以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
図面中の符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは左右方向である。さらに、以下では適宜、主走査方向Yのうちの一方を第1主走査方向Y1、他方を第2主走査方向Y2と称する。本実施形態では、第1主走査方向Y1は左方である。第2主走査方向Y2は右方である。符号Xは、副走査方向を示している。副走査方向Xは前後方向である。主走査方向Yと副走査方向Xとは平面視において直交している。さらに、以下では適宜、副走査方向Xのうちの一方を第1副走査方向X1、他方を第2副走査方向X2と称する。本実施形態では、第1副走査方向X1は後方である。第2副走査方向X2は前方である。符号Zは、上下方向を示している。上下方向Zは、主走査方向Yおよび副走査方向Xに直交している。ただし、主走査方向Y、副走査方向Xおよび上下方向Zは特に限定されず、プリンタ10の形態に応じて適宜に設定可能である。
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタ10)の正面図である。図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、プリンタ本体11と、キャリッジ20と、テーブル30と、キャリッジ20に搭載された複数のインクヘッド40A~40Dと、移動装置50と、キャッピング装置80と、ワイピング装置90と、制御装置150とを備えている。また、プリンタ10は、テーブル30に着脱自在に構成されたクリーニングユニット100を備えている。
プリンタ本体11は、前面が開放された箱状に形成されている。プリンタ本体11は、左右方向に延びている。プリンタ本体11は、内部に、キャリッジ20と、テーブル30と、インクヘッド40A~40Dと、移動装置50と、キャッピング装置80と、ワイピング装置90と、制御装置150とを収納している。プリンタ本体11は、前面の開放部を開閉可能なフロントカバー12を備えている。
図1に示すように、テーブル30は、プリンタ本体11の内部空間において、主走査方向Yのほぼ中央に配置されている。テーブル30は、略水平に設置されている。テーブル30は、被印刷物5(図2参照)を支持する支持台である。本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。
図2は、テーブル30の平面図である。図2では、クリーニングユニット100は2点鎖線で図示されている。図2に示すように、テーブル30上には、被印刷物5を位置決めする治具200が載置されている。被印刷物5の形状は特に限定されず、平板状の他、様々な立体形状を有していてもよい。また、被印刷物5の材質も特に限定されず、被印刷物5は、例えば、木、金属、ガラス、紙、布などであってもよい。また、図2に示すように、被印刷物5は、複数であってもよい。複数の被印刷物5は、それぞれ治具200の収納部210に装着される。収納部210は、ここでは、被印刷物5に対応する平面形状に形成された貫通孔である。被印刷物5は、収納部210に装着されることによって、テーブル30に対して位置決めされる。
図2に示すように、テーブル30は、クリーニングユニット100が設置される設置部30aを備えている。ここでは、設置部30aは、テーブル30の左前端から一定の範囲に設定されている。設置部30aは、クリーニングユニット100の脚141~143(図5参照)がそれぞれ挿入される装着孔31a~31cを備えている。装着孔31a~31cは、テーブル30を上下方向Zに貫通する貫通孔である。
図1に示すように、複数のインクヘッド40A~40Dは、テーブル30と対向するように設けられている。インクヘッド40A~40Dは、キャリッジ20に搭載されている。キャリッジ20は、移動装置50のガイドレール61を介して、プリンタ本体11に移動可能に係合されている。図3は、キャリッジ20の下面の構成を模式的に示す平面図である。図3に示すように、複数のインクヘッド40A~40Dは、キャリッジ20において主走査方向Yに並んで配置されている。そのうち第1インクヘッド40Aは、最も第1主走査方向Y1側に配置されている。第2インクヘッド40Bは、第1インクヘッド40Aよりも第2主走査方向Y2側に配置されている。第3インクヘッド40Cは、第2インクヘッド40Bよりも第2主走査方向Y2側に配置されている。第4インクヘッド40Dは、最も第2主走査方向Y2側に配置されている。インクヘッド40A~40Dは、それぞれ、副走査方向Xに延びている。インクヘッド40A~40Dの副走査方向Xに関する位置は揃っている。
第1インクヘッド40Aは、複数のノズル41が形成されたノズル面42を備えている。ここでは、ノズル面42は、第1インクヘッド40Aの下面である。ノズル41は、インクが吐出される微細な孔である。複数のノズル41には、それぞれ、圧電素子を備えたアクチュエータが接続されている。各アクチュエータが駆動することによって、各ノズル41はインクを吐出する。各アクチュエータは、ノズル41と連通しインクが貯留される圧力室と、圧力室に接する圧電素子とを備えている。圧電素子に印加される電圧を変化させると圧電素子は膨張・収縮し、その変位によって圧力室の体積が変化する。この圧力室の体積の変化によってインクがノズル41から吐出される。複数のアクチュエータは、制御装置150に電気的に接続され、制御装置150によって制御されている。第1インクヘッド40Aにおいて、複数のノズル41は、副走査方向Xに延びる2つのノズル列43aおよび43bを形成している。第1ノズル列43aと第2ノズル列43bとは、主走査方向Yに並んでいる。
ノズル面42には、撥水処理が施されている。撥水処理は、後述するヘッドクリーニングの際にノズル面42に付着したインクを除去しやすくするための処理である。撥水処理としては、公知の種々の処理を用いることができる。
第1インクヘッド40Aのノズル面42の周囲には、周辺領域44が形成されている。周辺領域44は、ここでは、ヘッドガード45と、ヘッド側面46とを含んでいる。ヘッドガード45は、ノズル面42の周囲を囲むように形成されている。ヘッドガード45は、下方から見ると、四角形のリング状に形成されている。ヘッドガード45は、ノズル面42よりも下方に突出している。ヘッドガード45は、ノズル41に障害物が激突するのを防止するために設けられている。ヘッドガード45とノズル面42との境界42aおよび42bには、段差が形成されている。境界42aは、ヘッドガード45とノズル面42との境界のうち、第1副走査方向X1側の境界である。境界42bは、ヘッドガード45とノズル面42との境界のうち、第2副走査方向X2側の境界である。なお、以下では、境界42aおよび42bを段差42aおよび42bと呼ぶこともある。ヘッドガード45は、例えば、ステンレス鋼によって形成されている。ヘッドガード45の下面は、ノズル面42と略平行に形成されている。
ヘッドガード45の下面には、ノズル面42よりも第1副走査方向X1側に位置する領域45aと、ノズル面42よりも第2副走査方向X2側に位置する領域45bとが含まれている。以下では、領域45aを第1周辺領域45aとも称する。また、以下では、領域45bを第2周辺領域45bとも称する。
図1に示すように、第1インクヘッド40Aの下面は、キャリッジ20の下面よりも下方に位置している。そこで、図3に示すように、第1インクヘッド40Aは、キャリッジ20に装着された状態で外部に露出したヘッド側面46を備えている。ヘッド側面46は、第1周辺領域45aよりもさらに第1主走査方向Y1側に位置する第1ヘッド側面46aと、第2周辺領域45bよりもさらに第2主走査方向Y2側に位置する第2ヘッド側面46bとを含んでいる。第1ヘッド側面46aは、ここでは、第1周辺領域45aと略垂直に延びている。ただし、第1ヘッド側面46aは、第1周辺領域45aと略垂直でない角度で交差していてもよい。第2ヘッド側面46bは、ここでは、第2周辺領域45bと略垂直に延びている。ただし、第2ヘッド側面46bは、第2周辺領域45bと略垂直でない角度で交差していてもよい。
第2インクヘッド40B~第4インクヘッド40Dも、第1インクヘッド40Aと同じ構成を備えている。インクヘッド40A~40Dのノズル列には、それぞれ1つのインクカートリッジ(図示せず)が接続されている。インクヘッド40A~40Dのノズル列からは、それぞれに接続されたインクカートリッジに貯留されたインクが吐出される。インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。ここでは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インクが使用されている。
図1に示すように、キャリッジ20には、紫外線ランプ25が設けられている。ここでは、紫外線ランプ25は、キャリッジ20の左側面に設けられている。紫外線ランプ25は、副走査方向Xに延びている。紫外線ランプ25は、テーブル30に向かって紫外線を照射する。紫外線ランプ25は、制御装置150に電気的に接続され、制御装置150によって制御されている。
本実施形態に係る移動装置50は、キャリッジ移動装置60と、テーブル移動装置70とを備えている。キャリッジ移動装置60は、キャリッジ20を主走査方向Yに移動させるように構成されている。キャリッジ移動装置60は、ガイドレール61と、ベルト62と、図示しない左右のプーリと、キャリッジモータ63とを備えている。ガイドレール61には、キャリッジ20が摺動自在に係合している。ガイドレール61は、プリンタ本体11に固定され、主走査方向Yに延びている。ガイドレール61は、キャリッジ20の主走査方向Yへの移動をガイドする。ベルト62は、キャリッジ20に固定されている。ベルト62は、無端状のベルトである。ベルト62は、ガイドレール61の左右に設けられた図示しないプーリに巻き掛けられている。一方のプーリにはキャリッジモータ63が取り付けられている。キャリッジモータ63は、制御装置150と電気的に接続されている。キャリッジモータ63は、制御装置150によって制御される。キャリッジモータ63が駆動するとプーリが回転し、ベルト62が走行する。それにより、キャリッジ20がガイドレール61に沿って主走査方向Yに移動する。
テーブル30の下方には、テーブル移動装置70が配置されている。テーブル移動装置70は、テーブル30を副走査方向Xおよび上下方向Zに移動させる。テーブル移動装置70は、テーブル30を下方から支持している。テーブル移動装置70は、Z軸方向移動機構71と、X軸方向移動機構72とを備えている。Z軸方向移動機構71は、テーブル30を支持して上下方向Zに移動させる。Z軸方向移動機構71は、図示しないボールねじ機構とモータとを備えている。ボールねじ機構は、モータによって駆動される。Z軸方向移動機構71は、X軸方向移動機構72によって下方から支持されている。X軸方向移動機構72は、テーブル30を副走査方向Xに移動させる。X軸方向移動機構72は、図示しないボールねじ機構とモータとを備えている。
移動装置50の構成は、特に限定されない。移動装置50は、インクヘッド40A~40Dとテーブル30とのうちの少なくとも一方を主走査方向Yに移動させる移動機構と、インクヘッド40A~40Dとテーブル30とのうちの少なくとも一方を副走査方向Xに移動させる移動機構とを備えていればよく、それ以上限定されない。例えば、移動装置は、テーブル30またはキャリッジ20のいずれか一方を、主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zに移動させてもよい。または、テーブル30とキャリッジ20の両方を、主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zに移動させてもよい。インクヘッド40A~40Dと、テーブル30との移動は相対的なものであり、いずれの部材がいずれの方向に移動されるかは限定されない。移動装置50は、制御装置150と電気的に接続され、制御装置150によって制御されている。
図1に示すように、キャリッジ20の可動範囲の右端には、ホームポジションHPが設定されている。ホームポジションHPは、印刷待機時などにキャリッジ20が配置される位置である。ホームポジションHPにおけるキャリッジ20の下方には、キャッピング装置80が配置されている。キャッピング装置80は、キャップ81と、キャップ移動機構82と、吸引ポンプ83とを備えている。
キャップ81は、インクヘッド40A~40Dと同数設けられている。1つのインクヘッドには1つのキャップ81が対応している。キャップ81は、上面が開口した容器状の形状を有している。キャップ81は、ゴム等によって形成されている。
複数のキャップ81は、1つのキャップ移動機構82によって支持されている。キャップ移動機構82は、複数のキャップ81をインクヘッド40A~40Dのノズル面42に接触させ、または離間させるように構成されている。キャップ移動機構82は、キャップ81を下方から支持して上下方向Zに移動する。それにより、キャップ81は、インクヘッド40A~40Dに装着され、また離間される。キャップ81は、インクヘッド40A~40Dに装着されたとき、上縁がノズル面42に押し当てられる。そこで、キャップ81の弾性によって、キャップ81はノズル面42に密着する。
吸引ポンプ83は、図示しないチューブ等を介して複数のキャップ81に接続されている。吸引ポンプ83は、キャップ81内に溜まったインク等を吸引する。吸引ポンプ83は、制御装置150に電気的に接続され、制御装置150によって制御されている。
キャッピング装置80の左方には、ワイピング装置90が設けられている。ワイピング装置90は、ワイパー91と、ワイパー移動機構92とを備えている。ワイパー91は、平板状に形成されている。ワイパー91は、ノズル面42を払拭可能ではあるが、インクを吸収しない材質で形成されている。ワイパー91の材質は、例えば、ゴムである。ワイパー91は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びている。ワイパー91の前後方向の面は、ノズル面42を払拭するワイピング面を構成している。
ワイパー91は、ワイパー移動機構92に保持されている。ワイパー移動機構92は、ワイパー91をインクヘッド40A~40Dに対して副走査方向Xに移動させるように構成されている。ワイパー移動機構92は、副走査方向Xに延びるガイドレールと、モータ(いずれも図示せず)とを備えている。ワイパー移動機構92は、制御装置150に電気的に接続され、制御装置150によって制御されている。
図1に示すように、プリンタ10の右端部には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置150が収容されている。図4は、プリンタ10のブロック図である。図4に示すように、制御装置150には、紫外線ランプ25と、第1インクヘッド40A~第4インクヘッド40Dと、キャリッジモータ63と、Z軸方向移動機構71と、X軸方向移動機構72と、キャップ移動機構82と、吸引ポンプ83と、ワイパー移動機構92とが接続されている。制御装置150は、これらの動きを制御している。
制御装置150の構成は特に限定されない。制御装置150は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。
図4に示すように、制御装置150は、クリーニング制御部160と、ワイピング制御部170と、キャッピング制御部180とを備えている。クリーニング制御部160は、クリーニングユニット100を使用したインクヘッド40A~40Dのクリーニングの動作を制御する。ワイピング制御部170は、ワイピング装置90によるインクヘッド40A~40Dのワイピングの動作を制御する。キャッピング制御部180は、キャップ81をインクヘッド40A~40Dに装着するキャッピングの動作、および吸引ポンプ83でキャップ81内を吸引する吸引動作を制御する。制御装置150は、印刷など他の機能を担当する制御部を備えていてもよいが、ここでは説明および図示を省略する。
図4に示すように、クリーニング制御部160は、第1ノズルクリーニング部161と、第1周辺クリーニング部162と、第1側面クリーニング部163と、第2ノズルクリーニング部164と、第2周辺クリーニング部165と、第2側面クリーニング部166とを備えている。
第1ノズルクリーニング部161は、移動装置50を制御して、クリーニングユニット100をインクヘッド40A~40Dのノズル面42に接触させる。さらに、第1ノズルクリーニング部161は、その状態でクリーニングユニット100をインクヘッド40A~40Dに対して第1副走査方向X1に移動させ、ノズル面42の一部、より詳しくは、ノズル面42の第1副走査方向X1側の約半分を払拭する。
第1周辺クリーニング部162は、ノズル面42の第1副走査方向X1側の約半分が払拭された後、第1周辺領域45aにクリーニングユニット100を接触させる。さらに、第1周辺クリーニング部162は、その状態でクリーニングユニット100をインクヘッド40A~40Dに対して主走査方向Yに移動させ、第1周辺領域45aを払拭する。このとき、クリーニングユニット100を第1主走査方向Y1に移動させるか、第2主走査方向Y2に移動させるか、または両方に移動させるかは限定されない。第1周辺クリーニング部162は、インクヘッド40A~40Dに対してクリーニングユニット100を主走査方向Yに所定の回数だけ往復移動させることによって第1周辺領域45aを払拭してもよい。なお、このとき実際に移動するのは、キャリッジ20に搭載されたインクヘッド40A~40Dである。
第1側面クリーニング部163は、第1周辺領域45aが払拭された後、第1ヘッド側面46aにクリーニングユニット100を接触させる。さらに、第1側面クリーニング部163は、その状態でクリーニングユニット100をインクヘッド40A~40Dに対して主走査方向Yに移動させ、第1ヘッド側面46aを払拭する。このとき、クリーニングユニット100を第1主走査方向Y1に移動させるか、第2主走査方向Y2に移動させるか、または両方に移動させるかは限定されない。
第2ノズルクリーニング部164は、移動装置50を制御して、クリーニングユニット100をインクヘッド40A~40Dのノズル面42に接触させる。さらに、第2ノズルクリーニング部164は、その状態でクリーニングユニット100をインクヘッド40A~40Dに対して第2副走査方向X2に移動させ、ノズル面42の一部、より詳しくは、ノズル面42の第2副走査方向X2側の約半分を払拭する。
第2周辺クリーニング部165は、ノズル面42の第2副走査方向X2側の約半分が払拭された後、第2周辺領域45bにクリーニングユニット100を接触させる。さらに、第2周辺クリーニング部165は、その状態でクリーニングユニット100をインクヘッド40A~40Dに対して主走査方向Yに移動させ、第2周辺領域45bを払拭する。このとき、クリーニングユニット100を第1主走査方向Y1に移動させるか、第2主走査方向Y2に移動させるか、または両方に移動させるかは限定されない。
第2側面クリーニング部166は、第2周辺領域45bが払拭された後、第2ヘッド側面46bにクリーニングユニット100を接触させる。さらに、第2側面クリーニング部166は、その状態でクリーニングユニット100をインクヘッド40A~40Dに対して主走査方向Yに移動させ、第2ヘッド側面46bを払拭する。このとき、クリーニングユニット100を第1主走査方向Y1に移動させるか、第2主走査方向Y2に移動させるか、または両方に移動させるかは限定されない。
ワイピング制御部170は、キャリッジ移動装置60を制御して、主走査方向Yに関してワイパー91と揃った位置にキャリッジ20を移動させる。このとき、ワイパー91は、ガイドレール61よりも後方に位置している。上記移動により、ワイパー91の前方には、第4インクヘッド40Dが位置する。ワイピング制御部170は、この状態からワイパー91を前方に向かって移動させ、第4インクヘッド40Dをワイピングする。以下同様に、キャリッジ20を漸次右方に移動させながら第3インクヘッド40C~第1インクヘッド40Aのワイピングを行う。
キャッピング制御部180は、キャリッジ移動装置60を制御して、ホームポジションHPにキャリッジ20を移動させる。さらに、キャッピング制御部180は、キャップ移動機構82を制御して、キャップ81をインクヘッド40A~40Dに装着する。これにより、待機中のインクヘッド40A~40Dがキャップ81によって覆われ、インクの硬化が防止される。また、キャッピング制御部180は、キャップ81がインクヘッド40A~40Dに装着された状態で吸引ポンプ83を駆動させる。吸引ポンプ83は、定期的に、または必要に応じて駆動される。これにより、ノズル41内の古いインクが吸引され、ノズル41の詰まり等が予防される。
図5は、クリーニングユニット100の斜視図である。クリーニングユニット100は、インクヘッド40A~40Dのノズル面42および周辺領域44を払拭可能なクリーニング部材の一例である。図5に示すように、クリーニングユニット100は、ベース110と、第1払拭部120A~第8払拭部120Hと、シート保持部材130と、脚部140とを備えている。
ベース110は、板状に形成されている。ベース110の上面111には、第1払拭部120A~第8払拭部120Hが設けられている。ベース110の下面112には、脚部140が設けられている。ベース110には、シート保持部材130が着脱される。ベース110は、例えば、金属で形成されている。図5に示すように、ベース110は、弾性体保持部113を備えている。
弾性体保持部113は、ベース110の上面111に形成されている。弾性体保持部113は、第1払拭部120A~第8払拭部120Hの弾性体121を保持する。弾性体保持部113は、ベース110の上面111から1段下がった凹部を有している。凹部は、仕切板113aによって主走査方向Yに区切られている。仕切板113aにより、弾性体保持部113は8つの枠113bに区画されている。
複数の払拭部120A~120Hは、弾性体保持部113に保持された弾性体121と、弾性体121を覆うように設けられたインク吸収体122とを備えている。ここでは、複数の払拭部120A~120Hは、それぞれ1つの弾性体121を備えている。インク吸収体122は、全ての払拭部120A~120Hによって共有されている。
弾性体121は、柔軟性を有する材料によって形成されている。弾性体121は、ゴム、さらに好適には硬度が5度以上20度以下のシリコーンゴムなどで形成されている。弾性体121は、弾性変形可能である。弾性体121は、ここでは、平板状の材料が曲げられて形成されている。弾性体121の平板状の材料は、弾性体保持部113によって外側に凸するように曲げられ、その状態に保持されている。より詳しくは、1つの弾性体121の材料は、弾性体保持部113に形成された8つの枠113bの1つに挿入されている。その際、弾性体121の材料は、主走査方向Yのほぼ中心で曲げられ、両端が枠113bに挿入されている。弾性体121の材料は、両端が主走査方向Yに並ぶように枠113bに挿入されている。そこで、弾性体121は、主走査方向Yの中心がベース110とは逆側に向かって凸した凸面121aを形成している。弾性体121の凸面121aは、その断面形状で副走査方向Xに延びている。弾性体121の副走査方向Xの長さは特に限定されないが、ここでは、ノズル列43aおよび43bの副走査方向Xの長さの半分よりも少し長い長さである。
弾性体121は、鞍型に形成されているため、凸面121aの下方に空間を有している。よって、弾性体121は、それ自身の柔軟性に加えて、その空間が変形する分だけ変形可能である。
インク吸収体122は、インクを吸収するシート状の部材である。ここでは、インク吸収体122は、不織布で形成されている。インク吸収体122は、複数の弾性体121に対して1枚使用されている。インク吸収体122は、主走査方向Yに並んだ複数の弾性体121の上に被せられ、複数の弾性体121を覆っている。インク吸収体122は、弾性体121に着脱可能である。インク吸収体122の主走査方向Yの長さは、複数の弾性体121が主走査方向Yに並んだ長さよりも長く構成されている。また、インク吸収体122の副走査方向Xの長さは、弾性体121よりも長く構成されている。
インク吸収体122は、シート保持部材130によって保持されている。シート保持部材130は、ベース110側(下面)が開口した箱状の形状を有している。シート保持部材130は、主走査方向Yに延びている。シート保持部材130は、上面にも開口131を有している。開口131は、主走査方向Yに並んだ複数の弾性体121を通すように構成されている。そこで、シート保持部材130をベース110に装着したとき、弾性体121の凸面121aは、開口131よりも上方に突出する。シート保持部材130は、主走査方向Yの両側面の下端部にそれぞれ爪部132を備えている。爪部132をベース110の取付溝に嵌め込むことにより、シート保持部材130はベース110に装着される。シート保持部材130は、複数の弾性体121の上に被せられたインク吸収体122を上方から押さえている。
なお、本実施形態では、払拭部120A~120Hは、それぞれ、弾性体121とインク吸収体122とを備えているが、それには限定されない。払拭部120A~120Hは、柔軟性とインク吸収性をともに備えた材料、例えばスポンジ等で形成されていてもよい。
インク吸収体122には、インクヘッド40A~40Dのクリーニング時、少量の洗浄液が塗布される。洗浄液には、インクの溶剤など、インクを溶解する液体が好適に利用可能である。
複数の払拭部120A~120Hは、主走査方向Yに並んでいる。払拭部120A~120Hは、プリンタ10のインクヘッド40A~40Dのノズル面42および周辺領域44をクリーニングする。払拭部120A~120Hは、クリーニングユニット100がテーブル30に装着された際にインクヘッド40A~40Dに対向するように配置されている。
脚部140は、ベース110の下面112に設けられている。脚部140は、プリンタ10のテーブル30に設置される。ここでは、脚部140は、複数の脚141~144を備えている。第1の脚141~第3の脚143は、それぞれ、テーブル30の装着孔31a~31cに挿入される。クリーニングユニット100は、これによりテーブル30に対して位置決めされる。第4の脚144は、テーブル30または治具200上に立脚され、クリーニングユニット100が倒れるのを防止する。第4の脚144は、ベース110における位置、および、ベース110の下面112からの突出長さを調整可能に構成されている。
以下では、インクヘッド40A~40Dのクリーニングのプロセスについて説明する。図6は、インクヘッド40A~40Dのクリーニングの流れを示すフローチャートである。図6に示すように、クリーニングユニット100を使用したクリーニングを含むインクヘッド40A~40Dのクリーニングのプロセスでは、ステップS100において、クリーニングユニット100がテーブル30に装着される。ステップS100は、ユーザーによって行われる。続くステップS200では、クリーニングユニット100によるインクヘッド40A~40Dのクリーニングが行われる。ステップS200では、インク吸収体122によって、ノズル面42および周辺領域44に存在するインクが吸収されて除去される。ステップS200の詳細については後述する。ステップS300では、ワイピング装置90によるインクヘッド40A~40Dのワイピングが行われる。ステップS300により、ノズル41内のインクのメニスカスが整えられる。ステップS400では、インクをキャップ81に向かって吐出するフラッシングが行われる。その後、ステップS500において、インクヘッド40A~40Dにキャップ81が装着される。
図7および図8は、ステップS200の詳細を示すフローチャートである。図7および図8に示すように、ステップS200は、ステップS201~S217の17のステップを含んでいる。図9は、ステップS201における第1インクヘッド40A、第2インクヘッド40B、およびクリーニングユニット100の位置関係を模式的に示す平面図である。図7のステップS201では、クリーニングユニット100が図9の位置に移動される。なお、以下では、実際にはクリーニングユニット100が移動するのか、インクヘッド40A~40Dが移動するのかにかかわらず、「クリーニングユニット100を移動させる」または「インクヘッド40A~40Dを移動させる」等という表現を使う場合がある。ステップS201の時点では、クリーニングユニット100は、インクヘッド40A~40Dよりも下方に位置している。そのため、この時点では、クリーニングユニット100は、インクヘッド40A~40Dに接触していない。
図9に示すように、ステップS201において、クリーニングユニット100の第1払拭部120Aは、第1インクヘッド40Aのノズル面42の第1副走査方向X1側の約半分の領域の下方に位置している。平面視において、第1払拭部120Aの第2副走査方向X2側の端部E2は、ノズル面42の副走査方向Xに関する中心線CLよりも僅かに第2副走査方向X2側に位置している。このとき、第3払拭部120Cは、第2インクヘッド40Bの下方に位置している。第2払拭部120Bは、主走査方向Yに関して、第1インクヘッド40Aと第2インクヘッド40Bの間に位置している。
図示は省略するが、ステップS201の時点では、第5払拭部120Eが第3インクヘッド40Cの下方に位置し、第7払拭部120Gが第4インクヘッド40Dの下方に位置している。
図7に示すように、ステップS202では、クリーニングユニット100が上方に移動される。それにより、第1払拭部120Aは、第1インクヘッド40Aのノズル面42の第1副走査方向X1側の約半分の領域に接触する。第3払拭部120C、第5払拭部120E、第7払拭部120Gは、このとき、それぞれ第2インクヘッド40B~第4インクヘッド40Dのノズル面42の第1副走査方向X1側の約半分の領域に接触する。
ステップS203では、クリーニングユニット100が第1副走査方向X1に移動される(図9の矢印参照)。これにより、第1インクヘッド40A~第4インクヘッド40Dのノズル面42の第1副走査方向X1側の半分強の領域がクリーニングユニット100により払拭される。
ステップS203では、クリーニングユニット100は、第1払拭部120Aの第2副走査方向X2側の端部E2が第1インクヘッド40Aのノズル面42と第1周辺領域45aとの境界42aよりも僅かに第2副走査方向X2側にくる位置まで移動する。図10は、ステップS204における第1インクヘッド40A、第2インクヘッド40B、およびクリーニングユニット100の位置関係を模式的に示す平面図である。図10に示すように、ステップS204の開始時、第1払拭部120Aは、第1周辺領域45aおよび境界42aに接触している。弾性体121は、第1周辺領域45aおよび段差42aによって弾性変形されている。その弾性力により、第1払拭部120Aは、第1周辺領域45aおよび段差42aに接触している。
図10の矢印に示すように、ステップS204では、制御装置150の第1周辺クリーニング部162は、第1払拭部120Aを第1インクヘッド40Aの第1周辺領域45aおよび段差42aに接触させた状態で、クリーニングユニット100を主走査方向Yに移動させる。これにより、第1周辺領域45aおよび段差42aに付着していたインク等の異物の大部分は、インク吸収体122に吸収される。ただし、異物の一部は、第1周辺領域45aおよび段差42aに残留するおそれがある。
ただし、本実施形態では、クリーニングユニット100は、主走査方向Yに移動しながら第1周辺領域45aおよび段差42aを払拭する。そのため、拭き残した異物は、ノズル面42よりも第1主走査方向Y1側または第2主走査方向Y2側に移動する。例えば、ステップS204において予め定められた回数だけクリーニングユニット100が主走査方向Yに往復移動される場合、図10に示すように、異物220は、第1周辺領域45aの主走査方向Yに関する両端部、および、段差42aの主走査方向Yに関する両端部に移動される。前述したように、クリーニングユニット100によるノズル面42のクリーニング、およびワイパー91によるワイピングは、それぞれクリーニングユニット100およびワイパー91を副走査方向Xに移動させて行われる。そのため、ステップS204の後にクリーニングユニット100によるノズル面42のクリーニングまたはワイパー91によるワイピングを行っても、残留した異物220がノズル面42に持ち込まれるおそれが少ない。
同様のことは、第2インクヘッド40Bと第3払拭部120Cとの間、第3インクヘッド40Cと第5払拭部120Eとの間、第4インクヘッド40Dと第7払拭部120Gとの間でも行われる。
図7に示すように、ステップS205では、第1払拭部120Aが第1副走査方向X1に移動される。ステップS205では、第1払拭部120Aは、第1インクヘッド40Aの第1ヘッド側面46aよりも第1副走査方向X1側まで移動される。これにより、第1払拭部120Aは、第1インクヘッド40Aから離間する。弾性体121は、この離間により弾性変形された状態から回復する。それにより、弾性体121およびインク吸収体122の上端は、ノズル面42よりも上方に移動する。
ステップS206では、クリーニングユニット100は、第2副走査方向X2に移動される。これにより、クリーニングユニット100は、第1払拭部120Aの第2副走査方向X2側の端部E2が第1インクヘッド40Aの第1ヘッド側面46aに接触する位置に移動する。図11は、ステップS207における第1インクヘッド40A、第2インクヘッド40B、およびクリーニングユニット100の位置関係を模式的に示す平面図である。図11の矢印に示すように、ステップS207では、第1払拭部120Aの第2副走査方向X2側の端部E2を第1ヘッド側面46aに接触させた状態で、クリーニングユニット100を主走査方向Yに移動させ、第1ヘッド側面46aを払拭する。図11に示すように、第1ヘッド側面46aに付着していた異物のうちインク吸収体122に吸収されなかった異物220は、これにより、ノズル面42よりも第1主走査方向Y1側または第2主走査方向Y2側に移動する。
同様のことは、第2インクヘッド40Bと第3払拭部120Cとの間、第3インクヘッド40Cと第5払拭部120Eとの間、第4インクヘッド40Dと第7払拭部120Gとの間でも行われる。
図7に示すように、ステップS208では、クリーニングユニット100が降下される。それにより、クリーニングユニット100は、第1インクヘッド40A~40Dから離間する。
図8に示すように、ステップS209では、インクヘッド40A~40Dが第2主走査方向Y2に移動される。ステップS209により、第1インクヘッド40Aは、第2払拭部120Bと副走査方向Xに並ぶ位置に移動される。同じく、ステップS209により、第2インクヘッド40B~第4インクヘッド40Dは、それぞれ、第4払拭部120D、第6払拭部120F、第8払拭部120Hと副走査方向Xに並ぶ位置に移動される。続くステップS210では、クリーニングユニット100が第2副走査方向X2に移動される。
図12は、ステップS210における第1インクヘッド40A、第2インクヘッド40B、およびクリーニングユニット100の位置関係を模式的に示す平面図である。図12に示すように、ステップS210において、クリーニングユニット100の第2払拭部120Bは、第1インクヘッド40Aのノズル面42の第2副走査方向X2側の約半分の領域の下方に位置している。平面視において、第2払拭部120Bの第1副走査方向X1側の端部E1bは、ノズル面42の副走査方向Xに関する中心線CLよりも僅かに第1副走査方向X1側に位置している。
以下のステップS211~S217は、第1副走査方向X1と第2副走査方向X2とが入れ替わることと、使用される払拭部が変わることとを除いて、ステップS202~S208と同様である。即ち、図8に示すように、ステップS211では、クリーニングユニット100が上昇される。ステップS212では、クリーニングユニット100が第2副走査方向X2に移動され、第1インクヘッド40Aのノズル面42の第2副走査方向X2側の半分強の領域が払拭される(図12の矢印参照)。なお、ステップS204で払拭される領域とステップS212で払拭される領域とは、一部重複している。ステップS213では、第2払拭部120Bを第2周辺領域45bおよび段差42bに接触させた状態で主走査方向Yに移動させ、第2周辺領域45bおよび段差42bを払拭する。
ステップS214では、第2払拭部120Bが第1インクヘッド40Aの第2ヘッド側面46bよりも第2副走査方向X2側まで移動される。ステップS215では、クリーニングユニット100は、第1副走査方向X1に移動され、第1インクヘッド40Aの第2ヘッド側面46bに接触する。ステップS216では、第2払拭部120Bを第2ヘッド側面46bに接触させた状態で、クリーニングユニット100を主走査方向Yに移動させ、第2ヘッド側面46bを払拭する。ステップS217では、クリーニングユニット100が下降される。それにより、クリーニングユニット100は、第1インクヘッド40A~40Dから離間する。
同様のことは、第2インクヘッド40Bと第4払拭部120Dとの間、第3インクヘッド40Cと第6払拭部120Fとの間、第4インクヘッド40Dと第8払拭部120Hとの間でも行われる。なお、ステップS211~S217は、ステップS202~S208と基本的に同様であるため、それらに係る図示は省略する。
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10は、クリーニングユニット100をノズル面42に接触させた状態で副走査方向Xに移動させてノズル面42を払拭するとともに、クリーニングユニット100を第1周辺領域45aに接触させた状態で主走査方向Yに移動させて第1周辺領域45aを払拭するように構成されている。従来のヘッドクリーニングの方法では、第1周辺領域もノズル面と同様に副走査方向に移動するクリーニング部材によって払拭されるため、第1周辺領域に残留した拭き残しのインク等が次回のヘッドクリーニング時にクリーニング部材によってノズル面に持ち込まれやすかった。しかし、本実施形態に係るプリンタ10によれば、第1周辺領域45aの異物は、残留したとしても、ノズル面42よりも第1主走査方向Y1側または第2主走査方向Y2側に残留する。そのため、第1周辺領域45aの異物がノズル面42に持ち込まれにくい。
また、上記構成によれば、ノズル面42を払拭する際の払拭方向(ここでは、副走査方向X)と直交する第2の払拭方向(ここでは、主走査方向Y)にクリーニングユニット100を移動させることが、プリンタ10の構成の複雑化やコストアップを抑えながら可能である。例えば、第1の払拭方向に移動してノズル面を払拭する第1のクリーニング部材と、第2の払拭方向に移動して周辺領域を払拭する第2のクリーニング部材とを備えるプリンタと比較すると、本実施形態に係るプリンタ10の構成はシンプルである。
なお、クリーニングユニット100を主走査方向Yに往復移動させて第1周辺領域45aの払拭を行えば、第1周辺領域45aに残留する拭き残しの異物を減らすことができ、異物がノズル面42に持ち込まれるおそれがさらに低減される。往復回数は、例えば、2回~5回が好ましいが、1回でもよい。また、クリーニングユニット100の移動は、第1主走査方向Y1または第2主走査方向Y2に1回だけ(片道)でもよい。
本実施形態に係るプリンタ10は、クリーニングユニット100を第1周辺領域45aおよび第1周辺領域45aとノズル面42との間に形成された段差42aに接触させた状態で主走査方向Yに移動させるように構成されている。かかる構成によれば、異物が残留しやすい段差42aにおいて、少なくとも異物をノズル面42よりも第1主走査方向Y1側または第2主走査方向Y2側に移動させることができる。
特に本実施形態では、クリーニングユニット100は、弾性変形可能な弾性体121を備えており、弾性体121が第1周辺領域45aおよび段差42aによって弾性変形されることによって第1周辺領域45aおよび段差42aに接触する。かかる構成によれば、クリーニングユニット100の払拭部が第1周辺領域45aおよび段差42a(特に段差42a)に密着するため、第1周辺領域45aおよび段差42aの異物の拭き残しを少なくすることができる。
また、本実施形態では、クリーニングユニット100は、弾性体121を覆うように設けられ、インクを吸収するインク吸収体122を備えている。かかる構成によれば、インク吸収体122の吸収力によって、より確実にインクを除去することができる。
本実施形態に係るプリンタ10は、クリーニングユニット100をヘッド側面46aおよび46bに接触させた状態で主走査方向Yに移動させてヘッド側面46aおよび46bを払拭するように構成されている。ヘッド側面にはクリーニング後に異物が残留することがあり、従来の方法では、これがノズル面に持ち込まれるおそれが高かったが、本実施形態に係るプリンタ10によれば、異物をノズル面42よりも第1主走査方向Y1側または第2主走査方向Y2側に移動させることができる。そのため、ヘッド側面46aおよび46bに残留した異物がノズル面42に持ち込まれるおそれを低減することができる。
本実施形態に係るプリンタ10は、クリーニングユニット100を第1副走査方向X1側に向かって移動させてノズル面42の第1副走査方向X1側の約半分を払拭し、クリーニングユニット100を第2副走査方向X2側に向かって移動させてノズル面42の第2副走査方向X2側の約半分を払拭するように設定されている。また、プリンタ10は、クリーニングユニット100を主走査方向Yに移動させて第2周辺領域45bを払拭する。かかる動作によれば、クリーニングユニット100は、ノズル面42から第1周辺領域45aまたは第2周辺領域45bに向かって移動され、第1周辺領域45aまたは第2周辺領域45bからノズル面42に向かっては移動されない。よって、異物がノズル面42に持ち込まれるおそれをさらに低減することができる。なお、本実施形態では、ノズル面42のうちクリーニングユニット100を第1副走査方向X1側に向かって移動させてクリーニングする領域と、第2副走査方向X2側に向かって移動させてクリーニングする領域とは、ノズル面42の副走査方向Xに関する中心線CL付近で区分されているが、ノズル面42のどこで区分されてもよい。
さらに本実施形態では、クリーニングユニット100は、1つのインクヘッドを払拭するための2つの払拭部を備えている。例えば第1インクヘッド40Aの場合、ノズル面42の第1副走査方向X1側の約半分は、第1払拭部120Aによって払拭される。第1周辺領域45aも、第1払拭部120Aによって払拭される。一方、ノズル面42の第2副走査方向X2側の約半分は、第2払拭部120Bによって払拭される。第2周辺領域45bも、第2払拭部120Bによって払拭される。そのため、ノズル面42の第1副走査方向X1側の約半分を払拭するときも、第2副走査方向X2側の約半分を払拭するときも、使用される払拭部は清浄である。よって、より高品質にノズル面42をクリーニングすることができる。
本実施形態では、クリーニングユニット100は、テーブル30に脱着自在に構成されている。移動装置50は、インクヘッド40A~40Dおよびテーブル30を移動させることによって、クリーニングユニット100をインクヘッド40A~40Dに対して移動させる。かかる構成によれば、インクヘッド40A~40Dとクリーニングユニット100との相対位置を変化させる機構を別に設ける必要がない。そのため、プリンタ10の構成を複雑化させず、コストアップも抑えることができる。
本実施形態では、クリーニングユニット100は、インクを吸収するインク吸収体122を備えている。また、プリンタ10は、ノズル面42を払拭可能であってインクを吸収しないワイパー91を備えている。インク吸収体122によれば、インクヘッド40A~40Dに付着したインクをより確実に除去することができる。ただし、インク吸収体122によるインク吸収は、ノズル41内のインクのメニスカスを破壊する。そこで、本実施形態では、プリンタ10は、インクを吸収しないワイパー91をさらに備え、ワイパー91によるワイピングによってノズル41内のインクのメニスカスを整えることができるように構成されている。
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、上記の実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では、まずノズル面42が払拭され、次いで周辺領域44が払拭された。しかし、クリーニングの手順は、これに限定されない。例えば、周辺領域44の払拭は、ノズル面42の払拭よりも前に行われてもよい。
上記した実施形態では、ノズル面42の払拭は、ノズル面42の内方から周辺領域44に向かって、2回に分けて行われていた。しかし、ノズル面42の払拭方法はこれに限定されず、例えば、副走査方向Xの一方から他方に向けて1回で行われてもよい。
上記した実施形態では、周辺領域44のうちノズル面42よりも第1副走査方向X1または第2副走査方向X2に位置する領域だけが払拭されたが、周辺領域44の他の部分も払拭されてもよい。例えば、ヘッドガード45のうちノズル面42よりも第1主走査方向Y1または第2主走査方向Y2に位置する部分がさらに払拭されてもよい。また、上記した実施形態では、第1周辺領域45a、第2周辺領域45b、第1ヘッド側面46a、および第2ヘッド側面46bがクリーニングされたが、必要に応じて、これらのうちの一部だけがクリーニングされてもよい。例えば、第1周辺領域45aおよび第2周辺領域45bはクリーニングされず、第1ヘッド側面46aおよび第2ヘッド側面46bだけがクリーニングされてもよい。
上記した実施形態では、ノズル面42の払拭方向は、ノズル列43aおよび43bの伸長方向と一致していたが、例えば、ノズル列の伸長方向と直交していてもよい。ノズル面の払拭方向は限定されず、従って、それに直交する周辺領域の払拭方向も、それ以上限定されない。
上記した実施形態では、クリーニングユニット100は被印刷物5を支持するテーブル30に脱着自在に構成されていた。しかし、クリーニングユニットは、インクヘッドとの間の相対位置を変化させることができるように構成されていればよく、テーブルに装着されるユニットには限定されない。例えば、クリーニングユニットは、テーブル外の移動装置に搭載されていてもよい。あるいは、インクヘッドが三次元的に移動し、クリーニングユニットは固定されていてもよい。クリーニングユニットとインクヘッドとの位置関係を変化させるための構成は特に限定されない。
クリーニングユニットの構成もまた、限定されない。上記したクリーニングユニット100の構成は好適な1つの例に過ぎない。例えば、クリーニングユニットは、インク吸収体を備えなくてもよい。クリーニングユニットは、通常のゴムワイパー状のものでも構わない。また、クリーニングユニットは、ワイピング装置であっても構わない。
その他、インクジェットプリンタの構成については、特に言及がない限りにおいて限定されない。例えば、ここに開示する技術は、ロール・トゥー・ロールタイプのインクジェットプリンタなどに対しても利用できる。また、例えば、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタなどのように、その一部にインクジェットプリンタが組み込まれた装置にも利用できる。