以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは左右方向である。符号Xは、副走査方向を示している。副走査方向Xは前後方向である。符号Zは、上下方向を示している。ただし、主走査方向Y、副走査方向Xおよび上下方向Zは特に限定されず、プリンタの形態に応じて適宜に設定可能である。
図1に示すように、プリンタ10は、筐体11と、キャリッジ20と、テーブル30と、複数のインクヘッド40A~40Dと、移動装置60と、キャッピング装置70と、制御装置100と、クリーニングユニット200とを備えている。
筐体11は、前面が開放された箱状に形成されている。筐体11は、左右方向に延びている。筐体11は、内部に、キャリッジ20と、テーブル30と、複数のインクヘッド40A~40Dと、移動装置60と、キャッピング装置70と、制御装置100と、クリーニングユニット200とを収納している。筐体11は、前面の開放部を開閉可能なフロントカバー12を備えている。
図1に示すように、テーブル30は、筐体11の内部空間において、主走査方向Yのほぼ中央に配置されている。本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。テーブル30は、略水平に設置されている。印刷時、テーブル30には、被印刷物が載置される。被印刷物の形状は特に限定されず、平板状の他、様々な立体形状を有していてもよい。被印刷物の材質も特に限定されず、被印刷物は、例えば、木、金属、ガラス、紙、布などであってもよい。
図2は、テーブル30の平面図である。図2に示すように、クリーニングユニット200はテーブル30上に装着されている。本実施形態では、クリーニングユニット200は、テーブル30に着脱自在である。テーブル30には、3つの装着孔31~33が形成されている。装着孔31~33は、クリーニングユニット200の脚部240(図7参照)が挿入される貫通孔である。第1の装着孔31は、テーブル30の左前端部に形成されている。第2の装着孔32は、第1の装着孔31の右方に設けられている。第3の装着孔33は、第1の装着孔31の後方に設けられている。クリーニングユニット200が設置されるテーブル30上の場所は、テーブル30の左前端部付近である。クリーニングユニット200は、被印刷物に印刷を行う際には、テーブル30から取り外される。クリーニングユニット200は、インクヘッド40A~40Dのクリーニングを行う際には、テーブル30に装着される。インクヘッド40A~40Dのクリーニングは、インクヘッド40A~40Dのノズルプレート41およびノズル42(いずれも図3参照)をクリーニングユニット200で拭うことによって、ノズルプレート41およびノズル42のインクを除去する作業である。本実施形態では、クリーニングユニット200のインク吸収部材220A~220Hでインクを吸収することにより、インクを除去する。
複数のインクヘッド40A~40Dは、キャリッジ20に搭載されている。インクヘッド40A~40Dは、キャリッジ20の下面に設けられている。図3は、キャリッジ20の下面の構成を模式的に示す平面図である。図3に示すように、複数のインクヘッド40A~40Dは、キャリッジ20において、主走査方向Yに並んで配置されている。そのうち第1インクヘッド40Aは、最も左方に配置されている。第2インクヘッド40Bは、第1インクヘッド40Aよりも右方に配置されている。第3インクヘッド40Cは、第2インクヘッド40Bよりも右方に配置されている。第4インクヘッド40Dは、最も右方に配置されている。インクヘッド40A~40Dは、それぞれ、副走査方向Xに延びている。インクヘッド40A~40Dの副走査方向Xに関する位置は揃っている。
図3に示すように、インクヘッド40A~40Dは、それぞれ、ノズルプレート41を備えている。ノズルプレート41は、複数のノズル42が形成された平板状の部材である。ノズルプレート41は、それぞれ、インクヘッド40A~40Dの下面を構成している。ノズルプレート41において、複数のノズル42は、副走査方向Xに並んでノズル列を形成している。ここでは、複数のノズル42は、2列に並んで2つのノズル列N1およびN2を形成している。第1ノズル列N1および第2ノズル列N2は、いずれも、副走査方向Xに延びている。第1ノズル列N1と第2ノズル列N2とは、主走査方向Yに並んで配置されている。
インクヘッド40A~40Dには、それぞれインクが供給されている。図4は、第1インクヘッド40Aと、第1インクヘッド40Aにインクを供給するインク供給システム50の構成を示す模式図である。図4に示すように、第1インクヘッド40Aは、複数のノズル42のそれぞれに連通した複数の圧力室43を備えている。さらに、第1インクヘッド40Aは、複数の圧力室43のそれぞれに対して設けられた複数のアクチュエータ44を備えている。また、インク供給システム50は、インクが貯留されたインクカートリッジ51とインク流路52とを備えている。
図5は、ノズル42周辺の部分断面図である。図5に示すように、ノズル42、圧力室43、およびアクチュエータ44は、ケース45の内部に形成されている。ケース45は、中空に形成されている。ケース45は、ここでは、上下に配置された2つの部分に仕切られている。ケース45の上方の部分と下方の部分との間には、開口45aが設けられている。ケース45の開口45aよりも下方の部分は、圧力室43を構成している。ノズルプレート41は、圧力室43の下面を形成している。ノズル42は、ノズルプレート41を上下方向に貫通している。ノズル42は、インクが吐出される微細な孔である。圧力室43には、インクが収容されている。圧力室43は、ノズル42と連通している。インク吐出時には、圧力室43に収容されているインクがノズル42から吐出される。
振動板46は、開口45aを塞ぐように取り付けられている。振動板46はケース45とともに、圧力室43を区画している。振動板46は、圧力室43の一部を仕切っている。振動板46は、圧力室43の内側および外側に弾性変形可能な部材である。振動板46は、圧力室43の容積を増加および減少させるように変形可能に構成されている。振動板46は、典型的には樹脂フィルムである。
圧力室43の側壁には、インクが流入するインク流入口47が形成されている。ただし、インク流入口47は圧力室43とつながっていればよく、インク流入口47の位置は何ら限定されない。圧力室43には、インク流入口47を通じてインクが供給される。
振動板46の圧力室43と反対側の面には、アクチュエータ44が当接している。アクチュエータ44は、振動板46を介して、圧力室43の体積を増減させるように駆動する。これにより、アクチュエータ44は、圧力室43内のインクの圧力を増減させる。アクチュエータ44は、圧電素子44aと固定部材44bとを備えている。圧電素子44aは、振動板46に当接している。また、圧電素子44aの一部は、固定部材44bに固定されている。本実施形態では、圧電素子44aは、圧電材料と導電層とを交互に積層した積層体である。圧電素子44aは、制御装置100からの駆動信号を受けると膨張または収縮し、振動板46を圧力室43の外側または内側に弾性変形させる。制御装置100からの駆動信号は、圧電素子44aを膨張させる電位と収縮させる電位とが交互に現れる駆動波形である。アクチュエータ44は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。圧電素子44aは、例えば、縦振動モードのピエゾ素子(PZT)である。縦振動モードのPZTは、上記積層方向に伸縮自在であり、例えば放電すると収縮し、充電すると伸長するようになっている。ただし、圧電素子44aの形式は特に限定されない。
インクカートリッジ51には、インクが収容されている。図4に示すように、インクカートリッジ51は、インク流路52を介して第1インクヘッド40Aに接続されている。インクカートリッジ51に貯留されているインクは、インク流路52を通って第1インクヘッド40Aに供給され、ノズル42から吐出される。インクカートリッジ51は、例えば、筐体11の左端部に設けられている。ここでは、インクカートリッジ51には、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクが貯留されている。しかし、インクカートリッジ51に貯留されるインクは、特に限定されない。
インク流路52は、インクカートリッジ51と、第1インクヘッド40Aに設けられた複数の圧力室43とを接続している。インク流路52は、例えば、可撓性のチューブによって形成されている。図4に示すように、インク流路52の途中には、圧力制御弁53と、送液ポンプ54と、ダンパ55とが設けられている。
圧力制御弁53は、圧力制御弁53、送液ポンプ54、およびダンパ55の中で最もインクカートリッジ51側(上流側)に設けられている。圧力制御弁53は、インクが供給されていないときにインク流路52内のインク圧を負圧に保つように構成されている。それにより、ノズル42からインクが垂れ落ちることを防止している。
圧力制御弁53は、インクが流れる流路と、流路を開閉する弁機構とを備えている。弁機構は、弁機構よりも下流側の圧力に応じて開閉するようになっている。弁機構には、弁機構よりも上流側のインクの圧力と、弁機構よりも下流側のインクの圧力と、弁機構を閉塞しようとする機械的な力と、弁機構を開放しようとする機械的な力が加えられており、インク静止時には、これらの力が釣り合っている。この釣り合った状態においては、弁機構は流路を封止している。弁機構を閉塞または開放しようとする機械的な力は、例えば、スプリングの復元力である。送液ポンプ54が駆動するなどして、弁機構より下流側からインクが吸い出されると、下流側のインクの圧力が減少して釣り合いが崩れ、弁機構は開放方向に動く。弁機構が開放されると、流路が開放され、下流方向に向かってインクが供給される。
インク静止時、圧力制御弁53は、圧力室43内のインクの圧力を、例えば、-1kPa程度に維持している。圧力室43内のインクの圧力を適正な圧力に保持することにより、ノズル42のインクのメニスカスが維持される。
送液ポンプ54は、圧力制御弁53の下流に設けられている。送液ポンプ54は、インクカートリッジ51に貯留されたインクを第1インクヘッド40Aに供給するためのポンプである。送液ポンプ54は、駆動時には、インクカートリッジ51側から第1インクヘッド40A側に向かってインクを送液する。送液ポンプ54の種類は特に限定されないが、例えば、チューブポンプである。
ダンパ55は、送液ポンプ54の下流、より詳しくは、第1インクヘッド40Aの直前に設けられている。ダンパ55は、インクを一時的に貯留することでインクの圧力変動を緩和する部材である。また、ダンパ55は、送液ポンプ54とともに、インクが消費された後の第1インクヘッド40Aにインクを供給する。
図6Aおよび図6Bは、ダンパ55を模式的に示した断面図である。そのうち、図6Aは、ダンパ55の内部の圧力が所定の圧力よりも小さい状態を示している。図6Bは、ダンパ55の内部の圧力が所定の圧力以上の状態を示している。図6Aおよび図6Bに示すように、ダンパ55は、ダンパ本体55aと、貯留室55bと、ダンパ膜55cと、内部バネ55dと、押圧部材55eと、支持バネ55fと、フィラー55gと、センサ55hとを備えている。
貯留室55bは、ダンパ本体55aに形成された空間である。貯留室55bには、図示しない流入口と流出口とが形成されている。インクは、流入口を通って貯留室55bに流入し、流出口を通って貯留室55bから流出する。貯留室55bには、インクが一時的に貯留されている。図6A、図6Bに示すように、貯留室55bは、開口55b1を備えている。
ダンパ膜55cは、開口55b1を覆うように設けられている。ダンパ膜55cは、例えば、可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。ダンパ膜55cは、貯留室55b内の圧力に反応して、貯留室55bの内側および外側に変形可能である。ダンパ膜55cは、貯留室55bの内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で取り付けられている。
図6Aおよび図6Bに示すように、貯留室55bの内部には、内部バネ55dが設けられている。内部バネ55dは、ダンパ膜55cの貯留室55b側の面に接触している。内部バネ55dは、圧縮された状態で貯留室55bに配置されている。内部バネ55dは、ダンパ膜55cに向かって弾性力を付与している。
押圧部材55eは、ダンパ膜55cの貯留室55bとは反対側の面に設けられている。押圧部材55eは、内部バネ55dに支持されており、ダンパ膜55cの撓みとともに、貯留室55bの内側および外側に移動可能である。
フィラー55gは、ダンパ本体55aの外側に配置されている。フィラー55gは、支持バネ55fを介してダンパ本体55aに支持されている。図6Aおよび図6Bに示すように、フィラー55gは、略コの字状に形成されている。フィラー55gは、接触部55g1と、支持部55g2と、被検出部55g3とを有している。接触部55g1は、伸長方向の中心付近で押圧部材55eに対向している。支持部55g2は、接触部55g1の支持バネ55f側の端部から、接触部55g1に垂直に延びている。被検出部55g3は、接触部55g1のセンサ55h側の端部から、接触部55g1に垂直に延びている。接触部55g1には、貯留室55b内部の圧力により押圧部材55eが接触し、または離間する。支持部55g2は、支持バネ55fに支持されている。被検出部55g3は、センサ55hによって検出される部位である。
センサ55hは、制御装置100に接続され、制御装置100に信号を送信するように設定されている。ここでは、センサ55hは、非接触式のセンサである。センサ55hは、一対の検出部55h1と55h2とを有している。図6Aに示すように、貯留室55bの圧力が所定の圧力を下回っているとき、フィラー55gの被検出部55g3は検出部55h1と55h2との間に位置している。このとき、センサ55hは、信号を発するように設定されている。図6Bに示すように、貯留室55bの圧力が大きくなるにしたがって、ダンパ膜55cが貯留室55bの外側に撓む。このとき、押圧部材55eによって、フィラー55gが貯留室55bの外側に押される。それにより、フィラー55gは、支持バネ55fを軸に回転する。そして、貯留室55bの圧力が所定の圧力より大きくなったとき、フィラー55gの被検出部55g3は、検出部55h1と55h2との間から外れた位置に移動する。このとき、センサ55hは、信号を停止するように設定されている。なお、本実施形態では、センサ55hは、貯留室55b内の圧力が所定の圧力を下回った場合に制御装置100に信号を送信するように設定されているが、センサ55hの信号発信動作はこれと逆動作であってもよい。
制御装置100は、センサ55hから信号を受け取ると、送液ポンプ54を駆動させる。送液ポンプ54の駆動により貯留室55b内の圧力が所定の圧力以上になると、センサ55hは、信号を停止する。制御装置100は、センサ55hからの信号が途切れると、送液ポンプ54を停止させる。この制御により、消費されたインクに対応する量のインクが第1インクヘッド40Aに供給されるとともに、第1インクヘッド40A内のインクの圧力が所定の範囲内に復帰される。
第2インクヘッド40B~第4インクヘッド40Dも、第1インクヘッド40Aと同じ構成を備えている。また、第2インクヘッド40B~第4インクヘッド40Dも、第1インクヘッド40Aと同じように、それぞれのインク供給システムに接続され、インク供給システムからインクを供給されている。インクヘッド40A~40Dから吐出されるインクは、それぞれ異なるインクであってもよく、一部同じインクであってもよい。
図1に示すように、キャリッジ20には、紫外線ランプ25が設けられている。ここでは、紫外線ランプ25は、キャリッジ20の左側面に設けられている。紫外線ランプ25は、副走査方向Xに延びている。紫外線ランプ25は、テーブル30に向かって紫外線を照射する。紫外線ランプ25は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
移動装置60は、インクヘッド40A~40Dと、テーブル30とを相対的に移動させる機構である。本実施形態に係る移動装置60は、キャリッジ移動装置60Yと、テーブル移動装置60Tとを備えている。キャリッジ移動装置60Yは、キャリッジ20を主走査方向Yに移動させるように構成されている。キャリッジ移動装置60Yは、ガイドレール61と、ベルト62と、図示しない左右のプーリと、スキャンモータ63とを備えている。ガイドレール61には、キャリッジ20が摺動自在に係合している。ガイドレール61は、筐体11に固定され、左右方向に延びている。ガイドレール61は、キャリッジ20の左右方向への移動をガイドする。ベルト62は、キャリッジ20に固定されている。ベルト62は、無端状のベルトである。ベルト62は、ガイドレール61の左右に設けられた図示しないプーリに巻き掛けられている。一方のプーリにはスキャンモータ63が取り付けられている。スキャンモータ63は、制御装置100と電気的に接続されている。スキャンモータ63は、制御装置100によって制御される。スキャンモータ63が駆動するとプーリが回転し、ベルト62が走行する。それにより、キャリッジ20がガイドレール61に沿って左右方向に移動する。
テーブル30の下方には、テーブル移動装置60Tが配置されている。テーブル移動装置60Tは、テーブル30を副走査方向Xおよび上下方向Zに移動させる機構である。テーブル移動装置60Tは、テーブル30を下方から支持している。テーブル移動装置60Tは、Z軸方向移動機構60Zと、X軸方向移動機構60Xとを備えている。Z軸方向移動機構60Zは、テーブル30を支持して上下方向Zに移動させる機構である。Z軸方向移動機構60Zは、図示しないボールねじ機構とモータとを備えている。ボールねじ機構は、モータによって駆動される。Z軸方向移動機構60Zは、X軸方向移動機構60Xによって下方から支持されている。X軸方向移動機構60Xは、テーブル30を副走査方向Xに移動させる機構である。X軸方向移動機構60Xは、図示しないボールねじ機構とモータとを備えている。
移動装置60の構成は、特に限定されない。例えば、移動装置60は、テーブル30またはキャリッジ20のいずれか一方を、主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zに移動させてもよい。または、テーブル30とキャリッジ20の両方を、主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zに移動させてもよい。インクヘッド40A~40Dと、テーブル30との移動は相対的なものであり、いずれの部材がいずれの方向に移動されるかは限定されない。移動装置60は、制御装置100と電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
図1に示すように、キャリッジ20の可動範囲の右端には、ホームポジションP1が設定されている。ホームポジションP1は、印刷待機時などにキャリッジ20が配置される位置である。ホームポジションP1におけるキャリッジ20の下方には、キャッピング装置70が配置されている。図1に示すように、キャッピング装置70は、キャップ71と、キャップ移動機構72と、吸引ポンプ73とを備えている。
キャップ71は、インクヘッド40A~40Dと同数設けられている。1つのインクヘッドには1つのキャップ71が対応している。キャップ71は、上面が開口した容器状の形状を有している。キャップ71は、ゴム等によって形成されている。インクヘッド40A~40Dへの装着時、キャップ71の上縁がノズルプレート41に密着される。
複数のキャップ71は、1つのキャップ移動機構72によって支持されている。キャップ移動機構72は、複数のキャップ71をインクヘッド40A~40Dのノズルプレート41に接触させ、または離間させるように構成されている。キャップ移動機構72は、キャップ71を下方から支持して上下方向に移動する。それにより、キャップ71は、インクヘッド40A~40Dに装着され、また離間される。
図1に示すように、吸引ポンプ73は、複数のキャップ71に接続されている。吸引ポンプ73は、キャップ71内に溜まったインク等を吸引する。吸引ポンプ73は、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
クリーニングユニット200は、テーブル30に着脱可能に構成されている。図7は、クリーニングユニット200の斜視図である。図7に示すように、クリーニングユニット200は、ベース210と、インク吸収部材220A~220Hと、カバー230と、脚部240とを備えている。
ベース210は、板状に形成されている。ベース210の上面には、インク吸収部材220A~220Hが設けられている。ベース210の下面には、脚部240が設けられている。また、ベース210には、カバー230が着脱される。図7に示すように、ベース210は、インク吸収部材220A~220Hを保持する保持部211と、カバー230を取り付ける取付溝212とを備えている。
保持部211は、ベース210の上面に形成されている。保持部211は、インク吸収部材220A~220Hの押圧体221を保持している。保持部211は、凹部211aを有している。凹部211aは、ベース210の上面から1段下がっている。凹部211aには、保持台211bが載置されている。保持台211bは、板金などで形成されている。保持台211bは、仕切211b1を複数備えている。仕切211b1は、保持台211bの底面を主走査方向Yに8つに区切っている。区切られた領域は、8つの枠211b2を構成している。
取付溝212は、保持部211の凹部211aの左右の端部に面して1つずつ形成されている。取付溝212は、副走査方向Xの長さが凹部211aよりも長い。かつ、主走査方向Yには短く形成されている。そこで、取付溝212は、副走査方向Xに長い扁平な形状を有している。
複数のインク吸収部材220A~220Hは、ベース210の保持部211に保持されている。複数のインク吸収部材220A~220Hは、主走査方向Yに並んでいる。インク吸収部材220A~220Hは、インクを吸収する。第1インク吸収部材220A~第8インク吸収部材220Hは、それぞれ、押圧体221と、吸収体222とを備えている。
押圧体221は、柔軟性を有する材料によって形成されている。押圧体221は、ゴム、さらに好適には硬度が5度以上20度以下のシリコーンゴムなどで形成されている。押圧体221は、平板状の材料が曲げられて形成されている。押圧体221は、保持部211によって、上方に凸するように曲げられ、その状態に保持されている。より詳しくは、複数の押圧体221は、それぞれ、保持台211bの枠211b2の1つに挿入され、上方に凸するように曲げられている。
吸収体222は、インクを吸収するシート状の材料によって形成されている。ここでは、吸収体222は、不織布で形成されている。吸収体222は、全てのインク吸収部材220A~220Hによって共有されている。吸収体222は、主走査方向Yに並んだ複数の押圧体221の上に被せられている。押圧体221は、吸収体222の下面に接触するように配置されている。吸収体222は、インク吸収部材220A~220Hとノズルプレート41とが接触した状態において、上面がノズルプレート41に接触するように配置されている。
吸収体222は、カバー230によって保持されている。カバー230は、下面が開口した箱状の形状を有している。カバー230は、上面にも開口231を有している。開口231は、主走査方向Yに並んだ複数の押圧体221が上下方向に通過可能に構成されている。そこで、カバー230をベース210に装着したとき、押圧体221の凸面は、開口231よりも上方に突出する。カバー230は、主走査方向Yの両側面の下端部にそれぞれ、ベース210の取付溝212に嵌め込む爪部を備えている。爪部を取付溝212に嵌め込むことにより、カバー230はベース210に装着される。なお、吸収体222には、少量の洗浄液を塗布するとよい。洗浄液には、インクの溶剤など、インクを溶解する液体が好適に用いられる。
第1インク吸収部材220A~第8インク吸収部材220Hは、第1インクヘッド40A~第4インクヘッド40Dの半分のピッチで主走査方向Yに並んでいる。そこで、例えば、第1インクヘッド40Aが第1インク吸収部材220Aと同じ左右位置に配置されているときには、第2インクヘッド40Bは、第3インク吸収部材220Cと同じ左右位置に配置される。同様に、第1インクヘッド40Aが第1インク吸収部材220Aと同じ左右位置に配置されているとき、第3インクヘッド40Cは、第5インク吸収部材220Eと同じ左右位置に配置され、第4インクヘッド40Dは、第7インク吸収部材220Gと同じ左右位置に配置される。
脚部240は、ベース210の下面に設けられている。クリーニングユニット200は、脚部240によってテーブル30に装着される。脚部240は、4本の脚から構成されている。脚部240の4本の脚のうち、前側の2本と左後方の1本は、テーブル30に設けられた3つの装着孔31~33にそれぞれ挿入される。これにより、クリーニングユニット200は、テーブル30に位置決めされる。4本の脚のうち右後方の1本は、ここでは、テーブル30の平坦部に配置される。ただし、右後方の脚は、テーブル30上に載置された冶具などの上にも立脚できるように、長さを調節可能に構成されていてもよい。
クリーニングユニット200は、テーブル30に装着されることにより、インクヘッド40A~40Dに対して三次元的に移動される。移動装置60は、クリーニングユニット200のインク吸収部材220A~220Hを、インクヘッド40A~40Dのノズルプレート41に対して、主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zに移動させることができる。移動装置60は、インク吸収部材220A~220Hとノズルプレート41とが接触または離間するように、インク吸収部材220A~220Hおよびインクヘッド40A~40Dを移動させる。
図1に示すように、プリンタ10の右端部には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置100が収容されている。図8は、プリンタ10のブロック図である。図8に示すように、制御装置100は、アクチュエータ44(1つのアクチュエータ44のみ図示)と、送液ポンプ54(1つの送液ポンプ54のみ図示)と、紫外線ランプ25と、移動装置60のキャリッジ移動装置60Y、Z軸方向移動機構60Z、およびX軸方向移動機構60Xと、キャッピング装置70のキャップ移動機構72および吸引ポンプ73とに接続され、それらの動作を制御している。また、センサ55h(1つのセンサ55hのみ図示)に接続され、それらからの信号を受信している。
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。図8に示すように、制御装置100は、供給制御部110と、印刷制御部120と、クリーニング制御部130と、キャッピング制御部140と、波形生成部150とを備えている。
供給制御部110は、送液ポンプ54を制御して、インクヘッド40A~40Dにインクを供給する。供給制御部110は、センサ55hから信号を受け取ると、送液ポンプ54を駆動させ、センサ55hからの信号が途切れると、送液ポンプ54を停止させる。この制御により、消費されたインクに対応する量のインクがインクヘッド40A~40Dに供給される。
印刷制御部120は、印刷動作を制御する。印刷制御部120は、インク吸収部材220A~220Hをノズルプレート41から離間させるとともに、後述する第1駆動波形、第3駆動波形、および第4駆動波形のいずれかをアクチュエータ44に適時に印加することにより印刷を行う。駆動波形は、波形生成部150が生成している。印刷制御部120は、印刷において、移動装置60を制御して、インクヘッド40A~40Dと、テーブル30に載置された被印刷物との位置関係を刻々に変化させる。さらに上記位置関係の変化に連動させて、インクヘッド40A~40Dからインクの吐出を行う。それにより、被印刷物に印刷が行われる。
クリーニング制御部130は、インクヘッド40A~40Dのアクチュエータ44と移動装置60とを制御してノズル42のクリーニングを行う。クリーニング制御部130は、ノズル42のクリーニング時、移動装置60を制御してクリーニングユニット200のインク吸収部材220A~220Hをノズルプレート41に接触させるとともに、後述する第2駆動波形をアクチュエータ44に印加する。また、インク吸収部材220A~220Hとノズル42との接触、および、第2駆動波形のアクチュエータ44への印加の後には、インク吸収部材220A~220Hとノズル42とを離間させ、第2駆動波形のアクチュエータ44への印加を中止する。
キャッピング制御部140は、キャリッジ移動装置60Yとキャップ移動機構72とを制御して、インクヘッド40A~40Dにキャップ71を装着するキャッピングを行う。また、キャッピング制御部140は、キャッピングされた状態で吸引ポンプ73を駆動させて、インクヘッド40A~40D内およびインク流路52内のインクを吸引するインク吸引を行う。
波形生成部150は、アクチュエータ44を駆動させる駆動波形を生成する。波形生成部150は、第1駆動波形W1(図9参照)を生成する第1波形生成部151と、第2駆動波形W2(図9参照)を生成する第2波形生成部152と、第3駆動波形W3(図9参照)を生成する第3波形生成部153と、第4駆動波形W4(図9参照)を生成する第4波形生成部154とを備えている。4つの駆動波形W1~W4のうち、第1駆動波形W1、第3駆動波形W3、および第4駆動波形W4は、ノズル42からインクを吐出させる駆動波形である。また、第2駆動波形W2は、ここでは、インクを吐出させず、ノズル42および圧力室43内のインクを振動させるだけの微振動波形である。
図9は、第1駆動波形W1~第4駆動波形W4の一例を示す図である。図9に示された駆動波形W1、W3、およびW4は、それぞれ、1つのインク滴を形成する駆動波形である。図9の縦軸Vは電位を表し、横軸Tは時間を表している。図9の縦軸Vにおいて、V0は圧電素子44aの基準電位を示している。V0において圧電素子44aは駆動せず、インクは吐出も補充もされない。圧電素子44aの電位がV0よりも上の電位になると、圧電素子44aは膨張する。圧電素子44aの電位がV0よりも下の電位になると、圧電素子44aは収縮する。圧電素子44aが膨張すると、圧力室43内のインクはノズル42の出口側に向かって押し出される。その後、圧電素子44aが収縮すると、押し出されたインクは圧力室43に引き戻される。以下、圧電素子44aが膨張し、圧力室43内のインクの圧力が加圧されるときを「加圧時」とも称する。また、圧電素子44aが収縮し、圧力室43内のインクの圧力が減圧されるときを「減圧時」とも称する。
図9に示すように、第1駆動波形W1は、圧力室43内のインクの圧力が上昇するようにアクチュエータ44を駆動する第1加圧波形部W1aと、上昇したインクの圧力が低下するようにアクチュエータ44を駆動する第1減圧波形部W1bとを含んでいる。加圧時、アクチュエータ44には、第1加圧波形部W1aが印加されている。加圧時、インクは押し出される方向に移動している。その後、アクチュエータ44には第1減圧波形部W1bが印加され、圧力室43内のインクの圧力は減圧される。減圧時には、インクは圧力室43側に引き込まれる。減圧時には、圧力室43内のインクの圧力は、第1低下率で減圧されている。インクの圧力の低下率は、時間当たりのインクの圧力の低下量である。インクの圧力の低下率が大きいほど、インクの圧力は急激に低下する。この低下率が大きいほど、減圧時にインクが引き込まれる力は強い。
圧力室43内の圧力が減圧されると、押し出されたインクの一部が分離されてノズル42から吐出されるとともに、他の一部が圧力室43に引き戻される。第1低下率は、インク滴が吐出されるような引き込み力を発生させるインクの圧力の低下率である。分離して吐出されるインクの量は、駆動波形によって概ね決まっている。第1駆動波形W1を印加されたアクチュエータ44は、上記のようにして、吐出するインク滴を所望のサイズに調整している。ここでは、第1駆動波形W1を印加されたアクチュエータ44は、最も小さいSサイズのインク滴を吐出する。なお、減圧時においては、インク流入口47から圧力室43内にインクの補充も行われる。
第1駆動波形W1のように、インクが吐出されるように構成された駆動波形の場合、一般にインク滴のサイズは、加圧時に圧電素子44aに印加される電圧V1が大きいほど大きくなる。これは、電圧V1が大きいほど圧力室43の体積変化が大きいためである。また、インク滴のサイズは、電圧V1が印加されている時間T1が長いほど大きくなる。これは、電圧V1が印加されている時間T1が長いほど、減圧時までにインクがノズル42の外部において引き伸ばされる長さが長くなり、結果、インク滴として分離されるインクの量が多くなるためである。
第3駆動波形W3および第4駆動波形W4は、アクチュエータ44に印加されたときに形成されるインク滴のサイズが第1駆動波形W1と異なっている。第3駆動波形W3は、Sサイズよりも大きいMサイズのインク滴を吐出する駆動波形である。第4駆動波形W4は、図9に示すように、第1駆動波形W1と第3駆動波形W3とが組み合わされた駆動波形である。第4駆動波形W4を印加されたアクチュエータ44は、Sサイズのインク滴とMサイズのインク滴とを極めて短い時間間隔で吐出する。Sサイズのインク滴とMサイズのインク滴とは、極めて接近した場所に着弾するため、Mサイズよりも大きいLサイズのインク滴として振る舞う。
印刷制御部120は、1つのノズル42からSサイズのインク滴を吐出させるときには、対応するアクチュエータ44に第1駆動波形W1を印加する。また、印刷制御部120は、1つのノズル42からMサイズのインク滴を吐出させるときには、対応するアクチュエータ44に第3駆動波形W3を印加する。印刷制御部120は、1つのノズル42からLサイズのインク滴を吐出させるときには、対応するアクチュエータ44に第4駆動波形W4を印加する。これにより、印刷制御部120は、所望のタイミングに所望のサイズのインク滴を吐出させることができる。
一方、第2駆動波形W2は、インクがノズル42から吐出されないように構成された駆動波形である。図9に示すように、第2駆動波形W2は、圧力室43内のインクの圧力が上昇するようにアクチュエータ44を駆動する第2加圧波形部W2aと、上昇したインクの圧力が低下するようにアクチュエータ44を駆動する第2減圧波形部W2bとを含んでいる。第2駆動波形W2でも、加圧時において、インクは押し出される方向に移動している。その後、減圧時において、インクは圧力室43側に引き込まれる。しかし、第2駆動波形W2では、減圧時の圧力室43内のインクの圧力の低下率は、第1低下率よりも小さい第2低下率となっている。第2駆動波形W2では、第1駆動波形W1よりも、圧力室43内のインクの圧力は緩やかに低下する。そこで、第2駆動波形W2がアクチュエータ44に印加されたとき、インクは第1駆動波形W1の場合よりも弱く引き戻される。
図9に示すように、本実施形態では、第2駆動波形W2における第2減圧波形部W2bの勾配は、第1駆動波形W1における第1減圧波形部W1bの勾配よりも小さく設定されている。これにより、減圧時の圧力室43内のインクの圧力の低下率を小さくすることができる。また、第2駆動波形W2の加圧時の電圧V2は、第1駆動波形W1の加圧時の電圧V1よりも小さく構成されている。これによっても、減圧時の圧力室43内のインクの圧力の低下率を小さくすることができる。さらに、第2駆動波形W2において電圧がV2に維持されている時間T2は、第1駆動波形W1において電圧がV1に維持されている時間T1よりも長く設定されている。駆動波形において電圧を維持する時間を長くすれば、インクのメニスカスの振動が減衰して、インクの圧力の低下率は小さくなる。本実施形態では、第1駆動波形W1と第2駆動波形W2とは、減圧時の電圧の減少勾配、加圧時の電圧、および加圧時の電圧の保持時間の3つの要素について異なるように設定されている。上記3つの要素の組み合わせによって、第2駆動波形W2は、第1駆動波形W1よりも減圧時のインク圧力の低下率を小さくし、その結果、インクの引き込みを弱くしている。
本実施形態に係る第2駆動波形W2では、インクの押し出しと引き込みがともに弱く設定され、引き込み時にインクが切断されない。よって、インクは、ノズル42から吐出されない。アクチュエータ44に第2駆動波形W2を印加すると、インクはノズル42および圧力室43において揺動する。アクチュエータ44への第2駆動波形W2の印加を繰り返すと、ノズル42内のインクはノズル42の下端に接近しては遠ざかる動きを繰り返す。
なお、上記した駆動波形の態様は1つの好適な例示に過ぎず、他の態様で実施されてもよい。例えば、波形生成部150は、第1駆動波形W1、第2駆動波形W2、第3駆動波形W3が組み合わされた1つの波形を生成してもよい。図10は、そのような駆動波形W10の一例を示す図である。図10に示すように、駆動波形W10は、第1駆動波形W1と同じ波形を有する波形部W11と、第2駆動波形W2と同じ波形を有する波形部W12と、第3駆動波形W3と同じ波形を有する波形部W13とを有している。印刷制御部120は、例えば、Sサイズのインク滴を吐出させるときには、アクチュエータ44に、第1駆動波形W1に相当する波形部W11だけを印加する。即ち、印刷制御部120は、波形部W11が生成されているタイミングでだけ、アクチュエータ44に駆動波形W10を印加する。同様に、印刷制御部120は、Mサイズのインク滴を吐出させるときには、アクチュエータ44に、波形部W13だけを印加する。Lサイズのインク滴を吐出させるときには、アクチュエータ44に、波形部W11とW13を印加する。また、この態様では、クリーニング制御部130は、ノズル42のクリーニング時、アクチュエータ44に、第2駆動波形W2に相当する波形部W12だけを印加する。
以下では、ノズル42のクリーニング動作について詳しく説明する。図11は、ノズル42のクリーニングのプロセスの一例を示すフローチャートである。図11に示すように、ノズル42のクリーニングのプロセスは、ステップS01~S11を含んでいる。なお、以下では、ノズル42のクリーニングのプロセスのうち、実際にノズルプレート41にクリーニングユニット200を接触させた状態でクリーニングユニット200を移動させ、クリーニングユニット200によってノズルプレート41の表面を拭き取るステップを、適宜、「ワイピング」と称する。また、詳しくは後述するが、本実施形態では、ワイピングは、ステップS04とステップS10の2回に分けて行われており、それぞれのステップによって対象となるノズル42が異なる。
ステップS01では、アクチュエータ44に第2駆動波形W2が印加される。第2駆動波形W2は、ここでは、インクが吐出されない微振動波形である。よって、インクはノズル42および圧力室43において振動するだけで、吐出されない。ステップS01では、第2駆動波形W2は、例えば、1kHz~5kHzの周波数(1/5000秒~1/1000秒の周期)で繰り返しアクチュエータ44に印加される。なお、ステップS01では、ステップS04でワイピングの対象となるノズル42に対応するアクチュエータ44にだけ、第2駆動波形W2を印加してもよい。
ステップS02では、キャリッジ20とテーブル30とが移動され、クリーニングユニット200がインクヘッド40A~40Dの真下に配置される。図12は、インクヘッド40A~40Dとクリーニングユニット200との位置関係を模式的に示す平面図である。図12は、ステップS02が終了した時点の状態を図示している。図12に示すように、ステップS02の終了時、第1インク吸収部材220Aは、第1インクヘッド40Aの真下に配置されている。より詳しくは、第1インク吸収部材220Aは、第1インクヘッド40Aのノズルプレート41の副走査方向Xに関する中心線L1よりもやや前方に前端がくるように配置されている。同様に、第2インクヘッド40Bの真下には、第3インク吸収部材220Cが配置されている。第3インクヘッド40Cの真下には、第5インク吸収部材220Eが配置されている。第4インクヘッド40Dの真下には、第7インク吸収部材220Gが配置されている。インク吸収部材220C、220E、220Gの前端は、第1インク吸収部材220Aの前端と同じ前後位置に位置している。
ステップS03では、テーブル30を上昇させることにより、クリーニングユニット200が上方に移動される。それにより、第1インク吸収部材220Aと第1インクヘッド40Aのノズル42とが接触する。同様に、第2インクヘッド40Bには第2インク吸収部材220Cが、第3インクヘッド40Cには第5インク吸収部材220Eが、第4インクヘッド40Dには第7インク吸収部材220Gが接触する。なお、ステップS01と、ステップS02およびS03とは、順番が逆でもよい。また、同時に実施されてもよい。
続くステップS04では、クリーニング制御部130は、インク吸収部材220A、220C、220E、220Gをインクヘッド40A~40Dにそれぞれ接触させた状態で、インク吸収部材220A、220C、220E、220Gを後方に移動させ、ワイピングを行う。具体的には、クリーニング制御部130は、X軸方向移動機構60Xを駆動させて、テーブル30を後方に移動させる。これにより、インクヘッド40A~40Dのノズルプレート41の後方側の半分強の領域がクリーニングユニット200によって拭われる。
図13は、ステップS04における第1インクヘッド40Aのノズル42周辺を模式的に示した部分断面図である。ステップS04では、ステップS01から引き続き、アクチュエータ44に第2駆動波形W2が印加されている。そこで、図13に示すように、ノズル42内のインクの下端E1は、ノズル42内で上下方向に振動している。この振動により、インクの下端E1は、インク吸収部材220Aに接近し、また離反する。そこで、接近時には、インクがインク吸収部材220Aと接触する可能性が高まる。インクとインク吸収部材220Aとが一度接触すると、インクは、インク吸収部材220Aのインクを吸収する力(例えば、毛管力)によって、インク吸収部材220Aに吸収され続ける。
ここで、例えば、アクチュエータ44に何らの駆動波形も印加しなかった場合、ノズル42とインク吸収部材220Aとが接触する確率は、駆動波形を印加した場合よりも低いと考えられる。ノズル42内の圧力は大気圧以下に保たれているので、インクのメニスカスはノズル42の出口よりも圧力室43側に形成されている。よって、インク吸収部材220Aをノズルプレート41に押し当てただけでは、インク吸収部材220Aがノズル42内のインクに接触せず、インクを良好に吸収できないおそれがある。従って、インクが吸収されないノズル42が発生する可能性も高い。しかし、アクチュエータ44に駆動波形を印加してインクをノズル42から押し出す方向に移動させれば、インクとインク吸収部材220Aとが接触する確率を高めることができる。例えば、インクがノズル42の外部に突出する程度の押し出し力を発生させる駆動波形を印加すれば、インクが吸収されないノズル42をほぼなくすこともできる。このように、アクチュエータ44に駆動波形を印加して、インクをノズル42から押し出す方向に移動させることによって、より確実にノズル42のインクを吸収することができる。
また、本実施形態に係る第2駆動波形W2は、減圧時におけるインクの引き込み力を第1駆動波形W1、第3駆動波形W3、および第4駆動波形W4よりも弱くするように構成されている。上記したように、インクをノズル42から押し出す方向に移動させることによって、インクとインク吸収部材220Aとが接触する確率を高めることができる。しかし、減圧時の引き込み力が強いと、ノズル42に異物を引き込んでしまうおそれが高くなる。
インクが吐出される駆動波形W1、W3、およびW4では、減圧波形部が印加されると、インクを切断するだけの引き込み力を発生させるような低下率でノズル42内のインク圧が降下される。ノズルから適量のインクを吐出するためには、インクを押し出した後、インクをノズルに引き戻して、インクを切断する必要がある。インクにかかる引き込み力が作用しないと、インクはうまく切断されず、適量のインク滴が形成されない。しかしながら、このような強い引き込み力を発生させる駆動波形をアクチュエータに印加しながらノズル42をクリーニングすると、ノズル42の外部の異物がノズル42に引き込まれる可能性が高くなる。
そこで、本実施形態では、ノズル42のクリーニング時にアクチュエータ44に印加する駆動波形を、通常のインク吐出時の駆動波形W1、W3、およびW4よりも弱い引き込み力を発生させる第2駆動波形W2としている。それにより、確実にノズル42のインクを除去しつつ、異物の引き込みも抑制することができる。
さらに、本実施形態では、第2駆動波形W2はインクを吐出させない駆動波形に設定されている。よって、ノズル42のクリーニングによって消費されるインクの量を低減することができる。
図13に示すように、ステップS04において、インク吸収部材220Aは、ノズルプレート41に押し当てられている。押圧体221は柔軟性を備えており、ノズルプレート41に押し当てられることにより変形している。これにより、吸収体222は、押圧体221とノズル42との間に挟まれ、ノズル42に密着する。インクを吸収する部材である吸収体222がノズル42に密着することにより、インクとインク吸収部材220Aとが接触する確率をさらに高めることができる。押圧体221を備えるインク吸収部材の構成は、例えば図13のように、ノズル42がノズルプレート41から凹んでいるインクヘッドなどに対して特に有効である。
また、かかる構成によれば、クリーニング後には、吸収体222だけを交換すればよく、押圧体221は継続して使用できる。よって、消耗品の消費を低減できる。
吸収体222としては、例えば本実施形態のように、不織布などが好適である。不織布は、安価で入手性がよい。また、押圧体221と組み合わせれば、ノズル42に密着させることもできる。
ステップS04においては、クリーニング制御部130は、インク吸収部材220A~220Hを、ノズル列N1およびN2の伸長方向である副走査方向Xに移動させる。これにより、ノズル42からインクを吸収するだけでなく、ノズルプレート41に固着したインクや、付着した異物等を除去することができる。
また、ステップS04においては、インク吸収部材220A~220Hは、インクヘッド40A~40Dの内側(ここでは、中心線L1付近)から外側(ここでは、後方)に向かって移動される。インクヘッド40A~40Dでは、ノズル42が形成されている領域の外側にインクや異物が付着していることがある。このような場合に、インク吸収部材220A~220Hをノズルプレート41の一端から他端まで(例えば、前端から後端まで)一方向に移動させると、ノズル42が形成されている領域の外側に付着したインクや異物がノズル42が形成されている領域に持ち込まれるおそれがある。そこで、本実施形態では、インク吸収部材220A~220Hをインクヘッド40A~40Dの内側から外側に向かって移動させ、そのようなおそれを低減している。
続くステップS05では、アクチュエータ44への第2駆動波形W2の印加が停止される。第2駆動波形W2の印加は、インク吸収部材220A、220C、220E、および220Gがその下を通過し終わったノズル42から順次停止されてもよく、ステップS04終了後に一斉に停止されてもよい。あるいは、ステップS05は省略され、2回目のワイピング(ステップS10)の後に第2駆動波形W2の印加が停止されてもよい。
ステップS06では、テーブル30が下降され、インク吸収部材220A、220C、220E、220Gがインクヘッド40A~40Dから離間される。
ステップS07では、インクヘッド40A~40Dと、クリーニングユニット200とが水平方向に移動される。ステップS07では、第2インク吸収部材220Bが第1インクヘッド40Aの真下にくるように、インクヘッド40A~40Dとクリーニングユニット200とが移動される。この移動により、第2インク吸収部材220Bは、第1インクヘッド40Aの中心線L1よりもやや後方に後端がくるように配置される。同様に、第2インクヘッド40Bの真下には第4インク吸収部材220Dが配置され、第3インクヘッド40Cの真下には第6インク吸収部材220Fが配置される。第4インクヘッド40Dの真下には、第8インク吸収部材220Hが配置される。これにより、2回目のワイピングのステップ(ステップS10)では、不使用の清浄なインク吸収部材220B、220D、220F、および220Hを使用することができる。
ステップS08では、アクチュエータ44に第2駆動波形W2が印加される。続くステップS09では、テーブル30が上昇され、インク吸収部材220B、220D、220F、220Hがノズルプレート41に接触される。
ステップS10では、2回目のワイピングが行われる。ステップS10では、クリーニングユニット200は、ステップS04とは逆方向(ここでは、前方)に向かって移動される。これにより、インクヘッド40A~40Dのノズルプレート41の前方側の半分強の領域がクリーニングユニット200によって拭われる。なお、ステップS04の対象となるノズル42とステップS10の対象となるノズル42とは一部が重なっており、拭き残しが発生しないようになっている。
ステップS11では、アクチュエータ44への第2駆動波形W2の印加が停止される。これにより、ノズル42のクリーニングの全プロセスが終了する。ただし、上記したノズル42のクリーニングのプロセスは1つの例であり、このようなプロセスに限定されるわけではない。
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、上記の実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では、第2駆動波形は、インクを吐出させない駆動波形に構成されていた。しかし、ノズルのクリーニング時に印加される駆動波形は、ノズルの出口側に向かってインクを移動させる押し込み動作と、通常のインク吐出時よりも弱い引き込み動作とをアクチュエータに行わせる駆動波形であればよく、それ以上限定されない。例えば、ワイピング時の駆動波形は、インクを吐出させる駆動波形であってもよい。
また、上記した実施形態に係る第2駆動波形W2は、第1駆動波形W1に比べて、減圧時の電圧の減少勾配が小さく、加圧時の電圧が小さく、また、加圧時の電圧の保持時間が長く設定されていた。しかし、上記3つの要素は、必ずしも組み合わせなくてもよい。上記3つの要素は、それぞれ単独でも減圧時のインクの引き込み力を調整することができる。例えば、駆動波形においては、減圧時の電圧の減少勾配を小さくするだけでも、インクの引き込みを弱くすることができる。また、加圧時の電圧を小さくするだけでも、インクの引き込みを弱くすることができる。さらに、加圧時の電圧の保持時間を長くするだけでも、インクの引き込みを弱くすることができる。また、上記のうちの2つを組み合わせても、インクの引き込みを弱くすることができる。
また、上記した実施形態では、クリーニングユニットは被印刷物が載置されるテーブルに着脱自在に構成されていた。しかし、インクヘッドをワイピングする機構は、着脱式のユニットに限られず、例えば、プリンタのいずれかの場所に固定された機構であってもよい。また、クリーニングユニットは、テーブル移動装置によって移動されるのではなく、専用の移動装置によって移動されてもよい。
インク吸収部材の構成もまた、限定されない。上記したインク吸収部材の構成は好適な1つの例であり、インク吸収部材の形状、材料、配置等を限定するものではない。例えば、インク吸収部材は、別体として構成された吸収体と押圧体とを備えなくてもよく、一体に形成されていてもよい。そのような場合、インク吸収部材は、インク吸収性と柔軟性をともに備えたスポンジ等であってもよい。あるいは、インク吸収部材は、柔軟性を備えなくてもよい。また、クリーニング時のインクヘッドおよびインク吸収部材の動かし方も上記したものに限られない。例えば、インク吸収部材は、ノズルプレートに接触している間、ノズルプレートに対して不動であってもよい。
その他、インクジェットプリンタの構成については、特に言及がない限りにおいて限定されない。例えば、ここに開示する技術は、ロール・トゥー・ロールタイプのインクジェットプリンタなどに対しても利用できる。また、例えば、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタなどのように、その一部にインクジェットプリンタが組み込まれた装置にも利用できる。