JP2019131889A - 超硬合金製塑性加工用金型及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い耐摩耗性及び機械的強度を有するとともに、十分な圧縮降伏強度を有することにより、Coを結合相とする従来の超硬合金より、長い疲労寿命を有する超硬合金からなる塑性加工用金型を提供する。【解決手段】WC粒子55〜90質量部と、Feを主成分とする結合相10〜45質量部とを含有する超硬合金からなる塑性加工用金型であって、前記結合相が0.5〜10質量%のNi、0.2〜2質量%のC、0.5〜5質量%のCr、及び0.1〜5質量%のWを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、優れた耐摩耗性を有するとともに圧縮降伏強度が高い鉄系合金を結合相とする超硬合金製塑性加工用金型及びその製造方法に関する。
従来、金属材料の加工方法の一つとして、金属材料を金型の加工面に圧接させて塑性変形させることにより、特定形状に塑性加工する方法が知られている。このような塑性加工で用いられる金型の形状は、例えば塑性加工後の金属成形品の形態(例えば、線材、管材、圧造品など)によって異なり、また、金属材料を金型の加工面に圧接させる方法(例えば、引抜き、押出し、絞り加工、圧造など)によっても異なるが、如何なる形状の金型であっても、金型の加工面にはきわめて大きな圧力や摩擦力が作用するのが通常である。
そのため、従来は、金型の構造を、加工面を有する超硬合金製チップ部、及びそのチップ部が嵌め込まれる金属製ケース部からなる構造とし、チップ部をケース部に圧入することによって、加工面の強度を確保するようにした構造の金型が用いられていた。
例えば、特開平10-263679号(特許文献1)には、クロムモリブデン鋼製のケース部3と、ケース部3に嵌め込まれた超硬合金製のチップ部5とを備え、チップ部5には、加工面としてリダクション部5aとベアリング部5bが形成されたダイスが開示されている。特許文献1には、この発明は、例えば、線材加工用の線引きダイス、管材加工用の管引きダイス、板材等に対する絞り加工用の絞りダイス、棒材等に対するヘッダー加工用のヘッダーダイスなど、様々なタイプのダイスに適用できると記載されている。
素形材 VOL.53 (2012) No.7「超硬工具の疲労破壊寿命の予測」(非特許文献1)には、冷間鍛造用金型に使用されているWC-22mass% Co超硬合金の疲労寿命を予測した結果が示されている。すなわち、非特許文献1には、WC-22mass% Co超硬合金からなるインサートをSKD61からなるケースに圧入して作製した冷間ヘッダーダイスを用いて、20℃の鍛造温度で鍛造材料SUJ2の鍛造加工を繰り返して行った結果、疲労によるクラックがカップ状インサートの内径下部に6万回で発生すると記載されている。しかしながら、生産性向上の観点から更なる寿命の改善が求められている。
一方で、WC粒子をCo-Ni-Crを主成分とする結合相で焼結した超硬合金は、高い硬度及び機械的強度を有するとともに、優れた耐摩耗性を有するので、切削工具や圧延ロール等に広く使用されている。
例えば、特開平5-171339号(特許文献2)は、WC+Crが95重量%以下、Co+Niが10重量%未満、Cr/Co+Ni+Crが2〜40%であるWC-Co-Ni-Crからなる超硬合金を開示している。特開平5-171339号は、このような組成の超硬合金とすることにより、従来組成の合金より高い耐摩耗性及び靭性を有する超硬合金となると記載している。しかし、Co-Ni-Cr系結合相を有する超硬合金の圧縮時の降伏強度が300〜500 MPaと低いために、冷間鍛造用金型としては十分な疲労寿命が得られないと予想される。
特開2000-219931号(特許文献3)は、焼き入れ性のある結合相中に50〜90質量%のサブミクロンWCを含有させた超硬合金であって、前記結合相が、Feに加えて、10〜60質量%のCo、10質量%未満のNi、0.2〜0.8質量%のC、及びCr及びW及び任意のMo及び/又はVからなり、前記結合相中のC、Cr、W、Mo及びVのモル分率XC、XCr、XW、XMo及びXVが2XC<XW+XCr+XMo+XV<2.5XCの条件を満し、かつCr含有量(質量%)が0.03<Cr/[100−WC(質量%)]<0.05を満たす超硬合金を開示している。特開2000-219931号は、焼き入れ性を有する結合相により、この超硬合金は高い耐摩耗性を有すると記載している。しかし、この超硬合金は、結合相に10〜60質量%のCoを含有するために、焼入れ性が低下しており、十分な圧縮降伏強度を有さず、冷間鍛造用金型としては十分な疲労寿命が得られないと予想される。
特開2001-81526号(特許文献4)は、50〜97重量%のWCと、残部がFeを主成分とする結合相とからなり、前記結合相中に0.35〜3.0重量%のCと、3.0〜30.0重量%のMnと、3.0〜25.0重量%のCrとを含有する鉄基超硬合金を開示している。特開2001-81526号は、Feのマルテンサイト相変態を利用することによって硬度及び強度を向上させ、耐摩耗性及び耐食性に優れた鉄基超硬合金が得られると記載している。この鉄基超硬合金では、Feを主成分とする結合相中のMnの一部または全てはNiで置換しても良く、実施例のNo. 14及び16は4質量%のNiを含有する。しかし、Niを含有するNo. 14及び16の結合相は、オーステナイトの安定化に寄与するMnをそれぞれ8質量%及び10質量%も含有するので、得られる鉄基超硬合金は残留オーステナイト量が過多となり、十分な圧縮降伏強度を有さない。
特開平10-53832号(特許文献5)は、50〜70重量%のWCと、50〜30重量%のFe-C系結合相とからなり、結合相におけるCの含有量が0.8重量%超で2.0重量%未満である超硬合金を開示している。しかし、この超硬合金はNiを含有しないので、十分な焼入れ性を有さない。
特開2005-76115号(特許文献6)は、鉄を主成分とする金属結合相:1〜30重量%と、残りが周期律表4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化物及びこれらの相互固溶体の少なくとも一種からなる硬質相とで構成されており、上記金属結合相における銅の含有量が1〜20重量%である鉄含有超硬合金を開示している。金属結合相は、鉄及び銅以外にタングステン、クロム、モリブデン、マンガン、ニッケル及びコバルトのうちの少なくとも一種を、金属結合相全体に対して20重量%以下の割合で含有してもよい。金属結合相は、具体的にはFe-Cu合金、Fe-Cu-Cr合金、Fe-Cu-Mn合金、Fe-Cu-Cr-Ni-Cr-Mo合金等からなる。しかし、この鉄含有超硬合金は、金属結合相に1〜20重量%の銅を含有するので、十分な圧縮降伏強度を有さない。
特開昭58-110655号(特許文献7)は、超耐熱性炭化タングステン粒子及び金属母体結合剤からなる超硬合金組成物において、前記母体結合剤が前記組成物の3〜20質量%を占め、かつ約5〜50質量%のニッケル、有害な炭素欠乏相又は過剰相の生成を防止するのに十分な2質量%までの量の炭素、及び残部99〜50質量%の鉄を含有する合金からなる超硬合金組成物を開示している。実施例では、ニッケルの含有量は20〜50重量%である。しかし、20〜50重量%のニッケルを含有すると、オーステナイト相が安定化して焼入れ性が低下するので、十分な圧縮降伏強度を有さない。
以上の事情に鑑み、十分な圧縮降伏強度を有するために、冷間鍛造用金型として使用した場合に十分な疲労寿命が得られる超硬合金が望まれている。
特開平10-263679号公報 特開平5-171339号公報 特開2000-219931号公報 特開2001-81526号公報 特開平10-53832号公報 特開2005-76115号公報 特開昭58-110655号公報
素形材 VOL.53 (2012) No.7「超硬工具の疲労破壊寿命の予測」
従って、本発明の目的は、高い耐摩耗性及び機械的強度を有するとともに、十分な圧縮降伏強度を有することにより、Coを結合相とする従来の超硬合金より、長い疲労寿命を有する超硬合金からなる塑性加工用金型及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記従来技術の課題に鑑み、Feを主成分とする結合相を有する超硬合金の結合相の組成、組織について鋭意検討した結果、本発明に想到した。
すなわち、本発明の超硬合金製塑性加工用金型は、WC粒子55〜90質量部と、Feを主成分とする結合相10〜45質量部とを含有する超硬合金からなり、
前記結合相が
0.5〜10質量%のNi、
0.2〜2質量%のC、
0.5〜5質量%のCr、及び
0.1〜5質量%のWを含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする。
前記結合相は、さらに0.2〜2.0質量%のSi、0〜5質量%のCo、及び0〜1質量%のMnを含有することができる。
前記超硬合金は5μm以上の円相当径を有する複炭化物を実質的に含有しないのが好ましい。
前記WC粒子のメディアン径D50は0.5〜10μmであるのが好ましい。
前記結合相におけるベイナイト相及び/又はマルテンサイト相の含有量は合計で50面積%以上であるのが好ましい。
前記超硬合金は1200 MPa以上の圧縮降伏強度を有するのが好ましい。
超硬合金製塑性加工用金型を製造する本発明の方法は、0.5〜10μmのメディアン径D50を有するWC粉末と、0.5〜10質量%のNi、0.2〜2質量%のC、0.5〜5質量%のCr、及び0.1〜5質量%のWを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、1〜10μmのメディアン径D50を有する結合相用粉末とを混合して成形用粉末を得る混合工程と、
前記成形用粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体を焼結して、55〜90質量部のWC粒子と10〜45質量部の結合相とからなる超硬合金を得る焼結工程と、
前記超硬合金を加工して金型を得る加工工程と
を備えることを特徴とする。
本発明の超硬合金製塑性加工用金型は高い圧縮降伏強度及び耐摩耗性を有するので、Coを結合相とする従来の超硬合金を用いた金型よりも疲労寿命が向上しており、冷間鍛造用として好適である。
試料2の超硬合金の断面組織を示すSEM写真である。 試料2及び試料8について、一軸圧縮試験により得られた応力−歪曲線を示すグラフである。 一軸圧縮試験に使用する試験片を示す模式図である。 示差熱分析装置による液相化開始温度の測定例を示すグラフである。
本発明の実施形態を以下詳細に説明するが、特に断りがなければ一つの実施形態に関する説明は他の実施形態にも適用される。また下記説明は限定的ではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更を施しても良い。
[1] 超硬合金
(A) 組成
本発明の超硬合金製塑性加工用金型に使用する超硬合金は、55〜90質量部のWC粒子と10〜45質量部のFeを主成分とする結合相とからなる。
(1) WC粒子
前記超硬合金におけるWC粒子の含有量は55〜90質量部である。WC粒子が55質量部未満であると硬質なWC粒子が相対的に少なくなるため、超硬合金のヤング率が低くなりすぎる。一方、WC粒子が90質量部を超えると、結合相が相対的に少なくなるため、超硬合金の強度が確保できなくなる。WC粒子の含有量の下限は60質量部が好ましく、65質量部がより好ましい。またWC粒子の含有量の上限は85質量部が好ましい。
WC粒子は0.5〜10μmのメディアン径D50(累積体積の50%の粒径に相当)を有するのが好ましい。平均粒子径が0.5μm未満の場合、WC粒子と結合相間の境界が増えるため、後述する複炭化物が発生しやすくなり、超硬合金の強度が低下する。一方、平均粒子径が10μmを超えると、超硬合金の強度が低下する。WC粒子のメディアン径D50の下限は2μmが好ましく、3μmがより好ましく、4μmが最も好ましい。またWC粒子のメディアン径D50の上限は9μmが好ましく、8μmがより好ましく、7μmが最も好ましい。
超硬合金中ではWC粒子が連結するように密集しているため、WC粒子の粒径を顕微鏡写真上で求めるのは困難である。本発明の超硬合金製塑性加工用金型に使用する超硬合金の場合は、後述するように、成形体を(液相化開始温度)乃至(液相化開始温度+100℃)の温度で真空中で焼結するため、成形用のWC粉末の粒径と超硬合金中のWC粒子の粒径とはほとんど差がない。従って、超硬合金中に分散するWC粒子の粒径を成形用WC粉末の粒径で表す。
WC粒子は比較的均一な粒径を有するのが好ましい。そのため、WC粒子の好ましい粒径分布は、レーザ回折散乱法で求めた累積粒径分布曲線において、以下のような範囲である。すなわち、D10(10%の累積体積における粒径)の下限は0.3μmであるのが好ましく、1μmであるのがより好ましい。D10の上限は3μmであるのが好ましい。またD90(90%の累積体積における粒径)の下限は5μmであるのが好ましく、6μmであるのがより好ましい。D90の上限は12μmであるのが好ましく、8μmであるのがより好ましい。メディアン径D50は前述したとおりである。
(2) 結合相
本発明の超硬合金製塑性加工用金型に使用する超硬合金において、Feを主成分とする結合相は、
0.5〜10質量%のNi、
0.2〜2質量%のC、
0.5〜5質量%のCr、及び
0.1〜5質量%のWを含有し、
残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する。
(i) 必須元素
(a) Ni:0.5〜10質量%
Niは結合相の焼き入れ性を確保するのに必要な元素である。Niが0.5質量%未満であると、結合相の焼き入れ性が不十分であり、得られる超硬合金は十分な圧縮降伏強度を有さない。一方、Niが10質量%を超えると、結合相がオーステナイト化して焼き入れ性が低下し、やはり得られる超硬合金は十分な圧縮降伏強度を有さない。Niの含有量の下限は2.5質量%が好ましく、4質量%がより好ましい。またNiの含有量の上限は8質量%が好ましく、7質量%がより好ましい。
(b) C:0.2〜2質量%
Cは結合相の焼き入れ性を確保するとともに、粗大な複炭化物の発生を防ぐのに必要な元素である。Cが0.2質量%未満では、結合相の焼き入れ性が低すぎる。一方、Cが2質量%を超えると、粗大な複炭化物が生成され、超硬合金の強度が低下する。Cの含有量の下限は0.3質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。また、Cの含有量の上限は1.5質量%が好ましく、1.0質量%がより好ましい。
(c) Cr:0.5〜5質量%
Crは結合相の焼き入れ性を確保するのに必要な元素である。Crが0.5質量%未満であると、結合相の焼き入れ性が低くすぎ、十分な圧縮降伏強度を確保できない。一方、Crが5質量%を超えると粗大な複炭化物が発生して、超硬合金の強度が低下する。Crは4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
(d) W:0.1〜5質量%
結合相中のWの含有量は、0.1〜5質量%である。結合相中のWの含有量が5質量%を超えると、粗大な複炭化物が発生し、超硬合金の強度が低下する。Wの含有量の下限は0.8質量%が好ましく、1.2質量%がより好ましい。また、Wの含有量の上限は、4質量%が好ましい。
(ii) 任意元素
(a) Si:0.2〜2.0質量%
Siは結合相を強化するとともに黒鉛化を促進する元素であり、必要に応じ含有しうる。Siが0.2質量%未満であると、結合相を強化する効果がほとんど得られない。一方、Siが2.0質量%超になると、黒鉛が晶出しやすく超硬合金の強度が低下する。そのため、Siを含有させる場合、0.2質量%以上2.0質量%以下であるのが好ましい。さらに結合相の強化効果は、Siの含有量が0.3質量%以上、さらには0.5質量%以上である場合により発揮される。また、Siの含有量の上限は1.9質量%が好ましい。
(b) Co:0〜5質量%
Coは焼結性を向上させる作用を有するが、本発明の超硬合金製塑性加工用金型に使用する超硬合金では必須ではない。すなわち、Coの含有量は実質的に0質量%であるのが好ましい。しかし、Coの含有量が5質量%以下であれば、超硬合金の組織及び強度に影響を与えない。Coの含有量の上限は2質量%であるのがより好ましく、1質量%であるのが最も好ましい。
(c) Mn:0〜1質量%
Mnは焼入れ性を向上させる作用を有するが、本発明の超硬合金製塑性加工用金型に使用する超硬合金では必須ではない。すなわち、Mnの含有量は実質的に0質量%であるのが好ましい。しかし、Mnの含有量が1質量%以下であれば、超硬合金の組織及び強度に影響を与えない。Mnの含有量の上限は0.5質量%がより好ましく、0.3質量%が最も好ましい。
(iii) 不可避的不純物
不可避的不純物としては、Mo、V、Nb、Ti、Al、Cu、N、O等が挙げられる。これらのうち、Mo、V及びNbからなる群から選ばれた少なくとも一種の含有量は合計で2質量%以下であるのが好ましい。Mo、V及びNbからなる群から選ばれた少なくとも一種の含有量は、合計で1質量%以下であるのがより好ましく、0.5質量%以下であるのが最も好ましい。また、Ti、Al、Cu、N及びOからなる群から選ばれた少なくとも一種の含有量は単独で0.5質量%以下であり、合計で1質量%以下であるのが好ましい。特に、N及びOはそれぞれ1000 ppm未満であるのが好ましい。不可避的不純物の含有量が上記範囲内であれば、超硬合金の組織及び強度は実質的に影響されない。
(B) 組織
(1) 複炭化物
本発明の超硬合金製塑性加工用金型に使用する超硬合金の組織は、5μm以上の円相当径を有する複炭化物を実質的に含有しないのが好ましい。複炭化物とはWと金属元素との複炭化物であり、例えば、(W, Fe, Cr)23C6、(W, Fe, Cr)3C、(W, Fe, Cr)2C、(W, Fe, Cr)7C3、(W, Fe, Cr)6C等である。ここで、複炭化物の円相当径とは、超硬合金の研磨断面を示す顕微鏡写真(1000倍程度)において、複炭化物粒子の面積と同じ面積を持つ円の直径のことである。結合相中に5μm以上の円相当径を有する複炭化物が存在しない超硬合金は1700 MPa以上の抗折強度を有する。ここで、「複炭化物を実質的に含有しない」とは、SEM写真(1000倍)上で5μm以上の円相当径を有する複炭化物が観測されないことを意味する。円相当径が5μm未満の複炭化物については、超硬合金にEPMA分析で5面積%未満程度存在しても構わない。
(2) ベイナイト相及び/又はマルテンサイト相
前記超硬合金の結合相は、ベイナイト相及び/又はマルテンサイト相を合計で50面積%以上含有する組織を有するのが好ましい。なお、「ベイナイト相及び/又はマルテンサイト相」とするのは、ベイナイト相及びマルテンサイト相が実質的に同じ作用を有し、かつ顕微鏡写真上で両者を区別するのが困難であるからである。このような組織により、超硬合金は高い圧縮降伏強度及び強度を有する。
結合相におけるベイナイト相及び/又はマルテンサイト相の含有量が合計で50面積%以上であるために、超硬合金は1200 MPa以上の圧縮降伏強度を有する。ベイナイト相及び/又はマルテンサイト相は合計で70面積%以上が好ましく、80面積%以上がより好ましく、実質的に100面積%であるのが最も好ましい。ベイナイト相及びマルテンサイト相以外の組織はパーライト相、オーステナイト相等である。
(3) WC粒子中へのFeの拡散
EPMA分析の結果、焼結した超硬合金ではWC粒子中にFeが0.3〜0.7質量%存在していることが分った。
(C) 特性
上記組成及び組織を有する超硬合金は、1200 MPa以上の圧縮降伏強度、及び1700 MPa以上の抗折強度を有するので、本発明の超硬合金製塑性加工用金型を用いて冷間鍛造を行った場合に、Coを結合相とする従来の超硬合金を用いた金型よりも疲労寿命を向上させることができる。勿論、本発明の超硬合金製塑性加工用金型は熱間鍛造にも使用できる。
圧縮降伏強度は、図3に示す試験片を用いて軸方向に荷重を加える一軸圧縮試験における降伏応力を言う。すなわち、図2に示すように、一軸圧縮試験の応力−歪曲線において、応力と歪が直線関係から外れる点の応力を圧縮降伏強度と定義する。
前記超硬合金の圧縮降伏強度は1500 MPa以上がより好ましく、1600 MPa以上が最も好ましい。また、抗折強度は2000 MPa以上がより好ましく、2300 MPa以上が最も好ましい。
前記超硬合金はさらに385 GPa以上のヤング率、及び80 HRA以上のロックウェル硬度を有する。ヤング率は400 GPa以上が好ましく、450 GPa以上がより好ましい。また、ロックウェル硬度は82 HRA以上が好ましい。
[2] 超硬合金製塑性加工用金型の製造方法
(A)混合工程
WC粉末55〜90質量部と、0.5〜10質量%のNi、0.3〜2.2質量%のC、0.5〜5質量%のCr、0.2〜2.0質量%のSi、0〜5質量%のCo、及び0〜2質量%のMnを含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる金属粉末10〜45質量部とをボールミル等で湿式混合し、成形用粉末を調製する。焼結中にWC粉末中のWが結合相に拡散するので、金属粉末にWを含ませなくてもよい。WC粉末の含有量は60〜90質量部であるのが好ましく、65〜90質量部であるのがより好ましい。WC粉末のメディアン径D50は0.5〜10μmであるのが好ましい。なお、WC粉末の含有量の上限は85質量部であるのが好ましい。また、複炭化物の生成を防止するために、金属粉末中のC含有量は0.3〜2.2質量%である必要があり、好ましくは0.5〜1.7質量%であり、更に好ましくは0.5〜1.5質量%である。
結合相を形成するための金属粉末は、各構成元素の粉末の混合物でも、全ての構成元素を合金化した粉末でも良い。炭素はグラファイト、カーボンブラック等の粉末状で添加しても、各金属又は合金の粉末に含有させても良い。CrはSiとの合金(例えば、CrSi2)の状態で添加しても良い。各金属又は合金の粉末のメディアン径D50については、例えば、Fe粉末、Ni粉末、Co粉末、Mn粉末及びCrSi2粉末のいずれも1〜10μmであるのが好ましい。
(B) 成形工程
成形用粉末を乾燥した後、金型成形、冷間静水圧成形(CIP)等の方法で成形し、所望の形状の成形体を得る。
(C) 焼結工程
(1)焼結
得られた成形体を、(液相化開始温度)乃至(液相化開始温度+100℃)の温度で真空中で焼結する。成形体の液相化開始温度は、焼結の昇温過程で液相化が開始する温度であり、示差熱分析装置を用いて測定する。図4に測定結果の一例を示す。成形体の液相化開始温度は、図4に矢印で示すように、吸熱反応が開始する温度である。液相化開始温度+100℃を超える温度で焼結すると、粗大な複炭化物が生成して、得られる超硬合金の強度は低下する。また液相化開始温度未満の温度で焼結すると、緻密化が不十分であり、得られる超硬合金の強度は低い。焼結温度の下限は液相化開始温度+10℃が好ましく、焼結温度の上限は液相化開始温度+90℃が好ましく、液相化開始温度+80℃がより好ましい。得られた焼結体に対して、さらにHIP処理するのが好ましい。
(2) 冷却
得られた焼結体を、900℃〜600℃の間で60℃/時間以上の平均速度で冷却する。60℃/時間未満の平均速度で冷却すると超硬合金の結合相中のパーライト相の割合が多くなるため、ベイナイト相及び/又はマルテンサイト相を合計で50面積%以上とすることができず、超硬合金の圧縮降伏強度が低下する。60℃/時間以上の平均速度での冷却は、焼結炉中で行っても良いし、焼結炉で冷却した後、再度900℃以上に加熱して60℃/時間以上の平均速度で行っても良い。また、HIPを行う場合、HIP炉中の冷却過程で行っても良い。
(D) 加工工程
得られた超硬合金を公知の手段で所望の金型形状に加工することによって超硬合金製塑性加工用金型を得ることができる。
[3] 超硬合金製塑性加工用金型
本発明の超硬合金製塑性加工用金型は、加工面に圧接する金属材料を塑性変形させて所定形状に成形加工するためのものであり、前述の超硬合金からなる。本発明の超硬合金製塑性加工用金型は、加工面に圧接する金属材料を塑性変形させて所定形状に成形加工するものであればよく、例えば、線材加工用の線引きダイス、管材加工用の管引きダイス、板材等に対する絞り加工用の絞りダイス、棒材等に対するヘッダー加工用のヘッダーダイスなど、様々なタイプのダイスに適用できる。
本発明の超硬合金製塑性加工用金型は、加工面に耐摩耗性、耐食性等を向上させるためにCr-N系被膜等の被膜を形成しても良い。これらの被膜は、例えばPVD法によって形成することができる。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1
WC粉末(純度:99.9%、メディアン径D50:6.4μm、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製SALD-2200)で測定したD10:4.3μm,D50:6.4μm,D90:9.0μm)と、表1の組成となるように配合した結合相用粉末とを表2に示す割合で混合し、成形用粉末(試料1〜10)を調整した。なお結合相用粉末はいずれも1〜10μmのメディアン径D50を有し、微量の不可避的不純物を含んでいた。
得られた成形用粉末をボールミルを用いて20時間湿式混合し、乾燥した後、98 MPaの圧力でプレス成形して、直径100 mm×高さ50 mmの円筒状成形体(試料1〜10)を得た。各成形体から1 mm×1 mm×2 mmの試料を切出し、示差熱分析装置を用いて液相化開始温度を測定した。結果を表3に示す。
注:* 比較例。
(1) 残部は不可避的不純物を含む。
注:* 比較例。
注:* 比較例。
各成形体を表4に示す条件で真空焼結後、表4に示す条件及び140 MPaの圧力でHIP処理し、試料1〜6(本発明の超硬合金製塑性加工用金型に使用する超硬合金)及び試料7〜10(比較例)の超硬合金を作製した。各超硬合金を以下の方法により評価した。
注:* 比較例。
(1) 900℃〜600℃間の平均冷却速度。
(1) 圧縮降伏強度
各超硬合金から切り出した図3に示す各圧縮試験用試験片の中央部表面に歪ゲージを貼り付け、軸方向に荷重を加えて、応力−歪曲線を作成した。応力−歪曲線において、応力と歪が直線関係から外れたときの応力を圧縮降伏強度とした。結果を表5に示す。
(2) 抗折強度
各超硬合金から切り出した4 mm×3 mm×40 mmの試験片に対して、支点間距離30 mmの4点曲げの条件で抗折強度を測定した。結果を表5に示す。
(3) ヤング率
各超硬合金から切り出した幅10 mm×長さ60 mm×厚さ1.5 mmの試験片に対して、自由共振式固有振動法(JIS Z2280)で測定した。結果を表5に示す。
(4) 硬さ
各超硬合金に対して、ロックウェル硬度(Aスケール)を測定した。結果を表5に示す。
(5) 破壊靱性 KIc
試料No.1、2、7、8及び10について、試験片を切り出し、ASTM E399に準拠した試験により破壊靱性値KIc (MPa・m1/2)を測定した。
注:* 比較例。
(5) 組織の観察
各試料を鏡面研磨した後、SEM観察を行い、複炭化物の存在、結合相中のベイナイト相及びマルテンサイト相の合計面積率を求めた。結果を表6に示す。図1は、試料2の超硬合金のSEM写真である。白い粒状部はWC粒子であり、灰色の部分は結合相である。
注:* 比較例。
(1) 結合相におけるベイナイト相及びマルテンサイト相の合計面積率(%)。
(2) 結合相における直径が5μm以上の複炭化物の存否。
(6) 結合相の組成
各試料の結合相の組成を電界放出型電子線マイクロアナライザー(FE-EPMA)で測定した。ビーム径1μmの点分析により、WC粒子以外の部分に対して任意の10箇所の点で測定を行い、得られた測定値を平均することにより、結合相の組成を求めた。ただし直径が5μm以上の複炭化物が存在する場合、WC粒子及び複炭化物以外の部分を測定した。結果を表7に示す。
注:* 比較例。
(1) 分析値。
(2) 残部は不可避的不純物を含む。

Claims (7)

  1. WC粒子55〜90質量部と、Feを主成分とする結合相10〜45質量部とを含有する超硬合金からなる塑性加工用金型であって、
    前記結合相が
    0.5〜10質量%のNi、
    0.2〜2質量%のC、
    0.5〜5質量%のCr、及び
    0.1〜5質量%のWを含有し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする超硬合金製塑性加工用金型。
  2. 請求項1に記載の超硬合金製塑性加工用金型において、前記結合相がさらに0.2〜2.0質量%のSi、0〜5質量%のCo、及び0〜1質量%のMnを含有することを特徴とする超硬合金製塑性加工用金型。
  3. 請求項1又は2に記載の超硬合金製塑性加工用金型において、前記超硬合金が5μm以上の円相当径を有する複炭化物を実質的に含有しないことを特徴とする超硬合金製塑性加工用金型。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の超硬合金製塑性加工用金型において、前記WC粒子のメディアン径D50が0.5〜10μmであることを特徴とする超硬合金製塑性加工用金型。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の超硬合金製塑性加工用金型において、前記結合相におけるベイナイト相及び/又はマルテンサイト相の含有量が合計で50面積%以上であることを特徴とする超硬合金製塑性加工用金型。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の超硬合金製塑性加工用金型において、前記超硬合金が1200 MPa以上の圧縮降伏強度を有することを特徴とする超硬合金製塑性加工用金型。
  7. 0.5〜10μmのメディアン径D50を有するWC粉末と、0.5〜10質量%のNi、0.2〜2質量%のC、0.5〜5質量%のCr、及び0.1〜5質量%のWを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、1〜10μmのメディアン径D50を有する結合相用粉末とを混合して成形用粉末を得る混合工程と、
    前記成形用粉末を成形して成形体を得る成形工程と、
    前記成形体を焼結して、55〜90質量部のWC粒子と10〜45質量部の結合相とからなる超硬合金を得る焼結工程と、
    前記超硬合金を加工して金型を得る加工工程と
    を備えることを特徴とする超硬合金製塑性加工用金型の製造方法。
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