JP6119381B2 - 熱転写フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの特許文献に記載されているような従来のハードコート層は、樹脂成形品に耐傷性などのハードコート性を付与するものではあるが、耐候性については十分な特性を有するものではない。
特許文献4に記載される熱転写フィルムは、ハードコート性と耐候性とを兼ね備えているものの、生産工程や保管に際して、ブロッキング現象が生じ、フィルムの巻き形状の悪化やフィルムの損傷といった問題が発生する場合があり、生産安定性と生産効率の点で改善する余地がある。また、一般的な問題として、熱転写フィルムの生産工程において、熱収縮、あるいは表面保護層の形成に電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は電離放射線の照射による収縮が生じると、シワや破れの発生の原因となり、生産安定性や生産効率が著しく低下し、さらには熱転写する際の作業性が著しく低下する。そして、より安価に熱転写フィルムを製造するために、基材フィルムを薄膜化すると、これらの収縮は生じやすくなるため、生産安定性や生産効率はより低下するという傾向がある。そのため、熱転写フィルムは、これらの収縮が生じにくいという優れた耐収縮性を有することも重要となる。
1.以下の工程(1)〜(3)を順に有し、下記の耐傷フィラーの含有量をFとし、電離放射線の照射線量をBとしたときに、F及びBがF≧−3/2×B+12を満足することを特徴とする熱転写フィルムの製造方法。
工程(1)厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムである基材フィルム上に、電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量(F)が該電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程
工程(2)該未硬化樹脂層に電離放射線を5Mrad以上10Mrad未満の照射線量(B)で照射して、該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層を形成する工程
工程(3)該表面保護層上にプライマー層及び接着層を順次積層する工程
2.基材フィルム、表面保護層、プライマー層、及び接着層を順に有し、該基材フィルムが厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムにより構成され、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される熱転写フィルム。
3.被転写体、接着層、プライマー層、及び表面保護層を順に有し、該被転写体が熱可塑性樹脂により構成され、該表面保護層が硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部未満である硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されるハードコート体。
本発明の熱転写フィルムの製造方法は、工程(1)厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムである基材フィルム上に、電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量(F)が該電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程、工程(2)該未硬化樹脂層に電離放射線を5Mrad以上10Mrad未満の照射線量(B)で照射して、該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層を形成する工程、及び工程(3)該表面保護層上にプライマー層及び接着層を順次積層する工程を順に有し、該耐傷フィラーの含有量をFとし、電離放射線の照射線量をBとしたときに、F及びBがF≧−3/2×B+12を満足することを特徴とするものである。
工程(1)は、基材フィルム上に所定の電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程である。
表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布は、硬化後の厚さが通常1〜20μm程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。また、優れた耐候性とその持続性、さらには透明性を得る観点から、好ましくは2〜20μmであり、より好ましくは2〜10μmであり、さらに好ましくは2〜6μmである。
なお、樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、塗工後、熱風乾燥機などにより塗布層を予め加熱乾燥してから、さらに加熱処理、あるいは電離放射線を照射することが好ましい。
基材フィルムは、ポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムにより構成され、厚さが50μm以下であることを要する。
基材フィルムは、本発明の製造方法により得られる熱転写フィルムを用いたハードコート体を使用する際に剥離して廃棄してしまうため、より薄く安価なものを用いることが望ましく、本発明では50μm以下のものが選定される。より薄く安価なものを用いる観点から、基材フィルムの厚さは、40μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
二軸延伸ポリオレフィン樹脂のシートは、通常、長手方向延伸機を用いてガラス転移温度(Tg)以上に加熱して、好ましくは5〜30倍程度延伸し、次いで、幅方向延伸機を用いてガラス転移温度(Tg)以上に加熱して幅方向へ好ましくは5〜30倍延伸して得られる。また、延伸倍率が上記範囲内であると、熱転写フィルムを生産する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくくなる。
表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層である。表面保護層はこのような構成とすることにより、ハードコート体に耐候性とともにハードコート性を付与する層となる。
これらのうち、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートが、耐候性の向上点でより好ましいものである。また、本発明においては、上記の多官能性の重合性オリゴマー、なかでも多官能性のウレタン(メタ)アクリレートとカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートとを併用することが、耐候性やハードコート性に加えて、硬化収縮が生じにくいため、好ましい。
希釈剤としては、上記のモノマーの他、通常の有機溶媒を用いて、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工性を確保することもできる。
なお、上記のような反応性官能基を分子中に有する反応性シリコーン化合物は、硬化収縮が生じやすくなるので、電離放射線硬化性樹脂組成物に含有させないことが好ましい。
紫外線吸収剤としては、二酸化チタンや酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機系のものや、ベンゾトリアゾール系やトリアジン系の有機系の紫外線吸収剤が好ましく挙げられ、なかでもトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。また、光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)が好ましく挙げられる。
反応性官能基としては、電離放射線硬化性樹脂と反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
このような反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)などが好ましく挙げられる。
なお、電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましく、光重合用開始剤としては、従来慣用されているもののなかから適宜選択することがきできる。
工程(2)は、工程(1)で形成した未硬化樹脂層に電離放射線を5Mrad以上10Mrad未満(50〜100kGy)の照射線量で照射して、該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層を形成する工程である。
照射線量が、5Mrad(50kGy)未満であると電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化が十分ではなく、表面保護層の性能が得られない。また、照射線量が10Mrad(100kGy)以上であると、基材フィルムの収縮や硬化収縮によるシワや破れが発生する場合があり、また過剰硬化による耐候性の低下が生じる場合がある。優れた耐候性とハードコート性を得るとともに、硬化収縮が生じることなく優れた生産安定性と生産効率とを得る観点から、照射線量は、5〜9Mrad(50〜90kGy)が好ましく、5〜8Mrad(50〜80kGy)がより好ましい。
工程(3)は、表面保護層上に、プライマー層、及び接着層を順次積層する工程である。
プライマー層の形成は、バインダー樹脂及びブロッキング防止剤を含み、必要に応じて紫外線吸収剤や光安定剤を含むプライマー層形成用樹脂組成物をそのままで、又は溶媒に溶解もしくは分散させた状態として、公知の印刷方法、塗布方法などによって行うことができる。
なお、このプライマー層を設ける際に、表面保護層とプライマー層との間の接着性を確保するために、架橋硬化した表面保護層の表面をいわゆるコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン/紫外線処理などの表面処理により表面保護層との間の接着性を高めることもできる。
プライマー層は、表面保護層に対する応力緩和層として機能するもので、表面保護層の耐候劣化による割れを抑制するために設けられとともに、生産工程や保管に際して、接着層と基材フィルムとの密接着してしまうブロッキング現象の発生を抑制し、フィルムの巻き形状の悪化やフィルムの損傷を生じさせないために設けられる層である。
バインダー樹脂としては、応力緩和性能や耐候性、ブロッキング現象の発生抑制、さらには表面保護層と接着層との密着性を向上させる観点から、ポリカーボネート系ウレタンアクリレートやポリエステル系ウレタンアクリレート、あるいはポリカーボネート系ウレタンアクリレートとアクリルポリオールとからなる樹脂が好ましく、ポリカーボネート系ウレタンアクリレートがより好ましい。
ここで、ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネートや、イソホロンジイソシアネート、水素転化キシリレンジイソシアネートなどの脂環式系イソシアネートが好ましく挙げられる。アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸やアルキル基の炭素数が1〜6程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、ブロッキング防止剤の含有量としては、透明性とブロッキング現象の発生の抑制の観点から、バインダー樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲が好ましく、より好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは3〜20質量部、特に好ましくは5〜15質量部である。
紫外線吸収剤としては、上記の表面保護層に用いられるものとして記載した紫外線吸収剤の中から適宜選択すればよく、なかでもベンゾトリアゾール系やトリアジン系の有機系の紫外線吸収剤が好ましく、より好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤、さらに好ましくはヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤である。
反応性官能基を有しないヒンダードアミン系光安定剤としては、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2'−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが好ましく挙げられる。
光安定剤の含有量は、プライマー層を形成するバインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。
これらのイソシアネート硬化剤の使用量は、応力緩和性能や表面保護層と接着層との密着性を向上の観点から、バインダー樹脂100質量部に対して、1〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましく、20〜30質量部がさらに好ましい。
接着層は、表面保護層を転写体の表面に形成するために、表面保護層を被転写体に接着するために設けられる層である。接着層は、表面保護層を被転写体に接着するという機能に加えて、プライマー層でブロッキング防止剤を用いる場合は、該ブロッキング防止剤がプライマー層の表面に突き出す、いわゆる頭出しを和らげて透明性の低下を抑制し、優れた透明性を確保するという機能をも有する。
接着層における紫外線吸収剤の含有量は、接着層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜25質量部、より好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは3〜20質量部であり、特に好ましくは5〜20質量部である。また、光安定剤の含有量は、接着層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜7質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜5質量部であり、特に好ましくは2〜5質量部である。
本発明の製造方法により得られる、本発明の熱転写フィルムは、基材フィルム、表面保護層、プライマー層、及び接着層を順に有し、該基材フィルムが厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムにより構成され、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される熱転写フィルムである。
本発明の製造方法により得られたハードコート体は、被転写体、接着層、プライマー層、及び表面保護層を順に有し、該被転写体が熱可塑性樹脂により構成され、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されるもの、すなわち、本発明の熱転写フィルムを被転写体に転写して得られるものである。
図2は、本発明のハードコート体の好ましい態様の一例の断面を示す模式図である。本発明のハードコート体20は、被転写体21の上に、接着層14、プライマー層13、及び表面保護層12を順に有するものである。また、基材フィルム11は、ハードコート体を使用する際に剥離されていればよい。
このような部材を形成する樹脂材料としては、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましく挙げられ、これらの単独樹脂材料、あるいは複数種を組み合わせた複合樹脂材料であってもよい。
例えば、被転写体としてポリカーボネート樹脂の部材を選定すると、ハードコート体のヘイズ値は、0.1〜8程度であり、好ましくは0.1〜3である。ヘイズ値が上記範囲内であることにより平滑性を有するものとなっており、結果として光の散乱などにより透明性が阻害されることがなく、優れた透明性が得られている。ここで、ヘイズ値は市販のヘイズメーターにより測定された値である。
(1)耐収縮性の評価
実施例及び比較例の電離放射線を照射した際の、フィルムのシワの発生について目視にて確認し、以下の基準で評価した。
○ シワがほとんど確認されなかった。
△ シワがわずかに確認されたが、実用上問題なかった。
× 著しいシワが確認された。
(2)転写性の評価
実施例及び比較例における、熱転写フィルムの被転写体への転写において、基材シートを剥離した際の基材シートの外観を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
○ 各層の残りはほとんど確認されず、容易にかつ良好に表面保護層を転写することができる。
△ 各層の残りがわずかに確認されたものの、実用上問題なかった。
× 著しい各層の残りが確認された。
(3)外観の評価(透明性)
実施例及び比較例で得られた熱転写フィルムについて、その表面をヘイズメーターで測定した。測定されたヘイズ値について、以下の基準で評価した。
○ ヘイズ値が15未満であり、優れた透明性を有していることが確認された。
△ ヘイズ値が15以上30未満であり、良好な透明性を有していることが確認された。
× ヘイズ値が30以上であり、透明性に劣ることが確認された。
また、実施例及び比較例で得られたハードコート体について、その表面をヘイズメーターで測定した。測定されたヘイズ値について、以下の基準で評価した。
○ ヘイズ値が3未満であり、優れた透明性を有していることが確認された。
△ ヘイズ値が3以上8未満であり、良好な透明性を有していることが確認された。
× ヘイズ値が8以上であり、透明性に劣ることが確認された。
(4)耐候性の評価(耐候性試験)
実施例及び比較例で得られたハードコート体について、耐候性試験装置(「メタルウェザー」、ダイプラ・ウィンテス株式会社製)を用いて、ライト条件(照度:60mW/cm2、ブラックパネル温度63℃、層内湿度50%RH)で20時間、結露条件(照度:0mW/cm2、ブラックパネル温度30℃、層内湿度98%RH)で4時間、水噴霧条件(結露条件の前後10秒間)の条件で400時間放置する耐候性試験を行った。ハードコート体の表面を目視で確認し、黄変の有無、及びクラックや白化の有無について、以下の基準で評価した。
○ :外観の変化はほとんど確認されなかった。
△ :外観の変化は若干確認されたものの、実用上問題なかった。
× :著しい外観の変化が確認された。
(5)耐傷性
実施例及び比較例で得られたハードコート体の表面を、スチールウール(#0000)を用いて1000g/cm2の荷重をかけて10往復擦り、外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○ :外観の変化はほとんど確認されなかった。
△ :外観に若干の傷つきや艶の変化が確認されたものの、実用上問題なかった。
× :著しい傷つきと艶の変化が確認された。
(6)曲げ加工性
実施例及び比較例で得られたハードコート体について、室温下で50Rの曲げ加工試験を行い、その外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○ :外観の変化はほとんど確認されなかった。
△ :外観に若干のクラックあるいは白化が確認されたものの、実用上問題なかった。
× :著しいクラックあるいは白化が確認された。
基材フィルムとして厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)からなるフィルム(「東洋紡エステルフィルムE5001(商品名)」,東洋紡株式会社製)を用い、該基材フィルムの一方の面に、以下の表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成し、90kV及び7Mrad(70kGy)の条件で電子線を照射して、該未硬化樹脂層を架橋硬化させることにより、表面保護層(厚さ:3μm)を形成した。次いで、表面保護層の面にコロナ放電処理をした上に、以下のプライマー層形成用樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:3μm)を形成し、さらに、熱融着樹脂(アクリル樹脂)を用いて接着層(膜厚4μm)を、順次積層して、基材フィルム、表面保護層、プライマー層、及び接着層を順に有する熱転写フィルムを得た。
この熱転写フィルムを用い、被転写体(ポリカーボネート板、2mm厚)の片面に、160℃の熱をかけながらロール転写を行い、被転写体、接着層、プライマー層、表面保護層及び基材フィルムを順に有する、基材フィルム付きハードコート体を形成し、さらに該基材フィルムを剥離してハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
(硬化性樹脂)
6官能ウレタンアクリレート:60質量部
カプロラクトン系ウレタンアクリレート:40質量部
上記の硬化性樹脂100質量部(固形分70%)に対して、以下の材料を添加した。
紫外線吸収剤*1:0.5質量部
反応性官能基を有する光安定剤*2:3質量部
非反応性シリコーン化合物*3:0.2質量部
耐傷フィラー*4:3重量部
*1,チヌビン479(商品名)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン株式会社製
*2,サノールLS−3410(商品名)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、日本乳化剤株式会社製
*3,ポリエーテル変性シリコーンオイル
*4,シリカ粒子,平均粒子径:2μm
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体*5:100質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*6:17質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*7:13質量部
ヒンダードアミン系光安定剤*8:8質量部
ブロッキング防止剤*9:9質量部
硬化剤:
ヘキサンメチレンジイソシアネート:25質量部
*5,ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体におけるウレタン成分とアクリル成分の質量比は70/30である。
*6,チヌビン400(商品名)、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン株式会社製
*7,チヌビン479(商品名)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン株式会社製
*8,チヌビン123(商品名)、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート)、BASFジャパン株式会社製
*9,シリカ粒子、平均粒径:3μm
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を6質量部とし、電離放射線の照射線量を5Mrad(50kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を6質量部とし、電離放射線の照射線量を5Mrad(50kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を7質量部とし、電離放射線の照射線量を9Mrad(90kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を1質量部とし、電離放射線の照射線量を9Mrad(90kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を4質量部とし、電離放射線の照射線量を6Mrad(60kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例1において、基材フィルムとして二軸延伸ポリプロピレン樹脂(OPP)フィルム(厚さ:50μm,「OP U−1(商品名)」,三井化学東セロ株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を3質量部とし、電離放射線の照射線量を5Mrad(50kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第2表に示す。
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を3質量部とし、電離放射線の照射線量を10Mrad(100kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第2表に示す。
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を6質量部とし、電離放射線の照射線量を10Mrad(100kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第2表に示す。
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を10質量部とし、電離放射線の照射線量を5Mrad(50kGy)、7Mrad(70kGy)、及び10Mrad(100kGy)とした以外は、実施例1と同様にして、各々比較例4〜6の熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第2表に示す。
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を1質量部とし、電離放射線の照射線量を7Mrad(70kGy)とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第2表に示す。
*2,耐傷フィラー含有量Fは、電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂100質量部に対する含有量である。
*3,照射線量の単位はMradである。
*2,耐傷フィラー含有量Fは、電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂100質量部に対する含有量である。
*3,照射線量の単位はMradである。
実施例と比較例との対比から、耐傷フィラーの含有量F、電離放射線の照射線量B、及びこれらBとFとのF≧−3/2×B+12の条件を全て満足することにより初めて、本発明の効果が得られることが分かる。また、実施例1、2及び6と、比較例1及び7との対比より、耐傷性が良好か否かを判断するための条件である、F≧−3/2×B+12が妥当であることが分かる。
そして、得られた熱転写フィルムを用いた本発明のハードコート体は、日々直射日光や風雨に晒されるため、極めて厳しい耐候性が求められるような用途、例えば、建築構造物の外装材や内装材、自動車内外装用の部品、太陽電池カバーまたは太陽電池基板、家電製品の部材などに使用でき、とりわけ、バルコニーの仕切り板、テラスやカーポートなどの屋根部材、車両や建造物のウインドウ、その他、防音壁や風防壁などの透明プラスチックを用いた製品に好適に用いられる。なお、上記自動車内外装用の部品としては、各種ウインドウの他、サンルーフ、ルーフパネル、デタッチャブルトップ、ウインドーリフレクター、ウインカーランプレンズ、ルームランプレンズ、サイドミラー、ヘッドランプカバー等の車両用グレージング部材などが挙げられる。また、家電製品の部材としては、照明用カバー、各種ディスプレー装置の前面板やカバーといった部材が挙げられる。また、本発明のハードコート体は、カーナビや携帯電話などのディスプレー装置、信号機や光学機器に使用されるレンズ類、ミラー、眼鏡、遊技機の部材などにも使用できる。
11.基材フィルム
12.表面保護層
13.プライマー層
14.接着層
20.ハードコート体
21.被転写体
Claims (10)
- 以下の工程(1)〜(3)を順に有し、下記の耐傷フィラーの含有量をF(質量部)とし、電離放射線の照射線量をB(Mrad)としたときに、F及びBがF≧−3/2×B+12を満足することを特徴とする熱転写フィルムの製造方法。
工程(1)厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムである基材フィルム上に、電離放射線硬化性樹脂、ポリシロキサンからなるシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルから選ばれた少なくとも1種の非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量(F)が該電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程
工程(2)該未硬化樹脂層に電離放射線を5Mrad以上10Mrad未満の照射線量(B)で照射して、該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層を形成する工程
工程(3)該表面保護層上にプライマー層及び接着層を順次積層する工程 - 電離放射線硬化性樹脂が、官能基数2〜15のウレタン(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の熱転写フィルムの製造方法。
- 耐傷フィラーが、シリカ、アルミナ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、及び炭化ケイ素により構成される無機粒子から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の熱転写フィルムの製造方法。
- 電離放射線硬化性樹脂組成物が、トリアジン系紫外線吸収剤及び反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤から選ばれる少なくとも一種の耐候性改善剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写フィルムの製造方法。
- 表面保護層の厚さが、2〜6μmである請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写フィルムの製造方法。
- プライマー層を形成する樹脂組成物が、バインダー樹脂、ブロッキング防止剤、及び耐候性改善剤を含み、該バインダー樹脂がポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む請求項1〜5のいずれかに記載の熱転写フィルムの製造方法。
- プライマー層を形成する樹脂組成物に含まれる耐候性改善剤が、トリアジン系紫外線吸収剤及び反応性官能基を有しないヒンダードアミン系光安定剤から選ばれる少なくとも一種である請求項6に記載の熱転写フィルムの製造方法。
- プライマー層を形成する樹脂組成物に含まれるブロッキング防止剤が、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、及び炭酸カルシウムにより構成される無機粒子から選ばれる少なくとも一種であり、該ブロッキング防止剤の含有量が、バインダー樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部である請求項6又は7に記載の熱転写フィルムの製造方法。
- 接着層が、熱融着樹脂を含む請求項1〜8のいずれかに記載の熱転写フィルムの製造方法。
- 基材フィルム、表面保護層、プライマー層、及び接着層を順に有し、該基材フィルムが厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムにより構成され、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂、ポリシロキサンからなるシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルから選ばれた少なくとも1種の非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される熱転写フィルム。
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