JP2016186104A - 金属粉末射出成形方法、熱処理方法、金属粉末、及び、製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】新たな鋼種を用いた金属粉末射出成形方法を提供する。【解決手段】重量%で、C:0.10未満、Si:2.0〜9.0、Mn:0.05〜6.0、Cu:0.5〜4.0、Ni:1.0〜24.0、Cr:6.0〜28.0、Mo:0.2〜4.0、Nb:0.03〜2.0、残部がFe及び不可避の不純物から成る高珪素ステンレス鋼製の金属粉末をバインダと混合して混合物を得るステップと、混合物を金型内に射出成形して成形体を得るステップと、成形体を脱脂及び焼結して焼結体を得るステップと、を含む、金属粉末射出成形方法が提供される。【選択図】図4
Description
本発明は、金属粉末射出成形方法、熱処理方法、金属粉末、及び、製品に関する。
特許文献1は、所謂「MIM(Metal Injection Molding)」法といわれる金属粉末射出成形方法を開示している。
金属粉末射出成形方法は、複雑な形状の金属部品をプラスチックと同様なプロセスで量産できるため、近年、金属の加工法として注目されている。特に、精密な部品を特殊な材料で量産するのに優れているので、医療機器部品、自動車部品、OA機器部品など多くの部品の加工方法として採用されている。
しかしながら、金属粉末射出成形方法に適した鋼種が少なく、利用用途が拡大しない要因の一つになっている。
そこで、本発明の目的は、新たな鋼種を用いた金属粉末射出成形方法、熱処理方法、金属粉末、及び、製品を提供することにある。
重量%で、C:0.10未満、Si:2.0〜9.0、Mn:0.05〜6.0、Cu:0.5〜4.0、Ni:1.0〜24.0、Cr:6.0〜28.0、Mo:0.2〜4.0、Nb:0.03〜2.0、残部がFe及び不可避の不純物から成る高珪素ステンレス鋼製の金属粉末をバインダと混合して混合物を得るステップと、前記混合物を金型内に射出成形して成形体を得るステップと、前記成形体を脱脂及び焼結して焼結体を得るステップと、を含む、金属粉末射出成形方法が提供される。
前記金属粉末の粒径は、32マイクロメートル以下とする。
上記の焼結体に対し固溶化熱処理及び時効硬化熱処理を実施して製品を得るステップを含む、熱処理方法が提供される。
重量%で、C:0.10未満、Si:2.0〜9.0、Mn:0.05〜6.0、Cu:0.5〜4.0、Ni:1.0〜24.0、Cr:6.0〜28.0、Mo:0.2〜4.0、Nb:0.03〜2.0、残部がFe及び不可避の不純物から成る高珪素ステンレス鋼製である、金属粉末射出成形用の金属粉末が提供される。
前記金属粉末の粒径は、32マイクロメートル以下である。
上記の金属粉末射出成形方法によって得られた、焼結体が提供される。
上記の熱処理方法によって得られた、製品が提供される。
前記金属粉末の粒径は、32マイクロメートル以下とする。
上記の焼結体に対し固溶化熱処理及び時効硬化熱処理を実施して製品を得るステップを含む、熱処理方法が提供される。
重量%で、C:0.10未満、Si:2.0〜9.0、Mn:0.05〜6.0、Cu:0.5〜4.0、Ni:1.0〜24.0、Cr:6.0〜28.0、Mo:0.2〜4.0、Nb:0.03〜2.0、残部がFe及び不可避の不純物から成る高珪素ステンレス鋼製である、金属粉末射出成形用の金属粉末が提供される。
前記金属粉末の粒径は、32マイクロメートル以下である。
上記の金属粉末射出成形方法によって得られた、焼結体が提供される。
上記の熱処理方法によって得られた、製品が提供される。
本発明によれば、新たな鋼種を用いた金属粉末射出成形方法、熱処理方法、金属粉末、及び、製品を提供することができる。
1.鋼種について
本願出願人は、金属粉末射出成形方法に用いる金属粉末の鋼種として、高Si-極低Cを特徴とする析出硬化型ステンレス鋼が適用可能であるかを精査し、本明細書においてその精査結果を報告する。以下、上記析出硬化型ステンレス鋼を「シリコロイ鋼」と称する。シリコロイ鋼の成分規格としては複数の規格があるが、本報告では、下記表1に示すシリコロイ鋼A2を選択した。また、シリコロイ鋼A2の粉末を単に「シリコロイA2粉末」と称する。下記表1では、シリコロイ鋼及びシリコロイ鋼A2の成分規格を一般的なSUS630の成分規格と比較対比させている。なお、シリコロイ鋼A2は、フェライト−オーステナイト−マルテンサイトの三相共存領域となる。
本願出願人は、金属粉末射出成形方法に用いる金属粉末の鋼種として、高Si-極低Cを特徴とする析出硬化型ステンレス鋼が適用可能であるかを精査し、本明細書においてその精査結果を報告する。以下、上記析出硬化型ステンレス鋼を「シリコロイ鋼」と称する。シリコロイ鋼の成分規格としては複数の規格があるが、本報告では、下記表1に示すシリコロイ鋼A2を選択した。また、シリコロイ鋼A2の粉末を単に「シリコロイA2粉末」と称する。下記表1では、シリコロイ鋼及びシリコロイ鋼A2の成分規格を一般的なSUS630の成分規格と比較対比させている。なお、シリコロイ鋼A2は、フェライト−オーステナイト−マルテンサイトの三相共存領域となる。
即ち、シリコロイ鋼は、重量%で、C:0.10未満、Si:2.0〜9.0、Mn:0.05〜6.0、Cu:0.5〜4.0、Ni:1.0〜24.0、Cr:6.0〜28.0、Mo:0.2〜4.0、Nb:0.03〜2.0、残部がFe及び不可避の不純物から成る高珪素ステンレス鋼である。
また、シリコロイ鋼A2は、重量%で、C:0.020未満、Si:3.0〜5.0、Mn:0.5〜1.5、Cu:0.8〜1.2、Ni:6.0〜7.0、Cr:10.0〜13.0、Mo:0.3〜1.0、Nb:0.30〜1.00、残部がFe及び不可避の不純物から成る高珪素ステンレス鋼である。
Cは鋼の強度を上げる元素であり、通常の高強度鋼では所定量のCの含有を必須としている。しかし、多量のSiを含有するシリコロイ鋼において、強度はSiによってもたらされる特異な金属組織で確保されるので、Cの含有は必須ではない。むしろ、Cはシリコロイ鋼の靱性を低下させるとともに耐酸化性や耐食性にも悪影響を及ぼす元素である。従って、Cの含有量はできるだけ少ない方がよい。シリコロイ鋼では0.10%を許容上限値としているが、0.05%以下が望ましい。シリコロイ鋼A2では更に0.020%未満としている。
Siは、強度を与える主要な元素であるだけでなく、耐熱性、耐酸化性、耐食性、高温軟化抵抗性を付与する。また、鋼の融点を下げ、流動性を増して鋳造性を改善する元素でもある。その含有量が2.0%未満の場合は、上記の特性の向上効果が十分でない。一方、Siは強力なフェライト形成元素であるから、その含有量が9.0%を超えると鋼の組織中のフェライト相が過多になるのを抑えるのに、Ni等の添加を増やす必要があって材料価格が高くなる。従って、シリコロイ鋼では2.0〜9.0%を許容値としている。シリコロイ鋼A2では、更に、3.0〜5.0%としている。
Mnは、鋼の脱酸剤として働き、またオーステナイト生成元素でもある。シリコロイ鋼では、機械的性質に大きく影響するものではないが、金属組織の緻密化と安定化に役立つので、0.05%以上の含有が必要である。しかし、6.0%を超えると耐食性が劣化する。従って、シリコロイ鋼では0.05〜6.0%を許容値としている。シリコロイ鋼A2では、更に、0.5〜1.5%としている。
Cuは、必要に応じて添加する成分である。Cuは、耐食性(特に耐酸性)の改善とともに析出硬化に寄与する元素である。また、オーステナイト形成元素として金属組織のバランスの調整に役立つ。これらの作用を期待する場合は、0.5%以上含有させるのがよい。しかし、4.0%を超えるCuは、鋼の熱間加工性を損なうので、添加する場合でも含有量の上限は4.0%とする。従って、シリコロイ鋼では0.5〜4.0%を許容値としている。望ましいのは2.0%以下である。シリコロイ鋼A2では、更に、0.8〜1.2%としている。
Niは、鋼に耐食性(特に耐酸性)、耐酸化性および耐熱性を付与するとともに、次に述べるCrとのバランスで、鋼の金属組織を実質的に二相に保つのに必須な元素である。これらの作用効果を得るには1.0%以上が必要である。しかし、24.0%を超えると、オーステナイト相が増加しすぎて二相ステンレス鋼の特徴が失われるのみならず、鋼の経済性も失われてしまう。従って、シリコロイ鋼では、1.0〜24.0%を許容値としている。シリコロイ鋼A2では、更に、6.0〜7.0%としている。
Crは、ステンレス鋼の基本的な特性、即ち、耐食性(特に耐酸性)、耐熱性、耐酸化性を確保するための成分である。6.0%未満ではこれらの性質が不十分である。他方、Crが28.0%を超えると、鋼を実質的に二相に保つために必要なNiの量が増えて経済性が損なわれる。従って、シリコロイ鋼では、6.0〜28.0%を許容値としている。シリコロイ鋼A2では、更に、10.0〜13.0としている。
Moは、鋼の耐食性 (耐酸性) とともに高温強度を高めて抗クリープ性を改善し、また靱性と耐摩耗性の向上にも寄与する。0.2 %未満ではこれらの効果が不十分である。Moは、フェライト生成元素であるから、その含有量が多くなれば、オーステナイト形成元素(Ni、Cu、Mn)の添加量を増やさなければならない。また、Moは高価な元素でもある。これらのことを総合的に考慮して、シリコロイ鋼は、0.2〜4.0 %を許容値としている。シリコロイ鋼A2では、更に、0.3〜1.0%としている。
Nbは、シリコロイ鋼の靱性を損なわずに時効処理の際の硬化深度を大きくするのに有効な元素である。さらに、Nbは耐粒界腐食性、溶接性を改善し、かつ強度を向上させる。この効果は、Nbの含有量が0.03%以上で顕著になる。しかし、2.0% を超えると鋼の熱間加工性を損ない、また、靱性の低下も招く。従って、シリコロイ鋼では、0.03〜2.0 %を許容値としている。さらに望ましいのは、0.1 〜2.0 %である。シリコロイ鋼A2では、更に、0.30〜1.00%としている。
シリコロイ鋼A2を含むシリコロイ鋼は、上記の各成分の外、残部が鉄(Fe)と不可避の不純物からなる。なお、不純物のうちPとSは、それぞれ0.04%以下に抑えるのが望ましい。
上記表1によれば、シリコロイ鋼A2は、SUS630と比較して、Si、Ni、Mo、Nbが多く、Cu、Crが少ない。
2.シリコロイA2粉末について
シリコロイA2粉末は、例えばガスアトマイズ法により製造することができる。ガスアトマイズ法とは、所望成分から成る合金を溶解後、タンディッシュの底部に設けたノズル穴からその溶湯を流して溶湯の細かい流れを作る。その溶湯の流れに対して例えばアルゴンガスなどの不活性ガスから成るジェット流体を吹き付けて、そのジェット流体のエネルギーによって、流下してくる溶湯流を順次粉化させ、生成された液滴を落下させながら擬固させて合金粉末とする方法である。
シリコロイA2粉末は、例えばガスアトマイズ法により製造することができる。ガスアトマイズ法とは、所望成分から成る合金を溶解後、タンディッシュの底部に設けたノズル穴からその溶湯を流して溶湯の細かい流れを作る。その溶湯の流れに対して例えばアルゴンガスなどの不活性ガスから成るジェット流体を吹き付けて、そのジェット流体のエネルギーによって、流下してくる溶湯流を順次粉化させ、生成された液滴を落下させながら擬固させて合金粉末とする方法である。
3.バインダについて
バインダとしては、例えば、アタクチック、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、エステルワックス、ステアリン酸、鉱油、天然ワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ジエチルフタレート、ジブチルフタレートエチレン、ジオクチルフタート、脂肪酸エステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリアセタール(POM)、アクリル系樹脂、ナフタリンまたはこれらの共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
バインダとしては、例えば、アタクチック、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、エステルワックス、ステアリン酸、鉱油、天然ワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ジエチルフタレート、ジブチルフタレートエチレン、ジオクチルフタート、脂肪酸エステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリアセタール(POM)、アクリル系樹脂、ナフタリンまたはこれらの共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
4.MIM法及び熱処理について
次に、図1を参照して、MIM法(金属粉末射出成形方法)及び熱処理について説明する。図1に示すように、MIM法は、(1)混合工程(S100)、(2)射出成形工程(S110)、(3)脱脂焼結工程(S120)、によって構成されている。
次に、図1を参照して、MIM法(金属粉末射出成形方法)及び熱処理について説明する。図1に示すように、MIM法は、(1)混合工程(S100)、(2)射出成形工程(S110)、(3)脱脂焼結工程(S120)、によって構成されている。
(1)混合工程(S100)
本工程では、金属粉末とバインダを混合して混合物を得る。金属粉末とバインダの混合比は、体積%で、例えば67:33が好ましい。
本工程では、金属粉末とバインダを混合して混合物を得る。金属粉末とバインダの混合比は、体積%で、例えば67:33が好ましい。
(2)射出成形工程(S110)
本工程では、金属射出成形機において、ペレット化した混合物を混練して射出成形し、所要の形状の成形体に成形する。
本工程では、金属射出成形機において、ペレット化した混合物を混練して射出成形し、所要の形状の成形体に成形する。
(3)脱脂焼結工程(S120)
本工程では、成形体を脱脂焼結炉に入れ、成形体を脱脂し、その後、成形体を焼結する。
本工程では、成形体を脱脂焼結炉に入れ、成形体を脱脂し、その後、成形体を焼結する。
脱脂工程とは、成形体からバインダーを取り除く工程である。脱脂は、例えば溶媒脱脂及び大気脱脂によって構成される。溶媒脱脂は、約80℃に加熱された溶媒液に成形体を短時間、浸漬させ、溶媒液を成形体に染み込ませることである。大気脱脂は、大気中で成形体を約320℃に加熱し、その状態で約2時間放置することである。なお、大気脱脂において成形体を加熱する温度は、300〜400℃の範囲が好適とされている。
また、焼結工程とは、脱脂された成形体を焼結して金属焼結体を得る工程である。焼結工程では、例えば1200〜1300℃で2時間、脱脂された成形体を加熱する。
次に、熱処理について説明する。熱処理は、(4)固溶化熱処理工程(S130)、(5)時効硬化熱処理工程(S140)によって構成されている。
(4)固溶化熱処理工程(S130)
本工程は、処理対象物を室温の状態から加熱し、1050℃で20分維持し、その後水冷する。
本工程は、処理対象物を室温の状態から加熱し、1050℃で20分維持し、その後水冷する。
固溶化熱処理工程とは、処理対象物を加熱して合金成分を固体に溶け込ませる工程である。
(5)時効硬化熱処理工程(S140)
本工程では、処理対象物を室温の状態から加熱し、480℃で7時間維持し、その後空冷する。
本工程では、処理対象物を室温の状態から加熱し、480℃で7時間維持し、その後空冷する。
時効硬化熱処理工程とは、固溶化熱処理によって固溶された状態の合金成分を析出硬化させる工程である。
次に、実施例を説明する。本実施例で使用したシリコロイA2粉末の写真を図2に示す。本実施例では、シリコロイA2粉末を分級することで、シリコロイA2粉末の粒径を32マイクロメートル以下(ふるい分け法)に揃えている。バインダとしては、低融点ワックスとプラスチックを混合したものを用いた。シリコロイA2粉末とバインダの混合比は、体積%で、67:33とした。
図3には射出成形工程(S110)によって得られた成形体を、図4には脱脂焼結工程(S120)によって得られた焼結体を、夫々示す。図3の成形体と図4の焼結体を対比観察すると、脱脂焼結工程において曲がりや反りが発生していないことが判る。焼結体の密度は、測定値で、7.54〜7.57g/cm3だった。なお、シリコロイ鋼A2の真密度は、7.60g/cm3である。焼結体の相対密度は、測定値で、99.2〜99.7%だった。焼結体の炭素量は、測定値で、0.016wt%であり、シリコロイ鋼A2の規格である0.02wt%未満を充足していた。焼結体のビッカース硬さ(20kgf)は、336〜348HV20だった。
下記表2には、焼結体そのもの、固溶処理材、固溶−時効処理材の特性評価試験の試験結果を示している。焼結体そのものとは、熱処理されていない焼結体を意味する。固溶処理材とは、焼結体を固溶化熱処理したものを意味する。固溶−時効処理材とは、焼結体を固溶化熱処理及び時効硬化熱処理したものを意味する。下記表2において、「MIM加工材」とあるのは、MIM法によって得られたシリコロイ鋼A2の試験片を意味する。「鋳造品」とあるのは、鋳造によって得られたシリコロイ鋼A2の試験片を意味する。「as焼結」とは、焼結体そのものを試験片とした場合を意味する。「溶体化処理材」とは、固溶処理材を試験片とした場合を意味する。「溶体化−時効処理材」とは、固溶−時効処理材を試験片とした場合である。「固溶化熱処理」とは、鋳造品を固溶化熱処理したものを試験片とした場合である。「時効処理」とは、鋳造品を固溶化熱処理し、その後時効硬化熱処理(490℃で4時間維持し、その後空冷)したものを試験片とした場合である。ただし、下記表2中、(*)とあるのは、試験片が弾性域で破断したことを意味する。また、下記表2において「耐力」とあるのは、0.2%耐力を意味する。
なお、参考までに、SUS630(ただし、熱処理なし)を材料にMIM法で形成した試験片については、以下の通りである。
・硬さHRC25
・耐力660MPa
・引張強さ800MPa
・伸び4%
・密度7.5g/cm3
・硬さHRC25
・耐力660MPa
・引張強さ800MPa
・伸び4%
・密度7.5g/cm3
また、上記表2をグラフにしたものを図5及び図6に示す。図5では耐力及び引張強さについてMIM加工材の「溶体化処理材」と鋳造品の「固溶化熱処理」を比較し、図6では伸び及び絞りについてMIM加工材の「溶体化処理材」と鋳造品の「固溶化熱処理」を比較している。
上記表2及び図5、図6によれば、MIM加工材が鋳造品と比較して遜色ない機械的性質を呈していると言及することができる。従って、MIM法における鋼種として、シリコロイ鋼A2は有力な選択肢であると立証することができた。
図7には焼結体そのものの断面を組織観察した際の写真を、図8には固溶−時効処理材の断面を組織観察した際の写真を夫々示している。組織観察においては、エッチング液として王水を用いた。図7によれば、焼結体そのものでは、結晶粒界にNb2Cが析出しており、結晶粒内に双晶が認められる。図8によれば、固溶−時効処理材では、結晶粒界にNb2Cが析出していることが認められる。
図9には、焼結体そのものと固溶−時効処理材をX線回析した回析結果を示している。図9によれば、両試験片共に、αFeとNb2Cで構成されていることが判る。
以上に、本願発明の好適な実施形態及び実施例を説明したが、上記実施形態は、以下の特長を有する。
重量%で、C:0.10未満、Si:2.0〜9.0、Mn:0.05〜6.0、Cu:0.5〜4.0、Ni:1.0〜24.0、Cr:6.0〜28.0、Mo:0.2〜4.0、Nb:0.03〜2.0、残部がFe及び不可避の不純物から成る高珪素ステンレス鋼製の金属粉末をバインダと混合して混合物を得るステップと、混合物を金型内に射出成形して成形体を得るステップと、成形体を脱脂及び焼結して焼結体を得るステップと、を含む、金属粉末射出成形方法が提供される。以上の方法によれば、同鋼種の鋳造品と同等程度の機械的性質を再現することができる。従って、金属粉末射出成形方法として選択可能な新たな鋼種を提供することができた。
上記金属粉末の粒径は、好ましくは、32マイクロメートル以下とする。
上記の焼結体に対し固溶化熱処理及び時効硬化熱処理を実施して製品を得るステップを含む、熱処理方法が提供される。以上の方法によれば、同鋼種の鋳造品と同等程度の機械的性質を再現することができる。
重量%で、C:0.10未満、Si:2.0〜9.0、Mn:0.05〜6.0、Cu:0.5〜4.0、Ni:1.0〜24.0、Cr:6.0〜28.0、Mo:0.2〜4.0、Nb:0.03〜2.0、残部がFe及び不可避の不純物から成る高珪素ステンレス鋼製である、金属粉末射出成形用の金属粉末が提供される。
上記金属粉末の粒径は、好ましくは、32マイクロメートル以下である。
上記金属粉末射出成形方法によって得られた、焼結体が提供される。
上記熱処理方法によって得られた、製品が提供される。
製品としては、ターボチャージャーなどの自動車部品、医療機器、その他のあらゆる金属製品が考えられる。
Claims (7)
- 重量%で、C:0.10未満、Si:2.0〜9.0、Mn:0.05〜6.0、Cu:0.5〜4.0、Ni:1.0〜24.0、Cr:6.0〜28.0、Mo:0.2〜4.0、Nb:0.03〜2.0、残部がFe及び不可避の不純物から成る高珪素ステンレス鋼製の金属粉末をバインダと混合して混合物を得るステップと、
前記混合物を金型内に射出成形して成形体を得るステップと、
前記成形体を脱脂及び焼結して焼結体を得るステップと、
を含む、
金属粉末射出成形方法。 - 請求項1に記載の金属粉末射出成形方法であって、
前記金属粉末の粒径は、32マイクロメートル以下とする、
金属粉末射出成形方法。 - 請求項1又は2に記載の焼結体に対し固溶化熱処理及び時効硬化熱処理を実施して製品を得るステップを含む、
熱処理方法。 - 重量%で、C:0.10未満、Si:2.0〜9.0、Mn:0.05〜6.0、Cu:0.5〜4.0、Ni:1.0〜24.0、Cr:6.0〜28.0、Mo:0.2〜4.0、Nb:0.03〜2.0、残部がFe及び不可避の不純物から成る高珪素ステンレス鋼製である、
金属粉末射出成形用の金属粉末。 - 請求項4に記載の金属粉末であって、
前記金属粉末の粒径は、32マイクロメートル以下である、
金属粉末。 - 請求項1又は2に記載の金属粉末射出成形方法によって得られた、焼結体。
- 請求項3に記載の熱処理方法によって得られた、製品。
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