JP6743663B2 - 超硬合金及び超硬工具 - Google Patents
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Description
結合相の破壊は、脆性破壊に起因する。脆性破壊はたとえば、熱亀裂による破壊である。結合相に熱亀裂がわずかでも存在すれば、この部分が破壊基点となる。この場合、弾性変形及び塑性変形を経ることなく、結合相の脆性破壊が生じる。熱亀裂は、超硬合金の放熱性が低い場合に、硬質相と結合相との熱膨張率の差異により発生する。
超硬合金の硬度は、硬質相の硬度とほぼ同等である。この理由は超硬合金の製造方法により説明できる。
超硬合金は、金属炭化物及び結合材の焼結体である。本実施形態による超硬合金は、硬質相と、硬質相を100質量%とした場合に10〜15質量%の結合相とを含有し、残部は不純物からなる。ここでいう主な不純物は、例えば、Feである。
硬質相は複数の金属炭化物粒子(金属炭化物結晶粒)からなる。より具体的には、硬質相は、WCと、TiC及びTaCからなる群から選択される1種以上とからなる。本実施形態の硬質相は、上述の不純物を含むものも含まれる。
結合相は、超硬合金中において、金属炭化物粒子間に存在する、いわゆるバインダである。金属炭化物粒子を結晶粒とすれば、結合相は結晶粒界に相当する。
モリブデン(Mo)は、上述のとおり、Co及びNi等の鉄族元素と比較して、熱伝導率が高い。そのため、Moが結合相に含有されれば、結合相の熱伝導率が高まる。その結果、結合相の熱伝導率が硬質相の熱伝導率に近づく。つまり、超硬合金の放熱性が顕著に高まる。そのため、高温高圧環境においても、結合相の熱亀裂などの脆性破壊を抑制できる。Mo含有量が低ければ、この効果が得られない。一方、Mo元素含有量が高すぎれば、焼結性が低下する。したがって、Mo含有量は2〜5質量%である。Mo含有量の好ましい上限は、3質量%である。
マグネシウム(Mg)は、上述のとおり、鉄族元素と比較して、熱伝導率が高い。そのため、Moと同様、Mgは、超硬合金の抗折力を高める。Mg含有量が低ければ、この効果が得られない。一方、Mg含有量が高すぎれば、焼結性が低下する。Mg含有量が高すぎればさらに、超硬合金の強度が低下する。したがって、Mg含有量は0.5〜1.0質量%である。
コバルト(Co)及びニッケル(Ni)は硬質相のバインダとして機能し、硬質相の粒界すべり強度を高める。その結果、Co及びNiは、超硬合金の抗折力を高める。これらの元素の合計含有量が8質量%未満であれば、この効果が得られない。一方、これらの元素の合計含有量が12質量%を超えれば、相対的に硬質相量が減少するため、超硬合金の硬度が低下する。したがって、Co及びNiの合計含有量は8〜12質量%である。Co及びNiの合計含有量の好ましい下限は9.0質量%である。
本実施形態の超硬合金の製造方法の一例を説明する。図1を参照して、本実施形態の超硬合金の製造方法は、準備工程、混合・粉砕工程、乾燥・造粒工程、プレス成形工程、及び焼結工程を備える。以下、各工程を詳述する。
準備工程では金属炭化物の化学合成を行う。まず、上述の金属炭化物を構成する材料の全ての原料粉末を準備する。つまり、W、Ti及びTaの1種以上、及びCの粉末を準備する。原料粉末を混合して、金属炭化物の化学合成を行い、金属炭化物(WC、TiC及びTaCの1種以上)を生成する。
混合・粉砕工程は、混合工程及び粉砕工程を含む。混合工程では、準備工程で化学合成した金属炭化物及び結合材を混合する。本実施形態において、結合材は、Mo、Mg、Co及び、必要に応じてNi、である。
乾燥・造粒工程では、粉砕粉末を造粒する。粉砕粉末に対して、有機バインダを添加する。有機バインダはたとえば、パラフィンワックスやポリエチレングリコールである。乾燥させ、顆粒の形状に造粒する。造粒は公知の方法で実施できる。たとえば、スプレードライヤー等の造粒機による造粒である。
プレス成形工程では、顆粒を金型に充填して、所定の形状に成形する。所定の形状はたとえば、切削工具形状である。具体的には、顆粒をプレス成形してプレス体を作製する。
焼結工程では、プレス体に対して、脱バインダ処理、予備焼成、及び本焼結を実施する。脱バインダ処理では、乾燥・造粒工程で添加した有機バインダを除去する。予備焼成では、金属炭化物同士をできるだけ強固に結合して予備焼成体を形成する。脱バインダ処理と予備焼成はまとめて1工程にて行う。予備焼成の焼成条件は周知の条件で足りる。好ましくは、予備焼成の焼結条件は、大気中で、焼成温度が700〜1000℃であり、焼成温度の保持時間が60〜120分である。この場合、金属炭化物同士が十分に結合する。これにより、適度な大きさの硬質相を形成できる。
成膜工程では、金属窒化物、金属炭化物、金属炭窒化物及び金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含有する硬質保護膜を超硬合金の表面に形成する。具体的には、表面加工工程を実施した超硬合金に対して、周知の成膜工程を実施する。成膜工程ではたとえば、周知の物理蒸着法、化学蒸着法及び溶融塩浴処理法のいずれかを実施する。
まず、硬質相となる金属炭化物を作製した。硬質相成分として、W:95質量%、Ti:3質量%、Ta:2質量%、及び、これらの総量と等価量のカーボン粉末を混合し、加熱処理にて、金属炭化物を化学合成した。
金属炭化物及び結合材を混合し、200MPaで加圧成形した。得られた成形体に対して、大気中にて、1000℃で予備焼成を実施した。加熱時間は2時間であった。予備焼成後の成形体に対して、真空中にて、1300℃で本焼結を実施して超硬合金を製造した。加熱時間は2時間であった。以上の工程により、各試験番号の超硬合金を製造した。
各試験番号の超硬合金のビッカース硬さを測定した。ビッカース硬さ試験は室温及び500℃で実施した。ビッカース硬さはJIS Z 2244(2009)に基づいて実施した。試験荷重は単位面積(1mm2)あたりで、9.80N(1kgf)とした。測定結果を表1の「硬度(Hv)」欄に示す。
各試験番号の超硬合金について、抗折力試験を実施して、抗折力を測定した。抗折力測定試験は室温及び500℃で実施した。抗折力(GPa)は、超硬工具協会規格CIS026B−2007「超硬質合金の曲げ強さ(抗折力)試験方法」に基づいて測定した。具体的には、加工歪の影響を除去するため、作製した超硬合金の長手方向の端面を除く4面を研削して、これを試験片とした。この試験片について、支点間距離20mmの3点曲げ試験治具を用いて、600MPaの応力を付加した。ここでは、各試料において、時間変化に伴う加重点の変位を測定し、抗折力(GPa)を求めた。同一の試験片を6つ作製し、同様の試験を6回行い、その平均値を求めた。測定結果を表1に示す。
評価結果を表1に示す。表1を参照して、試験番号3、4、5及び8の超硬合金は、硬質相及び結合相の化学組成が適切であった。そのため、室温での硬度が1800Hv以上、抗折力が2.5GPa以上となり、高硬度と優れた抗折力とを有した。さらに、500℃での硬度が1500Hv以上、抗折力が2.0GPa以上となり、高温高圧環境においても、高硬度と優れた抗折力とを有した。
Claims (2)
- 硬質相と、
前記硬質相を100質量%とした場合に10〜15質量%の結合相と、
を含有し、残部は不純物からなり、
前記硬質相は、
WCと、
TiC、及び、TaCからなる群から選択される1種以上と、
からなり、
前記結合相は、前記硬質相を100質量%とした場合、
Mo:2〜5質量%と、
Mg:0.5〜1.0質量%と、
Co:7.0〜12質量%、及び、Ni:0〜5.0質量%未満からなる群から選択される1種以上を合計で8〜12質量%と、
を含有し、残部は不純物からなる、超硬合金。 - 請求項1に記載の超硬合金からなる、超硬工具。
Priority Applications (1)
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JP2016225163A JP6743663B2 (ja) | 2016-11-18 | 2016-11-18 | 超硬合金及び超硬工具 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2016225163A JP6743663B2 (ja) | 2016-11-18 | 2016-11-18 | 超硬合金及び超硬工具 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2018080375A JP2018080375A (ja) | 2018-05-24 |
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ID=62198066
Family Applications (1)
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JP2016225163A Active JP6743663B2 (ja) | 2016-11-18 | 2016-11-18 | 超硬合金及び超硬工具 |
Country Status (1)
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2016
- 2016-11-18 JP JP2016225163A patent/JP6743663B2/ja active Active
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