JP2016211043A - タービンホイールの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】寸法精度に優れたタービンホイールの製造方法を提供する。
【解決手段】金属粉末に有機バインダを添加し加熱混合した後、粉砕またはペレット化して射出成形材料を得る加熱混練ステップS200と、射出成形材料をタービンホイールの形状に射出成形して成形体を作製する射出成形ステップS300と、脱脂雰囲気下において作製された成形体を脱脂する脱脂ステップS400と、脱脂ステップS400後で焼結雰囲気下において脱脂された成形体を焼結して焼結品を作製する焼結ステップS500とを含み、脱脂ステップS400以降において、成形体を平板形状のセッター(見掛け気孔率、シリカの重量比率および平面度に特徴を備える)に載置して処理することにより、焼結品を2次加工することなく最終製品として完成させる。
【選択図】図4

Description

本発明は自動車エンジン等に用いられるターボチャージャに組み込まれるタービンホイールを製造する方法に関し、特に、金属粉末射出成形(MIM法(Metal Injection Molding法)と記載する場合がある)により寸法精度の高い焼結品を得ることにより、焼結品を機械加工(2次加工)することなく、焼結品を最終製品(最終完成品)であるタービンホイールとして製造する方法に関する。
自動車エンジン等に用いられる過給機(ターボチャージャ)は、低速回転時においてもエンジンが効率よく出力を得ることができるように排気ガスの流速を増幅させ、この排気エネルギーを利用して排気側のタービンが回転することで、排気側タービンに直結された吸気側のタービンを回転させ、強制的に空気をエンジン内に取り込むように設計されている。
一般に、車両などに搭載される過給機は、高温側タービンホイール、低温側コンプレッサーホイール、および、両者を接続するロータ軸の3つの部品から構成されている。
高温側タービンホイールは、耐熱性の金属などの鋳造材からなりかつ渦巻き状の複数のブレードおよびロータ軸連結部を有する。また、低温側コンプレッサーホイールは、アルミニウム合金などの鋳造材からなり、かつ、渦巻き状で複数の羽根を有する。
一般的に各ブレードは先端に行くほど薄肉になっている。
このタービンホイールに関しては、鋳造により製造される方法が採られてきたが、この鋳造による製造よりも寸法精度を高めることができる金属粉末射出成形により製造される方法も開発されており、たとえば、特許第4240512号公報(特許文献1)は、この金属粉末射出成形によるタービンホイールの製造方法を開示する。この特許文献1に開示されたタービンホイールの製造方法は、中心軸部から放射状に伸び、かつ、上端が回転方向に屈曲している複数の曲面ブレードを有し、使用時には中心軸部底面側に回転軸となるロータ軸が連結される金属製のタービンホイールを製造する方法であって、金属粉末射出成形法により製造した、所望する最終製品と近似した形状を有する焼結品を切削加工する工程とプレス加工する工程を含むこと、前記焼結品が最終製品の目標値に対して、ブレードの上端部先端の高さが±1.0%の範囲内にあり、ブレードのピッチが±0.3°の範囲内にあり、かつ焼結密度が相対密度95%以上であること、前記切削工程において、前記中心軸部の底面に、タービンホイールの回転中心を中点するロータ軸連結部を機械加工すること、前記プレス工程は、前記回転中心を中点として前記焼結品を固定した後、固定した焼結品に対し、放射状に配置された複数の矯正ピンを同時に同期させながら、焼結品の中心軸部に向かってスライドさせることによって行われること、前記矯正ピンは、各ブレード間の空間形状に対応する形状を有し、ブレードの枚数に応じて等間隔に配置され、各ブレード面に沿って、各ブレードを両側から挟み込むように中心軸部方向に挿入されることを特徴とする。このタービンホイールの製造方法によると、薄肉のブレードを有するタービンホイールであっても、寸法精度良く製造することができる。
特許第4240512号公報
しかしながら、特許文献1の第0009段落にも記載されているように、この製造方法では、所望する最終製品をMIM法から直接得ることができない。すなわち、MIM法によって、所望する最終製品と一定の関係を有する焼結品を準備し、次に、ロータ軸連結部を切削加工して中心位置を決め、その後、最終製品のブレード間の空間形状に対応する形状を有する矯正ピンを、各ブレード間に同時に同期させながらプレス挿入することにより、ブレードの変形および各ブレードのピッチ間隔を整えてブレードの寸法精度を±0.0
5mm以下にするものであって、従来の鋳造品と比較して同軸度、センターバランス精度の高いタービンホイールを得ることができる。このため、MIM法により製造された焼結品に対して、矯正ピンを用いたプレス加工(機械加工、2次加工)しなければならない。このように、この製造方法では、焼結後の2次加工が必要であるために製造コストが高くなりがちという問題点があった。
本発明は、従来技術の上記の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、焼結後の2次加工を不要としてMIM法による焼結品を最終製品として完成させ、製造コストを下げつつ、羽根先端の厚みが非常に薄く(たとえば0.3mm以下)寸法精度の高い(たとえばアンバランス量が小さい)タービンホイールを製造する方法を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明に係るタービンホイールの製造方法は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るタービンホイールの製造方法は、中心軸部から放射状に伸び、かつ、上端が回転方向に屈曲している複数の曲面ブレードを有し、使用時には中心軸部底面側に回転軸となるロータ軸が連結される金属製のタービンホイールを製造する。この方法は、金属粉末に有機バインダを添加し加熱混合した後、粉砕またはペレット化して射出成形材料を得る加熱混練ステップと、射出成形材料をタービンホイールの形状に射出成形して成形体を作製する射出成形ステップと、脱脂雰囲気下において、作製された成形体を脱脂する脱脂ステップと、脱脂ステップ後、焼結雰囲気下において、脱脂された成形体を焼結して焼結品を作製する焼結ステップと、を含み、脱脂ステップ以降において、成形体をセッターに載置して処理することにより、焼結品を最終製品として完成させることを特徴とする。
好ましくは、セッターの見掛け気孔率が15%〜18%であるように構成することができる。
さらに好ましくは、セッターの主成分がアルミナおよびシリカであって、シリカの重量比率が3%〜10%であるように構成することができる。
さらに好ましくは、セッターの平面度が0.02mm〜0.1mmであるように構成することができる。
本発明によれば、焼結後の2次加工を不要としてMIM法による焼結品を最終製品として完成させ、製造コストを下げつつ、羽根先端の厚みが非常に薄く(たとえば0.3mm以下)寸法精度の高い(たとえばアンバランス量が小さい)タービンホイールを製造することができる。
本発明の実施の形態に係るタービンホイールの製造方法により製造されるタービンホイールの三面図および斜視図である。 本発明の実施の形態に係るタービンホイールの製造方法において用いられるセッターの斜視図である。 本発明の実施の形態に係るタービンホイールの製造方法において用いられるセッターにタービンホイールが載置された斜視図および平面図である。 本発明の実施の形態に係るタービンホイールの製造方法のフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態に係るタービンホイールの製造方法について、図面に基づき詳しく説明する。
ターボチャージャは、大気より高い圧力でエンジンの吸気口に空気を供給するための周知の装置である。ターボチャージャは、タービンハウジング内に回転可能なシャフト(ロータ軸)に取り付けられた排気ガス駆動のタービンホイール10を本質的に具えている。このターボチャージャに使用されるタービンホイール10は図1に示すとおり、耐熱性の
金属からなりかつ渦巻き状で複数のブレード20およびロータ軸連結部40を有する。また、通常、中心軸部30の上端に、回転中心を中点とするボス部50が設けられている。
タービンホイール10の大きさ、ブレード20の形状、ブレード20の枚数は使用するエンジンの排気量等によって異なる。本実施の形態に係るタービンホイールの製造方法において用いられるセッター100およびセッター200の斜視図を図2に、セッター100およびセッター200にタービンホイール10が載置された斜視図および平面図を図3に、本実施の形態に係るタービンホイールの製造方法のフローチャートを図4に、それぞれ示す。図4に示すように、この製造方法は、脱脂ステップ(脱脂工程)および焼結ステップ(脱脂工程)を含む。
タービンホイール10の従来の製造方法は、所望の最終製品と近似した形状を有する焼結品をまず製造して、この焼結品を2次加工して最終製品であるタービンホイール10を製造していた。すなわち、図4の焼結ステップS500の後に2次加工ステップを経て最終製品(最終完成品)を製造していた。一方、本実施の形態に係る製造方法においては、この焼結品の2次加工ステップを必要としないで、所望の最終製品の形状を有する焼結品を製造する。この焼結工程(脱脂工程を含み得る)において最終製品の形状とするためには、焼結品に高い寸法精度が要求され、このために、脱脂ステップS400以降(より詳しくは脱脂ステップS400および焼結ステップS500)において、タービンホイール10(ここではまだ成形品)を平板状のセッター100またはセッター200に載置して処理することを特徴とする。
このセッター100およびセッター200は、通常、鉄、ステンレス系、銅等の非鉄合金、タングステン系超重合金などの焼結または熱処理に用いられ、アルミナ、アルミナ・シリカなどの耐火物が使用されている。焼結または熱処理時に使用するアルミナ、アルミナ・シリカなどの耐火物は、処理体と反応しないことから広範囲で使用されている。このセッター100またはセッター200には射出成形ステップS300で得られた成形体が載置されて、成形体が載置された状態のセッター100またはセッター200が脱脂ステップS400以降(より詳しくは脱脂ステップS400および焼結ステップS500)において使用される処理炉内にセットされて、脱脂ステップS400および焼結ステップS500が実行される。
このセッター100またはセッター200は、後述する特徴を備えるために、焼結工程(脱脂工程を含み得る)において処理された焼結品が高い寸法精度を実現できて、焼結品は2次加工を必要としない最終製品の形状とすることができる。すなわち、本実施の形態に係るタービンホイールの製造方法は、図4に示す脱脂ステップS400以降において、成形体をセッター100またはセッター200に載置して処理することにより、焼結品を最終製品として完成させることを特徴とする。このように焼結品が2次加工を必要としないで高い寸法精度を実現するためのセッター100またはセッター200について詳しく説明する。
図2に示すセッター100およびセッター200の斜視図および図3に示すセッター100およびセッター200にタービンホイール10が載置された斜視図および平面図を参照してセッター100またはセッター200について詳しく説明する。これらのセッター100およびセッター200は、図2および図3に示すように、いずれも平板形状を備えて、その上面にタービンホイール10が載置される。面取り部を備えない平板形状のセッター200に対して、セッター100は、上面(および/または下面)の四辺が面取りされた辺面取り部120および四隅の角が面取りされた角面取り部130を備える点が異なる。そして、図3に示すように、これらのセッター100またはセッター200に適宜な数の処理対象物であるタービンホイール10が載置される。
これらのセッター100またはセッター200は、形状的な特徴よりも組成的に顕著な特徴としての、見掛け気孔率(第1の特徴)、主成分(第2の特徴)、平面度(第3の特徴)を備える。
<第1の特徴>
セッター100およびセッター200の見掛け気孔率は、15%〜18%であることを
特徴とする。ここで、見掛け気孔率とは、これらのセッター100およびセッター200はその内部に気孔を備えるが、その気孔の中で外気に対して開いている気孔(外部に通じている開放気孔)の容積率(全体積に対する開放気孔の合計容積の比率)を意味する。この見掛け気孔率が高いほど脱脂ステップS400において(有機)バインダの成分が抜けやすいために好ましく(成形体からバインダの成分がガスとして放出されやすく焼結品の寸法精度が向上するために好ましく)、この見掛け気孔率が低いと脱脂ステップS400において(有機)バインダの成分が抜けにくくセッター100またはセッター200に付着して焼結ステップS500において成形品を焼結する際に成形品がセッターに付着して焼結品の寸法精度を低下させてしまう。ただし、見掛け気孔率が高すぎるとセッター100およびセッター200の強度が低下してしまうので好ましくない。このため、本実施の形態においては、見掛け気孔率は15%〜18%であることが好ましい範囲としている。
<第2の特徴>
セッター100およびセッター200の主成分は、アルミナ(酸化アルミニウム、Al23)およびシリカ(二酸化ケイ素、SiO2)であって、シリカの重量比率が3%〜10%であることを特徴とする。ここで、セッター100およびセッター200の主成分であるアルミナおよびシリカ以外には酸化第二鉄(Fe23)および酸化ナトリウム(Na2O)が微量(重量比率で0.05%〜0.1%程度)含まれる。シリカの重量比率が低いほど不純物の発生を低下させることができ、シリカの重量比率が高いほど不純物が発生してその不純物がセッター100またはセッター200に付着して焼結品の寸法精度を低下させてしまう。ただし、シリカの重量比率が低すぎると相対的にアルミナの重量比率が上昇してしまいセッター100およびセッター200の製造コストが上昇してしまうので好ましくない。このため、本実施の形態においては、シリカの重量比率は3%〜10%であることが好ましい範囲としている。
<第3の特徴>
セッター100およびセッター200の平面度は、0.02mm〜0.1mmであることを特徴とする。ここで、平面度とは、JIS規格で規定された、互いに平行な二つの平面の間の空間を表すものであって、たとえば、この平面度は、完全に平坦の出た基準原器(オプチカルフラット)にセッター100またはセッター200を接触させて短波長光源を当てて光学的に発生した干渉縞により平面度を測定したり、オプチカルフラットにレーザーを反射させてセッター100またはセッター200に発生した干渉縞を解析してセッター100およびセッター200に非接触で測定したり、接触式三次元測定器により測定したりする。セッター100およびセッター200の平面度が高いほど焼結品の寸法精度を向上させ、平面度が低いほど焼結品の寸法精度を低下させてしまう。ただし、平面度が高すぎるとセッター100およびセッター200の製造コストが上昇してしまうので好ましくない。このため、本実施の形態においては、平面度は0.02mm〜0.1mmであることが好ましい範囲としている。
以下において、本実施の形態に係るタービンホイールの製造方法における上記したセッター100およびセッター200以外について説明する。なお、以下の説明においては、その一部が特許文献1の内容と重複するとともに、以下の説明において記載していない部分の中で特許文献1の内容を流用できる場合がある。
タービンホイール10は、原料となる金属を粉体としたものを使用し、これに必要量の有機バインダを添加して得られる成形材料を準備して(図4のS100)、あらかじめ製品の焼結後の収縮率を考慮した金型で成型し成形体を作成する。この場合において、金型は、製品の焼結後の収縮率を考慮して焼結後の製品が最終製品の寸法精度を満足するように(2次加工工程が不要となるように)金型で成型し成形体を作成する。このため、成形品を焼結した後の焼結品が最終完成品となる(図4のS600)。金型は成形材料の湯口を図1のボス部50またはロータ軸連結部40に設けて成形材料を注入する。ブレードの金型構造は各ブレードがアンダーカットにならないように設計された形状を有し、ボス中心部から放射状に直線的に入れ子が移動することにより金型による連続成形を可能にする。
タービンホイールで用いられる金属は耐食性があり耐熱鋼の金属材料からなる。Ni基合金であるインコネルが主に用いられる。中でもインコネル713C(Ni−12.5Cr−4.2Mo−6.1Al−0.8Ti−2.0Nb)が一般的に用いられる。
インコネル金属材料からなる金属粉末として、通常水アトマイズまたはガスアトマイズ法より製造された合金粉末を用いるが、これらアトマイズ法により作られた粉末の合金粉末以外に、焼結時に合金成分となるように調整し元素粉末を組成にあわせて添加して用いても良い。一般的には水アトマイズ粉末の方がガスアトマイズ粉末よりも大量に生産できるため、製造コストも安価になるが、粉末形状が異形状になりやすいために、タップ密度が低くなりやすく、また粉末中の酸素量も高くなる。これに対してガスアトマイズ粉末の製造コストは高くなるものの、球形の粉末を得ることが容易でタップ密度が高くなる特徴がある。このため、コストとタップ密度を勘案して、水アトマイズ粉末とガスアトマイズ粉末を混合して用いても良い。
また、軽量で高温時の耐熱強度が高いチタンアルミ合金が用いられる。チタンとアルミの比率はTiAlとなる組成を用いて、このチタンアルミにクロム、バナジウム、マンガン、ニオブを総量で1〜5%添加すると延性、加工性が向上する。
チタンアルミ金属材料からなる金属粉末として、プラズマアーク法、ガスアトマイズ法および粉砕法により製造された合金粉末を用いるが、これらにより作られた粉末の合金粉末以外に、焼結時に合金成分となるように調整し元素粉末を組成にあわせて添加して用いても良い。一般的には粉砕粉末の方がプラズマアーク法、ガスアトマイズ粉末よりも大量に生産できるため、製造コストも安価になるが、粉末形状が異形状になりやすいために、タップ密度が低くなりやすく、また粉末中の酸素量も高くなる。これに対してプラズマアーク粉末、ガスアトマイズ粉末の製造コストは高くなるものの、球形の粉末を得ることが容易でタップ密度が高くなる特徴がある。このため、コストとタップ密度を勘案して、プラズマアーク粉末、ガスアトマイズ粉末に粉砕粉末を混合して用いても良い。
本実施の形態における金属粉末の平均粒径は1〜30μmが好ましい。平均粒径が1μmを下回る場合には、粉末の表面積が増えることでバインダ添加量が増加し、脱脂時の変形が大きくなる。また、バインダ量が多くなると、焼結時の収縮率も大きくなり、焼結後の寸法ばらつきも大きくなり、後工程のプレス工程で寸法精度の高い焼結品を得ることは困難である。粉末粒径が30μmを越える場合には、焼結密度(相対密度)95%以上を安定して得ることが困難になり、強度が著しく低下し、製品として使用することができない。より好ましい平均粒径は、5〜12μmであり、さらに望ましくは8〜10μmである。本実施の形態において、平均粒径とは、レーザー回折・散乱法を使用した粒度分布測定装置を用いて、測定した重量累積50%の平均径を意味する。粒度分布測定装置としては、島津製作所製SALD−2000型を用いることができる。
また、有機バインダとして、ポリアセタールを5〜40Vol%、およびポリプロピレンを5〜40Vol%含有する有機バインダを用いる。有機バインダにおいて、ポリアセタールおよびポリプロピレンを用いることで、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、アクリル樹脂を用いた従来のバインダと比較して脱脂時の変形量が抑えられる。
ポリアセタールは成形体の強度を高め、焼結における600℃以下での成形体の変形を防止し、かつ焼結後において炭化物が残留しない物質として不可欠である。ポリプロピレンは成形体にじん性を付与し、焼結の割れおよび添加した低融点化合物の分離を阻止する。そして、ポリプロピレンもまた、焼結後において炭化物が残留しないという特質をもっている。
ポリアセタール、ポリプロピレンの添加量が各々有機バインダの全量に対して5Vol%未満の場合には脱脂時の変形が大きくなり、規定する焼結後の寸法精度を得ることができない。またポリアセタール、ポリプロピレンの添加量が各々有機バインダの全量に対して40Vol%を超えると、成形時の粘度が高くなり金型内に成形材料を完全に充填することができない。
より好ましいポリアセタールの含有量は10〜30Vol%であり、より好ましいポリプロピレンの含有量は10〜30Vol%である。
ポリアセタールおよびポリプロピレン以外の材料としては下記の有機材料を用いることができる。
流動性を付与し、脱脂性を向上するために脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、フタル酸エステル、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、モンタン系ワックス、ウレタン化ワックス、無水マレイン酸変性ワックスおよびポリグリコール系化合物等が用いられる。特に好ましい材料としてパラフィンワックス、脂肪酸エステル、ポリプロピレンワックスが挙げられる。
また、成形時の流動性および成形体に柔軟性を付与するためにポリエチレン、アモルファスポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、グリシジルメタクリレート樹脂等を用いることができる。特に好ましい材料として、ポリエチレン、アモルファスポリオレフィンが挙げられる。
上記流動性、脱脂性を向上させるために、併せて上記流動性および柔軟性を付与するために、金属粉末と有機バインダとの全量に対し、有機バインダを30〜60体積%(Vol%)とすることが好ましく、30〜50体積%とすることがより好ましい。
上記割合とした有機バインダと金属粉末を160〜180℃程度で2時間程度加熱混練し、金属粉末を有機バインダと完全に分散混合させる(図4のS200)。この後、取り出して押し出し機または粉砕機で直径5mm程度のペレット状にしてこれを用いて成形材料として、射出成形する(図4のS300)。
そして、成形においては、焼結後の最終完成品の寸法を考慮して金型形状を決定する必要がある。これらの寸法は焼結後または熱間等方圧加圧法に得られる寸法であって、焼結密度により寸法が異なるため、金型設計は以後の寸法変化を十分に考慮する必要がある。このためには、金型の寸法は上記寸法精度を考慮して設計する必要があり、さらに、成形から焼結への収縮率をあらかじめ計算しておく必要がある。
従来の有機バインダ系では脱脂工程中で変形を生じ、上記焼結品の寸法範囲で製品を得ることは非常に困難であるが、上記した金属粉末の粒径、バインダ量、バインダ成分とすることにより、従来よりも寸法精度の高い焼結品をMIM法により製造することができる。さらに、焼結工程(脱脂工程を含み得る)においてセッター100またはセッター200を用いて処理された焼結品が高い寸法精度を実現できて、焼結品は2次加工を必要としない最終製品の形状とすることができる。
金型は、射出成形機に取り付けて成形を行うが、得られる成形体の取り数は一つの金型で1個取りを行うことが一般的である。製品の大きさに合わせて、射出成形機の容量を適宜調節する。一般的には型締め力50トン〜150トン程度の成形機を用いて成形を行う。成形体に気泡、クラック等の不良が発生しないように射出速度、圧力を調整するとともに、金型には金型内の空気および成形材料から発生するガスを効果的に逃がすためのガス逃げを設ける必要がある。これら有効なガス逃げが無い場合には、成形体中に空気または成形材料から発生するガスが取り込まれて、成形体に気泡が生じる。
得られた成形体を脱脂炉に入れ、添加した有機バインダを除去する(図4のS400)。有機バインダを除去する脱脂炉は減圧不活性ガス雰囲気、大気圧不活性ガス雰囲気および大気圧水素ガス雰囲気のいずれかを用いて行うが、脱脂機能を具備した焼結装置の場合には脱脂焼結を一貫して行うことができる。また、脱脂炉にはバッチ式の脱脂炉または連続式(ベルト式、プッシャー式、ウォーキングビーム式)脱脂炉を用いることができる。特に脱脂の際には変形量が大きくなることを勘案して、変形を最小限に食い止めるように成形体の形状に沿った形状の治具を用いて脱脂を行うことが効果的である。この脱脂ステップS400以降(脱脂ステップS400および焼結ステップS500)において、上記した<第1の特徴>、<第2の特徴>および<第3の特徴>を備えたセッター100またはセッター200に成形品が載置されて処理される。
インコネル、チタンアルミ合金(チタンとアルミの混合粉末を含む)ともに脱脂雰囲気は減圧不活性ガス雰囲気、大気圧不活性ガス雰囲気および大気圧水素雰囲気のいずれかでインコネルの場合には最高温度800℃以下で行われ、チタンアルミ合金の場合には最高
温度600℃以下で行われる。
脱脂雰囲気が空気中の場合には300℃以上で粉末が酸化し、焼結後の酸素量が高くなることで、焼結品強度に大きな影響を及ぼす。このことから、脱脂雰囲気は減圧不活性ガス雰囲気、大気圧不活性ガス雰囲気および大気圧水素雰囲気が用いられる。インコネルの場合、不活性ガスには窒素またはアルゴンが使用されるが、コストを考慮して窒素ガスの使用が望ましい。チタン合金の場合には材料の窒化を考慮して、アルゴンもしくは水素で行うことが望ましい。脱脂時の昇温速度は脱脂時の変形を考慮して室温から400℃以下においては50℃/hr以下が望ましい。また、脱脂時には成形体の変形を考慮した治具を用いることで、成形体の脱脂時の変形を抑えることができる。
インコネル脱脂の温度は800℃以下、チタンアルミ合金の場合には600℃以下であるが、300℃程度では有機バインダが30%程度残留しやすく、600℃以上では有機バインダが完全に除去されやすいため、焼結工程に移動させる際に成形体が崩れる恐れがあり、より好ましい脱脂温度は最高400℃〜500℃である。また、これらの成形体の崩れを防止する方法として、脱脂機能を具備した焼結炉を用いると効果的であり、脱脂終了後も温度を下げることなく焼結に移行することができる。また、連続式(ベルト式、プッシャー式、ウォーキングビーム式)脱脂炉と同じく連続式(ベルト式、プッシャー式、ウォーキングビーム式)焼結炉を連結させることで、脱脂ステップS400から焼結ステップS500を中断させることなく連続で処理を行うことができる。
次に、焼結ステップ(図4のS500)について説明する。
インコネルの焼結工程では焼結雰囲気に減圧不活性ガス雰囲気、大気圧不活性ガス雰囲気、加圧不活性ガス雰囲気および真空雰囲気のいずれかが用いられる。不活性ガスには焼結時の材料にクロムが多く用いられることから、材料の窒化を考慮してアルゴンガスを用いることが好ましい。また焼結温度は1000℃以上1500℃以下で行われるが1000℃未満では焼結が不十分であり、1500℃を超えると焼結時に溶融する。焼結密度が95%以上になるためには1200〜1400℃が望ましく、さらには1250℃〜1380℃が望ましい。また、焼結時の焼結密度の向上と焼結時の寸法ばらつきを考慮して最高温度で2〜4時間程度保持することが望ましい。脱脂工程と同じく、焼結工程においても高温時に変形を生じるため、焼結品の変形を防止するための治具を用いると効果的である。
チタンアルミ合金の焼結工程では焼結雰囲気に減圧不活性ガス雰囲気、大気圧不活性ガス雰囲気および加圧不活性ガス雰囲気および真空雰囲気のいずれかが用いられる。焼結時の酸化、窒化を考慮すると真空中で行うことが好ましい。また焼結温度は800℃以上1300℃以下で行われるが800℃未満では焼結が不十分であり、1300℃を超えると焼結時に溶融する。焼結密度が95%以上になるためには900〜1250℃が望ましく、さらには1000℃〜1200℃が望ましい。また、焼結時の焼結密度の向上と焼結時の寸法ばらつきを考慮して最高温度で2〜4時間程度保持することが望ましい。脱脂工程と同じく、焼結工程においても高温時に変形を生じるため、焼結品の変形を防止するための治具を用いると効果的である。
脱脂、焼結においては生産量を考慮して、多品種少量の場合にはバッチ式の脱脂炉、焼結炉を用い、数量が増加した場合には脱脂、焼結をプッシャー式連続炉、ウォーキングビーム式連続炉、ベルト式連続炉を用いて連続で処理する工程を用いることで生産量を飛躍的に向上することができる。
焼結品の密度を相対密度で95%以上にすることで、高温時での機械的強度、および硬度を保持することができる。相対密度が95%に満たない場合には高温時での機械的強度特に伸びおよび硬度が低下し、高温時の連続使用が困難である。
焼結品の相対密度は、アルキメデス法によって測定することができる。
インコネルおよびチタンアルミ合金ともに脱脂工程(脱脂ステップS400)から焼結工程(焼結ステップS500)にかけて、図1に示す軸連結内径部にあらかじめ焼結後の収縮率を計算した内径に収まるセラミックス治具を設置することにより、内径の寸法精度を向上させることもできる。
得られた焼結品は、さらに焼結密度を高めて機械的強度を向上させ、高温域での機械的強度の信頼性を向上させるために、さらに熱間等方圧加圧法(HIP法)で処理される場合もある。この場合、焼結温度よりも10℃〜100℃程度低温で10MPa〜180MPa程度の高圧で処理を行うことで、内部にピンホールの無い、相対密度98%以上の焼結品を安定して得ることができる。また、インコネルでは焼結工程時に最高6MPa程度の加圧処理を行える焼結HIP装置を用いることで、後工程にHIP法を用いずに相対密度98%以上の焼結品を得ることが可能である。
本実施の形態に係るタービンホイールの製造方法によると、脱脂ステップS400および焼結ステップS500において、上記した<第1の特徴>、<第2の特徴>および<第3の特徴>を備えたセッター100またはセッター200に成形品を載置して脱脂処理および焼結処理するために、焼結品の寸法精度を最終完成品として要求される寸法精度まで高めることができて、焼結品を2次加工することなく最終製品として完成させることができる。
本実施の形態に係るタービンホイールの製造方法により、焼結品を2次加工することなくタービンホイール10を製造した。成型材料および加熱混練条件、射出成形条件、脱脂条件、焼結条件等は下記の2通りとした。タービンホイール10は100個製造し、寸法ばらつきの測定を行うことにより評価した。
[実施例1]
・金属粉末:インコネル713C 平均粒径9.2μm
・有機バインダ組成:ポリアセタール25Vol%、ポリプロピレン25Vol%、アモルファスポリオレフィン10Vol%、パラフィンワックス35Vol%、脂肪酸エステル5Vol%
・金属粉末:67Vol% 有機バインダ33Vol%
・加熱混練:180℃ 2時間
・射出成形条件:射出温度190℃ 金型温度40℃
・成形機:型締め力100ton、金型:1個取り
・脱脂条件:最高温度600℃(窒素)2時間保持
・焼結条件:最高温度1350℃(アルゴン、減圧雰囲気)3時間保持
[実施例2]
・金属粉末:チタンアルミ合金(バナジウム2%添加) 平均粒径12.7μm
・有機バインダ組成:ポリアセタール25Vol%、ポリプロピレン25Vol%、アモルファスポリオレフィン10Vol%、パラフィンワックス35Vol%、脂肪酸エステル5Vol%
・金属粉末:67Vol% 有機バインダ33Vol%
・加熱混練:180℃ 2時間
・射出成形条件:射出温度190℃ 金型温度40℃
・成形機:型締め力100ton、金型:1個取り
・脱脂条件:最高温度500℃(アルゴン)2時間保持
・焼結条件:最高温度1170℃(真空雰囲気)3時間保持
射出成形用の金型は1個取りとし、[実施例1]のインコネルおよび[実施例2]のチタンアルミ合金で製造するタービンホイールは、図1と同様のタービンホイール10の形状とした(ホイールの直径:43mm、ブレード枚数:12枚)。
なお、本実施の形態に係るタービンホイールの製造方法において用いられるセッター100およびセッター200の諸元等は下記の通りとした。
・実施例セッター諸元
見掛け気孔率:16.7%
成分:アルミナ94.93重量%、シリカ4.81重量%、酸化第二鉄0.10重量%、酸化ナトリウム0.16重量%
平面度:0.05mm
上記した実施例セッターを脱脂ステップS400および焼結ステップS500において
用いて、[実施例1]のインコネルおよび[実施例2]のチタンアルミ合金を、図4のS200〜S500の製造フローチャートに従い処理を実行した。[実施例1]のインコネルおよび[実施例2]のチタンアルミ合金のいずれにおいても、焼結後において最終製品に対して求められる寸法を得ることができ、焼結後の2次加工を必要としないで最終製品寸法公差内の製品(図1に示すタービンホイール10)を得ることができた。本実施の形態に係るタービンホイールの製造方法により製造されたタービンホイール10は、焼結後に2次加工しないで、たとえば、ブレード肉厚が薄く(羽根先端の厚みが非常に薄く(たとえば0.3mm以下)であって、底面の平面度、ブレード上端部先端高さ、ブレードのピッチ、ロータ軸連結部の内径同軸度、ロータ軸連結部内径垂直度、アンバランス量等が、最終製品寸法公差内の最終完成品を得ることができた。
[比較例]
以下に示す比較例セッターを脱脂ステップS400および焼結ステップS500において用いて、[実施例1]と同じインコネルおよび[実施例2]と同じチタンアルミ合金を、図4のS200〜S500の製造フローチャートに従い処理を実行した。[実施例1]のインコネルおよび[実施例2]のチタンアルミ合金のいずれにおいても、焼結後において最終製品に対して求められる寸法を得ることができず、焼結品の2次加工が必要であった。
・比較例セッター諸元
見掛け気孔率:13.4%
成分:アルミナ88.43重量%、シリカ11.42重量%、酸化第二鉄0.05重量%、酸化ナトリウム0.10重量%
平面度:0.3mm
以上のようにして、本実施の形態に係るタービンホイールの製造方法によると、脱脂ステップS400および焼結ステップS500において、上記した<第1の特徴>、<第2の特徴>および<第3の特徴>を備えたセッター100またはセッター200に成形品を載置して脱脂処理および焼結処理するために、焼結品の寸法精度を最終完成品として要求される寸法精度まで高めることができて、焼結品を2次加工することなく最終製品として完成させることができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、自動車エンジン等に用いられる過給機のタービンホイールの製造方法に好適であり、焼結後の2次加工を不要としてMIM法による焼結品を最終製品として完成させ、製造コストを下げつつ寸法精度の高いタービンホイールを製造することのできる点で、特に好ましい。
10 タービンホイール
20 ブレード
30 中心軸部
40 ロータ軸連結部
50 ボス部
100、200 セッター
S100 有機バインダ・金属粉末の準備ステップ(準備工程)
S200 加熱混練ステップ(加熱混練工程)
S300 射出成形ステップ(射出成形工程)
S400 脱脂ステップ(脱脂工程)
S500 焼結ステップ(焼結工程)
S600 最終完成品の取り出しステップ(取り出し工程)

Claims (4)

  1. 中心軸部から放射状に伸び、かつ、上端が回転方向に屈曲している複数の曲面ブレードを有し、使用時には中心軸部底面側に回転軸となるロータ軸が連結される金属製のタービンホイールを製造する方法であって、
    金属粉末に有機バインダを添加し加熱混合した後、粉砕またはペレット化して射出成形材料を得る加熱混練ステップと、
    前記射出成形材料を前記タービンホイールの形状に射出成形して成形体を作製する射出成形ステップと、
    脱脂雰囲気下において、作製された前記成形体を脱脂する脱脂ステップと、
    前記脱脂ステップ後、焼結雰囲気下において、脱脂された成形体を焼結して焼結品を作製する焼結ステップと、を含み、
    前記脱脂ステップ以降において、前記成形体をセッターに載置して処理することにより、前記焼結品を最終製品として完成させることを特徴とする、タービンホイールの製造方法。
  2. 前記セッターの見掛け気孔率が15%〜18%であることを特徴とする、請求項1に記載のタービンホイールの製造方法。
  3. 前記セッターの主成分がアルミナおよびシリカであって、シリカの重量比率が3%〜10%であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のタービンホイールの製造方法。
  4. 前記セッターの平面度が0.02mm〜0.1mmであることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のタービンホイールの製造方法。
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