JP6968341B2 - 微細構造組織を有する立方晶窒化ほう素基焼結体および切削工具 - Google Patents
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そして、切削加工工具用材料としての性能の改善を図るという観点から、cBN焼結体の耐熱性、靭性、硬さ等をさらに向上させるべく、従来からいくつかの提案がなされている。
そして、この切削工具によれば、cBN焼結体からなる表面部材とWC基超硬合金製支持部材の収縮率差、熱膨脹係数差を小さくしていることから、工具の刃先に熱衝撃が加わったとしても、表面部材に発生する残留応力が極めて小さいため、欠損が発生しにくくなり、耐欠損性が向上するとされている。
そして、このcBN焼結体からなる切削工具は、結合材として含まれるTi系化合物群が互いに異なった平均粒径を有する2種以上の粒子成分により構成されていることによって、耐衝撃チッピング性と耐クレーター摩耗性との両者を飛躍的に向上させることができるとされている。
また、前記特許文献2、3に示されるcBN工具では、結合材としてのTi系化合物の粒径を規定することによって、耐欠損性と耐摩耗性の向上を図っているが、Ti系化合物群の粒径のみを制御しているため、その他結合相成分の粒径制御ができていないため、例えば、粗大なAl化合物が生じると、それらが起点となりクラックが発生・進展しやすく、cBN工具に衝撃的負荷が作用した場合に、チッピング発生、欠損発生を十分に抑制することができない。
前記特許文献4に記載されるcBN工具においては、cBN焼結体におけるAl含有割合XをcBN粒子含有割合Yとの関係で所定の範囲に規定するとともに、結合相中に、微粒Al2O3を多数分散させることで、耐欠損性の改善を図っており、ある程度の効果は認められる。しかし、微粒Al2O3を添加することで、微粒Al2O3の核生成と均一分散化を促進しているため不可避なAl2O3が多くなり、Al含有割合を増やすとAl2O3が粗大化してしまう。そのため、欠損発生の抑制効果は未だ十分とはいえず、より一層の切削性能の向上が求められている。
しかし、本発明者らは、Ti化合物粒子を主たる結合相成分とするcBN焼結体において、該Ti化合物粒子の粒径を微細化するとともに、該微細なTi化合物粒子の粒界に、微細なAl2O3粒子およびAlN粒子からなるAl化合物粒子を分散させた結合相組織を形成することで、cBN焼結体の耐熱性を低下させることなく、靱性を向上させることができること、また、微細なTi化合物粒子の粒界に存在する微細なAl化合物によって、Ti化合物粒子の異常粒成長が抑制されることで硬さが向上し、cBN焼結体の耐摩耗性が向上することを見出した。
すなわち、前記の微細構造からなる結合相組織(以下、「微細構造組織」という)を有するcBN焼結体は、高硬度、耐熱性を備えるとともに、特に優れた靱性を備えるのである。
そして、このようなcBN焼結体からなるcBN工具は、耐摩耗性と耐熱性を維持しつつ、耐チッピング性、耐欠損性が大幅に向上するため、工具の長寿命化が図られることを見出した。
例えば、図1に示すように、従来の一般的なcBN焼結体の作製工程としては、結合相形成用の原料粉末(例えば、Ti化合物粉末、金属Al粉末およびAl2O3粉末等)をボールミルで混合し、乾燥した後真空焼結し、これをボールミルで粉砕して混合粉末を作製し、その後、前記混合粉末と硬質成分であるcBN粒子を超硬製ポット中へ投入してボールミルで混合した後、高圧高温焼結することによってcBN焼結体を作製していた。
この焼結体を再びボールミルなどで粉砕したのち分級し、所定粒径(例えば100nm以下)の粒子のみを採取し、これを粉砕粉Aとする。
同様に主結合相となるTi化合物粉末をボールミルなどで粉砕したのち分級し、所定粒径(例えば100nm以下)の粒子のみを採取し、これを粉砕粉Bとする。
得られた粉砕粉Aと粉砕粉Bと共にcBN原料粉をボールミルで混合し(超音波混合法を用いても良い)、1Pa以下で真空乾燥させ、1Pa以下の真空雰囲気中で600−1200℃の温度範囲で所定時間真空焼結する。
その後、3〜8GPaの圧力かつ1000〜1800℃の温度範囲の焼結条件で所定時間高圧高温焼結することによって本発明の微細構造組織を有するcBN焼結体を作製することができる。
ここで、原料に粒径100nm以下の原料を用いると、原料の比表面積が非常に大きいため、原料粒子の表面に吸着している不可避な酸素が従来工程よりも多く混入してしまいう。この場合、投入した金属Al粉末は混入した不可避な酸素と反応し、AlNではなくAl2O3になるため、所望量のAlN粒子を焼結体中に生成させることが出来なくなる。
しかし、本発明のように粉砕することで得られた粒径100nm以下の粉砕粉は粉砕によって新しく生じた破砕面に吸着酸素がないため、焼結体に混入する酸素を低減することができる。
本発明では、高圧高温焼結前の真空焼結の真空度と焼結条件によってAlN粒子とAl2O3粒子の生成量を調整することができる。
上記の作製工程によってcBN焼結体を作製することによって、結合相の主たる成分であるTi化合物粒子の粒界に、Al2O3粒子およびAlN粒子からなるAl化合物粒子が分散して存在する微細構造組織を有するcBN焼結体を作製することができ、そして、このような微細構造組織を有するcBN焼結体は、硬さ、耐熱性とともに靱性にもすぐれるのである。
さらに、切削工具の切れ刃部を、硬さ、耐熱性及び靱性にすぐれる前記本発明のcBN焼結体で構成した場合には、高負荷が作用する合金鋼等の断続切削加工等において、チッピング、欠損等の異常損傷の発生を抑制することができ、その結果、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する切削工具を得ることができる。
「(1)立方晶窒化ほう素粒子と結合相からなる立方晶窒化ほう素基焼結体において、
(a)前記結合相は少なくともTi化合物粒子とAl2O3粒子およびAlN粒子からなるAl化合物粒子を含み、
(b)前記結合相に含まれる前記Ti化合物粒子の平均粒径は5nm以上100nm以下であり、
(c)前記立方晶窒化ほう素基焼結体に含有されるAlの含有量は、2〜10質量%であり、
(d)前記結合相には、前記Al化合物粒子が分散分布し、前記Al化合物粒子間の平均粒子間距離は10nm〜100nmであり、前記Al化合物粒子のうちの少なくとも一部は、前記Ti化合物粒子の粒界に存在することを特徴とする立方晶窒化ほう素基焼結体。
(2)前記立方晶窒化ほう素粒子が、前記立方晶窒化ほう素基焼結体の全体積に対して占める体積割合は、40体積%以上85体積%以下であることを特徴とする(1)に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体。
(3)前記立方晶窒化ほう素基焼結体の前記結合相の断面領域において、Al2O3粒子が占める面積に対するAlN粒子が占める面積の比率は1以下であることを特徴とする(1)に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体。
(4)前記立方晶窒化ほう素基焼結体の1μm×1μmの前記結合相の断面領域には、粒径が10nm以上100nm以下のAl化合物粒子が30個以上存在することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の立方晶窒化ほう素基焼結体。
(5)切削工具の少なくとも切れ刃が、(1)乃至(4)のいずれかに記載の立方晶窒化ほう素基焼結体から構成されていることを特徴とする立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具。」
を特徴とするものである。
そして、このようなcBN焼結体からなるcBN工具は、耐摩耗性と耐熱性を維持しつつ、耐チッピング性、耐欠損性が大幅に向上するため、工具寿命の長寿命化が図られる。
これは、平均粒径が0.1μm〜12μmのcBN粒子が焼結体内に分散することにより、工具使用中に工具表面のcBN粒子が脱落して生じる刃先の凹凸形状を起点とするチッピングを抑制するだけでなく、工具使用中に刃先に加わる応力により生じるcBN粒子と結合相との界面から進展するクラック、あるいはcBN粒を貫通して進展するクラックの伝播を焼結体中に分散したcBN粒子により抑制することにより、耐欠損性を向上させることができるからである。
また、cBN粒子の平均粒径は、0.5〜8μmの範囲内であることがより好ましく、また、さらに好ましくは、0.5〜5μmの範囲内である。
なお、cBN粒子の平均粒径は、例えば、cBN焼結体の断面組織について、走査電子顕微鏡(SEM)を用いてcBN焼結体組織を観察し、二次電子像を取得し、得られた画像内のcBN粒子の部分を画像処理にて抜き出し、画像解析より求めた各cBN粒子の最大長を求め、それを各粒子の直径とし、複数個所においてcBN粒子の直径を測定し、複数個所において測定したこれらの測定値を平均することによって、cBN粒子の平均粒径とする。
一方、cBN粒子の含有割合が高くなった場合(例えば、85体積%を超える場合)には、相対的に焼結体中の結合相の割合が少なくなり、結合相による靭性向上の効果が十分に得られなくなる。さらにcBN粒子同士が接触する割合が増えることで、焼結体中に空隙が生じやすくなり、この空隙がクラック発生の起点となることで耐欠損性が低下する。
したがって、耐欠損性の低下抑制という観点から、cBN焼結体におけるcBN粒子の含有割合は40〜85体積%とすることが好ましい。
また、より好ましいcBN粒子の含有割合は50〜80体積%であり。さらに好ましいのは50〜75体積%である。
cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合(体積%)は、cBN焼結体の断面組織を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察し、得られた二次電子像を基に算出することができる。得られた二次電子像内のcBN粒子の部分を、画像処理によって抜き出し、cBN粒子の部分を特定した後、画像解析によってcBN粒子が占める面積を算出した値を取得し、その値を画像総面積で除することでcBN粒子の面積比率を算出する。そして、この面積比率を体積%とみなすことで、cBN粒子の含有割合(体積%)を測定することができる。
また、この測定では、走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた倍率5、000の二次電子像の少なくとも3画像を処理し求めた値の平均値をcBN粒子の含有割合(体積%)としている。
なお、画像処理に用いる観察領域として、例えば、cBN粒子の平均粒径が3μmの場合、20μm×20μm程度の視野領域が望ましい。
ここで、Ti化合物粒子の平均粒径を100nm以下とするのは、Ti化合物粒子の平均粒径が100nmを超えるような場合には、100nm以下の場合に比べてTi化合物粒子界面を伝搬するクラックが直線的に伝搬するため、十分な靭性を得ることができず、突発的な欠損の原因となり得る。一方、Ti化合物粒子の平均粒径が5nm未満では、 放射状に分散されたクラックにより、脱落するTi化合物結合相が多くなることで耐摩耗性が低下するという理由による。
なお、本発明でいうTi化合物粒子とは、具体的には、TiN粒子、TiC粒子、TiCN粒子等をいう。
なお、以下では、「Al2O3粒子及びAlN粒子」を単に「Al化合物粒子」と呼ぶ場合がある。
ここで、cBN焼結体に含有されるAlの含有量は、cBN焼結体に対して2〜10質量%とする。
これは、cBN焼結体におけるAlの含有量が2質量%未満では、結合相中に分散する微細なAl化合物粒子の個数が少なく、Ti化合物粒子の粒成長を抑制する効果を十分に得ることが出来ず、粗粒のTi化合物粒子が形成され、cBN焼結体の靭性が低下する。
一方、10質量%を超えるとAl化合物が過剰に生成され、cBN焼結体の強度低下が生じるからである。
前記Al化合物粒子間の平均粒子間距離とは、結合相内におけるAl化合物粒子の分散性(疎な分散、密な分散)を表す相対的な指標に相当し、例えば、cBN焼結体中のAl含有量が一定であるとした場合、平均粒子間距離が10nm未満であると、結合相中の脆性成分であるAl化合物粒子間の距離が近すぎて、クラックの伝播が止まらずに連鎖してしまうため、焼結体の靱性が低下する。一方、平均粒子間距離が100nmを超えると、粗大なAl化合物粒子が結合相中に分散している組織になり、cBN焼結体の強度の低下を招く恐れがある。
また、結合相において、Al2O3粒子が占める面積に対するAlN粒子が占める面積の比率、即ち、(AlN粒子が占める面積)/(Al2O3粒子が占める面積)、は1以下であることが望ましい。
これは、Al化合物の平均粒子間距離が100nm以下の場合にAl2O3よりも脆性なAlNの比率が多くなると、AlNによるクラック伝搬の抑制効果よりもクラック伝搬の連鎖が多くなり、焼結体に十分な靭性を得ることができないという理由による。
図3において、A1〜A5は、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)を用いたcBN焼結体の断面観察領域において、一直線上に並んでいるAl化合物粒子を示し、また、cBNは、該直線状に存在するcBN粒子を示す。
具体的には、オージェ電子分光法(AES)を用いたcBN焼結体の断面観察において、まず、Al、O、Ti、N、Bについての元素マッピングを行い、次いで、2値化処理を行いAlとOとの重なった領域をAl2O3からなるAl化合物とし、また、AlとNとの重なった領域をAlNからなるAl化合物とし、また、TiとNの重なった領域をTiNであるとし、BとNの重なった領域をcBNであるとする。
次いで、Al化合物の連続している領域をAl化合物粒子であると特定して、観察領域内に所定長さの線分を引き、該線分と交差するAl化合物粒子A1〜A5を特定する。
次いで、該線分に沿って、隣接するAl化合物粒子間の距離d1〜d3を測定し、Al化合物粒子A1〜A5についての粒子間距離の平均値(=(d1+d2+d3)/3)を算出する。
ここで、d1は、Al化合物粒子A1と線分の交点と、Al化合物粒子A2と線分の交点との間の距離として求められ、d2、d3も同様にして求められる。
次いで、他の領域においても断面観察を行い、それぞれの領域で求めた粒子間距離の平均値を平均し、その値を平均粒子間距離とする。
なお、Al化合物粒子A3とA4の間には、cBN粒子が介在しているので、Al化合物粒子A3とAl化合物粒子A4とは隣接する粒子ではないものとして扱い、Al化合物粒子A3とA4の間の距離は測定しない。したがって、cBN粒子がその間に介在するAl化合物粒子A3とA4の間の距離は、平均粒子間距離の算出には考慮されない。
また、Al2O3粒子とAlN粒子が接している場合、1つのAl化合物粒子として考慮する。
そして、このAl化合物粒子は、切削時のクラック伝搬を抑制することにより、cBN焼結体の靭性を向上させる。
さらに、本発明では、結合相の主成分であるTi化合物粒子は、平均粒径が100nm以下の微粒であることから、多くの粒界が存在する。
そのため、粗粒のTi化合物粒子の場合に比して、本発明の結合相では、より多量のAl化合物粒子が微粒のTi化合物粒子の粒界に存在することが可能となり、その結果、よりクラックを制御することができる。さらに、焼結時のTi化合物粒子の粗大化が抑制されるため、cBN焼結体の硬さが向上する。
この理由は、結合相中のAl化合物粒子の粒径が10nm未満になると、cBN焼結体の靭性を低下する恐れがあり、一方、結合相中のAl化合物粒子の粒径が100nmを超えると、相対的にAl化合物粒子の数が減少するため、クラックの進展抑制作用が十分に果たされなくなるからである。
さらに、結合相の1μm×1μmの断面観察領域におけるAl化合物粒子の個数が30個よりも少ないと、やはり、クラック進展抑制作用が十分でなくなるためである。
そこで、結合相中に存在する直径10nm〜100nmのAl化合物粒子は、結合相の断面1μm×1μmの領域において30個以上とすることが望ましい。
例えば、先行技術文献として示した前記特許文献4においては、cBN焼結体中に含有させることができるAl含有量(質量%)の最大値Yは、Y=−0.1X+10(但し、Xは、cBN焼結体に占めるcBN粒子の体積割合(体積%)であって、Xは、40(体積%)≦X<60(体積%))であるが、本発明においては、例えば、cBN粒子の体積割合が40(体積%)≦X<85(体積%)というより幅広いcBN粒子の含有割合範囲において、Y>−0.1X+10というより多量のAl(言い換えれば、より多量のAl化合物粒子)を含有させることができる。
そして、このような多量のAlを含有させたとしても、結合相のTi化合物粒子を微粒化していることによって、より多量のAl化合物粒子が微粒のTi化合物粒子の粒界に存在することが可能となり、Al化合物粒子が粗粒化せず、cBN焼結体の靭性が低下することはない。
なお、前記特許文献4でいうAl含有量(質量%)とは、cBN焼結体を電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyser:EPMA)を用いて定性・定量分析を行い、定性分析で検出された元素についてZAF定量分析法により求められたcBN焼結体全体に占めるAlの含有量(質量%)である。
この焼結体を再びボールミルなどで粉砕したのち分級し、所定粒径(例えば100nm以下)の粒子のみを採取し、これを粉砕粉Aとする。
同様に主結合相となるTi化合物粉末をボールミルなどで粉砕したのち分級し、所定粒径(例えば100nm以下)の粒子のみを採取し、これを粉砕粉Bとする。
得られた粉砕粉Aと粉砕粉Bと共にcBN原料粉をボールミルで混合し(超音波混合法を用いても良い)、1Pa以下で真空乾燥させ、1Pa以下の真空雰囲気中で600−1200℃の温度範囲で所定時間真空焼結する。その後、3〜8GPaの圧力かつ1000〜1800℃の温度範囲の焼結条件で所定時間高圧高温焼結することによって本発明の結合相組織を有するcBN焼結体を作製することができる。
主結合相となる粉砕粉は1種類に限るのではなく、例えば粉砕粉Cも作製し、粉砕粉Bと粉砕粉Cを主結合相として用いることができる。
なお、粉砕粉Cとしては、例えば、TiC粉末、TiCN粉末等を用いることができる。
ここで、原料に粒径100nm以下の原料を用いると、原料の比表面積が非常に大きいため、原料粒子の表面に吸着している不可避な酸素が従来工程よりも多く混入してしまいう。この場合、投入した金属Al粉末は混入した不可避な酸素と反応し、AlNではなくAl2O3になるため、所望量のAlN粒子を焼結体中に生成させることが出来なくなる。
しかし、本発明のように粉砕することで得られた粒径100nm以下の粉砕粉は粉砕によって新しく生じた破砕面に吸着酸素がないため、焼結体に混入する酸素を低減することができる。
本発明では、高圧高温焼結前の真空焼結の真空度と焼結条件によってAlN粒子とAl2O3粒子の生成量を調整することができる。また、焼結体中のAl含有量は粉砕粉Aの配合によって調整することができる。
そして、このような微細構造組織を備えたcBN焼結体は、硬さ、耐熱性にすぐれるとともに、すぐれた靱性を有する。
本発明のcBN焼結体を切削工具材料として用いる場合には、例えば、cBN焼結体をWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)にろう付けし、必要に応じ、研磨加工、ホーニング加工を施すことにより、cBN焼結体を切れ刃とする所望のインサート形状をもった切削工具を作製することができる。
(a)cBN焼結体の結合相の原料粉末として、5〜50μmの範囲内の平均粒径を有するTiN粉末、金属Al粉末を用意し、これらの原料粉末をボールミル中で湿式混合し、乾燥した後、成形体を作製した。
この成形体を、1Pa以下の真空中で、1000℃で30分間保持して真空焼結した。
ついで、この焼結体を、ボールミル中で湿式粉砕し、その後、遠心分離法によって分級することで粒径25nm以下の粉砕粉Aを得た。
なお、上記工程におけるボールミルでの混合あるいは粉砕は、超硬合金製ポットに、超硬合金製ボールと有機溶剤とともに被処理物を封入して混合あるいは粉砕を行った。
(b)同様に、原料粉末として、5〜50μmの範囲内の平均粒径を有するTi化合物粉末を用意し、この原料粉末をボールミル中で湿式粉砕し、その後、遠心分離法によって分級することで表1に示す主結合相および粒径以下の粉砕粉Bを得た。
(c)前記(a)で得られた粉砕粉Aを、表1のAl含有量になるように配合したあと、粉砕粉Bとともに、平均粒径3μmのcBN粒子を、cBN含有量が50体積%になるように配合し、ボールミル中で湿式混合した。ここで、超音波法で混合する場合は、例えば、スラリー濃度7質量%で出力180Wにより30秒ごとに15秒のインターバルをおいて15分間混合するという条件で混合する。
(d)次に、1Pa以下で真空乾燥させ、表1に示す条件で真空焼結した後に、3〜8GPaの圧力、かつ、1000〜1800℃の温度範囲の焼結条件(より具体的には、例えば、6GPa1500℃)で高圧高温焼結することによって、表1に示す本発明のcBN焼結体1〜6(「実施例1〜6」という)を作製した。
しかし、cBN粒子の平均粒径および含有割合については、上記に限定されるものではなく、各種の値をとることができる。
また、実施例では高圧高温焼結条件を6GPa×1500℃と一定にしているが、焼結条件によって切削性能の優劣は変化しない。
その場合、cBN焼結体におけるcBN粒子の平均粒径(μm)、cBN粒子の含有割合(体積%)は、次のようにして算出することができる。
cBN粒子の平均粒径については、cBN焼結体の断面組織を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察して、二次電子像を得る。得られた画像内のcBN粒子の部分を画像処理にて抜き出し、画像解析より求めた各cBN粒子の最大長を求め、それを各粒子の直径とし、複数個所においてcBN粒子の直径を測定し、複数個所において測定したこれらの測定値を平均することによって、cBN粒子の平均粒径とする。
また、cBN粒子の含有割合(体積%)は、cBN焼結体の断面組織を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察して、二次電子像を取得し、得られた画像内のcBN粒子の部分を画像処理にて抜き出し、cBN粒子の部分を特定した後、画像解析によってcBN粒子が占める面積を算出し、その値を画像総面積で除することでcBN粒子の面積割合を算出する。そして、この面積比率を体積%とみなすことで、cBN粒子の含有割合(体積%)を求める。
なお、この測定では、走査型電子顕微鏡(SEM)で得られた倍率5、000の二次電子像の少なくとも3画像を処理し求めた値の平均値をcBN粒子の平均粒径(μm)として、また、cBN粒子の体積%とする。
なお、画像処理に用いる観察領域は、実施例1〜4および比較例1〜9ではいずれも、cBN粒子の平均粒径を3μmとしていることから、20μm×20μmの視野領域が好適であるが、cBN粒子の平均粒径に応じて視野領域を定めればよい。
前記cBN粒子の平均粒径を求めた場合と同様に、cBN焼結体の断面組織を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、二次電子像を得、得られた画像内のTi化合物粒子の部分を画像処理にて抜き出し、画像解析より求めた各Ti化合物粒子の最大長を求め、それを各粒子の直径とし、複数個所においてTi化合物粒子の直径を測定し、複数個所において測定したこれらの測定値を平均することによって、Ti化合物粒子の平均粒径とした。
cBN焼結体の断面組織をオージェ電子分光法(AES)にて観察し、Al、O、N元素の元素マッピングによって得られた画像内を2値化し重ね合わせ、Al2O3粒子とAlN粒子の部分を画像処理にて抜き出し、Al2O3粒子とAlN粒子を特定する。
さらに、各Al2O3粒子と各AlN粒子の面積を求め、Al2O3粒子が占める面積に対するAlN粒子が占める面積の比率を算出した。
なお、少なくとも3画像を解析処理して、Al2O3粒子が占める面積に対するAlN粒子が占める面積の比率として求めた。
図3を参照して、より具体的に説明すると、以下のとおりである。
オージェ電子分光法(AES)を用いたcBN焼結体の断面観察において、観察領域内に所定長さの線分を引き、該線分と交差するAl化合物粒子A1〜A5を特定する。次いで、該線分に沿って、隣接するAl化合物粒子間の距離d1〜d3を測定し、Al化合物粒子A1〜A5についての粒子間距離の平均値(=(d1+d2+d3)/3)を算出する。
ここで、d1は、Al化合物粒子A1と線分の交点と、Al化合物粒子A2と線分の交点との間の距離として求められ、d2、d3も同様にして求められる。
次いで、他の領域においても断面観察を行い、それぞれの領域で求めた粒子間距離の平均値を平均し、その値を平均粒子間距離とする。
なお、Al化合物粒子A3とA4の間には、cBN粒子が介在している場合、Al化合物粒子A3とAl化合物粒子A4とは隣接する粒子ではないものとして扱い、Al化合物粒子A3とA4の間の距離は測定しない。したがって、cBN粒子がその間に介在するAl化合物粒子A3とA4の間の距離は、平均粒子間距離の算出には考慮されない。
また、Al2O3粒子とAlN粒子が接している場合、1つのAl化合物粒子として考慮する。
表1、表2に、前記で測定・算出した値を示す。
切削条件:
被削材:JIS・SCM420の(HRC58−62)丸棒(ただし、被削材の軸方向に等間隔で2本のスリットあり)
切削速度: 150 m/min.、
送り量:0.20rev/mm、
切込量:0.20mm
上記の断続切削加工試験において、切削工具の切れ刃がチッピングあるいは欠損に至るまでの衝撃回数(断続回数)を工具寿命とし、最大の衝撃回数(断続回数)は5000回までの切削加工試験を実施した。
なお、切削試験においては、衝撃回数200回ごとに刃先観察を行い、刃先のチッピングおよび欠損が発生したか否かを判定する。チッピングあるいは欠損が発生していた場合、被削材の切削面の加工面粗さ測定を行い、その不連続部分を欠損が発生した点とし、不連続部分までの切削加工長から衝撃回数を算出した。
表3に、切削試験結果を示す。
これに対して、比較例工具1〜11においては、チッピング、欠損等の異常損傷の発生により、短期間で寿命に至ることが明らかである。
例えば、本発明工具4と比較例工具5を比較すると、両者は、TiN粒径、Al含有量が同じであるが、Al化合物粒子間距離が異なっているため、本発明工具4は4920回の衝撃回数で欠損を発生しているのに対して、比較例工具5は、3600回の衝撃回数で既に欠損を発生していることから、工具寿命が短命であることがわかる。
Claims (5)
- 立方晶窒化ほう素粒子と結合相からなる立方晶窒化ほう素基焼結体において、
(a)前記結合相は少なくともTi化合物粒子とAl2O3粒子とAlN粒子からなるAl化合物粒子を含み、
(b)前記結合相に含まれる前記Ti化合物粒子の平均粒径は5nm以上100nm以下であり、
(c)前記立方晶窒化ほう素基焼結体に含有されるAlの含有量は、2〜10質量%であり、
(d)前記結合相には、前記Al化合物粒子が分散分布し、前記Al化合物粒子間の平均粒子間距離は10nm〜100nmであり、前記Al化合物粒子のうちの少なくとも一部は、前記Ti化合物粒子の粒界に存在することを特徴とする立方晶窒化ほう素基焼結体。 - 前記立方晶窒化ほう素粒子が、前記立方晶窒化ほう素基焼結体の全体積に対して占める体積割合は、40体積%以上85体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体。
- 前記立方晶窒化ほう素基焼結体の前記結合相の断面領域において、Al2O3粒子が占める面積に対するAlN粒子が占める面積の比率は1以下であることを特徴とする請求項1に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体。
- 前記立方晶窒化ほう素基焼結体の1μm×1μmの前記結合相の断面領域には、粒径が10nm以上100nm以下のAl化合物粒子が30個以上存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体。
- 切削工具の少なくとも切れ刃が、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の立方晶窒化ほう素基焼結体から構成されていることを特徴とする立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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