆動機構31を設け、押し付け部材23を用いてノズルからのインクを吐出してインク吸収体15に吸収させるようにしたが、これに限定されず、押し付け部材23を用いずにノズルからインクを吐出してインク吸収体に吸収させるようにしてもよい。ノズル面にインク吸収体が接触しているときにノズルからインクを吐出させても、ノズルとノズル面に付着したインクがインク吸収体に吸収され、また、ノズルの先端部に適正なメニスカスが形成される。
また、本実施形態においては、支持台駆動機構31を設け、押し付け部材23を用いてノズルからのインクを吐出してインク吸収体15に吸収させるようにしたが、これに限定されず、押し付け部材23を用いずにノズルからインクを吐出してインク吸収体に吸収させるようにしてもよい。ノズル面にインク吸収体が接触しているときにノズルからインクを吐出させても、ノズルとノズル面に付着したインクがインク吸収体に吸収され、また、ノズルの先端部に適正なメニスカスが形成される。
また、本実施形態においては、ノズル8からインクをインク吸収体15に吐出させるのは1回のみである例を示したが、この回数に限定されない。例えばあらかじめノズル欠センサでノズル欠の状態を検出し、そのノズルの状態に応じて複数回ノズルからインクを吐出するようにしてもよい。なお、ノズルからインクを複数回インク吸収体15に吐出する場合には、その間インク吸収体15の巻き取りを行わないとしてもよい。2回目以降のインクの吐出においては、少量のインクしかインク吸収体15に付着しないため、インクの吐出を行うごとに巻き取りを行わなくてもインクがノズル8等に再付着する等の問題を生じることがない。そして、このように巻き取り回数を減らすことにより、インク吸収体15の消費量を抑えることができる。
さらに、本実施形態においては、メンテナンス動作を一度行うとインク吸収体15を巻き取り軸17に巻き取ることとしたが、インク吸収体15を巻き取るタイミングはここに例示したものに限定されず、数回メンテナンス動作を行ってからインク吸収体15の巻き取りを行うようにしてもよい。このように、インク吸収体15を巻き取る回数を減らすことにより、インク吸収体15の消費量を抑えることができる。
また、本実施形態においては、インクジェットプリンタの各部を制御する制御部32がメンテナンス動作を制御するメンテナンス制御部をも兼ねる構成としたが、これに限定されず、例えば、別途メンテナンス動作のみを制御するメンテナンス制御部を設ける構成としてもよい。
また、本実施形態においては、シリアル方式の記録ヘッド5を用いたが、ライン方式の記録ヘッド5においても適用可能である。その場合、インク拭き取り装置12をプリンタ本体1に配設させるときの配置向きを変えればよく、ノズル列を形成している方向がインク吸収体15の長尺方向と平行になるように設置すればよい。
また、本実施形態では、紫外線を照射することにより硬化するインクを用いて画像記録を行うものとしたが、インクは必ずしもこれには限定されず、例えば、紫外線、電子線、X線、可視光線、赤外線等の電磁波といった紫外線以外の光を照射することにより硬化するインクであってもよい。この場合、インクには、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とが適用される。また、紫外線以外の光で硬化する光硬化型のインクを用いる場合は、紫外線光源に代えて、その光を照射する光源を適用する。
さらに、光を照射することなく硬化するインクを用いて画像記録を行うものであってもよい。この場合には、光を照射する装置を設ける必要がなく、装置構成の簡易化を図ることができる。
[第二の実施形態]
次に、図6及び図7を参照しつつ、本発明に係るインクジェットプリンタの第二の実施形態について説明する。なお、以下においては、特に第一の実施形態と異なる点について説明する。
本実施形態において、インクジェットプリンタは、第一の実施形態と同様に、アクチュエータとして電圧を印加すると変形するピエゾ素子(図示せず)が配設されている記録ヘッド5を備えている。記録ヘッド5には、インクを吐出するノズルの形成されたノズル面が設けられている。インクジェットプリンタは、この記録ヘッド5のノズル及びノズル面のメンテナンス動作を行うインク拭き取り装置12を備えている。
インク拭き取り装置12は、第一の実施形態と同様のものであり、インクを吸収するインク吸収体とこれを裏面から押圧する押し付け部材を備えている。また、インク拭き取り装置12は、支持台駆動機構31を備え、支持台駆動機構31によって押し付け部材を記録ヘッド5のノズル面に押し付け、インク吸収体とノズル面とが密着しているときにノズルからインクを吐出させることにより、ノズルとノズル面に付着したインクをインク吸収体に吸収させ、またノズルの先端部に適正なメニスカスを形成するようになっている。また、インク拭き取り装置12は、インク吸収体を巻き取るロール軸駆動機構30を備え、インクを吸収したインク吸収体を適宜巻き取るようになっている。
また、インクジェットプリンタには、図6に示すように、インク供給路35を介して、記録ヘッド5に各色のインクを供給するインクタンク27が設けられている。インク供給路35の途中には、駆動させることによりインクタンク27から記録ヘッド5に対してインクを送液する送液ポンプ34が設けられている。これにより、本実施形態に用いられるような高粘度で濡れ性の高いインクであっても確実にインクタンク27から記録ヘッド5に送液することができるようになっている。
また、インクジェットプリンタは、図7に示すように、第一の実施形態と同様の制御部32を備えている。本実施形態においても、第一の実施形態と同様、制御部32は前記メンテナンス動作を制御するメンテナンス制御部を兼ねるようになっている。制御部32には入力部33から入力された各種の情報が送られるようになっている。
制御部32は、記録ヘッド5を制御してピエゾ素子に駆動電圧を印加することによりピエゾ素子を変形させ、ノズルからインクを吐出させるようになっている。このインクの吐出により、記録媒体Pに画像が形成されるようになっている。
制御部32は、本実施形態において、インク拭き取り装置12によるメンテナンス動作を行うときに、送液ポンプ34を駆動して記録ヘッド5にインクを強制的に送る加圧動作を行うようになっている。送液ポンプ34が駆動することによって記録ヘッド5のノズルがインクで満たされ、さらなる送液ポンプ34の駆動によりノズルからインクが吐出されるようになっている。
詳細には、制御部32は、インク拭き取り装置12の支持台駆動機構31を駆動させることにより、インク吸収体の裏面から押し付け部材を押し当て、インク吸収体を記録ヘッド5のノズル面に押し付ける。そして、制御部32は、ノズル面にインク吸収体が接触しているときに、送液ポンプ34を駆動してノズルからインクを吐出させる。ノズルの先端部から吐出されたインクは、インク吸収体の毛細管現象により、ノズル面に付着したインクと共にインク吸収体に確実に吸収される。これにより、ノズル及びノズル面に付着したインクを除去するクリーニングを行うとともに、ノズルの先端部に適正なメニスカスを形成することができるようになっている。
さらに、制御部32は、押し付け部材をインク吸収体の裏面よりノズル面に押し当てながら副走査方向Bに移動させ、メンテナンス動作を繰り返し、ノズル面及びノズルのクリーニング及び適正なメニスカスの形成を行うようになっている。
なお、その他の構成は、第一実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本実施形態における作用について説明する。
所定回数の画像記録が行われると、制御部32は、キャリッジをインク拭き取り装置12の所定の位置まで移動させる。制御部32は、送液ポンプ34を駆動して記録ヘッド5に対して圧力をかける加圧動作を行う。これにより、全てのノズルがインクで満たされた状態となる。
さらに、制御部32はキャリッジをインク拭き取り装置12の上方に移動させて、インク拭き取り装置12を動作させることによりメンテナンス動作を行う。
具体的には、制御部32は、キャリッジをインク拭き取り装置12の上方に移動させ、インク吸収体と対向する位置にヘッドユニットを構成する記録ヘッド5のノズル面が位置するように制御する。そして、制御部32は、支持台駆動機構31を動作させ、押し付け部材を待避位置からガイド孔に沿って移動させる。記録ヘッド5のノズル面と押し付け部材が対向する位置では、押し付け部材が裏面からインク吸収体に当接することによってインク吸収体がノズル面の一端部分に密着される状態となる。このとき、制御部32は、送液ポンプ34を駆動してインク吸収体と接触しているノズルからインクを吐出させ、ノズル及びノズル面に付着したインクをインク吸収体に吸収させると共に、ノズルの先端部に適正なメニスカスを形成する。
そして、インク拭き取り装置12を動作させた一連のメンテナンスを完了させると、再びキャリッジは記録領域に戻り、画像記録を再開させる。
以上のように、本実施形態によれば、メンテナンス動作を行うときに、送液ポンプ34を駆動して記録ヘッド5に対して加圧を行うので、全てのノズルからインクを吐出してインク拭き取り装置12によるメンテナンス動作を行うことができる。このため、ノズル及びノズル面に付着したインクを吸収し、ノズルの先端に容易に適正なメニスカスを形成することができる。
なお、その他、本発明が本実施の形態に限られないことは、第一の実施形態と同様である。
[第三の実施形態]
次に、図8及び図9を参照しつつ、本発明に係るインクジェットプリンタの第三の実施形態について説明する。なお、以下においては、特に第二の実施形態と異なる点について説明する。
図8に示すように、本実施形態において、インクジェットプリンタは、インク供給路35を介して、記録ヘッド5に各色のインクを供給するインクタンク27が設けられている。インク供給路35の途中には、インクタンク27からのインクを一旦貯蔵するサブインクタンク36が設けられており、サブインクタンク36よりもインクタンク側に設けられたベン37が開いているときにはインクタンク27からサブインクタンク36を経て記録ヘッド5にインクが送液されるようになっている。また、サブインクタンク36には、送液ポンプ34が設けられており、ベン37が閉じてサブインクタンク36から記録ヘッド5までが閉鎖系であるときに送液ポンプ34を駆動することによってサブインクタンク36から記録ヘッド5にインクを送液することが出来るようになっている。
また、インクジェットプリンタは、図9に示すように、第二の実施形態と同様の制御部32を備えている。本実施形態においても、第二の実施形態と同様、制御部32は前記メンテナンス動作を制御するメンテナンス制御部を兼ねるようになっている。制御部32には入力部33から入力された各種の情報が送られるようになっている。
制御部32は、ベン37を開けてインクタンク27からサブインクタンク36を経て記録ヘッド5にインクが送液されているときに、記録ヘッド5を制御してピエゾ素子に駆動電圧を印加することによりピエゾ素子を変形させ、ノズルからインクを吐出させるようになっている。このインクの吐出により、記録媒体Pに画像が形成されるようになっている。
制御部32は、本実施形態においてインク拭き取り装置12によるメンテナンス動作を行うときに、ベン37を閉じてサブインクタンク36から記録ヘッド5までを閉鎖系にし、送液ポンプ34を駆動して記録ヘッド5にインクを強制的に送る加圧動作を行うようになっている。送液ポンプ34が駆動することによって記録ヘッド5のノズルがインクで満たされ、さらなる送液ポンプ34の駆動によりノズルからインクが吐出されるようになっている。
詳細には、制御部32は、インク拭き取り装置12の支持台駆動機構31を駆動させることにより、インク吸収体の裏面から押し付け部材を押し当て、インク吸収体を記録ヘッド5のノズル面に押し付ける。そして、制御部32は、ノズル面にインク吸収体が接触しているときに、送液ポンプ34を駆動してノズルからインクを吐出させる。ノズルの先端部から吐出されたインクは、インク吸収体の毛細管現象により、ノズル面に付着したインクと共にインク吸収体に確実に吸収される。これにより、ノズル及びノズル面に付着したインクを除去するクリーニングを行うとともに、ノズルの先端部に適正なメニスカスを形成することができるようになっている。
さらに、制御部32は、押し付け部材をインク吸収体の裏面よりノズル面に押し当てながら副走査方向Bに移動させ、メンテナンス動作を繰り返し、ノズル面及びノズルのクリーニング及び適正なメニスカスの形成を行うようになっている。
なお、その他の構成は、第二実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本実施形態における作用について説明する。
所定回数の画像記録が行われると、制御部32は、ベン37を閉じてサブインクタンク36から記録ヘッド5までを閉鎖系とし、また、キャリッジをインク拭き取り装置12の所定の位置まで移動させ、メンテナンス動作を行う。
具体的には、制御部32は、キャリッジをインク拭き取り装置12の上方に移動させ、インク吸収体と対向する位置にヘッドユニットを構成する記録ヘッド5のノズル面が位置するように制御する。そして、制御部32は、支持台駆動機構31を動作させ、押し付け部材を待避位置からガイド孔に沿って移動させる。記録ヘッド5のノズル面と押し付け部材が対向する位置では、押し付け部材が裏面からインク吸収体に当接することによってインク吸収体がノズル面の一端部分に密着する状態となる。このとき、制御部32は、送液ポンプ34を駆動してインク吸収体と接触しているノズルからインクを吐出させ、ノズル及びノズル面に付着したインクをインク吸収体に吸収させると共に、ノズルの先端部に適正なメニスカスを形成する。
そして、インク拭き取り装置12を動作させた一連のメンテナンスを完了させると、再びキャリッジは記録領域に戻り、画像記録を再開させる。
以上のように、本実施形態によれば、メンテナンス動作を行うときに、ベン37を閉じてサブインクタンク36から記録ヘッド5までを閉鎖系とし、送液ポンプ34を駆動して記録ヘッド5に対して加圧することによりノズルからインクを吐出してインク拭き取り装置12によるメンテナンス動作を行うことができる。このため、ノズルやノズル面に付着したインクを吸収し、ノズルの先端に容易に適正なメニスカスを形成することができる。
なお、その他、本発明が本実施の形態に限られないことは、第二の実施形態と同様である。