JP6119381B2 - 熱転写フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱転写フィルムの製造方法に関する。
樹脂成形品に耐傷性などのハードコート性を付与するために、成形品の表面にハードコート層を設けることが行われており、このようなハードコート層は通常コーティングや転写により形成されている(例えば、特許文献1〜3)。このような樹脂成形品は、一般住居や公共施設の建築構造物の外装材や内装材、自動車内外装用の部品や、太陽電池カバーまたは太陽電池基板、家電製品の部材などに使用でき、とりわけ、バルコニーの仕切り板、テラスやカーポートなどの屋根部材、車両や建造物のウインドウ、その他、防音壁や風防壁など透明プラスチックを用いた製品に好適に用いられる。これらの用途においては、日々直射日光や風雨に晒されるため、極めて厳しい耐候性が求められている。
しかしながら、これらの特許文献に記載されているような従来のハードコート層は、樹脂成形品に耐傷性などのハードコート性を付与するものではあるが、耐候性については十分な特性を有するものではない。
ハードコート性と耐候性とは、相反する特性であり、ハードコート性が良い、すなわち表面の硬度が高いもの、すなわち硬直なものでは、表面層が剥離してしまい、耐候性に乏しくなる傾向にあり、一方、ハードコート性に劣る、すなわち表面の硬度が低く、柔軟性のある表面層を有するものでは、直射日光や風雨に晒された際に、表面層が剥離するようなことはなく、表面形状を維持し、優れた耐候性を有する傾向にあることが知られている。そのため、特に屋外で用いられる部材などの用途においては、いわゆるハードコート性と耐候性とを兼ね備えた表面保護層を有する製品が要望されている。
このような要望に対し、表面保護層を電離放射線硬化性樹脂と反応性官能基を有するシリコーン化合物を含む樹脂組成物により形成した熱転写フィルムが提案されている(例えば、特許文献4)。
特許文献4に記載される熱転写フィルムは、ハードコート性と耐候性とを兼ね備えているものの、生産工程や保管に際して、ブロッキング現象が生じ、フィルムの巻き形状の悪化やフィルムの損傷といった問題が発生する場合があり、生産安定性と生産効率の点で改善する余地がある。また、一般的な問題として、熱転写フィルムの生産工程において、熱収縮、あるいは表面保護層の形成に電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は電離放射線の照射による収縮が生じると、シワや破れの発生の原因となり、生産安定性や生産効率が著しく低下し、さらには熱転写する際の作業性が著しく低下する。そして、より安価に熱転写フィルムを製造するために、基材フィルムを薄膜化すると、これらの収縮は生じやすくなるため、生産安定性や生産効率はより低下するという傾向がある。そのため、熱転写フィルムは、これらの収縮が生じにくいという優れた耐収縮性を有することも重要となる。
ところで、近年では、耐候性やハードコート性に対する需要者の要求性能は厳しくなっており、また用途が多様化していることから、優れた透明性や、用途によっては曲げ加工を行っても表面保護層のクラックや白化といった外観の変化が生じない曲げ加工性も要求されるようになっている。しかし、上記の特許文献に記載されるものでは十分に対応しきれていない場合がある。
特開2004−345228号公報 特開2007―253341号公報 特開平10−166510号公報 特開2012−11677号公報
本発明は、被転写体に対して優れた耐候性、透明性、及びハードコート性を有する表面保護層を熱転写により容易に形成してハードコート体が得られ、該ハードコート体に優れた曲げ加工性を付与することができ、かつ優れた熱転写の作業性を有する熱転写フィルムを優れた生産安定性と生産効率で生産することができる、熱転写フィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。本発明の要旨は、以下のとおりである。
1.以下の工程(1)〜(3)を順に有し、下記の耐傷フィラーの含有量をFとし、電離放射線の照射線量をBとしたときに、F及びBがF≧−3/2×B+12を満足することを特徴とする熱転写フィルムの製造方法。
工程(1)厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムである基材フィルム上に、電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量(F)が該電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程
工程(2)該未硬化樹脂層に電離放射線を5Mrad以上10Mrad未満の照射線量(B)で照射して、該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層を形成する工程
工程(3)該表面保護層上にプライマー層及び接着層を順次積層する工程
2.基材フィルム、表面保護層、プライマー層、及び接着層を順に有し、該基材フィルムが厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムにより構成され、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される熱転写フィルム。
3.被転写体、接着層、プライマー層、及び表面保護層を順に有し、該被転写体が熱可塑性樹脂により構成され、該表面保護層が硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部未満である硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されるハードコート体。
本発明によれば、被転写体に対して優れた耐候性、透明性、及びハードコート性を有する表面保護層を熱転写により容易に形成してハードコート体が得られ、該ハードコート体に優れた曲げ加工性を付与することができ、かつ優れた熱転写の作業性を有する熱転写フィルムを優れた生産安定性と生産効率で生産することができる、熱転写フィルムの製造方法、及び熱転写フィルムを得ることができる。
本発明の製造方法により得られる熱転写フィルムの断面を示す模式図である。 本発明の製造方法により得られる熱転写フィルムを用いたハードコート体の断面を示す模式図である。 実施例及び比較例における、耐傷フィラーの含有量F及び照射線量Bの条件を示すグラフである。
〔熱転写フィルムの製造方法〕
本発明の熱転写フィルムの製造方法は、工程(1)厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムである基材フィルム上に、電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量(F)が該電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程、工程(2)該未硬化樹脂層に電離放射線を5Mrad以上10Mrad未満の照射線量(B)で照射して、該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層を形成する工程、及び工程(3)該表面保護層上にプライマー層及び接着層を順次積層する工程を順に有し、該耐傷フィラーの含有量をFとし、電離放射線の照射線量をBとしたときに、F及びBがF≧−3/2×B+12を満足することを特徴とするものである。
(工程(1))
工程(1)は、基材フィルム上に所定の電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程である。
表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布は、硬化後の厚さが通常1〜20μm程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。また、優れた耐候性とその持続性、さらには透明性を得る観点から、好ましくは2〜20μmであり、より好ましくは2〜10μmであり、さらに好ましくは2〜6μmである。
なお、樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、塗工後、熱風乾燥機などにより塗布層を予め加熱乾燥してから、さらに加熱処理、あるいは電離放射線を照射することが好ましい。
以下、工程(1)で用いられる基材フィルム、電離放射線硬化性樹脂組成物、及び電離放射線硬化性樹脂を用いて形成される表面保護層について順に説明する。
(基材フィルム)
基材フィルムは、ポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムにより構成され、厚さが50μm以下であることを要する。
基材フィルムは、本発明の製造方法により得られる熱転写フィルムを用いたハードコート体を使用する際に剥離して廃棄してしまうため、より薄く安価なものを用いることが望ましく、本発明では50μm以下のものが選定される。より薄く安価なものを用いる観点から、基材フィルムの厚さは、40μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
一方、基材フィルムを薄いものとすると、熱転写フィルムの生産工程において、熱収縮や、表面保護層の形成に電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は電離放射線の照射による収縮が生じやすい傾向がある。そこで、基材フィルムの種類として、耐収縮性に優れるポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムが選定される。本発明においては、基材フィルムの材料、さらには後述する表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物として特定のものを用いることにより、優れた耐収縮性が得られ、結果として優れた生産安定性や生産効率と、優れた熱転写の作業性も得られ、さらに被転写体に対して優れた耐候性、透明性、及びハードコート性を有する表面保護層を熱転写により容易に形成してハードコート体を得る、あるいはハードコート体に優れた曲げ加工性を付与するという効果も得られている。
ポリエステル樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレートなどのポリエステル樹脂からなるフィルムが好ましく挙げられる。これらの中でも、熱転写フィルムを生産する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいことなどを考慮すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
延伸ポリオレフィン樹脂フィルムとしては、熱転写フィルムを生産する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいことなどを考慮すると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂、オレフィン熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン樹脂からなり、延伸された樹脂フィルムが好ましく挙げられる。また、これらの中でも、延伸ポリプロピレン樹脂フィルムであることが好ましい。
延伸ポリオレフィン樹脂は、一軸延伸されたもの、二軸延伸されたもののいずれでもよいが、熱転写フィルムを生産する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいことなどを考慮すると、二軸延伸されたものであることが好ましい。
二軸延伸ポリオレフィン樹脂のシートは、通常、長手方向延伸機を用いてガラス転移温度(Tg)以上に加熱して、好ましくは5〜30倍程度延伸し、次いで、幅方向延伸機を用いてガラス転移温度(Tg)以上に加熱して幅方向へ好ましくは5〜30倍延伸して得られる。また、延伸倍率が上記範囲内であると、熱転写フィルムを生産する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくくなる。
これらの基材フィルムは、転写する際の表面保護層との間の離型性を確保するために、必要に応じて基材フィルム表面に離型処理を施してもよいし、あるいは逆に表面保護層との密着性を向上させるためにコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン/紫外線処理、易接着コート剤を塗布するなどの表面処理を施してもよい。また、基材フィルムは上記の樹脂フィルムを単独で用いた単層でもよいし、複数種の樹脂フィルムを積層した複層構成であってもよい。
(表面保護層)
表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層である。表面保護層はこのような構成とすることにより、ハードコート体に耐候性とともにハードコート性を付与する層となる。
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線を照射することにより硬化する樹脂組成物であり、電離放射線としては、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するもの、例えば、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるほか、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も用いられる。
使用できる電離放射線硬化性樹脂としては、従来から電離放射線硬化性を有する樹脂として慣用されている重合性オリゴマーやプレポリマーの中から適宜選択して用いることができ、良好な硬化特性を得る観点から、ブリードアウトしにくく、固形分基準として95〜100%程度としても塗布性を有し、かつ硬化させて表面保護層を形成する際に硬化収縮を生じにくいものが好ましい。
そのような重合性オリゴマーやプレポリマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマーやプレポリマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーやプレポリマーなどが好ましく挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート系がより好ましい。これらのオリゴマーやプレポリマーのうち、多官能性の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、2〜15が高架橋密度によるハードコート性付与の点で好ましく、硬化収縮を生じにくいという点から、2〜8がより好ましく、さらに好ましくは2〜6である。
また、電離放射線硬化性樹脂には、上記の多官能性の重合性オリゴマーの他、カプロラクトン系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシアクリレートとの反応により得られるカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートや、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレートなどのような高分子ウレタン(メタ)アクリレートを併用することができ、併用することにより、さらに耐候性を向上することができる。
これらのうち、カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートが、耐候性の向上点でより好ましいものである。また、本発明においては、上記の多官能性の重合性オリゴマー、なかでも多官能性のウレタン(メタ)アクリレートとカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートとを併用することが、耐候性やハードコート性に加えて、硬化収縮が生じにくいため、好ましい。
なお、本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を調整するなどの目的で、メチル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートのような希釈剤を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよく、また低分子量の多官能性(メタ)アクリレートを併用してもよい。
希釈剤としては、上記のモノマーの他、通常の有機溶媒を用いて、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工性を確保することもできる。
また、電離放射線硬化性樹脂組成物は、耐候性及びハードコート性を向上させ、優れた透明性、さらには硬化収縮を低減させる観点から、非反応性シリコーン化合物を含有することを要する。非反応性シリコーン化合物は、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、(メタ)アクリロイル基、アリル基などの反応性官能基を有しないシリコーン化合物であれば特に制限はなく、例えば、ポリシロキサンからなるシリコーンオイルのほか、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルなどが好ましく挙げられる。
なお、上記のような反応性官能基を分子中に有する反応性シリコーン化合物は、硬化収縮が生じやすくなるので、電離放射線硬化性樹脂組成物に含有させないことが好ましい。
非反応性シリコーン化合物の含有量としては、硬化性樹脂100質量部に対して、0.05〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量部であり、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。非反応性シリコーン化合物の含有量が上記範囲内であると、優れた耐候性及びハードコート性が得られ、硬化収縮が生じることがない。
表面保護層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物は、ハードコート性や耐候性を向上させるために、耐傷フィラーを含有することを要し、該耐傷フィラーの含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部であることを要する。
本発明で用いる耐傷フィラーとしては、無機系と有機系のフィラーがあり、無機物では、例えば、アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの無機粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、硬度がより高くなり優れたハードコート性が得られる点で、球状が好ましい。
これらの無機系の耐傷フィラーのうち、シリカ粒子は好ましいものの一つである。シリカ粒子は、ハードコート性を向上させ、かつ表面保護層の透明性を阻害しないからである。シリカ粒子としては、従来公知のシリカ粒子から適宜選択して用いることが可能であり、コロイダルシリカ粒子なども好適に挙げられる。コロイダルシリカ粒子は、添加量が増えた場合であっても、透明性に影響を及ぼすことが少ない。
シリカの平均粒子径としては、0.1〜10μmのものを用いることが好ましく、0.1〜5μmのものがより好ましく、0.5〜3μmのものがさらに好ましい。平均粒子径が上記範囲内であると、透明性が確保されるとともに、優れた耐傷性が得られる。ここで、シリカ粒子の平均粒子径は、レーザー回折式、あるいはレーザー散乱式粒子径分布測定により測定することができる。
一方、有機物のフィラーとしては、架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂ビーズが好ましく挙げられ、粒子径は、通常膜厚の30〜200%程度とすることが好ましい。
耐傷フィラーの含有量としては、上記のように硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部であることを要し、優れた耐候性とハードコート性、表面保護層の透明性、及びプライマー層との密着性を考慮すると、1〜8質量部が好ましく、より好ましくは2〜7質量部である。
表面保護層の形成に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物は、優れた耐候性を得るため、耐候性改善剤を含むことが好ましい。耐候剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤などがあり、紫外線吸収剤は有害な紫外線を吸収し、ハードコート体の長期にわたる耐候性、安定性を向上させる。また、光安定剤は、これ自体は紫外線をほとんど吸収しないが、紫外線により生じる有害なフリーラジカルを効率良く捕捉することにより安定化が得られるというものである。
紫外線吸収剤としては、二酸化チタンや酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機系のものや、ベンゾトリアゾール系やトリアジン系の有機系の紫外線吸収剤が好ましく挙げられ、なかでもトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。また、光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)が好ましく挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤のなかでも、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がさらに好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
トリアジン系紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜3質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましく、0.3〜1.5質量部がさらに好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、該吸収剤がブリードアウトすることなく、また十分な紫外線吸収能が得られるので、優れた耐候性が得られる。
また、ヒンダードアミン系の光安定剤としては、反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤であることが好ましい。
反応性官能基としては、電離放射線硬化性樹脂と反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
このような反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)などが好ましく挙げられる。
反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、2〜8質量部がより好ましく、3〜6質量部がさらに好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が上記範囲内であれば、該光安定剤がブリードアウトすることなく、また十分な光安定性が得られるので、優れた耐候性が得られる。
また、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物は、その性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
なお、電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましく、光重合用開始剤としては、従来慣用されているもののなかから適宜選択することがきできる。
(工程(2))
工程(2)は、工程(1)で形成した未硬化樹脂層に電離放射線を5Mrad以上10Mrad未満(50〜100kGy)の照射線量で照射して、該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層を形成する工程である。
照射線量が、5Mrad(50kGy)未満であると電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化が十分ではなく、表面保護層の性能が得られない。また、照射線量が10Mrad(100kGy)以上であると、基材フィルムの収縮や硬化収縮によるシワや破れが発生する場合があり、また過剰硬化による耐候性の低下が生じる場合がある。優れた耐候性とハードコート性を得るとともに、硬化収縮が生じることなく優れた生産安定性と生産効率とを得る観点から、照射線量は、5〜9Mrad(50〜90kGy)が好ましく、5〜8Mrad(50〜80kGy)がより好ましい。
また、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯などが用いられる。
(工程(3))
工程(3)は、表面保護層上に、プライマー層、及び接着層を順次積層する工程である。
プライマー層の形成は、バインダー樹脂及びブロッキング防止剤を含み、必要に応じて紫外線吸収剤や光安定剤を含むプライマー層形成用樹脂組成物をそのままで、又は溶媒に溶解もしくは分散させた状態として、公知の印刷方法、塗布方法などによって行うことができる。
なお、このプライマー層を設ける際に、表面保護層とプライマー層との間の接着性を確保するために、架橋硬化した表面保護層の表面をいわゆるコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン/紫外線処理などの表面処理により表面保護層との間の接着性を高めることもできる。
また、接着層もプライマー層と同様に、熱融着樹脂などの接着性の樹脂と、必要に応じて耐候性改善剤を含む接着性樹脂組成物をそのままで、又は溶媒に溶解もしくは分散させた状態として、公知の印刷方法、塗布方法などにより形成することができる。
以下、工程(3)で用いられるプライマー層形成用樹脂組成物、及び接着性樹脂組成物、ならびにこれらの組成物により得られるプライマー層、及び接着層について説明する。
(プライマー層)
プライマー層は、表面保護層に対する応力緩和層として機能するもので、表面保護層の耐候劣化による割れを抑制するために設けられとともに、生産工程や保管に際して、接着層と基材フィルムとの密接着してしまうブロッキング現象の発生を抑制し、フィルムの巻き形状の悪化やフィルムの損傷を生じさせないために設けられる層である。
プライマー層は、例えばバインダー樹脂、ブロッキング防止剤、及び耐候性改善剤を含むプライマー層形成用樹脂組成物により好ましく構成される。
バインダー樹脂としては、応力緩和性能や耐候性、ブロッキング現象の発生抑制、さらには表面保護層と接着層との密着性を向上させる観点から、ポリカーボネート系ウレタンアクリレートやポリエステル系ウレタンアクリレート、あるいはポリカーボネート系ウレタンアクリレートとアクリルポリオールとからなる樹脂が好ましく、ポリカーボネート系ウレタンアクリレートがより好ましい。
ポリカーボネート系ウレタンアクリレートは、ポリカーボネートジオールとジイソシアネートとを反応させて得られるポリカーボネート系ポリウレタン高分子を、ラジカル重合開始剤として使用し、アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。
ここで、ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネートや、イソホロンジイソシアネート、水素転化キシリレンジイソシアネートなどの脂環式系イソシアネートが好ましく挙げられる。アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸やアルキル基の炭素数が1〜6程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリカーボネート系ウレタンアクリレート中のアクリル成分とウレタン成分との質量比は、特に制限されないが、ブロッキング現象の発生を抑制し、かつ耐候性や密着性を考慮すると、ウレタン成分:アクリル成分の質量比を97:3〜20:80とすることが好ましく、より好ましくは93:7〜50:50、さらに好ましくは80:20〜60:40である。
ポリエステル系ウレタンアクリレートは、ポリエステルジオールとジイソシアネートとを反応させて得られるポリエステル系ポリウレタン高分子をラジカル重合開始剤として使用し、アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。ジイソシアネートやアクリルモノマーは、上記したポリカーボネート系ウレタンアクリレートの重合に用いるものから適宜選択されるものである。
また、アクリルポリオールは、上記したアクリルモノマーにヒドロキシル基が導入されたものである。例えば、上記アクリルモノマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアクリレートを共重合させて合成することができる。これらのアクリルポリオールは、架橋剤としての機能を果たす。
ポリカーボネート系ウレタンアクリレートとアクリルポリオールとを組み合わせて用いる場合、その質量比は、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート単独の100:0〜10:90の範囲が好ましく、より好ましくは100:0〜30:70の範囲である。
プライマー層形成用樹脂組成物に含まれるブロッキング防止剤としては、通常化粧シートなどに用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウムなどの無機粒子が好ましく挙げられる。これらの無機粒子は、透明性が高いので熱転写フィルムの透明性が保たれ、またブロッキング現象の発生を十分に抑制することができる。
ブロッキング防止剤の平均粒子径は、透明性とブロッキング現象の発生の抑制の点から、通常0.1〜10μm程度が好ましく、より好ましくは0.5〜8μm、さらに好ましくは0.5〜5μmの範囲である。ブロッキング防止剤の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定したものである。
また、ブロッキング防止剤の含有量としては、透明性とブロッキング現象の発生の抑制の観点から、バインダー樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲が好ましく、より好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは3〜20質量部、特に好ましくは5〜15質量部である。
上記プライマー層には、耐候性をさらに向上させるため、紫外線吸収剤や光安定剤などの耐候性改善剤を含有させることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、上記の表面保護層に用いられるものとして記載した紫外線吸収剤の中から適宜選択すればよく、なかでもベンゾトリアゾール系やトリアジン系の有機系の紫外線吸収剤が好ましく、より好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤、さらに好ましくはヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤である。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が好ましく挙げられ、反応性官能基を有しないヒンダードアミン系光安定剤、あるいは上記の表面保護層の形成に好ましく用いられる反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤が好ましく用いられ、特に応力緩和性能を考慮すると、反応性官能基を有しないヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
反応性官能基を有しないヒンダードアミン系光安定剤としては、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2'−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが好ましく挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、プライマー層を形成するバインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは3〜40質量部、さらに好ましくは10〜35質量部である。
光安定剤の含有量は、プライマー層を形成するバインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは5〜10質量部である。
また、プライマー層形成用樹脂組成物には、上記のバインダー樹脂の硬化を促進する観点から、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネートなどのイソシアネート硬化剤を含むことが好ましい。
これらのイソシアネート硬化剤の使用量は、応力緩和性能や表面保護層と接着層との密着性を向上の観点から、バインダー樹脂100質量部に対して、1〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましく、20〜30質量部がさらに好ましい。
プライマー層の厚さは、表面保護層に対する応力緩和層として機能し、該表面保護層の耐候劣化による割れを抑制することを考慮すると、1〜6μmであることが好ましく、より好ましくは1〜5μmである。
また、表面保護層とプライマー層との接着性を確保するために、表面保護層の架橋硬化を半硬化の状態にとどめ、その後、プライマー層形成用樹脂組成物を塗布した後、電離放射線を再び照射し、表面保護層を完全硬化することにより、表面保護層とプライマー層との間の接着性を高めるようにすることもできる。
(接着層)
接着層は、表面保護層を転写体の表面に形成するために、表面保護層を被転写体に接着するために設けられる層である。接着層は、表面保護層を被転写体に接着するという機能に加えて、プライマー層でブロッキング防止剤を用いる場合は、該ブロッキング防止剤がプライマー層の表面に突き出す、いわゆる頭出しを和らげて透明性の低下を抑制し、優れた透明性を確保するという機能をも有する。
接着層に使用できる接着性の樹脂としては、被転写体の材質や熱転写の際の転写温度や圧力に応じて定められるものであるが、一般に、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴム、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂などの熱融着樹脂が好ましく、被転写体の材質や転写製品の用途に応じて、上記樹脂の中から1種または2種以上の樹脂が選定される。耐候性向上の点から、熱融着樹脂としては、アクリル樹脂を単体で用いることが特に好ましい。
接着層には、上記表面保護層やプライマー層と同様、耐候性をさらに向上させるため、紫外線吸収剤や光安定剤などの耐候性改善剤を含有させることもできる。使用できる紫外線吸収剤や光安定剤としては、プライマー層において述べたものを好ましく用いることができる。
接着層における紫外線吸収剤の含有量は、接着層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜25質量部、より好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは3〜20質量部であり、特に好ましくは5〜20質量部である。また、光安定剤の含有量は、接着層を形成する樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜7質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜5質量部であり、特に好ましくは2〜5質量部である。
接着層の厚さは、表面保護層を被転写体に接着するという機能と、優れた透明性を確保するという観点から、1〜7μmであることが好ましく、より好ましくは1〜6μmである。また、プライマー層にブロッキング防止剤が含まれる場合は、接着剤の厚さはプライマー層よりも厚いことが好ましい。これにより、ブロッキング防止剤の頭出しによるブロッキング効果を確保しつつ、該頭出しを和らげて透明性の低下を抑制し、優れた透明性を確保することができる。
また、本発明の製造方法により得られる熱転写フィルムは、接着層の上にポリエチレン樹脂などの樹脂からなるカバーフィルム(保護フィルム)を貼り付けて表面を保護しておくことが、製品を保管する上で好ましい。本発明の製造方法により得られる熱転写フィルムは、カバーフィルムを設ける場合、このカバーフィルムを剥がし、接着層を露出し、この接着層の面を介して被転写体に転写される。
本発明の熱転写フィルムの製造方法は、表面保護層の形成に用いられる電離放射線硬化性樹脂中の電離放射線硬化性樹脂100質量部に対する耐傷フィラーの含有量をFとし、電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させて表面保護層を得る際の電離放射線の照射線量をBとしたときに、F及びBがF≧−3/2×B+12を満足することを特徴とする。そして、耐傷フィラーの含有量のFは0.1〜8(0.1以上8以下)であることを要し、上記のように、好ましくは1〜8、より好ましくは2〜7である。また、電離放射線の照射線量のBは5以上10未満であることを要し、5〜9が好ましく、5〜8がより好ましい。
耐傷フィラーの含有量のF、及び電離放射線の照射線量のBが上記の条件を満足することにより、優れた耐候性、透明性、及びハードコート性が得られ、硬化収縮が生じることなく優れた生産安定性と生産効率とが得られ、またプライマー層との密着性も得られる。また、とりわけ優れたハードコート性を得る観点から、F及びBがF≧−3/2×B+13であることが好ましい。
〔熱転写フィルム〕
本発明の製造方法により得られる、本発明の熱転写フィルムは、基材フィルム、表面保護層、プライマー層、及び接着層を順に有し、該基材フィルムが厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムにより構成され、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される熱転写フィルムである。
図1は、本発明の熱転写フィルムの好ましい態様の一例の断面を示す模式図である。本発明の熱転写フィルム10は、基材フィルム11の上に、表面保護層12、プライマー層13、及び接着層14を順に有している。
本発明の熱転写フィルムは、透明性に優れており、具体的には通常ヘイズ値が1〜30程度であり、好ましくは1〜15である。ヘイズ値が上記範囲内であることにより平滑性を有するものとなっており、結果として光の散乱などにより透明性が阻害されることがなく、優れた透明性が得られている。ここで、ヘイズ値は市販のヘイズメーターにより測定された値である。
〔ハードコート体〕
本発明の製造方法により得られたハードコート体は、被転写体、接着層、プライマー層、及び表面保護層を順に有し、該被転写体が熱可塑性樹脂により構成され、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂、非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されるもの、すなわち、本発明の熱転写フィルムを被転写体に転写して得られるものである。
図2は、本発明のハードコート体の好ましい態様の一例の断面を示す模式図である。本発明のハードコート体20は、被転写体21の上に、接着層14、プライマー層13、及び表面保護層12を順に有するものである。また、基材フィルム11は、ハードコート体を使用する際に剥離されていればよい。
ハードコート体を形成する被転写体としては、特に制限されるものではなく、耐候性とともに耐傷性などのハードコート性が必要になるもので、例えば、一般住居や公共施設の建築構造物の外装材や内装材、自動車内外装用の部品や、太陽電池カバーまたは太陽電池基板、家電製品の部材などに使用でき、とりわけ、バルコニーの仕切り板、テラスやカーポートなどの屋根部材、車両や建造物のウインドウ、その他、防音壁や風防壁など透明プラスチックを用いた製品が挙げられる。
このような部材を形成する樹脂材料としては、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましく挙げられ、これらの単独樹脂材料、あるいは複数種を組み合わせた複合樹脂材料であってもよい。
本発明のハードコート体は、本発明の熱転写フィルムを用いて、被転写体に接着層を介してプライマー層、及び表面保護層からなる複合層を転写形成して得られる。より具体的には、熱転写フィルムの接着層が被転写体の表面に接するように重ね、加熱加圧した後、基材フィルムを表面保護層から剥離することにより、被転写体の上に接着層を介してプライマー層、及び表面保護層が転写され、表面保護層が表面に形成された、本発明のハードコート体が得られる。なお、基材フィルムは剥離せずにハードコート体の保護フィルムとして利用することもでき、そのような場合には、ハードコート体を使用する前に該基材フィルムを剥離して用いればよい。
本発明の熱転写フィルムによる被転写体への熱転写方法としては、特に限定されるものではなく、例えば熱転写する転写体の材質などに応じて、熱転写時の温度や圧力を変えて行うことができる。
上記のように、本発明の熱転写フィルムは透明性に優れているため、被転写体として透明のものを選択すると、得られるハードコート体も透明性に優れたものとなる。よって、優れた透明性を活かす観点から、本発明の熱転写フィルムは透明性を要求される用途に用いられるハードコート体の表面保護層の付与に好適に用いられる。
例えば、被転写体としてポリカーボネート樹脂の部材を選定すると、ハードコート体のヘイズ値は、0.1〜8程度であり、好ましくは0.1〜3である。ヘイズ値が上記範囲内であることにより平滑性を有するものとなっており、結果として光の散乱などにより透明性が阻害されることがなく、優れた透明性が得られている。ここで、ヘイズ値は市販のヘイズメーターにより測定された値である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって何ら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)耐収縮性の評価
実施例及び比較例の電離放射線を照射した際の、フィルムのシワの発生について目視にて確認し、以下の基準で評価した。
○ シワがほとんど確認されなかった。
△ シワがわずかに確認されたが、実用上問題なかった。
× 著しいシワが確認された。
(2)転写性の評価
実施例及び比較例における、熱転写フィルムの被転写体への転写において、基材シートを剥離した際の基材シートの外観を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
○ 各層の残りはほとんど確認されず、容易にかつ良好に表面保護層を転写することができる。
△ 各層の残りがわずかに確認されたものの、実用上問題なかった。
× 著しい各層の残りが確認された。
(3)外観の評価(透明性)
実施例及び比較例で得られた熱転写フィルムについて、その表面をヘイズメーターで測定した。測定されたヘイズ値について、以下の基準で評価した。
○ ヘイズ値が15未満であり、優れた透明性を有していることが確認された。
△ ヘイズ値が15以上30未満であり、良好な透明性を有していることが確認された。
× ヘイズ値が30以上であり、透明性に劣ることが確認された。
また、実施例及び比較例で得られたハードコート体について、その表面をヘイズメーターで測定した。測定されたヘイズ値について、以下の基準で評価した。
○ ヘイズ値が3未満であり、優れた透明性を有していることが確認された。
△ ヘイズ値が3以上8未満であり、良好な透明性を有していることが確認された。
× ヘイズ値が8以上であり、透明性に劣ることが確認された。
(4)耐候性の評価(耐候性試験)
実施例及び比較例で得られたハードコート体について、耐候性試験装置(「メタルウェザー」、ダイプラ・ウィンテス株式会社製)を用いて、ライト条件(照度:60mW/cm2、ブラックパネル温度63℃、層内湿度50%RH)で20時間、結露条件(照度:0mW/cm2、ブラックパネル温度30℃、層内湿度98%RH)で4時間、水噴霧条件(結露条件の前後10秒間)の条件で400時間放置する耐候性試験を行った。ハードコート体の表面を目視で確認し、黄変の有無、及びクラックや白化の有無について、以下の基準で評価した。
○ :外観の変化はほとんど確認されなかった。
△ :外観の変化は若干確認されたものの、実用上問題なかった。
× :著しい外観の変化が確認された。
(5)耐傷性
実施例及び比較例で得られたハードコート体の表面を、スチールウール(#0000)を用いて1000g/cm2の荷重をかけて10往復擦り、外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○ :外観の変化はほとんど確認されなかった。
△ :外観に若干の傷つきや艶の変化が確認されたものの、実用上問題なかった。
× :著しい傷つきと艶の変化が確認された。
(6)曲げ加工性
実施例及び比較例で得られたハードコート体について、室温下で50Rの曲げ加工試験を行い、その外観を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○ :外観の変化はほとんど確認されなかった。
△ :外観に若干のクラックあるいは白化が確認されたものの、実用上問題なかった。
× :著しいクラックあるいは白化が確認された。
実施例1
基材フィルムとして厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)からなるフィルム(「東洋紡エステルフィルムE5001(商品名)」,東洋紡株式会社製)を用い、該基材フィルムの一方の面に、以下の表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成し、90kV及び7Mrad(70kGy)の条件で電子線を照射して、該未硬化樹脂層を架橋硬化させることにより、表面保護層(厚さ:3μm)を形成した。次いで、表面保護層の面にコロナ放電処理をした上に、以下のプライマー層形成用樹脂組成物を塗布してプライマー層(厚さ:3μm)を形成し、さらに、熱融着樹脂(アクリル樹脂)を用いて接着層(膜厚4μm)を、順次積層して、基材フィルム、表面保護層、プライマー層、及び接着層を順に有する熱転写フィルムを得た。
この熱転写フィルムを用い、被転写体(ポリカーボネート板、2mm厚)の片面に、160℃の熱をかけながらロール転写を行い、被転写体、接着層、プライマー層、表面保護層及び基材フィルムを順に有する、基材フィルム付きハードコート体を形成し、さらに該基材フィルムを剥離してハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
(表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物)
(硬化性樹脂)
6官能ウレタンアクリレート:60質量部
カプロラクトン系ウレタンアクリレート:40質量部
上記の硬化性樹脂100質量部(固形分70%)に対して、以下の材料を添加した。
紫外線吸収剤*1:0.5質量部
反応性官能基を有する光安定剤*2:3質量部
非反応性シリコーン化合物*3:0.2質量部
耐傷フィラー*4:3重量部
*1,チヌビン479(商品名)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン株式会社製
*2,サノールLS−3410(商品名)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、日本乳化剤株式会社製
*3,ポリエーテル変性シリコーンオイル
*4,シリカ粒子,平均粒子径:2μm
(プライマー層形成用樹脂組成物)
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体*5:100質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*6:17質量部
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤*7:13質量部
ヒンダードアミン系光安定剤*8:8質量部
ブロッキング防止剤*9:9質量部
硬化剤:
ヘキサンメチレンジイソシアネート:25質量部
*5,ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体におけるウレタン成分とアクリル成分の質量比は70/30である。
*6,チヌビン400(商品名)、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン株式会社製
*7,チヌビン479(商品名)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン株式会社製
*8,チヌビン123(商品名)、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート)、BASFジャパン株式会社製
*9,シリカ粒子、平均粒径:3μm
実施例2
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を6質量部とし、電離放射線の照射線量を5Mrad(50kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例3
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を6質量部とし、電離放射線の照射線量を5Mrad(50kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例4
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を7質量部とし、電離放射線の照射線量を9Mrad(90kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例5
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を1質量部とし、電離放射線の照射線量を9Mrad(90kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例6
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を4質量部とし、電離放射線の照射線量を6Mrad(60kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
実施例7
実施例1において、基材フィルムとして二軸延伸ポリプロピレン樹脂(OPP)フィルム(厚さ:50μm,「OP U−1(商品名)」,三井化学東セロ株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を3質量部とし、電離放射線の照射線量を5Mrad(50kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第2表に示す。
比較例2
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を3質量部とし、電離放射線の照射線量を10Mrad(100kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第2表に示す。
比較例3
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を6質量部とし、電離放射線の照射線量を10Mrad(100kGy)とした以外は、実施例1と同様にして熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第2表に示す。
比較例4〜6
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を10質量部とし、電離放射線の照射線量を5Mrad(50kGy)、7Mrad(70kGy)、及び10Mrad(100kGy)とした以外は、実施例1と同様にして、各々比較例4〜6の熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第2表に示す。
比較例7
実施例1において、表面保護層形成用の電離放射線硬化性樹脂組成物中の耐傷フィラーの含有量を1質量部とし、電離放射線の照射線量を7Mrad(70kGy)とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルム、及びハードコート体を得た。熱転写フィルム、及びハードコート体について、上記の評価を行った評価結果を第2表に示す。
*1,PETはポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを示し、OPPは二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを示す。
*2,耐傷フィラー含有量Fは、電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂100質量部に対する含有量である。
*3,照射線量の単位はMradである。
*1,PETはポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを示し、OPPは二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを示す。
*2,耐傷フィラー含有量Fは、電離放射線硬化性樹脂組成物中の電離放射線硬化性樹脂100質量部に対する含有量である。
*3,照射線量の単位はMradである。
各実施例及び比較例における、耐傷フィラー含有量Fと照射線量Bとの関係を図3に示す。各実施例は、耐傷フィラー含有量Fが0.1〜8であり、照射線量Bが5以上10未満であり、かつF≧−3/2×B+12の範囲内(図3中の網掛け部分)に属しており、各比較例は当該範囲の外に存在する。
本発明の製造方法により得られた熱転写フィルムは、被転写体に対して、優れた耐候性とハードコート性(耐傷性)とを兼ね備えた表面保護層を熱転写により容易に形成することができ、また、優れた透明性と曲げ加工性とを付与することができることが確認された。また、優れた透明性と曲げ加工性とを付与することができること、熱転写の作業性にも優れていることが確認された。さらに、熱転写フィルムは耐収縮性に優れていることから、本発明の製造方法により、その生産工程において歩留まりすることなく、優れた生産安定性と生産効率で熱転写フィルムを生産することができることも確認された。
一方、F≧−3/2×B+12の条件を満足しない比較例1及び比較例7は耐傷性が悪く、照射線量Bの条件を満足しない比較例2及び3は照射線量が強すぎて耐収縮性と曲げ加工性が悪く、耐傷フィラーFの条件を満足しない比較例4〜6は外観(透明性)が悪いものとなった。
実施例と比較例との対比から、耐傷フィラーの含有量F、電離放射線の照射線量B、及びこれらBとFとのF≧−3/2×B+12の条件を全て満足することにより初めて、本発明の効果が得られることが分かる。また、実施例1、2及び6と、比較例1及び7との対比より、耐傷性が良好か否かを判断するための条件である、F≧−3/2×B+12が妥当であることが分かる。
本発明の熱転写フィルムの製造方法によれば、被転写体に対して優れた耐候性、透明性、及びハードコート性を有する表面保護層を熱転写により容易に形成してハードコート体が得られ、該ハードコート体に優れた曲げ加工性を付与することができ、かつ優れた熱転写の作業性を有する熱転写フィルムを優れた生産安定性と生産効率で生産することができる。
そして、得られた熱転写フィルムを用いた本発明のハードコート体は、日々直射日光や風雨に晒されるため、極めて厳しい耐候性が求められるような用途、例えば、建築構造物の外装材や内装材、自動車内外装用の部品、太陽電池カバーまたは太陽電池基板、家電製品の部材などに使用でき、とりわけ、バルコニーの仕切り板、テラスやカーポートなどの屋根部材、車両や建造物のウインドウ、その他、防音壁や風防壁などの透明プラスチックを用いた製品に好適に用いられる。なお、上記自動車内外装用の部品としては、各種ウインドウの他、サンルーフ、ルーフパネル、デタッチャブルトップ、ウインドーリフレクター、ウインカーランプレンズ、ルームランプレンズ、サイドミラー、ヘッドランプカバー等の車両用グレージング部材などが挙げられる。また、家電製品の部材としては、照明用カバー、各種ディスプレー装置の前面板やカバーといった部材が挙げられる。また、本発明のハードコート体は、カーナビや携帯電話などのディスプレー装置、信号機や光学機器に使用されるレンズ類、ミラー、眼鏡、遊技機の部材などにも使用できる。
10.熱転写フィルム
11.基材フィルム
12.表面保護層
13.プライマー層
14.接着層
20.ハードコート体
21.被転写体

Claims (10)

  1. 以下の工程(1)〜(3)を順に有し、下記の耐傷フィラーの含有量をF(質量部)とし、電離放射線の照射線量をB(Mrad)としたときに、F及びBがF≧−3/2×B+12を満足することを特徴とする熱転写フィルムの製造方法。
    工程(1)厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムである基材フィルム上に、電離放射線硬化性樹脂、ポリシロキサンからなるシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルから選ばれた少なくとも1種の非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量(F)が該電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化樹脂層を形成する工程
    工程(2)該未硬化樹脂層に電離放射線を5Mrad以上10Mrad未満の照射線量(B)で照射して、該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層を形成する工程
    工程(3)該表面保護層上にプライマー層及び接着層を順次積層する工程
  2. 電離放射線硬化性樹脂が、官能基数2〜15のウレタン(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の熱転写フィルムの製造方法。
  3. 耐傷フィラーが、シリカ、アルミナ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、及び炭化ケイ素により構成される無機粒子から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の熱転写フィルムの製造方法。
  4. 電離放射線硬化性樹脂組成物が、トリアジン系紫外線吸収剤及び反応性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤から選ばれる少なくとも一種の耐候性改善剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写フィルムの製造方法。
  5. 表面保護層の厚さが、2〜6μmである請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写フィルムの製造方法。
  6. プライマー層を形成する樹脂組成物が、バインダー樹脂、ブロッキング防止剤、及び耐候性改善剤を含み、該バインダー樹脂がポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む請求項1〜5のいずれかに記載の熱転写フィルムの製造方法。
  7. プライマー層を形成する樹脂組成物に含まれる耐候性改善剤が、トリアジン系紫外線吸収剤及び反応性官能基を有しないヒンダードアミン系光安定剤から選ばれる少なくとも一種である請求項6に記載の熱転写フィルムの製造方法。
  8. プライマー層を形成する樹脂組成物に含まれるブロッキング防止剤が、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、及び炭酸カルシウムにより構成される無機粒子から選ばれる少なくとも一種であり、該ブロッキング防止剤の含有量が、バインダー樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部である請求項6又は7に記載の熱転写フィルムの製造方法。
  9. 接着層が、熱融着樹脂を含む請求項1〜8のいずれかに記載の熱転写フィルムの製造方法。
  10. 基材フィルム、表面保護層、プライマー層、及び接着層を順に有し、該基材フィルムが厚さ50μm以下のポリエステル樹脂フィルム又は延伸ポリオレフィン樹脂フィルムにより構成され、該表面保護層が電離放射線硬化性樹脂、ポリシロキサンからなるシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルから選ばれた少なくとも1種の非反応性シリコーン、及び耐傷フィラーを含み、該耐傷フィラーの含有量が該硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜8質量部である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される熱転写フィルム。
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