JP7094657B2 - 金属粉末射出成形用コンパウンドおよび金属粉末射出成形体 - Google Patents

金属粉末射出成形用コンパウンドおよび金属粉末射出成形体 Download PDF

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Description

本発明は、金属粉末射出成形用コンパウンドおよび金属粉末射出成形体に関するものである。
金属粉末を成形する方法としては、金属粉末と有機バインダーとを含む造粒粉末を、所定の成形型に充填し、圧縮することにより、所定の形状の成形体を得る圧縮成形法が知られている。得られた成形体は、有機バインダーを除去する脱脂処理、金属粉末を焼結する焼成処理を経て、金属焼結体となる。このような技術は粉末冶金技術の1つであり、成形型の形状次第で複雑な形状の金属焼結体を大量に製造可能であることから、近年、多くの産業分野で普及している。
例えば、特許文献1には、金属粉末とバインダーとを混合してなる成形材料を型内に射出して成形体を成形し、次いで、成形体を加熱してバインダーを除去し、その後、成形体を焼結させる金属粉末射出成形法が開示されている。そして、金属粉末とバインダーとを混合してコンパウンドを調製する際の混合比を60:40にすることが開示されている。
特開2001-152205号公報
近年、金属焼結体には、薄型化および小型化の要請が強くなっており、それに伴って、成形体の薄型化および小型化が進みつつある。
しかしながら、成形体の薄型化および小型化が進むと、機械的強度が低下し易くなるため、成形体の保形性が低下する。その結果、金属焼結体の寸法精度が低下するという課題が懸念されている。
本発明の目的は、寸法精度および保形性が高い金属粉末射出成形体ならびにかかる金属粉末射出成形体を製造可能な金属粉末射出成形用コンパウンドを提供することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドは、平均粒径1μm以上10μm以下の金属粉末と、
炭化水素系ポリマー、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、および、環状エーテル基を含有するコポリマーを含み、含有率が30体積%超38体積%未満であるバインダーと、
を含ことを特徴とする。
これにより、寸法精度および保形性が高い金属粉末射出成形体を製造可能な金属粉末射出成形用コンパウンドが得られる。
本発明の金属粉末射出成形体は、本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドの射出成形体であることを特徴とする。
これにより、寸法精度および保形性が高い金属粉末射出成形体が得られる。
以下、本発明の金属粉末射出成形用コンパウンド、金属粉末射出成形体および焼結体を、好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<金属粉末射出成形用コンパウンド>
まず、本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドの実施形態について説明する。
本実施形態に係る金属粉末射出成形用コンパウンド(以下、省略して単に「コンパウンド」ともいう。)は、金属粉末射出成形法に供される成形材料であって、金属粉末とバインダーとを含んでいる。
(金属粉末)
金属粉末射出成形(MIM)用コンパウンドに含まれる金属粉末としては、特に限定されず、いかなる種類の金属粉末であってもよい。金属粉末の構成材料としては、粉末冶金に供される焼結可能な金属材料が挙げられ、例えば、Mg、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、In、Sn、Ta、W等の金属の単体、またはこれらの少なくとも1種を含む合金や金属間化合物が挙げられる。
また、金属粉末は、互いに組成が異なる2種類以上の粉末を混合してなる混合粉末であってもよい。さらに、金属粉末射出成形用コンパウンドには、金属粉末とともにセラミックス(金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物のような金属化合物)粉末が含まれていてもよい。
このうち、Fe系合金としては、例えば、ステンレス鋼、低炭素鋼、炭素鋼、耐熱鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼、Fe-Ni合金、Fe-Ni-Co合金等が挙げられる。
また、Ni系合金としては、例えば、Ni-Cr-Fe系合金、Ni-Cr-Mo系合金、Ni-Fe系合金等が挙げられる。
また、Co系合金としては、例えば、Co-Cr系合金、Co-Cr-Mo系合金、Co-Al-W系合金等が挙げられる。
また、Ti系合金としては、例えば、Tiと、Al、V、Nb、Zr、Ta、Mo等の金属元素との合金が挙げられ、具体的には、Ti-6Al-4V、Ti-6Al-7Nb等が挙げられる。
また、Al系合金としては、例えば、ジュラルミン等が挙げられる。
また、セラミックス粉末を構成するセラミックス材料としては、例えば、アルミナ、マグネシア、ベリリア、ジルコニア、イットリア、フォルステライト、ステアタイト、ワラステナイト、ムライト、コージライト、フェライト、サイアロン、酸化セリウムのような酸化物系セラミックス材料、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのような非酸化物系セラミックス材料等が挙げられる。
なお、セラミックス粉末を含む場合には、金属粉末に対するセラミックス粉末の添加量を30体積%以下にするのが好ましく、20体積%以下にするのがより好ましい。これにより、金属特有の性質を損なうことなく、焼結体の軽量化等を図ることができる。
また、金属粉末の平均粒径は、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2μm以上20μm以下とされ、さらに好ましくは3μm以上10μm以下とされる。このような粒径の金属粉末は、成形時の圧縮性の低下を避けつつ、成形体の保形性が十分に高くなるため、最終的に十分に緻密な焼結体を製造可能なものとなる。
なお、平均粒径が前記下限値未満である場合、金属粉末が凝集し易くなり、コンパウンド中において金属粉末が偏在したり、コンパウンドを成形してなる成形体の保形性が低下したりするおそれがある。一方、平均粒径が前記上限値を超える場合、コンパウンドの均一性が低下し、成形体の保形性が低下したり、最終的に得られる焼結体の機械的強度が低下したりするおそれがある。
また、金属粉末の平均粒径とは、レーザー回折法により得られた粒度分布において、質量基準の粒度の累積が小径側から50%のときの粒径のことである。
また、金属粉末の平均粒径をD50とし、金属粉末についてレーザー回折法により得られた粒度分布において質量基準の粒度の累積が小径側から10%のときの粒径をD10とし、同様に小径側から90%のときの粒径をD90としたとき、(D90-D10)/D50は、0.5以上5以下であるのが好ましく、1.0以上3.5以下であるのがより好ましい。このような条件を満足する金属粉末は、コンパウンドの流動性を高めるとともに、成形体の保形性を高めることを可能にする。このため、薄型の成形体や小型の成形体を成形する場合であっても、高い保形性を有する成形体を製造することができる。その結果、寸法精度の高い焼結体が得られる。
このような金属粉末は、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、アトマイズ法(水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法等)、還元法、カルボニル法、粉砕法等の方法により製造されたものを用いることができる。
このうち、金属粉末には、アトマイズ法により製造されたものを用いるのが好ましい。アトマイズ法によれば、前記したような極めて微小な平均粒径の金属粉末を効率よく製造することができる。また、粒径のばらつきが少なく、粒径の揃った金属粉末を得ることができる。したがって、このような金属粉末を用いることにより、焼結体における気孔の生成を防止することができ、密度の向上を図ることができる。
また、アトマイズ法で製造された金属粉末は、比較的真球に近い球形状をなしているため、成形時の充填性に優れるとともに、バインダーに対する分散性に優れたものとなる。このため、コンパウンドを成形型に充填して成形する際に、その充填性および均一性を高めることができ、最終的により緻密で寸法精度の高い焼結体を得ることができる。
(バインダー)
バインダーは、コンパウンド中において分散し、金属粉末の粒子同士(セラミックス粉末を含む場合には、金属粒子とセラミックス粒子やセラミックス粒子同士も含む)を結着する。また、このバインダーは、成形後、脱脂工程においてほぼ除去される。これにより、焼成工程において高品質な焼結体が得られる。
このような過程において、焼結体の寸法精度を高めるためには、成形体の寸法精度および保形性が高いことが重要である。そして、成形体の寸法精度および保形性を高めるためには、コンパウンドが成形型のキャビティー内に隙間なく充填されて成形され、離型後には、離型直後の形状を成形体が維持している必要がある。
本発明者は、このような保形性の高い成形体を製造可能なコンパウンドを実現すべく鋭意検討を重ねた。そして、コンパウンドにおけるバインダーの含有率が30体積%超38体積%未満であるとき、保形性の高い成形体を特異的に製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本実施形態に係るコンパウンドは、金属粉末とバインダーとを含み、バインダーの含有率が30体積%超38体積%未満であることを特徴とする。コンパウンドにおけるバインダーの含有率を前記範囲内に設定することにより、コンパウンドが成形型のキャビティー内に隙間なく充填され、得られた成形体は、離型直後の形状を維持し得る。また、脱脂や焼結の際の収縮率も抑えられる。その結果、最終的には、寸法精度の高い高品質な焼結体が得られる。このような焼結体は、目的とする形状と同じかそれに近いものとなるため、二次加工を省略または加工量を減らすことに寄与する。このため、金属部品の低コスト化および製造の省力化を図ることができる。
また、コンパウンドにおけるバインダーの含有率は、好ましくは32体積%以上36体積%以下とされ、より好ましくは33体積%以上35体積%以下とされる。
なお、コンパウンドにおけるバインダーの含有率が前記下限値を下回ると、コンパウンドの流動性が低下するため、キャビティーの狭い箇所にはコンパウンドを充填し切れないことがある。このため、成形体の寸法精度が低下するおそれがある。また、成形体の割れや成形型の摩耗等の不具合が生じることがある。一方、コンパウンドにおけるバインダーの含有率が前記上限値を上回ると、コンパウンドにおいて金属粉末による形状保持の作用が弱るため、保形性が低下する。また、脱脂工程において除去すべきバインダー量が増えることに伴い、気化したバインダーによる成形体の割れ等が生じることある。
また、コンパウンドにおけるバインダーの含有率は、例えばコンパウンドの断面を観察し、断面におけるバインダーの面積率から求めることができる。
コンパウンドに含まれるバインダーは、脱脂工程や焼成工程において除去され得るものであれば、その構成材料は特に限定されないが、炭化水素系ポリマーとワックスとを含む材料がバインダーとして好ましく用いられる。
このうち、炭化水素系ポリマーは、主に炭素原子と水素原子とで構成される高分子化合物であって、重合度が50以上程度(好ましくは100以上)のものを指す。そして、炭化水素系ポリマーは、ワックスよりも熱分解温度が高いものである。
一方、ワックスは、主に炭素原子と水素原子とで構成される飽和鎖状高分子化合物であって、重合度が50未満程度(好ましくは30以下)のものを指す。
このような炭化水素系ポリマーとワックスとを併用することにより、ワックスによって成形体の初期の保形性が維持され、一方、比較的広い温度範囲にわたって炭化水素系ポリマーが徐々に分解されるという挙動が確立され易くなる。工程の全体にわたって成形体の形状が維持され易いため、最終的に寸法精度が特に高い焼結体が得られる。
-炭化水素系ポリマー-
炭化水素系ポリマーとしては、飽和炭化水素系樹脂、不飽和炭化水素系樹脂等が挙げられる。また、炭素原子の結合形態に応じて、鎖状炭化水素系樹脂、環状炭化水素系樹脂等にも分類される。
このような炭化水素系ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンのようなポリオレフィン、ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体、ポリエチレン-ポリブチレン共重合体のようなポリオレフィン系共重合体、ポリスチレン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上で構成される。
このうち、バインダーは、ポリオレフィン樹脂およびポリスチレン樹脂の少なくとも一方を含んでいるのが好ましい。これらの炭化水素系ポリマーは、結着力が比較的大きく、かつ熱分解性が比較的高いため、脱脂の際に成形体の形状が維持され易い。したがって、これらの炭化水素系ポリマーは、速やかな脱脂とそれによる焼結性の向上に寄与するものである。その結果、寸法精度の高い焼結体が得られる。
炭化水素系ポリマーの重量平均分子量は、1万以上10万以下であるのが好ましく、2万以上8万以下であるのがより好ましい。炭化水素系ポリマーの重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、成形体に十分な保形性を付与しつつ、容易かつ確実な脱脂が可能になる。なお、炭化水素系ポリマーの重量平均分子量が前記下限値を下回ると、成形体に十分な保形性を付与することができないおそれがあり、前記上限値を上回ると、成形体を脱脂する際の炭化水素系ポリマーの分解性が低下するおそれがある。
また、バインダーにおける炭化水素系ポリマーの含有量は、1質量%以上98質量%以下であるのが好ましく、15質量%以上50質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以上45質量%以下であるのがさらに好ましい。炭化水素系ポリマーの含有量を前記範囲内とすることにより、バインダーにおいて炭化水素系ポリマーが有する特性を必要かつ十分に発現させることができる。なお、炭化水素系ポリマーの含有量が前記下限値を下回ると、成形体に十分な保形性を付与することができないおそれがある。一方、前記上限値を上回ると、相対的にワックス等の炭化水素系ポリマー以外の成分が少なくなりすぎるため、成形体を脱脂する際に長い時間を要したり、一度に大量の炭化水素系ポリマーが分解することで生じる成形体の割れ等の不具合を招くおそれがある。
なお、炭化水素系ポリマーとしては、その熱分解温度が300℃以上550℃以下のものが好ましく用いられ、より好ましくは400℃以上500℃以下のものが用いられる。このような炭化水素系ポリマーは、バインダー成分としては比較的高温域で熱分解するものに相当するので、成形体を脱脂する際に、脱脂が完了するまで成形体の形状を維持することに寄与する。その結果、最終的に、寸法精度の高い焼結体を得ることができる。
また、炭化水素系ポリマーとしては、その融点が100℃以上400℃以下のものが好ましく用いられ、200℃以上300℃以下のものがより好ましく用いられる。
なお、これらの熱分解温度や融点は、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)等により測定される。
-ワックス-
ワックスは、結晶性の高分子を比較的多く含み、その重量平均分子量は樹脂よりも小さいものとされ、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上小さいものとされる。したがって、ワックスは、成形体が脱脂される際には、炭化水素系ポリマーよりも低温域で溶融、分解し、成形体の外部に放出される際に流路を形成する。その後、成形体がより高温で加熱されると、今度は炭化水素系ポリマーの分解が始まり、その分解物は前記流路を介して成形体の外部に放出されることとなる。このようにして流路を介して炭化水素系ポリマーを除去すれば、炭化水素系ポリマーの分解物が効率よく外部に放出され、成形体が破損するのを防止することができる。これにより、脱脂の過程でも成形体の形状をより確実に維持することができ、最終的に寸法精度の高い焼結体が得られる。
ワックスとしては、例えば、天然ワックス、合成ワックス等が挙げられる。
このうち、天然ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ油のような植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろうのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンのような鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、合成ワックスとしては、ポリエチレンワックスのような合成炭化水素、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体のような変性ワックス、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体のような水素化ワックス、12-ヒドロキシステアリン酸のような脂肪酸、ステアリン酸アミドのような酸アミド、無水フタル酸イミドのようなエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態においては、特に、石油系ワックスまたはその変性物が好ましく用いられ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスまたはこれらの誘導体がより好ましく用いられ、パラフィンワックスがさらに好ましく用いられる。これらのワックスは、炭化水素系ポリマーとの相溶性に優れているため、均質なバインダー組成物およびコンパウンドの調製を可能にする。このため、最終的に均質で機械的特性および寸法精度に優れた焼結体の製造に寄与する。
ワックスの重量平均分子量は、100以上2000以下であるのが好ましく、200以上1000以下であるのがより好ましい。ワックスの重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、成形体を脱脂する際に、炭化水素系ポリマーよりも低温域でワックスをより確実に溶融させることができ、成形体に炭化水素系ポリマーの分解物が放出されるための流路をより確実に形成することができる。なお、ワックスの重量平均分子量が前記下限値を下回ると、成形体の保形性を低下させるおそれがある。一方、前記上限値を上回ると、ワックスが溶融する温度域と炭化水素系ポリマーが溶融する温度域とが近くなり、成形体に割れ等が発生するおそれがある。
また、バインダーにおけるワックスの含有量は、1質量%以上70質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上50質量%以下であるのがより好ましく、15質量%以上40質量%以下であるのがさらに好ましい。ワックスの含有量を前記範囲内とすることにより、バインダーにおいて、ワックスが有する特性を必要かつ十分に発現させることができる。なお、ワックスの含有量が前記下限値を下回ると、成形体に十分な量の流路を形成することができず、成形体を脱脂する際に割れ等が発生するおそれがある。一方、前記上限値を上回ると、相対的に炭化水素系ポリマーの割合が低下するため、成形体の保形性が低下するおそれがある。
また、ワックスとしては、その融点が30℃以上200℃以下のものが好ましく用いられ、50℃以上150℃以下のものがより好ましく用いられる。
以上、炭化水素系ポリマーおよびワックスについて説明したが、別の観点から、バインダーは、ワックスのような結晶性樹脂とポリスチレンのような非結晶性樹脂の双方を含むことが好ましい。これにより、結晶性樹脂によって成形体の初期の保形性が維持され、一方、比較的広い温度範囲にわたって非結晶性樹脂が徐々に分解され、外部に放出される。その結果、最終的に寸法精度が特に高い焼結体が得られる。
結晶性樹脂と非結晶性樹脂との混合比は、特に限定されないが、結晶性樹脂よりも非結晶性樹脂を多くするのが好ましく、具体的には、結晶性樹脂100質量部に対して、非結晶性樹脂を101質量部以上300質量部以下とするのが好ましい。これにより、成形体の保形性をより高めることができ、最終的に寸法精度をより高めることができる。すなわち、非結晶性樹脂の混合比が前記下限値を下回ると、金属粉末の粒径やバインダーの成分等によっては、温度が変化したときの成形体の保形性がやや低下するおそれがある。一方、非結晶性樹脂の混合比が前記上限値を上回ると、金属粉末の粒径やバインダーの成分等によっては、成形体の初期の保形性がやや低下するおそれがある。
-環状エーテル基含有コポリマー-
また、バインダーには、必要に応じて、環状エーテル基含有コポリマーが添加されていてもよい。この環状エーテル基含有コポリマーは、環状エーテル基を含むモノマーと、このモノマーと共重合可能なモノマーと、を共重合してなるコポリマーである。このようなコポリマーを添加することにより、環状エーテル基を含むモノマー由来の構造が金属粉末に対して優れた密着性を有する一方、コポリマーとすることにより、炭化水素系ポリマーやワックスとの相溶性を高めることができる。すなわち、このようなコポリマーは、金属粉末と炭化水素系樹脂およびワックスとの相互の濡れ性を高めることに寄与し、ひいては、コンパウンド中における相互の分散性を高めることに寄与する。その結果、かかるコンパウンドは、均質なものとなるため、機械的特性および寸法精度が高い焼結体を得ることにつながる。
環状エーテル基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。これらは、コンパウンドに付与された熱により開環し、金属粉末表面の水酸基と結合する。その結果、金属粉末とコポリマーとが高い密着性を示し、コンパウンドにおける金属粉末の分散性がより良好になる。また、金属粉末表面との結合が容易である等の観点から、環状エーテル基の中でも特にエポキシ基が好ましい。
また、環状エーテル基を含むモノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートのようなグリシジルエステル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルのようなグリシジルエーテル、オキセタンアクリレート、オキセタンメタクリレートのようなオキセタンエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
一方、このようなモノマーに共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルのような(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエンのようなオレフィン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、(メタ)アクリル酸のような表記は、アクリル酸とメタクリル酸のいずれかであることを指している。
このうち、エチレンモノマーおよび酢酸ビニルモノマーが好ましく用いられる。エチレンおよび酢酸ビニルは、炭化水素系ポリマーやワックスに対して特に優れた相溶性を有する。このため、エチレンモノマーと酢酸ビニルモノマーの双方を用いることにより、その重合物は、金属粉末と炭化水素系ポリマーおよびワックスとの間に介在し、これらの相互の濡れ性を特に高める機能を有するものとなる。
なお、上述したような環状エーテル基を含むモノマーとそのモノマーに共重合可能なモノマーとの好ましい組み合わせとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート(GMA)と酢酸ビニル(VA)、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン、グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸ビニルとエチレン(E)、グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸ビニルとアクリル酸メチル(MA)等が挙げられる。
また、環状エーテル基含有コポリマーにおける環状エーテル基を含むモノマーの含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上50質量%以下程度であるのが好ましく、1質量%以上30質量%以下程度であるのがより好ましい。これにより、環状エーテル基含有コポリマーと金属粉末との密着性が確実に得られるため、コポリマーを用いたときの前述した効果がより確実に発揮される。
環状エーテル基含有コポリマーの重量平均分子量は、1万以上40万以下であるのが好ましく、3万以上30万以下であるのがより好ましい。環状エーテル基含有コポリマーの重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、環状エーテル基含有コポリマーの熱分解性が著しく低下するのを防止しつつ、コンパウンドの流動性と成形体の保形性とを両立することができる。
また、環状エーテル基含有コポリマーにおけるモノマーの配列は、特に限定されず、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれの配列であってもよい。
また、コンパウンドにおける環状エーテル基含有コポリマーの含有量は、質量比で、ワックスの含有量の10%以上100%以下程度であるのが好ましく、15%以上80%以下程度であるのがより好ましく、20%以上50%以下程度であるのがさらに好ましい。環状エーテル基含有コポリマーの含有量を前記範囲内とすることにより、金属粉末と炭化水素系ポリマーおよびワックスとの相互の濡れ性を特に高めることができる。その結果、コンパウンド中における金属粉末およびバインダーの分散性を特に高めることに寄与する。
また、環状エーテル基含有コポリマーとしては、その融点が30℃以上150℃以下のものが好ましく用いられ、50℃以上100℃以下のものがより好ましく用いられる。
-その他の成分-
また、バインダーは、その他の成分を含んでいてもよい。バインダーにおけるその他の成分の含有量は、例えば10質量%以下であるのが好ましい。
その他の成分としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテルまたはこれらの共重合体等の各種樹脂や、アルコール類、高級脂肪酸、脂肪酸金属、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、非イオン性界面活性剤、シリコーン系滑剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
このうち、アルコール類としては、例えば、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール等が挙げられ、特に、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、マンニトール等が好ましく用いられる。
また、高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられ、特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸のような飽和脂肪酸が好ましく用いられる。
また、脂肪酸金属としては、例えば、ラウリン酸、ステアリン酸、コハク酸、ステアリル乳酸、乳酸、フタル酸、安息香酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、ナフテン酸、オレイン酸、パルミチン酸、エルカ酸のような高級脂肪酸と、Li、Na、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Al、Sn、Pb、Cdのような金属との化合物が挙げられ、特に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム等が好ましく用いられる。
また、非イオン性界面活性剤としては、例えば、エレクトロストリッパー(登録商標)TS-2、エレクトロストリッパー(登録商標)TS-3(いずれも花王株式会社製)等が挙げられる。
また、シリコーン系滑剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンおよびその変性物、カルボキシル変性シリコーン、αメチルスチレン変性シリコーン、αオレフィン変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、親水性特殊変性シリコーン、オレフィンポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、アルコール変性シリコーン等が挙げられる。
(コンパウンドの特性)
以上のような本実施形態に係るコンパウンドは、比較的高い耐荷重を有している。以下、耐荷重の測定方法について説明する。
まず、コンパウンドを乾燥させ、体積0.25cmのペレット(好ましくは5mm角のペレット)になるように解砕する。必要に応じて乾燥前に成形するようにしてもよい。
次いで、得られたペレットに、デジタルフォースゲージの円形平型圧縮治具を押し当てる。この治具の圧接面の直径は40mmとする。そして、ペレットが挫屈するときの荷重(耐荷重)を測定する。
次いで、同様の耐荷重の測定を5つ以上のペレットについて順次行い、平均値を算出する。この平均値をもって耐荷重を評価する。
本実施形態に係るコンパウンドは、乾燥されて体積0.25cmのペレット(好ましくは5mm角のペレット)にされたとき、耐荷重が4kgf(39.2N)以上6kgf(58.8N)以下であるのが好ましく、4.2kgf以上5.5kgf以下であるのがより好ましく、4.3kgf以上5kgf以下であるのがさらに好ましい。このようなコンパウンドは、必要かつ十分な流動性を実現するとともに、成形後の十分な保形性を有する成形体の実現に寄与する。このため、最終的に寸法精度が高い焼結体を製造することができる。
すなわち、ペレットの耐荷重が前記下限値を下回ると、成形体の形状によっては成形後の保形性が不十分になって、焼結体の寸法精度が低下するおそれがある。一方、ペレットの耐荷重が前記上限値を上回ると、射出成形するためにコンパウンドを軟化させたとき、成形体の形状によってはコンパウンドの流動性が低下するおそれがある。これにより、目的とする形状に成形することができず、焼結体の寸法精度が低下するおそれがある。
なお、コンパウンドには、金属粉末およびバインダーの他に、例えば溶媒(分散媒)、防錆剤、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。これらの添加剤の添加量は、コンパウンドの5質量%以下程度であるのが好ましく、3質量%以下程度であるのがより好ましい。
<コンパウンドの製造方法>
次に、コンパウンドの製造方法の一例について説明する。
コンパウンドは、金属粉末とバインダーとを混練することによって製造される。
混練には、例えば、加圧または双腕ニーダー式混練機、ロール式混練機、バンバリー(登録商標)型混練機、1軸または2軸押出機等の各種混練機を用いることができる。
混練条件は、用いる金属粉末の粒径、金属粉末とバインダー組成物との混合比等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、混練温度が50℃以上200℃以下で、混練時間を15分以上210分以下程度とすることができる。
<焼結体の製造方法>
次に、コンパウンドを用いて焼結体を製造する方法の一例について説明する。
焼結体の製造方法は、コンパウンドを所望の形状に成形する成形工程と、得られた成形体を脱脂する脱脂工程と、得られた脱脂体を焼成する焼成工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
(成形工程)
まず、上述したようなコンパウンドを用いて、成形を行う。これにより、所望の形状、寸法の成形体を製造する。
なお、成形に先立って、コンパウンドには必要に応じてペレット化処理を施すようにしてもよい。ペレット化処理は、ペレタイザー(登録商標)等の粉砕装置を用い、コンパウンドを粉砕する処理である。これにより得られたペレットは、平均粒径が1mm以上10mm以下程度とされる。
次いで、得られたペレットを射出成形機に投入し、成形型に射出して成形する。これにより、成形型の形状が転写された成形体が得られる。上述したようなコンパウンドは、流動性と成形後の保形性とを両立し得るものであるため、得られた成形体は、目的とする形状を有し、かつ、変形が少ないものとなる。
なお、製造される成形体の形状寸法は、以後の脱脂および焼結による収縮分を見込んで決定される。
このようにして得られた成形体(本発明の金属粉末射出成形体の実施形態)は、上述したようなコンパウンド(本発明の金属粉末射出成形用コンパウンドの実施形態)を用いているため、寸法精度および保形性が高いものとなる。このため、最終的に寸法精度および機械的強度が高い焼結体の製造を可能にする。
なお、得られた成形体に対して、必要に応じ、機械加工、レーザー加工等の後加工を施すようにしてもよい。
(脱脂工程)
次に、得られた成形体に対して脱脂処理(脱バインダー処理)を施す。これにより、成形体中に含まれバインダーを除去(脱脂)して、脱脂体が得られる。
この脱脂処理は、特に限定されないが、非酸化性雰囲気中、例えば真空または減圧状態下(例えば1×10-6Torr以上1×10-1Torr以下(1.33×10-4Pa以上13.3Pa以下))、または、窒素ガス、アルゴンガス等のガス中で、熱処理を行うことによりなされる。
また、脱脂工程における処理温度は、特に限定されないが、100℃以上750℃以下であるのが好ましく、150℃以上700℃以下であるのがより好ましい。
また、脱脂工程における処理時間は、0.5時間以上20時間以下であるのが好ましく、1時間以上10時間以下であるのがより好ましい。
また、このような熱処理による脱脂は、種々の目的(例えば、脱脂時間の短縮等の目的)で、複数の段階に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で脱脂するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
また、上記のような脱脂処理後に、得られた脱脂体に対して、例えば、ばり取りや、溝等の微小構造の形成等の目的で、各種後加工を施してもよい。
なお、バインダーは、脱脂処理において成形体から完全に除去されなくてもよく、例えば、脱脂処理の完了時点で、その一部が残存していてもよい。
(焼成工程)
次に、脱脂処理が施された脱脂体を焼成する。これにより、脱脂体が焼結し、焼結体が得られる。つまり、この焼結体は、金属粉末射出成形体の焼結物である。このようにして得られた焼結体(本発明の焼結体の実施形態)は、上述したような成形体(本発明の金属粉末射出成形体の実施形態)を用いているため、寸法精度および機械的強度が高いものとなる。
焼成条件は、特に限定されないが、非酸化性雰囲気中、例えば真空または減圧状態下(例えば1×10-6Torr以上1×10-2Torr以下(1.33×10-4Pa以上133Pa以下))、または、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で、熱処理を行うことによりなされる。これにより、金属粉末が酸化してしまうのを防止することができる。
焼成工程は、2段階またはそれ以上に分けて行ってもよい。これにより、焼結の効率が向上し、より短い焼成時間で焼成を行うことができる。
また、焼成工程は、前述の脱脂工程と連続して行うようにしてもよい。これにより、脱脂工程は、焼結前工程を兼ねることができ、脱脂体に予熱を与えて、脱脂体をより確実に焼結させることができる。
焼成温度は、金属粉末の種類に応じて適宜設定されるが、1000℃以上1400℃以下であるのが好ましく、1050℃以上1350℃以下であるのがより好ましい。上述したようなコンパウンドを用いることにより、比較的低温の焼成温度であっても、十分に高密度の焼結体を得ることができる。
また、焼成時間は、0.5時間以上20時間以下であるのが好ましく、1時間以上15時間以下であるのがより好ましい。
また、このような焼成工程は、種々の目的(例えば、焼成時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で焼成するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
また、上記のような焼成工程後に、得られた焼結体に対して、例えば、ばり取りや、溝等の微小構造の形成等の目的で、機械加工、放電加工、レーザー加工、エッチング等を施してもよい。
なお、得られた焼結体には、必要に応じて、HIP処理(熱間等方加圧処理)等を施すようにしてもよい。これにより、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
上記のようにして得られた焼結体は、いかなる目的で用いられるものであってもよく、その用途としては、例えば各種構造部品等が挙げられる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、金属粉末射出成形体は、2種類以上のコンパウンドを用いて成形されてなるものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.焼結体の製造
(実施例1)
まず、金属粉末として、水アトマイズ法により製造された平均粒径4μmのオーステナイト系ステンレス鋼粉末(SUS316L)を用意した。
次いで、表1に示す組成のバインダーとステンレス鋼粉末とを混合し、加圧ニーダー(混練機)にて100℃×60分の条件で混練した。これによりコンパウンドを得た。この混練は、窒素雰囲気中で行った。なお、バインダー組成物とステンレス鋼粉末との混合比を表1に示す。
次に、得られたコンパウンドをペレタイザー(登録商標)により粉砕して、平均粒径5mmのペレットを得た。
次いで、得られたペレットを用い、材料温度:130℃、射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm)という成形条件で、射出成形機にて成形を行った。これにより、成形体を得た。なお、成形体の形状は、直径0.5cm×高さ0.5cmの円柱形状とした。
次に、成形体に対して、温度:500℃、時間:1時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という脱脂条件で脱脂処理を施した。これにより、脱脂体を得た。
次に、脱脂体に対して、温度:1270℃、時間:3時間、雰囲気:窒素ガス(大気圧)という焼成条件で焼成処理を施した。これにより、焼結体を得た。
(実施例2~16および比較例1~4)
金属粉末およびバインダーを表1、2に示すように変更した以外は、それぞれ実施例1と同様にして造粒粉末を得た。
なお、表1、2における略称は、以下のことを指している。
E-GMA-VA:エチレン-グリシジルメタクリレート-酢酸ビニル共重合体
E-GMA-MA:エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体
2.コンパウンドの評価
各実施例および各比較例で得られたペレットにデジタルフォースゲージの圧縮治具を押し当て、ペレットが挫屈するときの荷重を測定した。なお、この測定は、5つのペレットについて順次行い、平均値を算出し、その平均値をコンパウンドの耐荷重とした。
測定結果を表1、2に示す。
3.成形体の評価
3.1 充填不良の評価
まず、各実施例および各比較例において、それぞれ10個ずつの成形体を作製した。
次いで、各成形体の外観を目視にて観察した。そして、充填不良について以下の評価基準に照らして評価した。
<充填不良の評価基準>
◎:充填不良の発生数が0個である
○:充填不良の発生数が1個である
△:充填不良の発生数が2個または3個である
×:充填不良の発生数が4個以上である
3.2 変形量の評価
まず、成形直後の成形体の寸法を測定した。
次いで、成形体を24時間静置した。
次いで、静置後の各成形体の寸法を測定した。そして、成形直後の寸法からのずれ(変形量)について、以下の評価基準に照らして評価した。
<変形量の評価基準>
◎:変形量が相対的に非常に小さい
○:変形量が相対的にやや小さい
△:変形量が相対的にやや大きい
×:変形量が相対的に非常に大きい
4.焼結体の評価
まず、各実施例および各比較例で得られた焼結体の寸法を測定した。
次いで、測定した寸法の設計値からのずれを算出した。そして、設計値からのずれ(寸法精度)について、以下の評価基準に照らして評価した。
<寸法精度の評価基準>
◎:寸法精度が相対的に非常に高い
○:寸法精度が相対的にやや高い
△:寸法精度が相対的にやや低い
×:寸法精度が相対的に非常に低い
Figure 0007094657000001
Figure 0007094657000002
表1、2から明らかなように、各実施例で得られた成形体は、充填不良および変形量が少ないことが認められた。このことから、本発明によれば、寸法精度および保形性が高い金属粉末射出成形体が得られることが裏付けられた。また、このような成形体は、寸法精度の高い焼結体を実現し得ることもわかった。
なお、各表には記載していないが、ステンレス鋼粉末の10体積%を平均粒径6μmのアルミナ粉末で置換した混合粉末を用いた以外、実施例1~16および比較例1~4と同様にして評価を行った。
その結果、実施例1~16および比較例1~4と同様の傾向を示す評価結果が得られた。

Claims (2)

  1. 平均粒径1μm以上10μm以下の金属粉末と、
    炭化水素系ポリマー、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、および、環状エーテル基を含有するコポリマーを含み、含有率が30体積%超38体積%未満であるバインダーと、
    を含ことを特徴とする金属粉末射出成形用コンパウンド。
  2. 請求項1に記載の金属粉末射出成形用コンパウンドの射出成形体であることを特徴とする金属粉末射出成形体。
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