JP5114233B2 - 鉄基焼結合金およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄を主成分とする原料粉末を金型内で圧縮成形して得られた圧粉体を焼結することにより得られる鉄基焼結合金およびその製造方法に係り、特に焼結後の焼結体のままで焼入れ組織を呈して優れた強度を有するとともに、優れた寸法精度を有する鉄基焼結合金およびそれを製造する方法に関するものである。
粉末冶金法は、ニアネットシェイプに造形できるので、後の機械加工による削り代が少なく材料損失が小さいこと、また一度金型を作製すれば同じ形状の製品が多量に生産できること等の理由から経済性に優れているという特徴があり、このため自動車部品、工作機器、家電製品等に広く適用されている。しかしながら、各種製品における近年の低価格化の趨勢に対応するため、焼結部品においても更に低廉化の要求が大きくなってきている。
一般に、高強度が要求される粉末冶金部品では、成形および焼結後に焼入れを行っている。そこで、上記の低廉化の要求に対し、焼結後の焼結体の状態で焼入れした場合と同等の金属組織を得ることによって、焼結後の焼入れ工程を廃止することが検討されている。
焼入れを行わずに高強度の部品を得る手法としては、焼入れ性の優れた合金粉末を用い、焼結時の冷却によりマルテンサイト変態させた材料がある。しかしながら、通常の焼結炉の冷却速度は5〜20℃/分であり、焼却時の冷却速度でマルテンサイト組織を得るためには、合金元素の添加量が多くなる。この結果、圧縮性が著しく低下し、強度も低くなる。
一方、純鉄粉末に焼入れ性を改善させるNi、Cu、Mo等の粉末を添加したもの、またはこれらを複合合金化したものは、圧縮性に優れているが、焼結体の合金成分が不均一となる。この結果、焼き入れ性を改善させる元素の乏しい部分が残留するため、金属組織の85%以上をマルテンサイト組織にすることは通常の焼結条件においては困難である。
このような状況の下、特許文献1、2等が提案されている。特許文献1には、質量比でNi:3〜5%、Mo:0.4〜0.7%、残部Feからなる組成の合金粉末に、銅粉末を1〜2%、ニッケル粉末を1〜3%、黒鉛粉末を焼結後のC量が0.2〜0.7%になるように配合した混合粉末を用いる焼結合金の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、粉末の組成が、質量比で、Ni:3〜5%、Mo:0.4〜0.7%、残部:Feおよび不可避不純物よりなるFe−Ni−Mo合金粉末と、粉末の組成が、質量比で、Mo:0.5〜2%、残部:Feおよび不可避不純物よりなるFe−Mo合金粉末との質量比が、5:95〜70:30になるように配合するとともに、全体組成におけるNi量が4〜6質量%、焼結後のC量が0.2〜0.7質量%となるようニッケル粉末と黒鉛粉末をさらに添加した混合粉末を用いる焼結合金の製造方法が開示されている。
特開平9−87794号公報 特開2004−124141号公報
上記特許文献1および2においては、Niを主成分としている。しかしながら、近年、Niは価格が高騰しており、材料費が割高になっているため、低廉化の要求に対応しきれなくなってきている。また、単味粉末で添加されたNiは焼結時に寸法収縮を促進するため、寸法精度の低下を招く。さらに、このような焼結後の焼結体が焼入れ組織を呈する焼結合金においては、通常の粉末冶金法において寸法矯正に用いられるサイジングが適用できない。このため、寸法精度の向上は機械加工によって行わざるを得ず、加工費が増加する。
本発明は、価格が高騰しているNiを用いることなく、焼結後の焼結体が焼入れ組織を呈するとともに寸法精度に優れた鉄基焼結合金およびこれを製造する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の鉄基焼結合金は、質量比でCr:2.5〜3.5%、Mo:0.4〜0.6%、Cu:0.5〜1.5%、C:0.4〜0.6%、残部Feおよび不可避不純物からなる組成を有し、焼結後の金属組織として、気孔を除く基地がマルテンサイト相、もしくは断面面積率で2〜20%のベイナイト相と残部がマルテンサイト相の混合組織からなる焼入れ組織を呈することを特徴とする。また、上記金属組織において、一部の気孔の周辺にCuが濃化した成分分布を呈することを好ましい態様とする。
また、本発明の鉄基焼結合金の製造方法は、質量比でCr:2.5〜3.5%、Mo:0.4〜0.6%、残部Feおよび不可避不純物からなる組成の鉄基合金粉末に、銅粉末を0.5〜1.5%、黒鉛粉末を焼結後のC量が0.4〜0.6%になるように配合した混合粉末を金型内で圧縮成形し、得られた圧粉体を非酸化性雰囲気中、1180〜1230℃の範囲で焼結し、焼結炉中で5℃/分以上、20℃/分以下の速度で冷却して焼入れ組織を生成することを特徴とする。この場合において、上記圧粉体の焼結後、100℃以下まで冷却した後、150℃以上、300℃以下の温度に加熱し保持すること、または焼結炉内で冷却中に150℃以上300℃以下の温度で保持する工程を付加することが好ましい。
本発明の鉄基焼結合金は、近年、価格が高騰しているNiを用いることなく、焼結後の焼結体が焼入れ組織を呈するとともに寸法精度に優れる。このため、強度及び寸法精度に優れた鉄基焼結合金を安価に製造することができる。
また、本発明の鉄基焼結合金の製造方法によれば、焼結のみでマルテンサイト相、もしくは断面面積率で2〜20%のベイナイト相と残部がマルテンサイト相の混合組織からなる焼入れ組織を呈する焼結合金が得られ、強度及び寸法精度が良好であるため焼入れ工程が不要となり、鉄基焼結合金を経済的に製造することが可能となる。
通常の焼結炉において、マルテンサイト変態に関係する700℃から300℃までの冷却速度は5〜20℃/分であり、この冷却速度において、気孔を除く基地の部分の金属組織をマルテンサイトに変態させる必要がある。このため、焼入れ性を改善させる合金元素を主原料である鉄粉末に付与する必要がある。この点でNiは焼き入れ性の改善に好適であるが、近年価格が高騰しており、また、寸法精度を低下させる。そこで、Niと代替する合金元素について鋭意研究を行ったところ、Crが好適であることを見出した。Crは、Fe基地へ少量添加すればよく、焼き入れ性を著しく改善し、臨界冷却速度(マルテンサイト変態を生じさせるのに必要な最小の冷却速度)に及ぼす効果はNiよりも大きい。また、価格もNiに比して安定しており、安価である。このため本発明においては、鉄粉末に合金化させて付与する合金元素としてCrを用いる。
また、合金元素を2種類以上同時に鋼材へ合金化すると、合成効果を発揮して焼き入れ性が著しく改善されるため、焼き入れ性を改善する合金元素を1種類だけ多量に付与するよりも、少量ずつ多種類付与する方が効果的である。この観点から、第2合金元素としてMoを用いる。MoもCrと同様に、Fe基地へ少量添加すればよく、焼き入れ性を著しく改善し、臨界冷却速度に及ぼす効果がNiよりも大きい。MoはNiと同様に、近年価格が高騰している元素であるが、上記のCrと併用することにより添加量を低減できるため、原料費を低減することが可能である。
さらに、上記のCrおよびMoは、その効果を基地に均一に与えるためにFeと合金化して鉄基合金粉末(Fe−Cr−Mo合金粉末)の形態で付与することが効果的であるが、CrおよびMoはFe基地に固溶して与えた場合のFe基地の硬さに及ぼす影響がNiよりも小さい合金元素である。このため、原料粉末の圧縮性も同時に改善され、高密度の焼結合金を得ることができ、より高強度の焼結合金とすることができる。
CrおよびMoの添加量は、Cr:2.5〜3.5質量%、Mo:0.4〜0.6質量%とする必要がある。各々の合金元素の量が各々の下限を下回ると、上記した焼き入れ性改善の効果が乏しくなる。一方、各々の合金元素の量が各々の上限を超えると、鉄基合金粉末が硬くなって原料粉末の圧縮性が損なわれるとともに、原料粉末の価格が増加する。
さらに本発明においては、上記のCrおよびMoに加えてCuを添加して焼き入れ性をさらに改善する。Cuは焼き入れ性改善の効果がNiと同程度であるが、Niに比して安価であるためこれを用いる。CuはFe基地中への拡散速度が速いこと、および上記の鉄基合金粉末にCuを合金化して与えると、鉄基合金粉末が硬くなって原料粉末の圧縮性が損なわれるため、上記の鉄基合金粉末に単味粉末すなわち銅粉末の形態で添加する。また、銅粉末の形態で添加することにより、焼結の進行が促進される効果も得られる。さらに、銅粉末はFe基地に拡散して固溶し、元の銅粉末があった箇所に形成される気孔の周囲はCuの成分濃度が高くなっており、固溶強化により気孔の表面の強度が改善される。この結果、静的強さおよび疲れ強さが向上する。
銅粉末の添加量が0.5質量%を下回ると、焼入れ性改善の効果が乏しくなって、5℃/分の冷却速度で焼入れ組織を得ることが困難になる。一方、銅粉末の添加量が1.5質量%を超えると、添加量の割に焼き入れ性改善の効果が小さくなるとともに、原料粉末の価格が増加するため好ましくない。
Cを鉄基合金粉末に固溶して与えると、鉄基合金粉末が硬くなって原料粉末の圧縮性が損なわれるため、黒鉛粉末の形態で付与する。黒鉛粉末の添加量が焼結後のC量で0.4質量%に満たないと焼入れ組織が得難くなり、機械的強さが低下する。一方、黒鉛粉末の添加量を多くして焼結後のC量を多くすると、焼入れ組織を得易くなる。しかしながら、焼結後のC量が0.6質量%を超えると、上記のCrやMoの炭化物が析出し易くなり、Fe基地中に固溶するCrおよびMoの量が減少するため、強度が低下する。このため、焼結後のC量が0.4〜0.6質量%になるように黒鉛粉末の添加を行う。
上記の鉄基合金粉末に銅粉末と黒鉛粉末とを添加混合した原料粉末を成形した後、焼結を非酸化性雰囲気中、1180〜1230℃の温度範囲で行う。焼結温度が1180℃を下回ると、焼結が不充分、すなわち鉄基合金粉末どうしの拡散および単味粉末の形態で添加したCuおよびCのFe基地中への拡散が不充分となり、機械的強さが低下するとともに、充分な焼入れ組織が得られない。一方、焼結温度が1230℃を超えても、それ以上の焼結促進の効果は少なく、焼結体の変形が生じて寸法精度が低下し易くなる。
焼結後は、通常の冷却速度である5℃/分以上、20℃/分以下の速度で冷却すればよい。ちなみに、冷却速度が5℃/分よりも遅いと、焼結工程の時間が長くなるため生産効率が低下し、焼結コストは増加する。また、20℃/分よりも冷却速度を速くする場合は、別途、冷却装置を用意する必要が生じるため、焼結コストが増加する。
原料粉末を上記構成としたことにより、焼結後の金属組織は気孔を除く基地全体を断面面積率で100%として、80%以上をマルテンサイト相とし、それ以外の部分をベイナイト相(すなわち、ベイナイト相は20%以下)とすることができる。なお、通常、マルテンサイト組織は、マルテンサイト結晶間に未変態のオーステナイトが残留、分散した組織を呈するもので、本願はこのような部分的な変態も含む。
上記の鉄基合金粉末と銅粉末と黒鉛粉末の構成による本発明の焼結合金は、全体組成が、質量比で、Cr:2.5〜3.5%、Mo:0.4〜0.6%、Cu:0.5〜1.5%、C:0.4〜0.6%、残部Feおよび不可避不純物となる。本構成によると、高価なNiを用いないこと、およびMoの添加量が特許文献1、2に記載の技術よりも低減できることから、特許文献1、2の焼結合金よりも安価に製造することができる。また、特許文献1、2に記載の技術とは異なり、Niを用いていないことから、寸法精度の良好な焼結合金を得ることができる。
上記の全体組成のうち、各合金元素の添加量を上限に近づけるとともに、冷却速度を20℃/分に近い速い速度で冷却すると、全面がマルテンサイト相の焼結合金を得ることができ、従来の焼入れ処理を施したものと同等の焼結合金を得ることができる。
また、各合金元素の添加量および冷却速度を調整して、気孔を除く基地全体を100%として断面面積率でベイナイト相を2〜20%の範囲でマルテンサイト相中に分散させると、焼結合金の靱性が改善され、より機械的強さの高い焼結合金を得ることができる。しかしながら、ベイナイト組織の面積率が20%を超えると機械的強さは低下するため、その面積率は20%以下とする。
さらに、焼結体を150℃以上、300℃以下の温度に保持することにより、マルテンサイト組織が焼戻しマルテンサイトとなって強靱化し、強度がさらに改善される。また、組織としてより安定化されるため、経時変化、特に寸法変動を抑制する効果を付与することもできる。150℃以上、300℃以下の温度に保持する方法としては、焼結後に室温まで冷却してから焼戻し炉で再加熱を行う方法があるが、室温まで冷却せずに100℃程度の温度から焼戻し炉へ移送し再加熱することにより、エネルギーの省力化を図ることもできる。さらに、焼結ヒートパターンにより、焼結炉を100℃以下に冷却することなく、直接150℃以上、300℃以下の温度に保持することによって、恒温変態が促進され、残留オーステナイトはベイナイトに変態し、マルテンサイトは焼戻しマルテンサイトとなって、高い靱性が得られる。また、この手法によれば工程削減によるコストの低減を図ることもできる。なお、上記の温度範囲内に保持する時間は、製品の最大肉厚(mm)×0.05から0.10時間程度が好適である。
[第1実施例]
本発明例として、組成が、Cr:3質量%、Mo:0.5質量%、および残部がFeおよび不可避不純物からなる鉄基合金粉末に、銅粉末:1.0質量%と、焼結後のC量が0.5質量%となる量の黒鉛粉末とを添加して混合した原料粉末を用意した。また、従来例(特許文献1)として、組成が、Ni:4質量%、Mo:0.5質量%および残部がFeおよび不可避不純物からなる鉄基合金粉末に、ニッケル粉末:2.0質量%と、銅粉末:1.0質量%と、焼結後のC量が0.5質量%となる量の黒鉛粉末とを添加して混合した原料粉末を用意した。
これらの粉末を用いて、成形圧力500、600、700MPaで、外径30mm、内径20mm、高さ10mmの円環状に成形して、成形体密度をアルキメデス法により測定するとともに、円環状成形体の外形寸法を測定した。このときの成形体密度を表1、図1に示す。また、成形圧力600MPaで底面が10mm×60mm、高さが10mmの角柱状に成形した。得られた成形体(円環状成形体および角柱状成形体)について、窒素ガス雰囲気中、1195℃で焼結した後、10℃/分の冷却速度で冷却を行って焼結体試料(試料番号01〜06)を作製した。焼結後、円環状焼結体の外形寸法を測定した。このときの焼結体の外形寸法について、先に測定した円環状成形体の外形寸法とともに表2に示す。またこれらの値より焼結体の寸法変化率を求めるとともに、成形体密度に対する寸法変化率の傾きtanθを求めた。これらの値について、表2および図2に示す。
また、作製した角柱形状試料の一部については、引張り試験片形状に機械加工して引張り試験を行い、引張り強さを測定した。また角柱形状試料の一部については衝撃試験に供して衝撃値を測定した。さらに、金属組織を倍率400倍で撮影した画像を、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製Win ROOF)を用いて、気孔を除く基地部分に占めるベイナイトの割合を測定した。これらの結果を表3に併せて示す。
Figure 0005114233
Figure 0005114233
Figure 0005114233
表1および図1より、本発明例の混合粉末は、従来例の混合粉末に比して、圧縮性に優れることがわかる。したがって、同じ成形圧力で成形する場合には本発明例の混合粉末の方が高密度に成形できる。また、同じ成形密度を得ればよい場合には、本発明例の混合粉末の方が成形圧力を小さくでき、金型等への負荷を小さくして、金型等の寿命を延長できる。
表2より、本発明例の原料粉末は、従来例の原料粉末に比して成形密度に対する寸法変化率の傾きtanθが小さいことがわかる。ところで、一般に、焼結による寸法収縮の割合は成形密度が低いものほど大きく、逆に高密度のものでは焼結による寸法収縮の割合が小さくなる傾向を示す。しかしながら、試験片のような単純形状の製品を除き、一般に粉末冶金製品は複雑形状を呈しており、いかに成形で工夫しても製品各部の成形体密度を均一にすることは極めて難しく、一般の粉末冶金製品においては、製品各部で成形体密度が異なっている。このため粉末冶金製品では、焼結後の寸法収縮量が各部で異なっており、寸法バラツキの要因となっている。ここで、密度の違いによらず寸法収縮量が等しい原料を適用すれば、製品各部で成形密度が異なっても各部が一様に収縮するので、寸法のバラツキが小さくなる。すなわち、成形体密度に対する寸法変化率の傾きtanθが小さいものほど成形体密度の違いに鈍感で、焼結後の寸法バラツキが小さい、寸法精度の良いものであるといえる。図2は表1の成形体密度と表2の寸法変化率の値をまとめたものであり、水平に近いものほど、成形体密度の影響に鈍感であることを示すグラフである。図2より、本発明例の原料粉末は、成形体密度に対する寸法変化率の傾きtanθが0.09であり、従来例の原料粉末のtanθ0.54に比して小さい値を示している。このことから、本発明例の原料粉末は成形体密度の変化に鈍感であり、製品各部で成形体密度が異なるような部品であっても各部が均一に寸法収縮する、寸法精度に優れたものであることがわかる。
表3より、本発明例の原料粉末を用いた焼結体は、従来例の原料粉末を用いた焼結体に比して引張り強さが高い値を示している。また、衝撃値は同等の値を示している。この結果より、本発明の原料粉末を用いた焼結体は、従来例の原料粉末を用いた焼結体と同等以上の優れた機械的性質を示すことが確認された。
[第2実施例]
表4に示す組成の鉄基合金粉末を用意し、銅粉末:1.0質量%と、焼結後のC量が0.5質量%となる量の黒鉛粉末とを添加、混合した原料粉末を用いて、成形圧力600MPaで底面が10mm×60mm、高さが10mmの角柱状成形体に成形し、窒素ガス雰囲気中、1195℃で焼結した後、10℃/分の冷却速度で冷却を行って焼結体試料(試料番号07〜14)を作製した。これらの角柱形状試料を用いて、第1実施例と同様にして、引張り強さ、衝撃値、気孔を除く基地部分に占めるベイナイトの割合について測定した。これらの結果を第1実施例の試料番号02の試料の測定結果とともに表4に示す。また、第1実施例の従来例の試料(試料番号05)の測定値についても表4に併せて示す。
Figure 0005114233
表4の試料番号02,07〜10を比較することで鉄基合金粉末中のCr量の影響を調べることができる。これらの試料より、鉄基合金粉末中のCr量が2質量%の試料番号07の試料ではベイナイト量が多すぎ、マルテンサイト量が乏しい結果、引張り強さが低い値となっている。一方、鉄基合金粉末粒のCr量が2.5〜3.5質量%の試料番号02,08,09の試料ではベイナイト量が20面積%を下回り、マルテンサイト量が80面積%を超える結果、引張り強さが従来例(試料番号05)を超える高い値を示している。しかしながら、鉄基合金粉末中のCr量が3.5質量%を超える試料番号10の試料では、粉末の圧縮性が低下する結果、成形体密度が低下して引張り強さおよび衝撃値が従来例(試料番号05)よりも低い値となっている。これらの結果より、鉄基合金粉末中のCr量が2.5〜3.5質量%の範囲で、高い引張り強さおよび衝撃値を得られることが確認された。
また、表4の試料番号02,11〜14を比較することで鉄基合金粉末中のMo量の影響を調べることができる。これらの試料より、鉄基合金粉末中のMo量が0.3質量%の試料番号11の試料ではベイナイト量が多すぎ、マルテンサイト量が乏しい結果、引張り強さが低い値となっている。一方、鉄基合金粉末中のMo量が0.4〜0.6質量%の試料番号02,12,13の試料ではベイナイト量が20面積%を下回り、マルテンサイト量が80面積%を超える結果、引張り強さが従来例(試料番号05)を超える高い値を示している。しかしながら、鉄基合金粉末中のMo量が0.6質量%を超える試料番号14の試料では、粉末の圧縮性が低下する結果、成形体密度が低下して引張り強さおよび衝撃値が従来例(試料番号05)よりも低い値となっている。これらの結果より、鉄基合金粉末中のMo量が0.4〜0.6質量%の範囲で、高い引張り強さおよび衝撃値を得られることが確認された。
[第3実施例]
第1実施例で用いた、組成がCr:3質量%、Mo:0.5質量%、および残部がFeおよび不可避不純物からなる鉄基合金粉末に、表5に示す銅粉末と、黒鉛粉末とを添加して混合した原料粉末を用いて、成形圧力600MPaで底面が10mm×60mm、高さが10mmの角柱状に成形した。得られた成形体について、窒素ガス雰囲気中、1195℃で焼結した後、10℃/分の冷却速度で冷却を行って焼結体試料(試料番号15〜22)を作製した。これらの角柱形状試料を用いて、第1実施例と同様にして、引張り強さ、衝撃値、気孔を除く基地部分に占めるベイナイトの割合について測定した。これらの結果を第1実施例の試料番号02の試料の測定結果とともに表5に示す。また、第1実施例の従来例の試料(試料番号05)の測定値についても表5に併せて示す。
Figure 0005114233
表5の試料番号02,15〜18の試料を比較することで原料粉末中の銅粉末添加量の影響を調べることができる。これらの試料より、銅粉末を添加しない試料番号15の試料では、焼き入れ性が低く、全面ベイナイトの金属組織となっており、この結果、引張り強さが低い値となっている。銅粉末を0.5〜1.5質量%添加した試料番号02,16,17の試料では、焼き入れ性が向上してベイナイト量が20面積%以下、すなわちマルテンサイト量が80面積%以上となり、引張り強さが向上している。一方、Cuはオーステナイト安定化元素であるため、銅粉末の添加量が1.5質量%を超える試料番号18の試料では、オーステナイトが安定して成長し、結晶粒が粗大化するため、焼結後の冷却においてオーステナイトがマルテンサイトに変態しても結晶粒が粗大なままとなる。このため、引張り強さおよび衝撃値が低下している。これらの結果より、原料粉末への銅粉末添加量が0.5〜1.5質量%の範囲で、高い引張り強さおよび衝撃値を得られることが確認された。
表5の試料番号02,19〜22の試料を比較することで焼結体中のC量の影響を調べることができる。これらの試料より、焼結体中のC量が0.4質量%に満たない試料番号19の試料では、焼き入れ性が低く、ベイナイト量が多くなり、マルテンサイト量が乏しい結果、引張り強さが低い値となっている。一方、焼結体中のC量が0.4〜0.6質量%の試料番号02,20,21の試料では、焼き入れ性が向上してベイナイト量が20面積%以下、すなわちマルテンサイト量が80面積%以上となり、引張り強さが向上している。しかしながら、焼結体中のC量が0.6質量%を超える試料番号22の試料では、C量が過多となって基地中にCr、Moの炭化物が析出し、Fe基地中に固溶するCrおよびMoの量が減少するため、引張り強さおよび衝撃値が低下している。これらの結果より、焼結体中のC量が0.4〜0.6質量%の範囲で、高い引張り強さおよび衝撃値を得られることが確認された。
以上の実施例において、高い引張り強さおよび衝撃値を示す本発明例は、全てベイナイト量が2〜20面積%以下であり、残余がマルテンサイトの金属組織のものである。このことから、金属組織としてはベイナイト量が2〜20面積%以下であり、残余がマルテンサイトとすることがよいことが確認された。
なお、以上の実施例は冷却速度が10℃/分の例であり、冷却速度をより速くすることにより全面マルテンサイトとなる場合もあるが、上記組成範囲であれば問題ない。
本発明の原料粉末と従来の原料粉末の圧縮性を示すグラフである。 本発明の原料粉末と従来の原料粉末による成形体の成形体密度に対する寸法変化率を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 質量比で、Cr:2.5〜3.5%、Mo:0.4〜0.6%、Cu:0.5〜1.5%、C:0.4〜0.6%、残部Feおよび不可避不純物からなる組成を有し、焼結後の金属組織として、気孔を除く基地がマルテンサイト相、もしくは断面面積率で2〜20%のベイナイト相と残部がマルテンサイト相の混合組織からなる焼入れ組織を呈することを特徴とする鉄基焼結合金。
  2. 一部の気孔の周辺にCuが濃化した成分分布を呈することを特徴とする請求項1に記載の鉄基焼結合金。
  3. 質量比で、Cr:2.5〜3.5%、Mo:0.4〜0.6%、残部Feおよび不可避不純物からなる組成の鉄基合金粉末に、銅粉末を0.5〜1.5%、黒鉛粉末を焼結後のC量が0.4〜0.6%になるように配合した混合粉末を金型内で圧縮成形し、得られた圧粉体を非酸化性雰囲気中、1180〜1230℃の範囲で焼結し、焼結炉中で5℃/分以上、20℃/分以下の速度で冷却して焼入れ組織を生成することを特徴とする鉄基焼結合金の製造方法。
  4. 焼結後に100℃以下まで冷却した後、150℃以上、300℃以下の温度に加熱し保持すること、または焼結炉内で冷却中に150℃以上300℃以下の温度で保持する工程を付加することを特徴とする請求項3に記載の鉄基焼結合金の製造方法。

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