JP2016183273A - 多孔質ポリイミドフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水溶溶剤にポリイミド前駆体が溶解しているポリイミド前駆体溶液と該溶液に溶解しない非架橋樹脂粒子0.1〜5質量%とを含む塗膜を形成した後、該塗膜を乾燥、加熱してイミド化して、ポリイミドフィルムを形成する工程と非架橋樹脂粒子を有機溶剤で溶解、除去して多孔化する工程により得られる多孔質ポリイミドフィルム。
【選択図】なし
Description
特許文献2には、ポリイミドからなる孔を有する有機多孔体と、孔内にカチオン成分とアニオン成分とを含有する電解質材料を保持したイオン伝導体が記載されている。
特許文献3には、ポリアミド酸若しくはポリイミド、シリカ粒子及び溶媒を混合してワニスを製造する、又はシリカ粒子が分散した溶剤中でポリアミド酸若しくはポリイミドを重合してワニスを製造するワニス製造工程、ワニス製造工程で製造されたワニスを基板に製膜後、イミド化を完結させて、ポリイミド−シリカ複合膜を製造する複合膜製造工程、及び、複合膜製造工程で製造されたポリイミド−シリカ複合膜のシリカを除去するシリカ除去工程を有する多孔質ポリイミド膜の製造方法が記載されている。
特許文献4には、シリカ粒子を充填後、焼結して、多孔質シリカ製鋳型を得る多孔質シリカ製鋳型の製造工程、多孔質シリカ製鋳型の製造工程で得られた多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミドを充填するポリイミド充填工程およびポリイミドが充填された多孔質シリカ製鋳型からシリカを除去して、多孔質ポリイミドを得るシリカ除去工程を有する多孔質ポリイミドの製造方法が記載されている。
特許文献6には、ポリイミド等の耐熱性樹脂、ポリオキシアルキレン樹脂を含有する加熱消滅性樹脂粒子、及び、溶媒を混合し、フィルム用樹脂組成物を調製する工程、フィルム用樹脂組成物を製膜する工程、及び、製膜されたフィルム用樹脂組成物を加熱する工程を有する多孔質樹脂の製造方法によって得られた多孔質ポリイミドフィルムが記載されている。
特許文献7には、ポリイミド前駆体溶液に、水溶性のポリエチレングリコールなどの樹脂を溶解した溶液を用いて膜状にしたのち、水などの貧溶剤と接触させ、ポリアミック酸を析出、多孔化を促進し、イミド化する方法も記載されている。
ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂とを含有し、空孔が球状である多孔質ポリイミドフィルムである。
前記ポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂の含有量が多孔質ポリイミドフィルムの全体に対して、0.1質量%以上5質量%以下である請求項1に記載の多孔質ポリイミドフィルムである。
前記ポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂がポリイミド樹脂を溶解しない溶剤に可溶な非架橋樹脂である請求項1又は請求項2に記載の多孔質ポリイミドフィルムである。
水性溶剤に、ポリイミド前駆体が溶解しているポリイミド前駆体溶液と、前記ポリイミド前駆体溶液に溶解しない非架橋樹脂粒子とを含む塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記非架橋樹脂粒子を含む被膜を形成する第1の工程と、
前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記非架橋樹脂粒子を溶解する有機溶剤により、前記非架橋樹脂粒子を除去する処理を含む第2の工程と、
を有する多孔質ポリイミドフィルムの製造方法によって得られた請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミドフィルムである。
請求項2に係る発明によれば、ポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂の含有量が多孔質ポリイミドフィルムの全体に対して、0.1質量%未満である場合に比べて、亀裂の発生が抑制される多孔質ポリイミドフィルムが提供される。
請求項3に係る発明によれば、樹脂として、ポリイミド樹脂のみ含む多孔質ポリイミドフィルムに比べて、ポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂として、ポリイミド樹脂を溶解しない溶剤に溶解する非架橋樹脂を含み、亀裂の発生が抑制される多孔質ポリイミドフィルムが提供される。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂を含有している。そして、空孔の形状が球状である。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、上記構成により、多孔質ポリイミドフィルムの亀裂が抑制される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
さらに、ポリイミド前駆体溶液に、水溶性のポリエチレングリコールなどの樹脂を溶解した溶液を用いて膜状にしたのち、水などの貧溶剤と接触させ、ポリアミック酸を析出、多孔化を促進し、イミド化する方法も知られているが、これらの方法ではポリアミック酸を溶解するNMPなどの溶剤が、水などの貧溶剤に置き換わることで多孔状にポリアミック酸が析出することを利用するもので、空孔径の形状、大きさを制御することは困難である。
また、本実施形態の上記製造方法で得られた多孔質ポリイミドフィルムは、水性溶剤に、ポリイミド前駆体を溶解させているため、ポリイミド前駆体溶液の沸点は100℃程度になる。ポリイミド前駆体と非架橋樹脂粒子とを含む被膜を加熱するに伴って、速やかに溶剤が揮発した後、イミド化反応が進行する。そして、被膜中の非架橋樹脂粒子が熱による変形が生じる前に、流動性を失うとともに有機溶剤や、水に不溶となる。そのため、空孔の形状が保持されやすく、空孔の形状、空孔径等のバラつきが抑制されやすいとも考えられる。
まず、本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
なお、製造方法の説明において、参照する図中では、同じ構成部分には、同じ符号を付している。各図の符号において、1は非架橋樹脂粒子、2は結着樹脂、3は基板、4は剥離層、5はポリイミド前駆体溶液、7は空孔、61はポリイミド前駆体のイミド化を行う過程の被膜(ポリイミド膜)、及び62は多孔質ポリイミドフィルムを表す。
第1の工程は、水性溶剤に、ポリイミド前駆体が溶解しているポリイミド前駆体溶液と、前記ポリイミド前駆体溶液に溶解しない非架橋樹脂粒子とを含む塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記非架橋樹脂を含む被膜を形成する工程である。
第2の工程は、前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記非架橋樹脂粒子を溶解する有機溶剤により、前記非架橋樹脂粒子を除去する処理を含む工程である。
第1の工程は、まず、水性溶剤に、ポリイミド前駆体が溶解しているポリイミド前駆体溶液を準備する。ポリイミド前駆体が溶解しているポリイミド前駆体溶液としては、例えば、ポリイミド前駆体及び有機アミン化合物が溶解しているポリイミド前駆体溶液が好ましい。以下、一例として、ポリイミド前駆体及び有機アミン化合物が溶解しているポリイミド前駆体溶液を用いた例について説明する。次に、基板上に、ポリイミド前駆体溶液と、このポリイミド前駆体溶液に溶解しない非架橋樹脂粒子とを含む塗膜を形成する。そして、基板上に形成された塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び前記非架橋樹脂粒子を含む被膜を形成する。なお、以下の説明において、非架橋樹脂粒子は、ポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂からなる非架橋樹脂粒子である。
そして、上記の基板上に形成された非架橋樹脂粒子層の非架橋樹脂粒子間に、予め準備したポリイミド前駆体溶液を含浸させる。非架橋樹脂粒子層の非架橋樹脂粒子間にポリイミド前駆体溶液を含浸させることにより、非架橋樹脂粒子層の非架橋樹脂粒子間に形成された空隙には、ポリイミド前駆体溶液が充填される。充填を促進するため、ポリイミド前駆体溶液と非架橋樹脂粒子が接触した状態で減圧し、空隙間のガス成分を除去することも好ましい。その後、この塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び非架橋樹脂粒子を含む被膜が基板上に形成される(図1(B)参照)。
また、結着樹脂は、予め上記の有機溶剤に溶解させてもよく、非架橋樹脂粒子と有機溶剤と混合して溶解させてもよい。
非架橋樹脂粒子としては、後述する第2工程で行う非架橋樹脂粒子の除去の点から、有機溶剤に可溶な非架橋樹脂粒子であることが好ましく、ポリイミド樹脂が溶解しない溶剤に可溶な非架橋樹脂粒子であることが好ましい。つまり、多孔質ポリイミドフィルムに含有するポリイミド以外の非架橋樹脂は、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、アセトンなどに可溶な非架橋樹脂であることが好ましい。
また、これらの中でも、非架橋樹脂粒子としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン・(メタ)アクリル樹脂、及びポリスチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
その他の単量体として、酢酸ビニルなどの単官能単量体、エチレングリコールジメタクリレート、ノナンジアクリレート、デカンジオールジアクリレートなどの二官能単量体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能単量体を併用してもよい。
また、ビニル樹脂は、これらの単量体を単独で用いた非架橋樹脂でもよいし、2種以上の単量体を用いた共重合体である非架橋樹脂であってもよい。
なお、樹脂粒子の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。
基板上に形成した非架橋樹脂粒子層の上からポリイミド前駆体溶液を塗布する方法としては、例えば、スプレー塗布法、回転塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、スリットダイ塗布法、インクジェット塗布法等の各種の方法が挙げられる。また、非架橋樹脂粒子層を形成した非架橋樹脂粒子間に、ポリイミド前駆体溶液を含浸させる点で、非架橋樹脂粒子層の上からポリイミド前駆体溶液を塗布した後、減圧して、非架橋樹脂粒子間にポリイミド前駆体溶液を充填させる真空含浸充填法を採用すると、非架橋樹脂粒子間の空隙へポリイミド前駆体溶液が効率よく含浸されるため好適である。
例えば、具体的には、次の方法が挙げられる。まず、水性溶剤に、ポリイミド前駆体及び有機アミン化合物が溶解しているポリイミド前駆体溶液を準備する。次に、このポリイミド前駆体溶液とポリイミド前駆体溶液に溶解しない非架橋樹脂粒子とを混合して、非架橋樹脂粒子が分散されたポリイミド前駆体溶液(以下、「非架橋樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液」とも称する)とする。そして、この非架橋樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布し、ポリイミド前駆体溶液と非架橋樹脂粒子とを含む塗膜を形成する。この塗膜中の非架橋樹脂粒子は、凝集が抑制された状態で分布している(図3(A)参照)。その後、この塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び非架橋樹脂粒子を含む被膜が基板上に形成される。
非架橋樹脂粒子層を形成した非架橋樹脂粒子間に、ポリイミド前駆体溶液を含浸させ、非架橋樹脂粒子層が埋没するように塗膜を形成させると、非架橋樹脂粒子層の厚み以上の領域にポリイミド前駆体溶液が存在する(図1(B)参照)。
第2の工程は、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び非架橋樹脂粒子を含む被膜を加熱して、ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する工程である。そして、第2の工程には、非架橋樹脂粒子を除去する処理を含んでいる。非架橋樹脂粒子を除去する処理を経て、多孔質ポリイミドフィルムが得られる。
なお、本実施形態において、ポリイミド前駆体をイミド化する過程とは、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び非架橋樹脂粒子を含む被膜を加熱して、イミド化を進行させ、イミド化が完了した後のポリイミドフィルムとなるよりも前の状態となる過程を示す。
これらの中でも、テトラヒドロフラン等のエーテル類が好ましく、テトラヒドロフランを用いることがさらに好ましい。
非架橋樹脂粒子を溶解する際に水性溶剤が残留している場合には、水性溶剤が非架橋粒子を溶解する溶剤中に溶解し、ポリイミド前駆体が析出し、いわゆる湿式相転換法と類似の状態となり、空孔径の制御が困難となる場合があるため、残留している水性溶剤量は、ポリイミド前駆体質量に対して20質量%以下、好ましくは10質量%以下に低減した後に有機溶剤で非架橋粒子を溶解除去することが好ましい。
ポリイミド膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が15%未満であるとき(すなわち、ポリイミド膜が水に溶解できる状態)に非架橋樹脂粒子を露出させる処理を行う場合、上記のポリイミド膜中に埋没している非架橋樹脂粒子を露出させる処理としては、拭き取る処理、水に浸漬する処理等が挙げられる。
例えば、機械的に切削する場合には、ポリイミド膜に埋没している非架橋樹脂粒子層の上部の領域(つまり、非架橋樹脂粒子層の基板から離れた側の領域)に存在する非架橋樹脂粒子の一部分が、非架橋樹脂粒子の上部に存在しているポリイミド膜とともに切削され、切削された非架橋樹脂粒子がポリイミド膜の表面から露出される(図2(C)参照)。
ポリイミド前駆体溶液は、ポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂が含有している多孔質ポリイミドフィルムが得られるならば、特に限定されない。亀裂の発生を抑制する点で、水性溶剤に、ポリイミド前駆体が溶解しているポリイミド前駆体溶液であることが好ましい。
ポリイミド前駆体は、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(ポリアミック酸)である。
一方、Bが表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基である。
また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量を上記範囲とすると、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され、製膜性が確保され易くなる。
・カラム:東ソーTSKgelα−M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)をアミン塩化して、その水性溶剤に対する溶解性を高めると共に、イミド化促進剤としても機能する化合物である。具体的には、有機アミン化合物は、分子量170以下のアミン化合物であることがよい。有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体の原料となるジアミン化合物を除く化合物であることがよい。
なお、有機アミン化合物は、水溶性の化合物であることがよい。水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種(特に、3級アミン化合物)がよい。有機アミン化合物として、3級アミン化合物又は2級アミン化合物を適用すると(特に、3級アミン化合物)、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなり、また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性が向上し易くなる。
2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、モルホリンなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
有機アミン化合物の含有量を上記範囲とすると、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなる。また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性も向上し易くなる。
水性溶剤は、水を含む水性溶剤である。具体的には、水性溶剤は、全水性溶剤に対して水を50質量%以上含有する溶剤であることがよい。水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法において、ポリイミド前駆体溶液には、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などを含んでもよい。
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック(例えばpH5.0以下の酸性カーボンブラック);金属(例えばアルミニウムやニッケル等);金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等);イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等);等が挙げられる。これら導電材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す製造方法が挙げられる。
この方法によれば、水性溶剤を適用するため、生産性も高く、ポリイミド前駆体溶液が1段階で製造される点で工程の簡略化の点で有利である。
本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムに含有するポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂の存在状態は、特に限定されない。例えば、多孔質ポリイミドフィルムの内部、多孔質ポリイミドフィルムの表面(多孔質ポリイミドフィルムの空孔の表面を含む)の少なくとも一方に存在していればよい。
本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムは、空孔の形状が球状である。本実施形態において、空孔の形状が「球状」とは、球状、及びほぼ球状(球状に近い形状)の両者の形状を包含するものである。具体的には、長径と短径の比(長径/短径)が1以上1.5以下である空孔の割合が90%以上存在することを意味する。この空孔の存在割合が多いほど、球状の空孔の割合が増加する。長径と短径の比(長径/短径)が1以上1.5以下である空孔は、93%以上100%以下であることが好ましく、95%以上100%以下であることがさらに好ましい。また、長径と短径の比が1に近づくほど真球状に近くなる。
また、本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムを、例えば、リチウムイオン電池の電池セパレータに適用した場合に、イオン流の乱れの発生が抑制されるため、リチウムデンドライトの形成が抑制されやすくなる。
なお、「空孔の最大径と最小径の比率」とは、空孔の最大径を最小径で除した値(つまり、空孔径の最大値/最小値)で表される比率である。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムが適用される用途としては、例えば、リチウム電池等の電池セパレータ;電解コンデンサー用のセパレータ;燃料電池等の電解質膜;電池電極材;気体又は液体の分離膜;低誘電率材料;等が挙げられる。
また、例えば、電池電極材に適用した場合には、電解液に接触する機会が増加するため、電池の容量が増えると考えられる。これは、多孔質ポリイミドフィルムに含有させた電極用のカーボンブラック等の材料が、多孔質ポリイミドフィルムの空孔径の表面や、フィルムの表面に露出する量が増加するためと推測される。
さらに、例えば、多孔質ポリイミドフィルムの空孔内に、例えば、いわゆるイオン性液体をゲル化したイオン性ゲルを充填して電解質膜として適用することも可能である。本実施形態の製造方法により、工程が簡略化されるため、より低コストの電解質膜が得られると考えられる。
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、水:900gを充填した。ここに、p−フェニレンジアミン(分子量108.14):27.28g(252.27ミリモル)と、メチルモルホリン(有機アミン化合物):50.00g(494.32ミリモル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度20℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体「水」溶液(PAA−1)を得た。
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、N−メチルピロリドン:900gを充填した。ここに、p−フェニレンジアミン:27.28g(252.27ミリモル)を添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物:72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度を20℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1)を得た。
ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1)の500gを水:3000gに撹拌しながら滴下し、ポリイミド前駆体を析出させた。このポリイミド前駆体:30gを、水:243g、イソプロパノール:27gに加え、さらに、メチルモルホリン:15g加えて撹拌、溶解させ、ポリイミド前駆体「水/イソプロパノール」溶液(PAA−2)を得た。
ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1)の500gを水:3000gに撹拌しながら滴下し、ポリイミド前駆体を析出させた。このポリイミド前駆体:30gを、水:243g、イソプロパノール:27gに加え、さらに、1,2−ジメチルイミダゾール(DMIz):15g加えて撹拌、溶解させ、ポリイミド前駆体「水/イソプロパノール」溶液(PAA−3)を得た。
ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1)の500gを水:3000gに撹拌しながら滴下し、ポリイミド前駆体を析出させた。このポリイミド前駆体:30gを、水:243g、N−メチルピロリドン:27gに加え、さらに、1,2−ジメチルイミダゾール:15g加えて撹拌、溶解させ、ポリイミド前駆体「水/N−メチルピロリドン」溶液(PAA−4)を得た。
平均粒径0.1μmの非架橋ポリメタクリル酸メチル・スチレン共重合体(FS−102E:日本ペイント社製):10部、ポリビニルブチラール樹脂(S−LEC SV−02:積水化学工業社製):1部を、エタノール:30部に加え、ウエブローター上で撹拌し、分散溶液を作製した。これをガラス製の基板上に乾燥後の膜厚が30μmになるように形成し、90℃で1時間乾燥し、非架橋樹脂粒子層を形成した。
ポリイミド前駆体「水」溶液(PAA−1)を10倍に希釈し、ポリイミド前駆体「水」溶液(PAA−1)を非架橋樹脂粒子層上に塗布した後、減圧脱泡を行い、非架橋樹脂粒子間の空隙へポリイミド前駆体「水」溶液(PAA−1)を含浸した。室温(25℃、以下同じ)で一晩乾燥した後、非架橋樹脂粒子層の表面が露出するように、水拭きを行い、非架橋樹脂粒子層上の余剰のポリイミド前駆体を除去した。これを120℃で1時間加熱した後、ガラス製の基板から剥離して、テトラヒドロフラン(THF)に30分間浸漬し、非架橋樹脂粒子を溶出させた。乾燥後、室温から380℃まで10℃/分の速度で昇温し、380℃で1時間保持したのち、室温に冷却して多孔質ポリイミドフィルム(PIF−1)を得た。
実施例1と同様に作製した非架橋樹脂粒子層上に、ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1)を10倍に希釈して塗布したが、非架橋樹脂粒子が溶解してしまった。これを120℃で1時間加熱した後、ガラス製の基板より剥離し、THFに1時間浸漬し、非架橋樹脂を溶出させた。乾燥後、室温から380℃まで10℃/分のスピードで昇温し、380℃で1時間保持したのち、室温に冷却して多孔質ポリイミドフィルム(RPIF−1)を得た。しかし、空孔径が0.05μm以上1.01μm以下の範囲を示し、分布の広いものであった。これは、非架橋粒子が溶解し、形態を維持できなかったためと考えられる。なお、多孔質ポリイミドフィルム(RPIF−1)は、非架橋樹脂粒子に由来する非架橋樹脂成分は0.02%であった。
ポリイミド前駆体「水/イソプロパノール」溶液(PAA−2)を10倍に希釈し、実施例1と同様に作製した非架橋樹脂粒子層上に塗布し、実施例1と同様にして多孔質ポリイミドフィルム(PIF−2)を得た。
ポリイミド前駆体「水/イソプロパノール」溶液(PAA−2)を10倍に希釈し、これにポリイミド前駆体10部に対し10部の割合で平均粒径0.1μmの非架橋ポリメタクリル酸メチル・スチレン共重合体(FS−102E:日本ペイント社製)を加え、ウエブローター上で撹拌し、分散溶液を作製した。これをガラス製の基板上に乾燥後の膜厚が約30μmになるように形成し、室温で1時間乾燥した後、ガラス製の基板からはがし、テトラヒドロフランに30分間浸漬した。90℃で1時間乾燥した後、90℃から380℃まで10℃/分の速度で昇温し、380℃で1時間保持したのち、室温に冷却して多孔質ポリイミドフィルム(PIF−3)を得た。
ポリイミド前駆体「水/イソプロパノール」溶液(PAA−3)を用いた以外は、実施例2と同様にして多孔質ポリイミドフィルム(PIF−4)を得た。
ポリイミド前駆体「水/N−メチルピロリドン」溶液(PAA−4)を用い、非架橋樹脂粒子の除去にトルエンを用いた以外は、実施例3と同様にして多孔質ポリイミドフィルム(PIF−5)を得た。N−メチルピロリドンは沸点が高いため、室温乾燥では十分に除去できないため、イソプロパノールの場合に比べ空孔径が大きいものとなった。
日本触媒社製の平均直径550nmの単分散の球状シリカ粒子(真球率:1.0、粒径分布指数:1.20):30質量部をN−メチルピロリドン(NMP):30質量部に分散した。ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1):100質量部にシリカ粒子分散液20質量部を混合、撹拌した後、ガラス板上に塗布した。これを120℃で1時間加熱した後、ガラス製の基板より剥離し、室温から380℃まで10℃/分のスピードで昇温し、380℃で1時間保持したのち、室温に冷却してシリカ-ポリイミド複合膜を得た。そのシリカ-ポリイミド複合膜を10質量%フッ化水素水に浸し、6時間かけてシリカを溶解除去し、十分に水洗、乾燥して多孔質ポリイミドフィルム(RPIF−2)を得た。
非架橋樹脂微粒子として、平均粒径1μmの架橋ポリメタクリル酸メチル共重合体(SSX−101:積水化成品工業社製)を用い、非架橋樹脂粒子除去の溶剤をトルエンとした以外は実施例3と同様にして多孔質ポリイミドフィルム(RPIF−3)を得た。架橋樹脂粒子を用いた場合には、架橋樹脂粒子は溶剤に溶解せず、膨潤するためと考えられるが、亀裂の多いフィルムであった。
実施例1〜5、及び、比較例1〜3で得た多孔質ポリイミドフィルムについて、空孔径の分布の評価(最大径、最小径、平均径、及び、長径と短径との比率)を行った。具体的には、既述の方法で評価を行った。
実施例1〜5、及び、比較例1〜3で得た多孔質ポリイミドフィルムについて、亀裂の評価を行った。具体的な方法は以下のとおりである。ポリイミドフィルム1cm2角の面積を倍率500の顕微鏡で0.1mm以上を亀裂とし、有無を目視により観察した。
A:亀裂なし
B:1か所以上3か所以下
C:4か所以上
既述の方法により、多孔質ポリイミドフィルムに含有するポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂の含有量を測定した。
・「PDA」 :p−フェニレンジアミン
・「BPDA」:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・「MMO」 :メチルモルホリン
・「DMIz」:1,2−ジメチルイミダゾール
・「THF」 :テトラヒドロフラン
・「Tol」 :トルエン
・「PMMA/St」:非架橋ポリメタクリル酸メチル・スチレン共重合体
・「架橋PMMA」:架橋ポリメタクリル酸メチル共重合体
・「IPA」 :イソプロパノール
・「NMP」 :N−メチルピロリドン
Claims (4)
- ポリイミド樹脂とポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂とを含有し、空孔が球状である多孔質ポリイミドフィルム。
- 前記ポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂の含有量が多孔質ポリイミドフィルムの全体に対して、0.1質量%以上5質量%以下である請求項1に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
- 前記ポリイミド樹脂以外の非架橋樹脂が、ポリイミド樹脂を溶解しない溶剤に可溶な非架橋樹脂である請求項1又は請求項2に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
- 水性溶剤に、ポリイミド前駆体が溶解しているポリイミド前駆体溶液と、前記ポリイミド前駆体溶液に溶解しない非架橋樹脂粒子とを含む塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記非架橋樹脂粒子を含む被膜を形成する第1の工程と、
前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記非架橋樹脂粒子を溶解する有機溶剤により、前記非架橋樹脂粒子を除去する処理を含む第2の工程と、
を有する多孔質ポリイミドフィルムの製造方法によって得られた請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
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