JP2016190487A - 転写シート、ハードコート積層体及びハードコート積層体の製造方法 - Google Patents

転写シート、ハードコート積層体及びハードコート積層体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016190487A
JP2016190487A JP2016066874A JP2016066874A JP2016190487A JP 2016190487 A JP2016190487 A JP 2016190487A JP 2016066874 A JP2016066874 A JP 2016066874A JP 2016066874 A JP2016066874 A JP 2016066874A JP 2016190487 A JP2016190487 A JP 2016190487A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hard coat
layer
primer layer
transfer sheet
resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2016066874A
Other languages
English (en)
Inventor
健治 上野
Kenji Ueno
健治 上野
松岡 雅尚
Masanao Matsuoka
雅尚 松岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Nippon Printing Co Ltd filed Critical Dai Nippon Printing Co Ltd
Publication of JP2016190487A publication Critical patent/JP2016190487A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

【課題】被転写体に対して優れた耐候性、光学的性能、及び、ハードコート性を有するハードコート層を転写により容易に形成してハードコート積層体を得ることができ転写フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム上に、少なくとも、ハードコート層とプライマー層とをこの順に有する転写シートであって、上記基材フィルムを除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にあり、上記プライマー層は、粒子と紫外線吸収剤とを含み、上記粒子の屈折率と上記紫外線吸収剤の屈折率との差△nが0.13以内であることを特徴とする転写シート。
【選択図】図1

Description

本発明は、転写シート及びこれを用いたハードコート積層体、並びに、ハードコート積層体の製造方法に関する。
樹脂成形品に耐傷性などのハードコート性を付与するために、樹脂成形品の表面にハードコート層を設けることが行われており、このようなハードコート層は、通常コーティングや転写により樹脂成形品の表面に形成されている(例えば、特許文献1〜3等参照)。このような樹脂成形品は、一般住居や公共施設の建築構造物の外装材や内装材、自動車内外装用の部品や、太陽電池カバー又は太陽電池基板、家電製品の部材などに使用でき、とりわけ、バルコニーの仕切り板、テラスやカーポートなどの屋根部材、車両や建造物のウインドウ、その他、防音壁や風防壁など透明プラスチックを用いた製品に好適に用いられる。そして、これらの用途においては、日々直射日光や風雨に晒されるため、極めて厳しい耐候性が求められている。
しかしながら、これらの特許文献に記載されているような従来のハードコート層は、樹脂成形品に耐傷性などのハードコート性を付与するものではあるが、耐候性については充分な特性を有するものではなかった。
ハードコート性と耐候性とは、相反する特性であり、ハードコート性が良い、すなわち表面の硬度が高いもの、すなわち硬直なものでは、表面層にひび割れを生じて剥離してしまい、耐候性に乏しくなる傾向にある。一方、ハードコート性に劣る、すなわち表面の硬度が低く、柔軟性のある表面層を有するものでは、直射日光や風雨に晒された際に、表面層が剥離するようなことはなく、表面形状を維持し、優れた耐候性を有する傾向にあることが知られている。そのため、特に屋外で用いられる部材などの用途においては、いわゆるハードコート性と耐候性とを兼ね備えた表面保護層を有する製品が要望されている。
このような要望に対し、例えば、特許文献4には、被転写体、接着層、紫外線吸収剤を含むプライマー層、及び、ハードコート性を有する表面保護層を順に有するハードコート体が開示されている。
このようなハードコート体は、被転写体の表面硬度をハードコート層で担保する一方で、耐候性を確保するためにプライマー層に耐候剤を多量に添加することで、優れた耐候性とハードコート性とを有する表面保護層を、熱転写により被転写体に対して容易に形成して得ることができるものであった。
ところで、近年では、需要者の要求する光学的性能は厳しくなってきていることから、例えば、透明プラスチック等の用途においては、より優れた透明性が求められてきている。しかしながら、プライマー層中に耐候剤を多量に添加することで、ブリードアウトのような耐候剤の偏析がハードコート体の光学的性能に影響を及ぼし、従来のハードコート体では、このような近年のより高い光学的性能への要求に充分に応えることができないことがあった。
特開2004−345228号公報 特開2007―253341号公報 特開平10−166510号公報 特開2014−208493号公報
本発明は、優れた耐候性、光学的性能及びハードコート性を有する転写シート、及び、該転写シートを用いてなるハードコート積層体を提供することを目的とするものである。
本発明は、基材フィルム上に、少なくとも、ハードコート層とプライマー層とをこの順に有する転写シートであって、上記基材フィルムを除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にあり、上記プライマー層は、粒子と紫外線吸収剤とを含み、上記粒子の屈折率と上記紫外線吸収剤の屈折率との差△nが0.13以内であることを特徴とする転写シートである。
本発明の転写シートの好ましい態様は、次のようである。
すなわち、本発明の転写シートは、上記基材フィルムを除いた状態で測定した波長290nmにおける吸光度A290が1.5以上7.0以下であることが好ましい。
また、上記粒子は、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、及び、樹脂材料から選択される少なくとも一種の材料から構成される粒子であることが好ましい。
また、本発明の転写シートは、上記基材フィルム上に、ハードコート層、プライマー層及び接着層をこの順に有することが好ましい。
また、本発明の転写シートは、上記接着層表面の算術平均粗さが250nm以下であることが好ましい。
また、上記プライマー層の平均屈折率が1.56以下であることが好ましい。
また、本発明は、少なくとも、基材フィルム、ハードコート層、プライマー層及び樹脂基体をこの順に有するハードコート積層体であって、上記基材フィルムと上記樹脂基体とを除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にあり、上記プライマー層は、粒子と紫外線吸収剤とを含み、上記粒子の屈折率と上記紫外線吸収剤の屈折率との差△nが0.13以内であることを特徴とするハードコート積層体(以下、第一のハードコート積層体ともいう)でもある。
また、少なくとも、ハードコート層、プライマー層及び樹脂基体をこの順に有するハードコート積層体であって、上記樹脂基体を除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にあり、上記プライマー層は、粒子と紫外線吸収剤とを含み、上記粒子の屈折率と上記紫外線吸収剤の屈折率との差△nが0.13以内であることを特徴とするハードコート積層体も別の態様に係る本発明の一つである(以下、第二のハードコート積層体ともいう)。
なお、以下、上記第一のハードコート積層体と第二ハードコート積層体とを区別しないときは、本発明のハードコート積層体と称して説明する。
本発明のハードコート積層体の好ましい態様は、次のようである。
第一のハードコート積層体は、上記基材フィルムと樹脂基体とを除いた状態で測定した波長290nmにおける吸光度A290が1.5以上7.0以下であることが好ましい。
また、第二のハードコート積層体は、上記樹脂基体を除いた状態で測定した波長290nmにおける吸光度A290が1.5以上7.0以下であることが好ましい。
また、本発明のハードコート積層体において、上記粒子は、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、及び、樹脂材料から選択される少なくとも一種の材料から構成される粒子であることが好ましい。
また、本発明のハードコート積層体は、上記プライマー層と上記樹脂基体の間に接着層を有することが好ましく、上記プライマー層の平均屈折率が1.56以下であることが好ましい。
また、本発明は、本発明の転写シートの基材フィルム側とは反対側の面と樹脂基体とを当接させた状態で、上記転写シートと上記樹脂基体とを貼合することを特徴とするハードコート積層体の製造方法でもある。
また、本発明の転写シートの基材フィルム側とは反対側の面と樹脂基体とを当接させた状態で、上記転写シートと上記樹脂基体とを貼合し、上記転写シートから基材フィルムを剥離させることを特徴とするハードコート積層体の製造方法もまた、別の態様に係る本発明の一つである。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明の好ましい態様を適宜組み合わせた態様も、本発明の好ましい態様である。
本発明者らは、被転写体に表面保護層(ハードコート層)を転写法により形成する転写シートについて鋭意検討した結果、従来の転写シートは、紫外線吸収剤を含むプライマー層を備えた構成を有するが、該紫外線吸収剤にブリードアウトが生じており、該紫外線吸収剤のブリードアウトが転写シートの光学的性能の低下の原因になっていたことを見出した。これは、以下に挙げる理由によると推測される。
すなわち、従来の転写シートは、通常、基材フィルム上にハードコート層、プライマー層及び接着層をこの順に備えた構成を有しており、上記基材フィルム上にハードコート層及びプライマー層を形成した後、更に必要に応じて接着層を形成することで製造される。ここで、上記プライマー層を形成した状態でロール状に巻き取ったり、ロールトゥロールでの製造時にガイドロールによりプライマー層表面が押さえられたりすることがあるため、上記プライマー層には耐ブロッキング性が求められる。このため、上記プライマー層には、粒子が添加され、その表面に所定の凹凸形状が形成されている。
ところが、上記プライマー層には上記の通り紫外線吸収剤も含有されているが、上記プライマー層を形成した状態で上記紫外線吸収剤のブリードアウトが生じて、上記プライマー層の接着層側の表面付近の上記粒子表面や該粒子の凝集物に移行してしまうことがあった。
上記紫外線吸収剤は、通常、上記粒子よりも屈折率の高い材料から構成されているため、該紫外線吸収剤のブリードアウトが生じると、上記プライマー層の接着層を形成する側の表面部分に、あたかも高屈折率層(以下、擬似高屈折率層ともいう)が形成されたような状態となる。そうすると、上記擬似高屈折率層と粒子との屈折率差が大きく、更に、上記粒子はプライマー層表面に凹凸形状を形成しているため、該粒子と、その上に形成された擬似高屈折率層との界面で光の散乱が生じ、その結果、転写シートの光学的性能(透明性)が低下していたものと推測される。
そして、本発明者らは、更に鋭意検討した結果、上記プライマー層に含有させる紫外線吸収剤と粒子との屈折率差が所定の範囲内となるよう高度に制御することで、上記紫外線吸収剤のブリードアウトが生じて擬似高屈折率層が形成されたとしても、該擬似高屈折率層と粒子との界面で生じる光の散乱を抑制でき、耐候性とハードコート性とに加え、光学的性能にも優れた転写シートとすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、本明細書において、「光学的性能に優れる」とは、意図しない白化や着色が生じることのない性能を有していること意味し、代表的には「透明性に優れる」ことである。
本発明の転写シートは、基材フィルム上に、少なくとも、ハードコート層とプライマー層とをこの順に有する。
このような構成の本発明の転写シートは、上記基材フィルムを除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にある。
本発明の転写シートにおいて、上記吸光度A350とは、後述するプライマー層による吸光度と見做すことができ、該プライマー層に含有させる紫外線吸収剤の量とプライマー層の厚みとを調整することで、上記吸光度A350の値を調整することができる。すなわち、本発明の転写シートから基材フィルムを除いた構成では、波長350nmの光の殆どは、上記プライマー層によって吸収される。
また、上記吸光度A350が上記範囲に制御された本発明の転写シートは、可視光領域に近い波長の紫外線を充分に吸収でき、優れた耐候性を有するものとなる。上記吸光度A350が1.4未満であると、本発明の転写シートの耐候性が不充分となり、7.0を超える吸光度とするには後述するプライマー層の厚みを極めて厚くする必要あり現実的でない。上記吸光度A350の好ましい下限は1.5、好ましい上限は6.0であり、より好ましい下限は1.6であり、より好ましい上限は5.0である。
また、本発明の転写シートは、上記基材フィルムを除いた状態で測定した波長290nmにおける吸光度A290が1.5以上7.0以下であることが好ましい。
上記吸光度A290も上記波長350nmにおける吸光度A350と同様に後述するプライマー層による吸光度と見做すことができ、該プライマー層に含有させる紫外線吸収剤の量とプライマー層の厚みとを調整することで、上記吸光度A290を調整することができる。すなわち、本発明の転写シートから基材フィルムを除いた構成では、波長290nmの光の殆どは、上記プライマー層によって吸収される。
また、上記吸光度A290が上記範囲に制御された本発明の転写シートは、高いエネルギーの紫外線を充分に吸収できるため、極めて耐候性に優れたものとなる。
上記吸光度A290が1.5未満であると、本発明の転写シートの耐候性が不充分となることがあり、7.0を超える吸光度とするには後述するプライマー層の厚みを極めて厚くする必要があり現実的でない。上記吸光度A290のより好ましい下限は2.0、より好ましい上限は6.0であり、更に好ましい下限は2.4であり、更に好ましい上限は5.0である。
なお、本明細書において、上記吸光度A350、及び、吸光度A290は、紫外可視近赤外分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用いて測定された値である。
例えば、本発明の転写シートが、基材フィルム、ハードコート層及びプライマー層から構成される場合、上記ハードコート層とプライマー層とからなる積層体の上記吸光度A350、及び、吸光度A290を、上記紫外可視近赤外分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用いて測定する。また、本発明の転写シートが、基材フィルム、ハードコート層、プライマー層及び後述する接着層から構成される場合、上記ハードコート層、プライマー層及び接着層からなる積層体の吸光度A350及び吸光度A290を、上記と同様にして測定する。
また、上記基材フィルムを除いた状態で測定した吸光度A350及び吸光度A290は、例えば、上記紫外可視近赤外線分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用いて、以下の方法によっても求めることができる。
まず、本発明の転写シートの波長350nmにおける吸光度A350、及び、波長290nmにおける吸光度A290を測定する。
次いで、上記基材フィルムの波長350nmにおける吸光度A350、及び、波長290nmにおける吸光度A290を測定する。
そして、本発明の転写シートの吸光度A350及び吸光度A290と、基材フィルムの吸光度A350と吸光度A290との差を、それぞれの波長において算出する。
図1は、本発明の転写シートの一例の断面を示す模式図である。
図1に示すように、本発明の転写シート10は、基材フィルム11の上に、ハードコート層12及びプライマー層13を有している。なお、本発明の転写シートは、図1のような転写シートに限定されず、例えば、本発明の効果を妨げない範囲で、基材フィルムとハードコート層との間に離型層や着色層(加飾層)等の他の層が積層されていても本発明の範囲である。
以下、本発明の転写シートについて詳述する。
(基材フィルム)
上記基材フィルムは、特に限定されないが、ポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムにより構成されることが好ましい。
上記基材フィルムがこれらの樹脂フィルムにより構成されることにより、その上にハードコート層などを容易に形成でき、また、転写シートを生産する際に熱収縮や、ハードコート層の形成に電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという優れた耐収縮性を有し、本発明の転写シートを優れた安定性と効率とで生産することが可能となる。更に、本発明の転写シートを被転写体に転写する際の加熱温度による熱収縮が生じることもないので、容易にハードコート体を生産することができる。
上記ポリエステル樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレートなどのポリエステル樹脂からなるフィルムが好ましく挙げられる。これらの中でも、本発明の転写シートを生産する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいことなどを考慮すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
ポリオレフィン樹脂フィルムとしては、熱転写フィルムを生産する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいことなどを考慮すると、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂、オレフィン熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン樹脂からなり、延伸された樹脂フィルムが好ましく挙げられる。また、これらの中でも、延伸ポリプロピレン樹脂フィルムであることが好ましい。
上記延伸ポリオレフィン樹脂は、一軸延伸されたもの、二軸延伸されたもののいずれでもよいが、転写シートを生産する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいことなどを考慮すると、二軸延伸されたものであることが好ましい。
二軸延伸ポリオレフィン樹脂のシートは、通常、長手方向延伸機を用いてガラス転移温度(Tg)以上に加熱して、好ましくは5倍以上30倍以下程度延伸し、次いで、幅方向延伸機を用いてガラス転移温度(Tg)以上に加熱して幅方向へ好ましくは5倍以上30倍以下延伸して得られる。
また、延伸倍率が上記範囲内であると、本発明の転写シートを生産する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくくなる。
上記基材フィルムの厚さは、特に限定されないが、4μm以上200μm以下であればよい。4μm以上であればカールやシワが入りにくくなり、200μm以下であればコストを安価に抑えられ、熱伝導効率が低下することがなく、転写後に基材フィルムを剥離する際に各層がとられることがなく、優れた転写性が得られる。基材フィルムは、複層構成でもよい。その場合、複層構成全体で上記厚みの範囲にあることが好ましい。
なお、これらの基材フィルムは、転写する際のハードコート層との間の離型性を確保するために、必要に応じて基材フィルム表面に公知の離型処理を施したり、シリコーン樹脂などの離型層を設けてもよい。また、逆にハードコート層との密着性を向上させるためにコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン/紫外線処理、易接着コート剤を塗布するなどの表面処理を施してもよい。
(ハードコート層)
上記ハードコート層は、硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、被転写体にハードコート性を付与する層である。上記硬化性樹脂組成物には硬化性樹脂の他、所望に応じて、耐候剤、耐傷粒子、非反応性シリコーン化合物などの滑剤が上記ハードコート体への耐候性及びハードコート性を付与する性能を損なわない範囲で含まれていてもよい。
ハードコート層は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、電離放射線硬化性樹脂等、の硬化物からなる層を好ましく挙げることができる。耐候性やハードコート性の観点から電離放射線硬化性樹脂の硬化物であることが好ましい。
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線を照射することにより硬化する硬化性樹脂であり、電離放射線としては、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するもの、例えば、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるほか、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も用いられる。
上記ハードコート層に使用できる電離放射線硬化性樹脂としては、従来から電離放射線硬化性を有する樹脂として慣用されている重合性オリゴマー(プレポリマー)、重合性ポリマーの中から適宜選択して用いることができ、良好な硬化特性を得る観点から、ブリードアウトしにくく、固形分基準として95%以上100%以下程度としても塗布性を有し、かつ硬化させてハードコート層を形成する際に硬化収縮を生じにくいものが好ましい。
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系やポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートやカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどが好ましく挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート系がより好ましい。なお、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
オリゴマーのうち、多官能の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、2以上15以下が高架橋密度によるハードコート性付与の点で好ましく、硬化収縮を生じにくいという点から、2以上8以下がより好ましく、さらに好ましくは2以上6以下である。また、単官能の重合性オリゴマーとしては、例えば、カプロラクトン系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得られるカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートや、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレートなどのような高分子ウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
重合性ポリマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つポリマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系やポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートやポリカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のポリマーなどが好ましく挙げられ、ポリカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレート系がより好ましい。なお、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。これらのポリマーを単独で、あるいは複数を組合せて用いてもよい。
なお、本発明においては、上記硬化性樹脂組成物の粘度を調整するなどの目的で、メチル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートのような希釈剤を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。上記単官能性(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよく、また低分子量の多官能性(メタ)アクリレートを併用してもよい。
上記希釈剤としては、上記の単官能性(メタ)アクリレートの他、通常の有機溶媒を用いて、樹脂組成物の塗工性を確保することもできる。
また、上記硬化性樹脂組成物は、塗工面質を向上させ、優れた透明性を得る観点から、非反応性シリコーン化合物を含有することができる。
上記非反応性シリコーン化合物は、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイル基、アリル基などの反応性官能基を有しないシリコーン化合物であれば特に制限はなく、例えば、ポリシロキサンからなるシリコーンオイルのほか、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルなどが好ましく挙げられる。
なお、上記のような反応性官能基を分子中に有する反応性シリコーン化合物は、硬化収縮が生じやすくなるので、硬化性樹脂組成物に含有させないことが好ましい。
上記非反応性シリコーン化合物の含有量としては、硬化性樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上10質量部以下であり、更に好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。上記非反応性シリコーン化合物の含有量が上記範囲内であると、優れた耐候性及びハードコート性が得られ、硬化収縮が生じることを好適に防止できる。
また、上記ハードコート層を形成する硬化性樹脂組成物は、さらに、ハードコート性や耐候性を向上させるために、耐傷粒子や、耐候剤を含有することが好ましい。
本発明で用いることのできる耐傷粒子としては、無機系と有機系の粒子があり、無機系粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの無機粒子が挙げられる。該無機系粒子の形状としては、例えば、球状、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、硬度がより高くなり優れたハードコート性が得られる点で、球状が好ましい。
これらの無機系の耐傷粒子のうち、シリカ粒子は好ましいものの一つである。
上記シリカ粒子は、ハードコート性を向上させ、かつハードコート層の透明性を阻害しないからである。このようなシリカ粒子としては、従来公知のシリカ粒子から適宜選択して用いることが可能であり、コロイダルシリカ粒子なども好適に挙げられる。
上記コロイダルシリカ粒子は、添加量が増えた場合であっても、透明性に影響を及ぼすことが少ない。
上記耐傷粒子としてのシリカ粒子の平均粒子径としては、0.1μm以上10μm以下のものを用いることが好ましく、0.1μm以上5μm以下のものがより好ましく、0.5μm以上3μm以下のものが更に好ましい。シリカ粒子の平均粒子径が上記範囲内であると、透明性が確保されるとともに、優れた耐傷性が得られる。ここで、シリカ粒子の平均粒子径は、レーザー回折式、あるいはレーザー散乱式粒子径分布測定により測定することができる。
一方、有機系の粒子としては、例えば、架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂ビーズが好ましく挙げられ、上記有機系の粒子の粒子径としては、通常ハードコート層の膜厚の30%以上200%以下程度とすることが好ましい。
上記耐傷粒子の含有量としては、硬化性樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上10質量部以下であり、更に好ましくは1質量部以上5質量部以下である。上記耐傷粒子の含有量が上記範囲内であると、優れた耐候性とハードコート性、ハードコート層の透明性、及びプライマー層との密着性が得られる。
ここで、成形品の表面あるいは該表面を形成する転写シートには、耐候性、透明性等の光学的性能やハードコート性といった性能に加えて、防汚性や自浄性が求められる場合がある。
成形品の表面を清潔に保つ表面性能の一つである防汚性は、成形品の表面に汚れを付着しにくくする性能であり、本発明で用いられる硬化性樹脂組成物にフッ素系化合物、多官能シリコーン(メタ)アクリレートなどのシリコーン系化合物などの防汚剤を含有させて得ることができる。
また、自浄性は特段のメンテナンス(清掃)を行うことなく雨水などにより自己洗浄する性能であり、本発明で用いられる硬化性樹脂組成物に、好ましくはシリカ粒子を含有させて得ることができ、シリカ粒子のなかでも親水性シリカを含有させることがより好ましい。
上記ハードコート層の形成に用いられる硬化性樹脂組成物は、優れた耐候性を得るため、耐候性改善剤を含むことが好ましい。耐候剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤などがあり、紫外線吸収剤は有害な紫外線を吸収し、ハードコート積層体の長期にわたる耐候性、安定性を向上させる。また、光安定剤は、これ自体は紫外線をほとんど吸収しないが、紫外線により生じる有害なフリーラジカルを効率良く捕捉することにより安定化が得られるというものである。
上記紫外線吸収剤としては、例えば、二酸化チタンや酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機系のものや、ベンゾトリアゾール系やトリアジン系の有機系の紫外線吸収剤が好ましく挙げられ、なかでもトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。また、上記光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)が好ましく挙げられる。
本発明においては、上記トリアジン系紫外線吸収剤のなかでも、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がさらに好ましい。上記ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
上記トリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上3質量部以下が好ましく、0.1質量部以上2質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上1.5質量部以下がさらに好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、該吸収剤がブリードアウトすることなく、また充分な紫外線吸収能が得られるので、優れた耐候性が得られる。
また、ヒンダードアミン系の光安定剤としては、反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤であることが好ましい。
上記反応性官能基としては、電離放射線硬化性樹脂等と反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
このような反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)などが好ましく挙げられる。
上記反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、硬化性樹脂100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上8質量部以下がより好ましく、3質量部以上6質量部以下がさらに好ましい。上記ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が上記範囲内であれば、該光安定剤がブリードアウトすることなく、また充分な光安定性が得られるので、優れた耐候性が得られる。
また、ハードコート層形成用の硬化性樹脂組成物は、その性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。
上記各種添加剤としては、例えば、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
なお、電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下程度添加することが望ましく、光重合用開始剤としては、慣用されているもののなかから適宜選択することができる。
上記ハードコート層は、上記の硬化性樹脂と、必要に応じて用いられる非反応性シリコーン化合物、耐傷粒子、紫外線吸収剤や光安定剤を耐候剤として含む樹脂組成物を基材フィルム上に塗布し、加熱処理、あるいは電離放射線などを照射することにより硬化させて形成する層であり、ハードコート層の形成は、以下のようにして行われる。
ハードコート層を形成する樹脂組成物の塗布は、硬化後の厚さが通常1μm以上20μm以下程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの方式、好ましくはグラビアコートにより行う。優れた耐候性とその持続性、更には透明性を得る観点から、好ましくは2μm以上20μm以下であり、より好ましくは2μm以上10μm以下であり、更に好ましくは2μm以上6μm以下である。また、ハードコート層の厚さをより薄くすることにより硬化収縮の発生を低減することができ、また生産安定性や生産効率を向上させることができるため、特に2μm以上4μm以下とすることが好ましい。
なお、樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、塗工後、熱風乾燥機などにより塗布層を予め加熱乾燥してから、さらに加熱処理、あるいは電離放射線を照射することが好ましい。
上記の樹脂組成物の塗布により形成した未硬化樹脂層は、加熱処理、あるいは電子線などの電離放射線を照射して硬化することで、ハードコート層となる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70kV以上300kV以下程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
上記電離放射線の照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5kGy以上300kGy以下(0.5Mrad以上30Mrad以下)、好ましくは10kGy以上200kGy以下(1Mrad以上20Mrad以下)、より好ましくは50kGy以上150kGy以下(5Mrad以上15Mrad以下)の範囲で選定される。
上記電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190nm以上380nm以下の紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯などが用いられる。
(プライマー層)
上記プライマー層は、上記ハードコート層と後述する接着層との間に配され、上記ハードコート層に対する応力緩和層として機能するとともに、上記ハードコート層の密着性を向上させる役割を果たす層である。
[バインダー樹脂]
本実施形態に関するプライマー層を構成することのできるバインダー樹脂は、主剤と硬化剤とからなる2液硬化型樹脂を含有することが好ましい。
[主剤]
主剤としては、特に限定はなく、例えば、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、プチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのバインダー樹脂の中でも、密着性及び耐候性の観点から、ポリウレタン樹脂が好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、ポリウレタン樹脂の高分子鎖中に更にアクリル骨格を有するポリウレタン樹脂であることが、耐候性及び耐久性の観点からより好ましい。高分子鎖中にアクリル骨格を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、ウレタン成分とアクリル成分との共重合体であるウレタンアクリル共重合体、ポリウレタンを構成するポリオール成分又はポリイソシアネート成分としてヒドロキシル基又はイソシアネート基を有するアクリル樹脂があり、なかでもウレタンアクリル共重合体が好ましい。ウレタンアクリル共重合体は、例えば、1分子中に少なくとも2個のヒドロキシル基を有するアクリル樹脂にポリオール化合物及びイソシアネート化合物を反応させる方法(特開平6−100653号公報等参照)や、不飽和二重結合を両末端に有するウレタンプレポリマーにアクリルモノマーを反応させる方法(特開平10−1524号公報等参照)等によって得ることができる。
アクリル骨格を有するポリウレタン樹脂としては、例えば、質量平均分子量が4.0×10以上1.0×10以下であり、かつ、アクリル成分が1質量%以上30質量%以下のアクリル骨格を有するポリウレタン樹脂を挙げることができる。このような特定のバインダー樹脂を使用することによって、ハードコート層とプライマー層との耐候密着性を向上させて、優れた耐候性を備えさせることが可能になる。
上記の高分子鎖中にアクリル骨格を有するポリウレタン樹脂のなかでも、高分子鎖中に、更にポリカーボネート骨格又はポリエステル骨格を有するものが、ハードコート層との密着性の観点から好ましい。高分子鎖中にアクリル骨格を有し、更にポリカーボネート骨格又はポリエステル骨格を有するポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ウレタン成分とアクリル成分の共重合体であるポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体、又は、ポリエステル系ウレタン成分とアクリル成分の共重合体であるポリエステル系ウレタンアクリル共重合体がより好ましく、より一層優れた耐候性を備えさせるという観点から、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を用いることが特に好ましい。これらのポリウレタンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、例えば、カーボネートジオールとジイソシアネートを反応させて得られたポリカーボネート系ウレタンと、アクリル骨格を有するジオールを共重合させることにより得ることができる。また、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、アクリル骨格を有するジオールに、カーボネートジオールとジイソシアネートを反応させることによっても得ることができる。ここで、上記アクリル骨格を有するジオールとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が1以上6以下程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、或いはこれらがラジカル重合したオリゴマー又はプレポリマー(重合度2以上10以下程度)に、2つの水酸基が導入されている化合物が挙げられる。
上記ジイソシアネートとしては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系インシアネート;インホロンジイソシアネート、水素転化キシリレンジイソシアネート等の脂環式系インシアネートが挙げられる。また、上記カーボネートジオールとしては、具体的には、下記一般式(1)に示される化合物(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の2価の複素環基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の2価の脂環基であり、m1は、1以上10以下の整数である)等が挙げられる。
[化1]
HO−[R1−O−(C=O)−O]m1−R−OH (1)
また、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、ラジカル重合する基が導入されているポリカーボネート系ポリウレタンプレポリマーを、アクリルモノマーとラジカル重合させることによって得ることもできる。前記アクリルモノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸やアルキル基の炭素数が1以上6以下程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
上記ポリエステル系ウレタンアクリル共重合体は、例えば、エステルジオールとジイソシアネートを反応させて得られたポリエステル系ウレタンと、アクリル骨格を有するジオールを共重合させることにより得ることができる。あるいは、アクリル骨格を有するジオールに、エステルジオールとジイソシアネートを反応させることによっても得ることができる。ここで、アクリル骨格を有するジオール及びジイソシアネートは、前記ポリカーポネート系ウレタンアクリル共重合体の製造に使用されるものと同様である。また、エステルジオールとしては、具体的には、下記一般式(2)に示される化合物(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の2価の複素環基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1以上12以下の2価の脂環基であり、m2は、1以上10以下の整数である)等が挙げられる。
[化2]
HO−[R2−O−(C=O)]m2−R−OH (2)
また、ポリエステル系ウレタンアクリル共重合体は、ラジカル重合する基が導入されているポリエステル系ポリウレタンプレポリマーを、アクリルモノマーとラジカル重合させることによって得ることもできる。アクリルモノマーとしては、上記ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体の製造に使用されるものと同様である。
上記プライマー層に用いられるポリウレタンは、例えば、質量平均分子量が4.0×10以上1.0×10以下を満たすものが使用される。このような特定の質量平均分子量と後述するアクリル成分の含有量を満たすポリウレタンを使用することによって、優れた耐候性を備えさせることが可能になる。より一層優れた耐候性を備えさせるという観点から、ポリウレタンの質量平均分子量として、好ましくは5.0×10以上8.0×10以下が挙げられる。ここで、ポリウレタンの質量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ、標準ポリスチレンで換算された値を示す。
上記プライマー層に用いられるポリウレタンは、優れた耐候性を備えさせるために、アクリル成分の含有量が1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。ここで、ポリウレタンにおけるアクリル成分の含有量とは、ポリウレタンの総質量当たり、アクリル骨格を構成するモノマーが占める割合(質量%)である。より一層優れた耐候性を備えさせるという観点から、ポリウレタンにおけるアクリル成分の含有量として、好ましくは5質量%以上20質量%以下が挙げられる。ポリウレタンにおけるアクリル成分の含有量は、ポリウレタンのNMRスペクトルを測定し、全ピーク面積に対するアクリル成分に帰属されるピーク面積の割合を求めることによって算出される。
上記プライマー層には、本発明の効果を妨げないことを限度として、上記ポリウレタン以外のバインダー樹脂が含まれていてもよい。このようなバインダー樹脂としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、プチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのバインダー樹脂の中でも、好ましくはウレタン樹脂が挙げられる。
上記プライマー層において、上記ポリウレタンと他のバインダー樹脂を組み合わせて使用する場合、これらの混合比については、特に制限されないが、例えば、バインダー樹脂の総量100質量部当たり、上記ウレタン−アクリル共重合体が50質量部以上、好ましくは70質量部以上、更に好ましくは85質量部以上となるように設定すればよい。
[紫外線吸収剤]
上記プライマー層は、紫外線吸収剤を含有する。紫外線吸収剤を含有することで、本発明の転写シートに紫外線曝露に対する耐候性を備えさせることができる。
上記プライマー層に使用される紫外線吸収剤の種類については、上記ハードコート層に使用される紫外線吸収剤と同様のものが挙げられる。
上記プライマー層における紫外線吸収剤の含有量については特に限定されないが、例えば、バインダー樹脂の総量100質量部に対して1質量部以上50質量部以下、好ましくは2質量部以上40質量部以下であればよいが、更に好ましくは3質量部以上35質量部以下が挙げられる。
[光安定剤]
また、上記プライマー層には、前述する成分以外に、耐候性を更に向上させるために、必要に応じて光安定剤を含んでいてもよい。上記プライマー層に使用される光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が挙げられ、より具体的には、反応性官能基を有しないヒンダードアミン系光安定剤、又は、上記ハードコート層の形成に好ましく用いられる反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。特に、プライマー層に優れた応力緩和性能を備えさせるという観点から、該プライマー層に使用きれる光安定剤として、反応性官能基を有しないヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
反応性官能基を有しないヒンダードアミン系光安定剤としては、具体的には、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルポキシレート等が挙げられる。これらの光安定剤は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記プライマー層における光安定剤の含有量については特に制限されないが、例えば、バインダー樹脂の総量100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下、好ましくは1質量部以上15質量部以下であればよいが、更に好ましくは2質量部以上10質量部以下が挙げられる。
なお、上記含有量に限定することで、上記光安定剤として特にヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合、該ヒンダードアミン系光安定剤のブリードアウトを抑制できる。
[硬化剤]
また、上記プライマー層には、上記バインダー樹脂の硬化を促進するために、必要に応じて硬化剤を含んでいてもよい。上記プライマー層に使用される硬化剤としては、例えば、トリレンジインシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート等のインシアネート系硬化剤が挙げられる。これらの硬化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化剤の使用量は、応力緩和性能や表面保護層と接着層との密着性を向上の観点から、主剤となる樹脂100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下が好ましく、10質量部以上30質量部以下がより好ましく、20質量部以上30質量部以下がさらに好ましい。
更に、本発明の転写シートにおいて、上記プライマー層は、粒子を含有する。上記プライマー層が粒子を含有することで、本発明の転写シートのプライマー層生産工程において、製造装置のガイドロールや、巻取り後ロール体中でプライマー層と当接する基材フィルムとの接触面積を減らすことができ、上記プライマー層とガイドロールや基材フィルムとが接着する現象の発生を抑制し、本発明の転写シートの巻き形状の悪化や、本発明の転写シートが損傷することを防止できる。
また、上記プライマー層は、接着層側表面に粒子に起因した凹凸が形成されている。具体的には、上記プライマー層の接着層表面の算術平均粗さが400nm以上700nm以下であることが好ましい。上記プライマー層の接着層表面の算術平均粗さが400nm未満であると、上記プライマー層の表面の耐ブロッキング性能が不充分となり、本発明の転写シートの製造が困難となることがあり、700nmを超えると、プライマー層表面に形成された凹凸形状に起因した光の散乱が生じて本発明の転写シートの透明性が低下することがある。上記プライマー層の接着層表面の算術平均粗さのより好ましい下限は450nm、より好ましい上限は550nmである。
なお、上記プライマー層表面の算術平均粗さは、JIS B0601(1994)に規定の算術平均粗さ(Ra)に準拠して測定された値である。
上記粒子としては、例えば、シリカ(屈折率1.46)、アルミナ(屈折率1.76)、水酸化アルミニウム(屈折率1.65)、硫酸バリウム(屈折率1.64)、タルク(屈折率1.57)、炭酸カルシウム(屈折率1.58)及び樹脂材料から選択される少なくとも一種の材料から構成される粒子が好適に用いられる。なお、上記カッコ内に示した屈折率は、各材料の代表的な値である。
なお、上記樹脂材料としては、具体的には、例えば、アクリル(屈折率1.49以上1.53以下)やウレタン(屈折率1.49)等が挙げられる。なお、上記カッコ内に示した屈折率は、各材料の代表的な値である。
上記粒子の粒子径としては特に制限されないが、透明性とブロッキング現象の発生の抑制の点から、通常0.1μm以上10μm以下程度、好ましくは0.5μm以上8μm以下、更に好ましくは0.5μm以上5μm以下が挙げられる。
なお、粒子の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
また、粒子の含有量としては、透明性とブロッキング現象の発生の抑制の観点から、バインダー樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部以下の範囲が好ましく、より好ましくは2質量部以上15質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上10質量部以下が挙げられる。
更に、上記プライマー層は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の各種添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、耐摩耗性向上剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができる。
上記プライマー層の厚さについては、特に制限されないが、例えば、0.1μm以上10μm以下、好ましくは0.1μm以上5μm以下、更に好ましくは1μm以上4μm以下が挙げられる。
上記プライマー層は、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバードコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により、バインダー樹脂を含むプライマー層形成用の樹脂組成物をハードコート層上に塗工することにより形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層の塗膜を形成し、その後にハードコート層の表面に被覆する方法である。
また、上記プライマー層を形成する際に、上記ハードコート層とプライマー層との間の密着性を向上させるために、ハードコート層の硬化を半硬化の状態にとどめ、その後、プライマー層形成用の樹脂組成物を塗布した後にハードコート層の硬化を完全硬化することにより、ハードコート層とプライマー層との間の密着性を高めることもできる。
このように、本発明の転写シートは、上記プライマー層が粒子と紫外線吸収剤とを含むものであるが、上記粒子の屈折率と上記紫外線吸収剤の屈折率との差△nが0.13以内である。上記屈折率差△nが0.13を超えると、本発明の転写シートの光学的性能が劣ることとなる。上記粒子の屈折率と上記紫外線吸収剤の屈折率との差△nの好ましい上限は0.12、より好ましい上限は0.11である。
上記粒子及び紫外線吸収剤の屈折率は、いずれもアッベ屈折率計(アタゴ社製、製品名[DR−M2]により測定された値である。なお、上記紫外線吸収剤が2種以上含まれる場合は、後述する実施例の方法で、実際の配合比率で紫外線吸収剤を有機溶剤中に配合した溶液を、PETフィルム上に塗布・乾燥し上記アッベ屈折率計で測定した平均屈折率である。
なお、粒子及び紫外線吸収剤の屈折率は、プライマー層中に含有される粒子の材料を特定することができれば、市販された同一の粒子の材料の屈折率を測定することで、プライマー層中に含有される粒子の屈折率を測定することができる。
また、上記プライマー層に2種以上の紫外線吸収剤が含まれている場合の屈折率は、公知の方法でプライマー層に含まれた各紫外線吸収剤を同定し、更に、公知の方法(例えば、紫外線吸収スペクトル測定等)で紫外線吸収剤の配合比率を求めた後、上述した方法で測定することができる。
本発明の転写シートにおいて、上記プライマー層は、平均屈折率が1.56以下であることが好ましい。平均屈折率が1.56を超えると、上記粒子との屈折率差Δnが大きくなり、本発明の転写シートに光学的特性の劣化が生じることがある。上記プライマー層の平均屈折率のさらに好ましい上限は1.51である。
また、本発明の転写シートは、上記プライマー層のバインダー樹脂と上記粒子との屈折率差が0.13以内であることが好ましい。上記屈折率差が0.13を超えると、上記バインダー樹脂と粒子との屈折率差が大きくこれらの界面部分で光の散乱が生じて光学的性能が低下することがある。上記バインダー樹脂と粒子との屈折率差のより好ましい上限は0.12であり、更に好ましい上限は0.11である。なお、上記プライマー層及びバインダー樹脂の屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製、製品名[DR−M2]により測定できる。
本発明の転写シートは、上述した従来の転写シートのように上記プライマー層に紫外線吸収剤のブリードアウトが生じた場合であっても、上記プライマー層に含まれる粒子と紫外線吸収剤とが特定の屈折率差の範囲内に留めるため、従来の転写シートのように擬似高屈折率層のような粒子との屈折率差の大きな層が形成された状態とはならず、光学的性能に優れたものとなる。
このように、本発明の転写シートは、光学的性能の向上を目的としたプライマー層における紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制する手段を講じる必要がないため、容易に製造が可能となる。
プライマー層の形成は、上記のバインダー樹脂、粒子及び紫外線吸収剤を含み、必要に応じて光安定剤透明等を更に含むプライマー層形成用樹脂組成物をそのままで、又は、溶媒に溶解若しくは分散させた状態として、公知の印刷方法、塗布方法などによって行うことができる。なお、このプライマー層を設ける際に、ハードコート層とプライマー層との間の接着性を確保するために、架橋硬化したハードコート層の表面をいわゆるコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン/紫外線処理などの表面処理によりハードコート層との間の接着性を高めることもできる。
また、ハードコート層とプライマー層との接着性を確保するために、ハードコート層の架橋硬化を半硬化の状態にとどめ、その後、プライマー層形成用樹脂組成物を塗布した後、電離放射線を再び照射し、ハードコート層を完全硬化することにより、ハードコート層とプライマー層との間の接着性を高めるようにすることもできる。
(接着層)
本発明の転写シートは、図1に示した転写シート10のように、プライマー層13のハードコート層12側と反対側面に接着層14を有していることが好ましい。
上記接着層は、ハードコート層を転写体の表面に形成するために、ハードコート層を被転写体に接着するために設けられる層であり、このようなハードコート層を被転写体に接着するという機能に加えて、プライマー層に含まれる粒子がプライマー層の表面に突き出す、いわゆる頭出しを和らげて透明性の低下を抑制し、優れた光学的性能を確保するという機能をも有する。
このような接着層は、上記プライマー層の厚さよりも厚いことが好ましい。上記接着層の厚みが上記プライマー層の厚みより厚いことで、上記プライマー層の表面の凹凸形状を緩和して、ほぼ平坦な表面とすることができ、本発明の転写シートを被転写体に転写する際に、接着層と被転写体との界面に気泡が発生し、本発明の転写シートを転写した転写体のヘイズの上昇を防止できる。また、接着層の表面がほぼ平坦であることで、被転写体への転写時の加工の自由度が高くなる。
本発明の転写シートは、上記接着層表面の算術平均粗さが250nm以下であることが好ましい。250nmを超えると、本発明の転写シートを被転写体に転写する際に、接着層と被転写体との界面に気泡が発生し、本発明の転写シートを転写した転写体のヘイズの上昇することがある。上記接着層表面の算術平均粗さのより好ましい上限は220nmである。
なお、上記接着層表面の算術平均粗さは、JIS B0601(1994)に規定の算術平均粗さ(Ra)に準拠して測定された値である。
上記接着層に使用できる接着性の樹脂としては、被転写体の材質や熱転写の際の転写温度や圧力に応じて定められるものであるが、一般に、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴム、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂などの熱融着樹脂が好ましく、被転写体の材質や転写製品の用途に応じて、上記樹脂の中から1種又は2種以上の樹脂が選定される。耐候性向上の点から、上記熱融着樹脂としては、アクリル樹脂を単体で用いることが特に好ましい。
また、上記接着層に使用できる接着性の樹脂は質量平均分子量(Mw)7.6×10以上2.3×10以下の樹脂を含有することが好ましい。質量平均分子量(Mw)がこのような範囲であることで、プライマー層がまだ完全に硬化する前に接着層を形成した場合でも、接着層にクラックが生じにくい。そのため、転写後に表面の透明性がより高い成形品を得ることができる。また、上記の範囲であることで、接着層形成用組成物の塗工性が優れることで筋ムラを抑えることができる。そのため、転写後、欠点の少ない外観に優れた成形品を得ることができる。質量平均分子量(Mw)のより好ましい範囲は、9.6×10以上1.2×10以下である。なお、本明細書における樹脂の質量平均分子量は、GPC法によって測定し、かつ、標準ポリスチレン換算された値である。
上記接着層には、上記ハードコート層やプライマー層と同様、耐候性を更に向上させるため、紫外線吸収剤や光安定剤などの耐候性改善剤を含有させることもできる。使用できる紫外線吸収剤や光安定剤としては、プライマー層において述べたものを好ましく用いることができる。
上記接着層における上記紫外線吸収剤の含有量は、接着層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上25質量部以下、より好ましくは1質量部以上25質量部以下、更に好ましくは3質量部以上20質量部以下であり、特に好ましくは5質量部以上20質量部以下である。
また、上記光安定剤の含有量は、接着層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下、更に好ましくは1質量部以上5質量部以下であり、特に好ましくは2質量部以上5質量部以下である。
また、本発明の転写シートは、上記接着層を構成する樹脂と上記プライマー層に含まれる粒子との屈折率差が0.13以内であることが好ましい。上記屈折率差が0.13を超えると、上記接着層を構成する樹脂とプライマー層に含まれる粒子との屈折率差が大きく、光の散乱が生じて光学的性能が低下することがある。上記樹脂と粒子との屈折率差のより好ましい上限は0.12であり、更に好ましい上限は0.11である。なお、上記バインダー樹脂の屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製、製品名[DR−M2]により測定できる。
上記接着層の厚さについては、プライマー層よりも厚いことが好ましいが、上記ハードコート層を被転写体に接着するという機能と、優れた透明性を確保するという観点から、1μm以上7μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上6μm以下である。
また、本発明の転写フィルムは、上記接着層の上にポリエチレン樹脂などの樹脂からなるカバーフィルム(保護フィルム)を貼り付けて表面を保護しておくことが、製品を保管する上で好ましい。本発明の転写フィルムは、カバーフィルムを設ける場合、このカバーフィルムを剥がし、接着層を露出し、この接着層の面を介して被転写体に転写される。
[着色層]
本発明の転写シートでは必須ではないが、ハードコート積層体の意匠性を向上させるため、必要に応じて転写シートの一部又は全面に、更に着色層(加飾層)を設けてもよい。着色層の柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる柄や絵柄等を設けることもできる。
着色層は、例えばプライマー層と接着層との間に積層されるが、これに限定されず、接着性を有する材料の場合には接着層の上に形成されていてもよい。
着色層の形成方法は、例えば、プライマー層の上に、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂をバインダーとし、適当な色の顔料又は染料を着色剤として含有する印刷インキによる印刷を行うことで形成することができる。印刷方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷法が挙げられる。着色層の厚みは、意匠性の観点から5μm以上40μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。
〔ハードコート積層体〕
上述した本発明の転写シートを用いてなるハードコート積層体も本発明の一つである。すなわち、本発明に係る第一のハードコート積層体は、基材フィルム、ハードコート層、プライマー層及び樹脂基体をこの順に有するハードコート積層体であって、上記基材フィルムと上記樹脂基体とを除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にあり、上記プライマー層は、粒子と紫外線吸収剤とを含み、上記粒子の屈折率と上記紫外線吸収剤の屈折率との差△nが0.13以内であることを特徴とする。
また、本発明に係る第二のハードコート積層体は、少なくとも、ハードコート層、プライマー層及び樹脂基体をこの順に有するハードコート積層体であって、上記樹脂基体を除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にあり、上記プライマー層は、粒子と紫外線吸収剤とを含み、上記粒子の屈折率と上記紫外線吸収剤の屈折率との差△nが0.13以内であることを特徴とする。
図2は、第一のハードコート積層体を模式的に示す断面図であり、図3は、第二のハードコート積層体を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、第一のハードコート積層体20は、少なくとも、基材フィルム11、ハードコート層12、プライマー層13及び樹脂基体21をこの順に備える。
また、図3に示すように、第二のハードコート積層体20’は、ハードコート層12、プライマー層13及び樹脂基体21をこの順に備える。
本発明のハードコート積層体を形成する樹脂基体としては、特に制限されるものではなく、耐候性とともに耐傷性などのハードコート性が必要になるもので、例えば、一般住居や公共施設の建築構造物の外装材や内装材、自動車内外装用の部品や、太陽電池カバーまたは太陽電池基板、家電製品の部材などに使用でき、とりわけ、バルコニーの仕切り板、テラスやカーポートなどの屋根部材、車両や建造物のウインドウ、その他、防音壁や風防壁など透明プラスチックを用いた製品が挙げられる。
このような樹脂基体を形成する樹脂材料としては、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましく挙げられ、これらの単独樹脂材料、あるいは複数種を組み合わせた複合樹脂材料であってもよい。
第一のハードコート積層体を構成する上記基材フィルム、及び、本発明のハードコート積層体を構成する上記ハードコート層、プライマー層としては、上述した本発明の転写シートにおいて説明したものと同様の材料からなり、同様の表面形状等を有するものが挙げられる。
また、本発明のハードコート積層体は、図2及び図3に示したように、プライマー層13と樹脂基体21の間に接着層14を有することが好ましい。
接着層14としては、上述した本発明の転写シートにおいて説明したものと同様の材料からなり、同様の表面形状等を有するものが挙げられる。
本発明のハードコート積層体は、第一のハードコート積層体の場合、上記基材フィルムと上記樹脂基体とを除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にあり、第二のハードコート積層体の場合、上記樹脂基体を除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にある。
本発明のハードコート積層体において、吸光度A350は、上記プライマー層による吸光度と見做すことができ、該プライマー層に含有させる紫外線吸収剤の量とプライマー層の厚みとを調整することで、本発明のハードコート積層体の波長350nmにおける吸光度A350を調整することができる。
また、上記吸光度A350が上記範囲に制御された本発明のハードコート積層体は、可視光領域に近い波長の紫外線を充分に吸収でき、優れた耐候性を有するものとなる。
本発明のハードコート積層体における上記吸光度A350が1.4未満であると、本発明のハードコート積層体の耐候性が不充分となり、7.0を超える吸光度A350とするには上記プライマー層の厚みを極めて厚くする必要あり現実的でない。上記吸光度A350の好ましい下限は1.5、好ましい上限は6.0であり、より好ましい下限は1.6であり、より好ましい上限は5.0である。
また、本発明のハードコート積層体は、第一のハードコート積層体の場合、上記基材フィルムと上記樹脂基体とを除いた状態で測定した波長290nmにおける吸光度A290が1.5以上7.0以下であることが好ましく、第二のハードコート積層体の場合、上記樹脂基体を除いた状態で測定した波長290nmにおける吸光度A290が1.5以上7.0以下であることが好ましい。
上記吸光度A290も上記吸光度A350と同様に、後述するプライマー層による吸光度と見做すことができ、該プライマー層に含有させる紫外線吸収剤の量とプライマー層の厚みとを調整することで、本発明のハードコート積層体の上記吸光度A290を調整することができる。
また、上記吸光度A290が上記範囲に制御された本発明のハードコート積層体は、高いエネルギーの紫外線を充分に吸収できるため、極めて耐候性に優れたものとなる。
上記吸光度A290が1.5未満であると、本発明のハードコート積層体の耐候性が不充分となることがあり、7.0を超える吸光度A290とするには後述するプライマー層の厚みを極めて厚くする必要あり現実的でない。上記吸光度A290のより好ましい下限は2.0、より好ましい上限は6.0であり、更に好ましい下限は2.4であり、更に好ましい上限は5.0である。
なお、本明細書において、上記吸光度A350、及び、吸光度A290は、紫外可視近赤外分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用いて測定された値である。
例えば、本発明のハードコート積層体が、樹脂基体とプライマー層との間に接着層を有さない場合、上記吸光度A350、及び、吸光度A290は、上記ハードコート層及びプライマー層から構成される積層体の吸光度A350、及び、吸光度A290を、上記紫外可視近赤外分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用いて測定する。
また、本発明のハードコート積層体が、樹脂基体とプライマー層との間に接着層を有する場合、上記吸光度A350、及び、吸光度A290は、上記ハードコート層、プライマー層及び接着層からなる積層体の吸光度A350、及び、吸光度A290を、上記紫外可視近赤外分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用いて測定する。
また、第一のハードコート積層体において、上記基材フィルムと上記樹脂基体とを除いた状態で測定した吸光度A350及び吸光度A290は、例えば、以下の方法によっても求めることができる。
まず、第一のハードコート積層体の波長350nmにおける吸光度A350と、波長290nmにおける吸光度A290とを測定する。
次に、上記樹脂基体の波長350nmにおける吸光度A350と、波長290nmにおける吸光度A290とを測定する。
次に、上記基材フィルムの波長350nmにおける吸光度A350と、波長290nmにおける吸光度A290とを測定する。
そして、第一のハードコート積層体の吸光度A350及び吸光度A290と、樹脂基体及び基材フィルムの吸光度A350及び吸光度A290との差を、それぞれの波長において算出する。
また、第二のハードコート積層体において、上記樹脂基体を除いた状態で測定した吸光度A350及び吸光度A290は、例えば、以下の方法によっても求めることができる。まず、第二のハードコート積層体の波長350nmにおける吸光度A350と、波長290nmにおける吸光度A290とを測定する。
次に、上記樹脂基体の波長350nmにおける吸光度A350と、波長290nmにおける吸光度A290とを測定する。
そして、第二のハードコート積層体の吸光度A350及び吸光度A290と、上記樹脂基体の吸光度A350及び吸光度A290との差を、それぞれの波長において算出する。
上記第一のハードコート積層体は、具体的には、上述した本発明の転写シートを用いて、樹脂基体に転写形成して得られる。より具体的には、本発明の転写シートの基材フィルム側とは反対側の面と上記樹脂基体とを当接させた状態で、上記転写シートと上記樹脂基体とを貼合することで得られる。
また、第二のハードコート積層体は、本発明の転写シートの基材フィルムとは反対側の面と樹脂基体とを当接させた状態で、上記転写シートと上記樹脂基体とを貼合し、上記転写シートから基材フィルムを剥離させることで得られる。
上記第一のハードコート積層体の製造方法、及び、上記第二のハードコート積層体の製造方法において、上記転写シートと上記樹脂基体との貼合は、加熱加圧することで行うことができる(熱転写方法)。
本発明の転写シートによる樹脂基体への熱転写方法の条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、熱転写する樹脂基体の材質などに応じて、転写時の温度や圧力を変えて行うことができる。
本発明によれば、優れた耐候性、光学的性能、及び、ハードコート性を有する転写シートとなり、転写により被転写体に本発明の転写シートを転写させることで、耐候性、光学的性能、及び、ハードコート性に優れたハードコート積層体を得ることができる。
本発明の転写シートの一例の断面を示す模式図である。 第一のハードコート積層体を模式的に示す断面図である。 第二のハードコート積層体を模式的に示す断面図である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって何ら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)転写シートの吸光度
吸光度の測定には紫外可視近赤外分光光度計((株)日立製作所製、U−4000)を用い、転写シートから基材フィルムを剥離した状態で吸光度を測定した。
(2)光学物性(全光線透過率)
実施例及び比較例で得られた転写シートの全光線透過率を、ヘイズメータ(東洋精機製作所社製、ヘイズ−ガードプラス)を用いて測定した。
(3)光学物性(ヘイズ)
実施例及び比較例で得られた転写シートの表面を、ヘイズメータ(東洋精機製作所社製、ヘイズ−ガードプラス社製)で測定した。なお、ボンスター♯0000のスチールウールを、荷重1000g、1000往復させる学振磨耗試験後にもヘイズを測定し、試験前のヘイズ値との差を求めた。
(4)光学物性(黄色度、YI)
実施例及び比較例で得られた転写シートの黄色度(YI)を、CM−3700d(ミノルタ製)により測定した。なお、波長365nmの紫外線を、60mW/cmで20時間照射し、30℃98%RHの環境下で4時間載置するS−UV試験を200時間行った後においても、黄色度(YI)を測定し試験前後での黄色度の差を△YIとした。
(5)光学物性(目視)
実施例及び比較例で得られた転写シートの色味を目視にて観察した。なお、波長365nmの紫外線を、60mW/cmで20時間照射し、30℃98%RHの環境下で4時間載置するS−UV試験を200時間行った後においても、色味を目視にて観察した。
実施例1
ポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルム(厚さ50μm)に、下記ハードコート層形成用組成物Aを厚みが3μmとなるように塗工して塗膜を形成し、該塗膜を電子線照射10Mradにて硬化させることにより、基材フィルム上に厚み3μmのハードコート層を形成した。
次いで、当該ハードコート層の表面にコロナ放電処理をし、下記プライマー層形成用樹脂組成物1をグラビアリバース法によって塗工して厚さ3μmのプライマー層(平均屈折率屈折率1.51)を形成した。その後、形成したプライマー層上に、熱融着樹脂(アクリル樹脂)をグラビアリバース法によって塗工して厚さ4μmの接着層を形成した。
斯して、基材フィルム上に、ハードコート層、プライマー層及び接着層がこの順に積層された転写シートを得た。
<ハードコート層形成用の樹脂組成物A>
重合性モノマー(分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレート)及び重合性オリゴマー(ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー)からなる電離放射線硬化性樹脂100質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*0.7質量部
ヒンダードアミン系光安定剤*4.2質量部
非反応性シリコーン化合物*0.3質量部
耐傷無機粒子*2重量部
<プライマー層形成用の樹脂組成物1>
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体*100質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤*117質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*213質量部
光安定剤*33質量部
粒子*48質量部
硬化剤(ヘキサンメチレンジイソシアネート)25質量部
*1:チヌビン384−2(商品名)、ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、C7−9側鎖及び直鎖アルキルエステル、BASFジャパン社製
*2:チヌビン400(商品名)、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン社製
*3:チヌビン123(商品名)、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート)、BASFジャパン社製
*4:シリカ粒子、平均粒径3μm、屈折率1.46
厚み2mmのポリカーボネート板を、150℃のホットプレートを用いて加熱した。加熱したポリカーボネート板の片面に、製造した転写フィルムを接着層がポリカーボネート板面側に来るように配置した上で、190℃の熱ラミロールにて3回加熱ラミネート加工した後、基材フィルムを剥離して、ポリカーボネート板と転写シートとが一体化されたハードコート積層体を作製した。ハードコート積層体について、上記の評価を行った評価結果を表1及び2に示す。
実施例2
プライマー層形成用の樹脂組成物1から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:17質量部を、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*5:17質量部とした以外は、実施例1と同様にして転写シート、及び、ハードコート積層体を得た。ハードコート積層体について、上記の評価を行った評価結果を表1及び2に示す。
*5:チヌビン477(商品名)、BASFジャパン社製、屈折率:1.541
実施例3
プライマー層の厚みが5μmとなるようプライマー層形成用の樹脂組成物1の塗工量を調整した以外は、実施例2と同様にして転写シート、及び、ハードコート積層体を得た。ハードコート積層体について、上記の評価を行った評価結果を表1及び2に示す。
実施例4
プライマー層形成用の樹脂組成物1から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:17質量部を、33質量部とした以外は、実施例1と同様にして転写シート、及び、ハードコート積層体を得た。ハードコート積層体について、上記の評価を行った評価結果を表1及び2に示す。
比較例1
プライマー層形成用の樹脂組成物1から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:17質量部を、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤*6:17質量部とした以外は、実施例1と同様にして転写シート、及び、ハードコート積層体を得た。ハードコート積層体について、上記の評価を行った評価結果を表1及び2に示す。
*6:チヌビンCarboprotect(商品名)、BASFジャパン社製、屈折率:1.623
比較例2
プライマー層形成用の樹脂組成物1から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:17質量部を、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*7:17質量部とした以外は、実施例1と同様にして転写シート、及び、ハードコート積層体を得た。ハードコート積層体について、上記の評価を行った評価結果を表1及び2に示す。
*7:チヌビン405(商品名)、BASFジャパン社製、屈折率:1.624
比較例3
プライマー層形成用の樹脂組成物1から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:17質量部を、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*8:17質量部とした以外は、実施例1と同様にして転写シート、及びハードコート積層体を得た。ハードコート積層体について、上記の評価を行った評価結果を表1及び2に示す。
*8:チヌビン479(商品名)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン社製、屈折率:1.645
比較例4
プライマー層の厚みが1.5μmとなるようプライマー層形成用の樹脂組成物1の塗工量を調整した以外は、実施例2と同様にして転写シート、及び、ハードコート積層体を得た。ハードコート積層体について、上記の評価を行った評価結果を表1及び2に示す。
Figure 2016190487
なお、紫外線吸収剤の屈折率は、いずれもアッベ屈折率計(アタゴ社製、製品名[DRM2])により測定された平均屈折率である。
表1に示した「UVA混合物の屈折率」は、含有される2種の紫外線吸収剤を実際の配合比率で混合したUVA混合物の10質量部を有機溶剤(メチルエチルケトン)90質量部に対して溶解した溶液を、PETフィルム上に1g/mで塗布・乾燥し、アッベ屈折率計(アタゴ社製、製品名[DR−M2])で測定した平均屈折率である。
Figure 2016190487
表1及び2に示したように、実施例1、2に係る転写シートは、優れた耐候性、透明性及びハードコート性を有しており、実施例3に係る転写シートの結果より、プライマー層厚みを実施例1、2に対して2倍程度まで増しても、白化は発生せず透明性に優れており、更に、実施例4に係る転写シートの結果より、紫外線吸収剤の添加量を実施例1〜3に対して2倍程度に増しても、白化は生じず透明性に優れていた。
一方、比較例1〜3に係る転写シートは、添加した紫外線吸収剤の屈折率が高く、白化が発生して高いヘイズ値を有していた。特に比較例1に係る転写シートは、長波長側の吸収が強い紫外線吸収剤を含むため、初期で着色が認められた。
また、比較例4に係る転写シートは、プライマー層の膜厚が薄く、波長350nmにおける吸光度が小さかったため、耐候性が劣っていた。
本発明の転写フィルムは、被転写体に対して優れた耐候性、光学的性能、及び、ハードコート性を有するハードコート層を転写により容易に形成してハードコート積層体を得ることができる。
この転写フィルムを用いた本発明のハードコート積層体は、日々直射日光や風雨に晒されるため、極めて厳しい耐候性が求められるような用途、例えば、建築構造物の外装材や内装材、自動車内外装用の部品、太陽電池カバーまたは太陽電池基板、家電製品の部材などに使用でき、とりわけ、バルコニーの仕切り板、テラスやカーポートなどの屋根部材、車両や建造物のウインドウ、その他、防音壁や風防壁などの透明プラスチックを用いた製品に好適に用いられる。なお、上記自動車内外装用の部品としては、各種ウインドウの他、サンルーフ、ルーフパネル、デタッチャブルトップ、ウインドーリフレクター、ウインカーランプレンズ、ルームランプレンズ、サイドミラー、ヘッドランプカバー等の車両用グレージング部材などが挙げられる。また、家電製品の部材としては、照明用カバー、各種ディスプレー装置の前面板やカバーといった部材が挙げられる。また、本発明のハードコート積層体は、カーナビや携帯電話などのディスプレー装置、信号機や光学機器に使用されるレンズ類、ミラー、眼鏡、遊技機の部材などにも使用できる。
10.転写シート
11.基材フィルム
12.ハードコート層
13.プライマー層
14.接着層
20、20’.ハードコート積層体
21.樹脂基体

Claims (15)

  1. 基材フィルム上に、少なくとも、ハードコート層とプライマー層とをこの順に有する転写シートであって、
    前記基材フィルムを除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にあり、
    前記プライマー層は、粒子と紫外線吸収剤とを含み、前記粒子の屈折率と前記紫外線吸収剤の屈折率との差△nが0.13以内であることを特徴とする転写シート。
  2. 基材フィルムを除いた状態で測定した波長290nmにおける吸光度A290が1.5以上7.0以下である請求項1記載の転写シート。
  3. 前記粒子は、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、及び、樹脂材料から選択される少なくとも一種の材料から構成される粒子である請求項1又は2記載の転写シート。
  4. 基材フィルム上に、ハードコート層、プライマー層及び接着層をこの順に有する請求項1、2又は3記載の転写シート。
  5. 接着層表面の算術平均粗さが250nm以下である請求項4記載の転写シート。
  6. プライマー層の平均屈折率が1.56以下である請求項1、2、3、4又は5記載の転写シート。
  7. 少なくとも、基材フィルム、ハードコート層、プライマー層及び樹脂基体をこの順に有するハードコート積層体であって、
    前記基材フィルムと前記樹脂基体とを除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にあり、
    前記プライマー層は、粒子と紫外線吸収剤とを含み、前記粒子の屈折率と前記紫外線吸収剤の屈折率との差△nが0.13以内である
    ことを特徴とするハードコート積層体。
  8. 少なくとも、ハードコート層、プライマー層及び樹脂基体をこの順に有するハードコート積層体であって、
    前記樹脂基体を除いた状態で測定した波長350nmにおける吸光度A350が1.4以上7.0以下の範囲にあり、
    前記プライマー層は、粒子と紫外線吸収剤とを含み、前記粒子の屈折率と前記紫外線吸収剤の屈折率との差△nが0.13以内であることを特徴とするハードコート積層体。
  9. 基材フィルムと樹脂基体とを除いた状態で測定した波長290nmにおける吸光度A290が1.5以上7.0以下である請求項7記載のハードコート積層体。
  10. 樹脂基体を除いた状態で測定した波長290nmにおける吸光度A290が1.5以上7.0以下である請求項8記載のハードコート積層体。
  11. 前記粒子は、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、及び、樹脂材料から選択される少なくとも一種の材料から構成される粒子である請求項7、8、9又は10記載のハードコート積層体。
  12. プライマー層と樹脂基体の間に接着層を有する請求項7、8、9、10又は11記載のハードコート積層体。
  13. プライマー層の平均屈折率が1.56以下である請求項7、8、9、10、11又は12記載のハードコート積層体。
  14. 請求項1、2、3、4、5又は6記載の転写シートの基材フィルム側とは反対側の面と樹脂基体とを当接させた状態で、前記転写シートと前記樹脂基体とを貼合することを特徴とするハードコート積層体の製造方法。
  15. 請求項1、2、3、4、5又は6記載の転写シートの基材フィルム側とは反対側の面と樹脂基体とを当接させた状態で、前記転写シートと前記樹脂基体とを貼合し、前記転写シートから前記基材フィルムを剥離させることを特徴とするハードコート積層体の製造方法。
JP2016066874A 2015-03-30 2016-03-29 転写シート、ハードコート積層体及びハードコート積層体の製造方法 Pending JP2016190487A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015069381 2015-03-30
JP2015069381 2015-03-30

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016190487A true JP2016190487A (ja) 2016-11-10

Family

ID=57245228

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016066874A Pending JP2016190487A (ja) 2015-03-30 2016-03-29 転写シート、ハードコート積層体及びハードコート積層体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016190487A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018094883A (ja) * 2016-12-16 2018-06-21 大日本印刷株式会社 転写シート、転写シートを用いた加飾成形品の製造方法、及び加飾成形品
KR20190020287A (ko) 2016-06-17 2019-02-28 도레이 카부시키가이샤 수지 조성물, 경화막, 경화막의 제조 방법 및 표시 장치

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20190020287A (ko) 2016-06-17 2019-02-28 도레이 카부시키가이샤 수지 조성물, 경화막, 경화막의 제조 방법 및 표시 장치
US10858509B2 (en) 2016-06-17 2020-12-08 Toray Industries, Inc. Resin composition, cured film, method for producing cured film, and display device
JP2018094883A (ja) * 2016-12-16 2018-06-21 大日本印刷株式会社 転写シート、転写シートを用いた加飾成形品の製造方法、及び加飾成形品

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6264214B2 (ja) 熱転写フィルム及びこれを用いたハードコート体
KR101989771B1 (ko) 코팅제 조성물 및 이것을 사용한 시트
JP6015837B2 (ja) コーティング剤組成物及びこれを用いたシート
JP5690094B2 (ja) 耐候ハードコートフィルム
WO2013047797A1 (ja) 化粧シート及びこれを用いた化粧金属板
JP5678767B2 (ja) 熱転写フィルムの製造方法
JP2014088026A (ja) 化粧シート及びこれを用いた化粧板
JP6870263B2 (ja) 転写用ハードコートフィルム、ハードコート積層体、及びハードコート積層体の製造方法
JP5581950B2 (ja) 耐候ハードコートフィルム
JP6119381B2 (ja) 熱転写フィルムの製造方法
JP5732967B2 (ja) ハードコート樹脂成型体
JP5772150B2 (ja) 耐候性ハードコートフィルムの製造方法
JP2017177647A (ja) 転写用ハードコートフィルム、基材フィルム付ハードコート層積層体、及びハードコート層積層体の製造方法
JP6681562B2 (ja) 転写用ハードコートフィルム、及びこれを用いた加飾部材
JP5786276B2 (ja) コーティング剤及びこれを用いたシート
JP6733465B2 (ja) 転写用ハードコートフィルム及びハードコート積層体
JP2016190487A (ja) 転写シート、ハードコート積層体及びハードコート積層体の製造方法
JP6582833B2 (ja) 転写用ハードコートフィルム及びその製造方法、ハードコート層積層体
JP2017177613A (ja) 転写用ハードコートフィルム、基材フィルム付ハードコート層積層体、及びハードコート層積層体の製造方法
JP5779939B2 (ja) ハードコートフィルム及びそれを用いたハードコート樹脂成型体
JP6020670B2 (ja) 耐候性ハードコートフィルムの製造方法
JP2015077800A (ja) 耐候ハードコートフィルム
JP5740828B2 (ja) 化粧シート及びこれを用いた化粧板
JP2021055375A (ja) 化粧材
JP7375798B2 (ja) 転写フィルム及び防眩性成形体

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20160928