JP5577894B2 - 熱転写フィルム及びこれを用いたハードコート体 - Google Patents
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1.基材フィルム上に、少なくとも表面保護層とプライマー層と接着層とが積層された熱転写フィルムであって、該表面保護層は電離放射線硬化型樹脂と反応性官能基Aを有するシリコーン化合物とを含む樹脂組成物を架橋硬化してなる硬化物であり、該接着層が熱融着樹脂を含む熱転写フィルム。
2.電離放射線硬化型樹脂が6〜15官能性のウレタン(メタ)アクリレートである上記1に記載の熱転写フィルム。
3.電離放射線硬化型樹脂が6〜9官能性のウレタン(メタ)アクリレートである上記2に記載の熱転写フィルム。
4.熱融着樹脂がアクリル系ヒートシール樹脂である上記1〜3のいずれかに記載の熱転写フィルム。
5.表面保護層が、さらに耐傷フィラーを含有する硬化物である上記1〜4のいずれかに記載の熱転写フィルム。
6.表面保護層が、さらに耐候剤を含有する硬化物である上記1〜5のいずれかに記載の熱転写フィルム。
7.耐候剤が、トリアジン系紫外線吸収剤または反応性を有するヒンダードアミン系光安定剤、あるいは、トリアジン系紫外線吸収剤および反応性を有するヒンダードアミン系光安定剤である上記6に記載の熱転写フィルム。
8.プライマー層が、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む上記1〜7のいずれかに記載の熱転写フィルム。
9.上記1〜8のいずれかに記載の熱転写フィルムを用いて、被転写体に転写した、表面保護層を有する被転写体であるハードコート体。
本発明の熱転写フィルムは、基材フィルム上に少なくとも表面保護層とプライマー層と接着層とが積層されたものであり、表面保護層は電離放射線硬化型樹脂と反応性官能基Aを有するシリコーン化合物とを含む樹脂組成物が架橋硬化されてなる硬化物からなる層であり、接着層が熱融着樹脂を含む層である熱転写フィルムである。
以下、本発明の熱転写フィルムの構成について詳細に説明する。
本発明で用いられる基材フィルム1は、表面保護層などを形成でき、被転写体に転写する際の加熱温度に耐えるものであればよく、金属フィルムや樹脂フィルムなどが挙げられる。樹脂フィルムであれば、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などの各種の樹脂フィルムを用いることができる。これらのうち、耐熱性の点でポリエステル系樹脂が好ましい。樹脂フィルムの厚さは4〜200μmが通常適用される。薄すぎるとカールやシワが入りやすく、厚すぎるとコストアップや熱伝導効率が低下するようになるため、12〜100μmがより好ましい。また、金属フィルムとしては、例えば、アルミニウム箔や銅箔などが挙げられる。
なお、これらの基材フィルムは、転写する際の、表面保護層との間の離型性を確保するために、必要に応じて基材フィルム表面に離型処理を施してもよい。
表面保護層2は、電離放射線硬化型樹脂と反応性官能基Aを有するシリコーン化合物とを含む樹脂組成物を架橋硬化してなる硬化物からなる層であって、ハードコート性と耐候性とを有する層である。また、この樹脂組成物には、さらに、ハードコート性や耐候性を向上させるために、耐傷フィラーや、耐候剤を含有することが好ましく、この耐候剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤や、反応性官能基Bを有するヒンダードアミン系光安定剤があげられる。
重合性オリゴマーないしはプレポリマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマーやプレポリマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系やポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートやカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーやプレポリマーなどが好ましく挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート系がより好ましい。これらのオリゴマーないしはプレポリマーのうち、多官能性の重合性オリゴマーが好ましく、官能基数としては、6〜15が高架橋密度によるハードコート性付与の点で好ましく、うねり防止(面状態向上)という点で6〜9がより好ましい。
反応性官能基Bは、電離放射線硬化型樹脂と反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
このような光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)などがあげられる。
なお、電離放射線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましく、光重合用開始剤としては、従来慣用されているもののなかから適宜選択することがきできる。
なお、樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、塗工後、熱風乾燥機などにより塗工層を予め加熱乾燥してから電離放射線を照射することが好ましい。
次いで、基材フィルム1上に形成された表面保護層2に、プライマー層3、接着層4を積層する。プライマー層は、表面保護層2に対する応力緩和層として機能するもので、表面保護層2の耐候劣化による割れを抑制するために設けるものであるが、このプライマー層3を積層する際に、表面保護層2とプライマー層3との間の接着性を確保するために、架橋硬化した表面保護層2の表面をいわゆるコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理などの処理により表面保護層との間の接着性を高めることもできる。
ここで、ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネートや、イソホロンジイソシアネート、水素転化キシリレンジイソシアネートなどの脂環式系イソシアネートが好ましく挙げられる。アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸やアルキル基の炭素数が1〜6程度の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系などが好ましく挙げることができる。なかでも、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系がより好ましい。
次いで、プライマー層3の上に接着層4が積層される。このような接着層4は、表面保護層を転写体の表面に形成するために、表面保護層を被転写体に接着するために設けられる層であり、接着層4に使用できる接着性の樹脂としては、被転写体の材質や熱転写の際の転写温度や圧力に応じて定められるものであるが、一般に、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴム、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂等の熱融着樹脂が好ましく、被転写体の材質や転写製品の用途に応じて、上記樹脂の中から1種または2種以上の樹脂が選定される。耐候性向上の点からアクリル樹脂単体が特に好ましい。
また、本発明の熱転写フィルムは、接着層の上にポリエチレンなどのカバーフィルム(保護フィルム)を貼り付けて表面を保護しておくことが、製品を保管する上で好ましく、カバーフィルムがある場合には、このカバーフィルムを剥がし、接着層を露出し、この接着層の面を介して被転写体に転写される。
以上のようにして得られる熱転写フィルム5を用いて、被転写体6に、接着層4を介してプライマー層3および表面保護層2からなる複合層を転写形成して、表面保護層2を有するハードコート体7が得られる。
(1)耐候性の評価(耐候性試験)
実施例及び比較例で得られたハードコート体を、ダイプラ・ウィンテス株式会社製メタルウェザーにセットし、ライト条件(照度:60mW/cm2、ブラックパネル温度63℃、層内湿度50%RH)で20時間、結露条件(照度:0mW/cm2、ブラックパネル温度30℃、層内湿度98%RH)で4時間、水噴霧条件(結露条件の前後10秒間)の条件で300時間放置する耐候性試験を行った。該試験後、25℃50%RHの条件下で2日間保持してから、シート表面にクラックや白化などの外観を下記の基準で評価した。
◎ :外観変化は全くなかった
○ :外観変化はほとんどなかった
△ :外観変化は若干あるが、実用上問題なかった
× :外観変化が著しかった
各実施例及び比較例で得られたハードコート体について、スチールウールを用いて、300g/cm2の荷重をかけて5往復擦り、外観を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ :外観にほとんど変化なかった
△ :外観に若干の傷つきや艶変化があった
× :外観に傷つきがあり、艶変化があった
上記耐候性試験を行ったハードコート体について、耐傷性試験と同様に、スチールウールを用いて、300g/cm2の荷重をかけて5往復擦り、外観を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎ :外観変化は全くなかった
○ :外観にほとんど変化なかった
△ :外観に若干の傷つきや艶変化があった
× :外観に傷つきがあり、艶変化があった
(株)東洋精機製作所製「摩擦測定器AN型」を用いて、シートの滑り出し角度を測定することで滑り性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○ :滑り角15°以下
△ :滑り角15°〜20°
× :滑り角20°以上
実施例及び比較例で得られたハードコート体を常温下で24時間保管した後、ハードコート体の表面を指で触って、下記の基準で評価した。
○ :べたつきは全くなかった
△ :紫外線吸収剤などのブリードによるべたつきは若干あるが、実用上問題なかった
× :ブリードによるべたつきが著しかった
転写工程において、基材シートを剥離したとき後の基材シートの外観を、下記の基準で評価した。
○ :各層が残らなかった
△ :各層が僅かに残った
× :各層がほとんど残った
基材フィルム1に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートを用い、該基材フィルム1の片面に下記の樹脂組成物からなる表面保護層2を膜厚3μmとなるように設け、175keV及び10Mrad(100kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させることにより、表面保護層(3μm)を形成した。
次いで、得られた表面保護層の面にコロナ放電処理をした上に、以下の組成からなるプライマー層3(膜厚3μm)を、アクリル樹脂からなる接着層4(膜厚4μm)を、順次積層して熱転写フィルム5を得た。
この熱転写フィルム5を用い、被転写体6(ポリカーボネート板、2mm厚)の片面に、160℃の熱をかけながらロール転写を行い、基材フィルム1を剥離し、表面保護層2、プライマー層3が接着層4を介して転写された表面保護層2を有するハードコート体7を得た。得られた評価結果を、用いた樹脂組成とともに表1に示す。
6官能ウレタンアクリレート:100重量部
反応性官能基Aを有するシリコーン化合物:0.3重量部
紫外線吸収剤:4重量部
チヌビン479(商品名)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、BASFジャパン株式会社製
反応性官能基Bを有する光安定剤(反応性HALS):4重量部
サノールLS−3410(商品名)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレート、BASFジャパン株式会社製
耐傷フィラー:コロイダルシリカ 10重量部
樹脂組成物:
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体におけるウレタン成分とアクリル成分の質量比:70/30
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:15質量部
「チヌビン400(商品名)」、BASFジャパン株式会社製
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤:5質量部
「チヌビン479(商品名)」、BASFジャパン株式会社製
ヒンダードアミン系光安定剤:6質量部
「チヌビン123(商品名)」、BASFジャパン株式会社製
硬化剤:
ヘキサンメチレンジイソシアネート: 6質量部
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の6官能ウレタンアクリレートを、6官能ウレタンアクリレートとカプロラクトン系ウレタンアクリレートオリゴマーの混合樹脂(質量比70/30)とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の6官能ウレタンアクリレートを、9官能ウレタンアクリレートとした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の6官能ウレタンアクリレートを、15官能ウレタンアクリレートとした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
実施例1において、接着層組成物中のアクリル樹脂を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合/アクリルの混合樹脂(質量比50/50)とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の反応性HALSを、ヒンダードアミン系光安定剤(「チヌビン123(商品名)」、BASFジャパン株式会社製)とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
実施例1において、プライマー層の樹脂組成物中のポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を、ポリエステル系ウレタンアクリル共重合体とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
実施例1において、電離放射線硬化性樹脂組成物中の反応性シリコーンを、シリコーンオイル(非反応のシリコーン化合物)とした以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
実施例1において、プライマー層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、熱転写フィルムおよびハードコート体を作製した。得られた評価結果を組成とともに表1に示した。
2.表面保護層
3.プライマー層
4.接着層
5.熱転写フィルム
6.被転写体
7.ハードコート体
Claims (10)
- 基材フィルム上に、少なくとも表面保護層とプライマー層と接着層とが順に積層された熱転写フィルムであって、該表面保護層は電離放射線硬化型樹脂、及び該電離放射線硬化型樹脂と反応性を有する反応性官能基Aを有するシリコーン化合物を含む樹脂組成物を架橋硬化してなる硬化物であり、該接着層が熱融着樹脂を含む熱転写フィルム。
- 電離放射線硬化型樹脂が6〜15官能性のウレタン(メタ)アクリレートである請求項1に記載の熱転写フィルム。
- 電離放射線硬化型樹脂が6〜9官能性のウレタン(メタ)アクリレートである請求項2に記載の熱転写フィルム。
- 樹脂組成物が、さらに電離放射線硬化型樹脂としてカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートを含む請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写フィルム。
- 熱融着樹脂がアクリル系ヒートシール樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写フィルム。
- 表面保護層が、さらに耐傷フィラーを含有する硬化物である請求項1〜5のいずれかに記載の熱転写フィルム。
- 表面保護層が、さらに耐候剤を含有する硬化物である請求項1〜6のいずれかに記載の熱転写フィルム。
- 耐候剤が、トリアジン系紫外線吸収剤および/または電離放射線硬化型樹脂と反応性を有する反応性官能基Bを有するヒンダードアミン系光安定剤である請求項7に記載の熱転写フィルム。
- プライマー層が、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む請求項1〜8のいずれかに記載の熱転写フィルム。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の熱転写フィルムを用い被転写体に転写した、表面保護層を有するハードコート体。
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