JP2013170315A - 強靱超硬合金及び被覆超硬合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 強靭超硬合金は、炭化タングステン(WC),コバルト(Co)及びクロム(Cr)を含有し、WCの平均粒度が1.5〜20.0μm、ビッカース硬度が650〜1650Hvであり、Coが4〜30質量%含有し、CrがCo含有量の2〜18質量%含有し、残部がWC及び不可避不純物よりなり、Cu‐Kα線を用いたCo相のfccの(111)面のX線回折像(2θ=44.3度)とhcpの(002)面のX線回折像(2θ=44.9度)が重なりあったX線回折像の半価巾が0.42度以下であり、Co相のfccの格子定数が3.560Å以上となっている。
【選択図】 図1
Description
しかし、そのような性能向上をさせるには冷却速度が1000℃/分以上の急冷が必要であると述べている。このような急冷は小さい製品や試験片或いはCo含有量が多く硬度が低い合金には適用可能であるが、一般に実用されている硬度が高い合金製品に適用しようとすると亀裂が発生するか、亀裂の発生が回避できたとしても内部応力の残留等によって信頼性が低下する危険がある。また、本願が対象としているクロム(Cr)は含有されておらず、当然ながら、Crを添加しCrを含有させた場合の超硬合金に対する影響やその効果については言及していない。
そして、従来の技術的な見解では、クロム(Cr)或いは炭化クロム(通常はCr3C2)を添加することで、WCの粒成長抑制や耐食性の向上、特殊切断刃における耐摩耗性の向上が見込まれているが(特許文献1,2)、微量の添加では抗折力(TRS)がほとんど変わらないが、添加量を増加させると抗折力(TRS)が低下するとされている(非特許文献1)。
本発明に係る脱β層が形成された超硬合金を母材とした被覆超硬合金を切削工具に使用すると前記刃先ダレを改善出来ることが判明した。ここで、脱β層とは、β相がない層のことであり、Co含有量がやや多くなり硬度がやや低くなるが強度や靭性に優れている層である。被覆材はセラミックであり硬くて脆いことから、この脱β層で被覆材の脆さを補い、切削工具の靭性を向上させる。その反面、高硬度鋼の切削においては、この脱β層が柔らかいが故に刃先ダレが生じ易く、特に高温時に刃先ダレが生じ易い。本発明によれば、この脱β層のCo中に,Crが固溶し高温での強度を向上させており、前記刃先ダレが改善される。この脱β層の効果が有効な範囲として本発明では脱β層の厚みを1〜30μmとしている。
図1に示すCo相のX線回折像において、本発明の強靭超硬合金では、図1(a)と図1(c)に示すようにfchp回折像の半価巾が小さくなっており、fcc/hcp比が大きくなっていることが分かる。その一方で、従来例の超硬合金では、図1(b)と図1(d)に示すようにfchp回折像の半価巾が大きくなっており、fcc/hcp比が小さくなっていることが分かる。ここで、本明細書では、上記の測定法でfchp回折像の半価巾が0.42度以下のものを本発明における高性能強靭超硬合金としている。図1(a)と図1(b)に示す合金ではCoを20質量%含有しており、図1(c)と図1(d)に示す合金ではCoを9質量%含有している。
特に脱β層が形成された母材を用いた被覆超硬合金では脱β層の欠点である切削時の刃先ダレの防止に貢献することとなる。また、その他、鉱山工具等WC粒が大きいか、Co含有量が比較的多い超硬合金において、欠損の低減や耐摩耗性の向上が期待でき工具の長寿命化が実現する。
冷間或いは熱間鍛造加工金型や工具等の耐摩耗用工具、或いは鉱山工具用途としては、その平均粒度が1.5〜20.0μmのWC粉が使用され、Co粉末が7〜25質量%配合される。CrはCoに対する重量比で2〜18%配合する。Crの添加は、Cr3C2粉末を使用するのが良い。Cr粉末も使用出来る。ただし、Cr粉末はその表面が酸化しておりCo%が小さい超硬合金ではその炭素調整が難しくなることがあるので注意する必要がある。高価であるがCrNを使用することも出来る。
fchp半価巾を0.42度以下に制御する方法の一つとしては、1200℃以上1500℃以下に加熱された加熱温度から、50℃以上200℃以下の冷却温度までの冷却速度が10℃/分以上であることが望ましい。ここで、上記加熱温度には、焼結温度としての1280℃以上1500℃以下の温度が含まれる。fchp半価巾を制御する方法は上記以外にもあると考えられるが未検討である。
その一方で、超硬合金をその温度が1200℃以上1500℃以下の範囲から50℃以上200℃以下の範囲まで連続して急速冷却しても、上記2段階冷却法と相当の半価巾と格子定数が得られる。しかし上記2段階冷却のほうが、製品に対する残留応力が軽減されること等を考えるとより汎用性に富んでいるといえる。そして、格子定数を3.560Å以上にする方法としては、上記以外にもWC等の炭化物の結合炭素を不足させる方法もある。しかし、炭化物の結合炭素を不足させる方法では、格子定数を3.560Å以上にすることが安定して実現できず、現状の技術では困難であると考えられる。なお、X線回折像を測定する際は、研削面から10−30μmの深さに残留する研削影響層を除去する必要がある。このため、超硬合金における研削面の表面からその深さ方向に50μm以上の研磨を行い鏡面に仕上げることが望ましい。
平均粒度が1.5〜7.0μmのWC粉が使用され、Co粉末が4〜15質量%配合される。CrはCoに対する重量比で2〜18%配合する。Crの添加は、Cr3C2粉末を使用するのが良い。そして、用途に応じて、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)の炭化物、炭窒化物、或いはタングステン(W)を含むこれら遷移金属の複炭化物、或いは複炭窒化物のいずれか1種以上を配合する。秤量、湿式混合、プレス、焼結及びfchp像の半価巾を0.42度以下に制御する方法や、格子定数を3.560Å以上に制御する方法は、実施形態1と同様である。この組成は主として切削工具用超硬合金に用いられる。焼結後そのまま切削工具として使用できるものも多いがさらに研削して高精度の工具に仕上げることもある。
脱β層が形成された被覆超硬合金の母材を製造する場合は、実施形態2の配合粉に微量の窒化物或いは炭窒化物を加える。秤量、湿式混合、プレス、焼結及びfchp像の半価巾を0.42度以下に制御する方法や、格子定数を3.560Å以上に制御する方法は、上述の実施形態1と同様である。この添加した窒素の作用で真空焼結時に脱β層を発現させることが出来る。本発明に係る被覆超硬合金を製作するための被覆法としては既知のCVD法が適用され、その被覆条件は通常どおりである。
冷間鍛造金型の実施例を以下に述べる。
切削工具の実施例を以下に述べる。
切削条件としては、被削材がSCM3、切削速度v=100 mm/分、切り込み深さd=2mm、送り速度f=0.4mm/rev、切削時間が30分である。
その結果、発明品C1からなるチップの磨耗度合いは、比較品C2からなるチップの磨耗度合いや、従来品Dからなるチップの磨耗度合いと比較して、約2/3となり、発明品C1の耐摩耗性が優れていることが判った。
脱β層が形成された母材を用いた被覆超硬合金の切削工具の実施例を以下に述べる。
切削条件としては、被覆超硬合金の形状がSNM432、被切削材がSNCM439、切削速度v=140mm/分、切り込み深さd=2mm、送り速度f=0.7mm/rev、切削時間が40分である。その結果を次の表6に示す。
上述した本発明の強靱超硬合金と従来の超硬合金とで、Co含有量と、ビッカース硬度、抗折力、圧縮強度、破壊靭性、並びにfchp回折像半価巾との関係を比較測定した。その結果を次の表7に示す。ここでは、その平均粒度が3μmのWCを使用した。
ボルト・ナット用冷間鍛造金型の実施例を以下に述べる。
しかし、そのような性能向上をさせるには冷却速度が1000℃/分以上の急冷が必要であると述べている。このような急冷は小さい製品や試験片或いはCo含有量が多く硬度が低い合金には適用可能であるが、一般に実用されている硬度が高い合金製品に適用しようとすると亀裂が発生するか、亀裂の発生が回避できたとしても内部応力の残留等によって信頼性が低下する危険がある。また、本願が対象としているクロム(Cr)は含有されておらず、当然ながら、Crを添加しCrを含有させた場合の超硬合金に対する影響やその効果については言及していない。
そして、従来の技術的な見解では、クロム(Cr)或いは炭化クロム(通常はCr3C2)を添加することで、WCの粒成長抑制や耐食性の向上、特殊切断刃における耐摩耗性の向上が見込まれているが(特許文献1,2)、微量の添加では抗折力(TRS)がほとんど変わらないが、添加量を増加させると抗折力(TRS)が低下するとされている(非特許文献1)。
本発明に係る脱β層が形成された超硬合金を母材とした被覆超硬合金を切削工具に使用すると前記刃先ダレを改善出来ることが判明した。ここで、脱β層とは、β相がない層のことであり、Co含有量がやや多くなり硬度がやや低くなるが強度や靭性に優れている層である。被覆材はセラミックであり硬くて脆いことから、この脱β層で被覆材の脆さを補い、切削工具の靭性を向上させる。その反面、高硬度鋼の切削においては、この脱β層が柔らかいが故に刃先ダレが生じ易く、特に高温時に刃先ダレが生じ易い。本発明によれば、この脱β層のCo中に,Crが固溶し高温での強度を向上させており、前記刃先ダレが改善される。この脱β層の効果が有効な範囲として本発明では脱β層の厚みを1〜30μmとしている。
図1に示すCo相のX線回折像において、本発明の強靭超硬合金では、図1(a)と図1(c)に示すようにfchp回折像の半価巾が小さくなっており、fcc/hcp比が大きくなっていることが分かる。その一方で、従来例の超硬合金では、図1(b)と図1(d)に示すようにfchp回折像の半価巾が大きくなっており、fcc/hcp比が小さくなっていることが分かる。ここで、本明細書では、上記の測定法でfchp回折像の半価巾が0.42度以下のものを本発明における高性能強靭超硬合金としている。図1(a)と図1(b)に示す合金ではCoを20質量%含有しており、図1(c)と図1(d)に示す合金ではCoを9質量%含有している。
特に脱β層が形成された母材を用いた被覆超硬合金では脱β層の欠点である切削時の刃先ダレの防止に貢献することとなる。また、その他、鉱山工具等WC粒が大きいか、Co含有量が比較的多い超硬合金において、欠損の低減や耐摩耗性の向上が期待でき工具の長寿命化が実現する。
冷間或いは熱間鍛造加工金型や工具等の耐摩耗用工具、或いは鉱山工具用途としては、その平均粒度が1.5〜20.0μmのWC粉が使用され、Co粉末が7〜25質量%配合される。CrはCoに対する重量比で2〜18%配合する。Crの添加は、Cr3C2粉末を使用するのが良い。Cr粉末も使用出来る。ただし、Cr粉末はその表面が酸化しておりCo%が小さい超硬合金ではその炭素調整が難しくなることがあるので注意する必要がある。高価であるがCrNを使用することも出来る。
fchp半価巾を0.42度以下に制御する方法の一つとしては、1200℃以上1500℃以下に加熱された加熱温度から、50℃以上200℃以下の冷却温度までの冷却速度が10℃/分以上であることが望ましい。ここで、上記加熱温度には、焼結温度としての1280℃以上1500℃以下の温度が含まれる。fchp半価巾を制御する方法は上記以外にもあると考えられるが未検討である。
その一方で、超硬合金をその温度が1200℃以上1500℃以下の範囲から50℃以上200℃以下の範囲まで連続して急速冷却しても、上記2段階冷却法と相当の半価巾と格子定数が得られる。しかし上記2段階冷却のほうが、製品に対する残留応力が軽減されること等を考えるとより汎用性に富んでいるといえる。そして、格子定数を3.560Å以上にする方法としては、上記以外にもWC等の炭化物の結合炭素を不足させる方法もある。しかし、炭化物の結合炭素を不足させる方法では、格子定数を3.560Å以上にすることが安定して実現できず、現状の技術では困難であると考えられる。なお、X線回折像を測定する際は、研削面から10−30μmの深さに残留する研削影響層を除去する必要がある。このため、超硬合金における研削面の表面からその深さ方向に50μm以上の研磨を行い鏡面に仕上げることが望ましい。
平均粒度が1.5〜7.0μmのWC粉が使用され、Co粉末が4〜15質量%配合される。CrはCoに対する重量比で2〜18%配合する。Crの添加は、Cr3C2粉末を使用するのが良い。そして、用途に応じて、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)の炭化物、炭窒化物、或いはタングステン(W)を含むこれら遷移金属の複炭化物、或いは複炭窒化物のいずれか1種以上を配合する。秤量、湿式混合、プレス、焼結及びfchp像の半価巾を0.42度以下に制御する方法や、格子定数を3.560Å以上に制御する方法は、実施形態1と同様である。この組成は主として切削工具用超硬合金に用いられる。焼結後そのまま切削工具として使用できるものも多いがさらに研削して高精度の工具に仕上げることもある。
脱β層が形成された被覆超硬合金の母材を製造する場合は、実施形態2の配合粉に微量の窒化物或いは炭窒化物を加える。秤量、湿式混合、プレス、焼結及びfchp像の半価巾を0.42度以下に制御する方法や、格子定数を3.560Å以上に制御する方法は、上述の実施形態1と同様である。この添加した窒素の作用で真空焼結時に脱β層を発現させることが出来る。本発明に係る被覆超硬合金を製作するための被覆法としては既知のCVD法が適用され、その被覆条件は通常どおりである。
冷間鍛造金型の実施例を以下に述べる。
切削工具の実施例を以下に述べる。
切削条件としては、被削材がSCM3、切削速度v=100
mm/分、切り込み深さd=2mm、送り速度f=0.4mm/rev、切削時間が30分である。
その結果、発明品C1からなるチップの磨耗度合いは、比較品C2からなるチップの磨耗度合いや、従来品Dからなるチップの磨耗度合いと比較して、約2/3となり、発明品C1の耐摩耗性が優れていることが判った。
脱β層が形成された母材を用いた被覆超硬合金の切削工具の実施例を以下に述べる。
切削条件としては、被覆超硬合金の形状がSNMA432、被切削材がSNCM439、切削速度v=140mm/分、切り込み深さd=2mm、送り速度f=0.7mm/rev、切削時間が40分である。その結果を次の表6に示す。
上述した本発明の強靱超硬合金と従来の超硬合金とで、Co含有量と、ビッカース硬度、抗折力、圧縮強度、破壊靭性、並びにfchp回折像半価巾との関係を比較測定した。その結果を次の表7に示す。ここでは、その平均粒度が3μmのWCを使用した。
ボルト・ナット用冷間鍛造金型の実施例を以下に述べる。
Claims (5)
- 炭化タングステン(WC),コバルト(Co)及びクロム(Cr)を含有し、WCの平均粒度が1.5〜20.0μm、ビッカース硬度が650〜1650Hvであり、Coが4〜30質量%含有し、CrがCo含有量の2〜18質量%含有し、残部がWC及び不可避不純物よりなり、hcp構造のCoを少なくするために、CrをCo中に固溶させて、Cu‐Kα線を用いたCo相のfccの(111)面のX線回折像(2θ=44.3度)とhcpの(002)面のX線回折像(2θ=44.9度)が重なりあったX線回折像の半価巾を0.42度以下としたことを特徴とする強靱超硬合金。
- 請求項1において、Co中でのCrやWの固溶量を増加させて、Co相のfccの格子定数を3.560Å以上としたことを特徴とする強靭超硬合金。
- 請求項1または2において、WCの一部をTiC、TaC、NbC、HfC、ZrC、VC等の遷移金属の炭化物又はこれら遷移金属の炭窒化物、若しくはWを含むこれら遷移金属の複炭化物又はWを含むこれら遷移金属の複炭窒化物のうちいずれか1種以上で置き換えたことを特徴とする強靱超硬合金。
- 請求項3において、その合金表面に脱β層が形成されており、脱β層の厚みが1〜30μmであることを特徴とする強靱超硬合金。
- 請求項1から4のいずれか一項に記載の強靱超硬合金を母材とした被覆超硬合金。
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